南九州税理士会事件
第一審判決

選挙権被選挙権停止処分無効確認等請求事件
熊本地方裁判所 昭和55年(ワ)第55号
昭和61年2月13日 民事第1部 判決

■ 主 文
■ 事 実
■ 理 由


一 被告が原告に対しなした昭和54年4月3日付、昭和56年4月8日付、昭和58年4月11日付及び昭和60年4月11日付の、被告の理事及び監事の選挙権並びに被選挙権を停止した各処分の無効確認、昭和54年5月1日、昭和56年5月7日、昭和58年5月10日及び昭和60年5月9日に実施された被告の各役員選挙において、いずれも原告が選挙権及び被選挙権を有していたことの確認及び昭和54年5月1日、昭和56年5月7日、昭和58年5月10日に実施された被告の各役員選挙の無効確認を求める訴えをいずれも却下する。
二 原告の被告に対する昭和53年6月16日被告総会決議に基づく金5000円の特別会費の納入義務のないことを確認する。
三 被告は原告に対し金150万円及びこれに対する昭和56年5月7日から支払ずみに至るまで年5分の割合による金員を支払え。
四 原告のその余の請求をいずれも棄却する。
五 訴訟費用はこれを2分し、その1を原告の、その1を被告の各負担とする。
六 この判決は、第三項に限り、仮に執行することができる。

一 原告の被告に対する昭和53年6月16日被告総会決議にもとづく金5000円の特別会費の納入義務のないことを確認する。
二1 主位的請求
 被告が原告に対し昭和54年4月3日付でなした理事及び監事の選挙権及び被選挙権を停止した処分(措置)は無効であることを確認する。
2 予備的請求
 昭和54年5月1日の被告の役員選挙において原告が選挙権及び被選挙権を有していたことを確認する。
三 昭和54年5月1日の被告の役員選挙は無効であることを確認する。
四1 主位的請求
 被告が原告に対し昭和56年4月8日付でなした理事及び監事の選挙権及び被選挙権を停止した処分(措置)は無効であることを確認する。
2 予備的請求
 昭和56年5月7日の被告の役員選挙において原告が選挙権及び被選挙権を有していたことを確認する。
五 昭和56年5月7日の被告の役員選挙は無効であることを確認する。
六1 主位的請求
 被告が原告に対する昭和58年4月11日付でなした理事及び監事の選挙権及び被選挙権を停止した処分(措置)は無効であることを確認する。
2 予備的請求
 昭和58年5月10日の被告の役員選挙において原告が選挙権及び被選挙権を有していたことを確認する。
七 昭和58年5月10日の被告の役員選挙は無効であることを確認する。
八1 主位的請求
 被告が原告に対する昭和60年4月11日付でなした理事及び監事の選挙権及び被選挙権を停止した処分(措置)は無効であることを確認する。
2 予備的請求
 昭和60年5月9日の被告の役員選挙において原告が選挙権及び被選挙権を有していたことを確認する。
九 昭和60年5月9日の被告の役員選挙は無効であることを確認する。
一〇 被告は原告に対し金500万円及び内金300万円に対する昭和56年5月7日より支払い済みに至るまで年5分の割合による金員を支払え。
一一 訴訟費用は被告の負担とする。
一二 第一〇、一一項につき仮執行宣言。
一 請求の趣旨中、三、五、七及び九の各訴えを却下する。
二 請求の趣旨中一、二、四、六、八及び一〇の各請求を棄却する。
三 訴訟費用は原告の負担とする。
(請求の趣旨中、三、五、七及び九の各訴え(役員選挙無効確認請求)に関して)
 原告が右各訴えで求めているものは手続の無効確認を求めるもので、現在の法的紛争の解決をもたらすものではないから、訴の利益を欠き不適法である。
 訴の利益を欠くとの被告の主張を争う。過去の法律関係にも確認の利益が認められる場合があり、本件はこれに該当する。
一 当事者
[1] 原告は、昭和36年12月11日税理士となる資格を取得し、同37年11月5日日本税理士会連合会(以下、「日税連」という。)に備えられた税理士名簿に登録(登録番号第13,376号)され税理士となり、同月19日被告に入会届を提出して被告の会員となり現在に至っている。
[2] 被告は、税理士法(昭和26年7月15日施行)49条に基づいて南九州国税局の管轄する熊本、大分、宮崎、鹿児島4県の税理士をもって構成する法人であって日税連の会員である。

二 被告のなした処分
[3] 被告は、昭和54年4月2日の選挙管理委員会において、同年5月1日に実施する被告の理事及び監事の選挙権及び被選挙権を原告が有しないものと決定して、原告を除いて選挙人名簿を作成し(以下「本件処分」という。)、同月3日の理事会においてもこれを了承した。そして同年5月1日、原告の選挙権及び被選挙権を停止したまま右選挙を実施した。
[4] 右処分は別紙(3)の被告会則(昭和31年10月1日制定、同月15日認可)14条により制定された別紙(4)の役員選任規則6条2項2号にもとづいてなされたものであるが、その理由は原告が、後記する昭和53年6月16日の被告の第22回定期総会(以下「第22回総会」という。)において決議された特別会費(金5000円)を同54年3月31日までに納入しなかったというのである。

三 第22回総会の特別会費に関する決議に至る前後の経緯
[5] 日税連は昭和41年頃から税理士法改正に関する制度調査会を設け検討を進め、同47年6月ころ基本要綱を策定し、同48年6月ころ国会や政府大蔵省に改正についての要望書を提出して税理士法改正に向けて動き始めた。
[6] 昭和51年6月23日被告の第20回定期総会において、次の議案が決議された。
「特別会費5000円徴収に関する件
 税理士法改正運動に要する特別資金とするため、各会員より特別会費として金5000円を徴収する。
 日本税理士政治連盟(以下、「日税政」という。)より南九州税理士政治連盟(以下、「南九税政」という。)あて税理士法改正特別募金として金員1人当り金1万円の特別募金の要請があったが、この資金の緊急性に鑑み、当会の特別会費として徴収するものである。
特別会費の使途
 特別会費5000円は全額南九州各県税理士政治連盟(以下「南九各県税政」という。)へ会員数を考慮して配布する。」
[7] 右決議にもとづいて特別会費が徴収され、被告→南九各県税政→南九税政をへて日税政へ合計金431万6000円が上納された。
[8] その後日税連は昭和53年1月頃より前記基本要綱によることは至難困難と表明し、同54年4月には基本要綱を凍結し、政府案を支持することとした。
[9] 昭和53年6月16日被告の第22回総会において次の議案が決議(以下「本件決議」という。)された。
「特別会費5000円徴収に関する件
 税理士法改正運動に要する特別資金とするため各会員より特別会費として金5000円を徴収する。特別会費の納期限は昭和53年7月31日とする。この特別会費は特別会計をもって処理する。
理  由
 税理士法改正運動資金の緊急性に鑑み、当会の特別会費として徴収するものである。
特別会費の使途
 特別会費は全額南九各県税政へ会員数を考慮して配布する。」
[10] 日税政は総選挙必至という段階で日税政の推薦候補をきめて昭和54年8月1日号の会報に発表した。さらに税理士法改正案の提出が予定されていた臨時国会直前の同月27日には日税連と日税政の代表5、6名づつが集まってこれらの推薦候補に「特級」=500万円から「C級」=50万円の5段階のランクづけを行ない「献金リスト」を作成した。
[11] しかし、右国会は同年9月7日解散されたため税理士法改正案は成立するに至らず廃案となった。
[12] 総選挙直前の同月11日日税連及び日税政は、14単位税政連代表に、右ランク付に従い101名の与野党政治家に配分することを指示して合計1億3000万円を手渡し、右金員は一部を除き与野党政治家によって受領された。
[13] 右金員の授受に関し、関西在住の税理士5名が同年12月10日小渕恵三総務長官(当時)ら自民党代議士4名、社会党代議士1名を受託収賄罪で、また日税連及び日税政の幹部3名を贈賄罪で東京地検に告発した。
[14] 次いで同月18日、原告を含む7名の税理士が、右小渕総務長官ら自民党代議士2名、社会党代議士1名を賄賂約束罪等で、また日税連及び日税政の幹部3名を贈賄罪等で東京地検に告発し、右各告発について捜査が開始された。

四 本件決議の無効性(その一)……目的外の行為
1 税理士会の目的
[15](一) 税理士会は昭和26年の税理士法制定当時は民法34条に基づく社団法人として設立され、税理士の加入も任意とされていたが、昭和31年6月、税理士法が改正され、税理士法に基づく特殊公益法人に改編され、税理士の税理士会への加入は、間接の強制加入となった。右改正に際し、
「税理士会への強制加入制度は、税理士の品位並びに社会的地位の向上を図ることによって、納税者の権利を擁護し、税務行政の適正化を期待するを本旨とするものであることにかんがみ、その運営が中正かつ民主的に行われるよう政府並びに税理士会において格段の措置を講じられたい。」
との付帯決議がなされた。
[16](二) 被告の目的および事業内容について、昭和53年当時の税理士法49条2項は、
「税理士会は、税理士の使命及び職責にかんがみ、税理士の義務の遵守及び税理士業務の改善進歩に資するため、会員の指導、連絡及び監督に関する事務を行うことを目的とする。」
と被告の目的を定め、別紙(3)の被告会則2条もまた右同様の目的を掲げ、会則3条は右の目的を達成するための事業を掲げている。
2 南九各県税政と政治団体
[17] 南九各県税政は政治資金規正法(以下「規正法」という。)による政治団体である(同法3条1項)ところ、本件決議の前提として本件特別会費が「税理士法改正運動に要する特別資金」であること、及び使途としては「全額を南九各県税政へ配布する」ことは表示されていた。
[18] よって、本件特別会費が税理士法改正運動のために、政治団体たる南九各県税政への寄附であることは、明確に表示され決議の内容となっていた。
3 まとめ
[19] 以上のとおり、税理士会が公的性格をもつ強制加入団体である以上、政治団体への寄附は、被告の目的外の行為であるといいうるところ、本件決議に基づく本件特別会費の南九各県税政への提供は、政治団体への寄附に外ならず、前記した被告の目的及び事業の内容に含まれず、被告の目的を逸脱する行為であって、被告は右行為をする権利能力を有せず、従って、本件決議は無効である。

五 本件決議の無効性(その二)……公序良俗違反
1 被告の政治的中立性と会員の思想信条の自由
[20] 前記のとおり、税理士会が公的性格を有する強制加入団体である以上、その政治的中立性が要請されるのであり、税理士会の行為によって、各税理士の憲法上の思想、信条の自由(憲法19条)が侵害されてはならない。
2 本件決議の公序良俗違反性
[21] 本件決議は規正法にいう政治団体である南九各県税政に対し、税理士法改正運動に要する特別資金として配布することが表示されていたのであるから、右運動に反対の意見を有していた原告より強制的に会費を徴収することは、原告の思想、信条の自由(憲法19条)を犯し、特定の主義、立場ないしは候補者支持を強制することになる。
3 本件決議の規正法違反
[22] 規正法22条の7では寄附のあっせんに関する制限をしているところ、本件で被告は原告に対し、選挙権・被選挙権停止の処分を行い、更に会員権の全面停止を予告する等して、政治資金を威迫して納入させしめんとしたものであるから、同条に違反する。
4 まとめ
[23] 以上のとおり、本件決議は原告の思想、信条の自由をふみにじり、かつ(或いは)、規正法22条の7に違反する行為に該当するものであるから、公序良俗に違反する無効のもの、というべきである。

六 本件決議の無効性(その三)……強制力の欠如
[24] 仮に、右の四及び五の主張が容れられないとしても、前述のとおり、強制加入団体の公益法人である被告が会員に対し、総会決議に基づく特別会費の拠出を求める場合、公序良俗に反しない内容であること、金銭の合理的な使途を明らかにしていること、会員から疑義がだされた場合にこれに合理的な回答をなすことが要求されるところ、本件決議はそのいずれも満たされていないから、本件決議に反対し、右会費の拠出を拒否している原告に対し、拠出の強制をすることは許されない。

七 本件処分の無効性……手続的瑕疵
1 被告会則の定め
[25] 別紙(3)の被告会則47条は会員の処分と適正手続の保障について定めている。
2 本件処分の根拠
[26] 別紙(4)の被告の役員選任規則6条2項2号によって選挙権及び被選挙権を奪う場合にも、会則47条に該当するのである。(被告主張のように、右規則による選挙権及び被選挙権の剥奪が、会則47条による手続をふまなくてもできるというのであれば、右規則の当該規定そのものが、上位の会則に違反する無効なものである。)
3 まとめ
[27] よって、右四ないし六の主張が容れられないとしても、本件処分は会則47条に基づく手続がとられていないから、重大な手続的瑕疵があり、無効である。

八 被告の数次の処分と役員選挙
[28] 被告は、原告が本件特別会費5000円を納入していないことを理由に
1 昭和56年度の被告の役員選挙に際し、同年4月8日の被告理事会で、被告の理事及び監事の役員選挙における原告の選挙権及び被選挙権を停止し、同年5月7日に被告の右役員選挙を実施し、
2 同様に、昭和58年度の被告の役員選挙に際し、同年4月11日付で原告の選挙権及び被選挙権を停止し、同年5月10日に被告の役員選挙を実施し、
3 同様に、昭和60年度の被告の役員選挙に際し、同年4月11日付で原告の選挙権及び被選挙権を停止し、同年5月9日に被告の役員選挙を実施したが、被告はいずれも会則47条に定める手続をとらなかった。

九 被告の不法行為と原告の損害
[29] 原告は、前記した昭和54、56、58、60年度の被告の各役員選挙に際し、被告から被告の役員の選挙権及び被選挙権を奪われた。これは被告が故意に原告の権利を侵害したものである。従って、民法709条、710条により右権利行使を妨害されたこと及び名誉を害されたことによる慰藉料として金200万円を請求する。
[30] また、原告は本訴追行のため、原告訴訟代理人弁護士らに対し、訴訟追行を委任し、その弁護士費用は300万円(着手金100万円、成功報酬200万円)と定められたので、これも原告の被った損害である。

一〇 結論
[31] 以上の次第であるから、原告は被告に対し、以下の各請求をなすものである。
1 第22回総会の本件決議は内容において無効であり、原告は右決議に基づく5000円の本件特別会費を納入すべき法律上の義務を負担すべきいわれはないから、右会費の納付義務のないことの確認
2 右1のとおりである以上、原告が本件特別会費5000円を納入していないことを理由に、被告が昭和54年度の被告の役員選挙に際し、同年4月3日付でなした原告に対する理事及び監事の選挙権及び被選挙権を停止する処分は無効であるから、主位的には右処分の無効であることの確認、予備的に、同年5月1日実施の被告の役員選挙において、原告が選挙権及び被選挙権を有していたことの確認
3 右1、2のとおりである以上、昭和54年5月1日実施の被告の役員選挙もまた無効であるから、その確認
4 同様に、昭和56、58、60年度の被告の役員選挙に際しなされた、原告の理事及び監事の選挙権及び被選挙権を停止する処分はいずれも無効であるから、主位的には当該処分の無効確認、予備的には当該役員選挙において原告が選挙権及び被選挙権を有していたことの確認並びに当該役員選挙が無効であることの確認
5 不法行為に基づく損害賠償として金500万円及び内金300万円(慰藉料金200万円と弁護士への着手金100万円の合計)に対する本件不法行為後の昭和56年5月7日より完済まで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払い
[32] 請求原因一の1及び2の事実は認める。ただし、2の南九州国税局とあるのは熊本国税局の誤りである。

[33] 同二の1及び2の事実は認める。

[34]三1 同三の1のうち、「日税連は昭和41年頃から税理士法改正に関する制度調査会を設け検討を進め」の部分については、昭和39年政府提案による税理士法改正案が廃案になって後、昭和41年10月に日税連が税理士制度調査会を設け、税理士制度について検討を加えたことは認める。「同47年6月ころ基本要綱を策定し、……動き始めた。」の部分は認める。
[35] 同2は認める。
[36] 同3は争う。
[37] 同4は認める。
[38] 同5は認める。
[39] 同6のうち、「日税政は……会報に発表した。」の部分は認める。
[40] 「さらに……献金リストを作成した。」の部分については、原告のいう「献金リスト」を作成したのは日税政であって日税連は右作成に関与していない。昭和54年8月23日に日税政と日税連との連絡会議が持たれ、その会議に日税連側も5名程度出席したが、その席上において既に日税政が作成していた献金リストを見せられ、日税連側も右献金リストについて了承したものである。
[41] 「しかし、……廃案となった。」の部分は認める。
[42] 「総選挙直前の……受領された。」の部分については、「日税連」とある部分を否認し、その余は認める。
[43] 同7の事実は認める。

