浜松市土地区画整理事業事件
差戻第一審判決

行政処分取消請求事件
静岡地方裁判所 平成20年(行ウ)第16号
平成23年2月25日 民事第1部 判決

■ 主 文
■ 事 実 及び 理 由


1 原告らの請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は,差戻し前の第1審,同控訴審,同上告審(上告棄却部分に係る上告費用を除く。)及び差戻し後の第1審を通じ,全て原告らの負担とする。

 被告が平成15年11月25日付け浜松市公告第○号をもってしたP1広域都市計画事業P2駅周辺土地区画整理事業に関する事業計画の決定を取り消す。
[1] 本件は,P1広域都市計画事業P2駅周辺土地区画整理事業(以下「本件区画整理事業」という。)について,[1]静岡県知事が平成15年11月17日付けで設計の概要に関する認可(都市第○号)をし(以下,この設計の概要を「本件設計の概要」といい,その認可を「本件認可」という。),[2]浜松市が同月25日付けで事業計画の決定(浜松市公告第○号)をしたところ(以下,この計画を「本件事業計画」といい,その決定を「本件事業計画決定」という。),本件区画整理事業の施行地区(以下「本件施行地区」という。)内に土地を所有している原告らが,本件認可及び本件事業計画決定が違法であるとして,差戻し前の被告であった静岡県知事に対し本件認可の取消しを,被告に対し本件事業計画決定の取消しを,それぞれ求めていた事案である。
[2] 差戻し前の第1審及び同控訴審は,本件認可及び本件事業計画決定のいずれも抗告訴訟の対象となる行政処分には当たらないとして訴えを却下したところ,差戻し前の上告審は,上告提起事件(最高裁判所平成▲年(行ツ)第▲号)を棄却した上,上告受理申立事件(最高裁判所平成17年(行ヒ)第397号)について,[1]静岡県知事に対する請求に関する部分を不受理としつつ,[2]被告に対する請求に関する部分を受理し,被告がした本件事業計画決定は行政事件訴訟法3条2項にいう「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」に当たるとして,差戻し前の控訴審判決のうち被告に関する部分を破棄し,同部分について差戻し前の第1審判決を取消して,当庁に差し戻した(したがって,当審における審理の対象は,被告の施行に係る本件事業計画決定の取消しの訴えに係る部分である。)。
[3] 「土地区画整理事業」とは,都市計画区域内の土地について,公共施設の整備改善及び宅地利用の増進を図るため,土地区画整理法(平成15年法律第100号による改正前のもの。以下「法」という。)で定めるところに従って行われる土地の区画形質の変更及び公共施設の新設又は変更に関する事業をいう。同法において,「公共施設」とは,道路,公園,広場,河川,運河,船だまり,水路,堤防,護岸,公共物揚場及び緑地をいい(法2条5項,土地区画整理法施行令(以下「令」という。)67条)(以下「公共施設」とはこの意味の施設をいう。),「宅地」とは,公共施設の用に供されている国又は地方公共団体の所有する土地以外の土地をいう(法2条6項)(以下,特に断りのない限り,「宅地」とはこの意味の土地をいう。)。
[4] 市町村は,施行区域(都市計画法(平成16年法律第61号による改正前のもの。以下同じ。)12条2項の規定により土地区画整理事業について都市計画に定められた施行区域をいう(法2条8項)。以下同じ。)の土地について土地区画整理事業を施行することができる(法3条3項)。
[5] 市町村が都市計画法12条2項に基づき定められる施行区域の土地について土地区画整理事業を施行する場合,事業計画等を定めなければならない(法52条1項前段)。事業計画においては,施行地区(土地区画整理事業を施行する土地の区域をいう(法2条4項)。以下同じ。),設計の概要,事業施行期間及び資金計画を定めなければならず(法54条,6条1項),市町村が土地区画整理事業を施行する場合,設計の概要について,都道府県知事の認可を受けなければならない(法52条1項後段)。また,設計の概要の設定に関しては,土地区画整理法施行規則(平成17年国土交通省令第102号による改正前のもの。以下「規則」という。)9条に定める技術的基準によることとされている(法54条,6条11項)。
[6](1) 原告らは,いずれも本件施行地区内に土地を所有する者である。

[7](2) 静岡県知事は,本件区画整理事業に係る設計の概要を平成15年11月17日付けで認可した(都市第○号。本件認可)。浜松市は,同月25日付けで施行者(土地区画整理事業を施行する者をいう(法2条3項)。以下同じ。)を浜松市,施行地区をP3鉄道鉄道線(以下「P3鉄道」という。)P2駅の西側約5.7ヘクタールとする事業計画を決定し(浜松市公告第○号。本件事業計画決定),同日,これを公告した。本件設計の概要における道路等の設計は,別紙2のとおりである(以下,別紙2の図面上の各交差点に付された記号を用いて,「交差点A」「交差点B」などと呼称する。)(乙1,6の3)。

[8](3) P3鉄道は,別紙3のとおり,P4駅からP2駅までの区間についてはほぼP5線に沿って南北に敷設され,P2駅から更に北方へ向けて敷設されている都市高速鉄道である。
[9] また,別紙3のとおり,都市計画道路×号P5線(以下「P5線」という。)は,浜松市の中心部を南北に縦断する計画の都市計画道路であり,都市計画道路×号P6線(以下「P6線」という。)は,浜松市の中心部の北方(P2駅付近を含む。)を東西に横断する計画の都市計画道路である。
[10] さらに,市道P7線及びその南方へ接続する道路(旧国道○号。通称「P8街道」といい,以下通称により呼称する。)は,P5線の西方を同道路にほぼ平行に縦断する(P2駅前の交差点においてP5線に合流する。なお,P2駅前以北のP5線の区間について「P8街道」と呼称される場合があるが,本件においては,上記区間については「P5線」の呼称で統一する。)道路である(乙1,10,11,弁論の全趣旨)。

[11](4) 原告らは,平成16年2月20日,当庁に本件訴えを提起した(顕著な事実)。
[12] 本件における争点は,次のとおりである。

(1) 本件事業計画決定が以下の各点により浜松市の裁量権の範囲を逸脱し,又はこれを濫用したものとして違法となるか(なお,原告らは,特に規則9条4号の技術的基準を例に挙げ,これに適合するかの判断については被告に裁量権がない旨主張するが,後記第3・2(1)ウのとおり,上記主張は採用できない。もっとも,規則9条4号の不適合に係る主張は以下の[3]の点の主張として整理する。)。
[1] 本件施行地区内の土地等の現況について事実の誤認等があること
[2] P3鉄道の連続立体交差化事業(以下「本件高架化事業」という。)に係る考慮の内容が妥当性を欠いていること
[3] 本件設計の概要中の公共施設の配置が法6条8項等及び設計の概要の設定に係る技術的基準その他の法令に適合しないことにより妥当性を欠いていること
[4] 宅地利用の増進を考慮すべきであるのにその考慮を欠いていること

