Japanese English

Science Seminars

Fiscal 2018

Date: 27 February 2019
Speaker: Naoki Yamatsu(Hokkaido Univ.)
Title: Is Symmetry Breaking into Special Subgroup Special?
Abstract: 近年大統一ゲージ群の特殊部分群を用いた新たなタイプの大統一理論``特殊大統一理論''が提唱された.この理論ではSU(16)対称性の特殊部分群SO(10)などが用いられているが,これまでのほとんどの研究ではリー群の正則部分群へ破れのみが議論され,特殊部分群への破れはほとんど議論されていない.ただし,ヒッグス機構や動力学的破れ,オービフォールド境界条件での破れなどによる特殊部分群への破れのいくつかの例は既に知られている.力学的対称性の破れでは具体的に,九後-佐藤[PTP(1994)91,1217]によりE_6大統一理論の動力学的対称性の破れが四次元の南部-Jona-Lasino(NJL)タイプの有効模型を用いて解析され,E_6対称性がその特殊部分群F_4やUSp(8)などに破れるという結果が知られている.本講演では九後-佐藤('94)と同様の解析手法をユニタリ群SU(n)の反対称表現などに適用することで対称性の特殊部分群への破れが特別なことではないことを説明したい.
Slide: PDF
Page Top
Date: 25 February 2019
Speaker: Naoya Ukita(Tsukuba Univ.)
Title: 超対称Yang-Millsグラディエントフローが有する紫外有限性とその応用
Abstract: 格子ゲージ理論で開発されたYang-Millsグラディエントフローは、摂動の任意の次数で紫外有限性を有し正則化によらない物理量の定義を与える。実際、無限小並進対称性を破る格子ゲージ理論で長年問題だったエネルギー・運動量テンソルの構成法が提案されて、数値計算による評価も活発に行われている。 本セミナーでは、Yang-Mills理論の超対称版である D=4, N=1 超対称Yang-Mills理論のグラディエントフローについて、我々の最近の研究紹介をする。 先ず、菊地-大野木両氏により提案された方程式を再考し、より自然なWess-Zuminoゲージ固定されたグラディエントフロー方程式を導き、その方程式が超対称性と無矛盾であることを示す。次に、摂動の1ループ計算で、フローされた場の2点相関関数が紫外有限になること確認して、実際、摂動の任意の次数で紫外有限性を有することを証明する。最後に、超対称カレント多重項の正則化に寄らない構成法を紹介する。
Slide: PDF
Page Top
Date: 4 February 2019
Speaker: Shigeki Sugimoto(YITP)
Title: 2次元QEDと弦理論
Abstract: 2次元QEDは厳密に解析できる強結合ゲージ理論の例として古くから研究されている。もはや研究され尽くされた理論であると思われる方も多いかも知れないが、今回のセミナーでは、この2次元QEDに関する新たな結果を紹介したい。特に、2次元QEDで電荷が素電荷の k 倍であるような質量ゼロのフェルミオンが Nf 個ある場合を考え、この系の持つ軸性対称性Z_{k Nf} が Z_{Nf} に自発的に破れ、それに伴って k 個の縮退した真空が得られることなどを説明する。そして、弦理論の枠内にこの2次元QEDを実現する方法を与え、上記の解析結果を応用することで、ブレインの力学に関する非摂動的な予言を与える。なお、このセミナーは Swansea 大学の Armoni 氏との共同研究arXiv:1812.10064 に基づく。
Slide: PDF
Page Top
Date: 21 January 2019
Speaker: Hideo Kodama(YITP)
Title: 重力波観測による究極理論探査
Abstract: 超弦理論は,現時点で,自然界の最も根源的な基本理論の最有力候補であるが,そのことを直接示す証拠はない. 現在,その証拠を求めて,様々な努力がなされているが,それらは大まかに3つに分類される. 一つは,加速器実験を含む地上実験,二つ目は,インフレーションのCMBによる観測的研究,最後は超弦理論の予言する隠れたセクターの引き起こす宇宙現象を用いるアプローチである. この講演では,この最後のアプローチについて,その基本的なアイデアを説明し,さらに超弦理論コンパクト化により生み出される超弦アクシオンとブラックホールの相互作用が引き起こす宇宙現象の重力波観測により,超弦理論コンパクト化についての情報を得る可能性についての我々の最近研究を紹介する.