[44]四1 同四の1は認める。
[45] 同2及び3は争う。
3 被告の目的(権利能力の範囲)に関する被告の主張
[46](一) 被告は「税理士の使命及び職責にかんがみ、税理士の義務の遵守及び税理士業務の改善進歩に資するため、会員の指導、連絡及び監督に関する事務を行うことを目的」とし(会則2条)、右「目的を達成するため」「税理士の義務の遵守及び税理士業務の改善進歩に関して税務官公署と連絡協議」(会則3条1項3号)したり、「その他本会の目的を達成するため必要な」事業を行う(同5号)とされているところ、右会則3条1項3号に照らすと、「被告の目的」とは「税理士の義務の遵守及び税理士業務の改善進歩に資するための事務を行うこと」であると解されている。従って、当然のことながら会則3条1項5号に規定されている「本会の目的」とは、これまた「税理士の業務の遵守及び税理士業務の改善進歩に資するための事務を行うこと」である。従って、税理士業務の改善進歩に資するため税理士法改正について政治的活動をすることは、税理士の社会的、経済的地位の向上をはかることに直結する事項であるから、右政治的活動を税理士会自体がやることはその目的の範囲内の行為であり、いわんや「税理士の社会的、経済的地位の向上を図……るため必要な政治活動を行なうことを目的」とする各県税政(例えば、熊本県税政規約3条)に寄附をすることは税理士会の目的の範囲内の行為であり、南九各県税政への資金提供を目的とする被告の本件決議が被告の目的を逸脱していることはない。
[47](二) 本件特別会費は、被告が全額南九各県税政へ会員数を考慮して配付するものとして決議され、その通りに支出された。即ち、被告は本件特別会費を、特別会費に関する特別会計を組んで昭和53年4月1日から昭和54年3月31日までの会計年度に収入として511万5000円計上し、そして計上した特別会費を南九各県税政に対して、右会計年度に101万3000円、昭和54年4月1日から昭和55年3月31日までの会計年度に195万6000円、昭和55年4月1日から昭和56年3月31日までの会計年度に202万8000円を、それぞれ前記特別会計として配付した。
[48](三) 南九各県税政の、右配付金を含む政治資金の使途は以下のとおりである。
(1) 熊本県税政
[49] 昭和53年7月1日から昭和54年6月30日までの会計年度においては、被告から58万円の寄附を受け、それを大会費、通信費等に支出したのち40万9478円を剰余金として繰越した。
[50] 昭和54年7月1日から昭和55年6月30日までの会計年度においては、被告から160万6000円の寄附を受け、それを寄附金21万6500円(その内訳は、昭和54年8月20日野田毅後援会に5万円、昭和55年6月26日南九税政に16万6500円を寄附した。)、その他大会費、通信費等に支出したのち85万5584円を剰余金として繰越した。
[51] 昭和55年7月1日から昭和56年6月30日までの会計年度においては、被告から25万円の寄附を受け(更に、雑収入4万5309円と前年度までの繰越金総額174万2320円を合わせると収入の部合計金額は203万7629円となる)、それを大会費、会議費等に支出したのち170万8579円を剰余金として繰越した。
(2) 宮崎県税政
[52] 昭和53年7月1日から昭和54年6月30日までの会計年度においては、被告から42万1000円の寄附を受け、それを昭和53年9月4日大原一三後援会のパーティ券代として2万円、その他調査研究費等に支出したのち剰余金として15万452円を繰越した。
[53] 昭和54年7月1日から昭和55年6月30日までの会計年度においては、被告から73万円の寄附を受け、それを昭和54年8月24日大原一三後援会にパーティ券代として15万円、同年9月13日陣中見舞として江藤隆美後援会、堀之内久男後援会、宮崎如水会に各10万円、小山長規後援会に5万円、昭和55年4月8日江藤隆美のつどい事務局にパーティ券代として10万円、同年5月15日自民党県連支部連合会にパーティ券代として10万円、その他旅費等を支出した。
[54] 昭和55年7月1日から昭和56年6月30日までの会計年度においては、被告から46万9000円の寄附を受け、それを組織活動費等に支出したのち剰余金として58万9518円を繰越した。
(3) 大分県税政
[55] 昭和53年7月1日から昭和54年6月30日までの会計年度においては、被告から48万円の寄附を受け、それを大会費、旅費日当等に支出したのち剰余金として47万9419円を繰越した。
[56] 昭和54年7月1日から昭和55年6月30日までの会計年度においては、被告から114万円の寄附を受け、それを後援会費として50万円(その内訳は、昭和55年4月18日後藤正夫を励ます会にパーティ券代として30万円、同年6月9日羽田野忠文後援会、風雪近代政経研究会に陣中見舞として各10万円を支出した)。その他大会費、印刷費等に支出したのち58万8896円を剰余金として繰越した。
[57] 昭和55年7月1日から昭和56年6月30日までの会計年度においては被告から25万円の寄附を受け、それを後援会費として29万円(その内訳は、昭和55年7月31日に風雪近代政経研究会に20万円、同年12月5日文ちゃんと語る船上パーティ本部にパーティ会費として8万円、その他に支出した。)、その他大会費、旅費日当等に支出したのち11万5456円を剰余金として繰越した。
(4) 鹿児島県税政
[58] 規正法12条に基づく昭和53年分(昭和53年1月1日から同年12月31日まで。鹿児島県税政は、他の県税政とは異なる期間をもって会計年度としているし、政治資金規正法に基づく収支報告書は収入および支出の費目が詳細に記載されているのでこれに基づいて説明する。以下同じ)については、被告から25万円の寄附を受け、これを事務所費、旅費に支出したのち前年度からの繰込金52万1187円を合わせて63万2841円を翌年に繰越した。
[59] 昭和54年分については、被告から107万円の寄附を受けた外に、日税政からの寄附68万1360円、鹿児島県税理士共済会からの借入550万円などを含め収入総額1114万4170円のうちから、政治団体への寄附総額619万2000円、旅費26万8610円、その他の費目を含めて合計811万980円を支出し、303万3190円を翌年へ繰越した。
[60] 昭和55年分については、被告から75万8000円の寄附を受け、その他の収入を含め収入総額金869万7029円のうちから、政治団体への寄附140万円、旅費22万6380円、その他の費目を含め総額212万6040円が支出されたのち657万989円を翌年へ繰越した。

[61] 同五の1ないし4は争う。
[62] 原告の論法によれば、およそ団体が多数決によって意思決定をなしその執行をする場合に、1人でも反対者がいれば、その反対者の思想信条の自由を犯すということになるが、かような考え方は不当である。
[63] 本件決議に基づき、被告の名においてなした南九各県税政に対する寄附行為は、前述のとおり被告の目的の範囲内の行為であって、規正法22条の7にいう「寄附のあっせん」にそもそも該当しない。

[64] 同六は争う。

[65] 同七の1は認めるが、2及び3は争う。
[66] 本件処分の根拠は、別紙(3)の被告の会則14条2項をうけて制定された別紙(4)の役員選任規則であるが、同規則6条から明らかなことは、会費滞納者に選挙権及び被選挙権を付与しないのは、それぞれの権利取得のための消極的要件を備えないことになるからということである。
[67] 以上は、公職選挙法(以下「公選法」という。)9条が選挙権の、10条が被選挙権の、それぞれ取得のための積極的要件を規定し、11条が消極的要件を規定しているのと全くパラレルである。
[68] 従って、原告が選挙権及び被選挙権の停止処分を受けた旨主張することは失当である。そのような処分はなされていない。原告に対しては、恰も公選法上一定場所に一定期間住所を有しなければ選挙権が付与されないように、そもそも選挙権及び被選挙権を有する資格要件を欠いていたがために、被告の会則及び役員選任規則の規定により、当然に選挙権及び被選挙権が付与されなかったのであって、会則47条の「会員の処分」とは全く無関係である。
[69] ちなみに、会則47条所定の「会員の処分」の中に選挙権もしくは被選挙権の停止処分もあり得ることは同条の規定上明らかであるが、この停止処分は、規則よりも上位にある会則が、規則によれば選挙権及び被選挙権が認められる場合であっても、なおその権利行使が停止され得ることを定めたものに過ぎない。

[70] 同八の事実はいずれも認める。

[71] 同九は争う。被告のとった措置に何らの違法性はなく、不法行為が成立する余地はない。
一 税理士法の制定
[1] 《証拠略》並びに顕著な事実によれば、以下のとおり認められる。
1 税務代理士法に先行する諸制度
[2] 明治20年、わが国にはじめて所得税法が創設され、更に同29年には営業税法が制定されるなど企業課税が導入されるに及んで、税制が複雑、多様化するとともに、税負担も次第に過重となってきたので、商工業者は、退職税務官吏や会計に素養のある者に対し、記帳や税務の相談を依頼するようになり、ここに一群の職業専門家を自然発生的に生み出すことになった。
[3] 現在知られている最も古い制度としては、明治45年大阪府令第45号「大阪税務代弁者取締規則」があるが、これによれば、税務代弁者に対する監督権は警察署長にあり、警察署長の免許により業務を行うものであった。
[4] その後、昭和2年には、新たに計理士法が制定された。計理士は、会計に関する諸般の事務を行うものであって、税務に関する業務を直接の対象としたものではなかったが、本来の計理士業務を行うものは極めて少なく、多くは巡回記帳・税務代弁等を行っていた。しかし、同法の制定は、職業会計人の全国的な制度の誕生として重要な意義をもつものであった。職業会計人を指称する用語として、いまだに「計理士」という言葉が使われているのも、この制度が重要な社会的役割を果たしたことを物語っているといえよう。(尚、この計理士法は昭和23年に廃止され、代わって公認会計士法が制定されて、今日に至っている。)(以上、平凡社発行「世界大百科辞典(1972年版)」中の「計理士」、「公認会計士」の項目参照)
2 税務代理士法の制定
[5] 昭和16年2月の太平洋戦争の開戦に伴ない、新たに税務代理士法が制定された。帝国議会における当時の加屋大蔵大臣の同法提案の趣旨説明中には「……新たに税務代理士法を制定し、税務代理士の制度を設け、其の素質の向上を図りますると共に、是等の者に対する取締りの徹底を期し、之により戦時に於ける税務行政の円滑なる運用に資せむとするのであります。」と述べられていた。
[6] 昭和17年2月23日成立の同法は、現行税理士法の骨格となる基本的な規定を殆ど備えており、税理士界も同法の成立をもって税理士制度の発足とみて、その成立日である2月23日を「税理士記念日」としている。
3 戦後の混乱期とシャウプ勧告
[7] 税務代理士制度は、戦後、新憲法が施行された後も、米軍の占領下においてなおしばらく存続した。戦後のインフレと食糧不足、物不足の混乱期において、税負担率は、戦前・戦後を通じて最高水準を記録し、税金の滞納もまた記録的であった。このような状況のもとにあって、税制改正によって申告納税制度が採用されたものの、税収確保という至上命令に追われて、更正・決定が濫発され、申告納税制度は形骸化されていた。
[8] 戦後の混乱期を収拾するために、占領軍は、アメリカ本国府の指令に基づき、経済安定9原則を強行した。それを具体化したものがドッジ・ラインといわれるもので、それを税制面から支えるための政策が「シャウプ勧告」であった。
[9] 同勧告は、税制の全面的な改正とともに、税務代理士制度の大幅な改正をも求め、税務代理士制度を「納税者の代理を立派につとめ、税務官吏をして法律に従って行動することを助ける積極的で見聞の広い職業群」として確立することを求めていた。
4 現行税理士法の制定
[10] シャウプ勧告に基づき、現行税理士法は、昭和26年6月15日国会において成立し、同年7月15日施行されたが、その内容はおおよそ以下のようなもの(かっこ内は参照条文)であった。
(一) 職責
 税理士は中正な立場で、租税に関する法令に定められた納税義務を適正に実現し、納税道義を高めるよう努力することを職責とする(1条)。
(二) 業務
 所得税、法人税、相続税、贈与税、事業税等についての税務代理、税務書類の作成、税務相談を行う(2条)こととし、これらの業務は、有償・無償を問わず、同法に別段の定めがある場合を除き税理士の独占業務とする(52条)。
(三) 権利義務
(1) 税理士の委任状の添付された申告について調査するときは、税理士にも通知をするものとする(34条)。
(2) 税理士は税理士証票を呈示し、自己の作成した税務書類には署名押印する。業務上知りえた秘密を守る義務、信用保持の義務を負う(32条、33条、37条、38条)。
(四) 税理士の資格、試験及び登録
(1) 税理士となる資格は、弁護士、公認会計士、税理士試験合格者、試験免除が全科目に及ぶ者とし、税理士名簿に登録を受けなければならない(3条、18条)。
(2) 試験科目は、税法3科目、会計学2科目の科目別試験とし、計理士及び税務職員については、一定年数その職にあった者について試験の一部を免除する(6ないし8条)。
(五) 懲戒
 税理士に対する懲戒権は、国税庁長官がもつ(第5章44ないし48条)。
(六) 税理士会及び日本税理士会連合会
 税理士は、国税局の管轄区域ごとに民法34条の法人たる税理士会を設立することができ、税理士会は民法34条の法人たる税理士会連合会を設立することができる(49条)。
二 税理士法の変遷(昭和39年頃まで)
[11] 当事者間に争いない事実並びに《証拠略》によれば、以下のとおり認められる。
1 昭和31年から昭和37年までの改正
[12] 税理士法は何回かの一部改正を経てきたが、昭和31年の改正によって、税理士会が税理士法に基づく特殊公益法人に改編され、税理士の税理士会への加入は、従前の任意から、間接の強制加入となった。
[13] 右に関連し、衆議院大蔵委員会において「税理士会への強制加入制度は、税理士の品位並びに社会的地位の向上を図ることによって、納税者の権利を擁護し、税務行政の適正化を期待するのを本旨とするものであることにかんがみ、その運営が中正かつ民主的に行われるよう、政府並びに税理士会において格段の措置を講じられたい。」との附帯決議が採択された外は、昭和37年の改正までは、税理士制度の本質にかかわるようなものはなく、部分的なものにすぎなかった。
2 昭和39年税理士法改正案の廃案
[14](一) 昭和36年の税理士法の一部改正にあたり、参議院大蔵委員会は3年をめどとして税理士法の全面的な検討を行うべきことを附帯決議したが、これを受けて、政府は税制調査会の答申に基づく税理士法改正案を昭和39年の第46国会に上程した。これ(以下、便宜「昭和39年案」という。)は、試験制度の点を除き、後述する昭和55年案とほぼ同内容のものであったが、その骨子は以下のとおりである。
(1) 税理士業務の対象税目を、原則として全税目に拡大する。
(2) 附随業務として会計業務を規定する。
(3) 記帳義務を強化し、使用人等に対する監督義務を新設する。
(4) 懲戒処分の効力発生時期を、処分確定の時から即時発効に改める。
(5) 従来の科目別試験制度を廃止して一括試験とする。試験は、予備試験と本試験の2本建とし、さらに本試験を短答式と論文式に分け、試験科目を増やす。
(6) 税務職員の特別試験を廃止する代りに、勤続20年以上で、かつ、5年以上管理職の地位にあった者に対して、認定により税理士資格を付与する。
[15](二) 昭和39年案は、税理士業界の総力をあげての反対により、昭和40年6月参議院大蔵委員会で「審議未了のため廃案」となった。

三 税理士界の自主的な法改正運動
[16] 当事者間に争いない事実並びに《証拠略》によれば、以下のとおり認められる。
1 税理士法改正に関する基本要綱
[17] 昭和39年案が廃案になって後、昭和41年10月日税連(日本税理士会連合会)において税理士制度調査会を設け、税理士制度について根本的な検討を加え、昭和43年12月右調査会の答申を受け、これに対する13単位税理士会(当時)の意見を聴取し、これらを基に昭和45年7月の「税理士法改正に関する第1次試案」、昭和46年5月の「同第2次試案」を経て、同年10月、日税連自ら「税理士法改正に関する基本要綱」(以下、「基本要綱」という。)をとりまとめ、昭和47年6月には文書にして公表され、昭和48年6月には国会や大蔵省はじめ関係省庁に要望書として提出し、税理士法改正に向けて動き始めたが、基本要綱の基本的な内容は以下のとおりである。
(一) 税理士の使命の明確化
 税理士法1条(当時)の税理士の職責の規定を全面的に改め、「税理士は租税に関する国民の権利を擁護し、納税義務の適正な実現を図る。」ことを宣言的に規定する。
(二) 資質の確保、向上
 税理士の資質の確保、向上を図る意味で、税理士試験を質の高いものに改正し、税務職員を対象にした特別試験の特権を廃止し、併せて、税理士倫理の確立を目ざす。
(三) 自主権の確立
 税理士の自主権を確立するため、税理士に対する懲戒権及び質問検査権が国税庁長官に、税理士会及び日税連の会則等に関する監督権が大蔵大臣にあるのを廃止して、税理士会及び日税連の自主性に委ねる。
(四) 業務の拡大と整備
 税理士業務の対象税目を限定列挙から、全税目に改め、付随業務として会計業務を加える。
(五) 権利義務の拡充と整備
 調査の事前通知及び意見の聴取を税理士の権利とし、その措置の有無が行政処分の効力に影響を及ぼすこととし、関与する事案について、税務官公署に対し、書類の閲覧、謄写及び撮影の請求権を有するものとする。
 帳簿作成の義務、報酬の制限等については、税理士会の自主性に委ねる。
(六) 税理士業務の制限の徹底
 非税理士行為や類似行為の制限を徹底し、臨時の税務書類作成等の資格付与制度を廃止する。
2 基本要綱の帰趨
[18] 基本要綱は、税理士法の基本的な部分にわたる大巾な改正を要し、かつ、公認会計士、弁護士の職域とも関連することから、法改正の立案にあたる大蔵省でも慎重に検討するとの態度はとりつつも、税制調査会等で審議することにもならず、何ら基本要綱に沿った具体的な動きを示さず、基本要綱に沿った税理士法改正が進展を示す気配はなかった。

