宝塚パチンコ店建設中止命令事件
第一審判決

建築工事続行禁止請求事件
神戸地方裁判所 平成6年(行ウ)第34号
平成9年4月28日 第2民事部 判決

原告 宝塚市
   右代表者市長    正司泰一郎
   右訴訟代理人弁護士 原井龍一郎
           同 矢代勝
           同 田中宏

被告 藪野孝也
   右訴訟代理人弁護士 西川雅偉
           同 竹下政行

■ 主 文
■ 事 実 及び 理 由


一 原告の請求を棄却する。
二 訴訟費用は原告の負担とする。

 被告は、別紙物件目録記載の土地において建築中の建物の建築工事を続行してはならない。
[1] 本件は、地方自治法上の普通地方公共団体である原告が、パチンコ店を建築しようとしている被告に対して、パチンコ店等の建築等の規制に関する条例に基づき、右パチンコ店の建築工事の続行の禁止を求めた事案である。
[2] 原告は、地方自治法上の普通地方公共団体である。

[3] 原告は、昭和58年8月2日、「宝塚市パチンコ店等、ゲームセンター及びラブホテルの建築等の規制に関する条例」(以下「本件条例」という。)を公布し、同日からこれを施行した。本件条例には以下の規定が存する。
第3条 市内において、パチンコ店等、ゲームセンター又は旅館等(以下「指導対象施設」という。)の建築等をしようとする者は、あらかじめ市長の同意を得なければならない。
第4条 市長は、前条の規定により建築等の同意を求められた施設がパチンコ店等、ゲームセンター又はラブホテルに該当し、かつ、その位置が都市計画法第7条第1項に規定する市街化調整区域であるとき、又は同法第8条第1項第1号に規定する商業地域以外の用途地域であるときは、同意しないものとする。
第8条 市長は、第3条の規定に違反して指導対象施設の建築等をしようとする者又は第6条に規定する市長の指導に従わない者に対し、建築等の中止、原状回復その他必要な措置を講じるよう命じることができる。
[4] 被告は、別紙物件目録記載の各土地(46筆が一団となった土地であり、総面積は1374.62平方メートル。以下、併せて「本件土地」という。)を所有していたが、平成6年2月15日売買を原因として、被告が代表者となっている有限会社サンエースに所有権移転登記が経由された。
[5] 本件土地は、都市計画法上、準工業地域に属しているが、平成8年2月13日に行われた用途地域見直しの際、特別工業地区の指定が併せてされた。

[6] 被告は、本件土地においてパチンコ店を営むことを計画し、平成4年11月4日、宝塚市長に対し、本件条例3条に基づき建築同意申請をした。
[7] 宝塚市長は、同年12月10日、本件土地が都市計画法上の準工業地域に属することから、本件条例4条に基づき、右同意申請に対して同意しないこととした(以下「本件不同意」という。)。
[8] これに対し、被告は、平成5年1月11日、宝塚市長に対し、本件不同意に対する異議を申し立てたが、宝塚市長は、同年2月15日、右異議申立てを棄却した。

[9] 被告は、平成4年12月18日及び同5年1月8日の2度にわたり、宝塚市建築主事(以下「建築主事」という。)に対して、建築確認申請書を持参したが、建築主事は、本件条例及び宝塚市開発指導要綱の手続が完了していないことを理由に、右申請書の受理を拒否した。
[10] これに対し、被告は、平成5年1月11日付けで宝塚市建築審査会に対し、建築主事がした右建築確認申請の不受理処分の取消しを求める審査請求を行ったところ、右審査会は、同年2月23日、右不受理処分を取り消す旨の裁決をした。
[11] これを受けて、被告は、平成5年3月1日建築主事に対して、再度建築確認申請書を提出し、同年4月12日、建築主事より建築確認を受けた。

[12] 被告は、本件パチンコ店の建築工事(以下「本件工事」という。)を大日建設株式会社(以下「大日建設」という。)に発注し、大日建設は、平成6年3月15日、下請業者雲山組を使用して、本件土地においてパチンコ店建築の基礎工事に着手した。そこで、宝塚市長は、同日、被告及び大日建設に対して、本件条例8条に基づき建築工事中止命令を発し(以下、被告に対する建築工事中止命令を「本件中止命令」という。)、右命令は、同月16日、被告及び大日建設に到達した。

[13] しかるに被告及び大日建設がその後も本件工事を続行したため、原告は、平成6年3月17日、神戸地方裁判所伊丹支部に対して、被告及び大日建設を債務者として、本件工事の続行禁止を求める仮処分を申し立てた。同裁判所は、同年6月9日、右申立てを認容する旨の決定を行い、本件工事は中断されている。

