固定資産税賦課決定違法国賠訴訟
上告審判決

損害賠償請求事件
最高裁判所 平成21年(受)第1338号
平成22年6月3日 第一小法廷 判決

上告人 (控訴人  原告) A冷蔵株式会社
          代理人 河内尚明 ほか

被上告人(被控訴人 被告) 名古屋市
          代理人 井上利之

■ 主 文
■ 理 由

■ 裁判官宮川光治の補足意見
■ 裁判官金築誠志の補足意見

■ 上告代理人河内尚明ほかの上告受理申立て理由


 原判決を破棄する。
 本件を名古屋高等裁判所に差し戻す。

[1] 以下に摘示する地方税法及び固定資産評価基準(昭和38年自治省告示第158号。以下「評価基準」という。)の規定ないし定めは,特に断りのない限り現行のものをいう。なお,昭和62年1月1日から平成18年12月31日までの間に施行された地方税法及び評価基準の改正の経緯については,説示に影響しないことから,その記述を省略する。

[2] 本件は,第1審判決別紙物件目録記載の倉庫(以下「本件倉庫」という。)を所有し,その固定資産税等を納付してきた上告人が,昭和62年度から平成13年度までの各賦課決定の前提となる価格の決定には本件倉庫の評価を誤った違法があり,上記のような評価の誤りについて過失が認められると主張して,所定の不服申立手続を経ることなく,被上告人を相手に,国家賠償法1条1項に基づき,上記各年度に係る固定資産税等の過納金及び弁護士費用相当額の損害賠償等を求めている事案である。

[3]2(1) 地方税法によれば,固定資産税の納税者は,その納付すべき当該年度の固定資産税に係る固定資産について固定資産課税台帳に登録された価格について不服がある場合においては,原則として価格の公示の日から納税通知書の交付を受けた日後60日までの間(ただし,平成11年法律第15号による改正前においては原則として毎年3月1日から同月30日までの間,平成14年法律第17号による改正前においては原則として毎年3月1日から納税通知書の交付を受けた日後30日までの間)において,固定資産評価審査委員会に審査の申出をすることができ(432条1項本文),同委員会の決定に不服があるときは,その取消しの訴えを提起することができる(434条1項)。同委員会に審査を申し出ることができる事項について不服がある固定資産税の納税者は,同委員会に対する審査の申出及びその決定に対する取消しの訴えによってのみ争うことができる(同条2項)。なお,都市計画税(平成19年法律第4号による改正前の702条2項によれば,その課税標準である土地又は家屋の価格は,当該土地又は家屋に係る固定資産税の課税標準となるべき価格である。)の賦課徴収に関する不服申立て及び出訴についても,固定資産税の例による(702条の8(平成5年法律第4号による改正前は702条の7)第2項)。

[4](2) 市町村長は,原則として,評価基準によって固定資産の価格を決定しなければならないところ(地方税法403条1項,388条1項),評価基準は,木造家屋以外の家屋の損耗の状況による減点補正率を,原則として,非木造家屋経年減点補正率基準表(評価基準別表第13)によって求めるものとしている(第2章第3節五(ただし,平成12年自治省告示第12号による改正前においては同節三))。そして,平成20年総務省告示第680号による改正前の同表の7は,工場,倉庫,発電所,変電所,停車場及び車庫用建物について用途別に区分して経年減点補正率(家屋の構造区分に従い,通常の維持管理を行うものとした場合にその年数の経過に応じて通常生ずる減価を基礎とする減点補正率をいう。)を定めているところ,これを適用すると,一般用の倉庫等は,冷凍倉庫用の建物や塩素その他の著しい腐食性を有する液体又は気体の影響を直接全面的に受ける建物等(以下「冷凍倉庫等」という。)よりも高く評価されることになっている。

[5] 原審の確定した事実関係等の概要は,次のとおりである。

[6](1) 平成18年度に至るまで,本件倉庫は,一般用の倉庫に該当することを前提にして評価され,昭和62年度から平成13年度までのその価格並びに固定資産税及び都市計画税(以下「固定資産税等」と総称する。)の税額は,第1審判決別表2の「実際の評価額及び税額」欄記載のとおり決定された(以下,これらの決定を併せて「本件各決定」という。)。上告人は,本件各決定に従って固定資産税等を納付してきた。

[7](2) 名古屋市長から固定資産税等の賦課徴収に関し権限の委任を受けていた名古屋市港区長は,平成18年5月26日付けで,上告人に対し,本件倉庫が冷凍倉庫等に該当するとして,平成14年度から同18年度までの登録価格を修正した旨を通知した上,上記各年度に係る本件倉庫の固定資産税等の減額更正をした。その後,上告人は,同14年度から同17年度までの固定資産税等につき,納付済み税額と上記更正後税額との差額として389万9000円を還付された。

[8](3) 上告人は,本件訴えの提起に至るまで,本件倉庫の登録価格に関し,固定資産評価審査委員会に対する審査の申出を行ったことはない。

[9] 原審は,上記事実関係等の下において,次のとおり判断して,上告人の請求を棄却すべきものとした。

[10](1) 国家賠償法に基づいて固定資産税等の過納金相当額を損害とする損害賠償請求を許容することは,当該固定資産に係る価格の決定又はこれを前提とする当該固定資産税等の賦課決定に無効事由がある場合は別として,実質的に,課税処分を取り消すことなく過納金の還付を請求することを認めたのと同一の効果を生じ,課税処分や登録価格の不服申立方法及び期間を制限してその早期確定を図った地方税法の趣旨を潜脱するばかりか,課税処分の公定力をも実質的に否定することになって妥当ではない。そして,評価基準別表第13の7の冷凍倉庫等に係る定めが一義的なものではないことなどに照らすと,本件各決定に無効とすべき程度の瑕疵はない。

[11](2) なお,評価事務上の物理的,時間的な制約等を考慮すれば,地方税法408条所定の実地調査は,特段の事情のない限り,外観上固定資産の利用状況等を確認し,変化があった場合にこれを認識する程度のもので足りるところ,本件においてそのような特段の事情があったといえるような事実がうかがわれないことなどからすれば,本件各決定が過失に基づいてされたということもできない。

[12] しかしながら,原審の上記判断は是認することができない。その理由は,次のとおりである。

[13](1) 国家賠償法1条1項は,「国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が,その職務を行うについて,故意又は過失によって違法に他人に損害を加えたときは,国又は公共団体が,これを賠償する責に任ずる。」と定めており,地方公共団体の公権力の行使に当たる公務員が,個別の国民に対して負担する職務上の法的義務に違背して当該国民に損害を加えたときは,当該地方公共団体がこれを賠償する責任を負う。前記のとおり,地方税法は,固定資産評価審査委員会に審査を申し出ることができる事項について不服がある固定資産税等の納税者は,同委員会に対する審査の申出及びその決定に対する取消しの訴えによってのみ争うことができる旨を規定するが,同規定は,固定資産課税台帳に登録された価格自体の修正を求める手続に関するものであって(435条1項参照),当該価格の決定が公務員の職務上の法的義務に違背してされた場合における国家賠償責任を否定する根拠となるものではない。
[14] 原審は,国家賠償法に基づいて固定資産税等の過納金相当額に係る損害賠償請求を許容することは課税処分の公定力を実質的に否定することになり妥当ではないともいうが,行政処分が違法であることを理由として国家賠償請求をするについては,あらかじめ当該行政処分について取消し又は無効確認の判決を得なければならないものではない(最高裁昭和35年(オ)第248号同36年4月21日第二小法廷判決・民集15巻4号850頁参照)。このことは,当該行政処分が金銭を納付させることを直接の目的としており,その違法を理由とする国家賠償請求を認容したとすれば,結果的に当該行政処分を取消した場合と同様の経済的効果が得られるという場合であっても異ならないというべきである。
[15] そして,他に,違法な固定資産の価格の決定等によって損害を受けた納税者が国家賠償請求を行うことを否定する根拠となる規定等は見いだし難い。
[16] したがって,たとい固定資産の価格の決定及びこれに基づく固定資産税等の賦課決定に無効事由が認められない場合であっても,公務員が納税者に対する職務上の法的義務に違背して当該固定資産の価格ないし固定資産税等の税額を過大に決定したときは,これによって損害を被った当該納税者は,地方税法432条1項本文に基づく審査の申出及び同法434条1項に基づく取消訴訟等の手続を経るまでもなく,国家賠償請求を行い得るものと解すべきである。

[17](2) また,記録によれば,本件倉庫の設計図に「冷蔵室(-30℃)」との記載があることや本件倉庫の外観からもクーリングタワー等の特徴的な設備の存在が容易に確認し得ることがうかがわれ,これらの事情に照らすと,原判決が説示するような理由だけでは,本件倉庫を一般用の倉庫等として評価してその価格を決定したことについて名古屋市長に過失が認められないということもできない。

[18] 以上と異なる見解の下に,上告人の請求を棄却すべきものとした原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨はこの趣旨をいうものとして理由があり,原判決は破棄を免れない。そして,本件各決定に際し本件倉庫を一般用の倉庫として評価したことは名古屋市長が上告人に対する職務上の法的義務に違背した結果といえるか否か,仮に違背していたとする場合における上告人の損害額等の点について更に審理を尽くさせるため,本件を原審に差し戻すのが相当である。

[19] よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。なお,裁判官宮川光治,同金築誠志の各補足意見がある。


