宝塚パチンコ店建設中止命令事件
控訴審判決

建築工事続行禁止請求控訴事件
大阪高等裁判所 平成9年(行コ)第23号
平成10年6月2日 第11民事部 判決

控訴人  宝塚市
     右代表者市長    正司泰一郎
     右訴訟代理人弁護士 原井龍一郎
             同 矢代勝
             同 田中宏

被控訴人 藪野孝也
     右訴訟代理人弁護士 西川雅偉
             同 竹下政行

■ 主 文
■ 事 実 及び 理 由


一 本件控訴を棄却する。
二 控訴費用は控訴人の負担とする。

一 控訴の趣旨
1 原判決を取り消す。
2 被控訴人は、原判決添付別紙物件目録記載の土地において建築中の建物の建築工事を続行してはならない。
3 訴訟費用は、第1、2審を通じて被控訴人の負担とする。

二 控訴の趣旨に対する答弁
 主文同旨
 事案の概要は、次のとおり原判決を付加、訂正し、争点1及び2に関する控訴人の新たな主張とこれに対する被控訴人の反論を付加するほかは、原判決事実及び理由欄「第二 事案の概要」(原判決1枚目裏10行目から21枚目表6行目まで)記載のとおりであるから、ここに引用する。
 文中「原告」とあるを「被控訴人」と、「被告」とあるを「被控訴人」と、「別紙」とあるを「原判決添付別紙」と各訂正する。

 3枚目表末行「特別工業地区の指定が併せてされた。」とあるを「工業の利便と住居の環境の保護との調和を図ることを目的とする特別工業地区の指定がされ、同日施行された「宝塚市特別工業地区建築条例」(以下「特別工業地区条例」という。)により、右特別工業地区内におけるパチンコ店の建築は原則的に禁止されるに至った(右条例は、その施行の際、現に建築確認を受けた建築物については適用されない。)。」と訂正する。

 7枚目表4行目「すなわち、」とあるを次のとおり訂正する。
「すなわち、国の法令が条例による規制を制約するか否かについては、地方自治の憲法的保障を促進するように解すべきであり、地域的対応の必要性があり、法律に明確な条例制定権を制約する規定のない限りは条例による規制は容認されていると解すべきであるところ、」
 7枚目表10行目「また、」の前に次のとおり付加する。
「昭和59年の風営法の改正において全国的に統一されたのは都道府県条例であって、これにより市町村の条例制定権を剥奪する趣旨ではないし、風営法施行令6条3号は、当該都道府県内の規制の必要度の最も低い地域の状況に合わせて都道府県条例を定めるのが相当であるという趣旨で、都道府県条例で定める制限地域の指定は必要な最小限度のものでなければならない旨規定したのであり、規制の必要度の高い地域には、市町村条例によって独自の規制をすることを風営法自体が予定していると解すべきである。」
 7枚目裏6行目末尾の次に以下のとおり付加する。
「なお、特別用途地区の指定という手段も十分ではなく、現に、後記のとおり、被控訴人がパチンコ店出店計画を公表し、建築確認を得た平成4年ないし平成5年当時本件土地を特別工業地区に指定した上で、建築基準法49条に基づく条例を設定し、これによりパチンコ店の建築を制限するという手法を採ることができなかった。」
 8枚目表9行目「及び川西市」とあるを「川西市、芦屋市、三木市、龍野市、太子町、揖保川町、新宮町、茨木市、高槻市、交野市、四条畷市、枚方市、大阪狭山市及び鎌倉市」と、同裏7行目「右審査会」から9行目「なっている。」までを「本件条例第3条により市長の同意を求められた事案につき、右審査会に諮問し、右審査会はその審査結果を市長に報告することになっている。」と各訂正する。

