旧統一教会解散命令事件
第一審決定

宗教法人解散命令申立事件
東京地方裁判所 令和5年(チ)第42号
令和7年3月25日 民事第8部 決定

申立人      文部科学大臣
同指定代理人   Z ほか9名

利害関係参加人  世界平和統一家庭連合
同代表者代表役員 田中富広
同代理人弁護士  福本修也 鐘築優 堀川敦

■ 主 文
■ 理 由


1 利害関係参加人世界平和統一家庭連合を解散する。
2 手続費用は各自の負担とする。

 主文と同旨
[1] 本件は、利害関係参加人の所轄庁である申立人(文部科学大臣)が、世界平和統一家庭連合との名称で活動する宗教法人である利害関係参加人につき、宗教法人法(以下「法」という。)81条1項1号又は同項2号に該当する事由があるとして、同項柱書き所定の解散命令を求める事案である。
[2]ア 利害関係参加人は、昭和39年7月16日に「世界基督教統一神霊協会」として設立された宗教法人であり、主たる事務所を東京都渋谷区αx目x番x号に置き、他の都道府県内に境内建物を備えている。利害関係参加人は、その規則(以下、単に「規則」という。)において、
「この法人は、天宙の創造神を主神として、聖書原理解説の教義をひろめ、儀式行事を行ない、信者を教化育成する為の財務及び業務並びに事業を行なう事を目的とする」
と定めている(規則3条。法10条参照)。利害関係参加人は、平成27年8月26日、名称を「世界基督教統一神霊協会」から「世界平和統一家庭連合」に変更した。(甲A1、2、B4の3の6)