 裁判官宮川光治の補足意見は,次のとおりである。

 行政救済制度としては,違法な行政行為の効力を争いその取消し等を求めるものとして行政上の不服申立手続及び抗告訴訟があり,違法な公権力の行使の結果生じた損害をてん補するものとして国家賠償法1条1項による国家賠償請求がある。両者はその目的・要件・効果を異にしており,別個独立の手段として,あいまって行政救済を完全なものとしていると理解することができる。後者は,憲法17条を淵源とする制度であって歴史的意義を有し,被害者を実効的に救済する機能のみならず制裁的機能及び将来の違法行為を抑止するという機能を有している。このように公務員の不法行為について国又は公共団体が損害賠償責任を負うという憲法上の原則及び国家賠償請求が果たすべき機能をも考えると,違法な行政処分により被った損害について国家賠償請求をするに際しては,あらかじめ当該行政処分についての取消し又は無効確認の判決を得なければならないものではないというべきである。この理は,金銭の徴収や給付を目的とする行政処分についても同じであって,これらについてのみ,法律関係を早期に安定させる利益を優先させなければならないという理由はない。原審は,前記のとおり,固定資産税等の賦課決定のような行政処分については,過納金相当額を損害とする国家賠償請求を許容すると,実質的に課税処分の取消訴訟と同一の効果を生じさせることとなって,課税処分等の不服申立方法・期間を制限した趣旨を潜脱することになり,課税処分の公定力をも否定することになる等として,課税処分に無効原因がない場合は,それが適法に取り消されない限り,国家賠償請求をすることは許されないとしている。しかしながら,効果を同じくするのは課税処分が金銭の徴収を目的とする行政処分であるからにすぎず,課税処分の公定力と整合させるために法律上の根拠なくそのように異なった取扱いをすることは,相当でないと思われる。


 裁判官金築誠志の補足意見は,次のとおりである。

[1] 行政処分が違法であることを理由とする取消訴訟と,違法な行政処分により損害を受けたことを理由とする国家賠償訴訟とでは,制度の趣旨・目的を異にし,公定力も処分要件の存否までは及ばないから,一般的には,取消判決を経なければ国家賠償訴訟を提起できないとか,取消訴訟の出訴期間を徒過したときはもはや国家賠償請求はできないなどと解すべき理由はない。しかし,課税処分のように,行政目的が専ら金銭の徴収に係り,その違法を理由とする取消訴訟と国家賠償訴訟の勝訴判決の効果が実質的に変わらない行政処分については,取消しを経ないで課税額を損害とする国家賠償請求を認めると,不服申立前置の意義が失われるおそれがあるばかりでなく,国家賠償訴訟を提起することができる間は実質的に取消訴訟を提起することができるのと同様になって,取消訴訟の出訴期間を定めた意味がなくなってしまうのではないかという問題点があることは否定できない。
[2] このうち不服申立前置との関係については,固定資産の価格評価は,法的な側面,経済的な側面,技術的な側面等,専門的判断を要する部分が多く,専門的・中立的機関によって審査するにふさわしい事柄であり,また,大量の同種処分が行われるものであるから,固定資産評価審査委員会の審査に強い効力を与えて,その早期確定を図ることは合理的と考えられ,国家賠償訴訟によって同委員会の審査が潜脱されてしまうのは不当であるように見える。しかし,こうした問題は,取消訴訟に前置される他の不服申立てに係る審査機関にも多かれ少なかれ共通するものであり,同委員会を特に他の不服申立てに係る審査機関と区別するだけの理由はないし,固定資産課税台帳に登録された価格の修正を求める手続限りの不服申立前置であっても制度的意義を失うものではないから,不服申立てを経ない国家賠償請求を否定する十分な理由になるとはいえない。特に,賦課課税方式を採用する固定資産税等の場合,申告納税方式と異なり,納税者にとってその税額計算の基礎となる登録価格の評価が過大であるか否かは直ちには判明しない場合も多いと考えられるところ,前記のとおり,審査の申出は比較的短期間の間に行わなければならないものとされているため,上記期間の経過後は国家賠償訴訟による損害の回復も求め得ないというのでは,納税者にとっていささか酷というべきである。本件各決定のように,市町村内の他の家屋の登録価格等を参照することができるような手続(地方税法416条1項)が設けられていなかった時期に賦課されたものに関してはなおさらである。

[3] 取消しを経ないで課税額を損害とする国家賠償請求を認めると,取消訴訟の出訴期間を延長したのと同様の結果になるかどうかは,取消しと国家賠償との間で,認容される要件に実質的な差異があるかどうかの問題である。
[4](1) まず,国家賠償においては,取消しと異なり故意過失が要求され,また,その違法性判断について当裁判所の判例(最高裁平成元年(オ)第930号,第1093号同5年3月11日第一小法廷判決・民集47巻4号2863頁等)はいわゆる職務行為基準説を採っているから,この点でも要件に差異があることになる。もっとも,こうした要件上の差異が,実際上どの程度の結果の違いをもたらし得るかについては,見方の分かれるところかもしれない。しかし,取消しが認められても国家賠償は認められない場合があり得るということだけは,間違いなくいい得る。
[5](2) 固定資産税の課税物件は膨大な数に上り,その調査資料を長期にわたって保存しておくことが困難な場合もあるのではないかと思われるので,課税処分から長期間が経過しても国家賠償請求ができるとした場合,立証責任の問題は,より重要かもしれない。
[6] 課税処分の取消訴訟においては,原則的に,課税要件を充足する事実を課税主体側で立証する責任があると解すべきであるから,本件固定資産税についても,一般用倉庫として経年減点補正率を適用して評価課税する以上,本件倉庫が冷凍倉庫用のものではなく,一般用のものであることについて,課税主体である被上告人側に立証責任があることになる。これに対し,国家賠償訴訟においては,違法性を積極的に根拠付ける事実については請求者側に立証責任があるから,本件倉庫が一般用のものではなく,冷凍倉庫用のものであることを請求者である上告人側が立証しなければならないと解される。上告人側が同事実を立証することは,損害額を明らかにするためにも必要である。立証責任について,課税処分一般におおむねこうした分配振りになるとすれば,課税処分から長期間が経過した後に国家賠償訴訟が提起されたとしても,課税主体側が立証上困難な立場に置かれるという事態は生じないと思われる。

[7] 以上のとおり,取消しを経ないで課税額を損害とする国家賠償請求を認めたとしても,不服申立前置の意義が失われるものではなく,取消訴訟の出訴期間を定めた意義が没却されてしまうという事態にもならないものと考える。

(裁判長裁判官 宮川光治 裁判官 櫻井龍子 裁判官 金築誠志 裁判官 横田尤孝 裁判官 白木勇) 第1 本理由書の要旨
 1.法令・判例違反――取消訴訟を経ない国家賠償請求訴訟の可否
 2.審理不尽・事実誤認・法令解釈の誤り
  (1) 「冷凍倉庫」の意義
  (2) 実地調査と使用実態
  (3) 地方税法第417条
 3.まとめ
第2 事件の概要と同種事件の判決
 1.課税誤りの発覚
 2.市町村の返還状況
 3.過徴収の原因と市町村の対応
 4.各地における訴訟と判決
  (1) 名古屋市A事件
  (2) 名古屋市B事件(本件)
  (3) 大阪市A事件
  (4) 大阪市B事件及び堺市の事件
  (5) 神戸市A事件
  (6) 神戸市B事件(集団)
  (7)その他
 5.原判決の異質さ
第3 取消訴訟を経ない国家賠償請求訴訟の可否
 1.原判決の内容
 2.原判決の誤り(1)――同種事件の判決
 3.原判決の誤り(2)――過徴収金返還要綱
  (1) 過徴収金返還要綱と国家賠償法の関係
  (2) 「名古屋市固定資産税等支払要綱」
 4.最高裁平成16年12月17日判決
 5.最高裁平成18年10月12日不受理決定
 6.東京高裁平成18年11月15日判決(原審横浜地裁平成18年7月19日)
第4 審理不尽・事実誤認
 1.「冷凍倉庫」の意義
  (1) 定義の存否
  (2) 文理または社会通念による確定の可否
  (3) 定義をしなかったこと自体の問題
  (4) 名古屋市の主張する定義の不自然性
 2.実地調査と名古屋市家屋事務取扱要領
 3.地方税法第417条
第5 まとめ
1.法令・判例違反――取消訴訟を経ない国家賠償請求訴訟の可否
[1] 原判決が、法律の明文の根拠もないのに、取消訴訟等を経ていない国家賠償請求訴訟を極めて限定的な場合にしか認めないのは、憲法17条の趣旨及び最高裁平成16年12月17日判決並びに同種事件に関する多数の判決に反している。
[2] また、原判決は、ほとんどの市町村が国家賠償法の適用を前提として「過徴収金返還要綱」を定めている実態を無視するものであり、法令の解釈に関する重大な事項を含んでいる(民事訴訟法第318条第1項)。