四 昭和55年税理士法一部改正の成立
[19] 当事者間に争いない事実並びに《証拠略》及び顕著な事実によれば、以下の事実(かっこ内の書証は、当該部分の認定に特に重要なものを明示したものである。)が認められる。
[20] 日税政(日本税理士政治連盟)は昭和51年初め頃、税理士法改正特別募金として会員1人当り1万円の特別募金に応じてもらいたい旨地区税理士政治連盟宛要請した。
[21] この頃、税理士法改正も詰めの段階にきているが、日税連幹部から「基本要綱の手直し」「改正の鍵は小企業問題とチェックリストだ」との声が流され、「政府提案一本にしぼる」との暗黙の了解がなされた旨の情報が一部に流されたりしたうえ、日税政も、税理士法改正を有利に進めるという理由で、来たるべき衆議院議員総選挙の推薦候補を特定政党、特定候補に限定する旨決定した。(日税連と日税政の組織関係については、後記第二で述べる。)
[22] 昭和51年6月23日被告の第20回定期総会において、次の議案が決議された。
「特別会費5000円徴収に関する件
 税理士法改正運動に要する特別資金とするため、各会員より特別会費として金5000円を徴収する。
理由  日本税理士政治連盟(日税政)より南九州税理士政治連盟(南九税政)あて税理士法改正特別募金として会員一人当り金1万円の特別募金の要請があったが、この資金の緊急性に鑑み、当会の特別会費として徴収するものである。
特別会費の使途  特別会費5000円は全額南九州各県税理士政治連盟(南九各県税政)へ会員数を考慮して配布する。」
(右によって集められた470万円は、後日、手数料等を差し引いた451万円が被告から南九各県税政へ寄附され、南九各県税政は内313万6000円を南九税政へ寄附し、それはすべて南九税政から日税政へ特別分担金として交付された。)
[23] そして、昭和51年8月9日熊本県税政連(会長永野寿一)を最後に、南九州4県(熊本、大分、宮崎、鹿児島)に県単位税政連を結成し終えた。
[24] しかし、右税政連結成にからみ、税理士法改正の危険な動きとあわせて、極めて異常であるとして、税政連の特定政党、特定候補者支持の強制、特定政党への献金、この献金を特別会費或いは一般会計からの支出方式で会員から強制的に集めていること、政治資金規正法改悪にあわせて実体のない単位税政連をデッチあげて政治献金のトンネル会社としていること等を主張する会員の批判が公表されてもいた(昭和51年9月15日発行「税経新報」第186号の甲斐健彦論文)。
[25] 現に、熊本県税政連では、昭和51年11月13日に衆議院議員候補者に関し、1区で松野頼三、野田毅、2区で坂田道太、園田直、福島譲二(以上いずれも自民党)を、翌52年2月28日に参議院議員候補者に関し、細川護煕、三善信二(以上いずれも自民党)をそれぞれ推薦することを決定した。
[26] 昭和52年10月税制調査会は、一般消費税の導入を具体的に提起する答申を内閣総理大臣宛提出した。この答申によって、中期的には、一般消費税の導入を中心とする増税によって財政再建を図るという基本的方向が確立されたが、実施時期については、経済情勢等に配慮しつつ総合的に判断されなければならないが、できる限り早期に実施に踏み切るべきであるとしていた(平凡社発行「世界大百科年鑑1978年」279頁参照)。
[27] その後、同年12月27日、山本義雄会長ら日税連執行部は、大蔵省主税局、国税局の幹部と「税理士法改正問題に関する懇談会」を行ったこと、その席上で実質的に税理士法改正についての日税連に対する回答がなされた模様であるが、右懇談会の概略は、日税連の機関紙「税理士界」(昭和53年1月25日第724号)に掲載された。
[28] 右懇談会で提起された問題点の1つは、日税連の「建議」に基づいて、政府が改正案を提出するという形式をとるよう国税当局が求めてきたこと、即ち、昭和53年3月頃までは日税連と国税庁の間で具体的、個別的な問題について意見の調整を行い、4月から6月頃までに主税局、証券局等との間の意見の調整を終わり、ここで国税当局と日税連との間で合意に達した素案を日税連へ持ち帰り、日税連内部の意思の統一をはかり、日税連の「建議」という形で政府に対して8月末頃までに要望書を提出する、国税当局はこれを受けて税制調査会にはかるとともに、法制局と協議して法律案にまとめあげ、早ければ12月末頃には通常国会に上程することになろう、というのが、日税連執行部の説明である旨の報道がなされた(昭和53年2月15日発行の「税界展望」)。
[29] 昭和52年12月には、日税連と日税政は表裏一体となって法改正運動を強力かつ一元的に推進するため、その内部調整機関として「税理士法改正国会対策連絡協議会」を設置、発足させた。
[30] 昭和53年1月26日、日税連は正副会長会を開き、右5の国税当局との懇談会の経過を要約した形で「税理士法改正研究資料」を作成して討議したが、右資料は、「会長から正副会長会に報告事項」(いわゆる会長感触6項目を含む)と「税理士法改正の具体的内容」等であったが、右会長感触6項目に盛られていた内容は以下のとおりであった。
(一) 税理士の職責ないし使命に関し、税理士が中正な立場をとるべき旨の改定を期することは至難のように思われること。
(二) 弁護士・公認会計士については、これらの団体を納得させることは極めて困難な状況にあること。
(三) 特別試験の引換えに、国税職員に簿記論と財務諸表論の一般試験を行うべく改定することは至難のように思われること。
(四) 税理士及び税理士会の懲戒・監督に関し、弁護士制度における完全な自治権に類する制度の創設を期することは至難のように思われること。
(五) 税務行政に著しい支障を来たすおそれがあるとされる事項について改定を期することは困難のように思われること。
(六) 改正内容が法制局と国会の審議に耐え得る客観的、具体的必要性を有するものであること、すなわち当該改正が[1]税理士と税理士業界の側、[2]税務行政の側、[3]納税者の側の三者にとって実益のあるものでなければならないとされていること。
[31] 右5の懇談会の内容の輪郭が知られ、会長感触6項目が知れわたるや、今回企図される税理士法の一部改正では、昭和39年案を廃棄にした意味がなくなり、基本要綱が掲げている中心的な柱がことごとく否定されていること、しかも、改正案が日税連の「建議」に基づくという建前をとる以上、自らの手足をしばり、基本要綱凍結になりかねないこと、従って、基本要綱に沿った改正を望む立場から、日税連執行部の今回の動きに危惧を示す意見、日税連執行部の動きを監視する意味からも、当局との折衝経過や情報が早急に公開、公表されるべきことを求める意見等が、税理士の間からも提言された。
[32] 昭和53年3月22日には、自民党財政部会内に「税理士問題小委員会」(会長小渕恵三代議士、以下「税理士小委」という。)が設置され、同月28日と4月7日には、大蔵省、国税庁から、4月14日には日税連からそれぞれ事情聴取をした。これらのことは、昭和53年4月25日、第730号の「税理士界」でも報道された。
[33]10 日税連内部の組織である税理士法改正対策委員会は、昭和53年2月10日、前記会長感触6項目に関する分析と判断を行い「税理士法改正運動計画大綱」を決定し、同年4月10日には、山本会長ら日税連執行部と国税当局との税理士法改正作業に向けての第1回の事務折衝が行われた。この席で、国税当局側は、「建議」方式は望ましいこと、納税者と国との対立関係において税理士の使命をとらえている立法例は外国にもないこと、自治権については他の職業専門家集団とのバランスの問題があること、特別試験問題は十分論議を尽くしておくこと、弁護士会・公認会計士協会にかかわる問題は、業界相互の問題として、各会が議論を詰めること等が説明された。
[34]11 昭和53年4月14日、日税連理事会では、同年12月招集の通常国会に税理士法改正法案の国会上程を期する「税理士法改正運動計画大綱」を決定したが、その内容は別紙(1)のとおりであり、これらのことはいずれも、昭和53年4月25日発行の「税理士界」(第730号)で報じられた。
[35] 右「税理士界」報は、宿願の税理士法改正作業が山場にさしかかっていること、この時期において、4月14日の「税理士小委」の事情聴取の際に指摘された或るグループの好ましからざる短絡・独走的行動(日税連執行部を批判するビラ配布等)が表面化しているとしてこれを憂え、日税連では運動計画大綱、活動細目で決定しているように、税理士法改正運動は機関ルールに則り進めることにしており、経過は速やかに会員に伝達し、理解と判断を求めながら展開することにしていること、意見の相違は機関審議で決着をつける義務がある、として、日税連執行部批判者に対し自重を促す主張を掲載した。
[36]12 昭和53年6月16日、被告の第22回定期総会が別府市において、会員総数974名のうち出席688名(内委任状545名)、来賓として熊本国税局総務部長、直税部長、不服審判所長、山本日税連会長等20名の出席の下に開催された。この総会における議案の1つとして
「第5号議案
特別会費5000円徴収に関する件
 税理士法改正運動に要する特別資金とするため、各会員より特別会費として金5000円を徴収する。
 特別会費の納付期限は、昭和53年7月31日とする。
 この特別会費は、特別会計をもって処理する。
理 由
 税理士法改正運動資金の緊要性に鑑み、当会の特別会費として、徴収するものである。
特別会費の使途
 特別会費5000円は、全額南九各県税政へ会員数を考慮して配布する。」
があり、被告の会員である原告の反対意見の表明があったものの、賛成多数で可決(これが「本件決議」である。)された。
[37] 原告が右議案に反対したのは、日常的な税政連側の組織運営費は、税理士会側から納められている1人当り年間2000円の資金(後記第二の二の5参照)で十分なはずだから、今回「特別会費」として「5000円」を臨時に徴収することは日税連執行部が日税政と協力して、国税当局との間で進めている法改正作業(原告はこれに反対であった。)に協力することになり、しかも、そのために日税政のなすであろう特定政党、特定政治家への賄賂性の強い政治献金作りに協力することであり、かつ、原告の抱く思想、信条に反する政党、政治家に原告の拠出した会費が渡されることを承認することになる等の理由から到底容認し難いと考えたことにあった。
[38]13 昭和53年7月25日発行の「税理士界」(第736号)は、「源流欄」で
「法の一部改正といっても、実質は全面見直しであること、国税当局と日税連執行部との折衝は、同年4月10日のあと同年6月12日と7月21日に開催されたこと、これらを含む関係各方面との多角的折衝により、改正法案の輪郭が次第に浮び上ってくる気配であるが、その中身は、かねて予測されたとおり、基本要綱に比べ相当厳しいものとなることが明らかとなってきたこと」
を述べていた。
[39]14 昭和53年9月20日開催の日税連正副会長会(被告の永野寿一会長(当時、以下同じ。)も日税連副会長の資格で出席)において、特別会費の新設に伴う日税連会則の一部変更、昭和53年度法対策特別会計補正予算(法対策資金の需要は急を要するので、差し当り銀行借入れをもって対処したいこと等)が了承されたが、その協議の過程で、労働組合が政治活動に使う目的で徴収する臨時会費については、当該組合員に納付義務がないとした最高裁判例(昭和50年11月28日)をどう考えるか、税政連独自の資金の調達がベターではないか、政治運動資金を会費として集めることは強制加入制をとる税理士会になじまないのではないか等の疑問・質問が出されたものの、多数意見とはならなかった。
[40]15 昭和53年9月21日、東京で開催された日税政の第12回定期大会の議案には、第1号議案「昭和52年度運動経過報告承認の件」(昭和52年7月1日から昭和53年6月30日まで)では、日税政が日税連の法改正運動に協力し、その政治的環境づくりに運動の重点をおいてきたこと、その具体化として国会議員の後援会作りに昭和50年以来組織的に取り組み、109組織の結成に至っていること、法改正運動を支援する自民党国会議員による関係機関の設置方働きかけが結実したこと(「税理士小委」と昭和53年5月26日発足の、代表世話人渡辺美智雄他の「税制議員懇話会」)がうたわれ、第3号議案「昭和53年度運動方針(案)承認の件」(昭和53年7月1日から昭和54年6月30日まで)では、日税政は日税連の基本方針に則り、各単位税政連と連携しながら、我々の推薦する国会議員の後援活動を全国的に推進し、国会その他政治機関との意思の疎通を図り、税理士法改正案の次期通常国会上程を期し、日税連と協力して強力な運動を行う、推薦国会議員等の後援会を通じ、日常政治活動を強力に行う等とうたわれていた。
[41]16 昭和53年9月22日開催の日税連の常務理事会(被告の永野会長も日税連の副会長の資格で出席)では、右14の正副会長会をうけて、日税連会則の一部変更、昭和53年度法対策特別会計予算の組替えの各議案について、四元正憲日税連専務理事からの、現行の法対策特別分担金の徴収は10年来継続し、その実質は会費と同じであり、従って税理士法上も問題があるので、これを改め、特別会費として正常化しようとするもの、当該会費は昭和54、55年度の2年度間にわたり、会員1人当り3500円宛計7000円とすること、各会における特別会費の調達に当たっては、一般会費の枠内、臨時会費の徴収、税政連による募金及び寄附金等のいずれをとるかは任意であること等の説明を基に質疑に入り、税政連へ交付する特別対策費に関し、会費を選挙運動に使う等、その使途によっては規正法に触れるおそれはないか、今回の法改正が果たして価値ある内容を伴うものであるか、各会それぞれの手続を経ずして結論を急ぐことに問題はないか等がだされたが、これに対し四元専務理事からは、資金集めの最善の方法は税政連による募金と考えられるが、それでは困難という判断と、税政連からの依頼によって本案を作成したこと、事態が急であるので、特別会費の新設が最上であること、税政連への交付金も税理士法改正のためであるから差し支えないこと、当該資金の使途については、税理士法改正を進めるうえで必要と思われる筋に使われることとなること、改正の内容については、大蔵省主税局、国税庁、自民党等において検討中であるが、悔いを残さないよう資金を有効に使っていきたい旨の答弁があって後、結局賛成多数で右両議案とも承認された。
[42]17 同日(昭和53年9月22日)、引き続いて、日税連の理事会(被告の永野会長も出席)が開催され、同日の常務理事会の決議をうけて、両案件が議案として提示され、質疑の中で、四元専務理事は、新設する特別会費の直接の納付義務者は各税理士会であり、その会員ではなく、しかも、各会は募金等の任意の方法をもって調達することも可能であって各会員に納付方を強制するものではないから、当該会員の思想の自由を害するものとは思われない、この特別会費でもって当てられる法対策特別資金は税理士法改正のために充てられるものであるから、特定の候補者支援のため、その所属政党に寄付する資金を組合費として徴収することは違憲とする最高裁判例(昭和50年11月28日)とはその趣旨が異なり問題はない、現時点で内容なき改正というのは早計にすぎよう、10月中にも国税庁・主税局と税理士小委との間で叩き台が策定される運びとなっており、今積極的な運動を展開していかなければ、その機を逸するとともに、外部利害関係団体の熾烈な反対運動に抗し切れず不本意な結果を招くことになりかねない等の答弁があって後、賛成多数で承認された。
[43]18 昭和53年10月26日、会員総数14の単位税理士会全員の出席(被告の永野会長も出席)をえて、日税連臨時総会が開催され、日税連会則の一部変更の件と、昭和53年度法対策特別会計予備組替えの件が原案どおり承認された。
[44]19 昭和53年12月10日発行の「税理士界」(第745号)は、同年11月13日の正副会長会で、税理士小委の小渕委員長との懇談の結果、改正法案の国会審議は昭和54年4月以降となるであろうと報告された旨の報道がなされた。
[45]20 昭和53年12月15日発行の「北陸税理士会会報(甲第112号証)は、同年11月20日に開催された税理士法改正に関する会員説明会での、四元専務理事の説明を、詳報していたが、その概要は以下のとおりである。
(一) 税理士法改正運動の経過と見通し
 昭和53年4月以降9月まで日税連執行部と大蔵省主税局、国税庁間で検討を加えてきたが、国税当局側の基本要綱に対する見方は厳しいこと、当局側も具体的に研究しているが、色んな配慮があって、具体的には自分も知らない面があること、税理士小委も精力的な動きを展開しているが、各界の利害の調整も絡んで政治家としてメリットがあるかどうかの懐疑論も生じていて、税理士会内外の反対が強ければ、国会議員として税理士業界のためにどこまで働いてくれるかも期待薄なこと、そこで改正法の素案は国税当局で作ることになろうが、自民党からの国税当局に対する日税連寄りの政治的圧力に期待したいこと
(二) 政治資金の必要性
 税理士法改正の中味は、従って、相当自民党主導型で、国税当局側を抑えていくであろうことを期待しうるが、そうなると先立つものということで政治資金がいること、8月頃は総選挙も間近いという話(実際は選挙はなかった。)で、日税政から金がいるけど集め切れぬから日税連で資金手当をしようということになったこと、そこで、昭和54、55年度に各3500円宛計7000円を特別会費として徴収する計画を立てたこと、現在も特別分担金として年2000円徴収しているので、実際の負担増は合計3000円にすぎないこと、しかし、東京税理士会などでは強制的徴収はできないという考え方があったため、日税政でも1人当り3000円を目標に募金をすることになったこと、これができれば、日税連としては殊更な資金手当はいらないかもしれないこと
(三) 税理士法改正の内容
 右中身が分からないで金は出せないという議論もあるが、中身が決まってからは金は要らないのであって、中身を少しでも良くするために政治資金が要ること
(1) 税理士の使命・職責
 現行法1条の「税理士は中正の立場において」という文言を削って、納税者の権利を擁護して適正な納税義務の実現に努めるという基本要綱の立場は国税当局の厳しい反論にあっており、政治的解決になるかもしれないこと
(2) 税理士の業務
イ 対象税目については、既得権の侵害をされかねない行政書士会等から強い反対があっていること
ロ 税務代理に関しては、税務官公署に対する主張、陳述も出来るよう明示することは問題ないこと
ハ 税務書類の範囲に関して、課税標準の計算をすることを税理士の独占業務にすることでは青色申告会、商工会とあつれきが生じているので、調整が必要であること
ニ 税務相談については、課税標準及び税率に限定されているのを取り払おうと主張する日税連の主張に、国税当局は難色を示していること
ホ 付随業務
 会計業務を取り入れることは、公認会計士協会は反対しているが、日税連の主張どおりになりそうなこと
(3) 税理士の資格
 これを税理士試験合格者にのみ付与することとし、現行法の弁護士・公認会計士に無条件で税理士資格を付与している制度を廃止するとの基本要綱の立場は、到底採用されそうもないこと、一歩さがって、両者についても税理士法のみの試験を課すことをも提案しているが、これも受け入れられそうにないこと
(4) 税理士の試験制度
 特別試験制度の廃止という基本要綱の線は、とても受け入れられそうにないこと
(5) 税理士の登録制度
 登録即入会という基本要綱の考え方は大丈夫と思われること
(6) 税理士の権利及び義務
 基本要綱の、税務代理をするとき税理士の署名押印だけで可とし、委任者の署名押印は不要とすること、税務官公署の調査の際の当該税理士に対する1週間前の事前通知、税務官公署の当該税理士の意見聴取、当該税理士に対する更正等の処分の通知、税務官公署の書類の開示等を義務づけること及び帳簿作成義務の免除にはいずれも消極的であって、実現の見込は薄いこと、但し、報酬規定の日税連による定め、事務所設置義務は基本要綱の線でいいだろうこと、昭和39年案で出ていた使用人の監督義務も再び持ち出されていること
(7) 税理士の懲戒処分
 これを日税連に完全に与える旨の基本要綱は絶対に容認され難い状況であること、妥協策として大蔵省に懲戒審査会(委員は税理士、学職経験者、国税庁等の職員の三者構成)を作り、その議決に基づいて国税庁長官なり大蔵大臣なりが処分を決定するとすることに落ち着きそうなこと
(8) 税理士会及び日税連
 右に対する国税庁或いは大蔵大臣の監督権を排除し或いは必要最小限にとどめるとの基本要綱の線も、受け入れられそうにないこと
(9) 税理士の義務制限等
 税務官公署職員であった者の離職後2年間の税理士業務の地域制限についても、基本要綱の考え方は入れられそうにないこと
[46]21 昭和53年12月、税制調査会は「昭和54年度の税制改正に関する答申」で、昭和55年から一般消費税を実施すべきであると提言するとともに、その具体的仕組みを明らかにした(1981年発行、平凡社「世界大百科事典・34巻」37頁参照)。
[47]22 昭和54年3月13日、税理士小委は「税理士制度改正要綱」(いわゆる小渕試案)において、改正法案の骨子をとりまとめたが、その内容は個々の税理士の十分知るところとはならず、右単位税理士会も、会員に対して意見を聞く時間的余裕もなかった。
[48]23 昭和54年4月2日、被告の選挙管理委員会において、同年5月1日に実施する被告の理事及び監事の選挙に関し、その選挙権及び被選挙権を原告が有しないものと決定し、原告を除いて選挙人名簿を作成し、4月3日の被告の理事会においてもこれを了承した。その理由は、原告が第22回総会で決議された本件特別会費5000円を同年3月31日までに納入しなかったので、別紙(3)の被告の会則14条に基づき制定された別紙(4)の役員選任規則6条2項2号に基づく措置であるというのであった。
[49] そして、同年5月1日、原告の選挙権・被選挙権は停止されたまま、被告の理事及び監事の選挙が実施された(これらのことは、当事者間に争いがない。)。
[50]24 日税連執行部は、同年4月5日開催の理事会で、国税当局並びに自民党に対して小渕試案に基づいて法改正を推進してもらいたい旨の決議をするとともに、基本要綱を凍結することを決めた。
[51]25 昭和54年4月24日開催の、日税連の正副会長会では、同月5日開催の理事会決議の関係国会議員に対する周知徹底化と法案上程の積極的推進方の陳情、有力国会議員への接触等の動きが報告され、昭和54年度予算案については、総選挙に要する費用についての日税政試算によれば約7000万円の不足が見込まれ、結果的に借入れの必要が生じることになるのではないか、当面の法改正対策費及び秋の総選挙対策費試算でも、所要概算費として2億3000万円が見込まれること、来年の参議院議員選挙対策費としても3000万円見込まれることに留意されたい旨の説明がなされた。
[52]26 昭和54年4月27日には自民党財政部会が「税理士法の一部を改正する法律案要綱」を了承、5月10日には自民党政調部会もこれを了承、政府は翌11日「税理士法の一部を改正する法律案」を閣議決定し、翌12日には右案を政府案として第87通常国会に上程した。
[53]27 右改正案の内容が発表され、その検討が開始されるや、これを大改悪と考える税理士有志、納税者団体らは「税理士法改悪反対中央連絡会」を結成して、税理士法改正に反対する運動を展開した。そして、右改正案そのものも第87通常国会では、同年6月14日審議未了廃案となった。
[54] 同法案は第88臨時国会でも再上程(同年8月31日)されたものの、成立を推進する大蔵省・日税連と右反対中央連絡会に結集した者らとの激しい攻防の中、再度昭和54年9月7日衆院解散のため、廃案となり(総選挙の公示は同月17日、投票は10月7日)、同年11月29日3度目の上程のあった第90臨時国会で同年12月11日継続審議となった後、第91通常国会で第1条に「申告納税制度の理念にそって」を挿入する一部修正のうえ昭和55年4月8日可決成立した。
[55]28 昭和54年8月1日号の日税政の新聞は、総選挙必至という段階で、衆院選における日税政の推薦候補小渕恵三外83名(自民党60名、社会党12名、民社党6名、公明党3名、新自由クラブ1名、無所属他2名)を公表し、同月23日、日税政と日税連とでもたれた連絡会議では、右候補に更に17名を加えた計101名を5ランクに分け、500万円、300万円、200万円、100万円、50万円(合計約1億3000万円)の政治献金をすることが了承され、9月7日の衆院解散後の同月10日過ぎ頃、日税政は14単位税政連の地方幹部に右ランクに従い、101名の与野党政治家に配分することを指示して、合計1億3000万円を手渡し、選挙戦最中の右各推薦候補者事務所に、いわゆる陣中見舞いとして持参させたが、公明、共産両党を除く殆どの候補者側ではこれを受領した。
[56] 右の事実が同年12月7日毎日新聞夕刊1面トップで「日税連、献金を強制徴収、ワイロの性格濃厚」との見出しの下に報道され、大きな社会問題となったのは、第90国会の最中であった。
[57]29 右28の金員の授受に関し、関西在住の税理士5名が昭和54年12月10日小渕恵三総務長官(当時)ら自民党代議士4名、社会党代議士1名を受託収賄罪で、また日税連及び日税政の幹部3名を贈賄罪で東京地検に告発した。
[58] 次いで同月18日、原告を含む7名の税理士が、右小渕総務長官ら自民党代議士2名、社会党代議士1名を賄賂約束罪等で、また日税連及び日税政の幹部3名を贈賄罪等で東京地検に告発し、右各告発について捜査が開始された。(この事実は当事者間に争いがない。)
[59]30 右告発に関しては、東京地方検察庁は昭和55年4月8日の税理士法一部改正法の成立後の同年5月15日、日税連、税政連の幹部3名を起訴猶予処分に、政治家5名を不起訴処分にする旨発表した。
[60] 金を贈った日税政側が不起訴処分とされたのは、法案が総選挙後の国会で可決成立するよう衆院議員として尽力してもらう趣旨もあったとして、事前贈賄申込罪の成立は免れず、右献金が賄賂であることは認めながらも、献金は他の多くの趣旨をも含めて提供されたもので賄賂性の度合いは強くないうえ、過去の選挙でも運動資金を提供しており、違法献金との認識は強くなかったこと、金を受けとった政治家側が不起訴処分とされたのは、右献金がもともと賄賂性の度合いが強くなかった上に、法改正の実現を図る税政連側の事情などを十分知り得る立場になかったこと、同法案の成立は既定の事実と考えていたこと、趣旨を選挙運動資金と理解して受領したと認められること、従って、賄賂と知って受領したと認めるのは困難なこと、というのが、東京地方検察庁の発表した理由であると報道された。
[61] 前記第一の三及び四を正しく理解するには、税理士会と税政連の組織関係を知っておく必要がある。そこで、以下において、その概略を把握することにしたい。