[14] 原告は、平成6年7月29日、神戸地方裁判所に対して、被告及び大日建設を被告として、本件工事の続行禁止を求める本件訴えを提起したが、大日建設が本件口頭弁論期日に出席しなかったため、同年11月30日、同社に対して建築工事の続行の禁止を命ずる判決を得た。
(一) 原告の主張
[15](1) ある条例が国の法令に反するか否かは、単に両者の対象事項と規定文言を形式的に対比するのみでなく、それぞれの趣旨、目的、内容及び効果を比較し、両者に間に矛盾抵触があるかによって判断すべきである。
[16] これを本件についてみるに、風営法及び県条例の目的は、風俗環境の保持、少年の健全な育成に対する障害行為の防止及び風俗営業の規制及び業務の適正化という限定されたものである。他方、本件条例は、文化的で芸術的な香りと豊かな自然環境、更には「高級住宅地」という原告の特徴を保全、推進していこうとする一連の環境保全条例の一つとして位置づけられ、その目的は、良好な住居環境、自然環境及び文化、教育環境の保持である。したがって、両者の目的には顕著な相違がある。
[17] また、風営法及び県条例の規制方法が、営業規制であるのに対して、本件条例の規制方法は、建築規制であり、両者にはやはり顕著な相違がある。
[18] 従って、本件条例は、風営法及び県条例とはその目的、規制方法を異にし、その適用によって、風営法及び県条例が規定する目的と効果が阻害されることは考えられないから、風営法及び県条例に反しない。
[19](2) 仮に風営法及び県条例と本件条例の目的が一部において重なり合うとしても、以下のような理由から、本件条例によって、風営法及び同法施行条例の定める規制の範囲に比して、より広い範囲の規制を定めることは許される。
[20] すなわち、風営法は、その規制対象地域の定めを各都道府県条例に委ねており、右規制対象地域以外の地域において独自の規制を加えることを否定する趣旨の規定は存しない。風営法は、その目的に基づく規制に関して全国的、全国民的見地からする規制の基準を示すものであり、それとは別個の行政目的からする規制を制約するものではない。また、風営法及び県条例は、都市計画法上の用途地域の区分に応じて機械的に住居系の地域であるか否かを決し、風俗営業の規制の対象とするか否かを決している。しかし、用途地域は都市計画の見地から指定されているのに対して、日本の土地利用は住居地域とその他の地域の混在型が中心であるから、その規制が全ての地域の実情に適合するとはいえない。
[21] また、パチンコ店は、射倖心を刺激されて健全な勤労意欲を喪失し、パチンコにのめり込む客層を生み出したり、射倖的な遊戯にふける大人達の姿が青少年の目に触れることにより、青少年の学業に専念する意欲が減退し、豊かな人格形成が妨げられる危険性があるといった弊害をもたらしてきたものである。したがって、住民がこれらの阻害要因から自己防衛を図るため、その営業をそれが阻害要因とならない一定の地域に限るべきことを自治体に求めるのは、極めて自然かつ合理性を有することであり、本件条例はこのような住民意思を反映して制定されたものである。
[22] 因みに本件条例と同様な条例は、西宮市、尼崎市、伊丹市及び川西市をはじめ数多くの地方公共団体において制定されている。
(3) 本件条例の規制方法の合理性
[23] 風営法及び県条例により既に住居系地域が風俗営業の許可の規制対象とされているから、本件条例が実質的にパチンコ店等の建築等を規制対象としているのは近隣商業地域、準工業地域及び工業地域であるが、その面積は宝塚市の総面積に比べると僅かである。また、宝塚市ラブホテル等審査会設置規程第2条によれば、右審査会は本件条例第3条により市長の同意を求められた事案を審査し、その結果を市長に報告することになっている。したがって、本件条例は、不同意とする部分を一義的に限定し、かつ実質的に規制を強化した対象地域の面積は比較的小さいうえ、宝塚市長がパチンコ店等の建築等の同意又は不同意をするにあたり慎重な手続を定めている。
[24] 風営法では、刑罰をもってその実効性を担保しようとしている。他方、本件条例は、条例に基づく市長の同意を得ないでパチンコ店等の建築等をした場合、市長はその建築主等に対し当該建築物の建築の中止、原状回復等を命じることができる旨規定するにすぎず、これ以外に制裁措置についての規定は存在しない。したがって、制裁の内容、程度において顕著な差異が認められる。
(4) 本件土地の実情
[25] 本件土地は、都市計画法上の用途地域では準工業地域に指定されている(以下、この準工業地域を「本件準工業地域」という。)。しかし、本件準工業地域は住居地域に囲まれているうえ、本件準工業地域内にも多数の住居が存在し、その一部は都市計画法の用途地域の見直しにより、住居地区に変更されている。したがって、本件土地は実質的には住居地域と評価できる。
[26](5) 市町村条例によって法律の規制以上の規制を行い得るかを検討するにあたっては、国の法令と同一の対象についてより強度の規制を行う「上乗せ」条例と、国の法令が規制していない対象について規制を行う「横出し」条例を区別する必要がある。本件条例は、法令が規制していない地域の施設を規制するものであるから、「横出し」条例である。そして、「横出し」条例が広く適法であることは、一般的に認められている。

