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スポーツ・マーケティング論の文献リスト
 
 初歩的文献  
 ID  文献名  特記
  2010001 小野晃典「ホビー市場における消費者行動と社会的相互作用」『三田商学研究』53(4), 11-33, 2010

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スポーツ・マーケティングを勉強したいという大学院生に勧めている論文。とりわけ、「従来のマーケティングではなく、スポーツ・マーケティングを私は勉強したい」と希望して、マーケティングの専門的な研究(たとえば、スポーツではない財やサービスを対象にして、学会報告したり、論文を作成したりすること)をしていなかった学生諸氏に勧めている。
「スポーツ・マーケティングはマーケティングとは異なるユニークな存在だ」と主張したいのであれば、まずは、スポーツで起きているマーケティング現象が従来のマーケティング論でどこまで説明できるのかを理解し、他人に説明できなくてはならないだろう。
本論文は、スポーツとは異なるけれども「オタク」と呼ばれるホビー市場における消費者行動が、従来の消費者行動で説明できることを示している。
あなたはスポーツで起きているマーケティング現象を従来のマーケティング理論では説明できないと本当に言い切れるのであろうか?
本論文は、読み手にそうした自分自身のスタンスを考えさせる良書である。
 
 
  中級的文献 
 ID 文献名   特記
 2001071 Lovelock, C., “Classifying Services to Gain Strategic Marketing Insights,” Journal of Marketing, 47, 9-20, 1983

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先行研究で扱われたサービスを分類し、より実践的に有益な知見の整理を試みた論文。サービス研究では著名な著者。
本論文では、スポーツの興行(Spectaror Sports)がサービスの中でどこに位置づくのか、について検討している。サービス・デリバリー(サービスが消費者に提供されるプロセス)においてカスタマイゼーションや消費者の判断にゆだねるという余地がどれほどあるのかという視点から、スポーツの興行が分類されている。この視点においては、消費者が個人的ニーズに見合うと事前に判断できる程度とサービスの性質がカスタマイズできる程度との2軸で分類される。スポーツの興行は、公共交通機関やファーストフード・レストランと同様に、どちらの程度も低いとされている。一方、大教室での教育サービスは、スポーツの興行と同程度にカスタマイズできないけれども、個人的ニーズに見合っていると事前に判断できる程度がより高い。また、ホテルのサービスは、個人的ニーズに見合っていると事前に判断できる程度がスポーツの興行と同様に低いけれども、カスタマイズしやすい。さらに、法律サービスは、どちらの程度もスポーツの興行より高い。このように分類されている。
スポーツを相対的に見るための参考になるはずである。
 
 2002111 Meenaghan, T. and Shipley, D., “Media Effect in Commercial Sponsorship,” European Journal of Marketing 33 (3/4), 328-348, 1999

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スポンサーシップ研究をブランドと関連させて考察した文献。
本論文の要旨の意訳は次の通り。
ブランド・アイデンティティの様々な要素は、ブランドイメージの開発に貢献する。しかし、マーケティング・コミュニケーションの役割は、ブランドイメージの効果を達成しようとする際、とりわけ重要となる。広告の場合には、コミュニケーションの要素たるメッセージと媒体は、特定のブランドイメージの価値を伝達させるために、一体となったものとなる。スポンサーシップの場合には、メッセージも媒体も切り離されておらず、もつれたように結び合わさっており、心に抱く像は、特定の活動やイベントに連想されて伝達される。スポーツや芸術といったスポンサーシップの異なるカテゴリーによって転移されたイメージを調査しようとしてなされたフォーカス・グループの調査の結果を示す。それによれば、企業のスポンサーシップへの関与の結果として消費者間に生じる好感(goodwill)はスポンサーシップのカテゴリーごとに異なることが分かった。
 
 2002101 Benett, R., “Sports Sponsorship, Spectator Recall and False Consensus,” European Journal of Marketing, .33(3/4), 291-313, 1999

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スポンサーシップ研究の中でもスポーツにフォーカスする理由が描かれた興味深い文献。広告効果を消費者の心理からとらえようとしている。
本論文の要旨の意訳は次の通り。
Rossの理論を付け加えたZajoncの単純露出仮説が、観戦頻度にそってカテゴリに分けられたUKフットボールのサポータのサンプルで検証された。競技場の周りにめぐらされているスポンサーや他の企業のポスターに対する観戦者の想起が測定され、みせかけの総意のレベル(例えば、チームスポンサーのブランドが、実際の場合よりも、まず味方のサポーター、次に一般大衆という順で、より高い割合で購買されるという信念)が査定された。実質的な単純露出とみせかけの総意の効果が記載される。
ID2002001と併せて読みたい。  
 2002091 Moore, J., Pockett, G. and Grove, S., “The impact of a Video Screen and Rotational-Signage Systems on Satisfaction and Advertising Recognition,” Journal of Services Marketing, 13(6), 453-468, 1999