一 税理士会
[61] 当事者間に争いない事実並びに《証拠略》によれば、以下のとおり認められる。
1 税理士会の組織の概略
[62] 税理士は、現行税理士法上国税局の管轄区域ごとに、一の税理士会を設立すべきことが義務づけられ(49条1項)、それは法人とされる(同条7項)。被告も、熊本国税局が管轄する熊本、大分、宮崎、鹿児島の4県の税理士で構成する税理士法上の法人にほかならない。
[63] 税理士会は、一の税務署の管轄区域ごとに支部を設けなければならない(49条の3第1項)。
[64] 全国の税理士会は日本税理士連合会(いわゆる日税連)を設立しなければならず、日税連は法人とされ、税理士会は、当然、日税連の会員となる(49条の12)。従って、日税連の会員は14ある税理士会であって、個々の税理士ではない。
2 日税連の組織
[65] 日税連は会則を定め、大蔵大臣の認可をうけなければならない(税理士法49条の13、同条の14、49条の2第1項)が、昭和50年9月1日現在の会則に基づき、日税連の組織に関する部分を本件訴訟の理解に必要と思われる限度で拾いあげると、別紙(2)のとおりである(以下、別紙(3)ないし(7)も、本件訴訟の理解に必要と思われる限度で拾いあげたものである。)。
3 被告の組織
(一) 被告の会則
[66] 税理士会も会則を定め、大蔵大臣の認可をうけなければならない(税理士法49条の2)が、昭和55年3月1日現在の被告の会則(甲第2号証)によると、その概略は別紙(3)のとおりである。
(二) 役員選任規則
[67] 被告会則14条2項に基づき、被告の役員の選任に関し定められたものが、役員選任規則(甲第2号証の37頁以下、以下「役員選任規則」というときは、これを指す。)であるが、その昭和50年3月24日現在の内容の概略は、別紙(4)のとおりである。

二 税政連
[68] 《証拠略》によれば、以下のとおり認められる。
1 全国納税者政治連盟の創設と政治活動
[69] 昭和38年、税理士業界では税理士会が公益法人であるため政治活動ができないということで、税理士業界の政治的な要求実現のために政治運動をすすめる目的で全国納税者政治連盟(以下「税政連」という。)を創設し、第30回衆院総選挙の選挙運動の最中、11月11日号の「税理士界」(第281号)は、税政連推薦の候補者118名を公表して掲載し、全国各地区連合会の組織を基盤に積極的な応援にのりだしたことを報じていた。
[70] 昭和40年5月21日号の「税理士界」(第331号)は、税政連では同月18日に公認審査会を開いて、来る7月4日予定の参院選挙において、全国区では現職の青木一男議員(自民党)1名を推薦し、全国的に強力な応援運動を展開する旨決定したこと、税政連各地区連推薦候補者も約30名がほぼ確定し、近く発表される見通しである旨報じていた。
[71] 昭和40年6月11日の税理士界(第333号)は、来る参院選において、税政連は地方区でも30名の推薦候補者を決定して公表し、これら候補者に対しては、税政連に対する協力度合いに基づいて寄附金の額を決定したこと、全国区推薦候補者については税政連の組織を挙げて応援すること、地方区推薦候補者については早急に応援態勢を確立して直ちに運動を開始すること、その方法は地区連合会の自主的判断に委ねることを決めた旨報じていた。
2 日本税理士政治連盟への改組と規約
[72] 税政連は、昭和43年1月25日、日本税理士政治連盟(いわゆる日税政)へ衣替えしたが、その昭和49年5月22日現在の規約によれば、その概略は別紙(5)のとおりである。
3 南九州税理士政治連盟とその規約
[73] 熊本、大分、宮崎、鹿児島の4県を管轄する地区税政連が、南九州税理士政治連盟(いわゆる南九税政)であるが、昭和44年11月8日から施行されているその規約の概略は、別紙(6)のとおりである。
4 熊本県税理士政治連盟とその規約
[74] 南九税政連規約(別紙(6))4条(2)号に基づくものとして、熊本県税理士政治連盟(以下「熊本県税政連」という。)があるが、昭和51年から施行の規約の概略は、別紙(7)のとおりである。
5 税政連側の会費
[75] 被告と組織上対応関係にある南九税政及びその傘下の熊本県税政連との関係でいえば、税政連側の右両組織とも規約で会費の規定を設けていながら、その附則で当分の間徴収しないことを定めていた(別紙(6)の32条及び附則3条並びに別紙(7)の32条及び附則3条を参照のこと)。又、実際上も、右税政連側の役員や事務職員も、それに対応する税理士会側の役員や事務職員が兼任し、事務所も同一であり、右税政連側の組織運営費も、税理士会側(被告)の一般会計から南九税政への寄附(税理士1人当り年間2000円)で賄われていた。

三 税理士会と税理士政治連盟の関係
1 目的の類似性と相違点
[76] 前記した、別紙(2)の日税連の会則2条と別紙(5)の日税政の規約3条を比較すれば、その両団体の目的が、税理士の地位及び業務の進歩、向上をうたっている点において、実質上同一方向を目指していると評しうるものである。両者の決定的違いは、後者が、その目的のために「必要な政治活動を行う」ことを明示している点にある。
[77] 以上の点は、別紙(3)の被告の会則2条と別紙(6)の南九税政の規約3条、別紙(7)の熊本県税政連の規約3条の場合にも該当するものである。
2 両組織の対応性
[78] 右二及び三で認定したことから、税理士会が、日税連―税理士会(被告たる南九州税理士会など)―税理士会各県支部(南九州税理士会熊本県支部など)という組織形態をとっているのに対応して、税理士政治連盟も、日税政―地区税政連(南九州税理士政治連盟など)―各県税理士政治連盟(熊本県税理士政治連盟など)という組織形態をとっており、日税連と日税政、税理士会と地区税政連、税理士会各県支部と各県税理士政治連盟とがそれぞれ対応関係にあると認められる。
3 両組織の構成員
[79] 右二及び三で認定したとおり、日税連が14の税理士会により、日税政が14の地区税理士政治連盟により、構成され(いずれも団体が構成員であって、税理士個人ではない。)、被告に関していえば、被告の南九州税理士会は、熊本、大分、宮崎、鹿児島の4県の税理士でもって、南九州税理士政治連盟は被告の南九州税理士会に入会している税理士でもって各構成され、南九州税理士会(被告)熊本県支部は、熊本県内の税理士を、熊本県税理士政治連盟は南九州税理士会(被告)熊本県支部に入会している税理士を会員としており、文理上は、何らの手続を要せずして、被告の会員は南九州税理士政治連盟に、南九州税理士会熊本県支部の会員は熊本県税理士政治連盟に自動的に加入する形をとっている。
4 両組織間の緊密な連携行動
[80] 前記第一の二並びに第二の一及び二で認定した事実、殊に日税連の機関紙である「税理士界」は、日税政(前身の税政連の時代も含めて)の政治活動の重要部分についてはこれを報道し、国政選挙における日税政推薦候補者の紹介と選挙運動の展開を紹介していること、日税政から日税連への政治活動資金の援助依頼とこれへの速やかな日税連側の呼応、両組織の人的・物的組織の同質性、税政連側の通常の業務運営費の税理士会側による実質的負担、昭和53年8月の、日税政・日税連両幹部による政治献金のランクづけ、昭和55年改正法成立の過程での日税連、日税政の協力機関を設置しての活動ぶり等々は、両組織が正に表裏一体となって活動してきたことを如実に物語るものである。
5 まとめ
[81] 以上を総合すれば、税理士会側の日税連及びその下部諸組織と、税政連側の日税政及びその下部諸組織は、形の上では2つの別々のものであるが、その実質においては表裏一体となり、日税政側が専ら政治活動を目的とした政治団体である点において相違があるにすぎないこと、換言すれば、税政連側は、税理士会側の政治実働部隊というにふさわしいものであるということができる。
一 当事者間に争いない事実
[82] 請求原因一の1、二及び八の各事実は、いずれも当事者間に争いがない。