(二) 被告の主張
[27](1) 風営法1条が同法の目的の一つとして営業区域の規制を掲げ、同法4条2項2号が、風俗営業の営業所が政令で定める基準に従い都道府県条例で定める地域内にあるときは、公安委員会は営業を許可してはならないと定めている。そして、右規定を受けた政令である風営法施行令6条3号は、「制限地域の指定は、風俗営業の種類、営業の態様その他の事情に応じて、良好な風俗環境を保全するために必要最小限のものであること。」と規定している。以上の規定に鑑みれば、風営法及び県条例は、パチンコ店の営業禁止区域を一定の用途地域に限定しており、それ以上厳しい規制を許さない趣旨である。
[28](2) 原告は、風営法及び県条例と本件条例の目的が異なる旨主張するが、両者の目的は、ともにパチンコ店を含む風俗営業施設の建築、営業の場所的規制であり、両者はその目的を異にしない。
(3) 本件条例の規制方法の合理性について
[29] 原告は、風営法及び県条例は、住居系地域での風俗営業を原則として許可しない旨主張する。しかし、風営法及び県条例は住居系地域での風俗営業の許可を全面一律に禁止しておらず(風営法施行条例2条、同条例施行規則2条)、本件条例によって初めて右地域のパチンコ店等の建築等が全面的に禁止される。よって、本件条例が実質的に規制を強化している対象地域の面積は小さいとはいえない。また、本件条例が新たに規制の対象とする地域は、現実に多くのパチンコ店等の営業が行われている。したがって、本件条例の規制は極めて厳しいものということができる。
[30] また、本件条例は、宝塚市長がパチンコ店等の建築等の同意又は不同意をするにあたり、審査会に諮問する手続を定めているが、本件条例は、都市計画法上の用途地域の指定に従い、商業地域以外での建築等を一律全面的に禁止するものであり、指定された地域内であっても例外として同意する場合は存在しないのであるから、このような手続を設けても無意味である。
[31] 原告は、風営法が違反者に対する刑罰をもってその実効性を担保しようとしているのに対し、本件条例が民事訴訟の提起又は仮処分の申請によってしかその目的を達せないことをもって、本件条例の規制方法が合理的である旨主張する。しかし、刑事罰を科されるに至るには、捜査機関による捜査、公訴の提起を経た刑事司法手続きにおける審理を不可欠なものとし、その手続は極めて厳格に法定され、慎重に運営されることを旨としている。他方、民事司法手続、ことに仮処分手続は、簡易迅速に審理されることを旨としており、しかも、その結果、建築主に及ぼされる制約は絶大なものである。したがって、風営法及び県条例に比べて本件条例の方が制裁の内容、程度が軽微であるとはいえない。
[](4) また本件条例を「上乗せ」条例と捉えるか「横出し」条例と捉えるかは、単なる表現の差異にすぎないものであり、条例の適法性を考えるについては意味のないことである。
(一) 原告の主張
[32](1) 建築基準法は、建築物相互間あるいは各用途相互間で互いに相手方に及ぼす悪影響を防止しようとする消極的な規制であり、最も基本的な規制である。他方、本件条例は、地域の特徴を保全、推進して積極的に特定のイメージの町づくりを目指そうとするものである。したがって、両者はその目的において顕著な相違がある。
[33](2) 仮に建築基準法と本件条例の目的が一部において重なり合うとしても、建築基準法は、積極的な町づくりという観点から、条例において独自の規制を行うことを否定していないと解すべきである。地域指定に基づく同法上の規制に関しては、市街化調整区域内の既存宅地に対する建ぺい率、容積率規制の不備から濫開発を招いたため、平成4年の同法の改正で地域指定に基づく規制を強化し、都市計画区域以外の区域(白地地区)についても条例による各種規制を行った(68条の9)のは、このことを裏付けるものである。また、法律は、単に地域的な必要が生じたからといって直ちに制定されるものでない。これに対して、条例は、全国的な規制が必要な事項でなくても、地域的な必要性が認められれば需要に即応して制定が可能である。したがって、当該地域の実情の下で地域住民の志向する町づくりのために別段の規制を設けることは、地域社会の発展に寄与するものとして評価すべきものであり、これを禁止する理由は存在しない。
[34](3) 本件土地の存する御所の前町及び近隣の高松町、美幸町はその大部分が準工業地域であって住居地域はその一部にすぎないが、実際には住宅が多く、その実態は住工混在地域ということができる。また、近年は住宅の建築が目立ち、工場が移転撤退した跡地にはマンションや住宅が建築され、全体としてみれば住宅地といって差し支えない状況にある。現にその一部については、昭和48年の都市計画法に基づく用途地域の見直しの際に、住居地域への変更が行われている。そして、昭和63年度の用途地域の変更に際しても、御所の前町、高松町及び美幸町等の住民から町内の準工業地域部分につき住居地域への指定替えを求める意見書の提出があったが、同所にはなお10社程度の工場が操業を継続していたことから、これを見合わせたという経緯が存在する。したがって、良好な町づくりを市是とする原告としては、このような住居地域化の実態と住民の要請を無視することは許されない。本件条例は、このような状況の下で成立したものであるから、その意図するところは、法律を補完するものであるということができる。
[35](4) 用途地区の実態は長い時間を掛けて徐々に変容していくものであり、変化の兆しが見えたからといって直ちに、用途地区の変更や特別用途地区の指定ができるものではない。また、特別用途地区が指定できる地域は限定されており、本件条例のような全市的な町づくりに常に役立つわけではない。したがって、町づくりは用途地区の変更や特別用途地区の設定により行うべきであるとする被告の主張は妥当でない。