2.審理不尽・事実誤認・法令解釈の誤り
(1) 「冷凍倉庫」の意義
[3] 他市では「冷凍倉庫」の定義があったのに、原判決は、名古屋市がかかる定義を有していた可能性を、検討さえもしていない。定義があったのなら、名古屋市の主張すなわち原審の認定は、すべて前提が崩れる。
[4] もし、用語が明確でなかったのなら、他市のように定義すべきであったし、同種事件に関する別の名古屋高裁判決では、「冷凍倉庫」の意義は、社会通念等によっても確定可能とされている。
[5] また、原判決は、名古屋市が誤りなく冷凍倉庫と認定していた事例があったと主張しているのに、それと本件がどのように異なるのかも、吟味していない。
[6] 原判決は、名古屋市の主張するような定義がどこに記載されていたのかさえ確認していないし、しかも、その定義は、抽象的かつ複雑に過ぎ、実務での使用に堪えなかったのに、原判決は、かかる吟味もしていない。
(2) 実地調査と使用実態
[7] 原判決は、自ら、平成18年に名古屋市が行った実地調査の結果を認定しながら(原判決第2の1(2)カ、同キ)、「本件では実地調査の実施の有無は不明であるが,・・・特段の事情はうかがわれない」という(原判決第3の1(4))。
[8] しかし、実地調査の有無さえ不明のまま、どのように「特段の事情」の有無を判断したというのか。また、原判決自ら、実地調査の結果を認定しながら「調査の有無は不明」とするのは,矛盾を来している。
[9] しかも、原判決は、本件建物の使用実態を問題としながら(原判決第3の1(2)イ(エ))、
「地方税法408条に定める実地調査は,その評価事務上の物理的,時間的な制約等を考慮すれば,必ずしもすべての固定資産について細部まで行う必要があるものではなく,」(原判決第3の1(4))
とするのは、自己矛盾であろう。名古屋市「家屋評価事務取扱要領」(乙12)においても、
「当該家屋の使用の実態にかかわらず、当該家屋の築造形態によってその本来的な利用形態を判断して、その該当する用途を判断する」
としているのである。
[10] 原判決は、家屋評価の法令認識をも誤り、自己矛盾を来している。
(3) 地方税法第417条
[11] 原判決は、名古屋市が、地方税法第417条第1項により、本件倉庫の平成18年度以前の評価を修正した、と認めている(原判決第2の1(2)キ)。これは、同条の文言上から、登録価格に「重大な錯誤」があったことを意味している。
[12] ところが、原判決は、
「港区長が基準表7(2)を適用しなかったことが、直ちに不合理であるということはできない。」
としている(原判決第3の1(2)イ(エ))。
[13] 原判決が言うように、本件倉庫に関する従前の名古屋市の評価が不合理でなかったのなら、名古屋市が平成18年度以前の評価額を変更する必要はないし、まして還付すること自体が違法である。
[14] 原判決は、自ら矛盾しており、地方税法417条の意味を理解していないと言われても仕方がない。

3.まとめ
[15] 原判決は、あるいは、本事件の広がりに鑑み、市町村の徴税事務あるいは財政上の問題に配慮しようとしたのかもしれない。
[16] しかし、制度の瑕疵や市町村の財政難は政治によって解決されるべきであり、政治的意図をもって事実認定や法令解釈を歪曲し、矛盾を含む判決によって事件を隠蔽するのは、不正義である。
[17] 同種事件7つの判決で、たった一つ、原判決だけが、同種事件で納税者の訴えを門前払いとし、他はすべて納税者の訴えを認容した。
[18] 申立人は、本事件においても、正義のなされることを望むものである。
[19] 本件は、平成18年に発覚した「冷凍倉庫」の固定資産評価における経年減点補正率適用誤りに起因する固定資産税・都市計画税の過徴収相当額等を損害として、国家賠償法上の損害賠償請求を求めるものである。
[20] 同種の事件は全国で多数生じており、その全体像及び同種事件でなされた他の判決を把握することにより、原判決の問題点が、よりはっきりする。

1.課税誤りの発覚
[21] 市町村が建物所有者に固定資産税及び都市計画税を賦課するにあたっては、当該建物の評価を行わなければならないが、評価の基準として国の定める固定資産評価基準によれば、「冷凍倉庫」については、通常の「倉庫」とは異なる経年減点補正率が適用され、より早く減額評価されるように定められている。
[22] ところが、平成18年になって、名古屋市で、ある冷凍倉庫の評価に際し、誤って、通常の倉庫としての経年減点補正率を適用しており、このため、評価額が過大となって、固定資産税及び都市計画税を過大に徴収していたことが発覚した(甲11)。この報告を受けた社団法人日本冷蔵倉庫協会が、同協会会員の所在する市町村に対して、同様の課税誤りがないかどうかを照会したところ、多数の市町村で、課税誤りを生じていたことが判明した(甲24)。
[23] 課税誤りが確認された市町村では、地方税法及び各市町村の過徴収税返還要綱などに基づいて納税者に過徴収金を返還しているが、返還の範囲は市町村によって大きく異なっている。全額あるいは20年分を返還した市町村も少なくないが、少なからぬ市町村が、過去5年分あるいは10年分しか返還していない。このため、各地で返還を求める訴訟が起きており、すでに判決に至った訴訟も7件存在する。
[24] 本件も、かかる訴訟の一つであり、平成19年に提訴されたが、最も早く一審判決がなされ、最も早く控訴審判決が出されたものである。

2.市町村の返還状況
[25] (社)日本冷蔵倉庫協会が実施した調査(甲24は平成18年調査のもの、最新のものは別紙資料1参照)によれば、過徴収がなかった、と回答した市町村は56件で、調査結果全体の16.2%にあたる。
[26] 過徴収が確認された市町村のうち、全期間の過徴収金を還付等した市町村は15件で、全体の4.3%、20年分の過徴収金を返還した市町村は43件で、12.4%、15年返還の市町村は11件で、3.2%、10年返還の市町村は124件で、35.8%となっており、72.8%の市町村が5年を超えて返還している。
[27] 5年分しか返還していない市町村(被告を含む)は88件、25.4%に過ぎないが、大規模な冷凍倉庫が多数所在する大都市が含まれている。
[28] なお、返還年数とは関係なく、市町村内部で、過徴収が確認されたケースと、適正に課税されていたケースが混在しているようであるが、それがどのような理由によって生じているかは、明らかでない。
[29] いずれの市町村も、5年分の返還根拠は地方税法であり、5年を超える返還の多くは、浦和地裁平成4年2月24日判決を機に多くの市町村で制定された「過徴収金返還要綱」である。
[30] 名古屋市においては「名古屋市固定資産税等返還金支払要綱」が存在しているが(別紙2参照)、同種事件に対して、名古屋市はこれを適用しなかった。その理由は明らかでない。
[31] 5年返還しか行わなかった市町村に対しては、冷凍倉庫業者から、より多くの返還を求めて陳情がなされた。しかし、陳情は拒否され、詳しい事情は明らかにされなかった。
[32] いったんは5年返還としながら、納税者による交渉によって、20年分の過徴収金に法定利息相当の損害金を付して返還した市町村も少なくない。兵庫県のうち西宮市、姫路市、明石市、大阪府松原市、高知県香南市などがすでに和解により解決した。
[33] 外にも、現在も複数の市町村が、話合いによって納税者に返還する旨を申し出ており、交渉中である(京都府久御山町、福岡県のうち柳川市、古賀市、みやま市、熊本県のうち天草市、八代市、佐賀県鳥栖市、鹿児島県出水市、など)。

3.過徴収の原因と市町村の対応
[34] この問題が発覚した後、課税誤りが生じた理由を、記者発表などにより説明している市町村もあるが、そこにはかなりの温度差がある。
[35] 那覇市や高松市など、認識不足であったことを認めて、(真実であるかどうかは別にして)経緯をある程度詳しく発表する市町村もあるが(甲32、甲33)、横浜市のように、単なる取扱の修正に過ぎない、と記者発表するところもあり、本当のところは記者発表のみでは、外部からはよく分からない。
[36] 少なくとも、事実として、このように、「冷凍倉庫」に対して「通常倉庫」として評価・課税していた市町村が非常に多く存在するということは、この事件が、個別の物件に関する具体的な調査の遺漏によるものではないことを意味している。一般に、市町村は、固定資産評価事務について、ある程度共通する「取扱要領」などのマニュアルを定めているが、その評価実務のプロセスにおいて、通常倉庫と異なる「冷凍倉庫」という建物区分の認識が欠如していた、あるいは徹底されていなかった、としか考えられない。
[37] しかも、多くの市町村が、納税者から指摘を受けて課税誤りを確認し、極めて短期間(1ヶ月~数ヶ月)の間に、平成14年まで遡って評価を変更し、還付処理を行った。これは、あらかじめ「冷凍倉庫」の意義がはっきりしていなければ、できないことである。
[38] 名古屋市は、全国的に同様の問題が発生していることは、「冷凍倉庫用のもの」の解釈が一義的に明らかになっていなかったことの証左である、というが(原判決第2の3(1)被告の主張ウ(イ)c)、「冷凍倉庫」の意義がはっきりしていなければ、過徴収があったかどうかさえ、判断できなかったはずであるし、「冷凍倉庫」という用語は、固定資産評価基準においては、40年以上前の昭和39年から存在していたのである。
[39] 名古屋市に至っては、最初に納税者から指摘を受けて、わずか1~2ヶ月のうちに(原判決第2の1(2)カ)申立人の倉庫について、実地調査の上、地方税法第417条(重大な錯誤ある場合の登録価格の修正)を適用して評価の変更をしているが、このことは、名古屋市内部で、大阪市や仙台市などと同様に、従前から「冷凍倉庫」の定義を有していたか、文理あるいは社会通念によって無理なく適用できるのに、納税者サイドから「冷凍倉庫」という建物区分の存在を指摘されてはじめて、自らその認識を欠いていたことに気づいたため、あわてて対応したことを示している。
[40] 各市町村の「過徴収金返還要綱」は、このような場合にこそ適用されるべきであると思われるのに、納税者の問い合わせに対し、5年返還の市町村では、返還要綱が存在することさえ、説明しないことが多い。
[41] 市町村が財政難にあることは理解するが、財政難は特定の納税者から誤って取りすぎた税を返さなくてよい理由にならないし、説明責任を果たさなくてよい理由にもならない。これでは、到底、納税者の納得が得られない。加えて、市町村間の取扱の不平等が、納税者の不信感を増大させている。
[42] そこで、この問題の司法的解決を求めて、全国で多数の提訴がなされ、すでに多くの判決がなされるに至っている。