[3]イ 申立人(文部科学大臣)は、利害関係参加人の所轄庁(法5条2項1号)であり、令和5年10月13日、利害関係参加人の解散命令を東京地方裁判所に申し立てた。
[4] 利害関係参加人の元信者は、昭和62年3月、違法な勧誘、教化活動により利害関係参加人に入信させられ、霊感商法や偽装募金などの違法行為への従事、無償の労働又は献金や物品購入につき、強制させられたなどとして、利害関係参加人等に対して損害賠償を求める訴訟を札幌地方裁判所に提起した。その後、利害関係参加人の信者等による献金及び物品購入等の勧誘行為並びに入信勧誘及び教育・指導行為(以下「献金勧誘等行為」という。)に係る不法行為により損害を被ったと主張する者が、利害関係参加人等に対して損害賠償を求める民事訴訟が各地で提起されるようになった。
[5] 本件の記録上、利害関係参加人の元信者等が損害賠償を求める民事訴訟を提起し、利害関係参加人に対する請求の全部又は一部が認容されることのあった事件は、一審判決の数を基準にすると32件存在する(以下、これらの32件の民事訴訟事件の判決〔一審判決のみでなく、上訴審判決を含む。〕を総称して「32件の民事判決」という。)。
(甲B1の1〔18頁〕、B10の1、E1~32。以下、甲B1の1などのように、「報告書①」といった表題が付されている証拠〔報告書①~⑮があり、報告書⑧-2などのように枝番号が付されているものも含む。〕については、証拠の番号でなく、「報告書①」などと記載することとする。)
[6] 利害関係参加人の信者が経営する複数の物品販売店に関して、平成19年以降、販売店の客に対し、当該客又はその親族の不幸と先祖の因縁等を結び付けるなどした上で、不幸を免れるためには印章等の物品を購入する必要があるなどと申し向けて売買契約の締結を執拗に迫り威迫困惑させるなどしたという事実を被疑事実とする特定商取引に関する法律(以下「特定商取引法」という。)違反の刑事事件が複数件発生し、利害関係参加人の信者が逮捕され、利害関係参加人の施設に対して強制捜査が行われるなどした。そして、平成19年12月から平成21年11月にかけて、それぞれ別の物品販売店に関する4件の刑事事件(各販売店に関する刑事事件について、各販売店ごとにまとめて1件として数えている。以下同じ。)の裁判において、物品販売店の経営者等である利害関係参加人の信者が刑罰(罰金刑又は執行猶予付き懲役刑)を科されることがあった。
(甲B1〔の62~65〕、E34~37)
[7] 利害関係参加人は、平成21年2月及び同年3月に、全国の教会指導者に宛て、信者の法令遵守に係る公式連絡文書をそれぞれ発出した(以下、利害関係参加人の本部の機関又は役職者〔代表役員等〕から発出される、利害関係参加人内での公式な連絡文書を「公文」(こうぶん)という。)。これらの公文の中では、利害関係参加人の信者による献金勧誘等行為に関する指導基準として、献金と先祖の因縁等を殊更に結びつけた献金の奨励行為や勧誘行為をしないこと、信者の経済状況に比して過度な献金とならないように十分配慮すること、献金は、利害関係参加人の教理である統一原理を学んだ者から、献金先が統一教会であることを明示して受け取ることなどが示されていた。
[8] 平成21年には、上記公文以外にも、信者の法令遵守等に関してKPI(Key Performance Indicator〔重要業績評価指標〕)を導入することとした旨の公文など、信者の法令遵守に係る文書が複数発出されている(以下、利害関係参加人の信者の法令遵守に係るこのような種類の公文等の発出のほか、利害関係参加人の本部による法令遵守に係る平成21年の施策を総称して、「コンプライアンス宣言」という。)。
[9] 利害関係参加人は、平成22年以降も、信者の法令遵守に係る公文等の発出といった追加の施策を行っている。
(甲A6~8、B13の9、報告書⑭〔第2の2、3〔2頁~〕〕)
[10] 元内閣総理大臣である安倍晋三は、令和4年7月8日、利害関係参加人の信者の家族に銃撃されて死亡した(以下、この銃撃による死亡事件を「本件銃撃事件」という。)。本件銃撃事件の直後から、利害関係参加人の活動が社会的に注目される状況となり、法務省において、同年8月、法務大臣の主宰により、「『旧統一教会』問題関係省庁連絡会議」が設置されるなど、本件銃撃事件以降、国における利害関係参加人に関する施策や立法が行われるなどした。
[11] 利害関係参加人は、本件銃撃事件後、令和4年9月20日に、信者への献金奨励が信者の経済状況に比して過度な献金とならないように十分配慮しなければならない旨などを記載した「再送 教会改革の方向性に関して」を発表し、その後、献金の受領についてのガイドラインを策定し、月収の10分の3以上の献金を受領する際などに書面での意思確認を行うとともに、領収証の発行を行うとすることを定めるなどした複数のガイドラインを発出した。
(甲B1〔の71~73〕、B3の6、B5〔の3、4〕、報告書⑭〕〔第1の4〔4頁~〕〕、報告書⑮〔第4〔10頁~〕〕)
[12] 文部科学大臣は、令和4年10月から11月にかけて、法78条の2に基づく報告徴収・質問権を行使する際の一般的な基準を策定するため、「宗教法人制度の運用等に関する調査研究協力者会議」を開催し、同会議において、「宗教法人法第78条の2に基づく報告徴収・質問権の行使について」の取りまとめが行われ、「報告徴収・質問権を行使する際の一般的な基準」が定められた。
[13] 文部科学大臣は、上記基準に照らし、利害関係参加人について、法81条1項1号所定の「法令に違反して、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為をしたこと」に該当する疑いがあり、法78条の2第1項3号所定の要件を満たすと判断し、令和4年11月21日以降、7回にわたり、都度、宗教法人審議会に諮問して答申を受けた上で、利害関係参加人に対し、報告を求めること(報告徴収)をした(以下、上記7回の報告徴収を併せて「本件報告徴収」というほか、個別の報告徴収につき、回数を付した上で、「第1回報告徴収」などという。)。
[14] 文部科学大臣は、利害関係参加人が、本件報告徴収において報告を求められた事項のうちの計110項目について報告をしておらず、これらの不報告は、法88条10号に規定する罰則に係る事由に該当するとして、令和5年9月7日、東京地方裁判所に対し、利害関係参加人の代表役員を過料に処するべきであるとする通知を行い、同裁判所は、令和6年3月26日、同代表役員を過料10万円に処するとの決定をした。これに対して同代表役員が即時抗告をしたところ、東京高等裁判所は、同年8月27日、同抗告を棄却し、これに対して同代表役員が特別抗告及び許可抗告をしたところ、最高裁判所は、令和7年3月3日、上記各抗告をいずれも棄却した(最高裁令和6年(ク)第1121号同7年3月3日第一小法廷決定、最高裁令和6年(許)第31号同7年3月3日第一小法廷決定・裁判所ウェブサイト〔以下「最高裁令和7年決定」という。〕)。
(甲B1〔の85、96〕、C1~7、9、10、報告書①〔第5の2、3〔26頁~〕、審問の全趣旨)
ア 民事判決
[15] 本件の記録上、利害関係参加人の元信者等が、利害関係参加人に対し、その信者による献金勧誘等行為が不法行為に当たるとして損害賠償を求める民事訴訟を提起し、利害関係参加人に対する請求の全部又は一部が認容されることのあった事件は、一審判決の数を基準にすると、32件存在する(32件の民事判決)。
[16] 32件の民事判決において、利害関係参加人の損害賠償責任が判決によって認められた原告の数は169名である。このうち、26件での原告140名は、利害関係参加人の損害賠償責任を認める内容の確定判決を得ており、これらの判決における最終的な認容額の合計額は18億0167万2477円である。その余の6件での原告29名は、一審判決により、利害関係参加人の損害賠償責任が認められた後、控訴審において訴訟上の和解をしている。