(二) 被告の主張
[36](1) 建築基準法は、同法48条が定める各用途地域における建築物の制限ないし禁止を超えて、普通地方公共団体において別段の規制を設けることを容認していないものと解される。したがって、本件条例は同法に反し違法である。
[37] すなわち、同法48条が定める各用途地域における建築物の制限ないし禁止については、「特別用途地区」において地方公共団体が別途の規制をなし得ることを定める同法49条の規定を除いては、地方公共団体がその地方の特殊性に応じて別途の規制をなし得るとする規定は存在しない。また、個々の建築物の安全という見地から建築物の敷地、構造及び建築設備について規定する同法第2章においては、地方公共団体がその地方の特殊性に応じて別途の規制をなし得るとする40条の規定が存在する。これに対して、都市計画法上の地域指定を基準として各区域における建築物の敷地、構造及び建築設備について規定する同法第3章においては、これに対応する条文が存在せず、「特別用途地域」においてのみそのような規制をなし得るとする規定が存在する。したがって、同法は、各用途地域における建築物の右制限ないし禁止を超えて、普通地方公共団体において別段の規制を設けることを容認していない趣旨と解すべきである。
[38](2) 地方公共団体がどのような環境の町づくりを行うかは、都市計画法に基づき、用途地域の変更あるいは特別用途地区の指定により行うべきであるとする法的システムを採用している。建築基準法48条は最低限の基準を定めるだけであり、これとは別に当該地域における建築物の制限又は禁止をすることを容認しているとすると、右法的システムを無に帰すことになり妥当でない。
被告の主張
[39](一) 憲法22条で保障する「職業選択の自由」を制約する立法に対する違憲性の判定に関しては、小売市場距離制限事件判決及び薬局距離制限事件判決という2つの最高裁判決を通じて、以下のような基準が確立されている。
[40] すなわち、規制立法は、積極目的と消極目的のものに区別、類型化して捉える。そして、積極目的の規制立法に対する違憲審査基準としては、「明白性の原則」(当該法的措置が著しく不合理であることの明白である場合に限ってこれを違憲とする)を用いる。他方、消極目的の規制立法に対する違憲審査基準としては、「厳格な合理性の基準」(規制の必要性、合理性及び同じ目的を達しうるより制限的でない他の規制手段の有無を立証事実によって合理的に裏付けられなければ違憲とされる)を採用する。
[41] これを本件条例について検討する。本件条例の目的は、市内におけるパチンコ店等の建築等について必要な規制を行うことにより、良好な環境を確保することにあり、その実質は消極目的規制の典型例とされている風営法の目的「清浄な風俗環境の保持」と同一である。したがって、本件条例は消極目的の規制であり、その違憲性審査基準は、厳格な合理性の基準によって行うことになる。
[42] そこで、本件条例の規制の必要性、合理性及び同じ目的を達しうる、より制限的でない他の規制手段の有無について検討する。本件条例は、パチンコ業を自己の職業とした者は、宝塚市長の同意を得なければならないとする許可制を採用する(3条)ものであり、職業選択の自由に対する強力な制約を定めるものである。そこで本件条例の違憲性審査にあたっては、(a)本件条例が重要な公共の利益のために必要かつ合理的な措置であるか、(b)許可制に比べてより緩やかな規制では本件条例の目的を達成することができないかを検討する必要がある。
[43] 本件条例は、市街化調整区域全域及び商業地域以外の用途地域でのパチンコ店等の職業選択の自由を全面的に禁止するものである。しかも、その禁止を例外的に解除する場合は一切存在しない。よって、極めて広汎かつ高度な制約であるということができるが、原告は右規制を行わなければならない必要性につき何ら主張、立証を行っていない。したがって、本件条例は、職業選択の自由を保障する憲法22条1項に反する。
[44](二) 仮に本件条例の目的が、原告の主張するように良好な住居環境及び文化、教育環境を保持するためパチンコ店の弊害を可及的に防止することにあるとしても、本件条例が合憲であるためには、本件条例より緩やかな職業活動の内容及び態様に対する規制によっては、右目的を充分に達成することができない場合でなければならない。これを本件条例について検討するに、建築される建物等の外装等に対する規制を施すことで周辺環境との調和を達成しうる。また、騒音あるいは営業時間等に対する規制を施すことで「清純な環境」の可及的な達成も可能となると考えられる。仮に許可制を敷かなければならないだけの立法事実が存在するとしても、学校等の保護すべき施設からの距離制限による建築等の原則禁止とその例外的解除という方法によっても、充分にその目的を達しうる。したがって、本件条例はこのような要件を満たさず、やはり職業選択の自由を保障する憲法22条1項に反するものである。
(一) 原告の主張
[45] 本件条例には、建築中止命令に従わない場合に行政上これを強制的に履行させる定めがない。また、その性質上、行政代執行法上の代執行によって強制的に履行させることもできない。このような場合、行政主体ないし行政庁は、裁判所にその履行を求める訴えを提起することができるものと解すべきである。
[46] なぜなら、本件のように行政庁の処分によって私人に行政上の義務が科された以上、私人がこれを遵守すべきは当然である。それにもかかわらず、私人がこれを遵守しない場合、行政主体ないし行政庁が何らの措置を採りえないとすることは不合理だからである。また、現行憲法下においては、公法と私法を峻別する考え方は放棄され、司法的強制の原則の下で行政行為の司法的執行の考え方を容認したものと許しうる。そして、本件のような不作為義務において義務違反を継続する場合、現行法下における行政法上の義務の履行確保手段には、有効な手段は存しない。実質的にみても、私人が法律や条例に基づく義務を履行せず、行政主体が行政執行等の自力救済により公益を図ることができない場合、その義務の履行を裁判所に求めることは何ら不合理なことでない。逆に行政主体がこれを放置することは、行政上弊害が生じ公益に反する結果となる。