4.各地における訴訟と判決
[43] 以下に見るように、現時点で判決に至っている7つの同種事件のうち、原判決は地裁・高裁のいずれのレベルでも最初になされたものであるが、他の6件では、納税者の主張がほぼ全面的に認められている。
[44] 原判決のみが、際だって異質である。
(1) 名古屋市A事件
[45] 平成18年に名古屋市で最初にこの過徴収に気づいた冷蔵倉庫事業者は、同年中に名古屋地裁に提訴をした(名古屋地方裁判所平成18年(ワ)第3637号)。
[46] これに対し、平成20年7月、名古屋地裁は、
「本件各課税処分が適法に取り消されない限り、原告らが、本件課税処分等の違法を理由とし、過納金相当額を損害とする損害賠償を請求することは許容されない」
などとして、原告の請求を棄却した。
[47] これは、原判決の1審判決と同じ裁判体によるものである。
[48] しかし、平成21年4月23日になされた名古屋高裁による控訴審判決(名古屋高等裁判所平成20年(ネ)第764号)は、
「地方税法所定の救済手続を経ることなく、本件各課税処分の違法を理由とする国家賠償請求をすることは、原則として許される」
と判示した上、
「本件各倉庫は、本件基準表7(2)の『冷凍倉庫用のもの』に該当するというべきで、被控訴人担当者が、その経年減点補正率を適用せず、同表7(1)のそれを適用して過大に価格を評価し、これに基づき過大な課税徴収が行われた点で、本件課税処分には誤りがある」
ことを認め、
「被控訴人担当者が、上記のような調査等を怠り、その後も漫然と本件基準表7(1)の倉庫として評価していたことは、税務担当者として職務上通常尽くすべき注意義務を尽くしていなかったものといわざるを得ない。」
として、原判決を変更し、民法724条の期間内で控訴人の請求を認容した。過失相殺はなされていない。
[49] この控訴審判決に対しては、名古屋市が上告受理申立をしていると思われるが、現時点でその詳細は明らかでない。
(2) 名古屋市B事件(本件)
[50] A事件に触発され、平成19年に提訴されたものであり、訴えの内容はA事件となんら変わらない。最も早く1審判決がなされ、控訴審でも一番早く判決がなされた。
[51] この事件だけ、同種事件6つの判決と正反対の結論となったのは、裁判所の事件に対する見方・考え方が異なったから、としか言いようがない。
[52] 原判決は、最も早く言い渡されたため、その判決文は、名古屋市A事件の控訴審、大阪市A・B事件の控訴審、神戸市B事件の各弁論終結後、判決言渡までに「上申書」という形で裁判所に提出されている。
[53] しかし、どの裁判所も、原判決を一顧だにしなかった。
[54] 原判決は、同種事件の他の判決によって、すでに破棄されたに等しいものであり、上告審において、正式に破棄されることが自然な流れである。
(3) 大阪市A事件
[55] 平成18年に大阪市を被告として提訴された事件(大阪地方裁判所平成18年(ワ)第13733号)で平成20年9月30日に言い渡された判決(甲37)は、大阪市の主張に対して詳細な検討を加えた上でこれを排斥し、
「地方税法所定の救済手続を経ることなく、課税処分の違法を理由とする国家賠償請求をすることも許されると解するのが相当である。」
とした。
[56] その上で、同判決は、
「被告担当職員は、税務担当職員として通常要求される程度の注意を払って、本件建物が冷凍倉庫として使用されているのか一般用の倉庫として使用されているのかを識別するに足りる程度の調査を行わないまま本件価格決定及び本件賦課決定をしたものであって、職務上通常尽くすべき注意義務を怠ったものというべきであるから、国家賠償法上の違法性があるといえ、また、被告担当職員に過失もあるというべきである」
として、弁護士費用を含む損害賠償を認め、過失相殺の適用はしなかった。
[57] この判決に対して大阪市が控訴し、平成21年3月27日に言い渡された控訴審判決(大阪高等裁判所平成20年(ネ)第2920号)でも、大阪市の主張が詳細に検討された上で、すべて排斥され、控訴が棄却されている。
[58] この控訴審判決に対し、大阪市は、上告受理の申立てを行っていると推測されるが、その詳細は明らかでない。
(4) 大阪市B事件及び堺市の事件
[59] 上記大阪A事件と並行して、別の事業者が提訴して地裁で納税者勝訴となり(代理人はA事件と同じ。)、大阪市が控訴していた別事件がある(大阪高等裁判所平成20年(ネ)第2819号)。この事件は、大阪高等裁判所のA事件(第13民事部)とは別の裁判体(第8民事部)に係属したが、A事件同様、控訴が棄却されている(平成21年3月23日言渡の判決)。
[60] また、他の事業者が、大阪地方裁判所堺支部においても提訴し、やはり全面的に勝訴したと報道されている。
[61] これらの事件については、判決文が入手できておらず、詳細は不明である。
(5) 神戸市A事件
[62] 先の大阪市A事件と同じ原告が、神戸市を相手に平成18年に提訴した事件であり、平成20年7月18日に神戸地裁にて言渡がなされたものである(甲28)。
[63] 神戸市の主張は名古屋市、大阪市と同様のものであったが、すべて排斥され、原告のほぼ全面的勝訴となっている。現在、控訴審係属中である。
(6) 神戸市B事件(集団)
[64] 神戸市に所在する冷凍倉庫を保有する事業者11社と、尼崎市に所在する冷凍倉庫事業者4社が、それぞれ神戸市及び尼崎市を被告として提訴した集団訴訟である(神戸地方裁判所平成19年(ワ)第1710号 平成21年4月23日言渡)。
[65] もともとは西宮市をも被告としていたが、弁論の前に、西宮市は原告と和解し、訴えが取り下げられた。
[66] 同事件において、神戸市は、同種事件における名古屋市・大阪市などと同様の主張を行い、尼崎市は、
「評価基準別表にいう『冷凍倉庫』の意義がはっきりしなかったため、管内に「冷凍倉庫」は存在しないものとして扱っていた」、
という特殊な主張を行った。しかし、同事件に対する判決でも、原告の主張がほぼ全面的に認められ(ただし、損害賠償の期間については、民法724条の除斥期間により20年間に限られるとされた。)、神戸市・尼崎市の主張はすべて排斥され、合計で約5億円を超える賠償が命じられた。
[67] 現在、神戸市・尼崎市が控訴している。
(7) その他
[68] 上記のように判決まで至った事件の外、現在、仙台地裁、静岡地裁、名古屋地裁、大阪地裁、神戸地裁の各裁判所で同種訴訟が係属中であり、その他の地区でも新規提訴の準備が行われていると聞いている。
[69] 原判決が請求を棄却した理由の中心となるいわゆる公定力理論については、原判決を除くすべての判決が、枠組みそのものを否定している。原判決を見た上で判決を書いたはずの名古屋市A事件高等裁判所判決でも、大阪高等裁判所の判決でも、神戸市B事件の集団訴訟判決でも、納税者の主張をほぼ全面的に認めるに至っている。
[70] さらに、住宅特例に関する事件で、公定力に関してまったく同じ主張をした神戸市の上告受理申立て(平成18年(行ノ)第21号上告受理申立事件)に対し、すでに御庁は上告不受理決定をされている(平成18年(受)第1107号、別紙3参照)。

5.原判決の異質さ
[71] 上記のように、原判決を除くいずれの判決でも、いわゆる公定力理論を採用したものはなく、国家賠償法により、民法第724条の期間内で過徴収金相当額の損害賠償請求を認め、納税者に過失相殺は行わない、という統一した判断がなされている。これは、無理のない自然な認定と判断である。
[72] 唯一、原判決のみが、審理を尽くさず、自ら認定した事実とも齟齬する理由で、法令の解釈を誤り、強引に結論を導いており、およそ説得力を持ち得ないものとなっている。
[73] 政治的意図を持ち込むのでない限り、原判決が誤りであり、他の多くの判決が正しいことは、論を俟たない。
[74] 市町村自身が過誤であったことを認め、原判決を除くすべての判決が市町村の過誤を認定しているのに、たった一つの原判決が存在するために、市町村は、訴訟になったとたん、前言を翻して過誤を否認し、徹底的に納税者の主張を争うという不誠実な態度をやめようとしない。
[75] 原判決は、市町村の訴訟における不自然で不誠実な主張を擁護し、その根拠・温床となっており、納税者の行政や裁判所に対する不信を強めている。
[76] 原判決は、一刻も早く上告審によって破棄されるべきである。そうなれば、残りの訴訟事件も速やかに終息し、民法第724条の短期時効と相俟って,事件全体が終息に向かうと考えられる。
1.原判決の内容
[77] 原判決は、次のように判示する。
「固定資産の価格決定又はこれを前提とする固定資産税等の課税処分の違法が,これらの処分を当然無効ならしめるものではない場合には,当該処分が適法に取り消されない限り,同処分の違法を理由とし,過納金相当額を損害とする国家賠償法に基づく損害賠償請求は許されないものと解するのが相当である。」(原判決第3の1(1))
[78] そして、
「以上によれば,本件各価格決定又はこれを前提とする本件各課税処分に,課税要件の根幹についての内容上の過誤があるとはいい難く,これを措くとしても,本件各課税処分等による不利益を甘受させることが著しく不当と認められるような例外的な事情があるとは到底認め難いから,本件各課税処分等に無効原因があるとは認められない。」
とする(原判決第3の1(2))。
[79] 原判決が上記解釈を採用する理由は、次のように示される。
「固定資産税等の過納金相当額を損害とする国家賠償法に基づく損害賠償請求を許容することは,実質的に,課税処分を取り消すことなく過納金の還付を請求することを認めたのと同一の効果を生じることになって,課税処分等の不服申立期間を制限した上記法の趣旨を潜脱することになるばかりか,課税処分の公定力をも実質的に否定することになる。」
「地方税法432条2項は,登録価格を早期に確定することにより固定資産税にかかる徴税行政の安定と円滑な運営を図る目的と,登録価格の決定には専門的,技術的な面の存することなどから,登録価格については,固定資産評価審査委員会に対する審査申出及び同委員会による審査の決定に対する取消しの訴えという方法によってのみ争うことができるものとしてその不服申立方法を制限しているのであって,控訴人による本件国家賠償請求は,実質的にはこの制限をも潜脱するものということができる。」
「課税処分の取消しの場合も、当然過納付部分を還付することとなるのであるから,課税処分の違法を理由とし,過納金相当額を損害とする国家賠償法に基づく損害賠償請求に関しては,結局課税処分の取消訴訟と目的・効果を同一にするというほかない。」(原判決第3の1(1))
[80] つまり、原判決は、取消訴訟を経ざる国家賠償請求訴訟は、不服申立の期間や不服申立方法を制限した法の趣旨を潜脱して、取消訴訟と同じ目的・効果をもたらすものであるから、課税処分の違法が当然無効とされるような例外的な場合でなければ、認めることができない、というのである。