Slide: PDF
Page Top
Date: 15 January 2019
Speaker: Yasuyuki Okumura(The University of Tokyo, ICEPP)
Title: LHC-ATLAS 実験の最新結果
Abstract: LHC 実験は 2015 年から 2018 年までの、 Run2 と呼ばれるデータ収集プログラムを完了し、ATLAS 実験は陽子陽子衝突系のエネルギー 13 TeV で、 150/fb のデータを収集することに成功した。 Run2 実験データを用いて、Run1 で発見されたヒッグス粒子の理解が次々と進み、特に高統計を必要とするトップクォーク対随伴生成過程の測定やヒッグス粒子のボトムクォーク対への崩壊過程の観測が達成された。また新物理の探索も、様々なアイデアを投入して遂行している。世界最高エネルギー実験の強みを生かし、これまで見たことがなかったフェーズスペースにアクセスするための技術開発を伴う探索解析を行っている。本セミナーでは、LHC Run2 実験プログラムを振り返り、データ収集の苦労話、物理解析結果のダイジェストを通じて LHC-ATLAS 実験の最新結果について議論をしたい。
Slide: PDF
Page Top
Date: 29 October 2018
Speaker: Hiroaki Sugiyama(Toyama Prefectual University)
Title: ニュートリノ質量生成機構の分類とその活用
Abstract: ニュートリノ振動観測によってニュートリノ質量の存在が明らかにされたため、ニュートリノ質量を導入して標準模型を拡張する必要がある。また、ニュートリノ質量は荷電レプトンやクォークの質量に比べて極端に小さいため、それらとは異なる機構で生成されていると考えられる。ニュートリノ質量を生成する新物理模型は様々なものがあるが、そのほとんどでは新スカラー粒子が活用されている。 そこで本講演では、新スカラー粒子とレプトンとの湯川相互作用に焦点を絞り、必要な湯川相互作用の組み合わせによってニュートリノ質量生成機構を整理・分類し、多様な新物理模型に共通の性質を引き出すことで実験による効率的な検証を目指した研究成果を紹介する。
Slide: PDF
Page Top
Date: 30 July 2018
Speaker: Syuichi Yokoyama(YITP)
Title: フロー方程式、共形対称性、AdS幾何
Abstract: 本講演では、AdS/CFT対応において共形場理論(CFT)からAdS幾何が出現する機構に関するフロー方程式を用いた研究についてお話しします。 フロー方程式は作用素の粗視化を記述する方程式で、格子QCDにおいて数値計算を助ける技術として発展してきましたが、 この方程式を用いることで各場の量子論に対して1次元だけ次元の高い幾何が付随することが判明しました。 この付随する幾何について青木愼也氏と共同研究を行いました。その主要な結果は以下のとおりです。 i)付随する幾何の計量(誘導計量)は量子情報計量と一致する。 ii)平坦な空間上で定義された任意のCFTに対する誘導計量はPoincare AdS空間と一致する。 iii)CFTの共形変換は、真空期待値を取った後にAdS空間の等長変換に変化する。 iv)ii)およびiii)を共形平坦な多様体上で定義されたCFTの場合に拡張し、その曲がった空間を境界に持つAdS空間の計量を構成した。 時間が許せば、この定式化によるAdS側における宇宙定数の量子補正の計算に関する最新の研究結果を紹介したいと思います。
Slide: PDF
Page Top
Date: 25 June 2018
Speaker: Toshifumi Noumi(Kobe University)
Title: 弱い重力予想と現象論
Abstract: 弱い重力予想 (Weak Gravity Conjecture) はその名の通り「重力が最も弱い相互作用である」という予想で、弦理論から動機付けられている。 特に、量子重力理論には「荷電粒子の質量電荷比」や「アクシオンの崩壊係数」への上限値が存在することを予言し、インフレーション模型や暗黒物質模型への理論的制限を与える。 本講演では、弱い重力予想とその現象論的帰結についてレビューしたのち、我々がその拡張として最近提案した“Tower Weak Gravity Conjecture”について紹介したい。
Slide: PDF
Page Top
Date: 18 June 2018
Speaker: Yu Hamada(Kyoto University)
Title: Axial U(1) current in Grabowska and Kaplan’s formulation
Abstract: 最近、カイラルゲージ理論の非摂動的な定式化としてdomain-wall fermionとgradient flowを組み合わせた方法がKaplanたちにより提案された。通常のdomain-wall fermionでは2枚のdomain wall上にそれぞれ異なるカイラリティを持った無質量フェルミオンが局在するが、ここでバルクのゲージ場をgradient flowを用いて減衰させることで、片方のカイラルフェルミオンのみがゲージ場と相互作用できるようになる。我々はこの方法をもとに、4次元のベクトル的な理論を構成し、軸性U(1)カレントについて調べた。軸性U(1)カレントの素朴な定義として、gradient flowで減衰していく仮想的なU(1)ゲージ場を新たに導入し、そのU(1)ゲージ場のdomain wall上の値で有効作用を変分したものを考えた。しかし、このカレントはバルクの寄与も含んでおり保存してしまい、アノマリーを再現しないことがわかった。本講演ではまずKaplanたちの定式化を簡単に紹介した後、この軸性U(1)カレントの保存につい
Slide: PDF
Page Top
Date: 4 June 2018
Speaker: Ikuo Sogami(Kyoto Sangyo University)
Title: コロイド分散系と断熱対ポテンシャル