(二) 被告の主張
[47] 原告自身、本件条例を行政指導条例と観念していたことに鑑みれば、本件条例8条の命令は行政指導の一環にすぎないものと解されるうえ、本件条例には違反者に対して行政代執行を採ることができる等の強制手段を定めた規定は存在しない。このようなことからすれば、右命令に基づき義務履行請求権が発生するものではないと解すべきである。
 証拠(甲1、2、3の1、2、4ないし14、31、36の2及び証人釜本孝彦)によれば、以下の事実が認められる。
[48](一) 原告は、兵庫県の東端に位置し、総面積1万0189ヘクタール、人口約20万5000人(平成6年2月1日現在)の地方自治法上の普通地方公共団体である。総面積1万0189ヘクタールのうち、市街化調整区域が7695ヘクタール、市街化区域が2494ヘクタールである。したがって、総面積の約4分の3が市街化調整区域であり、残りの約4分の1の市街化区域のうち、9割近くが住居系の地域である。
[49](二) 原告は、昔から歌劇と温泉の町といったイメージを有している。実際、宝塚音楽学校、宝塚造形芸術大学及び日本で唯一演劇科が設置されている公立高校である宝塚北高校が存在するほか、宝塚市主催にかかる「宝塚ベガ音楽コンクール」、「ミュージカルフェスティバル」及び「宝塚国際室内合唱コンクール」が開催されるなど芸術的な色彩を有している。また、その北部には、六甲山系及び長尾山系といった山並みを有し、その中心には武庫川が流れており、豊かな自然環境を特徴としている。
[50](三) 原告は、昭和46年以来、3次にわたり良好な住宅都市づくりを基本目標として町づくりを進めてきた。昭和46年度からの第1次総合計画では「自然と調和する清らかで明るい住宅都市」を町づくりの目標とし、昭和56年度からの第2次総合計画では「自然とこころのゆたかな住宅都市」を、平成3年度からの第3次総合計画では「自然とこころのゆたかな緑住文化都市の創造」を目標として総合計画を策定した。
[51](四) 原告は、このような基本目標に基づく町づくりを進める施策を実施するにあたり、昭和57年7月に、「宝塚市環境基本条例」を制定した。この条例は、環境に関する施策の基本となる事項を定めることにより、市民の快適かつ文化的な生活の確保に資することを目的とするものである。そして、同年10月には、この条例の規定に基づき、「宝塚市自然環境の保全と緑化の推進に関する条例」、「宝塚市都市の清潔に関する条例」及び「宝塚市環境紛争の処理に関する条例」を制定した。
[52](五) 本件条例は、昭和58年1月にもちあがった宝塚市小浜3丁目におけるパチンコ店建設計画に対して、地域住民が、パチンコ店は青少年の非行化を招き、犯罪の温床になりかねないとして反対運動を行ったことを契機に、同年8月2日に制定された。なお、右パチンコ店は、近隣商業地域に区域を縮小して建設された。
[53] 本件条例には、「この条例は、宝塚市環境基本条例第5条の規定に基づき、市内におけるパチンコ店等、ゲームセンター及びラブホテルの建築等について必要な規制を行うことにより、良好な環境を確保することを目的とする。」という目的規定(第1条)が置かれている。
[54] 憲法94条及び地方自治法14条1項は、普通地方公共団体の条例制定権を根拠づけるとともにその範囲と限界を定めたものであるから、普通地方公共団体が制定する条例は、法令に違反することができず、法令に違反するような場合はその効力を有しない。
[55] ところで、条例が法令に違反するかどうかを判断するには、両者の対象事項と規定文言のみの対比のみならず、各々の趣旨、目的、内容及び効果を比較したうえ、法令が当該規定により全国的に一律に同一内容の規制を施す趣旨かどうかを検討し、両者の間に矛盾抵触があるかどうかを見極めなければならない。