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サービス・マーケティング研究の学術雑誌が1999年にスポーツ・マーケティングを特集した際に掲載されたスポーツ・スポンサーシップに関連する文献。
本論文の要旨の意訳は次の通り。
観戦者の満足するビデオスクリーンの効果と回転式看板システムの広告効果を調査した。主要な大学フットボールの試合で総計181名の観戦者が、レギュラーシーズンのハーフタイム時にインタビューされた。ビデオスクリーンはスタジアムのサービス状況(servicescape)の重要な構成要素であり、そのサービス状況(servicescape)は、ファンの満足と将来のイベントに参加する意図とを増加させることのできるものである、ということが結果として示された。ファンは広告されていた企業の半分以下しか認知していない一方で、回転式システムで露出された企業はよヨリ容易に認知されていた。もしファンがイベントのスポンサーとして企業を認知するならば、企業は実質的な好意(goodwill)を生み出す傾向にあることを結果は示している。
ID2002001と併せて読みたい。 
 2001061 Shannon, R., “Sport Marketing: an Examination of Academic Marketing Publication,” Journal of Services Marketing, 13(6),.517-535,1999

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サービス・マーケティング研究の学術雑誌が1999年にスポーツ・マーケティングを特集した際に掲載された文献(ここで取り上げました)。
本論文の要旨の意訳は次の通り。
スポーツ産業を概観し、スポーツ・マーケティングの分野で出版物を出そうとしている著者らの近年の状況に言及していく。スポーツは近年アメリカ合衆国において11番目の規模の産業である。にもかかわらず、スポーツ・マーケティングに関する研究成果を掲載する主要なマーケティング・ジャーナルはほんのわずかしかない。スポーツ・マーケティング学者の中には、自らの研究を「servicescapes」やレジャーサービスと称して、掲載許可を得ようとしている者もいる。そこで、スポーツ・マーケティングの研究成果が主として掲載されるSport Marketing Quarterlyのトピックの内容をみてみよう。それらは18のカテゴリーに分類できる。スポンサーシップはスポーツ・マーケティング誌にとって最も頻度の高いトピックである。続いてのトピックは、スポーツ産業の全般的な調査やファン、観戦者、参加者に対する調査である。最後に、学術的なジャーナルで発行されたスポーツ・マーケティングの論文や文献を提示しておこう。これらの内、いくつかはマーケティングに関するジャーナル誌に掲載されている一方、そのほかの膨大なものは分野外に掲載されている。
ID2001001と併せて読みたい。
 
 2002081 Ferrand, A. and Pages, M., “Image Management in Sport Organisations: The Creation of Value,” European Journal of Marketing, 33(3/4), 387-401, 1999

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マーケティング研究の学術雑誌でブランドと関連してスポンサーシップの効果を確認した文献。
本論文の要旨の意訳は次の通り。
マーケティングの意思決定に際し、助力となる有益な情報システムを求めているスポーツ組織やスポンサーシップ関係の管理者に対する研究である。イメージがスポーツ組織にとっての価値をどのように作るのかを分析することから始めている。イメージは、「ブランド・エクイティ」を強化すること、消費者行動に変化をもたらすこと、に貢献する。
ID2002001と併せて読みたい。  
 2002071 Astous, A. and Bitz, P., “Consumer Evaluations of Sponsorship Programmes,” European Journal of Marketing, 29(12), 6-22, 1995

