司法書士法事件
上告審判決

司法書士法違反被告事件
最高裁判所 平成9年(あ)第613号
平成12年2月8日 第三小法廷 判決

上告申立人 被告人

■ 主 文
■ 理 由


 本件上告を棄却する。

[1] 所論は、司法書士法19条1項、25条1項は、憲法22条1項に違反すると主張する。しかし、司法書士法の右各規定は、登記制度が国民の権利義務等社会生活上の利益に重大な影響を及ぼすものであることなどにかんがみ、法律に別段の定めがある場合を除き、司法書士及び公共嘱託登記司法書士協会以外の者が、他人の嘱託を受けて、登記に関する手続について代理する業務及び登記申請書類を作成する業務を行うことを禁止し、これに違反した者を処罰することにしたものであって、右規制が公共の福祉に合致した合理的なもので憲法22条1項に違反するものでないことは、当裁判所の判例(最高裁昭和33年(あ)第411号同34年7月8日大法廷判決・刑集13巻7号1132頁、最高裁昭和43年(行ツ)第120号同50年4月30日大法廷判決・民集29巻4号572頁)の趣旨に徴し明らかである。所論は理由がない。

[2] 弁護人永井修二の上告趣意のうち、その余の点は、憲法違反をいう点を含め、実質は単なる法令違反、事実誤認の主張であって、適法な上告理由に当たらない。
[3] なお、行政書士が代理人として登記申請手続をすることは、行政書士の正当な業務に付随する行為に当たらないから、行政書士である被告人が業として登記申請手続について代理した本件各行為が司法書士法19条1項に違反するとした原判断は、正当である。

[4] 弁護人岡田滋の上告趣意は、憲法違反をいう点を含め、実質は単なる法令違反の主張であって、適法な上告理由に当たらない。

[5] 被告人本人の上告趣意のうち,判例違反をいう点は、事案を異にする判例を引用するものであって、本件に適切でない。その余は、憲法違反をいう点を含め、実質は単なる法令違反、事実誤認の主張であって、適法な上告理由に当たらない。

[6] よって、刑訴法408条により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 奥田昌道  裁判官 千種秀夫  裁判官 元原利文  裁判官 金谷利廣)

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