2.原判決の誤り(1)――同種事件の判決
[81] しかし、国家賠償法あるいは他の法令において、原判決が採用するような制限を規定した明文はどこにも存在しない。また、国家賠償法の適用において、原判決の示すような制限のあることを宣言した最高裁の判例も存在しない。
[82] 国家賠償請求権は、憲法17条を具体化したものであり、法律上の明文の規定がないのに、裁判所が、解釈によってこれを制限することは、相当に慎重でなければならず(神戸地裁平成21年4月23日判決37ページ)、原判決の論理は、原則と例外が逆転してしまっている。
[83] 名古屋高等裁判所平成21年4月23日判決が示すように、
「過誤納金の還付等の制度は,民法上の不当利得返還制度の特則としての意義を有すると解されるところ,国家賠償制度とは,趣旨や目的、要件及び効果を異にする別個の制度であるというべきであり,また,一般の行政処分の場合にはその違法を理由とする国家賠償訴訟は取消訴訟を経ることなく提起することが原則として許されているのであり,課税処分の効果と損害の内容が実質的に同一であるからといって,課税処分が違法である場合には,その取消判決がないことの一事をもって,当該納税者に損害を甘受させる合理的な理由は見出しがたい。」(同判決8ページ)。
[84] また、
「不服申立や出訴期間の制限等は,課税処分に限らず行政処分一般に認められているのであるから,固定資産税等の賦課処分のように金銭給付義務を課する行政処分のみを別異に解して,国家賠償請求を否定すべき法律上の根拠は見出しがたく、」「そもそも、法が,課税処分について不服申立期間の制限や排他的管轄の定めを設けたのは,前述したとおり,課税処分を早期に確定させて徴税行政の安定とその円滑な運用を確保するためと解されるから,それらの規定をもって,違法な賦課処分によって損害を被った者を救済しないこととする合理的な理由とはなし得ないというべきである。」(神戸地裁平成20年7月18日判決16ページ)
「不服申立及び取消訴訟提起の期間制限等は、課税処分に限らず行政処分一般に認められているが、当該行政処分の違法を理由とする国家賠償請求訴訟の提起は、特段の制限なく許されているところである。しかるに、固定資産税等の賦課決定等の、金銭給付義務を課する行政処分のように、行政処分の効果と損害の内容が実質的に同一であるか、裏腹の関係にある場合だけをそれ以外の場合と峻別し、上記制限期間の経過後は、当該処分の違法を理由とする国家賠償請求訴訟の提起も許さないなど別異に扱うべき法令上の根拠はなく、当該違法な行政処分による損害を被害者に甘受させることに合理性は見出し難いといわざるを得ない」し、「行政処分の公定力との関連でも、国家賠償請求訴訟の判決において行政処分の違法性が認められても、行政処分の効力は否定されず、行政処分の存在を前提として形成されている事実関係が覆ることもないから、国家賠償請求訴訟の判決の効力は公定力と抵触しないと解される」(大阪高裁平成20年3月27日判決10ページ)
[85] このように、原判決を除くすべての同種事件の判決が、原判決の示した枠組みを排斥し,取消訴訟を経ざる国家賠償請求を認めているのである。

3.原判決の誤り(2)――過徴収金返還要綱
(1) 過徴収金返還要綱と国家賠償法の関係
[86] 固定資産税等の課税処分においても、誤りが生じることは避けられない。その過誤は、現場に密着し、専門技術的で,大量に発生する可能性がある。これを限られた人員で処理するには、現場に近い場所で、固定資産評価の専門家が、時間を限って、画一的に対応しなければならない。
[87] そこで、固定資産税の過誤については、審査請求等の制度が設けられ、ここでほとんどの事件が解決されている。
[88] 訴訟をするとなれば、情報の不足による敗訴の危険や高額の弁護士費用、数年に及ぶ審理期間という様々な負担を覚悟しなければならないし、多くの市町村では、「過徴収金返還要綱」が制定され、明らかな過誤については地方税法上の時効=5年を超えて過徴収金が返還されるから、よほどのことがない限り、訴訟が提起されることはない。
[89] したがって、原判決が危惧するような地方税法上の救済方法が「潜脱」され、大きな混乱を生じるという危険は、「過徴収金返還要綱」が適切に運用され、機能している限り、現実にはありえない。
[90] しかし、この「過徴収金返還要綱」なるものは、法律上の制度ではなく、市町村によって内容も異なり、どのような場合に適用されるのか、返還金の性質や地方税法の時効との関係など、分からないことが多い。
[91] そもそも、市町村が「過徴収金返還要綱」を制定することになったのは、浦和地裁平成4年2月24日において、固定資産税の過徴収金について国家賠償法の適用を認める判決が出されたことを契機とする。
[92] そうであれば、「過徴収金返還要綱」は、市町村自ら定める国家賠償法の特則のようなものと理解するのが自然である。市町村自らかかる制度を持っているということは、「課税処分の違法を理由とする国家賠償請求は、よほどのことがない限り許さない。」、という原判決の立場と明確に矛盾する。
[93] 他方で、もし仮に、「過徴収金返還要綱」は、地方税法の特則のようなものであると理解するならば、これとまったく同じ効果をもたらすに過ぎない国家賠償請求訴訟が、行政処分の公定力などによって否定される理由もないし、行政法上の不服救済制度が設けられた趣旨を潜脱するなどと言われる理由もない。
[94] つまり、いずれにしても、過徴収金返還要綱が存在すること自体、原判決の立場とは矛盾するのである。
(2) 「名古屋市固定資産税等支払要綱」
[95] 名古屋市も、「名古屋市固定資産税等支払要綱」を制定していた(別紙資料2参照)。
[96] これによれば、名古屋市は、過誤納税のうち本税に相当する額と、年5分の利息相当額について、固定資産課税台帳等の保存期限(10年)または領収書等によって過誤納金の額が確認できる範囲で20年を限度として、返還金を支払うべきものとされている。
[97] 原判決は、このような支払要綱が一般的に存在しているという行政実態をなんら考慮しようともしなかったし、まして、名古屋市が過誤を認めて5年を遡って固定資産税等の過徴収金を返還しているのに、「名古屋市固定資産税等支払要綱」を適用しなかった理由についても検討していない。
[98] 先に示したように、(社)日本冷蔵倉庫協会が行った調査では、70%を超える市町村が、「過徴収金支払要綱」を適用するなどして(要綱ではなく議会の議決によるケースもあるようである。)5年分を超える過徴収金を返還しているのに、名古屋市は、要綱を持ちながら、あえて適用せず、納税者に要綱の存在さえも説明していない。そして、原判決は、要綱の存在にも触れないまま、どこの法律にも、判例にもなく、条例にすら書かれていない論法で納税者の訴えを門前払いした。
[99] これほどの不正義がまかり通るのであれば、日本は法治国家とはいえない。
[100] 名古屋市は、報道によれば、平成19年に調査しただけで、2億円以上の裏金を隠し持っていたという。その名古屋市は、本件で、過徴収金返還要綱の存在を法廷で提出しなかった。その重要性に鑑みれば、申立人から指摘を受けなくとも、名古屋市は自発的に要綱の適用関係について説明すべきであった。
[101] 本件で、要綱の存在を示し、なぜそれが適用されないのか、なぜ、70%以上の他の市町村と取扱が異なるのかを説明しなければ、名古屋市は、間違えてとりすぎた税金を、要綱を隠して返還拒否し、返還拒否した税金で裏金を作っていた、と言われても仕方がないのではないか。
[102] 行政実態として、市町村に「過徴収金返還要綱」が存在していることは、行政事件を担当する裁判所には、顕著な事実であるのに、これを調べなかったことは、裁判所が名古屋市をかばっている、と言われても仕方がないであろう。
[103] にもかかわらず、原判決は、これを見逃している。これだけでも、原判決は、破棄に値する。