(2) 本件施行地区外の他事業により通過交通を処理することが法3条3項並びに54条及び6条9項に違反するか。

(3) 事業計画書の記載に欠缺があり,本件事業計画決定を取り消すべき手続的違法があったか。
(原告らの主張)
ア 総論
[13] 市町村等が行う事業計画決定は確かに包括性及び全体性があり,ある局面では裁量性が認められるものの,全面的に裁量行為となるものではなく,[1]事実認定,[2]法定された要件の解釈,[3]認定事実の要件への当てはめ,[4]手続の選択,[5]どの行為をするかの選択等についての裁量の有無や,裁量がある場合の司法審査の在り方が検討されるのが通例である。法は事業計画が施行区域の住民の生活に広範かつ根本的な影響を及ぼすことに鑑み,道路の配し方等の局面では相当に具体的な規制をしていることは否定できず,その局面では裁量はないものというべきである。
[14] また,土地区画整理事業は,地権者(土地区画整理事業に関係のある土地について権利を有する者をいう。以下同じ。)の財産権及び居住移転の自由を侵害する結果を伴うのであるから,このような基本的人権の制約を凌駕するだけの事業利益や事業の必要性が明らかにされない限り,事業計画は違法である。
イ [1]本件施行地区内の土地等の現況について事実の誤認等があること
[15] 事業計画中,各地目別の土地の利用状況に関するデータは,事業計画において各地目に係る換地をどのように配置し,実施するか,資金計画の内容,各地目の減歩率など多方面に広範な影響を及ぼすものであるところ,本件設計の概要中の土地の利用状況に係る記載内容について,「農地」及び「その他」の各地目の地積が誤っている。すなわち,平成15年12月の原告らによる調査の結果,「農地」は0.2ヘクタール(本件施行地区内の宅地に占める割合4.95パーセント),「その他」は0.73ヘクタール(同18.06パーセント)であったにもかかわらず,同欄には「農地」が0.6ヘクタール(同14.85パーセント),「その他」が0.31ヘクタール(同7.67パーセント)とされており,大きく異なっている。この差異は,被告調査時点以降,多くの農地が駐車場用地となったことが原因と思われる。
[16] また,道路及び宅地の利用状況に係る記載内容については,準幹線相当の幅員約7メートルの通称P9通り(P5線のうちP2駅以南のP3鉄道沿いの区間をいう。以下同じ。)が存在するのに欠落している。これらは,事業計画を決定するについて影響のある事実の誤認である。
[17] また,本件施行地区内には農地はほとんどない現状であり,いわゆる虫食い状態とはいえない。また,農地が駐車場に転用されていくのはむしろ都市の発展における生理現象である。したがって,本件設計の概要が,本件施行地区はスプロール化が進行した地区とするのは誤った評価である。
ウ [2]本件高架化事業に係る考慮の内容が妥当性を欠いていること
[18] 本件事業計画決定は,以下に述べるとおり,1民間業者であるP10株式会社の保有するP3鉄道に係る本件高架化事業について、平成14年度末までに着工しないと国庫補助事業の見直しの対象となることから,これを免れるために必要とされたものである。したがって,本件事業計画は本件高架化事業の遂行の便宜のために計画されたものであるから,他事考慮であり,違法である。
[19] 本件高架化事業が国庫補助事業とされるためには,5ヘクタール以上の範囲を施行地区とする土地区画整理事業が必要とされていた。平成10年4月,本件高架化事業は国庫補助事業の対象となる新規着工準備箇所として採択されたが,その際,本件高架化事業の関連事業として,P11駅,P2駅及びP12駅の3駅周辺における3つの土地区画整理事業が挙げられていた。しかし,そのうちP11駅周辺の事業及びP12駅周辺の事業が取り止めになった上,P2駅西地区の事業についても浜松市が従前提示していた基本計画案が撤回されるに至っており,このまま平成14年度末までに本件高架化事業に着工できないと国庫補助事業の見直しの対象となるところであった。このため,浜松市においては,それまでに関連事業である土地区画整理事業について何らかのめどをつけることが至上命題であった。そこで,P2駅西地区において,5.7ヘクタールの面積(本件高架化事業が国庫補助事業とされるために必要となる最小の面積をわずかに超える。)を施行地区とする本件区画整理事業が強行された。その結果,後記エで述べるように,本件事業計画は極めて無理を重ねた内容となったのである。以上のとおりであるから,P2駅における本件事業計画は,本件高架化事業の遂行の便宜のために計画されたものである。
[20] 被告が指摘する法2条1項及び6条10項は,特殊都市計画に関してのみ都市計画に適合して定められなければならないとするにすぎない。また,都市計画の目的・趣旨に反しないように区画整理をすべきとしても,他事業を積極的に考慮し,他事業がなければ成立しない区画整理でもかまわないと読むのは論理の飛躍である。
エ [3]本件設計の概要中の公共施設の配置が法6条8項等及び設計の概要の設定に係る技術的基準その他の法令に適合しないことにより妥当性を欠いていること
(ア) P8街道の通過交通の代替として,区画街路を通過交通に供すべきでないこと(区画街路3号線,同2号線及び同7号線関係)
[21] 本件事業計画は,P8街道の一部廃止区間に代わる主要な代替道路として区画街路3号線(生活用区画道路)を配置しているところ,同区画街路は住宅地内に所在しており,本件区画整理事業の施行後も住宅地のままである。したがって,本件事業計画は,住宅地の道路を通過交通に積極的に利用する計画であるといえる。しかし,そのような計画は「住宅地においては,道路をできる限り通過交通の用に供され難いように配置しなければならない。」とする規則9条4号の規定に反する。
[22] また,本件事業計画の設計の方針,基本構想においては「区画街路は通過交通をなるべく排除するように配置する」とされているにもかかわらず,区画街路3号線,同2号線及び同7号線がいずれもP8街道の代替として通過交通の用に供される計画となっている。そして,これらの区画街路を通過交通の用に供する合理的必要性は何ら明らかにされておらず,通過交通の用に供することによる弊害を防止する措置も講じられていない。よって,上記の道路設計は,「健全な市街地の造成」という土地区画整理事業の目的(法1条)に反する。
(イ) P8街道の道路の一部廃止後の代替道路によっては要求される通過交通量を処理できないこと(区画街路3号線,P13線及び区画街路7号線関係)
[23] 本件区画整理事業に係る道路は,高速道路等ではない都市部の道路であることから,道路構造令上の第4種の道路となる。そして,第4種の道路に要求される幅員は少なくとも3メートル以上必要である。
[24] また,「道路には,車道に接続して,路肩を設けるもの」とされているが,第4種の道路における路肩は,最低でも道路の左右にそれぞれ0.5メートル以上設けなければならない(道路構造令8条2項及び4項。)。さらに,路側帯を設ける場合には,最低でも0.75メートル幅で設定することが必要である(道路交通法施行令1条の2)。以上を前提に,以下検討する。
a 区画街路3号線について
[25] 区画街路3号線は,車道2車線を基本に左折車線を設ける,つまり最大3車線の設計である。したがって,[1]仮に路側帯を設けず,最も道幅が狭くてもよいように設計するとしても,車線幅3メートル×2+左折車線3メートル+路肩0.5メートル×2=10メートルとなり,道路の全幅は10メートル必要である。また,[2]現道と同様に,歩行者のために路側帯を1メートル設ける場合には,車線幅3メートル×2+左折車線3メートル+路肩1メートル×2=11メートルとなり,道路の全幅は11メートル必要である。
[26] しかるに,本件計画では,道路は全幅9メートルと計画されており,全体で2メートル道幅が足りない。
[27] このように,そもそも道路法及び道路交通法の規定を遵守しない道路設計が法1条,2条,6条8項,規則9条1号に適合することはあり得ない。
b P13線について
[28](a) P13線は,全幅6メートルの道路とするものと予定されているから1車線にしかできないはずであるところ,P13線は区画街路3号線と併せP8街道の大量の通過交通(平成7年の調査によれば1日1万3900台)を処理する機能を有しなければならないのに,1車線では交互通行をするほかないこととなり,これだけの交通量をさばくことは到底無理である(なお,仮に2車線とすると,道幅は車線だけで3メートル×2で6メートル必要であり,路肩又は路側帯の分の幅員が不足せざるを得ないから,明らかに道路法ないし道路交通法に適合しない道路となる。)。
[29](b) このような道路の設計の欠陥・不備から,交通量が明らかに少ない夜間の時間帯を除き,常に交通渋滞が生じることとなる。具体的には,交差点Gの東方向から交差点Hへ向かおうとする車を交差点Gの東側に渋滞させ,また,交差点Hの西方向から交差点Gへ向かおうとする車を交差点Hの西側に渋滞させることとなる。さらに,交差点HにおいてP8街道の南方から右折して交差点Gへ向かおうとする車が片側一車線のP8街道に縦列することとなって渋滞を引き起こし,他方,P5線の交差点E方面から来て交差点Gを右折しようとする車が右折帯において渋滞を引き起こす。
[30](c) したがって,法6条8項及び規則9条1号に違反する。
c 区画街路7号線について
[31] 区画街路7号線も通過交通に供されるところ,交差点FにおいてP8街道の南方から右折して交差点Eへ向かおうとする車が,片側一車線のP8街道に縦列し新たな渋滞を引き起こす。したがって,法6条8項及び規則9条1号に違反する。
(ウ) 区画街路2号線の配置が不適切であること
[32] 交差点Dは,P2駅に近く,最も通行者の多いところである。また,P2駅の北方からP8街道を経て浜松市の中心市街地方面へ向かう通過車両のうち,交差点Cを右折して交差点Dで左折し,区画街路2号線を利用する車両が相当数あると見込まれる。したがって,交差点Dに信号機が設けられないと交通事故発生の危険があるから,信号規制の必要性は高い。
[33] しかるに,公安委員会との交渉によっても交差点Dには信号機が設置できないというのであるから,本件事業計画は交通事故の発生の危険性が高く,法6条8項に違反する。
(エ) P6線及びP5線によって通過車両を処理できないこと
[34] P6線は,交差点Bの西側わずか130メートルを新設するだけで,その西側は本件施行地区外とされたため,行き止まりの状態となる。したがって,通過車両を処理することはほとんど無理である。被告は,都市計画道路としてP6線を完成させるとするが,土地区画整理事業は自己完結すべきものであり,他事業を前提とすることは不当である。仮に他事業を考慮することが許されるとしても,事業計画決定時において,間近な時期に予算的な裏付けの下,確実かつ具体的に実行される高度の蓋然性がある場合に限られるところ,都市計画道路×号P6線は,決定後47年経っても未だに実施されておらず,その他本件において上記場合に該当する他事業は存在しない。
[35] また,P5線についても,本件施行地区以北の拡幅工事が行われないため,通過交通の効果が上がらない。
(オ) 交差点Aの形状が危険で,かつ利便性が悪いこと
[36] 交差点Aでは,本件施行地区内の片側2車線の道路と地区外の片側1車線の道路が接続されて車線が減少するため,P5線の北方方向の車線において渋滞が発生し,交差点Bの交差点機能に影響を与える。また,既存道路と都市計画道路の中心線が大きく異なるため,屈曲道路となり通過交通の円滑な通行を妨げる。したがって,南北方向ともに通過交通量をさばききれず渋滞の発生を引き起こすと同時に,事故発生を引き起こす危険を創出する。
[37] また,交差点B以北が片側1車線となる場合にも,交差点Cから交差点Bを直進する車両,P6線から交差点Bを左折又は右折して北方に向かう車両の合流による渋滞が生じる。
[38] 被告は,P5線の本件施行地区外において用地買収を行い,現道に擦り付ける計画であると主張するが,後記(2)のとおり事業が施行地区外にわたることは許されないし,本件事業計画決定時では,これを実施する施行計画等が何ら示されていなかったものである。また,P5線は,都市計画決定後63年を経てもこの計画に基づく事業は実施されておらず,本件区画整理事業は,このようないつ完成するとも知れない他事業と一体である点においても法6条8項の要求を満たさない。
[39] さらに,A交差点は右折ができず,信号規制も設けられないこととなり,大きく回り道をしなければ目的地へ到達できない車両が生じることが容易に予想され,利便性が悪い。
(カ) 区画街路1号線の配置が東西交通に資さないこと
[40] P2駅に西側から接続する区画街路1号線は,高架化がなされても駅前広場に接続するだけで,その東側に貫通する道路はなく,東西交通に資するところはほとんどない。
(キ) 公園配置の設計の不備
[41] 本件設計の概要における公園の配置について,以下のとおり設計の不備がある。
[42]a 現在,公園については,別紙4のとおり,本件施行地区の近隣東側に1か所,北側にP14公園を含み2か所が配置されている一方,西側及び南側には設けられていない。しかし,本件設計の概要では,公園の位置は本件施行地区の北東角地に配置されており,「都市公園の分布の均衡を図ること」とする都市公園法施行令2条1項柱書の規定に反するものである。
[43]b 本件設計の概要では,公園の位置は本件施行地区の北東端で,かつ,居住者の全くいない位置である。また,児童の遊戯,運動等に活用されることが予定されるところ,この公園に至るには幅員30メートルの道路等を横断しなければならず,交通事故等の危険が高く,不便で危険を伴うものである。さらに,公園内に高架が存在することは,公園の最大の利用者である子供達がスポーツのためなど通常の利用をする妨げとなる上,騒音と日影がある状況は癒しと休息の場としての公園には適さない。以上から,本件設計の概要は「街区内に居住する者が容易に利用できるように配置すること」とする都市公園法施行令2条1項1号の規定に反するものである。
[44]c 管理の負担や防犯等の観点からは高架下の公園は有害である。
(ク) 駅前広場の設計の不当性
[45]a P2駅においては,平成13年のデータに基づけば,1日当たりの利用者数は多くなく,また,徒歩,自転車の利用者が多く,自動車で送迎を行う者は非常に少ないのが現状である。このような駅に4255平方メートルもの駅前広場(送迎レーン)を設けることは不適切である。
[46]b また,[1]P2駅西側から同駅へ向かう利用者は,幅員30メートルのP5線を横断しなければならなくなり不便かつ危険であるし,[2]駅前広場内に通過車両が流入し危険である。その上,被告の示した駅前広場の整備予定図においては,[1]駐輪場が駅東側にしかなくなること,[2]駅前広場とP5線の間の出入口に横断歩道が設けられるところ,信号があっても危険であること,[3]本件B調査においてP2駅におけるタクシー利用者はわずかとされているのに,タクシー待機スペースが10台分も設けられていることといった不合理な点がある。したがって利便性を欠くこととなる。
[47]c さらに,公共交通機関といえども,1私企業たるP10株式会社の駅前広場を拡張するため,当該土地を地権者から提供させるのは,違法な設計である。
(ケ) P8街道の通過交通量の減少弊害
[48] P8街道の通過交通量の減少弊害が沿道商店街や工業に悪影響を与え,かつ市中心部の空洞化現象を助長する。
オ [4]宅地利用の増進を考慮すべきであるのにその考慮を欠いていること
(ア) 減価補償金の意味及びこれが必要となる場合
[49] 土地区画整理事業施行後の宅地の価額の総合計が,施行前の宅地の価額の総合計よりも低くなる場合,施行地区内の宅地の所有者等の地権者に対し,その者が受ける財産的損害の填補として,減価補償金を支払う。
[50] 事業施行前の宅地の面積に比して,施行後の宅地の面積が著しく少なくなる場合等に,減価補償金が必要となる。
(イ) 本件の場合
[51] 本件は,上記場合に該当する。本件事業計画においては,保留地(土地区画整理事業施行前の土地の総額と,施行後の土地の総額による増加額に相当する地積分を,換地として定めずに,施行者において取得する土地をいう。以下同じ。)をとらずに,公共減歩(公共施設用地に充てるための減歩をいう。以下同じ。)だけで32.64パーセントとされている。この減歩を緩和するために,施行地区内の土地を地方公共団体が買い上げて施行前の宅地の面積を減少させ,その上で減歩をかければ,減歩率は緩和される。このようにして,減歩率を18.04パーセントにまで下げるという。そして,この買上げに要する費用を,本来ならば地権者に交付すべき減価補償金をもって賄うというのである。
[52] 減価補償金を宅地の購入の費用に充てるということは,補償金の目的外使用であり,問題がある上,この方式は,土地収用法に基づく収用手続同様,施行地区内の地権者が土地を売って地区外に移住することを促すことになり,施行地区内の地権者と意見交換をしながら事業を進める方向とはいい難い。
(ウ) 用地買収の重さ
[53] 本件事業計画における減歩は,全部が公共減歩によるものである。本件事業計画では,減価補償金をもって用地買収をし,減歩率を32.64パーセントから18.04パーセントにまで下げることが予定されているところ,そのためには宅地7207.19平方メートルを買収しなければならない。これは整理前宅地地積の17.8パーセントに当たる。
[54] また,これだけの面積の宅地を所有(又は使用・収益)していた地権者に本件施行地区から出て行ってもらうことになり,実際に本件施行地区では,地権者109名のうち40名が土地の買収に応じて転出した結果,公共施設用地の比率は,施行前は(消滅する水路を含めて)28.73パーセントであったのが,施行後は51.99パーセントと急増している。
[55] 区画整理は,施行地区内の土地の所有者及び使用・収益地権者が少しづつ減歩分の土地を提供しあって,施行地区内の公共施設を整備改善し,宅地の利用増進を図ることに最大の特色を有しており,地区外に転出する地権者を予定すること,公共施設用地が半分を超えること(その分宅地の割合が少ないこと)は住民の犠牲を前提としており,その事業の法2条適合性を減退させるものである。
[56](エ) また,上記エにおいて述べたとおり,本件設計の概要における道路の配置は極めて計画性に乏しく,宅地利用の増進につながるとは思われない。
[57](オ) 以上より,本件事業計画は,宅地利用の増進に対する考慮を欠いている。