2 両者の目的について
[56](一) 風営法は、昭和59年の改正により、名称も「風俗営業等取締法」から、現行の「風俗営業等の規制及び業務の適正化に関する法律」と改められ、それまで各地方公共団体の施行条例で区々的に定められていた許可の要件、手続等が法律事項とされ、風俗営業の遵守事項等についても基本的な規定を定め、禁止行為については罰則も用意された。
[57](二) ところで、風営法は、右改正によって初めて目的を規定し、明確にした。風営法1条によれば、風営法は善良な風俗と清浄な風俗環境を保持、少年の健全な育成に障害を及ぼす行為の防止のため、風俗営業等の規制を行うという消極的、警察的な目的を有すると同時に、健全な風俗営業が国民に社交、憩い、娯楽の場を提供するという積極的な役割を果たすことから、業務の適正化を促進する等の措置を講じて風俗営業の健全化を図るという積極的な目的も有していると解される。そして,県条例も風営法の施行に必要な事項を定めるものとしており(同条例1条)、目的は風営法と同じである。
[58](三) 一方、本件条例は、前記一で認定のとおり、原告の芸術的な色彩と豊かな自然環境という特色を保全、推進して良好な住宅都市づくりを基本目標とする一連の環境保全条例の一つとして位置付けられ、その1条からも良好な住宅、自然及び文化環境の保持という目的を有していると認められるものの、パチンコ店が青少年に悪影響を及ぼし、犯罪の温床にもなりかねないとする地域住民の反対運動を契機として制定された経過もある。
[59](四) 本件条例の制定経過、風営法の改正経過を比較してみれば、風俗環境の保持も、広く住宅、自然及び文化教育環境の保持の一部であると考えられ、したがって、風営法と本件条例の目的は、相当な部分で共通し、重なり合うものというべきである。

3 両者の規制方法について
[60](一) 風営法の規制方法は、風俗営業を営もうとする者は、公安委員会の許可を受けなければならない(3条)とする営業規制である。他方、本件条例の規制方法は、パチンコ店等の建築等をしようとする者は、市長の同意を得なければならない(3条)とする建築規制である。しかし、本件条例は、建築禁止地区を規定する(4条)ことにより、実質的にはその営業禁止地区を規定している。したがって、両者の規制方法は実質的には重なり合うと解することができる。
[61](二) そのうえ、本件条例によれば、宝塚市長は、都市計画法上の商業地域以外の用途地域においては、パチンコ店建築について一律にこれを不同意とする(4条)もので、例外がなく、極めて厳しい規制である。