4.最高裁平成16年12月17日判決
[104] 最高裁は、名宛人を誤った課税処分がされ、納税者がそれに対する審査請求をしたが、裁決がされないまま約1年2か月が経過したので、国家賠償訴訟を提起したところ、ほどなく課税庁により課税処分が取り消され、過誤納金の還付等が行われた、という事案において、次のように判示した。
「前記事実関係の下において、上告人が本件訴訟を提起することが妨げられる理由はないというべきところ、本件訴訟の提起及び追行があったことによって本件課税処分が取り消され、過誤納金の還付等が行われて支払額の限度で上告人の損害が回復されたというべきであるから、本件訴訟の提起及び追行に係る弁護士費用のうち相当と認められる額の範囲内のものは、本件課税処分と相当因果関係のある損害と解すべきである。」
[105] つまり、本判決の事案においては、いきなり国家賠償請求訴訟が提起されたわけではないが、取消訴訟が提起された後に提訴されたものでもない。
[106] したがって、最高裁は、この判決で、取消訴訟を経ざる国家賠償請求訴訟が許されるかどうかについて、直接的かつ一般的な判断を下したものではない。
[107] しかしながら、最高裁が、「課税処分の違法性を争う国家賠償請求訴訟は、当該課税処分が取り消されない限り提起できない。」という立場に立つのであれば、未だ取消訴訟が提起されない段階での国家賠償請求訴訟は、それ自体が認められないはずである。そうであれば、最高裁が、原審を破棄して不適法な国家賠償請求訴訟のために支出した弁護士費用相当額について、課税処分と相当因果関係ある損害と認めることもなかったと考えられる。
[108] 本判決の、「前記事実関係の下において、上告人が本件訴訟を提起することが妨げられる理由はないというべきところ、」という表現は、
「違法な課税処分を受けた者が、取消訴訟を提起せずに、課税処分を受けたことによる損害の回復を目的とする国家賠償訴訟を提起することは妨げられず、取消訴訟を提起し勝訴しなかったことから直ちに国家賠償訴訟の提起等による損害と当該課税処分との聞の相当因果関係が欠けることとなるとまではいえない。」
ことを意味しており、そのように解説されている(別紙資料4参照)。
[109] したがって、原判決は、最高裁平成16年12月17日判決の趣旨に反することが明らかである。
[110] なお、同種事件に関する他の6件の判決において、本最高裁判決に直接的に触れることがないのは、本最高裁判決が、取消訴訟を経ざる国家賠償請求訴訟が許されるかどうかについて、直接的かつ一般的な判断を下したものではなく、事案として特殊性を有するからであろう。
[111] しかしながら、これら6つの判決は、すべて、本最高裁判決の前提とする趣旨に沿うものである。
[112] すなわち、当該判決の解説にあるように、
「・・・、法令上、取消訴訟により課税処分の取消しをしない限り国家賠償訴訟を提起できないという制限があるわけではない(最二判昭36・4・21民集15・4・850)。また、地方税法の定める過誤納金の還付等の制度は、民法上の不当利得返還制度の特則としての意義を有すると解されるが、それが国家賠償訴訟を提起することを制限するものであるとの条文上の根拠を見いだすことはできず、国家賠償制度とは、趣旨や目的、要件及び効果を異にする別個の制度であると理解すべきであると考えられる。したがって、違法な課税処分を受けた者が、取消訴訟を提起せずに、課税処分を受けたことによる損害の回復を目的とする国家賠償訴訟を提起することは妨げられ・・・」ない
のである。
[113] 取消訴訟を経ずに国家賠償請求訴訟を提起することが許されることは、通説でもあり、本判決はこれに沿うものであると、評釈されている(別紙資料4参照)。
[114] ただ一つ、原判決のみが、本判決の趣旨を吟味することも、憲法の趣旨を吟味することもなく、本判決の趣旨と異なる判断をしているのである。

5.最高裁平成18年10月12日不受理決定
[115] 神戸市は、「あらかじめ課税処分について取消判決等を得なくても、当該課税処分が違法であることを理由とする国家賠償の請求ができる。」とされた大阪高裁平成18年3月24日判決(平成17年(行コ)第122号事件)に対する上告受理申立理由書において、もっぱら、「争訟方式の排他性」や「国家賠償請求を容認することは、課税処分の効力を実質的に否定することにつながる」などと主張して上告受理申立てを行った。
[116] これに対し、平成18年10月12日、最高裁は、第一小法廷全員一致の意見で、上告を不受理とする旨決定した(平成18年(受)第1107号、別紙資料3参照)。
[117] これは、決定であり、判決ではないし、決定の理由も付されてはいないから、最高裁が積極的に「あらかじめ課税処分について取消判決等を得なくても、当該課税処分が違法であることを理由とする国家賠償の請求ができる。」と宣言したわけではない。
[118] けれども、その趣旨の大阪高裁の判決に対する上告を受理しなかったということは、当該事件に関し、最高裁もまた、取消判決等の手続を経ざる国家賠償請求を容認したことを意味している。
[119] そして、当該事件は、神戸市北区長が、納税者の所有する土地について、地方税法第349条の3の2、702条の3所定の住宅用地に対する固定資産税及び都市計画税の課税標準に関する特例を適用せず、過大に固定資産税を賦課徴収した上、第法第417条の規定により5年分のみ修正をした、という事案であった。
[120] 当該事件と本事件とでは、「住宅特例」と「評価基準別表」という違いはあるが、いずれも市が地方税法の適用を誤り、地方税法第417条によって修正が行われた、という点では同じであって、両事件は極めてよく似ている。
[121] ということは、最高裁は、すくなくとも、市町村が地方税法の解釈・適用を誤って、同法第417条で修正の上、還付を行っているような事案においては、取消判決等を得ていなくとも課税処分の違法を理由とする国家賠償請求を否定していないのである。
[122] すると、原判決は、この最高裁決定の趣旨に反するものであり、かかる観点からも、破棄を免れないものである。

6.東京高裁平成18年11月15日判決(原審横浜地裁平成18年7月19日)
[123] この東京高裁判決は、
「本件各課税処分等が取り消されることなく国賠法に基づいてその過納金相当額及びこれに対する遅延損害金の損害賠償請求を認めることはできないと解するのが課税処分をめぐる争訟方法の在り方として相当であることは前記(原判決引用部分)のとおりであり,控訴人の上記主張は採用できない。」
として、横浜地裁の原審判決を是認する。
[124] そして、ここでの原審である横浜地裁の論旨は、原判決に酷似している。
[125] しかしながら、この判決の事案は、次の通り、非常に細かい設備に関する横浜市の取扱要領を問題としたものである。
[126] 当該事件の原告は、請求原因において、
「給水設備,排水設備,動力配線設備,電灯コンセント配線設備,蛍光灯用器具設備,拡声器配線設備,電気時計配線設備,ガス設備,火災報知設備,避雷設備の各設備について,一部補正項目を欠いた平成6年度市取扱要領を適用して行われた評点付設には重大な瑕疵がある」
また、「給水設備,排水設備,仮設工事及び消火栓設備について,補正係数の選択を誤った瑕疵がある」、
「本件建物の各部分の構造や材質等の評価に瑕疵がある」
などと主張した。
[127] これらは、原審横浜地裁判決が指摘するとおり、
「いずれも固定資産評価員が平成6年度市取扱要領を適用するに際しての専門的判断に係る事項であって,このような固定資産評価員の個別具体的な判断は課税要件の根幹に関わる事項とはいえないし,徴税行政の安定とその円滑な運営という要請の見地からすれば,このような事項は一次的には固定資産評価審査委員会で審査すべき事項というべきである。したがって,原告が本件建物の各部分の構造や材質等の評価について主張する瑕疵は,いずれも本件各課税処分等を無効とするほどの重大な瑕疵には当たらない」
ものである。
[128] 当該事件では、このように、裁判所が判断するのに適さない、極めて微細な専門的技術的事項が争われたことから、横浜地裁は、司法的判断を回避するのが適切である趣旨を示すために「課税処分が取り消されない限り、国家賠償請求訴訟はできない。」とし、東京高裁は、その結論を是認した上、国家賠償請求による上告受理申立を断念させる趣旨から、国家賠償法上の違法性が認められないことにまで言及したもの、と推察される(なお、本事件がどのように確定したかは不明である。)。
[129] しかし、本件で問題となっているのは、そのような微細な専門技術的問題ではなく、課税処分の違法性は、経年減点補正率適用の誤り、という1点に求められているし、在来家屋の評価における経年減点補正率は、実際上もっとも大きな価格変動要因であり、課税要件の根幹ということができる。
[130] しかも、名古屋市は、すでに地方税法第417条により、「重大な錯誤」があったものとして評価を修正し、遡って還付しているのであるから、評価基準別表13の7(1)を適用していたことが誤りであったと自認しているというべきである(大阪高裁平成21年3月27日判決15ページ)。
[131] このように、平成18年東京高裁または平成17年の横浜地裁の事件と本件とでは、事案の内容がまるで異なるものであり、これらの内容がまるで違う事件における判決の論法を、本件に適用することは適切でない。
[132] 本件と同種の判決に至った6つの事案すべてにおいて、市町村は、この東京高裁・横浜地裁判決を引用して主張をしたと推測されるが、この東京高裁・横浜地裁判決が、同種訴訟の判決において取上げられたことはない。
[133] むしろ、このような異質な事案に関する判決の論理を、そのまま本件に適用した原判決の異質さは、際だっている、というべきである。
[134] 以上に見たように、原判決には、条文の根拠がなく、最高裁判例等の趣旨に反し、同種事件の判決群と比べても、その異質さが際だっている。
[135] しかも、原判決は、「本件課税処分に無効原因はない」という予定した結論へ導くために、以下のように、検討すべきものをあえて検討せず、自らの認定においても、いくつもの矛盾を来している。