 9枚目表8行目から9行目にかけて「存在しない。」とあるを「存在せず、実効性の確保を民事訴訟手続に委ねている。」と訂正する。

 9枚目裏9行目から10枚目表6行目までを次のとおり訂正する。
(5) 市町村条例によって法律の規制以上の規制を行い得るかを検討するにあたっては、国の法令と同一の対象についてより強度の規制を行う「上乗せ条例」と、国の法令が規制していない対象について規制を行う「横出し条例」を区別し、「横出し条例」を一般的に適法とする考え方があり、確かに「上乗せ」であれば許されないが、「横出し」であれば許されるというような単純な問題ではないが、右考え方自体は本件においても参考とされるべきである。本件条例は、法令が規制の対象としていない地域を規制の対象とする意味においては「横出し条例」である。」
 10枚目裏5行目「以上」から8行目までを次のとおり訂正する。
「以上によれば、風営法は、地方公共団体の条例制定権を制約する趣旨で、その場所的規制につき条例を制定し得るのは都道府県のみとし、かつ、その内容も風営法施行令六条で定める基準に従い、必要最小限度のものにしなければならない旨規定しているのであり、市町村が条例によって風営法及び都道府県条例を超えた規制をすることは許されない。」
10 12枚目裏10行目「建築基準法」とあるを「建築基準法(ただし、平成四年法八二号による改正前のもの。以下、同じ。)」と訂正する。

11 13枚目表3行目「特定のイメージの町づくり」とあるを「高度な住宅都市としての町づくり」と訂正する。

12 13枚目表7行目「建築基準法は、」とあるを次のとおり訂正する。
「建築基準法についても、地域的対応の必要性があり、明確な条例制定権を制約する規定がないのであるから、全国一律に適用されるべき最低限度の規制を規定したものであり、」
13 13枚目裏5行目「また、」の前に次のとおり付加する。
「すなわち、建築基準法の条例への明文の授権規定は、条例制定権を創設する規定ではなく、単に条例制定権を確認する規定であると解すべきである。」
14 14枚目表2行目から3行目までを次のとおり訂正する。
「する理由は存在しない。建築基準法の規制だけでは地域の実情に対応できず、今後も同法の規制を上回る条例が必要になることは、大阪府や兵庫県で、同法の規制を上回る規制を内容とする「福祉のまちづくり条例」が制定されていることからも明らかである。なお、地方自治法2条3項18号で、土地利用規制は、「法律の定めるところにより」地方公共団体の事務に属するとしているが、この規定は、都市計画法(ただし、平成4年法82号による改正前のもの。以下、同じ。)や建築基準法が直接適用される限りにおいてはこれによるとの趣旨であり、建築基準法による規制が存在しない事項においては、条例によって独自に土地利用規制を行うことも可能であると解される。
(3) 用途地域の決定及び変更、特別用途地域の指定は、町づくりの手法としては不十分である。
 現に、本件土地の存する御所の前町及び近隣の高松町、」
15 14枚目裏7行目から15枚目表10行目までを次のとおり訂正する。
「また、後記のとおり、被控訴人がパチンコ店出店計画を公表し、建築確認を得た平成4年ないし平成5年当時本件土地を特別工業地区に指定した上で、建築基準法49条に基づく条例を設定し、これによりパチンコ店の建築を制限するという手法を採ることができなかったものである。
 町づくりは、用途地域の変更や特別用途地区の設定のみにより行うべきであるとの被控訴人の主張は妥当ではなく、地域の実情に応じて制定できる条例によっても行うことができると解すべきである。」
16 15枚目裏6行目「すなわち、同法48条」とあるを次のとおり訂正する。
「すなわち、地方自治法2条3項18号は、土地利用規制は、「法律の定めるところにより」地方公共団体の事務に属するとしており、都市計画法は、用途地域等の地域地区内における建築物等に関する制限は、同法で特に定めるもののほか、別に「法律」で定めるとしているところ、建築基準法48条」
17 16枚目表9行目と10行目の間に次のとおり付加する。
「また、同法は、平成4年の改正により、都市計画区域外の区域内の建築物に係る制限を条例で定めることができる旨規定するに至ったが(68条の9)、同法が建築物の制限ないし禁止について条例による規制を許容しているならば右のような規定をおく必要はない。」
18 16枚目裏10行目末尾に次のとおり付加する。
「控訴人の主張する「福祉の町づくり条例」は、違反者に対する立入調査、勧告、公表しか定めておらず、建築基準法により強力な規制を加えたものとはいえないし、そもそも右条例と建築基準法とは目的を異にするので両者間で抵触ということはあり得ないものである。また、建築基準法が最低限度の規制を規定したものか否かは法解釈によるものであり、このような条例が制定されていることから、建築基準法が最低限度の規制を規定したものとの結論を導くこともできない。」
19 16枚目裏末行から17枚目表2行目までを次のとおり訂正する。
3 本件条例は、職業選択の自由を保障する憲法22条1項、財産権の保障を規定する同法29条に反し違憲か