(被告の主張)
ア 総論
[58] 土地区画整理の事業計画には,多数の当事者が関与することもあって,公平性,経済性や地域の特性に対する配慮など,数多くの要請を取り入れることを要する。この意味で,非常に合目的的,政策的な面がある。他方,上記のような数多くの要請を取入れるためにどのような計画として実現を目指すかについて,施設の配置や街路の設計その他,非常に専門的技術的な面も強く存する。このようなことから,事業計画の決定には,広い裁量が認められることになる。
イ [1]本件施行地区内の土地等の現況について事実の誤認等はないこと
[59](ア) 原告らが主張するような前提事実の誤りは,後記(イ)のとおり誤りではないし,極めて些細な,結論に影響を及ぼさないようなものにすぎない。
[60](イ) 本件設計の概要中の「土地の利用状況」欄には,原告らが指摘する誤りはない。被告は,規則6条2項2号に基づき本件施行地区内の土地の現況を把握するために行った現況調査に基づき面積を算出したところ,その調査時点と現時点(原告らの調査した時点)で地目の変更があったために地目間の移行が生じたにすぎない。また,本件事業計画における土地の利用状況表は,事業計画作成時(平成13年)のデータであり,その後一部農地の宅地への転用がされているが,常に事業計画決定時に最新の調査結果によらなければならないものではなく,地区の概要把握という目的からすれば支障はないから,事業の施行に影響はない。
[61] また,事業計画書添付の設計図のとおり,設計上は通称P9通りを考慮しており,これが抜け落ちたのではない。
[62] また,本件施行地区には建物のない空地がところどころに見られ,スプロール化(都市が郊外に向かって市街地を拡大させる際に無秩序な開発が行われること)が進行している。
ウ [2]本件高架化事業に係る考慮の内容が妥当であること
[63](ア) 浜松市においては,市内の交通は,P3鉄道の踏切(21か所)により東西交通が分断されており,それを解消することが市内交通の円滑化にとって極めて重要な課題であった。
[64] また,P3鉄道のP2駅は,P15駅の北方約4.5キロメートルに位置し,浜松市の都市計画マスタープランにおいて,特に同駅周辺地区については,地区生活拠点として周辺地区住民の利用も考慮した交通結節点として整備するなどとされた重要な地区である。
[65](イ) しかし,P2駅の周辺地区は,本件事業計画決定の日である平成15年11月25日以前の時点において,P2駅前の変則交差点のため,ラッシュ時に交通渋滞が発生しており,駅東側については,土地区画整理事業による基盤整備が終わっているものの,駅西側から国道○号線までの地域は,道路が狭く,大雨になると浸水が発生するなど防災上の観点からも拡幅が必要であり,中には,上水道・下水道が整備されていない宅地もある状態である。また,駅前の歩道については,小学校及び中学校の通学路に指定された道路でありながら,歩道は2メートル以下と狭く,安全な歩行者空間の確保等にも課題を残しており,基盤整備が遅れている地区といえる。
[66](ウ) 上記の問題を解決するために,本件事業計画は,P3鉄道の連続立体交差事業と一体的に行われることにより,P3鉄道を立体交差化して,東西の交通を円滑にし,かつP3鉄道に沿う道路を整備して南北方向の道路交通も円滑にし,これと同機会に,駅前等の面的整備を行い,その地区の宅地の位置,形状等を整え,上下水道の設置や建築基準法に適合した建物の建築を可能にして,良好な都市環境を有する市街地の形成を図ろうとするものである。
[67](エ) また,本件区画整理事業とP3鉄道の連続立体交差事業は,東西交通の分断の解消等の点でその目的を同じくするものであるところ,同一目的に向けられた複数の事業について全く無関係に立案され,実行されることは好ましくなく,有機的な強い関連性をもって,可能な限り一体的,整合的に立案され,推進されるべきである(都市計画法13条1項,法2条1項,6条10項,都市計画運用指針(平成12年12月28日付け建設省都計発第92号建設省都市局長通知)IV−2−3・2(3)参照)。ただし,もとより両事業はあくまで別事業であり,一方の便宜のために計画されたものではない。
[68](オ) 本件事業計画が従前の事業計画案から縮小されたのは,住民の意向に沿って,必要性の特に高い地域に限って事業を行うことにしたものである。したがって,不当な目的・動機から面積を縮小した無理な計画を立てたというようなものではない。
エ [3]本件設計の概要の内容が妥当であること
(ア) 道路について
[69] 上記ウ(ア)及び(イ)記載の課題を解決するために,本件事業計画は,本地区内にP5線(幅員30メートル),P6線(幅員27メートル)ほか幅員4メートル(事業計画変更後は6メートル)以上の整然とした区画街路を配置し,これと併せて歩道を整備し,公園1か所の新設,駅前広場の整備,上下水道の整備,宅地の全てが公道に面するようにしようとしている。
[70]a まずP3鉄道の連続立体交差事業により,同鉄道線の軌道を立体交差化して東西の道路交通を円滑にすることにした。
[71] P2駅前の変則交差点の解消については,P8街道を一部廃止することにより,P2駅前の交差点を十字路にし,代替道路として区画街路2号線,区画街路3号線などを配置することにより,P8街道に替わる機能の確保を図る計画とした。P8街道については,これまで幹線道路である都市計画道路×号P16線として計画上の幅員25メートルとしていたのを,昭和60年5月28日に廃止した。そして,それに代わる幹線道路として,都市計画道路×号P17線(計画上の幅員20メートル・2車線)をP18町まで延長し,P5線とした。これは,これまでのP8街道の拡幅が既に市街が形成されていて困難なことから,同道路の通過交通を,浜松市の中心部を通り,都市計画道路×号P19線(国道×号)までつながっている幹線道路であるP5線で処理するのが有効であるため,このような計画としたものである。
[72] さらに,平成14年6月18日には,浜松市の南北都市軸として,P5線をP3鉄道の連続立体化と一体的に整備を図ることとし,幅員を30メートル(4車線)に変更した。これにより,P8街道は幹線道路ではなく,幹線道路と区画道路の連結の用をなし,また,近隣住区の生活幹線道路の用に供する道路である補助幹線的道路としての位置付けとされている。
[73]c 区域内道路については,幅員4メートル(事業計画変更後は6メートル)以上の整然とした区画街路を配置している。
[74] 区域外の道路については,別事業で整備することになるが,本件事業計画と整合的に行い,原告らの主張するような形状の悪いものとなることはない。
[75] 都市計画として整備する道路についても,都市計画決定は具体的なものとして存在している。都市計画の実現には,極めて長期間を要するものであるが,本件事業計画に併せて,優先的に施工し,完成を急いでいる。完成の時期も明確になっている。
[76]d 歩道の整備については,上記区域内道路の整備と併せて行い,更に駅前広場の整備と併せて行っている。
(イ) 公園及び駅前広場等の公共施設の整備について
[77] 既に述べたように,本件区画整理事業計画においては,P3鉄道の立体交差化と併せて行うことによって,駅前等の面的整備を行い,公園1か所の新設,駅前広場の整備,駅前の歩道の整備等をしようとしている。公園については,鉄道高架の脇に設ける計画となっている。ここは住宅等に使用することに適さない土地なので,駅前広場と一体的な利用を図ることができる憩いの場として整備する計画である。
[78] また,駅前広場については,現在,駅東側の駅前広場には,送迎レーンが設けられていないので,日常的に路上に送迎車が駐車するため,本件区画整理事業により,駐輪場や送迎レーンの整備などを行うことにしている。
(ウ) 原告らの主張に対する反論
[79] 原告らの主張は、事業計画の法令等に定められた基準との乖離ないしこれからの逸脱を主張するのでなく,現行計画を前提として,原告らが考えた修正ないし改善案を基準にして,これと異なっていると批判しているにすぎない。このような主張の仕方は,行政事件訴訟法30条の定める枠組みにおよそ合致しないというべきであるが,以下のとおり,原告らの主張に対し個別的に反論する。
a P8街道の通過交通の代替として,区画街路を通過交通に供すべきでないとする原告らの主張に対する反論(区画街路3号線,同2号線及び同7号線関係)
[80] 中心市街地からのアクセス道路としては,P5線を配置することにより通過車両を処理する計画である。区画街路3号線や同7号線についてはP8街道沿道の利用者のためのアクセス道路として計画しているものである。
[81] 本件事業計画では,通過交通の用に供される道路と供され難い道路を区別して整備しており,どの道路にも通過交通が流入するということはなく,規則9条4号には違反しない。
b P8街道の道路の一部廃止後の代替道路によっては要求される通過交通量を処理できないとする原告らの主張に対する反論(区画街路3号線,P13線及び区画街路7号線関係)
[82] 区画街路3号線の幅員は9メートル(事業計画変更後10メートル)であり,P5線との交差点(交差点G)においては信号による処理を行い,左折車線を設ける計画である。また,施行地区外のP13線においても6メートル(その後10メートル)に拡幅する計画である。したがって,普通自動車の通行も可能である。
[83] また,区画街路7号線は,幅員6メートル(事業計画変更後8メートル)に拡幅することを計画しているものであり,本件施行地区内の交通処理を含め,円滑な通行が促進されるよう渋滞のない計画を進めている。なお,P8街道からP2駅の北方へ向かう車両は,区画街路3号線等を通って交差点GでP5線に合流することが見込まれ,区画街路7号線の交通量の増え方は区画街路3号線ほどではない。
[84] 交差点での渋滞防止については右折禁止等の交通規制で制御することになるが,関係機関との協議を要するから,全てを被告において決定することはできない。
[85]c 区画街路2号線の配置が不適切であるとする原告らの主張は争う。
d P6線及びP5線によって通過車両を処理できないとする原告らの主張に対する反論
[86] P6線の区域外は,区画整理事業の進捗に併せ別事業で整備を進めていく計画であり,完成時には,本件地区内を通過する車両の交通を処理できる計画である。
[87] また,P6線は昭和37年3月22日に,P5線は昭和21年10月4日に,それぞれ都市計画決定され,いずれも平成14年6月18日に最終の変更決定がされた具体的計画であるところ,目的を同一にする複数の行政計画は,一体性,整合性のあるように計画,推進されるべきである。なお,都市計画道路は,全区間にわたり均等に完成を目指すものではなく,長い期間を要するものである。また,他事業については事業計画決定後,これに合わせ施行地区内,地区外の整備工程等を細部に調整し,事業を実施していくものであるので,事業計画決定の段階で他事業の予算措置はしていない。
e 交差点Aの形状が危険で,かつ利便性が悪いとする原告らの主張に対する反論
[88] 交差点Aについては,P5線の本件地区外(北方)において用地買収を行い,現道に擦り付ける計画である。また,P5線は,P6線との交差点(交差点B)の北側においては片側1車線となる計画であり,交差点Bには右折車線を設ける設計であるから,原告らの指摘するような渋滞や交通事故の発生を引き起こす危険を創出するおそれはない。
[89] 交差点Aは交通量が多く,信号機が設けられないため,どの方向からも右折は困難で,東西方向に直進することも難しい。交差点Bにおいて右折をすることになるが,道路状況によりそのような交差点が生じることもやむを得ない。
(カ) 区画街路1号線の配置が東西交通に資さないとする原告らの主張に対する反論
[90] 東西の通過交通は,P6線により処理する計画である。区画街路1号線について,自動車が駅前広場を東西に通過できるように配置したのは,自治会等の近隣の住民の要望を受け,その利便のため,東西の往来を可能としたものであって,東西の通過交通の用に供するためのものではない。
(キ) 公園配置の設計の不備に係る原告らの主張に対する反論
[91]a 公園の配置については,既成市街地で行う土地区画整理事業である以上,地権者の換地を優先的に配置する等の制約がある中で,面積・配置とも適切なものである。公園に広大な土地を用いれば,減歩率が高くなり,地権者の了解を得られるものではない。本件の場合,鉄道高架の脇の,住宅に適さないような土地を充てることになる。
[92]b P5線には4.50メートル,区画街路1号線及び区画道路2号線には3.50メートルの歩道をそれぞれ設け,自動車交通と歩行者の分離を図っており,歩行者の安全性は確保されている。したがって,公園の配置が道路との関係で都市公園法施行令に反するものではない。
(ク) 駅前広場の設計の不当性に係る原告らの主張に対する反論
[93] 駅前広場は,都市計画道路×号P2駅停車場線(以下「P2駅停車場線」という。)の一部として設け,その面積を確保し都市施設として本件区画整理事業で整備することとなっている。
[94] また,現在,駅東側の駅前広場は,送迎レーンが設けられていないため,路上に送迎車が駐車する実態がある。本件区画整理事業により駅前広場の整備(駐輪場及び送迎レーンの整備等)を行うことにより,区画整理事業の目的にあった計画としている。なお,本件事業計画決定時には,駅前広場の位置及び面積は決定していたが,その詳細は決定しておらず,関係機関と調整した上で整備していくものとされた。
[95] なお,駅西側にも駐輪場を設ける予定であり,P2駅の西側には信号機により交通整理がされる横断歩道が設置される。
オ [4]宅地の利用増進の考慮が欠如しているとする原告らの主張に対する反論
[96](ア) 既成市街地の土地区画整理事業においては,減価補償金の交付となる地区が多い。なぜなら,区画整理事業区域面積の大小にかかわらず,施行前の公共施設の面積の比率に比して,施行後の公共施設の面積の比率の方が高くなれば,必然的に減歩率が高くなり,それに合わせて減価補償金が多くなるからである。
[97] 本件においては,道路の整備改善が本件区画整理事業において大きな比重を占める。このため,道路の面積が増え,どうしても減歩率は高くなる。その結果,宅地の面積が減少するため,施行後の宅地の価額の総額が施行前の宅地の価額の総額より減少することになり,減価補償金を交付すべきことになるのである。そこで,減価補償金相当額の範囲内で,従前の宅地を公共施設充当用地として先買いを行い,減歩率を低減して,減価補償金を交付しないようにしているのである。
[98] すなわち,本件地域は既成市街地にあるため,地価が高く,減歩率に比して宅地の利用増進(価格のさらなる増加)が見込めないため,減価補償金を交付すべきこととなるのであって,これにより事業計画が違法であるとの評価に結びつくものではない。
[99](イ) 原告らは,先買いにより地区外に出て行く地権者を生むと主張するが,都市計画道路を都市計画事業として施行すると用地買収となり,道路用地内に居住する地権者は本人の意向と関係なく移転しなければならず,また道路用地内のみの買収となって不整形地や宅地として利用できない土地が残る。他方,土地区画整理事業による用地買収では,本人の希望による任意の用地買収となり,道路用地内の地権者も換地として地区内に残ることができ,道路用地以外の地権者も希望により買収対象となり地区外へ転出できるという利点がある。
[100] この点,浜松市内において,土地区画整理事業を行った他地区の状況に比しても,本件区画整理事業における平均減歩率が特に高いこともなく,転出者が特に多いこともない。
(原告らの主張)
[101] 法3条3項を反対解釈すれば,施行区域外の土地については,区画整理事業を施行することはできないということになる。しかるに,本件事業計画は,施行区域外の道路(P13線等)を利用し,かつ道路の拡幅を行わなければ通過交通処理ができない道路の設計であり,施行区域外にも土地区画整理事業を行うものといわざるを得ず,明らかに同項に反する。
[102] 法6条9項は,事業計画においては,施行地区は施行区域の内外にわたらないように定めなければならないと定めている。本件事業計画において施行地区内の道路(P8街道)を廃止することに伴う通過交通処理は本来施行地区内で対処するべきものである。しかるに,本件事業計画は施行地区外のP13線等を利用するものとしており,施行区域の内外にわたる設計となっており,同項に違反する。