1.「冷凍倉庫」の意義
(1) 定義の存否
[136]ア、原判決は、
「評価基準は,家屋の用途に応じて,異なる経年減点補正率が適用されることとなる本件基準表を定めているが,当該各用途の具体的な定義規定は何ら定められていない。」から、「評価基準は,本件基準表の適用に際し,各市町村長の合理的な解釈・運用を許容し,かつ,それを前提とするものと解するほかない。」
という(原判決第3の1(2)イ(イ))。
[137] ここまでは、一般論としては、そのとおりである。
[138] しかし、そこから、原判決が、
「ある家屋に本件基準表7(2)を適用しなかったことが過誤といえるかどうかは、上記同基準表7(2)の位置づけを前提として,同基準衰7(2)を適用しなかったことが不合理かどうかを判断するに帰することとなる。」(原判決第3の1(2)イ(ウ))
とするのは、論理に飛躍がある。
[139] というのは、「各市町村長の合理的な解釈・運用」というのは、場当たり的な、現場の担当者によって判断が区々となるようなものであってはならないから、各市町村は、「家屋評価事務取扱要領」などの手順書を定め、評価実務が迅速・公平・適切に行われるように,評価基準を具体化しているので、もし、「冷凍倉庫」という用語が不明確であると市町村が判断したならば、まずもって「家屋評価事務取扱要領」等において、具体的に定義すべきなのである。
[140] そして、大阪市がその「家屋事務取扱要領」あるいは「固定資産評価実施要領」において、「冷凍倉庫用のもの」の定義を有していたことは,大阪高裁平成21年3月27日判決(11~12ページ。)によって確認されているし、仙台市も「仙台市固定資産(家屋)事務取扱要領」において、大阪市と同様の定義を有していたことが確認されている(別紙資料5参照)。
[141] 「冷凍倉庫」の概念は、昭和39年から存在するし、(財)地方財務協会発行の「損耗の状況による減点補正率適用の手引」(別紙資料6参照)でも解説されており、名古屋市も政令指定都市として、仙台市や大阪市と協議をしていたことからすれば、なんらかの形で実は「冷凍倉庫」の定義を有していた可能性が高い。
[142] もし、名古屋市が「冷凍倉庫」について大阪市と同様の定義を有していたとすれば、その主張は、全体が崩壊するはずである。
[143] そうであれば、原判決は、評価基準を具体化したものとして、まず、名古屋市における「要領」などの手引書が存在し、そこにおいて「冷凍倉庫」の定義があったかどうかを確認すべきであった。
[144]イ、また、昭和63年度の名古屋市家屋評価事務取扱要領では、一般倉庫と「冷凍冷蔵庫用のもの」とで区別がなされていたことが明らかとなっている(別紙資料7参照)。すなわち、少なくとも、昭和63年当時は、名古屋市は、「冷凍倉庫」のみならず「冷蔵倉庫」についても一般倉庫とは異なる経年減点補正率表7(2)を適用すべきと考えていたものである。本件倉庫の登録初年度である昭和54年当時の家屋取扱要領ではどのような記載がなされていたかについては、名古屋市は明らかにしておらず、また、行政文書開示の対象からも外れるため直接は確認できていない。しかしながら、かつては国税の耐用年数も冷凍倉庫と冷蔵倉庫を区別せず同一に扱っており、固定資産税の経年減点補正率についてもこれを参考としてきた経緯があること(甲29)、昭和63年以降平成18年に至るまでに「冷蔵冷凍庫」から「冷凍倉庫」に改訂されていることからすれば、昭和54年の時点でも冷凍倉庫と冷蔵倉庫を敢えて区別せず「冷蔵冷凍庫」と規定していた可能性が高い。また、仮に昭和54年当時は「冷凍倉庫」とされていいたとしても、少なくとも昭和63年には「冷蔵冷凍庫」と規定されていたのであるから、文言が改められた時点で、本件倉庫の評価を見直すべきであった。
[145] 原判決は、「冷凍倉庫」の定義が不明確であるため、その解釈は名古屋市の一定の裁量に委ねられるとするが、「冷蔵倉庫」については倉庫業法で摂氏10度以下の温度で保管物を保管する倉庫との定義規定(同施行規則3条の11)が存在しており、評価基準の解釈に当たって参考とすることができる。従って、マイナス30度の冷凍設備を有し、実際にもマイナス20度以下で使用されていた本件倉庫を、敢えて一般倉庫と解釈することはあり得ないはずである。経年減点補正率の適用について、各市町村長に一定の裁量が認められるとしても、自ら定めた取扱要領と異なる解釈・決定をなすことは、「合理的な解釈・運用」を逸脱することは明らかである。
[146]ウ、裁判所が、このような行政法規の確認をせず、名古屋市の主張を鵜呑みにして、「冷凍倉庫」の用語解釈における広汎な裁量を認めることは、重大な法令解釈の誤りがあったと認められるのではないだろうか。
[147] 同種事件における7つの判決において、吟味もせずに「冷凍倉庫」の定義に関する市の主張を受け容れ、市の広範な裁量を認めるのは原判決のみであり、その異質さは、際だっている。
(2) 文理または社会通念による確定の可否
[148] 申立人の調査によれば、平成18年度の名古屋市の「家屋評価事務取扱要領」(乙12)においては、評価基準別表に記載されている各種木造家屋及び非木造家屋について定義が定められているが(35ページ~38ページ)、「冷凍倉庫」についての定義は記載されていない。
[149] また、昭和63年度の要領(別紙資料7参照)には、上記のとおり「冷凍倉庫用のもの」ではなく、「冷蔵冷凍倉庫」と記載されていたことが確認されているが、「冷凍倉庫」についての定義規定は確認されていない。
[150] ただしこれは、申立人の調査不足かも知れず、要領そのものには記載されていなかったとしても、何らかの定義が存在していた可能性は否定できない。
[151] 仮に、名古屋市が、その「要領」において、「冷凍倉庫」の定義を有していなかったとしても、
「むしろ定義規定を設けるまでもないほど『冷凍倉庫』の概念は一般人にとって自明で」あり、「文理解釈によって規定の意味内容を明らかにすることが困難な場合とはいえ」ない
のであるから(名古屋高裁平成21年4月23日判決19ページ)、原判決が認定したような不自然な解釈(原判決第3の1(2)イ(ウ))に至ったのは、法令解釈を誤ったものといわざるを得ない。
[152] 判決に至った7つの事件のうち、原判決のみが「冷蔵倉庫」に関するこのような複雑で、特異な解釈をしているということも、その誤謬を裏づけている。
(3) 定義をしなかったこと自体の問題
[153] あるいは、名古屋市が主張するように、「冷凍倉庫」の定義が存在しなかったことが本問題の生じた原因であるとするならば(原判決第2の3(2)(被告の主張)イ(イ))、なぜ、定義が存在しないのか、を問う必要がある。
[154] 本件倉庫は、昭和54年から存在していたし、もっと古くから同種の建物は存在していた。そして、昭和39年から、固定資産評価基準に「冷凍倉庫」という概念は存在していた。
[155] 名古屋市は、自らの管内に「冷蔵施設を備えた倉庫」が存在することと、固定資産評価基準に「冷凍倉庫」という概念が存在することを知り、なおかつ自ら「冷凍倉庫」の概念が不明確であると判断したのなら、その「要領」などにおいて、他の建物と同様に、定義をするべきであった。それをしなかったのなら、なぜしなかったのかを、原判決は吟味すべきであった。
[156] 40年以上前から存在する評価基準の用語に「評価基準内部に定義がない」ことを理由として、市町村に評価基準の適用段階で広汎な裁量を認めるなどという解釈は、原判決独自のものであり、市町村における評価実務と租税法律主義の原則を完全に無視した誤ったものといわざるを得ないのである。
(4) 名古屋市の主張する定義の不自然性
[157] 名古屋市は、「冷凍倉庫」の定義が存在しなかったということを前提にして、そこから
「本件基準表7(2)の「冷凍倉庫用のもの」とは前後の法文の表現や文脈等からして,一般の倉庫との比較で腐食性が著しいものあるいは損傷が著しいなどと認められる特殊な倉庫と解釈することが相当である。」とし、
「そこで,被告における本件基準表の適用に当たっては、本件基準表7(2)(3)の表現や,最長経過年数の差を比較考量し,個々の家屋の構造や使用実態等に基づいて判断したものである」
という(原判決第2の3(2)(被告の主張)イ(ア))。
[158] しかし、
「上記のような記載内容、とりわけ後者(同表7(2))の三者が並列的に記載されていることに照らすと、このうち2番目の『冷凍倉庫用のもの』が、その文理解釈として、内部の物を冷凍・保存できる機能を有する倉庫として通常の維持管理がされているものを指すことは明らかであり」(名古屋高裁平成21年4月23日判決10ページ)、
他方で、名古屋市が、実際に原判決の認定したような基準をもって評価を行っていたという、いかなる証拠も存在しないし、吟味されたこともないのである。
[159] 名古屋市は、本件以外に、適正に評価されていた冷凍倉庫があったと主張しているのに(原判決第2の3(2)(被告の主張)イ(ア))、原判決は、それがどのように調査・評価されたのか,本件とどう異なるのか、吟味しようともしていない。
[160] さらに、原判決は、
「被告における本件基準表の適用に当たっては、本件基準表7(2)(3)の表現や,最長経過年数の差を比較考量し,個々の家屋の構造や使用実態等に基づいて判断したもの」
というが、このような基準が実務上の基準として使用に耐えうるのか疑問であるし、そのような基準が文書化されずに担当者間において口頭で正確に伝えられていたとは到底考えられないのに、原判決はかかる吟味もしていない。
[161] 原判決は、このように、なんの証拠もなく、吟味もせず、不自然きわまる名古屋市の主張をそのまま認定したものであり、著しい審理不尽・事実誤認があると評価せざるをえないものである。