(一) 控訴人の主張  前記1(一)(3)のとおり、本件条例の規制方法には合理性が認められ、裁量権逸脱の違法性がないので、本件条例は、憲法22条1項、29条には反しない。

(二) 被控訴人の主張
20 17枚目表3行目「(一)」とあるを「(1)」と、19枚目表1行目「(二)」とあるを「(2)」と各訂正する。

21 18枚目裏7行目「一切存在しない。」の次に「市長の同意、不同意を決するにあたり、公開の聴聞も予定されていない。」を付加する。

22 19枚目裏6行目と7行目の間に次のとおり付加する。
「また、同様に、本件条例は財産権の保障を規定する憲法29条にも反する。」
23 20枚目表6行目「科された以上、」とあるを「課された以上、」と訂正する。

24 21枚目表4行目から6行目までを次のとおり訂正する。
「段を定めた規定は存在しない。このようなことからすれば、右命令に基づき行政上の義務が生じるとはいえないし、仮に、行政上の義務が生じるとしても、本件条例は民事司法的にその履行を強制することは予定していない。また、そもそも行政上の義務について民事司法的にその履行を強制することができるか法理論上の問題がある。

5 控訴人が本訴を提起することが信義則に反するかどうか

(一) 控訴人の主張
 被控訴人は、本件土地にパチンコ店を建築する計画を立てた当初の時点で本件条例の存在を認識しながら、右計画を進め、控訴人は、右当初から本件条例によってパチンコ店の建築ができないことにつき指導、勧告しており、中止命令を出すに至ったのであるから、控訴人が本訴を提起することは信義則に反しない。

(二) 被控訴人の主張
 控訴人は、被控訴人に対し、本件中止命令を出すまでは、本件条例は行政指導しかできない条例であり、これをもってパチンコ店の建築禁止を法的に強制することができないことを表示しており、被控訴人は、これを信じてパチンコ店の建築を計画したのであるから、控訴人が本件条例に基づいて本訴を提起することは信義則に反する。」
 本件条例は、高度な住宅都市としての町づくりを目的とするもので、都市計画上の観点からその建築物の用途制限を規定するものであり、建築基準法の法領域に属するものである。前記のとおり、建築基準法は、全国一律に適用されるべき最低限度の規制を規定したものであり、条例による規制を容認していると解すべきであるところ、本件条例は建築基準法の趣旨を逸脱したものではない。
 また、従来の建設省による通達「用途地域に関する都市計画の法定基準について」(昭和47年4月28日建設省都計発第42号建設省都市局長通知)においては、準工業地域内における特別工業地区の設定に関しては、「既成市街地内の準工業地域及び工業地域の区域についても、公害防止上の観点から必要があるときは、特別工業地区を積極的に定めること」という基準が示されていたにとどまり、本件土地を特別工業地区に指定した上で、建築基準法49条に基づく条例を制定し、これによりパチンコ店の建築を制限するという手法を採ることができなかった。平成5年6月25日に出された新たな通達「用途地域及び特別用途地区に関する都市計画の決定・運用等について」(平成5年6月25日建設省都計発第92号建設省都市局長通知)により、「準工業地域等において、地域における工業の利便と住居の環境の保護との調和を図る地区」を特別工業地区として指定することができることが明確に示されるに至ったのであり、これを受けて、前記のとおり平成8年2月13日に本件土地周辺を特別工業地区に指定し、特別工業地区条例により地区内のパチンコ店の建築を原則的に禁止するに至ったが、その根拠とされた本件土地周辺の住居地域化の実情は、被控訴人がパチンコ店出店計画を公表し、建築確認を得た平成4年ないし平成5年当時既に顕著であった。したがって、少なくとも、本件土地における本件条例の適用に絞って検討すると、本件条例による規制は、建築基準法の予定している規制の趣旨、目的内におさまるものであり、実質的違法性はない。
 本件条例と風営法は、対象とする分野及び究極的に達成しようとする目的に大きな隔たりがあり、本件条例と風営法との間の抵触は問題とはならない、すなわち、本件条例に基づく建築規制は、風営法上保証された地位を侵害するものとはいえない。
 控訴人の右主張は、(a)建築基準法が全国一律に適用されるべき最低限度の規制を規定したものであるとか、(b)建築基準法と本件条例とは目的を異にするとか、(c)法の不備があるところではこれを補う条例は有効と判断されるべきであるとか、(d)本件土地における本件条例の適用に絞って検討すると、本件条例による規制は実質的違法性がないとかといった種々の主張を寄せ集めたものに過ぎない。(a)、(b)の主張は従前の主張と同一であり、(c)、(d)の主張は独自の見解に基づくものであって失当である。
 原審及び当審における証拠関係目録記載のとおりであるから、ここに引用する。
 当裁判所の判断は、次のとおり原判決を付加、訂正し、争点1及び2に関する控訴人の新たな主張についての判断を付加するほかは、原判決事実及び理由欄「第三 争点に対する判断」(原判決21枚目表8行目から36枚目表3行目まで)記載のとおりであるから、ここに引用する。
(一) 文中「原告」とあるを「控訴人」と、「被告」とあるを「被控訴人」と各訂正する。