(被告の主張)
[103] 争う。
(原告らの主張)
[104] 幹線道路であるP8街道の改変は,本件事業計画における公共施設の整備としては相当に重要なものであり,施行地区の住民やP8街道の広域的な利用者にとっても重大な関心事であるところ,本件事業計画決定に係る事業計画書(乙1)にはP8街道に関する記載が欠けており,同書に添付された設計図(乙6の3)には道路の廃止区間の注記もなく,一般住民がこの図面からP8街道が一部廃止されるという計画を読み取ることは困難である。そうすると,住民が法55条2項に基づく利害関係人の意見書の提出権等を正当に行使することも困難であり,上記手続的瑕疵は,それ自体本件事業計画決定の取消事由となる。

(被告の主張)
[105] 争う。
[106] 後掲証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下のとおりの事実が認められる。
ア 本件A調査の実施
[107] 被告は,平成5年度において,鉄道軸を積極的に市街地整備に活用していくことが求められているとし,特にP2駅西地区周辺を含むP3鉄道の第1期高架区間以北については,自然環境を生かした良好な市街地の形成,P3鉄道高架の延伸と連動した計画的整備が期待されるとして,P2駅西地区及びP11駅を対象とした土地区画整理事業による計画的市街地形成に向けての基本構想の策定を目指すこととした。そして,広域的条件調査(都市の広域的位置付け,特色,市街化の進行等について調査し,調査地区の広域的条件を明らかにするもの)及び現地踏査(行政当局,関係機関,住民等の意見等を聴取し,実際に現地を踏査するもの)を行った上,平成6年3月,市街地環境評価並びに整備課題の設定及び前提条件の整理を踏まえた基本方針を策定した(以下,この基本方針の策定及びこれに向けて行われた調査・検討活動を「本件A調査」という。)。
[108] 本件A調査の基本方針においては,P3鉄道沿線地域は人口の増加が顕著であるが,これに対応した基盤整備や良好な住宅地供給が進んでいないこと,P3鉄道を境として東西地域の交流が阻害されていることなどの現状及び問題点が指摘され,これに対し,連続立体交差化事業の推進によって,駅周辺の整備を併せて行うことによる新たなまちづくりの展開が可能となること,東西間のコミュニティ形成や日常生活圏の拡大を期待できることなどの効果を見込めるものとされた。また,P3鉄道の連続立体交差化と幹線道路であるP5線の一体的な整備により,鉄道と道路双方の利便性を生かした都市軸を形成するものとされた。さらに,P6線は,市街地外縁部を環状に取り巻く幹線道路として,地域間を連絡する道路の性格を有し,交通結節点であるP2駅へアクセスする広域的な東西道路として位置付けられるとされた。他方,P8街道は,地区内の幹線道路や区画道路との連絡機能等を有する補助幹線道路として位置付けられるが,円滑な交通処理が行われるよう特にP2駅部での交差点形状を改善することが必要であるとされた(乙5・3頁,103頁ないし105頁,131頁ないし136頁等)。

イ 本件B調査の実施
[109] 被告は,P3鉄道の連続立体化事業の見通しがはっきりしつつあり,P2駅西地区の整備がP3鉄道沿線の良好な市街地形成を図る上で緊急かつ重要な課題となっているとし,本件A調査を踏まえつつ,P2駅西地区の約51ヘクタールの区域を対象に,土地区画整理事業の実施に向けて実態調査を行い,平成8年3月,区画整理設計及び整備効果の検討を踏まえ,基本計画案を作成した(以下,この基本計画案の策定及びこれに向けて行われた調査・検討活動を「本件B調査」という。)。
[110] 本件B調査においては,区画整理設計案として,面積を28.6ヘクタールとする案(別紙5)が作成された。しかし,採算性や現実性の観点から地区の大改造には問題があり,ある部分においては現状保全を前提とした改良型の整備とすることで対応可能なものもあるから,地区全体を一団の事業区域として全面的に整備するのではなく,早期に整備すべき区域を「まちづくり」の第1期の事業として促進する方法もあるとした上で,早期整備又は地区の骨格的整備を進めるために必要な区域を抽出し,その区域の事業化をできるだけ早い時期に実現し,残る区域の整備を進めるトリガー(引き金)として「まちづくり」の中核となるべき区域の設定を検討することとされた。ここにおいて,本件施行地区の大部分を含む7.5ヘクタールの地域(別紙6の「A」と記載された地域)がP2地区の整備の核となる区域とされ,これにP6線(国道○号線との交差点からP3鉄道との立体交差付近までの区間)及びP5線(P6線との交差点付近以南の区間)が供用化されることとなる区域(別紙6の「B」及び「D」と記載された地域)を加えることが望ましいとされるなどした結果,本件施行地区を含む約15.46ヘクタールの区域(別紙7)が,基本計画案の策定区域として設定された。なお,上記7.5ヘクタールの地域については,駅前広場と変則交差点の解消に伴う街区の再編が必要であるため面的整備に適するもので,公共減歩率がかなり高くなる一方,P2駅前の整備は地区活性化の重要な要素であるため,この地域内の地権者の受益が大きいものとされた(乙4・2頁,78ないし89頁等)。

ウ 駅前広場面積に関する調査・検討
[111] 本件高架化事業に関連する調査及び本件B調査において,駅前広場面積の算定方式である「48年式」(駅前広場内に設けられる施設別に利用者やピーク時の車両数などから施設規模を決定し,各施設の面積の合計面積として駅前広場の規模を算出する方法)によりP2駅前の駅前広場に必要な面積が算定されたが,その結果は,それぞれ,最小でも2909平方メートルから3463.3平方メートルまでの範囲の面積が必要とされた(甲17・58頁,甲19の1・94頁,乙4・58頁,63頁。ただし,甲19の1及び乙4については駅前広場をP2駅西側にも設けた場合の東西の合計面積)。

エ 都市計画決定に至る経緯
[112](ア) 被告は,本件B調査を踏まえて,計画区域を約16.2ヘクタールとする基本計画を作成し,地権者に対して提示した。しかし,地区全体の約90パーセントという大多数の反対を受けて,平成9年10月にこれを撤回した(乙2の1,乙2の2)。
[113](イ) 被告は,本件高架化事業及び都市計画道路の整備だけではP2駅前の変則交差点がそのまま残ってしまうことから,特に整備をする必要性の高い地域に限って土地区画整理事業を行うことにし,平成11年度から同13年度にかけて,P2地区の住みよいまちづくり委員会の委員による協議会等において地区住民との協議を実施した。
[114] その際,被告は,上記委員会に対し,施行地区の面積について,本件高架化事業について国から補助金が得られる形で5.7ヘクタール前後とするのはどうかと提案したところ,上記委員会もこの面積を了承した。
[115] そこで,被告において計画区域を約5.7ヘクタールとする整備計画案を作成し,地権者に対して提示した結果,総地権者の約3分の2の賛成が得られた。
[116] 被告は,これを踏まえ,上記整備計画案に基づく都市計画案(区画整理区域を決定するなどしたもの)を浜松市都市計画審議会の審議に付し,平成14年4月26日には原案どおり異存がない旨の答申がされた)。(甲11,乙2の1,乙2の2,P20証言6頁)。
[117] その後,平成14年5月29日には,静岡県都市計画審議会の審議等を経て,被告は,同年6月18日,都市計画法12条1項に基づく本件区画整理事業についての都市計画(施行区域を約5.7ヘクタールとする。)を決定し(以下「本件都市計画決定」という。),同日,これを告示した(乙2の1,乙2の2)。

オ 事業計画決定等について
[118] 被告は,平成15年8月,法55条1項前段に基づき本件区画整理事業に係る事業計画案の縦覧を行い,同年11月17日,静岡県知事による本件認可を経て,同月25日,本件事業計画決定をし,同日,これを公告した(前提事実(2),甲2,乙2の2)。なお,本件事業計画の内容(抜粋)は,以下のとおりである(乙1,乙6の3)。
(ア) 土地区画整理事業の名称
 P1広域都市計画事業P2駅周辺土地区画整理事業
(イ) 施行者の名称
 被告
(ウ) 施行地区
 P15駅から北方約4.5キロメートルに位置し,P3鉄道P2駅を中心とした面積約5.7ヘクタールの地区
(エ) 設計の概要
a 設計説明書
(a) 事業の目的
 本件施行地区は,浜松市北部地域で重要な交通結節点となっているが,現状は平面鉄道による地域分断,公共施設整備の立ち遅れ,商業の衰退化及び土地利用の混在等の問題が生じているため,P3鉄道の連続立体交差事業と本件区画整理事業を一体的に行うことにより,良好な都市環境を有する市街地の形成を図る。
(b) 施行区域内の土地の現況
 本件施行地区の一部には農地が残っていて,スプロール化が進行した地区である。
 平成13年10月現在の本件施行地区内の人口は約340人であり,土地の利用状況は,農地が0.6ヘクタール,その他(住宅地,商業地,工業地,農地,鉄道用地及び公共用地以外)が0.31ヘクタールである。
 道路の利用状況は,南北方向に市道P7線(P8街道),東西方向に市道P21線が整備されている。これら以外の道路としては4メートル程度の地区内生活道路が配置されている。
(c) 設計の方針(公共施設の基本構想)
 道路は,中心市街地へのアクセス道路としてP5線(幅員30メートル)を配置し,東西方向にP6線(幅員27メートル)を配置することにより,通過車両を処理し,地区内の生活道路として区画街路を配置する。区画街路は通過交通をなるべく排除するよう設置し,一部には歩道付き区画街路を配置し,歩行者導線の確保を図る。
 また,P5線及びP3鉄道の整備に合わせたP2駅へのアクセス機能の向上を図るため,駅前広場(面積約4255平方メートル)を配置する。
 公園は,駅前広場北側に街区公園(主として街区内に居住する者の利用に供することを目的とする都市公園をいう。以下同じ。)を配置し,駅前広場と一体となった利用を図る。
(d) 本件区画整理事業施行前後の地積
[1]公共用地 施行前 28.73パーセント
       施行後 51.99パーセント
[2]宅地   施行前 69.82パーセント
       施行後 48.01パーセント
(なお,[2]宅地の内訳については,施行前は「宅地」(建物の敷地の意味である。この文に限り以下同じ。),「田」,「畑」,「雑種地」及び「鉄道用地」の各種目が存するが,施行後は「宅地」のみとなっている。)
[3]保留地  保留地は設けない
(e) 減歩率の計算
 本件区画整理事業施行前の宅地地積(測量増減を反映後)
  4万0478.09平方メートル…α
(減価補償金の範囲内で先行買収(後記2(5)参照)をした場合は,3万3270.90平方メートル)
 本件区画整理事業施行後の宅地地積
  2万7267.80平方メートル…β
 公共減歩率((α−β)/α)
  32.64パーセント
(減価補償金の範囲内で先行買収(後記2(5)参照)をした場合は,18.04パーセント)
(f) 都市計画との関連
 次の都市計画その他の都市計画と関連する。
[1] P6線の延長約130メートル,幅員27メートル
[2] P5線の延長約462メートル,幅員30メートル
[3] P2駅停車場線の駅前広場約4255平方メートル
[4] P3鉄道鉄道線の延長約422メートル
b 設計図
 設計図は,別紙2(ただし,「P8街道」,「市道P21線」,「(P9通り)」及び「A」ないし「H」の各指示部分の各記載を除く。)のとおりである。
カ 本件事業計画決定後の経緯について
[119](ア) 被告は,平成16年度から同18年度にかけて,減価補償金を交付することを避けるため,減価補償金相当額の範囲で従前の宅地を公共施設充当用地として先行買収(後記2(5)参照)を行い,公共減歩率を32.64パーセントから18.04パーセントに低減することとした(乙2の1)。
[120](イ) 被告は,所定の手続を経て,平成19年3月29日,事業計画の変更を公告した。これにより,[1]別紙8のとおり,区画道路3号線の道路幅が10メートルに,同7号線の道路幅が8メートルにそれぞれ拡幅され,[2]駅前広場の面積が4238平方メートルに縮小され,[3]公共減歩率が33.86パーセントとされるなどの変更がなされた(乙2の2,乙8)。
[121] P5線は当時2車線で整備されていたが,混雑度が特に高く,P8街道及び市道P21線(別紙2の区画街路1号線の延長上の道路)も混雑度が高かった。P2駅前の交差点は,南北方向のP5線,西側からの市道P21線(この交差点が終点となる。)及び南西側からのP8街道(この交差点で,北方へのP5線と合流し,その北方で再度分岐する。)の変則交差点となっており,いずれの道路も上記のとおり比較的交通量が多く混雑していること,変則交差点における信号規制が通常の十字路交差点よりも渋滞を発生させやすいことなどから,朝夕のラッシュ時においては渋滞が発生していた(甲19の1・20頁,甲20,乙2の4,乙4・17,32頁,乙22,証人P20証言(以下「P20証言」という。)2,7頁)。