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マーケティング研究の学術雑誌で比較的初期に紹介されたスポンサーシップ(特に消費者の認知構造)の関連文献。
本論文の要旨の意訳は次の通り。
様々なスポンサーシップ・プログラムに対する顧客の反応の研究結果を示す。プログラムは四つの要素から異なっている。ひとつはスポンサーシップの性質(<フィランソロピー的>対<商業的>)。その起源(<既存イベント>対<スポンサーによって作り出されたイベント>)。その頻度(<持続的>対<一度きり>)。イベントとスポンサーとの間のつながりの強さ(<弱い>対<強い>)。その結果が以下のように示される.フィランソロピー的なスポンサーシップは商業的なスポンサーシップよりも企業イメージに肯定的な印象をもたらす。スポンサーとイベントの間のつながりは企業イメージに線形でない効果を与える。スポンサーされたイベントにおける顧客の関心はスポンサーのイメージに対する知覚に肯定的な印象をもたらす。さらに、これらの要素は消費者の評価に相互作用的な効果をもつことがわかった。
ID2002001と併せて読みたい。 
 2002061 Javali, R., Traylor, M., Gross, A. and Lampman, E., “Awareness of Sponsorship and Corporate Image: An Empirical Investigation,” Journal of Advertising, 23(4), 47-58, 1994

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広告研究の学術雑誌で比較的初期に紹介されたスポンサーシップ(特に企業イメージ)の関連文献。
本論文の要旨の意訳は次の通り。
企業のスポンサーシップはますますコミュニケーション・ミックスとして重要となっている。スポンサーするイベントに対する企業の出費と同様にスポンサーシップに参加する企業の数も上昇している。それは組織が観衆にきちんと到達し、自らのイメージを強化するような新しい方法を模索しているからである。企業のスポンサーシップの重要性は今や認められるところとなっているが、その価値や効果を理解するためになされた研究はわずかでしかない。スポンサーシップと企業イメージの関係性を検証しようとして、本研究のような実証的な研究がなされた。企業のスポンサーシップは企業イメージをヨリよいものにするが、その効果は企業間で異なることが示された。さらに、スポンサーシップは消費者が組織の印象を形作るために使う唯一の情報ソースであることも分かった。ある環境下では、企業のスポンサーシップはイメージを強化するよりもむしろダメージを与えてしまうことも分かった。
ID2002001と併せて読みたい。
 
 2002051 Aaker, D. and Joachimstaler, E., “Brand Leadership: The Next Level of the Brand Revolution,” Free Press, 2000(阿久津聡・訳『ブランド・リーダーシップ:「見えない企業資産」の構築』ダイヤモンド社, 2000)

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ブランド研究者がスポンサーシップをどう位置付けるのかを示した良書。本書でも、個別企業の持つブランドの構築の度合いに差があるのは、スポンサーシップの活用の仕方にあるのではないかという問題意識が示されている。日本語で読めるのでブランドと広告とスポンサーシップの関係をイメージするのに、非常に役に立つ。
ID2002001と併せて読みたい。 
 2002041 Nicholls, J., Roslow, S. and Dublish, S., “Brand recall and brand preference at sponsored golf and tennis tournaments,” European Journal of Marketing, 33 (3/4), pp.365-367, 1999

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スポンサーシップ研究はブランドの概念とともに進展してきた。これは、個別企業の持つブランドの構築の度合いに差があるのは、スポンサーシップの活用の仕方にあるのではないかという問題意識から生じている。ID2002031とは異なり、契約をしない企業との比較ではなく、契約をした企業同士の比較となっている。広告研究者がスポンサーシップをどのように位置付けているのかも分かる良書。
本論文の要旨の意訳は次の通り。
スポーツイベントは、企業ブランドをプロモーションする上では、主として場を基礎とする(place-based)媒体である。本研究はライダー・ゴルフ・トーナメント(the Ryder golf tournament)とリプトン・テニス・トーナメント(Lipton tennis tournament)における観戦者のデモグラフィックス(人口統計学的属性)、ブランド想起、ブランド選好を調査する。この観戦者の人口統計学的属性のリストは、ブランドを広告する者にとって価値のある情報である。二つのトーナメントにおける人口統計学的属性は、これらが予期されていた(表面上妥当な)相違はあったけれども、重要な側面において近似していた。本研究は、ゴルフとテニスの両方のイベント、あるいは一方のイベントをスポンサーしているブランドに対する観戦者の想起と選好との間に相違があることを示している。ブランド想起とブランド選好の間の全体俯瞰的な相互関係は、明らかに全ての場合において高い。特定ブランドに関する想起と選好の間の類似と相違の関係が議論される。
ID2002001と併せて読みたい。
 2002031 Crimmins, J. and Horn, M., “Sponsorship: From management ego trip to marketing success,” Journal of Advertising Research, 36(4), 11-21, 1996