(二) 23枚目表7行目から8行目にかけて「反対運動を行ったことを契機に、」とあるを「反対運動を行い、風俗営業施設の出店に対する規制条例の制定を求める請願がなされたことを契機に、」と訂正する。

(三) 23枚目裏末行から24枚目表5行目までを次のとおり訂正する。
「ところで、条例が法令に違反するかどうかは、両者の対象事項と規定文言を対比するのみでなく、それぞれの趣旨、目的、内容及び効果を比較し、両者の間に矛盾抵触があるかどうかによってこれを決しなければならない。例えば、特定事項についてこれを規律する法令と条例が併存する場合でも、後者が前者とは別の目的に基づく規律を意図するものであり、その適用によって前者の規定の意図する目的と効果を何ら阻害することがないときや、両者が同一の目的に出たものであっても、法令が必ずしもその規定によって全国的に一律に同一内容の規制を施す趣旨でなく、その地方の実情に応じて、別段の規制を施すことを容認する趣旨であると解されるときは、法令と条例との間になんらの矛盾抵触はなく、条例が国の法令に違反する問題は生じえないというべきである(最高裁昭48年(あ)第910号同50年9月10日大法廷判決・刑集29巻8号489頁)。」
(四) 24枚目裏1行目から2行目にかけて「禁止行為ついては」とあるを「禁止行為については」と、同5行目「善良な風俗と清浄な風俗環境を保持」とあるを「善良の風俗と清浄な風俗環境を保持し」と各訂正する。