二 選挙権・被選挙権停止の処分性
[83] 被告は、原告に対し、昭和54年から昭和60年にかけての4回にわたる被告の理事及び監事の役員選挙において、選挙権及び被選挙権(以下、「選挙権・被選挙権」というときは、被告の役員選挙におけるそれを指す。)を付与しなかったことは、被告の会則47条にいう「処分」というものではなく、被告のとった措置に何ら違法性はないと主張するので、この点についての検討を便宜ここでする。
1 被告の主張
[84] 被告が原告に選挙権・被選挙権を付与しなかったことに関する被告の主張は、事実摘示欄の第六の七のとおりである。
2 講学上の処分概念
[85](一) 「処分」という概念が頻繁に使用されるのは行政事件訴訟の分野においてである。そこでの「処分」性に多彩な議論があることは周知のとおりであるが、「法律により公権力を付与された機関(行政庁)が、法の認めた優越的な地位に基づき、人民に対し、具体的事実に関し、権利を設定し、義務を命じ、その他法律上の効果を発生させる行為」をもって、処分ということには異論がないと思われる。
[86](二) 労働組合の組合員に対する「統制処分」についても、「労働組合が、組合規律に違反した組合員に対し、組合員としての地位、資格、組合員として認められている諸種の権利・利益の全部又は一部を剥奪、停止する制裁措置」をいう、ということには異論がないと思われる。
[87](三) 別紙(3)の被告の会則により授権をうけている役員選任規則(別紙(4))によれば、役員の選挙権・被選挙権を有する者は、選挙管理委員会が作成する選挙人名簿に登載されなければならない(11条)から、右委員会が右名簿への登載という行為でもって、選挙権・被選挙権の有無を審査することになる。会員が右登載を拒まれた場合、会員の基本的な権利である選挙権・被選挙権は自動的に剥奪されることになるところ、右登載拒否の理由につき、被告は、原告が被告の本件決議に違反したことを理由に挙げているのであるから、被告がなした、原告に関する選挙権・被選挙権の停止は、処分という概念に適合するといいうることには異論があるまい。(これが会則47条にいう処分に当るかどうか、については後述する。)(尤も、右選挙権・被選挙権の停止処分をした主体が被告である、ということは当事者間に争いはないが、若干の説明を要する。というのは、原告に選挙権・被選挙権が付与されなかったのは、役員選任規則11条による選挙管理委員会の作成する選挙人名簿に原告名を登載しなかったからであって、これを即被告の行為と評価するのは、速断にすぎると思われるからである。この点については後記第六の四の2の(二)の被告適格に関する説示が、ほぼ妥当する。)
3 公選法上の規定との相違
[88] 公選法の9条は選挙権、10条は被選挙権、11条は選挙権及び被選挙権を有しない者をそれぞれ規定している。
[89](一) 確かに、公選法9条2項は一定の居住要件を具備しない者に選挙権を付与していないが、これは当該地方公共団体の議会の議員及び長の選挙権に関する規定であって、地縁関係を重視することにも十分な合理性があるから(なお、同条3項参照のこと)、選挙権のみならず(公選法9条2項は選挙権のみの要件である。)、被選挙権さえもが、合理的理由の有無を問うことなく(この点については、次の4で論じる。)全面的、かつ、自動的になくなる本件の場合とパラレルに解するわけにはいかない。
[90](二) また、公選法11条1、2項は選挙権及び被選挙権を有しない者を定めるが、いずれも最も厳格な裁判手続において、当該不利益を受ける者の防禦活動を十分保障した後になされる裁判が確定した後の者に、法が付与した効果であって、役員選任規則6条2項2号の場合とは、その前提たる手続において質的な相違がある。
[91] むしろ、右規則との関係でいえば、6条2項1号が適正手続を保障しているという点では公選法11条1、2項に類似するが、同号の規定そのものにも、実は重大な問題が包含されている。即ち、同号によれば、税理士法44条又は会則47条の処分を受けた者は、自動的に選挙権・被選挙権を失うものとされているが、例えば会則47条に限っていえば、会則に従って、選挙権又は(及びではないことに注意)被選挙権の停止処分を受けた者のみならず、何らかの理由で訓告を受け、又は会則47条3項で規定する権利の一部停止の処分を受けた者も自動的に選挙権及び(又はではないことに注意)被選挙権を失う、というのでは、非違行為と処分との間の権衡を欠き余りに不合理である。合法性を付与されるためには、会則47条の処分は、選挙権及び被選挙権の停止を当然とするような会員の非違行為に対してのみなされる、と逆に解釈する以外なかろうが、そうすると、会則47条3項が選挙権又は被選挙権を明示している意味がない。しかし、もし、これが明示されていないと、会員の処分の中に、選挙権及び被選挙権の停止が含まれるかどうかという別の問題が浮かび上る。会則という、被告にとっては上位規範で明定していない選挙権及び被選挙権の停止という重大処分を、下位規範の役員選任規則(会則が上位規範で、役員選任規則が下位規範であることについては、被告も争わない。)によって解釈上肯定する、というのにもまた無理がひそむからである。
[92] しかし、被告は、原告に対する選挙権・被選挙権停止の根拠は、役員選任規則6条2項1号ではない、と主張するので、同号の問題については、これ以上触れないことにする。
4 役員選任規則6条2項2号の法規範性
[93] ここで、被告が主張する、原告の選挙権・被選挙権停止処分の根拠とする右規則6条2項2号の法規範性について考察してみよう。
(一) 右規則6条2項2号と会則47条の関係についての被告の解釈と問題点
[94] 別紙(3)会則47条は、1項で、会長は、会員が本会の会則及び規則に違反した場合に、会員の有する権利の全部又は一部を停止することができる旨規定し、3項で右会員の有する権利の1つに、本会の役員を選挙する権利又は役員となる権利がある旨を規定しているが、この規定につき、被告は、役員選任規則によれば選挙権・被選挙権が認められる場合であっても、上位規範たる会則によって選挙権・被選挙権が停止され得ることを定めたものに過ぎず、役員選任規則6条2号は、会則47条とは無関係に、被告の会員に選挙権・被選挙権が自動的に停止される場合を定めたものである、と主張する。
[95] 右主張が首肯されるには、会員に対する選挙権・被選挙権という基本的に重要な権利が、会費(しかも、本件の場合、この会費は通常の会費(これについては会則50条1、2項で金額と納期が定められている。)ではなく、臨時の特別会費である。)の1円の未納付によっても、自動的に、かつ、未納付者が税理士業務を放棄しない限り永遠に、停止され続ける、ということが、それなりの合理性をもって首肯されなければならない、ということは、非違行為と不利益処分との間に均衡を保つのを是とする公正の見地から明らかであろう。しかるに、本件において、被告は右合理性の存在につき何ら具体的主張もしなければ、これを認めるに足りる証拠も本件では見い出し難い以上、被告の右主張を採用することはできない。
[96] 従って、役員選任規則6条2項2号を被告の主張するように理解するとすれば、それに法規範性を付与するわけにはいかない。換言すれば、被告主張のような意味を有するなら、それは非違行為と処分との間の権衡を著しく欠く、という意味でも、処分に至る手続として、被処分者に対する適正手続の保障がない、という意味でも公序に反する無効なものといわざるをえない。
(三) 役員選任規則6条2項2号の限定解釈
[97] 合法性が付与されるためには、右規則6条2項2号による選挙権・被選挙権の停止処分も会則47条による選挙権・被選挙権の停止処分の一場合を具体的に例示したにすぎないもの、若しくは、右規則による右停止処分にも会則の定める適正手続の保障が類推適用されるべきである、と解することによって、辛うじて維持されるにすぎない。
[98] 以上の点は、上位規範たる会則47条が、会員に対する処分の1つとして、選挙権又は(「及び」ではないことに注意)被選挙権の停止と、その事前通知と弁明の機会の付与という適正手続の保障を定めているのに対し、その下位規範たる役員選任規則で、適正手続を保障することなく、しかも、会則47条による処分以上の、選挙権及び(「又は」ではないことに注意)被選挙権を停止する処分(いわば、会則に定めていない処分)を創設することは、上・下の法規範相互関係の有すべき論理的整合性という観点から承認し難い、という理由からも理解できよう。
5 まとめ
[99] 以上を要約するに、被告が原告に対しなした選挙権・被選挙権の停止は、処分であって、それについて通知、弁明の機会の付与がなされていない(これについては被告も争わないし、被告は《証拠略》を手続保障の履践であるとは主張しない。)、という意味で、看過し難い重大な手続違反があるのであって、右処分は無効といわざるをえない。
一 被告の権利能力
[100] 税理士会が昭和26年の税理士法制定当時は民法34条に基づく社団法人として設立され、税理士の加入も任意とされていたが、昭和31年税理士法が改正され、税理士会が税理士法に基づく特殊公益法人に改編され、税理士の税理士会への加入が、間接の強制加入となったことは前記したとおりである。
[101] 前記(第二の一)した、被告の税理士会組織における位置からすれば、被告が右公益法人に該当することは明らかであるところ、会員の利益のみならず、公益保護の必要という観点からも、民法43条が適用され、被告は、法令の規定に従い、被告の会則で定めた目的の範囲内においてのみ権利を有し義務を負うものと解するのが相当である。そして、右目的の範囲内の行為とは、法令又は被告の会則等に明示された目的自体に限局されるものではなく、その目的を遂行するうえに直接又は間接に必要な行為であれば、すべてこれに包含されると解されるところ、その必要なりや否やは、当該行為が目的遂行上現実に必要であったかどうかをもってこれを決すべきではなく、行為の客観的な性質に即し、抽象的に判断されなければならない(最高裁大法廷昭和45年6月24日判決・民集24巻6号625頁参照、いわゆる八幡製鉄政治献金事件)。

二 被告の目的
1 税理士法の規定
[102] 昭和53年当時の税理士法1条は、税理士の職責を「税理士は、中正な立場において、納税義務者の信頼にこたえ、租税に関する法令に規定された納税義務を適正に実現し、納税に関する道義を高めるように努力しなければならない。」と定め、同法49条2項は税理士会の目的を「税理士会は、税理士の使命及び職責にかんがみ、税理士の義務の遵守及び税理士業務の改善進歩に資するため、会員の指導、連絡及び監督に関する事務を行うことを目的とする。」(現行税理士法の49条6項が、これに該当する。)と定めている。
2 日税連及び被告の会則の規定
[103] 別紙(2)の日税連の会則2条及び別紙(3)の被告の会則2条をみれば、右税理士法49条2項の規定を殆どそっくり引用する形で、その目的を規定していることがわかる。
[104] 同じく、日税連の会則3条及び被告の会則3条は、それぞれの目的を達成するため、その事業内容を定めている。
3 国会における付帯決議
[105] 昭和31年の税理士法の一部改正によって、税理士会が特殊公益法人に改編され、税理士の税理士会への加入が間接強制となった際、衆院大蔵委員会において、税理士会の運営が中正かつ民主的に行われるよう政府並びに税理士会において格段の措置を講じられたい旨の付帯決議がなされたことも前記(第一の二の1)したが、その趣旨は、税理士の税理士会への加入の間接強制化が、税理士の、憲法上の基本的人権である思想及び良心の自由(19条)、結社の自由(21条1項)、職業選択の自由(22条1項)と抵触するおそれがあることにかんがみ、税理士会の運営、監督につき、税理士会自らの行動及び監督者たる大蔵大臣等政府側の権限の行使につき、右憲法上の人権擁護に格別の配慮を致し、もって、会員たる税理士各人の人権を侵害することなきよう、その注意を換起したものと解される。

三 被告は政治団体への寄附ができるか
1 被告の立論
[106] 被告も主張するとおり(事実摘示欄第六の四の3の(一)参照)、被告は「税理士の使命及び職責にかんがみ、税理士の業務の遵守及び税理士業務の改善進歩に資するため、会員の指導、連絡及び監督に関する事務を行うことを目的」とし(会則2条)、右目的を達成するため、「税理士の義務の遵守及び税理士業務の改善進歩に関して税務官公署と連絡協議」(会則3条1項3号)したり、「その他本会の目的を達成するため必要な事項を行うこと」(同項5号)とされていることからすれば、被告の目的に、税理士業務の改善進歩に資するための事務が含まれることも容認しえよう。しかし、そのことから「従って、税理士業務の改善進歩に資するため税理士法改正について政治的活動をすることは、税理士の社会的、経済的地位の向上をはかることに直結する事項であるから、右政治的活動を税理士会自体がやることはその目的の範囲内の行為であり、いわんや税理士の社会的、経済的地位の向上を図……るため必要な政治活動を行なうことを目的とする各県税政(例えば、熊本県税政規約3条)に寄附をすることは税理士会の目的の範囲内の行為であり、南九各県税政への資金提供を目的とする被告の本件決議が被告の目的を逸脱していることはない。」といいうるかどうかは検討を要すると思われる。
[107] 被告の右立論は、(イ)税理士業務の改善進歩に資するための事務の遂行は被告の目的である、(ロ)従って、そのための税理士法改正について政治的活動を税理士会が、従って被告がやることは税理士の社会的、経済的地位の向上に直結する事項だから、右目的の範囲内である、(ハ)いわんや税理士の社会的、経済的地位の向上を図るため必要な政治活動を行うことを目的とする南九各県税政に寄附することも被告の目的の範囲内である、というにある。
2 被告の立論の問題点
[108] 被告の(イ)の立論は問題なく承認しえよう。しかし、そのことから(ロ)の立論が導びき得るか否かは検討の余地がある。
[109] というのは、(イ)の立論のための税理士法改正について税理士会が、従って被告がある種の活動をすることが、被告の目的の範囲内である、という限りでは(ロ)の立論も承認しうる。
[110] しかし、右ある種の活動が、被告主張のように政治的活動全般に広げうるかどうかが問題なのである。というのは、「政治的活動」という言葉自体が実に多義的である。法律上これに相当する言葉を若干拾いあげても、例えば国家公務員法102条1項、人事院規則(14-7)、地方公務員法36条2項などは政治的行為という言葉を、教育基本法8条2項は政治的活動という言葉を使用しているが、その意味するところは当該法律、規則で定めているそれぞれの法の目的、趣旨によって異っており、一義的でない。このことからいえることは、被告が税理士法改正運動のために政治的活動ができる、と帰結するためには、そのいうところの政治的活動の中味を本件に即して限定し、それが被告の目的の範囲内に包含されるか否か、という作業が必要であり、かつ、十分である、ということである。
3 問題の所在
[111] 本件で問題なのは、本件決議で明示している使途を、被告がその目的の範囲内の行為として適法になしうるかどうかにある。その内容を再説しよう。
「特別会費5000円徴収に関する件
 税理士法改正運動に要する特別資金とするため各会員より特別会費として金5000円を徴収する。特別会費の納期限は昭和53年7月31日とする。この特別会費は特別会計をもって処理する。
理 由
 税理士法改正運動資金の緊急性に鑑み、当会の特別会費として徴収するものである。
特別会費の使途
 特別会費は全額「南九州各県税理士政治連盟」へ会員数を考慮して配布する。」
[112] ところで、南九各県税政が、規正法3条1項にいう政治団体であることは、被告もこれを明らかに争わないところと思われる。
[113] そして、規正法上、金銭の交付を「寄附」といい、政治団体に対してされる寄附を「政治活動に関する寄附」と定義している(4条3、4項)概念を借用して抽象化すれば、本件の問題は、被告が政治団体に寄附できるかということになる。本件に即して具体化すれば、被告が政治団体たる南九各県税政へ政治活動に関する金銭を交付(寄附)することが被告の権利能力の範囲内に含まれるか、ということに外ならない。
4 当裁判所の見解
[114] 前記したとおり、被告を含む税理士会は、税理士の使命及び職責にかんがみ、税理士業務の改善進歩に資するため会員の指導、連絡及び監督に関する事務を直接の目的とし、日税連及び被告の各会則2条(別紙(2)及び(3)参照)もほぼ同様の規定をしていること、しかも税理士会が間接とはいえ強制加入団体の公益法人であって、その運営に当たって、会員の思想、良心の自由に格別の注意を払うべきことが要請されていること、税理士会とは別に、その政治活動の実働部隊としての政治団体たる税政連組織の形成は、税理士会の政治活動に制約があることを慮った結果でもあったことにかんがみれば、税理士会が、会員の思想、良心の自由を侵害しかねない行為について慎重でなければならないのはいうまでもない。税理士会が公益性を有する社会的実在であることから、社会通念上期待ないし要請されるものが、公益性、という観点から、営利性を有する会社とは別異の理解をされることは、止むをえないであろう。税理士会が政党や特定政治家の後援会に政治資金を寄附することが、税理士会の右目的(権利能力の範囲内)に含まれない、ということも、税理士会の有する公益性から、当然に導きうるものと思われる。政治的信条の点においては政治的に中立であるべき税理士会が、会員の政治的信条が各人各様であることを無視して、特定の政治的信条を信奉する団体である政党や特定政治家の後援会に政治資金を寄附することは、その政治活動の基盤である財政的寄与をなすことであるから、右団体の政治的信条に反対する者の政治的信条をふみにじる行為であって、かようなことは、到底税理士会に、社会通念上期待ないし要請されていることとはいえない(営利法人たる会社と公益法人たる被告とは、この点について質的な相違があり、前記最高裁昭和45年6月24日判決の結論は、本件においては妥当しないと解される。)。
[115] 右の理は、政党や政治資金団体(規正法5条1項2号参照)ではない政治団体(規正法3条1、2項、5条1項1号参照)に対する政治活動に関する寄附の場合にも同様に解すべきである。というのは、政治活動に関する寄附の関係で政党や政治資金団体とその他の政治団体とで別異に解釈すべき必要性はないし、規正法上も、両者に差異を認めているものとはいえないからである。
[116] もしそうでないとすれば、政党や政治資金団体でない政治団体がいわゆるトンネルとなって、本来あってはならない、公益法人から政党や政治資金団体への政治資金の寄附が合法化され、若しくは特定政治家の後援会の政治活動を支える政治資金となって流れ、ひいては「民主政治の健全な発達」(規正法1条、2条1項参照)を希求する国民の願いに逆行することになるであろう。(現に、本件においては、被告も自認するとおり(事実摘示欄第六の四の3の(三)参照)、徴収された本件特別会費は、その一部が自民党県連支部連合会にパーティ券代として、或いは自民党国会議員の後援会にパーティ券代、陣中見舞い、後援会費等の名目で支出されているのである。)
5 まとめ
[117] 以上を要約するに、被告が政治団体に対し寄附をすることは民法43条に違反し、許されないところ、本件決議は政治団体たる南九各県税政への寄附であることを明示してなされたのであるから、本来被告が権利能力を有しない事柄(法令及び会則上許されない事柄)を内容とする議案につき決議したものというべく、従って、本件決議は、民法43条に違反し無効といわざるをえない。
[118] 仮に、本件決議が被告の権利能力の範囲内に属する事柄についてなされたものである、と解するとしても、更に検討を要する問題がある。