[122] 本件施行地区内の住民にとっては,P3鉄道を自動車で横断するためには,P6線及びP13線(別紙2の区画街路3号線の延長上の東西方向の道路)が最寄りの道路であったが,いずれも踏切が設置されていた。また,P6線は,P3鉄道の東側のP2地区においては既に整備が完了されていたが,P3鉄道の踏切付近において幅員を大きく減少させ,踏切のすぐ西側のP5線との交差点がその終点であった(甲19の1・13頁,甲19の2・図面番号2「交通規制現況図」,乙6の4)。

[123] 本件施行地区内には,幅員が4メートル以下の道路があった。また,中学校及び小学校の通学路となっていたP2駅前の歩道は狭かった(乙6の4,P20証言2,7頁)。

[124] 本件施行地区内においては,浄化槽を用いている箇所や,上水道又は下水道が建物の正面道路に整備されていない箇所があったが,背面道路から水道を引いたり,個人で水道を延長することにより,おおむね本件施行地区内全域に上下水道が供給されていた(乙1,乙6の4,乙22,P20証言2,36頁)。

[125] P2駅の1日当たり平均乗降客数は,昭和61年に1533名(甲17・57頁),平成3年に2035名(甲17・57頁),平成7年に2444名(甲19の1・78頁)、平成13年に2630人(争いのない事実)となっていた。

[126] 平成7年のP2地区付近におけるP8街道の交通量は,1日当たり1万3900台であり,本件事業計画決定時におけるP8街道の交通量も,これと大差がなかった。また,P8街道の沿道には既に市街地が形成され,建築物が連なっているため,P8街道について大規模な拡幅整備を行うことは困難であった(甲19の1・20頁,乙4・32頁,原告P22供述21頁,乙22,P20証言8,40頁,弁論の全趣旨)。
ア P3鉄道について
[127](ア) 静岡県により,都市高速鉄道としてP3鉄道鉄道線が都市計画決定されていたところ,被告は,平成元年度から,P2駅を含む区間に係るP3鉄道の連続立体交差化事業に関する調査を継続していた(甲16ないし18)。平成6年度においては,連続立体交差整備計画調査が行われ,沿線市街地の整備課題として,次の点などが報告された(甲18・11,13頁)。
[1] 東西方向の幹線道路等の都市基盤の未整備
 沿線市街地は,P2駅東地区の土地区画整理事業を除き,面的基盤整備はなされておらず,東西方向の都市計画道路も整備が立ち遅れている。また,浜松都心部へ向かう交通量が増大し,都心部にかなりの交通負荷をかけている。
[2] 鉄道線及び踏切による東西間の地域分断
 この区間における踏切と交差する幹線道路は4本,踏切道数は22か所あり,現況の鉄道線及び踏切はかなりの交通遮断量となっており,東西間の地域分断の大きな要因となっている。踏切事故も毎年数件のペースで発生しており,その防止に向けた対策が急がれる。
[128](イ) P3鉄道の連続立体交差化事業は,平成10年4月,国庫補助事業の対象となる新規着工準備箇所として採択された(甲24)。
[129](ウ) 静岡県は,P2駅を含む区間について,P3鉄道を連続立体交差化する内容で,都市計画変更決定を行い(以下「本件P3鉄道変更決定」という。),平成14年6月18日,この決定を公告した(乙2の2,弁論の全趣旨)。

イ 都市計画道路について
(ア) P5線について
[130] 静岡県により,P5線が都市計画決定されていたところ,静岡県は,本件施行地区内及びその地区外の交差点A以北の区間を含む区間について,幅員を20メートルから30メートルに変更し,4車線とする内容で都市計画変更決定を行い,平成14年6月18日,この決定を公告した(乙2の2,乙10)。
(イ) P6線について
[131] 静岡県は,昭和37年3月22日,P6線につき都市計画決定を行った。その後,静岡県は,本件施行地区内を含む区間について,幅員を20メートルから27メートルに変更し,2車線とする内容で都市計画変更決定を行い,平成14年6月18日,この決定を公告した(乙2の2,乙10,乙13)。
(ウ) P2駅停車場線について
[132] 被告により,P2駅停車場線が都市計画決定されていたところ,被告は,本件施行地区内の駅前広場部分について,別紙9のとおり,その面積を2770平方メートルから4520平方メートルに変更する内容で都市計画変更決定を行い(以下,この決定を「P2駅停車場線変更決定」という。),平成14年6月18日,この決定を公告した(乙2の2,乙10,乙11)
[133]ア(ア) 土地区画整理事業は,健全な市街地の造成を図り,もって公共の福祉の増進に資するという土地区画整理法の基本的な目的(法1条)の下,公共施設の整備改善及び宅地利用の増進を図る目的で行われる(法2条1項)。かかる目的を踏まえ,土地区画整理事業の基礎的事項,すなわち,施行地区,設計の概要,事業施行期間及び資金計画を一般的に定める事業計画においては,環境の整備改善を図り,交通の安全を確保し,災害の発生を防止し,その他健全な市街地を造成するために必要な公共施設及び宅地に関する計画が適正に定められていなければならない旨の一般的な留意事項が定められている(法54条,6条8項)。
[134] そして,上記の留意事項を受けて,事業計画の中核というべき設計の概要の設定に関しては,次に掲げる基準を含む所定の技術的基準によることとされている(法54条,6条11項,規則9条)。
[1] 設計の概要は,施行地区又は施行地区を含む一定の地域について近隣住区(小学校を中心とする人口1人当り30平方メートルから100平方メートルまでの地積を基準とし,人口約1万を収容することができることとされる地区をいう。以下同じ。)を想定し,その住区内に居住することとなる者の生活の利便を促進するように考慮して定めなければならない(規則9条1号)。
[2] 設計の概要は,幹線道路と幹線道路以外の道路との交差が少なくなるように考慮して定めなければならない(規則9条2号)。
[3] 住宅地においては,道路をできる限り通過交通の用に供され難いように配置しなければならない(規則9条4号)。
[135](イ) さらに,事業計画は,公共施設その他の施設又は土地区画整理事業に関する都市計画が定められている場合においては,その都市計画に適合して定めなければならないとされる(法54条,6条10項)。

[136] このように,土地区画整理事業を実施するに際しては,上記の土地区画整理事業の目的及び既に定められている公共施設等に関する都市計画との適合を図りつつ,法令で定められた基準に従って施行地区を設定した上で,上記の技術的基準に従って道路や公園,広場といった公共施設の規模,配置等に関する事項を決定するなどして事業計画の具体的内容を定めることが必要となるものである。そして,ここで行われる判断は,上記の技術的基準が極めて抽象的であることを踏まえても,施行地区とされる地域に関する諸般の事情を総合的に考慮した上で,政策的,技術的な見地から判断することが不可欠なものといわざるを得ない。そうすると,このような判断は,まさに計画裁量と呼ぶべきものであって,これを決定する行政庁の広範な裁量にゆだねられているというべきである。
[137] したがって,裁判所が事業計画の決定の内容の適否を審査するに当たっては,当該決定が裁量権の行使としてされたことを前提として,その基礎とされた重要な事実に誤認があること等により重要な事実の基礎を欠くこととなる場合,又は,事実に対する評価が明らかに合理性を欠くこと,判断の過程において当然に考慮すべき事情を考慮しないこと等によりその内容が社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものと認められる場合に限り,裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものとして違法となると解するのが相当である。

[138] これに対し,原告らは,特に規則9条4号の技術的基準を例に挙げ,これに適合するか否かの判断については被告に裁量権がない旨主張する。
[139] しかし,原告らの指摘する規則9条4号は,上記のとおり,道路をできる限り通過交通の用に供され難いように配置すべきとの技術的基準を定めるものであるところ,施行者においてなるべく住宅地の静ひつに配慮すべきことを求めつつも,やむを得ない場合には通過交通を許容する趣旨であることは明らかであり,具体的な事案において,どのように道路を配置すればよいかは法令の要件上明確なものとはいえず,政策的,技術的な見地からの判断なくしてはこれを定めることは困難である。
[140] したがって,土地区画整理事業の施行者である行政庁が設計の概要を定めるには,規則9条4号の技術的基準に適合するか否かの判断を含め,広範な裁量権を有するものと解するのが相当であり,原告らの主張は採用することができない。

[141] 以下では,上記の審査の在り方に従って,本件事業計画決定につき,重要な事実の基礎を欠き,又はその内容が社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものといえるか否かにつき,検討する。
[142] 認定事実(1)オ(エ)a(b)のとおり,本件設計の概要は,本件施行地区内の土地の利用状況について,農地が0.6ヘクタール,その他(住宅地,商業地,工業地,農地,鉄道用地及び公共用地以外)が0.31ヘクタールとしたものであるところ,原告らは,これらの面積が誤っており,これは事業計画を決定するについて影響のある事実の誤認であると主張する。
[143] しかし,換地計画についてみてみると,換地計画を定めるに当たっては,必ずしも事業計画の作成時における従前地の地目に関する調査結果がその基礎となるものとはいえず,清算金を定める場合には別途土地等の価額の評価を行うことが義務付けられる上(法65条3項),照応原則(法89条1項,98条2項)に適合するように換地設計を定めるべく,個別の従前地及び換地の価額の評価について十分な調査を経ることが通常であるといえる。したがって,仮に本件事業計画に示された各地目毎の面積の合計に誤りがあったとしても,その後の個別の土地に関する換地設計の内容等に影響を与えるものとはいえない。
[144] また,実際の地目別の土地の地積が事業計画の内容と異なる場合,事業計画において定めるべき資金計画のうち整地費等の支出事項に係る部分等に影響が出る可能性は否定することができないが,原告らの主張する程度の地積の差(「農地」の地積は0.6ヘクタールではなく0.2ヘクタールであり,「その他」の地積は0.31ヘクタールではなく0.73ヘクタールであること)は,本件区画整理事業の施行地区の面積(約5.7ヘクタール)を考慮しても,資金計画に重大な影響を及ぼすものとはいえない。
[145] このほか,原告らの主張する上記の事実誤認が存することにより事業計画の内容等に重大な影響が生じるとする根拠は見当たらない。
[146] したがって,仮に原告らが上記に主張するとおりの事実誤認が存したとしても,本件事業計画決定が重要な事実の基礎を欠くことになるとはいえない。

[147] 原告らは,本件設計の概要中の道路及び宅地の利用状況に係る記載内容について,P5線(通称P9通り)が存在するのに欠落していると主張する。しかし,事業計画書添付の現況図(乙6の4,6の5)等にはP5線(通称P9通りと呼称されるP2駅以南の部分を含む。)が存在することは記載されているから,本件設計の概要中の道路及び宅地の利用状況に係る記載部分に通称P9通りに係る記載がないことをもって,被告がP5線が存在しないなどと事実誤認をしたとは到底認められない。
[148] したがって,本件事業計画決定を行うに当たって,被告にP5線の存在について何らかの事実誤認があったということはできない。

[149] 原告らは本件施行地区がスプロール化の進行した地区であるというのは誤った評価であると主張する。
[150] 確かに,認定事実(1)オ(エ)a(a)のとおり,本件区画整理事業は,本件施行地区内において土地利用の混在等の諸問題に対応するために行われるとされるものであるから,スプロール化の進行した地区であるとの問題点が現に生じていないとすれば,重大な事実誤認に該当する余地があるものと解される。
[151] しかし,そもそも,本件施行地区内に当時一部農地が混在していたことは争いのない事実であるから,農地の宅地転用の事実によりスプロール現象がより進行した可能性もあるのであり,本件施行地区内における道路状況などを勘案すると,当時の本件施行地区内の状況がスプロール化による問題の生じていないものであったと認めることは困難である。
[152] したがって,原告らの主張はその前提を欠き,本件事業計画決定の基礎とされた重要な事実に誤認があるとはいえない。

[153] 以上のほか,被告において本件施行地区内の土地等の現況に関し,重要な事実の誤認があったことを認めるに足る証拠はない。
ア P8街道を通行する車両交通のために区画街路3号線,同2号線及び同7号線を供することができないか否かについて
[154] 規則9条4号は,住宅地においては,道路をできる限り通過交通の用に供され難いように配置しなければならない旨を定めるところ,区画街路3号線,同2号線及び同7号線の沿道が本件区画整理事業施行後も住宅地であるかは別としても,上記(1)ウのとおり,施行者である行政庁が規則9条4号の技術的基準に適合するかを判断するに当たり,被告は広範な裁量を有するものである。
[155] 本件事業計画においてはP8街道の本件施行地区内の区間を廃線とすることが定められているところ,これにより,P8街道を通行する車両は上記各区画街路のいずれかを利用することとなる。
[156] ところで,本件において,被告は,P2駅前の交差点における交通渋滞を緩和するため,渋滞を発生させやすい信号規制となりがちな変則交差点を解消するという方法を選択したものであるところ,このこと自体が直ちに合理性を欠くものということはできない。また,その具体的な方法として,P8街道の本件施行地区内の区間を廃線とし,P2駅前の交差点CをP5線と区画街路1号線(市道P21線)及び駅前広場の出入口とで構成される十字路交差点とすることも,直ちに合理性を欠く判断であるということはできない。
[157] そして,このような判断を前提とすれば,上記各区画街路を利用してP8街道を進行してきた車両の交通を代替させる必要性は否定することができないのであり,このような状況下で各区画街路を通過交通の用に供することには一定の合理性があるというべきである。
[158] 他方で,P5線がP2地区と浜松市の中心部との間の通過交通を処理する幹線道路として拡幅され,4車線化されて処理能力を増すこととなる都市計画が決定されているところ,これによりそもそもP8街道の交通量が一定程度減少することが見込まれること,交通規制や案内表示等により通過車両をP5線に誘導することも可能であることなどからすれば,各区画街路をP8街道を通行する車両の利用に供したとしても,直ちに住宅地の静ひつが看過することができない程度に害されるともいい難いというべきである。
[159] 以上からすれば,上記各区画街路が通過交通の用に供されることとなったとしても,これはやむを得ない措置というべきであり,そもそも,本件事業計画が上記の点で法1条に定める法の目的及び規則9条4号の技術的基準に適合しないとはいい難いし,事実に対する評価が明らかに合理性を欠くなどの理由により本件事業計画決定の内容が社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものとも認められない。