(五) 25枚目表4行目から同裏6行目までを次のとおり訂正する。
(三) 本件条例は、前記一で認定のとおり、控訴人の芸術的な色彩と豊かな自然環境という特色を保全、推進して良好な住宅都市づくりを基本目標とする一連の環境保全条例の一つとして位置付けられており、良好な住宅、自然及び文化環境の保持を目的とするものであるが、パチンコ店が青少年等に悪影響を及ぼし、犯罪の温床になりかねないとする地域住民の反対運動及び風俗営業施設の出店に対する規制条例の制定を求める請願を契機に制定されたこと、本件条例1条は、単に良好な環境の確保を目的とする旨規定するにとどまること、パチンコ店等、ゲームセンター及びラブホテルの建築等の規制に関する本件条例が対象とする施設はいずれも風俗営業に関するものであり、これらの施設の建築規制を内容とするものであることに照らしても、本件条例は、少年の健全な育成に支障を及ぼす行為の防止をもその目的に取入れており、また、住宅、自然及び文化環境の保持といっても、風俗環境の保持の観点を主眼とするものであるということができる。したがって、風俗営業の規制につき、風営法と本件条例は、風俗環境の保持、少年の健全な育成に支障を及ぼす行為の防止という同一の目的で規制しているということができる。」
(六) 26枚目表4行目「したがって、」から5行目までを次のとおり訂正する。
「したがって、両者の規制方法は、実質的には同一であるということができる。」
(七) 28枚目裏7行目「解されている。」とあるを次のとおり訂正する。
「解されており、その場所的規制は、都道府県条例で定めることとし、その内容も、風営法施行令6条で定める基準に従い必要最小限度のものにしなければならない旨規定しているのである(控訴人は、風営法施行令6条3号を、都道府県内の規制の必要度の最も低い地域の状況に合わせて都道府県条例を定めるのが相当であるという趣旨で、都道府県条例で定める制限地域の指定は必要最小限度のものでなければならない旨規定したものである旨主張するが、文言にそぐわない独自の解釈であって採用することができない。)。」
(八) 29枚目裏1行目「したがって、」から6行目「法は、」までを次のとおり訂正する。
「したがって、風営法及び県条例は、これによる規制が地域の実情に適合しなくなった場合、地方公共団体が都市計画における用途地域の変更を通じて、これに対処することを予定しているものと解するのが相当である。しかも、後記説示のとおり、都市計画法は、」
(九) 30枚目表末行から同裏4行目「主張する。」までを次のとおり訂正する。
「さらに、控訴人は、市町村条例によって法律の規制以上の規制を行い得るかを検討するにあたっては、「上乗せ条例」と「横出し条例」を区別し、「横出し条例」を一般的に適法とする考え方が参考とされるべきであり、本件条例は、「横出し条例」である、と主張する。」
(一〇) 31枚目表3行目から7行目までをつぎのとおり訂正する。
 また、本件条例は、都市計画法上の商業地域以外の用途地域においては、パチンコ店の建築について一律にこれを不同意にするというものであり、風営法に明らかに矛盾抵触するのみならず,その合理性も肯定されないというべきである。なお、本件条例は、宝塚市長がパチンコ店等の建築等の同意又は不同意をするにあたり、審査会に諮問する手続を定めているが、右のとおり、都市計画法上の商業地域以外の用途地域におけるパチンコ店の建築については、一律にこれを不同意にするのであるから、右手続は意味をなさないことは明らかであるし、右禁止される地域、すなわち都市計画法上の商業地域以外の用途地域の面積が小さいとしても、そのことで右合理性を肯定することはできない。

 したがって、風俗営業の場所的規制に関し、風営法及び県条例と同一の規制目的で、実質的に同一の規制方法を用いて、同法及び同条例よりさらに強度の規制をするものである本件条例は、風営法及び県条例に違反しており、その効力を有しないものといわざるを得ない。
 控訴人は、用途地域の決定及び変更、特別用途地区の指定という手法は不十分であり、本件土地は、実質的には住居地域でありながら、操業している工場もあるために住居地域への指定替えもできず、かつ、新たな通達が出るまでは特別工業地区にも指定できなかった、と主張する。しかし、前記のとおり、風営法及び県条例は、これによる規制が地域の実情に適合しなくなった場合には、地方公共団体が都市計画における用途地域の変更を通じてこれに対処することを予定しており、風営法及び県条例以上に強度な規制を内容とする市町村条例の制定でこれに対処することは予定していないというべきである。また、平成5年6月25日に新たな通達が出される前は、本件土地を特別工業地区に指定することができなかったという主張は、法令上本件土地を特別工業地区に指定することができないと解すべき根拠はなく、その運用基準についての従来の通達の下でも、本件土地を特別工業地区に指定することができなかったと解することはできないので、これを採用することができない。」
(一一) 31枚目裏2行目「そして、」から4行目「図り、」までを次のとおり訂正する。
「そして、これと同時に同法第3章の用途地域による建築規制は、都市計画によって指定された用途地域を用いて、計画的な市街化を図り、」
(一二) 31枚目裏9行目「両」から10行目までを次のとおり訂正する。
「本件条例の右の目的に関しては、本件条例と建築基準法は目的が同一であるということができる。」
(一三) 32枚目裏2行目「実質的に」から4行目までを次のとおり訂正する。
「準工業地域内のパチンコ店等の建築を一切認めないものである。」
(一四) 32枚目裏5行目から35枚目表10行目までを次のとおり訂正する。
3(一) 地方自治法2条3項18号は、土地利用規制は、「法律の定めるところにより」地方公共団体の事務に属するとしているところ、都市計画法は、用途地域等の地域地区内における建築物等に関する制限は、同法で特に定めるもののほか、別に「法律で」定めるとしており、地方公共団体が法律の委任を受けない条例によって独自の規制を行うことを予定していない(10条)。そして、都市計画法及び建築基準法は、基本的に都市計画における12種の用途地域の変更を通じて町づくりを行うという都市計画行政体系を採用し(都市計画法8条、9条、建築基準法48条)、ただ、右用途地域における規制が全国一律に適用されるものであるので、この規制だけでは必ずしも地域の実情に十分に対応しきれないことを考慮して、右規制を補充し、地域の実情に応じた土地利用の推進、環境の保護等を図るため、特別用途地区を定めることができるものとし(都市計画法8条1項2号、9条9項、同法施行令3条)、右特別用途地区内の建築制限は、地方公共団体の条例で定めることにしている(建築基準法49条、50条)。また、建築基準法において、一定の事項に関しては、地方公共団体の条例において同法と異なる規制を行うことができる旨規定している(40条、41条等)のに対し、用途地域内における建築物の制限については、地方公共団体の条例において同法と異なる規制を行うことができるとした規定は存在しない。
 以上によれば、建築基準法は、用途地域内における建築物の制限について、地方公共団体の条例で独自の規制を行うことを予定していないと解すべきである。
(二) 控訴人は、用途地域の決定及び変更、特別用途地域の指定は、町づくりの手法としては不十分であり、町づくりは、地域の実情に応じて設定できる条例によっても行うことができると解すべきである旨主張する。
 しかし、前記のとおり、都市計画法及び建築基準法は、地方公共団体の町づくりは、あくまで都市計画における用途地域の決定、変更及び特別用途地区の設定を通じて行うこととしており、右規制につき、法律の委任を受けない条例が独自の規制を行うことを予定していないということができるので、控訴人の右主張は理由がない。なお、平成5年6月25日に新たな通達が出される前は、本件土地を特別工業地区に指定することができなかったという主張を採用することができないことは前記説示したとおりである。」
(一五) 36枚目表1行目から3行目までを次のとおり訂正する。
 また、前記のとおり、本件条例は、都市計画法上の商業地域以外の用途地域においては、パチンコ店の建築について一律にこれを不同意にするというものであり、建築基準法に明らかに矛盾抵触するのみならず、その合理性も肯定されないというべきである。