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広告媒体としてのスポーツの試合(イベント)、すなわちスポンサーシップは、個別契約間でなぜ差が生じるのかというきわめてマーケティング論的な思考方法が有益な問題の一つである。同一の契約金を支払ったにもかかわらず、他のスポンサーのほうが自社よりも効率よく広告できていた場合、もっと言えば、契約金を支払っていない他社のほうが効率よく広告できていた場合、契約の対象となったスポーツの試合は広告媒体として適していたのだろうか。
このような問題意識を持って本論文を読めば、スポンサーシップが企業にとっても(またスポーツの試合の主催者にとっても)単なる広告媒体価値の市場取引ではないことが分かる。広告研究者がスポンサーシップをどのように位置付けているのかも分かる良書。
本論文の要旨の意訳は次の通り。
スポンサーシップは、消費者を説得する際に強力であるがしばしば誤解されるものである。スポンサーシップの説得力の構成要素が概観され、主要なスポンサーシップを取り結んでいるブランドのデータを用いて、その構成要素が説明される。レベルが測定されると、劇的な成功を収めているものがある一方で、実際には多くのスポンサーシップが経営陣のうぬぼれによる失策にはまっていることが分かる。成功したスポンサーシップと失敗したスポンサーシップを比較して、スポンサーシップのパフォーマンスを改良するための基本的なステップを指摘する。
ID2002001と併せて読みたい。
 2002021 岡田浄二「第4章 話題創造の仕掛けづくり:Jリーグ」嶋口充輝・竹内弘高・片平秀貴・石井淳蔵『マーケティング革新の時代①顧客創造』有斐閣, 1998

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日本プロサッカーリーグを事例に、スポーツの試合を広告媒体とするプロモーション活動がいかなる帰結を生んだのかを考えさせる良書。
スポーツの試合を広告媒体として用いること(たとえば、会場に看板を設置すること)は、用いる主体である企業の視点からすれば、その効率性がマーケティング上、重要であることは言うまでもない。むしろ、どのような用い方が効率的なのかを探ることのほうがより重要であろう。しかし現実には、用いられる主体であるスポーツ団体による制限もあるために、効率的な用い方が即座に採用されるわけではない。それゆえ、現実に顕在化した広告媒体としての用い方の取引契約(スポンサーシップ契約)は個別具体的であるはずである。
このような問題意識から本書を読めば、Jリーグブームの時期とそうでない時期とのちがいからさまざまな示唆が得られる。ID2002001と併せて読みたい。 
 
 2002011 根本昭二郎『広告コミュニケーション新論増補改訂版』日経広告研究所, 1998

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広告コミュニケーション活動の中でスポーツの試合がどのような位置を占めうるのかを議論した解説書。
国際的に同時に開催される五輪大会やワールドカップ大会などスポーツの試合興行の制度は通常の広告媒体とは異なる特徴を示すことになる。第10章で、この点について詳述している。
ID2002001と併せて読みたい。 
 2001051 小川孔輔「第6章3サービス商品としてのスポーツ」山下秋二・畑攻・冨田幸博『スポーツ経営学』大修館書店, 2000

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ID2001001の共著者小川孔輔氏のサービス商品の分かりやすい解説書。 
スポーツのビジネス(とりわけプロスポーツの試合興行)をサービス業として考えた場合、「場所の制約」と「時間の制約」を受けるとされる。これが他のサービスとどれほど同じなのか、あるいは違うのかという視点からスポーツのビジネスを考えるきっかけを与えてくれている。問題提起として興味深い。ID2001001と併せて読みたい。
 
2001041
近藤隆雄『サービス・マーケティング:サービス商品の開発と顧客価値の創造』生産性出版, 1999
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サービス品質を理解するための良質な入門書。
従来のマネジリアル・マーケティングとの違いが丁寧に解説されており、そこからサービスを考える上での論点が浮かび上がるように工夫されている。サービス品質と顧客満足の関係をスポーツに見ようという場合には、読んでおかなくてはならない必読書である。ID2001001と併せて読みたい。 
 2001031  樋口美雄『プロ野球の経済学』日本経済評論社, 1993

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スポーツに顕在化するサービス品質を捉える上で、各組織の労働市場にどのような特徴があるのかを示した良書。
著者の専門がID2001011の著者と同じように経済学(特に労働経済学)であるために、個別チームに対象を当てているわけではない。しかし、各チームの人的資源獲得が市場全体にいかなる帰結を生むのかという経済学特有の美しいロジックが展開される。個別チームのマーケティングを分析した結果が、実は市場の特殊性にあるのではないかと反論されることとならないように、押さえておくべき論点が示されている。スポーツ・マーケティングを考える上では必読の書。ID2001021と併せて読みたい。 
 