イ P13線・区画街路3号線によってP8街道を通行する車両の交通量を処理することを見込むことにより本件事業計画決定が違法になるか否かについて
[160](ア) そもそも,土地区画整理事業に係る事業計画決定の段階では,未だ車線の配置や信号規制の有無,内容等を含め,具体的にいかなる交通規制が施されるかについては何ら決定していない。したがって,どのような交通規制を施しても交通渋滞の改善を見込むことができないことが明らかであるなど,設計の概要において定められた道路の配置では施行地区又は近隣住区内に居住することとなる者の生活の利便を阻害し,公共施設の整備改善に資さないことが明らかであるといった場合には,重要な事実に誤認があり,又は事業計画の内容が社会通念に照らし著しく妥当性を欠くこととなると解するのが相当である。
[161](イ) 本件において,被告は,P13線(本件事業計画決定時において幅員6メートルに拡幅する予定であった。)・区画街路3号線(本件事業計画においては幅員9メートルとされていた。左折専用車線を設ける予定であった。)によりP8街道の通過交通を処理する計画であると主張している。
[162] そこで,上記方法によることができるかを検討するに,P13線・区画街路3号線は都市部(道路構造令2条19号参照)の市道(高速自動車国道及び自動車専用道路ではない。)であり(弁論の全趣旨),認定事実(2)カのとおり,平成7年のP2地区付近のP8街道の交通量は1日当たり1万3900台であり,本件事業計画決定時におけるP8街道の交通量はこれと大差がなかった。そして,P5線の整備によってP8街道の交通量が相当程度減少すると見込まれること,他の区画街路を利用する通過車両も存することが見込まれることからすれば,P13線・区画街路3号線における計画交通量は,P8街道の交通量である1万3900台と比べても相当に減少することが見込まれるものと解される。もっとも,上記計画交通量が1日当たり500台未満となることまでは想定し難いから,上記各道路は,道路構造令3条所定の区分による第4種第2級又は第4種第3級の道路となる蓋然性が高いものといえる。この場合,原則として道路は2車線とすることとされ(同令5条2項),同条6項に定める普通道路であれば車線の幅員は3メートル,同項に定める小型道路であれば2.75メートルとされている(同令5条4項)。また,第4種道路においては,最低限,車道の両側に各0.5メートルの幅員の路肩を設けなければならないとされている(同令8条1,2,4項)。
[162] 以上からすると,区画街路3号線において左折専用車線を設けて3車線とし,路肩を設けるためには,普通道路であれば10メートル(3メートル×3+0.5メートル×2),小型道路であれば9.5メートル(2.75メートル×3+0.5メートル×2)の幅員を要することとなる。
[163] ところで,本件事業計画においては,区画街路3号線の幅員(従前からあるP13線と合わせたものをいう。)は9メートルとされているところ,本件事業計画はその後変更され,区画街路3号線の幅員は10メートルに拡幅されているから(認定事実(1)カ(イ)参照),左折専用車線を設けることが可能であると解される。
[164] なお,本件事業計画は,上記のとおり,平成19年3月29日付けで土地区画整理法55条12項及び13項所定の手続を経た上で事業計画変更決定がされて変更されたものであるが,本件では,本件事業計画決定自体が取消しの対象とされている。このように土地区画整理法55条12項及び13項所定の手続がされてその事業計画が変更された場合に,従前の事業計画決定がなおその効力を維持しつつその一部に変更が加えられたものとみるべきか,事業計画決定はその効力を失い,事業計画変更決定のみが存在するものと解すべきか,あるいは事業計画変更決定と齟齬する範囲でのみ先行する事業計画決定が効力を有し,両者は併存するとみるべきかは問題となるところである。しかし,[1]土地区画整理事業に係る事業計画は,その内容からしても総合的・一体的なものであり,不可分なものと解されること,[2]事業計画の変更決定自体は(軽微な変更を除いても)それほど珍しいものではないと解されるところ,これにより先行する事業計画決定の効力が常に失われるとすれば,適時に事業計画変更決定につき取消しの訴えを追加的に併合しなければならないが,これも控訴審の口頭弁論終結後には許されないことに鑑みれば,場合によっては,原告の実効的な権利救済を阻害することにもなりかねないから,特段の事情のない限り,従前の事業計画決定がなお効力を維持しつつその一部に変更が加えられているものとして審理すべきものと解される(なお,本件においても,本件事業計画の変更決定は,控訴審の口頭弁論終結後,上告受理決定前にされたものであり,そのことは訴訟記録上明らかであるが,差戻し前の上告審において特に訴えの利益等について判断は示されていない。)。
[165] そうすると,結局,P13線・区画街路3号線においては2車線のほか,交差点G付近では左折専用車線をも設けることになるのであるから,適切な信号規制を行うなどすれば,必ずしも交通渋滞が発生するものとはいえない。したがって,本件事業計画決定時よりも交通渋滞が改善されることを見込むことが不合理とはいえない。
[166] なお,仮に事業計画変更決定前の本件事業計画を前提にすると,法令上,区画街路3号線には左折専用車線が設けられないこととなるが,そうであるとしても,交差点Gの北側横断歩道に係る歩行者専用信号機が赤を表示し,かつ,区画街路3号線の対面する信号機が青を表示する時間を長く設ける方法その他の適切な信号規制を行うなどすれば,必ずしも区画街路3号線において交通渋滞が発生するものとはいえないから,本件事業計画決定時よりも交通渋滞が改善されることを見込むことが不合理とはいえない。
[167] また,P13線については,本件施行地区外において予定されていた6メートルの幅員では道路構造令において求められる最小限の幅員を充たさないおそれがある。しかし,P13線について用地買収等を行って道路の拡幅を図るなどして法令上要求される十分な幅員が確保されるべきことを考慮した上,交通渋滞の改善を見込むことも許されるというべきである。
[168] よって,区画街路3号線・P13線によってP8街道を通行する車両の交通量を処理することを見込むことが妥当性を欠くとはいえない。
[169](ウ) また,原告らは,P8街道上の交差点F,HやP5線上の交差点Gにおいて右折車両による交通渋滞が発生する等主張する。
[170] しかし,適切な信号規制等によっても看過できない程度の交通渋滞が生じること自体が明らかであるとはいうことができず,事業計画の内容が社会通念に照らし著しく妥当性を欠くともいえないから,原告らの上記主張は採用できない。

ウ 区画街路2号線の配置について
[171] 原告らは,交差点Dに信号機が設置できないから,本件事業計画は交通事故発生の危険性が高いと主張する。
[172] しかし,本件事業計画決定の時点では上記イ(ア)のとおりどのように信号規制を行うかは定まっていない上,仮に交差点Dに信号機が設置できない場合であっても,看過し難いほど交通事故発生の危険が高くなるものと認めるに足る証拠もない。したがって,原告らの上記主張は採用できない。

エ P6線及びP5線により通過車両を処理できないことについて
[173] 別紙2のとおり,P6線は,本件施行地区外の西側の区間については本件区画整理事業によっては整備されず,未開通となる。また,P5線についても,本件施行地区外の北側の区間については本件区画整理事業によっては拡幅されない。したがって,本件区画整理事業によって上記各都市計画道路の整備を完了することはできない。
[174] しかし,後記(4)オのとおり,本件施行地区又は本件施行区域の範囲を定めるについて被告の裁量権の範囲の逸脱又は濫用が認められない以上,P6線及びP5線の一部区間が施行地区外とされたことが妥当性を欠くということはできない。また,事業計画は,公共施設その他の施設又は土地区画整理事業に関する都市計画が定められている場合においては,その都市計画に適合して定めなければならないとされる(法54条,6条10項)。したがって,被告としては,既に定められた公共施設に関する都市計画であるP6線及びP5線(いずれも平成14年6月18日付け都市計画変更決定による変更後のもの)に適合するように事業計画を定めなければならない。そうすると,P6線及びP5線に係る各都市計画決定及びその変更決定が違法であればともかく,そのような主張すらされていない本件においては,上記各道路について上記都市計画変更決定のとおり道路の配置を行ったことが特に不当なものということはできない。
[175] 以上に照らせば,本件区画整理事業自体によってはP6線及びP5線の整備を完了することができず,本件施行地区の境界において行き止まりや道路の幅員の減少が生じることとなり,このために本件施行地区外の都市計画の完了までは通過交通の処理を限定的にしか期待できないとしても,これは上記都市計画に沿ったものではあり,かつ,順次,上記都市計画に沿った道路整備を進めるという観点からは有意義なものである以上、そのことをもって本件事業計画の内容が社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものとは認められないというべきである。
[176] なお,原告らは,本件施行地区外のP6線(西側)及びP5線(北側)の区間について,現時点ではこれらの都市計画道路の区間の工事については予算や施行期間が決まっておらず,全く現実的でない抽象的なものにすぎないから,都市計画道路に係る都市計画(変更)決定の存在は考慮すべきではないと主張する。しかし,事業計画においては,上記のとおり法令上都市計画道路であるP6線及びP5線との適合を求められるものであり,上記各都市計画道路が進捗していないからといって直ちにこれらに適合させなくてよいことになるものではなく,上記の事情を考慮しても,なお,本件事業計画の内容が社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものとは認められないというべきである。したがって,原告らの上記主張は採用できない。

オ 交差点Aの形状が危険で,かつ利便性が悪いことについて
[177](ア) 原告らは,交差点Aでは,片側2車線の道路に片側1車線の道路が接続されるため,[1]車線減少により渋滞を発生し,交差点Bの交差点機能に影響を与え,[2]屈曲道路となり通過交通の円滑な通行を妨げ,事故発生を引き起こす危険を創出すると主張する。
[178] しかし,例えば,被告が主張するように,交差点B以北のP5線を暫定的に片側1車線とするなどの方策により,上記のような弊害を回避することが可能であり,本件事業計画が当然に上記のような弊害を生み出すものではない。
[179](イ) また,原告らは,交差点B以北が片側1車線となる場合にも,交差点Cから交差点Bを直進する車両,P6線から交差点Bを左折又は右折して北方に向かう車両の合流による渋滞が生じると主張する。
[180] しかし,適切な信号規制等によっても看過できない程度の交通渋滞が生じることが明らかであるということはできないし,片側1車線となるとしても,交差点A以北のP5線が整備されるまでの過渡的な状態であるにすぎないから,事業計画の内容が社会通念に照らし著しく妥当性を欠くとはいえない。
[181](ウ) さらに,原告らは,A交差点は右折ができず,信号規制も設けられないこととなり,大きく回り道をしなければ目的地へ到達できない車両が生じることが容易に予想され,利便性が悪いと主張するが,上記イ(ア)のとおり,本件事業計画決定の時点ではどのように交通規制を行うかは定まっていないのであるから,原告らの上記主張はその前提を欠く。

カ 区画街路1号線の配置が東西交通に資さないことについて
[182] 原告らは,区画街路1号線は,高架化がなされても駅前広場に接続するだけで,その東側に貫通する道路はなく東西交通に資さないと主張する。しかし,そもそも広域的な意味での東西交通をP6線が担うことが都市計画上予定されていることは明らかである上,P2地区に限定してみても,別紙8のとおり,駅前広場は更にその東へ向かう道路に接続しており,これに区画街路1号線が接続すれば,P2地区内における東西交通にも資するものと解されるから,原告らの上記主張は採用できない。