 したがって、建築基準法と同一の目的で、かつ、同一の規制手法を用いて、同法の用途地域内における建築物の制限を超える規制を行う本件条例は、同法に違反しており、その効力を有しないものといわざるを得ない。」
 争点1及び2に関する控訴人の新たな主張は、要するに、(a)本件条例は、建築基準法の法領域に属するものであるが、建築基準法が全国一律に適用されるべき最低限度の規制を規定したものであり、本件条例は建築基準法の趣旨を逸脱するものではない、(b)本件土地における本件条例の適用に絞って検討すると、平成8年2月13日に本件土地周辺を特別工業地区に指定し、特別工業地区条例により地区内のパチンコ店の建築を原則的に禁止するに至ったが、その根拠とされた本件土地周辺の住居地域化の実情は、被控訴人がパチンコ店出店計画を公表し、建築確認を得た平成4年ないし平成5年当時既に顕著であり、本件条例による規制は実質的違法性がない、(c)本件条例と風営法は、対象とする分野及び究極的に達成しようとする目的に大きな隔たりがあり、本件条例と風営法との間の抵触は問題とはならない、すなわち、本件条例に基づく建築規制は、風営法上保証された地位を侵害するものとはいえない、というものである。
 しかし、このうち、(a)、(c)の主張が理由がないことは既に説示したとおりであり、本件条例は、風営法にも、建築基準法にも違反しており、その効力を有しないものというべきである。(b)の主張についても、前記のとおり、平成5年6月25日に新たな通達が出される前は、本件土地を特別工業地区に指定することができなかったという主張は採用することができないし、また、本件条例は、前記のとおり効力がないものであり,仮に、本件土地についてはこれを特別工業地区に指定することができる実情にあり、そうすれば、本件土地上のパチンコ店建築を禁止することができたとしても、本件土地に効力のない本件条例を適用することを肯定することができないことは明らかである。

 よって、控訴人の請求はその余の点について判断するまでもなく理由がないから、これを棄却した原判決は相当であって、本件控訴は理由がないからこれを棄却し、控訴費用の負担につき民訴法67条、61条を適用して、主文のとおり判決する。

  (裁判長裁判官 中田耕三  裁判官 高橋文仲  裁判官 中村也寸志)

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