イ 訴訟上の和解
[17] 本件の記録上、利害関係参加人の元信者等が、利害関係参加人に対し、その信者による献金勧誘等行為が不法行為に当たるとして損害賠償を求める民事訴訟を提起し、訴訟上の和解が成立したものは、上記アのその余の6件を含めて100件あり、その原告数は448名であり、また、支払合意額の合計額は61億1941万1071円である(以下、訴訟上の和解によって支払が合意された金銭を、名目のいかんを問わず「和解金」という。)。

ウ 裁判外の示談
[18] 本件の記録上、利害関係参加人の元信者等が、利害関係参加人に対し、その信者による献金勧誘等行為が不法行為に当たるとして通知書を送付し、裁判外で金銭支払を含む合意が成立した事案に係る請求者の人数は971名であり、また、支払合意額の合計額は125億2680万5609円である(以下、当該合意を名称のいかんを問わず「裁判外の示談」といい、裁判外の示談によって支払が合意された金銭を、名目のいかんを問わず「示談金」という。)。
ア 「宗教法人について」「法令に違反して、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為をしたこと」(法81条1項柱書き及び同項1号)に係る解釈
(ア) 「宗教法人について」(法81条1項柱書き)の解釈
[19] 解散命令制度の趣旨は、公益活動のために付与されている宗教法人の法人格を維持させることが不適切な場合にこれを剥奪するというものであり、また、宗教法人の活動とみなすべきものには様々なものがあり得るという社会的実態を踏まえると、「宗教法人について」の行為に該当するといえるか否かの判断に当たっては、結局のところ、ある行為が宗教法人の解散命令の原因となり得るか否かという規範的な判断をすべきであり、行為者の地位や行為の外形といった形式的な要素で切り分けることは、そもそも解散命令の制度が設けられた趣旨と整合せず、宗教法人の代表役員等の行為でないというだけで「宗教法人について」(法81条1項柱書き)の行為に該当しないということは妥当でない。
[20] このようなことからすれば、法81条1項各号の事由における直接の行為者と当該宗教法人の関係や当該行為者の立場、行為の目的、行為の経緯や態様、行為の効果の帰属先及び行為の結果等の諸点を踏まえ、社会通念上、当該宗教法人の業務や活動として行われたものと評価できる行為は、「宗教法人について」の行為に該当すると解すべきである。
(イ) 「法令に違反」(法81条1項1号)の解釈
[21] 法81条1項1号の「法令に違反」の文理上、「法令」が刑罰法規や行政法規に限定されるということはできず、立法過程において示されているように、同号の定める「法令」には、法律や命令の全てが含まれると解すべきである。
[22] また、宗教法人の解散命令制度は、宗教団体に法律上の能力を与えたままにしておくことが不適切な事由が生じた場合等に、司法手続によって宗教法人を強制的に解散し、その法人格を失わせることを可能とするものである。そして、宗教法人について、民法上の不法行為規定の適用において違法と評価される行為が認められる場合、そのような行為は、公共の福祉(民法1条)の観点からして社会的に保護に値せず、あるいは、許容されないものであるといえるところ、そのような行為により法人格を付与される趣旨・目的に反する状態となったときには、宗教団体に対して法人格を与えたままにしておくことは不適切又は不必要であり、解散を命ずることができると解すべきである。
[23] 以上のとおり、法81条1項1号に規定する「法令に違反」の「法令」には、あらゆる法律、命令等が含まれるというべきであるほか、少なくとも、「法令に違反」する行為には、民法上の不法行為規定の適用において違法と評価される行為が含まれるというべきである。
(ウ) 「著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為をしたこと」(法81条1項1号)の解釈
[24] 法81条1項1号所定の「公共の福祉を害すると……認められる行為」とは、社会の基本的な秩序等に反し社会に害悪を及ぼすなどの反社会的行為を指し、その該当性については、法令違反行為の性質、目的及び態様、被侵害利益の性質、被害の状況等を総合的に勘案して判断することになる。
[25] そして、「著しく」、「明らかに」の用語は、その行為が明白な行為であることを強調するものである。
[26] このほか、法81条1項1号の「行為をしたこと」との文理上、同号の該当性は、客観的事実の存在をもって足り、発生後に改善傾向が認められるか否かや再発のおそれの有無は問わないというべきである。利害関係参加人は、コンプライアンス宣言により、献金勧誘等行為をめぐる状況が劇的に改善をした旨主張するが、仮に改善傾向があるとしても、同号該当性の判断に影響しない。

