岐阜県青少年保護育成条例事件
控訴審判決

岐阜県青少年保護育成条例違反被告事件
名古屋高等裁判所
昭和62年11月25日 刑事第2部 判決

被告人 朝鹿自販機株式会社

■ 主 文
■ 理 由


 本件各控訴を棄却する。


[1] 本件各控訴の趣意は、弁護人井口浩治及び同青山学連名の控訴趣意書に、これに対する答弁は、検察官川又敬治名義の答弁書に、それぞれ記載されているとおりであるから、ここにこれらを引用するが、本件控訴趣意の要旨は、原判決が原判示事実について適用している法令である岐阜県青少年保護育成条例(以下、本条例という)は、青少年の保護育成上有害であるとして有害図書等の指定基準を定めて、その販売等の規制をしているが、表現の自由を制約するだけの合理性を具備しておらないし、その規制目的を実現するためには、有害図書等の全面的な販売を禁止することにつながりかねず、検閲に該当するので、憲法21条1項、2項に違反し、また、本条例6条1項、2項で定められている有害図書等の指定要件の規定は、その基準について明確性を欠くから、憲法31条に違反し、更に、有害図書等の規制の内容や運用は、各地方公共団体によって著しい地域差を生じているので、憲法14条に違反し、いずれも無効であるから、本条例の規定を適用した原判決には法令の解釈適用を誤った違法があり、これが判決に影響を及ぼすことは明らかである、というのである。

[2] 所論にかんがみ、原判決書を調査して検討するに、原判決書がその(弁護人の主張に対する判断)の項で、所論指摘憲法違反の各主張について、これを採用し得ない理由について説示するところは、措辞やや適切でない点は認められるが、その大綱において首肯することができ、原判決に所論のごとき法令の解釈適用を誤った違法を見出すことはできない。すなわち、本条例は、青少年の健全な育成を図るために、これを阻害するおそれのある行為を防止することを目的として制定され(1条)、知事は、その内容等から著しく性的感情を刺激し、又は著しく残忍性を助長するため、青少年の健全な育成を阻害するおそれがあると認める図書等を有害図書等として指定し(6条1項)、或は、右指定すべき図書のうち、特に卑わいな姿態若しくは性行為を被写体とした写真又はこれらの写真を掲載する紙面が編集紙面の過半を占めると認められる刊行物については、前項の指定に代えて、当該写真の内容をあらかじめ規則で定めるところにより指定することができる(同条2項)と規定し、その施行規則2条において、条例6条2項の規定による写真の内容につき更に具体的に規定して、有害指定図書等(同条例6条により指定を受けた図書等の総称)の範囲をより明確にしたうえ、自動販売機業者は、有害指定図書等を自動販売機に収納してはならない(6条の6)と規定し、その違反者に対しては、3万円以下の罰金又は科料に処し(21条5号)、かつ、いわゆる両罰規定を設けている(24条)ものであるところ、本条例の前記各規定の趣旨は、一般に、青少年はその心身の未成熟等から精神的に未だ十分に安定していないため、著しく性的感情を刺激する等の有害指定図書等を自由に購入して閲読するにまかせると、その精神に悪影響を受け易いこと等の事情にかんがみ、青少年の健全な育成を阻害するおそれがあると認める有害指定図書等を自動販売機に収納すること等を禁止しているものであることが明らかであって、このような本条例の規定の趣旨に徴すると、本条例の前記各規定は、公共の福祉に適合するものであって、所論のように右の各規定が合理性及び明確性に欠けるとは解されず(なお、本罪は、抽象的危殆犯であって、所論のごとき有害指定図書等と青少年の非行化との間に具体的因果関係を必要とするものではない)、直ちに憲法21条及び31条に違反するとは解されないし(昭和32年3月13日最高裁判所大法廷判決・刑集11巻3号997頁、昭和55年11月28日最高裁判所第2小法廷判決・刑集34巻6号433頁、昭和58年3月8日最高裁判所第3小法廷判決・刑集37巻2号15頁、同年10月27日最高裁判所第1小法廷判決・刑集37巻8号1294頁各参照)、また、各地方公共団体が青少年の保護育成上有害である図書等の規制について、各別に条例を制定する結果、その取扱に差異が生ずることがあっても、地域差の故をもって、憲法14条の規定に違反するものと解することもできず(昭和60年10月23日最高裁判所大法廷判決・刑集39巻6号413頁、昭和33年10月15日最高裁判所大法廷判決・刑集12巻14号3305頁各参照)、その他、所論の違憲の主張が理由のないことは、前掲最高裁判所各判決の趣旨に徴して明らかであって、原判決に所論のごとき法令の解釈適用を誤った違法は存しない。論旨は理由がない。

[3] よって、本件各控訴は、いずれもその理由がないから、刑事訴訟法396条に則り、これを棄却することとして、主文のとおり判決する。

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