4 風営法の昭和59年改正について
[62](一) 昭和23年に制定された風俗営業等取締法(以下「取締法」という)は、風俗営業として3つの営業を規定し、風俗営業を営む者は都道府県又は市町村の公安委員会の許可を受けるとするとともに、風俗営業の規制が各地方の実情に応じてなされてきたところから、風俗営業についての規制を都道府県の条例に委ねていた。取締法は、その時々の風俗環境の変化や少年非行の状況に対応して数次の改正を経てきたが、昭和47年以降実質的な改正が行われなかったこともあって、風俗環境の急激な変化に対応できず、風俗営業の規制の内容が地方によってまちまちであり、全国的な統一を図る必要があった。
[63] そこで昭和59年に抜本的な改正がなされ、風営法は、前記のとおり、目的を規定し、これを明確にするとともに、従来都道府県の条例により区々定められていた風俗営業の場所的規制が、政令に基準を設けることにより全国的に統一された。また風営法はその目的の一つとして営業区域の規制を掲げ(1条)、風俗営業の場所的規制として、「良好な風俗環境を保全するため特にその設置を制限する必要があるものとして政令で定める基準に従い都道府県の条例で定める地域内にあるとき」には、「許可してはならない」(4条2項2号)と定め、右規定を受けた政令は条例で指定しうる地域の基準を規定し、「制限地域の指定は、風俗営業の種類、態様その他の事情に応じて、良好な風俗環境を保全するために必要最小限のものであること」と規定している(風営法施行令6条3号)。そして右規定を受けた県条例は、準工業地域につき、学校、図書館又は保育所の敷地から100メートル以内の地域、病院又は有床診療所の敷地から70メートルの敷地内では、パチンコ店の建築を許可しないとしている。また風営法には、風俗営業の場所的規制に関し、市町村の条例に委任する旨の規定は存しない。
[64](二) そうすると、風営法は昭和59年の改正により、風俗営業の場所的規制について全国的に一律に施行されるべき最高限度の規制を定めたものであるから、当該地方の行政需要に応じてその善良な風俗を保持し、あるいは地域的生活環境を保護しようとすることが、本来的な市町村の地方自治事務に属するとしても、もはや右目的を持って、市町村が条例により更に強度の規制をすることは、風営法及び県条例により排斥されるというべきである。
[65](三) この点、原告は、風営法の規制は全国的、全国民的見地からする規制の基準を示すものであり、市町村が独自の規制を行うことを否定するものでない旨主張する。しかし、風俗営業の場所的規制は、憲法22条1項で保障する職業選択の自由を制約するものである。しかも、風営法の規制方法は許可制であり、単なる職業活動の内容及び態様に対する規制に比べ、職業選択の自由そのものを制限する強力な規制である。また、同法4条の基準が満たされる場合には、公安委員会は風俗営業の許可をしなければならないと解されている。したがって、風営法及び県条例は、風俗営業の場所的規制に関し、立法により規制しうる最大限度を示したものであり、市町村が独自の規制をなすことを予定していないと解するのが相当である。よって、原告の右主張は採用できない。
[66] また、原告は、風営法及び県条例は、都市計画法上の用途地域の区分に応じて規制対象地域を決しているが、右規制方法は必ずしも全ての地域の実情に適合しないとして、本件条例による規制の必要性を主張する。しかしながら、都市計画法は、地方公共団体が、どのような町づくりを行うかは、都道府県知事の都市計画における用途地域の決定、変更を通じて行うという都市計画行政体系を採用しているものと解される。そして、風営法及び県条例は、右都市計画によって定められた用途地域の区分に応じて、風俗営業の場所的規制を行っている。したがって、都市計画法は、風営法及び県条例の規制が地域の実情に適合しなくなった場合、地方公共団体が都市計画における用途地域の変更を通じて、これに対応すべきことを予定しているものと解するのが相当である。しかも、後記判示のとおり、同法は、市町村が地域の実情に応じた規制をなし得るようにするため、市町村が特別用途地区の指定を行い、右地区内の建築制限を条例で定め得るとしている。したがって、原告の右主張には理由がない。
[67] また原告は、パチンコ店営業による種々の弊害から自己防衛を図るため、その営業を一定の地域に限ることは合理性がある旨主張する。確かに、パチンコ店営業が環境に与える影響は、当該地域住民の風習、感覚等により異なりうることは否定できないが、パチンコ店営業に対する規制は、射倖心の抑制とパチンコ店営業に伴って生じる生活環境への悪化の防衛という両面を有するものであり、射倖心の抑制・禁止という観点からみるとその規制は国家的規制に馴染むものであり、その生活環境に及ぼす影響についても、法的取扱いを異にするような地域的特殊性があるとは認められない。
[68] さらに、原告は、条例の適法性を検討するにあたり、「上乗せ」条例と「横出し」条例を区別する必要があるところ、本件条例は、広く適法とされている「横出し」条例であるから、風営法及び県条例に反しない旨主張する。しかし、本件条例も、風俗営業の営業場所という風営法及び県条例と同一の対象についてより強度な規制をなすものであるから、「上乗せ」条例と解することもできる。そもそも「上乗せ」条例も「横出し」条例も、法律と同一目的から法律より高度の規制をなすという点では共通している。したがって、その適法性を検討するにあたっては、当該法律が、条例が同一目的からより高度の規制をなすことを許容しているかを検討する必要があり、両者の区別には意味がない。よって、原告の右主張には理由がない。

[69] したがって、風営法及び県条例と趣旨、目的が相当部分重なり、同法及び同条例より更に強度の規制をする本件条例は、風俗営業の場所的規制に関し、市町村が条例により独自の規制をすることを排斥する風営法及び県条例に違反するといわざるを得ない。
1 両者の目的について
[70] 建築基準法全体の目的は、建築物の敷地、構造、設備及び用途に関する最低の基準を定めて、国民の生命、健康及び財産の保護を図り、もって公共の福祉の増進に資する(1条)ことにある。そして、これと同時に用途地域による建築規制は、用途地域を定めて計画的な市街化を図り、健康で文化的な都市生活及び機能的な都市活動を保護し、良好な都市環境を保護する目的を有している。他方、本件条例は、前項2(三)で認定したように、良好な住宅環境、自然環境及び文化、教育環境を保持するという目的も有している。そして、住宅環境、自然環境及び文化、教育環境は、都市環境の一部と解されるから、両者の目的は一部において重なり合うということができる。

