[BCN This Week 2009年10月19日 vol.1305 掲載](週刊BCN編集長の谷畑良胤さんの許可を得て記事を掲載)
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見てござる…地蔵と名月

このコラムは「視点」と題されている。数々の方々が様々な視点で世の中の見晴らしを綴っておられる。私もコラムニストの末席を汚しながら、毎週楽しみに読ませていただいている。されど楽しんでばかりもいられない、またもや私の執筆順番が廻ってきてしまった。さて今回の視点をどこにすえようか…。奇をてらうつもりはないが、童謡と詩詞という妙な視点からプログラミング(延いてはコンピュータ業界)にとって大切なことを述べようと思う。

皆さんは次の童謡「見てござる」をご存じだろうか。「お猿のかごや」で有名な山上武夫さんの作詞である。

♪村のはずれの お地蔵さんは
♪いつもにこにこ 見てござる
♪仲よしこよしの じゃんけんぽん
♪ホイ 石けり なわとび かくれんぼ
♪元気にあそべと 見てござる
♪ソレ 見てござる

京都では街のそこかしこにお地蔵さんがたたずむ。おめかしをして、その前にお供え物が置いてある。子どもたちが悪さをしないように「お地蔵さんが見てはるで…」という声も耳にする。夏休みの終わり頃の地蔵盆は子どもたちが主役の行事である。

ここで子どもをプログラマに置き換えてほしい。コンピュータで元気に遊べと見てござる。村のはずれで誰が「見てござる」のだろうか。プログラマとしての上達の第一歩は、動くプログラムと正しいプログラムの違いを知ること。これはまさに「見てござる」の会得である。

秋も終盤、十月三日(中秋の名月)が過ぎてしまったが、中秋節の代名詞になっている詩詞「水調歌頭」を次にあげよう。北宋の文人であった蘇軾(そしょく)さんの作詩である。是非に及ばぬほどに「見てござる」の会得に通じる道へと導いてくれる。

♪人有悲歓離合
♪月有陰晴圓缺
♪此事古難全
♪但願人長久
♪千里共嬋娟

人には悲しみ、喜び、別れ、出会いがあり、月にも曇った時、晴れた時、満ちた時、欠けた時がある。これは昔からのことで、完全無欠など、この世にはないのだろう。ただせめて願わくは、人が長く久しくして、遠く離れていても、月の美しさを共にできるように。

ここで月をプログラムに置き換えてほしい。もちろん人をプログラマに置き換えることも忘れずに。中秋節の風光に人(プログラマ)と月(プログラム)を重ね、名月(プログラムの美しさ)を共にする趣が大切である。

以上、童謡「見てござる」と詩詞「水調歌頭」をもって、オープンソース・ソフトウェアの神髄を述べたつもりだが、さてさて伝わっただろうか…。


Updated: 2009/12/22 (Created: 2009/10/19) KSU AokiHanko