キ 公園配置の設計について
[183](ア) 土地区画整理事業の行われる都市計画区域内の公園は都市公園に該当するところ(都市公園法2条1項1号),同法3条による委任を受けた都市公園法施行令2条1項柱書は,都市公園の配置及び規模に関する技術的基準として,地方公共団体が街区公園等の各種都市公園を設置する場合においては,それぞれその特質に応じて当該市町村又は都道府県における都市公園の分布の均衡を図ることとしている。この規定は,街区公園等の各種都市公園の特質に応じて,当該市町村等全域についての広域的な視点から都市公園の配置,規模及び種類に偏りがないように平均的に分布させるべきことを定めるものと解される。また,都市公園法施行令2条1項1号は,街区公園においては街区内に居住する者が容易に利用することができるように配置すべきことを定めている。
[184] 上記規定に沿って,土地区画整理事業において街区公園をどのように配置するかについては,街区公園の利用目的,都市の規模,地形,人口密度,将来的な人口変動の予測等の諸事情を総合的に考慮する必要があり,政策的,技術的な見地からの判断が不可欠であるといわざるを得ない。そうすると,このような判断は,これを決定する行政庁の広範な裁量にゆだねられているというべきである。
[185] 以上を前提に本件についてみると,本件事業計画決定において街区公園が別紙2のとおり高架下に配置された理由は,高架下について宅地として換地した場合,非常に利用しにくい土地となるため,駅前広場と一体的に利用できる憩いの場として公園をこの位置に配置した方が土地利用として有効と考えられたためであり(乙22,P20証言10,11,35頁),一定の合理性が認められる。したがって,このような判断が直ちに社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものとはいえない。
[186] また,別紙4に記載される程度の限定された地理的範囲において都市公園の偏在があったとしても,直ちに看過することができない程度の偏りがあるとまでいうことはできないし,その他,上記のような偏りがあることを認めるに足る証拠はない。
[187] さらに,本件施行地区に居住する者にとって,本件設計の概要における公園を利用することは距離的にみても容易であり(別紙4からすれば,本件施行地区内のほとんどの土地は,上記公園から約250メートルの範囲内にある。),住民の利便の向上にも資するものということができる。
[188] 以上からすれば,上記公園の配置が都市公園法施行令2条1項柱書及び同項1号に違反するとか,社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものとはいえない。
[189](イ) 原告らは,本件設計の概要における公園に至るには幅員30メートルの道路等を横断しなければならず,交通事故等の危険が高く,不便で危険を伴うから,街区内に居住する者が容易に利用することができないと主張する。しかし,歩道,横断歩道,ガードレール等適切な交通安全施設を設置することにより,児童を含む付近住民が上記公園を利用することが困難になるものとはいえない。したがって,原告らの上記主張は採用できない。
[190] また,原告らは,上記公園内に高架が存在することは,公園の最大の利用者である子供達がスポーツのためなど通常の利用をする妨げとなる上,騒音と日影がある状況は癒しと休息の場としての公園には適さないから,街区内に居住する者が容易に利用することができないと主張する。しかし,街区公園は,旧都市公園法施行令において定められていた児童公園とは異なり,利用者を特定せずに,高齢者等の幅広い年齢層の住民による日常的な利用に供されることが想定されており,上記公園が児童のスポーツの利用に支障があるとしても,これが直ちに妥当性を欠くということはできない。また,高架により騒音と日影がある状況であるからといって公園としての利用が困難となるものということはできない。したがって,原告らの上記主張は採用できない。
[191] また,原告らは,管理の負担や防犯等の観点からも高架下の公園は有害であると主張する。確かに,本件B調査に係る報告書(乙4)には,高架下を公園等に活用する場合の問題点として,「高架下というオープンスペースとしてのイメージは,管理が行き届かなければ防犯上の問題が生じる可能性の高いスペースとなることが考えられる。」(102頁)との指摘がある。しかし,防犯上の問題等が生じ得るとしても,そのことにより直ちに公園を高架下に設置することが社会通念上許されないことになるものではない。また,本件においては,別紙2のとおりの位置に公園を配置しない場合,宅地としての利用に支障のある高架下の土地が宅地として換地されることになりかねず,宅地利用の増進を図るという土地区画整理事業の目的に沿わない結果となりかねない。そうすると,仮に防犯上の問題等を生じるとしても,本件設計の概要における公園の配置を別紙2のとおりとすることはやむを得ないものといえる。したがって,原告らの上記主張は採用できない。

ク 駅前広場の設計について
[192](ア) 原告らは,P2駅においては,1日当たりの利用者数は多くなく,また自動車で送迎を行う者は非常に少ないのが現状であるのに,このような駅に4255平方メートルもの駅前広場(送迎レーン)を設けることは不適切であると主張する。
[193] しかし,被告としては,既に定められた都市計画であるP2駅停車場線(P2駅停車場線変更決定による変更後のもの)において定められた駅前広場部分の範囲(別紙9)に適合するように事業計画を定めなければならないから(法54条,6条10項),P2駅停車場線に係る都市計画決定及びその変更決定が違法であるならばともかく,駅前広場の面積を4255平方メートル(変更後は,4238平方メートル)と定めたことが直ちに被告の本件事業計画に係る裁量権の範囲の逸脱又は濫用に当たるということもできない(なお,P2駅停車場線変更決定においては,その駅前広場部分の面積は4520平方メートルとされ,本件事業計画における駅前広場の面積より広い面積となっているが,これは,前者の面積には本件施行地区外の部分の面積も含まれるためのものと考えられるから,本件事業計画がP2駅停車場線に係る都市計画に適合していないものとはいえない。)。
[194] なお,原告らがP2駅停車場線変更決定が違法である旨主張しているものと解したとしても,以下に述べるとおり,P2駅停車場線変更決定は違法ではないから,そもそも,原告らの上記主張はその前提を欠き,採用できないというべきである。
[195] すなわち,[1]P2駅の1日当たり平均乗降客数は,認定事実(2)オのとおり,昭和61年に1533名であったものが一貫して増加しつづけ,平成13年に2630人に達したもので,これが直ちに少ない数字であるというべき根拠は見当たらない上,更に市街化が進展し,将来的にある程度乗降客数が増加することも十分に考えられるから,駅前広場の拡張の必要性がないと断ずることはできない(なお,原告らは1列車当たりの平均乗降客数が15人程度であることを指摘するが,1日の中で最も乗降客数の多い朝夕のラッシュ時に対応できる駅前施設を整備する必要性は否定できないから,1列車当たりの平均乗降客数は,駅前広場の面積に係る設計に直ちに大きな影響を与えるものとはいえない。)。
[196] また,[2]認定事実(1)ウのとおり,本件高架化事業に関連する調査及び本件B調査においては,駅前広場面積の算定方式である「48年式」によって算定すれば,最低限2909平方メートルから3463.3平方メートルまでの範囲の面積が必要であるとされているところ,P2駅停車場線変更決定においては,駅前広場の面積を約4500平方メートルとすることが定められており,上記の必要最小面積を相当程度上回る駅前広場の面積が設定されているといえる。しかし,本件高架化事業に関連する調査においては,駅前広場の必要最小面積を2909平方メートルとしつつ,駅前広場用地面積を約5000平方メートルとし,その理由について,駅前広場の敷地形状がやや細長いこと,鉄道高架の存する部分は通路等に活用しにくいこと等を考慮したものとしているところ(甲17・58頁),P2駅停車場線変更決定においても,同種の配慮が必要なことが推認される。したがって,上記のとおり,P2駅停車場線変更決定の定める駅前広場の面積が必要最小面積を相当程度上回ることのみをもって,直ちに駅前広場の面積が無用に広範にすぎるということはできない。したがって,P2駅停車場線変更決定の定めた駅前広場の面積が著しく不合理であることが明らかであるとはいえず,被告がP2駅停車場線変更決定について裁量権の範囲を逸脱し,又は濫用したものとはいえない。
[197](イ) 原告らは,[1]P2駅西側から同駅へ向かう利用者は,幅員30メートルのP5線を横断しなければならないため不便かつ危険であり,さらに,[2]駅前広場内に通過車両が流入し危険であるから,本件事業計画はこの点で利便性を欠くと主張する。しかし,上記[1]の点については,本件事業計画施行前においても,P2駅西側から同駅へ向かう利用者はP5線を横断しなければならなかったもので,この道路の幅員が拡幅されたとしても直ちに施行前より不便になり,交通事故が増加するとはいえない(なお,本件事業計画に係る設計図(別紙8)に示されるように,P2駅の高架上からP5線を挟んだ向かい側まで歩道橋が設置されることとされている。)。また,駅前広場内の交通事故の危険は,適切な交通安全施設の設置等により抑制することが可能であると解される。したがって,上記の各点で本件事業計画の内容は居住者の利便性に欠ける点があるとの原告らの主張は採用できない。
[198](ウ) また,原告らは,[1]駐輪場が駅東側にしかなくなること,[2]駅前広場とP5線の間の出入口に横断歩道が設けられるところ,信号があっても危険であること,[3]本件B調査においてP2駅におけるタクシー利用者はわずかとされているのに,タクシー待機スペースが10台分も設けられていることといった不合理な点があると主張する。しかし,駐輪場,横断歩道及びタクシー待機スペースの配置はいずれも本件事業計画において定められるものではないから,そもそも本件事業計画決定の違法事由とはなり難いものであるから,原告らの上記主張は失当というべきである。
[199](エ) さらに,原告らは,公共交通機関といえども1私企業であるP10株式会社の駅前広場を拡張するため,土地を本件施行地区の地権者から提供させるのは違法な設計であるとも主張する。
[200] 確かに,本件区画整理事業により駅前広場が拡張された結果,P2駅を利用する者が同駅を利用しやすくなり,P3鉄道の利用客が増加する等,P10株式会社が一定の事実上の利益を享受する可能性があるとはいえる。しかし,同時に本件施行地区内の地権者にとってみても利便性を増すこととなり,ひいては本件施行地区内の宅地利用の増進につながるものでもあるのであり,仮にP10株式会社が何らかの利益を事実上得ることがあるとしても,そのことから直ちに本件事業計画決定が違法となるものとは解し難く,原告らの上記主張は採用できない。

ケ P8街道の通過交通量の減少弊害に係る原告らの主張について
[201] 原告らは,P8街道の通過交通量の減少弊害が沿道商店街や工業に悪影響を与え,かつ市中心部の空洞化現象を助長すると主張する。
[202] しかし,P8街道の沿道には市街地が形成されており大規模な拡幅整備には限界があったこと(認定事実(2)カ)からすれば,浜松市の中心部からP2駅前までの通過交通の処理を片側2車線道路の設置可能なP5線にゆだねることとしたとしても,それが不合理であるとはいえないし,少なくとも,そのような判断を前提とした本件事業計画決定の内容が社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものとまではいえないことは明らかである。したがって,原告らの上記主張は採用できない。

[203] 以上のほか,本件全証拠によっても,本件設計の概要中の公共施設の配置が法6条8項等及び設計の概要の設定に係る技術的基準その他の法令に適合しないことにより妥当性を欠いていると評価すべき事実を認めることはできない。
[204] 法2条1項は,土地区画整理事業が公共施設の整備改善及び宅地利用の増進を図る目的でなされることを明らかにしているから,事業計画を定めるに当たっては,宅地利用の増進に係る考慮を欠いてはならず,これをおよそ欠くような事業計画決定は,その内容が社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものと認められる。
[205] そして,仮に本件事業計画決定が,本件高架化事業が平成14年度末までに着工できないと国庫補助事業の見直しの対象となることから,専らこれを免れる便宜のためにのみ計画されたものである場合には,宅地利用の増進に係る考慮をおよそ欠くものとなる余地があるから,以下この点について検討する。

[206] 認定事実(1)アないしウ記載の事業調査の調査結果,認定事実(2)記載の本件事業計画決定前の本件施行地区の状況及び認定事実(1)オ記載の本件事業計画決定の内容に照らせば,本件区画整理事業には,以下に述べるような意義と必要性が存する。
 すなわち,[1]変則交差点における信号規制が通常の十字路交差点よりも渋滞を発生させやすいことなどから,P2駅前の交差点においては,朝夕のラッシュ時に渋滞が発生しており,これを改善する必要があったところ,本件区画整理事業により交通渋滞の原因となっていた変則交差点を解消することができる。
 [2]P5線とP6線の整備が完了すれば,P2地区において,浜松市市街地の北縁における交通の要衝としての機能が格段に向上するといえるところ,本件区画整理事業の施行によりその実現に近づくものである。
 [3]本件区画整理事業のみの施行によっても,P5線が拡幅されて4車線化されることで,P2駅西地区と浜松市の中心部との間の通過交通がより円滑化されることとなる。
 [4]P6線が幅員27メートルに拡幅される上,本件高架化事業と一体的に事業が施行されることにより,踏切を経ることなくP3鉄道の西側まで整備されてP5線と交差するに至ることとなるから,未だ限定的ではあるものの,東西の通過交通の円滑化に資する。また,本件施行地区内の住民がP3鉄道を自動車で横断するためには,P6線及びP13線が最寄りの道路となっており,いずれも踏切が設置されていたところ,本件区画整理事業が本件高架化事業と一体的に施行されることにより,付近住民にとっても東西交通の選択肢が増え,かつ,踏切がなくなることにより迅速に移動することが可能となる。
 [5]幅員4メートル以上の区画街路を設けることで,災害発生時の避難路,消防活動の場,建築物等の日照,採光,通風等の確保など安全で良好な環境の市街地を形成することができる。また,十分な幅のある歩道を設置することが可能となって,交通の安全を確保することができる。
 [6]上下水道の一層の改善も可能となる。

[207] このように,本件区画整理事業は,本件施行地区内の面的整備を行うものとして,本件高架化事業とは別個の固有かつ独自の意義と現実的かつ具体的な必要性を有するものといえる。したがって,本件区画整理事業は,専ら本件高架化事業が国庫補助事業の見直しを受けることを免れるために計画されたものとはいえず,この点で宅地利用の増進に係る考慮を欠くということはできない。

[208] なお,事業計画は,公共施設その他の施設又は土地区画整理事業に関する都市計画が定められている場合においては,その都市計画に適合して定めなければならないとされる(法54条,6条10項)。そして,ここにいう「その他の施設」とは,法2条5項及び令67条に定める「公共施設」には該当しない都市計画法11条1項に定める都市施設をいうものと解されるから,都市高速鉄道も「その他の施設」に含まれる。したがって,本件P3鉄道変更決定が違法であるならば別論,そのような主張もない本件においては,本件事業計画決定に先立って定められていた公共施設に関する都市計画であるP3鉄道(本件P3鉄道変更決定による変更後のもの)に適合するように,本件事業計画を定めるべきこととなる。
[209] また,実質的にみても,本件高架化事業が施行されなければ,例えばP6線について踏切を通過することなくP3鉄道の西側へ通行するように整備することはできず,本件区画整理事業を施行しただけでは東西交通の円滑化を図ることはできない。したがって,本件高架化事業は,本件区画整理事業とその目的及び計画内容において密接な関連を有するものといえる。
[210] そうすると,本件高架化事業について国庫補助事業の見直しを受けることを回避する必要のあることが本件区画整理事業を行う一つの契機となったとしても,このことをもって直ちに不当な考慮がされたということはできない。

