Home>
わたしの研究>
人事管理|
環境経営史│
モダンダンス│
写真のアメリカ経営史
|
新しい人事管理生成史
人間工学思想を視野にいれて
| |||
研究テーマ | 本研究の目的は、革新主義期のアメリカで進展した人事管理運動について、運動の担い手の思想と行動に即して再構成することによって、その特質と歴史的帰結を明らかにすることである。人事管理運動は、これを企業内の出来事に即してみれば、人事管理者たろうとする人たちによって闘われた労働問題解決策の提案競争であった。雇主を説得して自己の労務改革案を通すことによって企業内での統制範囲の拡大と地位向上を目指す、意欲的かつ野心的な、新興の専門的中間管理者層 (a new professional-managerial class) の動きが軸になっていたのである。労務部面での専門的なマネジメント・サーヴィスに対する需要は、労働市場の状態や労働運動の昂揚、あるいは分権的管理の進展や新しい生産プロセスの技術的必要性から必然的に生まれてくるわけでは必ずしもなかった。そうした需要は、少なくともこの時代のアメリカでは、意識的に創り出されたのである。専門的対応が求められる労働問題を発見して解釈し、そのための処方箋を雇主に提案する一方、専門家協会の設立や専門雑誌の発行など企業の枠を超えた情報交換網を組織し、大学と連携して管理者養成プログラムを作りあげ、当該専門職の社会的評価と威信を高めようとした。このような需要と供給両面にわたる市場開拓努力、すなわち管理の制度化と専門職化に向けた意識的な努力をすくいあげるかたちで、上記の課題に接近してみたいと思う。
分析に際しては、管理運動の担い手たちが好んで用いた「人間工学 (human engineering)」という言葉に着目する。19世紀来、驚異的な発展をとげた機械工学はもっぱらモノをあつかう術であって、ヒトをあつかう術はそれに見合う形では発展してこなかった、このギャップを埋めるためには後者を機械工学に匹敵する「科学」の位置にまで引き上げて、専門家の仕事として確立しなければならない、このような問題意識が1910年代のはじめに「人間工学」という言葉に結晶し、第一次大戦への参戦直前に、雇用管理運動の指導者たちによって人事管理の同義語として用いられるようになる。理想とする管理者像は工学的なメタファーで表現された。すなわち、求められている雇用管理者は、労働者の処遇に「科学」を適用し、人間関係を「分析」し、労使を和解に導く技術に長けた「人間技師 (human engineers)」にほかならない、と。こうして人間工学の語とその関連語は、人事管理の専門職業イデオロギーの暗喩として人口に膾炙することとなる。ところが休戦とともに、この管理運動の専門職業化戦略はおおきく揺らぎ、工学的なメタファーの人気も一気に萎んでしまう。かくも転変著しい人間工学に対する意識変化はいったい何に起因するのか。この問いを導きの糸として、管理運動の指導者や人間技師たろうとする人たちによって推進された管理の制度化と専門職化への取り組みを考察する。
引用文献
上野継義「アメリカ人事管理運動と『人間工学』の諸相 (1) (2)──人間工学ブームの盛衰──」福島大学『商学論集』第83巻第4号・富澤克美先生退職記念号 (2015年3月25日): 93-118; 第84巻第1号 (2015年6月): 39-68.
|
||
キーワード |
|
||
論 文 |
|
||
学会報告・科研費報告書 |
|
||
関連サイト | |||
Home> わたしの研究> 人事管理| 環境経営史│ モダンダンス│ 写真の経営史 |