一 会員の協力義務の範囲
[119] 被告の会員が、被告の構成員として留まる限り、被告が正規の手続に従って決定した活動に参加し、又、被告の活動を妨害するような行為を避止する義務を負うとともに、右活動の経済的基礎をなす会費を納付する義務(以下、これらの義務を、便宜「協力義務」という。)を負うことは、団体一般に認められる固有の自主的規律権能に由来するものと解される。しかしながら、右協力義務も、もとより無制限のものではありえず、会員たる税理士は、税理士法その他の法令及び被告の会則に定められた目的のための活動に参加する者としてこれに加入することが予定されている(前述のとおり、税理士としての職業を選択する者の被告への加入は強制的であって、逆にいえば、これより脱退することは、税理士としての職業を放棄することを意味する。)のであるから、その協力義務も右目的達成に必要な団体活動の範囲に限られる。勿論、被告の目的のための活動は決して固定的ではなく、社会の変化とその中における被告の意義や機能の変化に伴って流動発展するものであって、その活動の範囲が本来の活動の域を超えて、政治的活動、社会的活動、文化的活動など、税理士法その他の法令及び被告の会則等に定めた目的に、直接間接に関係する事項に及ぶことがあるのも否定しえないであろう。しかし、被告の活動の範囲が広く、かつ、弾力的であるとしても、そのことから、被告がその目的の範囲内においてするすべての活動につき、当然、かつ、一様に会員に対して、会員の協力を強制することができるもの(以下、これら強制しうる被告の権能を、便宜「統制力」という。)と速断することはできない。
[120] 会員の被告からの脱退の自由が事実上確保されていないうえに、被告の活動が多様化すれば、被告による統制力の範囲も拡大し、従って又、会員たる税理士個々人の一個の市民又は人間として有する自由や人権と矛盾衝突する場合が増大することは必至であることに思いを致すと、被告の活動として許されたものであるというだけで、そのことから直ちに会員たる税理士の協力義務を無条件で肯定するのは相当でない、というべきである。
[121] それゆえ、問題とされている具体的な被告の活動の内容・性質、これについて会員に求められる協力の内容・程度・態様等を比較考量し、多数決原理に基づく被告の活動の実効性と会員個人の基本的利益の調和という観点から、被告の統制力とその反面としての会員の協力義務の範囲に合理的な限定を加えることが必要である。
[122] 殊に、政治的活動(これが多義的な概念であることは前記した。以下においては、多義的なままの用語として使用する。)に限っていえば、政治的活動が一定の政治的思想、見解、判断等に結びついて行われるものであり、それが被告の構成員たる会員のそれと完全に一致することはありえないのが通常であるから、もともと団体構成員の多数決に従って政治的行動をすることを目的として結成された政治団体(これに該当するものに、日税政とその傘下の諸組織がある。)と異なる被告としては、その多数決による政治的活動に対して、これと異なる政治的思想、見解、判断等をもつ個々の会員の協力を義務づけることには謙抑であるべきである。かかる義務を一般的に認めることは、会員個人の政治的自由特に自己の意思に反して一定の政治的態度や行動をとることを強制されない自由を侵害することになりかねないからである。(以上の点については、最高裁第3小法廷昭和50年11月28日判決・民集29巻10号1634頁、同法廷同日判決・同号1698頁、いわゆる「国労広島地本事件」が参考になる。)
[123] そこで、以上のような見地から、本件決議の効力について判断する。

二 本件特別会費の強制的徴収の可否
1 問題とされている被告の活動の内容・性質
[124] 前記したとおり、本件決議は税理士法改正運動資金の緊急性に鑑み税理士法改正運動に要する特別資金とするため、各会員より特別会費として金5000円を徴収し、金額を南九各県税政へ配付する、というのである。
[125] ところで、本件決議がなされた前後の、税理士法改正の動きとその内容は前記(第一の三及び四)した通りであり、昭和39年案についての税理士業界あげての反対運動により同法案の廃案後、日税連が長年の知恵をしぼって、民主的手続にのっとって討議、研究した結果、日税連が機関決定した基本要綱とそれに基づく運動大綱が基本的にうけ入れられる気配は全くなく(前記第一の四の7で認定したとおり、日税連山本会長は、昭和53年1月基本要綱による税理士法の改正は至難困難である、との会長感触6項目を表明している。)、従って、又、税理士業界内部においては、別紙(1)の運動計画大綱を基に、当時進行を開始していた税理士法改正に向けての国税当局と日税連執行部との折衝は国税当局ペースになるのではないかとの批判或いは、一般消費税の導入と絡んで、重大な局面の展開をみる恐れがある、として、危惧と反対を表明していた部分もあった。
2 会員に求められる協力の内容・程度・態様
[126] 本件決議は1人当り「5000円」という税理士の社会、経済的地位に徴すれば、特に多額である、ということにはならないと思われるが、もしこれへ協力すべきであるとすれば、日税連執行部が当時すすめていた国税当局との税理士法改正の方向に危険を感じて反対していた者にとっては、自らの思想・良心に反することへ金を拠出しなければならない、という意味で、憲法上の基本的人権である思想・良心の自由(19条)に積極的に違反するものといえるし、或いは、内容が明確になっていないため反対のしようもない者にとっても、日税連執行部に税理士法改正の方向に関して白紙委任した者でない以上(白紙委任者は、いかなる場合にも反対しないであろうから、右の「反対しようもない者」に該当しないことは明らかである。)、自らの思想・良心に反することになるかもしれないことへ金を拠出しなければならない、という意味で、右思想・良心の自由に消極的に違反するものというべきである。事は金額の多寡という量の問題ではなく、思想・良心の自由に違反するかどうか、という質の問題なのである。
[127] 更に問題なのは、その特別会費の使途が、南九各県税政という政治団体へ寄附されることが明示されていたことである。南九各県税政の性格、組織上の位置については前記(第二の二)したとおりであり、税政連の組織は一体をなして、組織的、積極的に政治活動をすることを目的とし、しかも、日税政の前身たる税政連の発足(昭和38年)以来、国会議員の選挙の際に、特定政党の特定候補者を推薦候補として決定し、その当選を目指した積極的な政治活動を展開し、そのために資金を費消してきたことも前記したとおりであり、なお、本件決議後のことではあるが、前記第一の四の15、20、28に認定した事実も、日税連、日税政両執行部の政治姿勢を知るには象徴的である。然りとすれば、右特定政党の特定推薦候補者を支持しない者にとっては、本件特別会費が、従来の税政連側の組織を通して、右政治活動に使われるであろうことを推測することは当然であり(現に、徴収された本件特別会費の一部が、特定政党、特定政治家の後援会等にパーティ券、後援会費、陣中見舞い等々の名目で渡っていることは、被告も自認(事実摘示欄第六の四の3の(三)参照)するところである。)、従って、右会費の徴収を強制されることは、自らの政治的信条、思想・良心に反する行動をとることを強制されることになって、これに応じられないとの態度決定をしたとしても異とするに足りない。団体のなす政治献金が憲法上疑義があるという立場(憲法上の選挙権ないし参政権は、自然人たる国民に対してのみ認められていることを根拠に、団体が政治献金をすることは国民の選挙権ないし参政権を実質的に侵害することになって許されない、とする立場、例えば《証拠略》の、北野弘久日本大学教授の立場。)はとらないとしても(前記最高裁昭和45年6月24日判決は、商法上の会社については、政党になす政治資金の寄附の自由の憲法適合性を表明した。)、団体のなす政治資金の寄附が、日本における政界の浄化を妨げる大きな事由の一つであるとの識者の意見があることも公知の事実であり(例えば、昭和42年に第5次選挙制度審議会は、政党の政治資金は、個人献金と党費によって賄われることが本来の姿であるとの原則を前提にしている。前掲「世界大百科事典・34巻338頁参照」)、現に、本件特別会費と直接の関係はないが、昭和55年の税理士法の一部改正案成立の過程で、日税政のなした特定政党の特定政治家への1億円を超す政治献金が、社会の糾弾をあび、告発を受けた東京地方検察庁も、これを贈った側にとって右法案成立のための賄賂と認定しながら、他の諸事情をも勘案した上、日税連及び日税政の幹部3名を起訴猶予処分にしたことも前記(第一の四の28ないし30)したとおりである。然りとすれば、かような日本の政治風土の中において、本件特別会費が、「賄賂」となるおそれもあるとしてこの徴収に反対する者の思想行動にはそれなりの合理性があるのであって、非難されるべきいわれはないと考えられる。
3 まとめ
[128]  以上によれば、昭和53年6月当時の日税連執行部がとっていた税理士法の一部改正への動きに賛成するか否か、より正確に言えば、同執行部のとっている態度に白紙委任的に賛同するか否か(というのは、前記第一の四の5ないし11認定の事実によれば、改正法案の方向は会長感触6項目で基本要綱がとりいれられないことであろうと認識しえたが、その内容はまだ殆ど決まってはいなかったと推認されるからである。)は、被告の会員としては、各税理士が国民の1人として個人的、かつ、自主的な思想、見解、判断等に基づいて決定すべき事であるから、それについて多数決でもって会員を拘束し、反対の意思表示をした会員に対しその協力を強制することは許されず、しかもまた右運動に要する特別資金とするため南九各県税政へ寄附するための特別会費の納付を強制することは、反対の意思表示をした会員に対し一定の政治的立場に対する支持の表明を強制することに等しく、この面からもやはり許されないものというべきである。


三 結論
[129]  従って、本件決議に反対の意思表示をした原告に対し、本件決議に基づいて、本件特別会費の納入を強制することは許されず、従って、原告が被告に対し右会費につき納入義務を負ういわれはないのである。
一 特別会費納入義務不存在確認請求について
[130] 先に説示したとおり、昭和53年6月16日被告総会でなされた本件特別会費5000円の徴収を決めた本件決議は、無効であり、仮に有効だとしても、本件決議に反対の意思表示をしている原告に対しその強制徴収をすることは許されないから、原告は右納入義務を負わないものというべく、従って、右義務の存在を主張している被告に対し、右義務の不存在の確認を求める原告の請求(請求の趣旨一の請求)は正当であり、認容されるべきである。

二 選挙権・被選挙権停止処分無効確認請求について
1 原告の求めているもの
[131] 原告は、請求の趣旨二、四、六及び八の各1において、主位的に、被告が昭和54年4月3日付、昭和56年4月8日付、昭和58年4月11日付、昭和60年4月11日付でなした、いずれも原告に対しなされた被告の理事及び監事の選挙権及び被選挙権を停止する旨の処分が無効であることの確認を求めている。原告が右において求めている確認の対象は、いずれも過去の法律関係の確認にほかならない。
2 過去の権利、法律関係、手続の確認の利益
[132] いうまでもなく、訴訟制度が現存する紛争を公権的に解決する制度であることからすれば、過去の権利、法律関係や手続の確認を求める訴えは原則として許されないというべきである。尤も、過去の権利、法律関係や手続が基礎となって、現在の数多くの権利又は法律関係の存否が問題となっているような特段の事情がある場合には、基礎となっている過去の権利、法律関係の存否や手続の効力を確定し、その既判力でもって、現在派生している数多くの権利又は法律関係の存否についての判断の矛盾衝突を予防する必要があるから、過去の権利、法律関係や手続であっても、現存する法律関係の紛争の直接かつ抜本的な解決のため適切かつ必要と認められるものとして、例外的に確認の訴えの対象適格(訴えの利益)を肯定すべきである。換言すれば、過去の権利、法律関係や手続の確認を求めているようにみえても、結局は現在の権利、法律関係の確認を求めているものと解される余地がある場合で、かつ、原告がそのような確認を求める法律上の利益があるような特段の事情がある場合は、訴の利益を肯定すべきである(最高裁第3小法廷昭和47年2月15日判決・民集26巻1号30頁、同第1小法廷同年11月9日判決・民集26巻9号1513頁参照)。
3 まとめ
[133] 以上の見地に立って本件をみるに、原告は右特段の事情につき何ら具体的主張をしないし、本件訴訟記録を精査しても、これを肯認するに足るべきものを見出し難い。
[134] とすれば、右1掲記の、原告の選挙権・被選挙権を停止した被告の処分の無効確認を求める訴えは、いずれも過去の法律関係の確認を求めるもので、しかも、訴えの利益を肯認することができないから、不適法な訴えとして、却下を免れない。

三 選挙権・被選挙権存在確認請求について
1 原告の求めているもの
[135] 原告は請求の趣旨二、四、六及び八の各2において、予備的に、昭和54年5月1日、昭和56年5月7日、昭和58年5月10日、昭和60年5月9日に各実施された被告の役員選挙において原告が選挙権・被選挙権を有していたことの確認を求めている。原告が右において求めている確認の対象は、いずれも過去の権利関係の確認に外ならない。
2 まとめ
[136] 従って、また、右二の2で説示した訴えの利益に関する考えは本件にも妥当するところ、本件訴えの関係でも、原告は特段の事情につき何ら具体的主張をしないし、本件訴訟記録を精査しても、これを肯認するに足るべきものを見出し難い。
[137] とすれば、右1掲記の、原告が選挙権・被選挙権を有していた旨の確認を求める訴えは、いずれも過去の権利関係の確認を求めるもので、しかも、訴えの利益を肯認することができないから、不適法な訴えとして、却下を免れない。