Abstract: コロイド分散系は、可視光の波長に近い粒径をもつ粒子が安定に分散する溶液であり、ほとんど すべての生命体が内包する重要な熱力学系である。この分散系で生起する現象は豊饒であり、それらの多様な現象を記述し得る数理物理の体系は、今も尚、発展の途上にある。 1940 年前後に、ロシアとオランダの研究者が独立に分散系のヘルムホルツ自由エネルギーを 計算し、コロイド粒子に対する遮蔽斥力ポテンシャルを導出した。彼等は、このポテンシャルとファンデルワールス引力の線形結合を用いて、分散系中で生じる粒子凝集が ''添加塩の価数の6乗 に比例する'' という経験則の証明に成功した。これは、物理学の手法でコロイド現象を解明した画期的な第一歩であり、以来、彼らの名を冠した Derjaguin-Landau-Verwey-Overbeek (DLVO) 理論が'' コロイド科学の標準理論'' と位置づけられてきた。 1970 年代に入ると、均質な試料粒子が生成され、観測技術も急速な進歩を遂げる。その結果、分散系で不純イオンを除去すると、オパールのような美しい虹彩色を放つコロイド結晶が成長す ることが発見された。DLVO 理論は、この現象を小イオン濃度が適当な値をとると遮蔽により斥 力効果が低下して ''DLVO ポテンシャルの第二極小'' が生じた結果であると解釈し、「添加塩の濃度を増加するとコロイド結晶は安定化する」ことを予言した。 この予言を検証するために、1973 年に Hachisu(蓮) 等は、粒子の体積分率と添加塩の濃度の異 なるコロイド分散系の状態を観察した。塩濃度が低い領域では、分散液はブラッグ回折により美しい虹彩色を発し、コロイド結晶の形成が確認される。そのような状態から塩濃度を増加させると、共存領域を経て、虹彩色が失われる。すなわち、添加塩濃度を増加させると、結晶は安定性 を失って溶融するのである。この蓮の発見を契機に、表面電荷の大きいコロイド分散系で多様な 相転移現象が見出され、DLVO 理論の欠陥が明らかになって来た。 蓮等との討論を経て、Sogami は分散系のギッブス自由エネルギーの研究に着手し、1983年に、化学ポテンシャルの総和としてギッブス自由エネルギーを計算することにより、コロイド粒子の断熱対ポテンシャルが弱い長距離引力成分を持つことを示した。それ以来、長距離引力の存在の 実験的な検証とギッブス自由エネルギーの理論に関して、35 年以上にわたって論争が続いている。 この講演では、コロイド分散系の研究史を簡単に紹介した後、近年の理論発展を報告する。新しい理論 [1]では、分散系の熱力学量が「母集団平均」に基づいて構成される。その際、小イオンが粒子の外部領域のみに存在することに注目し、排除体積を系の熱力学変数として選ぶことにより、系のギッブス自由エネルギーがルジャンドル変換と化学ポテンシャルの総和の二つの方法でヘルムホルツ自由エネルギーから導出可能であることが示される。 [1] I. S. Sogami, PTEP, Issue 3, 1 March 2018, 033J01.
Slide: PDF
Page Top
Date: 2 April 2018
Speaker: Tsuneo Suzuki(Kanazawa University)
Title: Color confinement due to violation of non-Abelian Bianchi identity
Abstract: A new scheme for color confinement in QCD due to violation of the non-Abelian Bianchi identities is proposed. The violation of the non-Abelian Bianchi identities (VNABI) J_mu is equal to Abelian- like monopole currents k_mu defined by the violation of the Abelian-like Bianchi identities. If the color invariant eigenvalues of VNABI condense in the QCD vacuum, non-Abelian color confinement is realized. This confinement picture is completely new in comparison with the previously studied monopole confinement scenario based on an Abelian projection after some partial gauge-fixing. To check if the new scenario is realized in nature, numerical studies are done in the framework of lattice field theory by adopting pure SU(2) gauge theory for simplicity. Monopole dominance and Abelian dual Meissner effect due to VNABI are observed clearly. The density of lattice VNABI and the infrared effective monopole action are studied with the help of the blockspin renoramlization group. Both density and infrared effective action show beautiful scaling behaviors expected in the continuum limit. These numerical results strongly support the new confinement scenario.
Slide: PDF
Page Top