2.実地調査と名古屋市家屋事務取扱要領
[162] 原判決は、
「本件では実地調査の実施の有無は不明であるが,・・・特段の事情のない限り外観上固定資産の利用状況等を確認し,変化があった場合にこれを認識する程度で足りるものと解すべきところ(乙13),本件においてそのような特段の事情があったといえるような事実はうかがわれない」
という(原判決第3の1(4))。
[163] しかし、実地調査の有無さえ不明のまま、原判決がどのように「特段の事情」の有無を認定・判断したというのか不明である。
[164] 原判決は、自ら、平成18年に名古屋市が行った実地調査の結果として、本件倉庫を冷凍倉庫と認定したこと(原判決第2の1(2)カ、同キ)を忘れ、自己矛盾を来している。
[165] 一方で、原判決は、
「原告は,本件倉庫はマイナス30度の保管温度用に設計されているから、『冷凍倉庫用のもの』に当たると主張するようであるが,そのように設計されていたとしても,実際にかかる保管温度で使用されていなければ経年による損耗が激しいということにはならず,」「本件倉庫の使用実態を離れて、その設計上の機能や構造のみに基づいて判断することはできないから失当である。」
という(原判決第3の1(2)イ(エ))。
[166] 原判決が、このように、建物の区分適用において固定資産の利用状況や使用実態を重視するというのなら、実地調査はその使用実態を明らかにする上で、非常に重要なものとなろう。ところが、原判決が、自ら、
「地方税法408条に定める実地調査は,その評価事務上の物理的,時間的な制約等を考慮すれば,必ずしもすべての固定資産について細部まで行う必要があるものではなく,」(原判決第3の1(4))
とするのは、自己矛盾であろう。
[167] 実際問題としては、限られた人員で、詳細な実地調査を行うことは不可能であり、家屋の使用実態まで細かく問題とすることはできないからこそ、名古屋市は、その「家屋評価事務取扱要領」において(乙12)、
「当該家屋の使用の実態にかかわらず、当該家屋の築造形態によってその本来的な利用形態を判断して、その該当する用途を判断する」
としているが、そうすると、これは「使用実態」を問題にする原判決が、明らかに誤っていることを示している。
[168] このように、原判決は、誤った結論に結びつけるため、名古屋市の主張を吟味せずに受け容れ、家屋評価実務の法令とその認識を明らかに誤り、自己矛盾を来しなら、そのことに気がついていないのである。
[169] このような、事実認定及び法令の解釈を無理矢理ねじ曲げて、明らかな矛盾を来しているような原判決は、すみやかに破棄されるべきである。

3.地方税法第417条
[170] 原判決は、名古屋市が、地方税法第417条第1項により、本件倉庫の平成18年度以前の登録価格に「重大な錯誤」があったとして評価を修正した、と認めている(原判決第2の1(2)キ)。
[171] 地方税法第417条第1項は、次のように規定する。
「市町村長は、第411条第2項の規定による公示の日以後において固定資産の価格等の登録がなされていないこと又は登録された価格等に重大な錯誤があることを発見した場合においては、直ちに固定資産課税台帳に登録された類似の固定資産の価格と均衡を失しないように価格等を決定し、又は決定された価格等を修正して、これを固定資産課税台帳に登録しなければならない。この場合においては、市町村長は、遅滞なく、その旨を当該固定資産に対して課する固定資産税の納税義務者に通知しなければならない。」
[172] つまり、地方税法第417条第1項により固定資産の価格修正が行われたということは、名古屋市は、名古屋市自身が登録された価格に「重大な錯誤があることを発見した」ことを意味しているのであるから、
「本件建物につき基準表(1)に基づいて固定資産評価を行ったことが誤りであり」、「これに係る固定資産税等を過納させていたことを、自認しているものと認められる。」
のである(大阪高裁平成21年3月23日判決15~16ページ)。
[173] ところが、原判決は、
「港区長が基準表7(2)を適用しなかったことが、直ちに不合理であるということはできない。」
としている(原判決第3の1(2)イ(エ))。
[174] 原判決が言うように、もし、本件倉庫に関する従前の名古屋市の評価が不合理でなかったのなら、名古屋市が平成18年度以前の評価額を変更する必要はなかったし、まして還付すること自体が違法になるであろう。
[175] ところが、原判決は、どのような理由で名古屋市が地方税法第417条第1項による修正をしたのか、まったく吟味していない。これは、先に指摘したのと同様に、原判決は、法令の解釈も事実の認定も放棄して、矛盾に満ちた名古屋市の主張を無条件に受け容れた結果である。
[176] このように、自己矛盾し、地方税法の意味も理解していない原判決は、すみやかに破棄されなければならない。
[177] 以上に見てきたように、「取消訴訟等を経ていない国家賠償請求訴訟は、極めて限定的な場合にしか認められない。」という原判決の示した命題は、法律上明文の根拠がなく、最高裁判例の趣旨及び同種事件に関する他の裁判所の示したすべての判決に反している。しかも、そこで展開されている論旨は、必要な審理・吟味もせず、法令の解釈を誤り、自己矛盾を来したものである。
[178] 原判決が、このように自己矛盾を抱えながら、事実を隠蔽しようとする名古屋市の主張を全面的に採用した理由は、あるいは、事件の広がりを予感しつつ、「登録価格を早期に確定することにより固定資産税にかかる徴税行政の安定と円滑な運営を図る目的」を尊重し、「地方自治体の財政運営」の安定を図ろうとしたのかも知れない(原判決第3の1(1))。
[179] しかし、申立人が指摘するまでもなく、制度の瑕疵や市町村の財政難は政治によって解決されるべきであり、政治的意図をもって事実認定や法令解釈を歪曲し、矛盾を含む判決によって事件を隠蔽するのは、不正義である。
[180] 行政は、全体の奉仕者として誠実に法を執行すべき立場にあり(憲法15条)、法廷においては誰よりも真実を語るべき義務がある。裁判所は、真実を洞察し、良心にのみ従い、独立して法を解釈適用する使命を担う(憲法76条3項)。
[181] 同種事件では、訴訟以前に、和解が成立している事案が多数存在しているし、すでに判決に至った7つの同種事件のうち、大阪高裁の2つの判決、原判決を踏まえてなされた名古屋高裁判決と原告15社による集団訴訟事件1つを含む6つの判決で、納税者の主張がほぼ全面的に認められている。そこには、真実と正義が含まれている。
[182] もし、最高裁が原判決を維持するということは、続く他の判決すべてが破棄され、国のルールとして、納税者と市町村に、「誤ってとりすぎた固定資産税等は、5年を超えて返す必要がない。」ことを示すことになる。
[183] これは、時代に逆行する政治的決定である。
[184] 現代は、年金に関する時効が撤廃されたことに示されるように、行政の誠実さ、公正さ、透明性が強く求められている。最高裁が原判決を支持することは、納税者に対し、行政と裁判所に対する拭いようのない不信感を植え付ける。また、すでに5年を超えて返還をしている市町村に対しては、平成4年の判決に基づく過徴収金返還要綱は何だったのかと、違う不信感を抱かせるであろう。
[185] この情報化時代に、行政といえども不祥事をどこまでも隠蔽することはできない。不祥事に際しては、誰もが、事実と原因と明らかにして、謝罪し、理解を求め、是正し、やり直すしか方法がない。それを見定めるのが司法である。
[186] 「間違えてとりすぎた税金は返す。」このシンプルで当たり前のことに正義が含まれている。正義が行われることによって、納税者の信頼が得られ、解決への糸口と、真に公正な新しい社会が開かれる、と申立人は考える。

[187] 最高裁判所におかれましては、是非とも、正義を示していただきたく、心底よりお願い申し上げる次第であります。
以上  
資料一覧
資料1:固定資産税「冷凍倉庫」自治体の過徴収「還付+返還」年数
    平成21年4月23日、(社)日本冷蔵倉庫協会作成

資料2:名古屋市固定資産税等返還金支払要綱
    名古屋市作成

資料3の1:最高裁判所平成18年(受)第1107号
      平成18年10月12日,最高裁判所第一小法廷作成
資料3の2:上告受理申立理由書
      平成18年5月31日、神戸市代理人作成

資料4:判例時報1912号(最高裁平成16年12月17日判決の評釈)
    専修大学教授 増田英敏作成

資料5の1:公開文書開示決定通知書
      平成21年2月13日、仙台市長作成
資料5の2:仙台市固定資産(家屋)事務取扱要領
      平成12年10月2日、仙台市作成

資料6:損耗の状況による減点補正率適用の手引
    平成13年2月15日、財団法人地方税務協会発行

資料7:家屋評価事務取扱要領
    昭和63年1月5日、名古屋市作成

(添付資料省略)

■第一審判決 ■控訴審判決 ■上告審判決   ■行政法判決一覧