四 選挙無効確認請求について
1 昭和54年、56年、58年の役員選挙の無効確認請求について
(一) 原告の求めているもの
[138] 原告は、請求の趣旨三、五及び七で、昭和54年5月1日、昭和56年5月7日、昭和58年5月10日に各実施された被告の役員選挙が無効であることの確認を求めている。原告が右において求めている確認の対象は、いずれも過去の選挙という手続関係の効力の確認に外ならない。
(二) まとめ
[139] 従って、また、右二の2で説示した訴えの利益に関する考えは本件にも妥当するところ、本件訴えの関係でも、原告は特段の事情につき何ら具体的主張をしないし、本件訴訟記録を精査しても、これを肯認するに足るべきものを見出し難い。却って、本件においては、被告の役員の任期は原則として約2年(別紙(3)の会則20条、26条1項参照)であって、昭和60年5月9日実施の被告の役員選挙後、直近の定期総会(例年6月に開催されることが、別紙(3)の会則26条により義務づけられている。)も終了していることは弁論の全趣旨より推認されるところである。従って、右(一)で求めている選挙によって選挙された役員の任期はいずれも任期が終了しているものであるから、本件口頭弁論終結時(昭和60年6月27日)には、訴えの利益は当然に消滅しているものと解される。
[140] とすれば、右(一)掲記の、被告の実施した昭和54、56、58年の各役員選挙の無効確認を求める訴えは、いずれも過去の手続関係の確認を求めるもので、しかも、訴えの利益を肯認することができないから、不適法な訴えとして、却下を免れない。
2 昭和60年の役員選挙の無効確認請求について
(一) 訴えの利益
[141] 原告は、請求の趣旨九において、昭和60年5月9日実施の被告の役員選挙の無効確認をも求めている。前述したところから明らかなとおり、右選挙において選挙された役員は、本件口頭弁論終結時(昭和60年6月27日)において、その任期途上にあると推認されるから、もし、右選挙の全部又は一部(別紙(4)の役員選任規則6条1項、9、10条参照)が無効となれば、右役員の全部又は一部は役員としての資格を喪失して役員でなくなり、再選挙を実施しなければならないことになりかねない(同規則26条参照)のみか、会長及び副会長もその資格を喪失しかねないことになる(同規則7、8条参照)から、右の役員選挙が基礎となって、現在の被告の多数の理事・監事及び理事の互選により選任された被告の会長・副会長の地位が確立しているということができる。とすれば、右二の2で説示した特段の事情があるというに十分であるから、右請求には訴の利益があるというべく、この点に関する被告の本案前の抗弁は失当である。
(二) その他の訴訟要件の存在
[142] 訴えの利益の外に、被告の選挙の効力に関し、裁判所の審査権がどこまで及ぶか、その訴えの当事者となるべき者は誰か等についても検討の余地があるが、被告が公益法人であって、税理士は税理士会に入会しなければ税理士業務をなしえないという間接的な強制加入制度になっており、理事・監事という役員は被告の組織運営の根幹をなしていると解されることに思いを致すと、被告の役員選挙の効力に関し争いが生じた本件のような場合には、司法審査の権限が及ぶものと解してよく、又、原告が選挙権・被選挙権を剥奪されている以上、権利を侵害された者として、被告の役員選挙の効力の有無を争う原告適格を有すると言って妨げなく、被告の役員選挙は選挙管理委員会が実施するものであるが、その委員は会長が委嘱してなす(別紙(4)の役員選任規則4条参照)ものであって、会長は被告を代表して会務を総理する(別紙(3)の会則15条1項参照)ものであり、しかも選挙人名簿の作成権限が選挙管理委員会にある(役員選任規則11条)とはいっても、被告の理事会の了承を得ていること等を参酌すれば、被告の会則及び役員選任規則に他に特別の規定がない以上、被告の役員選挙の効力の有無を争う訴訟における被告適格を有するものは被告である、といって妨げない。
(三) 選挙無効の要件
[143] 選挙の効力について司法審査が及びうるとしても、次に問題となるのは、いかなる要件のもとに選挙が無効である、と判断しうるかである。この要件につき、法令は勿論、被告の会則、役員選任規則等その他本件記録を精査しても、何ら規定を見出すことはできない。
[144] 従って、この要件については条理によって構成する以外ないが、公選法205条1項の規定を参考に、当該選挙の管理及び執行につき「選挙の規定に違反」し、かつ、「選挙の結果に異動を及ぼす虞がある」ことの2要件が充足された場合に限って、当該選挙の全部又は一部は無効になるもの、と構成するのが相当である。
[145] そして、右2要件については、いずれも選挙の無効を主張する原告において具体的に主張、立証すべき責任を負うものと解するのが相当である(最高裁第1小法廷昭和23年7月15日判決・行政裁判月報3号88頁参照)。
[146] よって、以上の見地に立って、検討する。
(四) 「選挙の規定に違反すること」について
[147] 先に説示したとおり、昭和60年度役員選挙は、選挙実施の機関である被告内部の選挙管理委員会が、被告理事会の了承を得て作成した原告を除外した選挙人(・被選挙人)名簿に基づいて実施されたこと、右名簿から原告を除外した理由は、原告が本件特別会費を納入しなかったとして、役員選任規則6条2項2号の規定に基づくものというのである。
[148] ところで、先に第四及び第五で説示したとおり、右決議そのものが無効であり、仮にそうでないとしても本件特別会費の納入義務を原告は負わないのであるから、右規定に基づく選挙権・被選挙権を停止する旨の処分は、選挙の規定の解釈適用を誤まった違法がある、といわなければならない。
(五) 「選挙の結果に異動を及ぼす虞がある場合」について
[149] 右の虞がある場合とは、右の(四)で説示した選挙の実施に際しての規定違反がなかったら、即ち、原告に選挙権・被選挙権があったなら、昭和60年度役員選挙の全部又は一部において、実際の当落と違った結果の生ずる可能性がある場合をいう(これについては最高裁第2小法廷昭和23年6月26日判決・民集2巻7号159頁、同法廷昭和29年9月24日判決・民集8巻9号1678頁が参考となる。)が、右可能性とは、単なる論理的可能性では足りず、具体的可能性を指すものと解すべきである。
[150] 確かに、原告に選挙権・被選挙権が付与されていたとすれば、原告が役員に当選していたかもしれないし、そうでないとしても、原告の1票によって当落に異動があったかもしれない、ということは考えうるのであって、その意味で、選挙の結果に異動を及ぼす虞が論理的可能性としてあったとはいいうる。しかし、右のことから、直ちに右具体的可能性があったとまでいうにはなお飛躍がありすぎるところ、本件においては右具体的可能性については、それ以上の具体的主張もなければ、これを首肯しうるに足りる証拠も見出し難い。
(六) まとめ
[151] そうだとすれば、「選挙の結果に異動を及ぼす虞があること」という要件が充足されたことにならないから、結局、昭和60年度被告役員選挙の無効確認を求める請求は、理由がないものとして棄却を免れない。

五 損害賠償請求について
1 選挙権・被選挙権の権利性
[152] 被告の会員にとって、役員選挙の選挙権・被選挙権というものが、最も基本的な会員の権利の1つであることは争う余地がない(例えば、別紙(3)の被告の会則47条1、3項は、そのことを明定している。これは、国民と国の関係で比喩的にいえば、憲法で国会議員の選挙が規定され(43条)、その選挙権が国民に保障され(15条)、これを受けて制定された公選法が、国民の選挙権・被選挙権について、それを有する場合、例外的にそれを有しない場合を明定していること(9ないし11条)等に思いを致せば、容易に理解することができよう。
2 故意による権利侵害
[153] 原告は、先に説示したとおり、被告から昭和54、56、58、60年と4回にわたり、従って、本件特別会費の納期限(昭和53年7月31日)以降に実施された被告の役員選挙のすべてにおいて、被告の理事及び監事の役員を選挙し、もしくは選挙される権利、即ち選挙権と被選挙権を剥奪されて今日に至っている。原告の有する右権利を、被告は役員選任規則に則って処理(被告の選挙管理委員会の選挙人名簿への不登載の被告理事会による了承)したのであるから、これが被告の故意による右権利の侵害ということも言うまでもない(右権利の剥奪の主体を被告と言い切るには、若干の説明が必要であるが、これについては右四の2の(二)の被告適格に関する説示がほぼそのまま妥当する。また、被告が右権利剥奪の主体であることについては、被告も争っていない。)。
[154] そして、原告が選挙権・被選挙権を剥奪されたことが、原告にとっての名誉、即ち税理士として有する社会的地位、名声、信用等につき世人一般より受くべき声価を著しく低下させたであろうことは、原告の右権利剥奪の事実が新聞報道されていること(例えば、昭和54年12月10日付毎日新聞・東京版、同年同月13日付熊本日日新聞、同年同月14日付読売新聞、同年同月14日付西日本新聞等)から、十分に推認しうるところである。この、原告の選挙権・被選挙権の剥奪が、後続する名誉毀損に連動するであろうことは、被告にとっては、十分に予見しうる事柄に属する、と言うことも多言を要しまい。
3 違法性とその程度
[155](一) 右に説示したとおり、被告の故意によって、原告の選挙権・被選挙権及び名誉が侵害されたのであるから、被告の右権利侵害行為が違法であるとの評価をうけるのは当然である。
[156](二) 昭和54年4月2日の被告の選挙管理委員会において原告の選挙権・被選挙権がないものと決定し、翌3日の被告の理事会でこれを了承するまでには、前記最高裁昭和45年6月24日判決が公刊物に掲載されていたことは公知の事実である。尤も、右判決の射程距離の検討からすれば、本件決議を被告の目的の範囲内のことと理解したことに違法性はない(阻却される)という余地も十分にある。しかし、仮にそうだとしても本件特別会費の強制徴収の可否につき参考となる前記最高裁昭和50年11月28日判決が公刊物に掲載されていたのも公知の事実である。そして、前記第一の四の14及び17で認定した事実によれば、本件特別会費と全く同じものではないにしても、政治団体への寄附という点では同じ性質をもつ金を、税理士会側で特別会費という名目で徴収することの可否につき、右判決を掲げながら日税連の正式機関で議論されており、しかも、それに当時の被告の永野会長も出席していたのであるから、右判決を知らなかったという弁解は通らない。
[157] そして、右判決を丁寧に検討しておれば、本件特別会費の強制徴収が、会員の思想・良心の自由の侵害につながるとの判断に達しえたであろうし、仮に達しえなかったとしても、右侵害につながりかねないのではないか、との判断のもとに、本件特別会費の未納付を理由に選挙権・被選挙権の停止まですすむかどうかについても、禁欲な態度決定を選択しえたと思われる。
[158](三) 仮に、右の(二)の点を別に措いても、前記第三の二で説示したとおり、選挙権・被選挙権停止の処分に際し、適正手続が保障されなかったことの違法性も看過し難い。原告の弁解に虚心に耳を傾けることによって、被告は過ちを未然に防止しえたかもしれないし、少なくとも昭和56、58、60年度の役員選挙における相次ぐ原告の選挙権・被選挙権の停止処分という、暴挙ともうけとられかねない処分は回避しえたであろう。
4 不法行為の成立と損害の程度
[159] 右の1ないし3によれば、被告の不法行為により、原告は多大の精神的苦痛を被ったものというべく、よって、被告は原告に対し、右不法行為に基づく後記損害を賠償する責任がある。
[160](一) これまで述べてきた原告及び被告の各地位、被侵害利益、侵害行為の態様、その他諸般の事情を総合勘案すれば、原告の右精神的苦痛に対する慰藉料の昭和56年5月7日当時の現価は金100万円をもって相当と思料する。
[161](二) 前記認定の事実並びに《証拠略》によれば、原告は自己の権利擁護のため本訴の提起を余儀なくされ、原告訴訟代理人弁護士らに訴訟追行を委任したこと、この委任に際して、昭和55年1月、着手金(手数料)として委任契約締結時に100万円、諸費用として実費、報酬として委任の目的を達したとき200万円を支払うことを約し、右着手金100万円は既に支払われていることが認められる。そして、本件訴訟の難易度、請求額と認容額、その他諸般の事情を総合勘案すれば、被告の本件不法行為と相当因果関係に立つ損害というべき弁護士費用の、昭和56年5月7日当時の現価は金50万円をもって相当と認める。
5 まとめ
[162] よって、被告は原告に対し、不法行為に基づく損害賠償として金150万円及びこれに対する最初の不法行為後である昭和56年5月7日より支払済みに至るまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を支払うべき義務があるから、損害賠償を求める請求(請求の趣旨一〇の請求)は、右の限度で理由があり認容されるべきであるが、その余は失当であって、棄却を免れない。
[163] 以上の次第であるから、原告の本訴請求のうち
一 被告が原告に対しなした昭和54年4月3日付、昭和56年4月8日付、昭和58年4月11日付及び昭和60年4月11日付の、被告の理事及び監事の選挙権及び被選挙権を停止した各処分の無効確認、昭和54年5月1日、昭和56年5月7日、昭和58年5月10日及び昭和60年5月9日に実施された被告の役員選挙において、いずれも原告が選挙権及び被選挙権を有していたことの各確認及び昭和54年5月1日、昭和56年5月7日、昭和58年5月10日に実施された被告の各役員選挙の無効確認を求める訴えをいずれも却下し、
二 原告の被告に対する昭和53年6月16日被告総会決議に基づく金5000円の特別会費の納入義務のないことを確認し、
三 被告は原告に対し金150万円及びこれに対する昭和56年5月7日より支払済みに至るまで年5分の割合による金員を支払うよう命ずる限度でこれを認容し、
四 その余の請求をすべて理由なきものとして棄却し、
五 訴訟費用につき民訴法89条、92条を、仮執行の宣言につき同法196条を各適用し、
もって、主文のとおり判決する。

  熊本地方裁判所民事第1部
    裁判官 簑田孝行
《省略》   第一章 総則
(名称)
第1条 本会は、日本税理士会連合会と称する。
(目的)
第2条 本会は、税理士の使命及び職責にかんがみ、税理士の義務の遵守及び税理士業務の改善進歩に資するため、税理士会及びその会員の指導、連絡及び監督並びに税理士の登録に関する事務を行うことを目的とする。
(事業)
第3条 本会は、前条に規定する目的を達成するため、次に掲げる事業を行う。
(1) 税理士会及びその会員の指導、連絡及び監督に関し必要な事項について、税理士会及びその会員に対し勧告をし、又は指示を行うこと
(2) 税務行政その他国税若しくは地方税又は税理士に関する制度について調査研究を行うこと
(3) 税理士業務の改善進歩に関して調査研究を行うこと
(4) 会報を発行すること
(5) 税理士の登録に関する事務を行うこと
(6) その他本会の目的を達成するため必要な事項を行うこと
 本会は税務行政その他国税若しくは地方税又は税理士に関する制度について、権限のある官公署に建議し、又はその諮問に答申する。
(事務所の所在地)
第4条 本会は、東京都渋谷区に事務所を置く。
(会員)
第5条 本会の会員は、全国の税理士会とする。

  第二章 役員
(役員)
第6条 本会に次の役員を置く。
(1) 会長 1人
(2) 副会長 14人以内
(3) 理事 100人
(4) 監事 14人
(役員の選任)
第7条 役員は、税理士会の会員のうちから、総会において選任する。
 税理士法(以下法という。)第24条各号の一に該当することが明らかとなった者は、役員となることができない。
 役員が欠員となったときは、補欠選任をする。ただし、常務理事会の議により、次の定期総会まで補欠選任をしないことができる。
 役員の選任については、前各項に定めるもののほか、第18条第2項の規則で定める。
(会長及び副会長)
第8条 会長は、本会を代表し、会務を総理し、理事会及び常務理事会の議長となる。
 副会長は、会長の定めるところにより、会長を補佐し、会長に事故があるときは、その職務を代理する。
 副会長は、会長の定めるところにより、会長が欠員のときは、その職務を行う。
(理事)
第9条 理事は、理事会の構成員として、会務の執行に参画する。
(理事会)
第10条 理事会は、会長、副会長及び理事をもって構成する。
 理事会は、次に掲げる事項を決定する。
(1) 総会に提出すべき議案
(2) この会則において理事会の議を要するものとされている事項
(3) 第3条第2項の規定による建議又は答申に関する事項
(4) 前各号に掲げるもののほか、会務の執行に関する重要事項
(理事会の運営)
第11条 理事会は、会長が招集する。
 理事会の議事は、その構成員の半数以上が出席し、その出席者の過半数をもって決するものとし、可否同数のときは、会長の決するところによる。
 理事会の議事について特別の利害関係のある者は、その議決に加わることができない。
 理事会に付議すべき事項について会議を招集する必要がないと認めたときは、常務理事会の議により、議案を記載した書面を構成員に送って、当該議案に対する賛否の意見を求め、書面による議決をすることができる。
 前項の規定による議決は、理事会の議決と同一の効力を有する。
 第2項及び第3項の規定は、第4項の書面による議決について準用する。
(常務理事)
第12条 会長は、第18条第2項の規則で定めるところにより、理事のうちから常務理事若干人を委嘱する。
 常務理事は、常務理事会の構成員として、会務の執行に参画する。
(常務理事会)
第13条 常務理事会は、会長、副会長、専務理事及び常務理事をもって構成する。
 常務理事会は、理事会の議決により、理事会の権限(第10条第2項第1号及び第2号に掲げる事項の決定を除く。)の一部を行使する。
 前項の規定により、常務理事会が決定した事項については、当該常務理事会の議長は、これを次の理事会に報告しなければならない。
 常務理事会は、第2項に該当するもののほか、次に掲げる事項を決定する。
(1) 理事会に付議すべき議案
(2) この会則において常務理事会の議を要するものとされている事項
 第11条の規定は、常務理事会について準用する。この場合において、同条の規定中「理事会」とあるのは「常務理事会」と、「常務理事会の議により」とあるのは「副会長及び専務理事の半数以上の同意を得て」と読み替えるものとする。
(専務理事)
第14条 会長は、理事のうちから専務理事2人以内を委嘱する。
 専務理事は、会長の命を受け、会務の執行を掌理する。
(会務の執行)
第18条 会長、副会長及び専務理事は、会務の執行に当っては税理士に関する法令若しくはこの会則の規定又は総会、理事会若しくは常務理事会の議決に反することができない。
 会務の執行に関する規則は総会で定める。