2 両者の規制方法について
[71](一) 建築基準法も本件条例も共に当該建築物の建築可能区域に関する規制であり(建築基準法48条、本件条例4条)、両者の規制方法は用途地域を用いて建築規制する点で共通している。
[72](二) しかしながら、建築基準法は、本件土地が所在する準工業地域内においては、一定の種類、規模の工場等の建築を禁止しているが(同法48条10項、別表第2(ヘ)項)、パチンコ店等の建築は禁止していない。他方、本件条例は、宝塚市内においてパチンコ店の建築しようとする者は、あらかじめ市長の同意を得なければならず(3条)、市長は、右建築予定地が市街化調整区域であるとき、又は商業地域以外の用途地域であるときは同意しないこととし(4条)、実質的には準工業地域内でのパチンコ店の建築を認めないもので、本件条例の規制は厳しくなっている。

[73]3(一) 都市及びその周辺部のように、多数の建築物等の施設が設置され、人口が密集している地域において、土地の利用目的を定めずに施設の設置を自由に許すと、様々な不都合が生じることになる。例えば、住宅街に騒音、煤煙を発する工場や風俗営業を営む建物が建築されると、付近一帯の良好な居住環境が害されることになる。このような不都合を防止するためには、一定の地域には一定種類、用途の建築物しか建築できないように公権力をもって規制する必要がある。そこで、都市計画法は、都市計画区域について、住居地域、商業地域あるいは工業地域等、同法で定める種類の用途地域で必要なものを都道府県知事が都市計画をもって定めるものとしている(8条、9条、15条1項2号参照)。そして、建築基準法は、右規定を受けて、各用途地域内では、それぞれ法定の種類の建築物しか建築できない旨規定し(48条)、都市計画における土地利用計画の実現を図ると共に、市街地を構成する各建築物、各用途相互間の悪影響を防止し、それぞれの用途に応じた充分な機能を発揮させ、もって市街地の環境を保全、整備しようとしている。
[74] 以上によれば、都市計画法及び建築基準法は、住居地域、商業地域等の用途地域ごとに建築可能な建築物をあらかじめ定め、地方公共団体が、どのような町づくりを行うかは、都市計画における用途地域の決定、変更を通じて行うという都市計画行政体系を採用しているものと解される。また、建築基準法において、一定の事項に関しては、地方公共団体の条例において同法と異なる規制を行うことができる旨規定している(40条、41条等)のに対して、用途地域内における建築物の制限については、地方公共団体の条例において同法と異なる規制をなし得るとした規定は存在しない。さらに、地方自治法2条3項18号は、土地利用規制は、「法律の定めるところにより」地方公共団体の事務に属するとし、都市計画法は、用途地域等の地域地区内における建築物等に関する制限は、同法で特に定めるもののほか、別に「法律で」定めるとしている(10条)。したがって、建築基準法は、用途地域内における建築物の制限について、地方公共団体の条例で独自の規制をなすことを予定していないと解するのが相当である。
[75](二) この点、原告は、地域の実情は長い時間を掛けて徐々に変容していくものであること、特別用途地区が設定できる地域は限定されていることから、町づくりは、用途地域の変更や特別用途地区の指定のみにより行うのでは不充分であり、地域の実情に即応して制定できる条例によっても行うことができる旨主張する。
[76] しかし、都市計画法は、同法に規定する12種の用途地域による規制が、全国一律に適用されるものであり、この規制だけでは必ずしも地域の実情に充分に対応しきれないことを考慮して、右規制を補完し、地方の実情に即した土地利用の増進、環境の保護等を図るため、特別用途地区を定めている(8条2号、9条13号、同法施行令3条)。そして、右地区内の建築制限は、建築基準法に基づいて条例で定めることになっている(同法49条、50条)。したがって、地方公共団体の町づくりは、あくまで都市計画における用途地域の決定、変更及び特別用途地区の設定を通じて行うこととしており、右規制につき、法律の委任を受けない条例が、地域の実情に応じた独自の規制をなすことを予定していないと解するのが相当である。よって、原告の右主張には理由がない。
[77] また、原告は、建築基準法が用途地域内における建築物の制限につき、条例で独自の規制をなすことを許容している根拠として、同法の平成4年改正により、都市計画区域以外の建築物に係る制限を条例で定めることができるとされた(68条の9)ことを挙げる。しかし、同法が、建築物の制限につき条例による独自の規制を許容しているならば、わざわざそのことを定めた規定を設けて、条例に委任する必要はないはずであり、右改正は、むしろ、法が法律の委任がない限り、条例で建築物の制限につき独自の規制をなすのを予定していないことを裏付けるものと解するのが相当である。したがって、原告の右主張は採用できない。

[78] したがって、建築基準法と趣旨、目的が重なり、同法が認めていない用途地域内の建築制限を定める本件条例は、同法にも違反するといわざるを得ない。
[79] よって、原告の請求は、その余の点について判断するまでもなく理由がないからこれを棄却し、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法7条、民訴法89条を適用して、主文のとおり判決する。

  裁判長裁判官 將積良子  裁判官 桃崎剛
  裁判官 下村眞美は転官のため署名押印することができない。
    裁判長裁判官 將積良子
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