 2001021 松岡憲司『スポーツエコノミクスの発見:Jリーグは地域を活性化するか』法律文化社, 1996

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スポーツに顕在化するサービス品質と顧客満足の関係を考えるために、各組織の置かれた市場にどのような特徴があるのかを示した良書。
著者の専門がID2001011の著者と同じように経済学(特に産業組織論)であるために、個別チームのマーケティングにまでは踏み込んでいない。その代わりに、プロスポーツに特徴的な戦力均衡制度による社会的制限が市場に与える影響について分かりやすく解説してくれている。実は、この戦力均衡制度による市場の特殊性という問題は、ID2001011の著者の専門と重なっており、経済学では古くから提起されている問題の一つであるとされている。それゆえ、なぜ経済学がスポーツの現象に注目しなければならないのかというロジックが洗練されており、その点だけ読んでもスポーツ・マーケティングを考える上で非常に示唆に富む。ID2001011を読む前に、特に「プロスポーツと市場競争」の章を読むとより理解が進むかもしれない。
 
 2001011
Szymanski,S. and Kuypers, T. “Winners & Losers: The Business Strategy of Football,” Penguin Books, 1999

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スポーツに顕在化するサービス品質と顧客満足の関係を考えるために、個別組織のマーケティングにまで踏み込んだ興味深い良書。
著者の専門は経済学(特に不完全な競争市場に関心を持っているようである)であるため、特定のチームにまでは踏み込まないのかと思わせつつ、個別チームの競争優位にまで分析を進めている。イングランドのプロサッカーリーグを対象に、サービスの品質と人件費の関係、品質と観客の関係を分析し、例外的な組織には事例分析を施している。
2011年時点まで邦訳されていないため、管理人の講義では管理人自身のつたない訳で済ましているけれども、原著のほうが圧倒的に面白い。ID2001001と併せて読みたい。
 2002001 塩沢茂『電通のイベント戦略』PHP文庫, 1987

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マーケティング研究がスポーツに注目する問題のひとつ、広告媒体としてのスポーツの試合(イベント)、すなわちスポンサーシップに着目した良書。
1970年代以降、広告代理店がスポーツの試合に注目していった社会的背景がよくわかる。とりわけ、マネジリアル・マーケティングを学習した読者にとっては、単にプロモーションの一種と分類されてきた広告活動の現場がいかに精緻な計算によって支えられてきたのかを垣間見ることができる。その意味では、現場の凄味に敬意を抱きつつ、それでもなお残される問題にどのように対処していけばいいのかという研究や学習上の問題意識を喚起させる良書といえる。
また、スポーツの試合は効率的な広告媒体と言えるのかどうかという問題は、その後のマーケティング研究でも1つのイシューとなっている。とりわけ、媒体に制限のかかるタバコ産業やアルコール産業などに注意を向ければ、この問題の奥深さを味わえるはずである。 
 
 3001002
中塚千恵・小川孔輔「なぜスタジアムに行ってしまうのか? 観戦型サービスにおける参加意図形成と顧客経験」『季刊マーケティングジャーナル』28(2), 2008, 43-62

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マーケティング研究がスポーツに注目する問題のひとつ、サービス品質と顧客満足の関係を問うた数少ない日本語の論文。
一般に、サービスの品質は(提供された)結果(分かる)品質と(提供される)過程(で分かる)品質とで構成される。スポーツ、特に本論文で焦点があてられる観戦型サービス(具体的には、プロスポーツの試合)は、他のサービスよりも結果品質の評価がしやすい。なぜならば、試合には勝敗があるからである。つまり、勝ったチームは結果品質の良いサービスを提供したわけであり、負けたチームは結果品質の良くないサービスを提供したことになる。それゆえ、観客は結果品質の手掛かりを探すことによって購買のリスクを避けようとすると予想できる。しかし、これまでの試合戦績といった結果品質の手掛かりががあるにもかかわらず、2つのチーム間ではそれほど大きな観客動員数の差にはなっていない。むしろ、そこには過程品質への評価が大きな影響を示しているのではないか。
このような問題意識を持って本論文を読めば、非常に興味深い示唆が得られる。日本の第一線のマーケティング研究者が集う『季刊マーケティングジャーナル』でスポーツに焦点が当てられた貴重な論文である。是非、一読をお勧めしたい。