  第四章 総会
(招集)
第23条 会長は、毎年7月に定期総会を招集する。
 会長は、必要があると認めるときは、臨時総会を招集することができる。
 会長は、総会を招集しようとするときは、招集の理由及び議案について理事会の議を経なければならない。
(議決権)
第24条 税理士会は、その会の会員の数と同数の議決権を有するものとする。
(議決の要件)
第25条 総会の議決は、税理士会の2分の1以上が出席し、その出席した税理士会の議決権の過半数で決するものとし、可否同数のときは議長の決するところによる。
 総会において、会則の変更につき議決する場合には、前項の規定にかかわらず、税理士会の2分の1以上が出席し、その出席した税理士会の議決権の3分の2以上の多数をもってしなければならない。
(総会で決定すべき事項)
第27条 総会は、次に掲げる事項を決定する。
(1) この会則において総会の議決又は承認を要することとされている事項
(2) 会則の変更
(3) 本会の重要な財産の取得及び処分に関する事項
(4) 前各号に掲げるもののほか、会務に関する重要事項
  第一章 総則
(名称)
第1条 本会は、南九州税理士会と称する。
(目的)
第2条 本会は、税理士の使命及び職責にかんがみ、税理士の義務の遵守及び税理士業務の改善進歩に資するため、会員の指導、連絡及び監督に関する事務を行うことを目的とする。
(事業)
第3条 本会は、前条に規定する目的を達成するため、次に掲げる事業を行う。
(1) 税理士業務に関する講習会又は研究会を開催する等会員の資質の向上を図る諸施策を実施すること。
(2) 会員の品位を保持し又は会員の監督をするための諸施策を実施すること。
(3) 税理士の義務の遵守及び税理士業務の改善進歩に関して税務官公署と連絡協議すること。
(4) 日本税理士会連合会(以下「連合会」という。)が行う税理士の登録に関し必要な事務を行うこと。
(5) その他本会の目的を達成するため必要な事項を行うこと。
 本会は、前項に規定する事業のほか、税務行政その他国税若しくは地方税又は税理士に関する制度について調査研究を行い、必要に応じ、権限のある官公署に建議し、又はその諮問に答申する。
(事務所の所在地)
第4条 本会は、熊本市に事務所を置く。
(会員)
第5条 本会の会員は、熊本国税局の管轄区域内に税理士事務所を有する税理士でなければならない。
(支部)
第6条 本会と会員との連絡調整を図るため、熊本、大分、鹿児島、宮崎の各県の区域内に事務所を有する会員をもって県支部を組織する。
 各県支部のもとに税務署の管轄区域を単位として部会を組織する。但し、特別の事由があるときは、2以上の税務署の管轄区域を単位として組織することができる。

  第三章 役員
(役員)
第13条 本会に次の役員を置く。
(1) 会長 1名
(2) 副会長 4名
(3) 理事 29名以内
(4) 監事 4名以内
(役員の選任)
第14条 役員は、会員のうちから選任し、総会に報告する。
 役員の選任に関する事項は、別に定める。
(会長、副会長及び常務理事)
第15条 会長は、本会を代表し、会務を総理し、理事会及び常務理事会の議長となる。
 副会長は、会長の定めるところにより、会長を補佐し、会長に事故があるときは、その職務を代理する。
 副会長は、会長の定めるところにより、会長が欠員のときは、その職務を行う。
(理事)
第16条 理事は、会務の執行に参画する。
(監事)
第17条 監事は、会計及び会務の執行を監査し、これを総会に報告する。
 監事は、前項に規定するもののほか、この会則によりその権限に属せしめられた事項を行う。
 監事は、本会の他の役員を兼ね、又は本会の使用人となることができない。
(理事会)
第18条 理事会は、会長、副会長及び理事をもって組織する。
 理事会は、次に掲げる事項を決定する。
(1) 総会に提出すべき議案その他この会則において理事会の議を要するものとされている事項
(2) 法第49条の12第1項の規定による建議及び答申に関する事項
(3) 前各号に掲げるもののほか、会務の執行に関する重要事項
(役員の任期)
第20条 役員の任期は、就任後第2回目の定期総会の終了のときまでとする。但し、補欠又は増員により就任したる役員の任期は、他の役員の残任期間とする。
 任期満了によって退任する役員は、新たに選任された役員が就任するまで引続きその職務を行う。
(役員の退任)
第21条 役員は、任期満了により退任する。
 役員は、会員たる資格を喪失したとき、法第26条第1項各号の一に該当することとなったとき、又は総会において解任の決議のあったときは退任する。
 前項に規定する場合を除き、役員が退任しようとするときは、理事会の承認をえなければならない。
(会務の執行)
第22条 会長、副会長、専務理事及び常務理事は、会務の執行に当っては、税理士に関する法令若しくはこの会則の規定又は総会、理事会若しくは常務理事会の議決に反することができない。
 会長は、理事会の議を経て、会務の執行に関する細則を定めることができる。
  第四章 総会
(招集)
第26条 会長は、毎年6月に定期総会を招集する。

  第七章 監督
(会員に対する一般的監督)
第45条 本会は、税理士業務の適正な運営を図るため必要があるときは、その会員から報告を徴し、又はその会員に必要な勧告若しくは指示を行うことができる。
 会員は、本会及び連合会の会則及び規則に従わなければならない。
(会員の処分)
第47条 本会の会長は、会員が税理士に関する法令又は本会の会則及び規則に違反した場合は、理事会の議を経て、当該会員を訓告し、又は本会の会員として有する権利の全部又は一部を停止することができる。
 支部規約及び部会規約に違反した会員についても前項を準用する。但し、部会員のうち準会員についてはこの限りでない。
 第1項に規定する本会の会員として有する権利は、本会又は本会の支部及び部会から文書の送付を受ける権利、本会の施設を利用する権利、本会の会議に出席する権利及び本会の役員を選挙する権利又は役員となる権利とする。
 本会は、第1項に規定する処分をしようとするときは、あらかじめその会員にその旨を通知して、相当の期間内に自ら又はその代理人を通じて弁明する機会を与えなければならない。
 第1項の規定による処分を行ったときは、連合会並びに本会の会報に氏名並びに処分の種類及びその理由を公示する。会長は、会員が税理士に関する法令又は本会の会則及び規則に違反した場合において、その者につき連合会の会則に定める処分に付することを相当と認めたときは、その会員の氏名、住所、税理士事務所の所在地並びにその処分に付すべき理由を連合会に報告する。
(異議の申立)
第48条 前条第1項の処分を受けた会員は、当該処分につき異議があるときは連合会の会長に異議の申立をすることができる。

  第八章 入会金及び会費
(会費の負担)
第50条 会員は、1事業年度について、会費4万5千円を負担する。
 前項の会費は、4月から9月まで(上期という)及び10月から翌年8月まで(下期という)に区分し、4月及び10月に各2万2千500円を納付するものとする。
 特に重要な臨時費を要するときは、総会の議を経て特別会費を徴収する。
(会費の全部又は一部の免除)
第52条 長期にわたる病気療養のため税理士業務を行わない者その他これに類する者の納付すべき会費については、会長が、理事会の承認をえて、その全部又は一部を免除することができる。
(規則の制定)
第61条 第6条第8項、第14条第2項、第36条第9項及び第44条に規定する事項は、総会の議決する規則をもって定める。
  第一章 総則
第1条 会則第14条に定める役員の選任は、この規則によって行う。
第2条 役員の定数は、会則第13条による。
第3条 選挙に関する事務は、選挙管理委員会(以下委員会という。)が行う。
第4条 委員会は、選挙管理委員(以下委員という。)をもって組織する。
 委員は、各県支部の区域毎に2名とし、選挙の日の30日前までに会長が委嘱する。
 委員は、役員候補の推薦及び選挙運動をしてはならない。
 会長は、委員が次の各号の一に該当する至った場合は、その委員を解嘱する。但し、第3号及び第4号の場合においては委員会の同意を得なければならない。
(1) 会員の資格を有しなくなった場合又は税理士法第43条の該当者となった場合。
(2) 委員が所属支部の区域外へ転出した場合。
(3) 心身の故障のため、職務を執行することができない場合。
(4) 職務上の義務に違反し、又は委員たるに適しない非行があった場合。
(5) 委員の解嘱により補欠委嘱する場合は、解嘱された委員の所属する支部の区域より補充委嘱する。
(6) 委員の任期は、次の委員が就任するまでの期間とする。
(7) 委員会に委員長及び副委員長各1名を置く。委員長及び副委員長は、委員の中より互選する。
(8) 委員長は、委員会の決議事項及びその要領を書面を以て会長に速かに報告しなければならない。
第5条 選挙の期日は、会長これを定める。

  第二章 選挙に関する資格
第6条 選挙人名簿作成の日から引続いて会員の資格を有する者は、本会に届出た事務所所在地において、理事及び監事の選挙権並びに被選挙権を有する。
 前項の規定にかかわらず次の各号の一に該当するものは、選挙権及び被選挙権はないものとする。
(1) 前1年以内に税理士法第44条又は会則第47条の処分を受けた者。
(2) 選挙の年の3月31日現在において本部の会費を滞納している者。

  第三章 選任方法
第7条 会長は、理事の無記名投票によって互選する。
第8条 副会長は、各県支部から各1名を当該支部の理事の互選により選任する。
第9条 理事の選挙区は、各県支部の区域とする。
 理事の定員は、各県支部の区域に当該支部所属会員の数を参酌して理事会において割り当てる。
第10条 監事の選挙区は、各県支部の区域とする。
 監事の定員は、各県支部各1名とする。

  第四章 選挙人名簿
第11条 委員会は、役員の選挙について、毎年3月31日現在をもって各選挙区における選挙人名簿を作成し、各選挙区における理事の定数を、選挙の期日の10日前迄に選挙人名簿に登載された選挙権者に通知しなければならない。

  第五章 選挙期日
第12条 理事、監事の選挙は、6月10日までに行う。
 委員会は、選挙の期日を選挙の日の10日前迄に選挙権者に通知しなければならない。
 会長、副会長の選任は、理事選挙後15日以内に委員会の決定する日時、場所において行う。

  第六章 投票
第13条 理事の選挙は、定員数の連記無記名投票により行う。監事の選挙は、単記無記名投票により行う。

  第八章 当選人
第22条 各選挙における当選人は、各役員の定員数に充つるまで有効投票の最多数を得た者の順位による。得票数が同じであるときは、入会順をもって順位を決定する。入会日が同一の場合は抽籤による。
第26条 役員の選挙について、当選人のないとき又は当選人が役員の定員数に不足を生じたときは、第22条及び第23条の規定により、当選人を定めることができる場合を除き、本規則により再選挙を行う。
  第一章 総則
(名称)
第1条 本連盟は、日本税理士政治連盟(略称「税政連」)と称する。
(本部)
第2条 本連盟の本部は、東京都渋谷区に置く。
(目的)
第3条 本連盟は、税理士の社会的、経済的地位の向上を図るとともに、納税者のための民主的税理士制度および租税制度ならびに税務行政を確立するため、必要な政治活動を行うことを目的とする。
(事業)
第4条 本連盟は、前条の目的を達成するため、次の事業を行なう。
(1) 税理士および納税者の政治意識ならびに租税倫理の高揚を図るための政治活動
(2) 政府、政党および国会議員等に対する陳情、請願等の政治活動
(3) 公職選挙法および政治資金規正法に基づく諸活動
(4) 地区税理士政治連盟およびその会員に対する情報の提供ならびに機関紙の発行
(5) 日本税理士会連合会および地区税理士政治連盟との連絡調整ならびに連携の強化
(6) 前各号のほか本連盟の目的達成に必要な事業
(組織)
第5条 本連盟は別表一に掲げる税理士政治連盟(本規約において「地区税理士政治連盟」という。)をもって組織する。
 本連盟の目的事業に賛同する者は賛助会員となることができる。

  第四章 その他の機関
(推薦審査会)
第23条 本連盟に推薦審査会を置き、衆議院議員、参議院議員並びに地方公共団体の議会の議員および長の各選挙に際し、候補者の推薦につき審査決定する。
 地区税理士政治連盟は、推薦審査会に対し、前項の候補者の推薦を申し出ることができる。
 前2項の規定にかかわらず地区税理士政治連盟の地域内に属する地方公共団体の議会の議員および長の候補者については、当該地区税理士政治連盟が直接推薦することを妨げない。ただし、この場合には当該地区税理士政治連盟は直ちに連盟に報告しなければならない。
 推薦審査会の委員は、総務会の議を経て会長が委嘱する。
 推薦審査会の構成、運営その他については総務会で定める。

  第六章 会費および会計
(経費)
第34条 本連盟の経費は、会費、寄附金およびその他の収入をもって支弁する。
(会費)
第35条 地区税理士政治連盟は、毎年7月1日現在における当該地区税理士会の会員数に大会において定める金額を乗じた額を、その年分の会費として本連盟に納付しなければならない。
(寄附金)
第36条 本連盟は、本連盟の目的、事業に賛助する個人および団体から寄附金を受けることができる。

別表一
  名    称 管轄(都道府県)
東京税理士政治連盟 東京
東京地方〃 神奈川、千葉、山梨
関東信越〃 埼玉、茨城、栃木、群馬、長野、新潟
大阪合同〃 大阪、京都、兵庫、奈良、和歌山、滋賀
北海道〃 北海道
東北〃 宮城、岩手、福島、秋田、青森、山形
名古屋〃 愛知(名古屋市)、岐阜
東海〃 静岡、愛知、三重
北陸〃 石川、福井、富山
一〇 中国〃 広島、山口、岡山、鳥取、島根
一一 四国〃 香川、愛媛、徳島、高知
一二 九州北部〃 福岡、佐賀、長崎
一三 南九州〃 熊本、大分、宮崎、鹿児島
一四 沖縄〃 沖縄
(備考)地区税理士政治連盟の一と二、および七と八の各管轄区域については、相互に一部重複がある。
  第一章 総則
(名称)
第1条 本連盟は、南九州税理士政治連盟と称する。
(本部)
第2条 本連盟の本部は熊本市におく。
(目的)
第3条 本連盟は税理士の社会的・経済的地位の向上を図り、納税者のための民主的税理士制度ならびに租税制度を確立するため必要な政治活動を行うことを目的とする。
(組織及び会員)
第4条 本連盟の組織及び会員は、次のとおりとする。
(1) 本連盟は、南九州税理士会に入会している税理士を会員として組織する。
(2) 本連盟は、各県毎に県支部を設けることができる。

  第四章 その他の機関
(推薦審査会)
第26条 会長は必要ありと認めたときは臨時に本連盟に推薦審査会を置き、衆議院議員、参議院議員の各選挙に際し、候補者の推薦につき審査することができる。
 推薦審査会の委員は会長が委嘱する。

  第六章 会費及び会計
(経費)
第31条 本連盟の経費は、会費、寄付金及びその他の収入をもって支弁する。
(会費)
第32条 会費は、年額2000円とし、7月31日までにその全額を本連盟に納入しなければならない。
 年度の中途で入会する会員は、入会と同時に前項の会費を本連盟に納入するものとする。
(寄付金)
第33条 本連盟は、本連盟の目的達成に賛助する個人及び団体から寄付金を受けることができる。

  附則
第3条 会費は、第32条の規定にかかわらず当分の間徴収しない。
  第一章 総則
(名称)
第1条 本連盟は、熊本県税理士政治連盟と称する。
(本部)
第2条 本連盟の本部は熊本市におく。
(目的)
第3条 本連盟は税理士の社会的・経済的地位の向上を図り、納税者のための民主的税理士制度ならびに租税制度を確立するため必要な政治活動を行なうことを目的とする。
(組織及び会員)
第4条 本連盟は、南九州税理士会熊本県支部に入会している税理士を会員として組織する。

  第四章 その他の機関
(推薦審査会)
第26条 会長は必要ありと認めたときは臨時に本連盟に推薦審査会を置き、衆議院議員、参議院議員の各選挙に際し、候補者の推薦につき審査することができる。
 推薦審査会の委員は会長が委嘱する。

  第六章 会費及び会計
(経費)
第31条 本連盟の経費は、会費、寄付金及びその他の収入をもって支弁する。
(会費)
第32条 会費は、年額1000円とし、7月31日までにその全額を本連盟に納入しなければならない。
 年度の中途で入会する会員は、入会と同時に前項の会費を本連盟に納入するものとする。
(寄付金)
第33条 本連盟は、本連盟の目的達成に賛助する個人及び団体から寄付金を受けることができる。

  附則
第3条 会費は、第32条の規定にかかわらず当分の間徴収しない。

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