[211]オ(ア) ところで,原告らは,本件高架化事業に関する考慮内容が不当である点について主張する中で,本件施行地区が約5.7ヘクタールという面積となった経緯について縷々述べるところ,その趣旨は必ずしも定かではないが,本件施行地区の範囲が狭小にすぎ,妥当ではないことから,被告が上記範囲を定めるに当たって有する裁量権の範囲を逸脱し,又は濫用したと主張するようにも解される。
[212] しかし,土地区画整理事業に係る施行地区の範囲は,当該土地区画整理事業に関する都市計画に定められた施行区域の内外にわたらないように定めなければならないから(法54条,6条9項),本件都市計画決定において定められた施行区域が約5.7ヘクタールである以上,これを超えた範囲の施行地区を定めることはできない。したがって,本件施行地区の範囲を約5.7ヘクタールとしたことが不当に狭小な範囲を定めるものということはできず,被告が施行地区を定めるに当たって有する裁量権の範囲を逸脱又は濫用したものとはいえない。
[213](イ) また,原告らの主張が本件都市計画決定における施行区域(以下「本件施行区域」という。)の範囲が不当に狭小であると主張するものと解して検討するに,土地区画整理事業に関する都市計画決定(都市計画法12条1項1号)の違法を事業計画決定の取消訴訟において主張できるかは別としても,以下に述べるとおり,本件施行区域の範囲が狭小にすぎるために本件都市計画決定が違法となるものとはいえない。
[214] 行政庁が施行区域の範囲を定めるに当たっては,他の都市計画全体に照らした事業効率及び進捗度,事業に要する予算,事業を施行しようとする地域の地権者数及びその意見等諸般の事情を考慮する必要があるから,その判断について,行政庁が広範な裁量権を有するものと解される。
[215] 本件においては,認定事実(1)エのとおり,本件区画整理事業は,当初約16.2ヘクタールの区域で計画されていたところ,地権者の大多数の反対を受けてこれが撤回されたが,約5.7ヘクタールであれば地権者の約3分の2の賛成を確保できたものであって,この施行区域であれば事業を比較的円滑に進めることが見込めたこと,本件施行区域が浜松市市街地の北縁における交通の要衝として重要な地域に当たり,本件施行地域内で土地区画整理事業を行うこととしても,上記イのとおり,本件事業計画によっても道路等の整備改善による一定の事業効果を見込めたことからすれば、本件施行区域の範囲が約5.7ヘクタールといういささか狭い範囲に定められたとしても,それが著しく不合理であることが明らかとはいえず,被告が上記裁量権の範囲を逸脱し,又は濫用したということはできない。
[216] なお,上記のとおり,本件高架化事業は,本件区画整理事業とその目的及び計画内容において密接な関連を有するものといえるから,本件高架化事業について国庫補助金の見直しを免れる必要があることが本件施行区域の範囲を定める一つの契機となったとしても,そのことが直ちに裁量権の範囲の逸脱又は濫用に当たるということはできない。
[217] また,原告らは,本件B調査は,要旨「本来は本件A調査において計画的整備が望まれるとされた51ヘクタールの範囲で整備を行うことが望ましいが,種々の制約から現実的ではない。そこで本件B調査で優先性の高い地区を選定するが,それ以外の整備がいらないのではなく『段階的に』残りの地区も整備していく。」とするものであり,本件A調査が示した51ヘクタール全域に関する整備の可能性が全くなくなった現時点において,その一部を断片的に拾い上げたものにすぎない本件事業計画は,事業としての正当性を全く欠いていると主張する。
[218] 確かに,本件施行区域の範囲でのみ土地区画整理事業を行うとP6線が本件施行区域の西側で未開通となることなど事業効果がある程度限定されたものとなることは否めない。しかし,上記イのとおり,本件事業計画によっても道路等の整備改善による一定の事業効果を見込むことができる上,将来にわたりP2駅西地区の本件施行区域以外の部分について市街地開発事業その他の方法による道路等の整備改善が行われないと認めるに足る証拠はなく,むしろ,被告としては本件区画整理事業を残る区域の整備を進めるトリガー(引き金)とするものと位置付けていることをも考慮すれば,直ちに本件施行区域内での事業の意義を否定することはできず,そのような判断が社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものとはいえない。なお,原告らは,住民の大多数が反対したのであるから今後の整備改善の可能性がない旨主張するが,短期的にはともかく,長期的にみてその可能性がないといえるものではないし,実現手法も様々あり得るところであるから,住民の反対があったとの事実から,直ちに可能性がないものと認めることはできない。したがって,原告らの上記主張は採用できない。
[219] 本件事業計画においては,認定事実(1)オ(エ)a(e)のとおり,最終的な公共減歩率は18.04パーセントとなっているが,これは,後述する先行買収を実施した結果であり,先行買収前の公共減歩率は32.64パーセント(変更後は,33.86パーセント)となっている。
[220] ところで,減価補償金とは,事業の施行により,施行後の宅地の価額の総額が施行前の宅地の価額の総額より減少した場合に,従前の地権者に対してその差額に相当する金額を交付するものであり(法109条1項),その交付すべき減価補償金の額は,次のaにbを乗じて得られる(令60条2項)。
a (施行前の宅地の価額の総額−施行後の宅地の価額の総額)÷ 施行前の宅地の価額の総額
b 従前の宅地の施行前の価額又は従前の宅地に存した使用収益権の施行前の価額
[221] 一般に,事業が施行されると,施行地区内の宅地利用の増進が図られてその価額が増加するため,公共減歩による面積の減少にもかかわらず,施行後の宅地の価額の総額が施行前の宅地の価額の総額よりも減少することはないことが想定される。しかし,既成市街地において道路等の公共施設の大幅な整備改善を行う場合などにおいては,施行前の宅地の価額がある程度高額になっていることなどから,宅地利用の増進によるその価額の増加があっても,これが公共減歩による宅地面積の減少分を補うに至らず,このために施行後の宅地の価額の総額が施行前の宅地の価額の総額よりも減少することがある。このような場合には,事業によって地権者が財産的損失を被ることとなるため,法は,その損失を補償するために,各地権者に対し,その権利を有する宅地の価額に応じた按分の割合により減価補償金を交付することとしたものである。
[222] もっとも,実務上は,あらかじめ,施行地区内において公共施設の用地に充当すべき土地(以下「公共施設充当用地」という。)を減価補償金の総額に相当する価格の範囲内で取得し,これを公共施設用地に換地する運用が採られることがある(昭和34年建設計発149号都道府県主務部長宛て建設省計画局長通達(昭和44年建設省計宅開発83号及び建設省都区発731号による改正後のもの)参照。以下,この運用を「先行買収」という。なお,これは当事者の主張に係る「先買い」と同義であるが,都市計画法上の「先買い」の制度(同法67条)は,都市計画事業として施行する土地区画整理事業には適用されないため(法3条の5第2項(現行法では3条の4第2項)),この制度とは同義ではない。)。この先行買収が行われる場合には,適当な評価額により公共施設充当用地が取得されることを前提とすれば,残った宅地の公共減歩率は先行買収が行われない場合と比べて低減することになるものである(なお,施行後の宅地の価額の総額が施行前の宅地の価額の総額より減少することを回避することになり,減価補償金の額も低減する。)。
[223] そして,上記のとおり,本件においても,先行買収が行われることにより,残った宅地の公共減歩率は,先行買収前の32.64パーセント(変更後は,33.86パーセント)から18.04パーセントに低減することになる。
[224] なお,この先行買収の利点としては,先行買収を行い,地権者の数が減少することになるため,事業施行後の各地権者の宅地面積の減少を抑制することが可能になるから,施行後の地権者の合理的な土地利用への配慮が可能になるという点を挙げることができる。
[225] 他方で,先行買収に応じて施行地区内の宅地に関する権利を失う者を生じさせることになるが,これはあくまで施行者と地権者とが任意に合意するものであり,土地収用のように強制的に土地に係る権利を取得するものとは異なるから,この点で先行買収の運用が不合理であるとはいい難いものである。
[226] これに対し,原告らは,減価補償金を宅地の購入の費用に充てるということは,補償金の目的外使用であり,問題があると指摘する。しかし,先行買収は地権者に支払われるべき減価補償金を直接宅地の購入に充てるといったものではないのであり,目的外使用との批判は妥当せず,原告らの主張は採用できない。
[227] また,原告らは,この方式は施行地区内の地権者と意見交換をしながら事業を進める方向とはいい難いとも主張するが,そのような面があるからといって直ちに違法となるものとはいえない。
[228] さらに,原告らは,公共施設用地が半分を超えること(その分宅地の割合が少ないこと)は住民の犠牲を前提としており,その事業の法2条適合性を減退させるとも主張する。
[229] しかし,公共施設用地の割合が高いことは原告らの指摘するとおりであるとしても,それのみで本件事業計画の内容が社会通念に照らし著しく妥当性を欠くとはいえないし(なお,上記(3)において検討したところに照らしても,道路,公園等の公共施設の配置は宅地利用の増進に係る考慮をしたことがうかがわれる。),上記のとおり,先行買収を行うことで,少なくとも,施行地内に残る地権者らの減歩率は低減し,宅地としての利便性は確保されているのであるから,本件事業計画のその他の効用と切り離して,公共施設用地の割合が高いことのみをもって,その内容が不合理であるなどとはいい得ないというべきである。
[230] その他,本件全証拠によっても,本件事業計画を定めるに当たり宅地利用の増進に係る考慮を欠いたものと認めることはできない。
[231] 原告らは,法3条3項を反対解釈すれば,施行区域外の土地について区画整理事業を施行することはできないのに,本件事業計画は施行区域外の道路(P13線等)を利用し,かつ,道路の拡幅を行わなければ通過交通処理ができない道路の設計となっている,これは施行区域外にも土地区画整理事業を行うものといわざるを得ず,明らかに同項に反する上,施行区域の内外にわたる設計となっており,法54条,6条9項に違反すると主張する。
[232] しかし,本件区画整理事業自体は施行区域外において施行されるものではないことは明らかであるところ,土地区画整理事業において,施行区域外の道路による交通処理を考慮してはならないとする根拠は見出せず,施行区域外の道路による交通処理を考慮したからといって,事業が施行区域の内外にわたると評価することもできない。
[233] したがって,原告らの上記主張は採用できない。
[234](1) 原告らは,本件事業計画決定に係る事業計画書(乙1)にはP8街道に関する記載が欠けており,同書に添付された設計図(乙6の3)には道路の廃止区間の注記もなく,一般住民がこの図面からP8街道が一部廃止されるという計画を読み取ることは困難であるから,利害関係人の意見書の提出権等を正当に行使することは困難であったと主張する。

[235](2) ところで,規則6条3項は,設計の概要等に係る設計図について,土地区画整理事業の施行後における施行地区内の道路,公園,広場等の公共施設及び鉄道等の用に供する宅地の位置及び形状を,土地区画整理事業の施行により新設し,又は変更される部分と既設のもので変更されない部分とに区別して表示したものでなければならないとする。
[236] この点,本件設計の概要に係る設計図(乙6の3)においては,新設又は変更後の道路,公園,鉄道用地等が色付けされ,色付けされていない既設部分と明確に区別して表示されている。また,色付けされていない既設部分のうち,事業施行によっても変更されない部分と変更される部分とが特に区別されていないものの,図面全体の記載からすれば,色付けされていない部分は全て変更される部分であることが当然に読み取れる(例えば,既設のP3鉄道のP2駅のホームについては変更されることは明らかであるし,新設又は変更後のP5線の歩道部分が既設のP8街道上に掛かっており,P8街道が変更されることも読み取れる。)。したがって,本件設計の概要に係る設計図が上記規定に反するものということはできない。

[237](3) また,規則6条2項5号は,設計の概要等に係る設計説明書について,公共施設の整備改善の方針を記載しなければならないとするが,記載内容についてそれ以上の法令の定めはなく,どこまで具体的にその方針を記載するかは行政庁の裁量にゆだねられているものと解される。
[238] この点,本件事業計画決定に係る事業計画書(乙1)の設計説明書には,確かにP8街道の一部区間の廃線について記載がないものの,本件設計の概要に係る設計図(乙6の3)からは,上記のとおりP8街道が変更されることが当然に読み取れる以上,あえて設計説明書にその旨を記載しなかったとしても,これにより被告の上記裁量の範囲を逸脱し,又は濫用したものとはいえない。

[239](4) 以上より,本件事業計画決定について,原告らの主張するような手続的違法があったということはできない。
[240] したがって,原告らの請求はいずれも理由がないから,これを棄却することとし,主文のとおり判決する。

  静岡地方裁判所民事第1部
  裁判官 村松秀樹  裁判官 武見敬太郎
  裁判長裁判官三木勇次は転補のため署名押印することができない。
  裁判官 村松秀樹

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