イ「法令に違反」する行為の有無・内容及び規模
(ア) 「法令に違反」する行為の有無・内容
[27] 利害関係参加人においては,その信者が、多数の者に対し、継続的に次の①から③までに記載するような行為を行ってきており、これらは、民法上の不法行為として、「法令に違反」する行為に当たる。
① 未証し(みあかし)勧誘
[28] 利害関係参加人の活動であることを秘して接触し、利害関係参加人の教理を学ぶか否か、あるいは、教理を信仰するか否かについて判断する機会を与えずに、原罪(げんざい)等の考え方を教え込んだ(いわゆる未証し勧誘をした)上で、原罪払拭等のためには、自己又は親族が所有する財産を差し出さなければならないと思い込ませて献金をさせる。
② 因縁トーク
[29] 先祖の因縁により、自身はもとより、家族及び子孫等が重大な不利益を被る事態が生ずるなどと告げるいわゆる因縁トークにより不安をあおり、又は、不安を抱いていることに乗じて、当該事態を免れるためには、献金又は物品購入をし、先祖の因縁を払拭しなければならない旨を告げて、献金又は物品購入に応じさせる。
③ 他の犠牲等を払っても献金等をすべきことを告げる行為
[30] 他の犠牲等を払っても献金等をすべきことを告げて、その社会的地位や資産状態に照らし、不相当に高額の金銭を支出させる。
[31] 上記①から③までの行為は、個人の自由な意思決定に制限を加えて、正常な判断が妨げられる状態で献金及び物品購入をさせ、あるいは、相手方の社会的地位や資産状況に照らして不相当に多額の金銭を支出させるものであり、社会的に相当と認められる範囲を逸脱する行為として違法であり、民法上の不法行為として、「法令に違反」する行為に該当する。
(イ) 「法令に違反」する行為の規模
[32] 利害関係参加人の信者による上記(ア)の不法行為は、昭和55年頃から令和5年頃までの約43年間にわたり、全国規模で繰り返され、少なくとも、1559名(確定判決140名、訴訟上の和解448名、裁判外の示談971名)の被害者を生じさせ、その被害額は合計204億円余りと極めて大きく、被害者自身に対して過度な経済的負担(借財、保険や定期預金の解約、家族や会社の資産の使い込み又は退職金や遺産の費消等による負担)や、多大な精神的苦痛を負わせたほか、被害者の家族にも経済的負担や精神的苦痛を負わせている。
[33] これらの不法行為により、多数の者に多額の損害を被らせ、親族を含む多数の者の生活の平穏が害されてきた。

ウ 「宗教法人について」(法81条1項柱書き)の該当性
[34] 上記イで記載した利害関係参加人の信者による献金勧誘等行為は、利害関係参加人の教理と関連付けて行われており、しかも、その行為の目的は利害関係参加人に財産を得させることにあって、その行為の結果、利害関係参加人は、現に献金等を受けることで財産を取得していたものと認められる。したがって、これらの献金勧誘等行為は、社会通念上、利害関係参加人の業務や活動として行われたものといえる。

エ 「法令に違反して、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為をしたこと」(法81条1項1号)の該当性
[35] 上記イで記載したとおり、利害関係参加人の信者による不法行為は、昭和55年頃から令和5年頃までの約43年間にわたり、全国各地で繰り返され、極めて多くの被害者を生じさせ、その被害額も甚大であって、被害者自身に対し、過度な経済的負担や多大な精神的苦痛を生じさせたほか、被害者家族にも経済的負担や精神的苦痛を負わせている。これらの不法行為により、多数の者に多額の損害を被らせ、親族を含む多数の者の生活の平穏が害されてきたのであるから、これらの不法行為が、「法令に違反して、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為」に該当することは明らかである。
[36] また、前述のとおり、法81条1項1号の該当性の判断においては、改善傾向が認められるか否かや再発のおそれの有無は問わないというべきであるが、仮にコンプライアンス宣言以降の状況を踏まえて判断すべきであるとしても、同宣言等の施策には、十分な実効性が認められず、利害関係参加人の本質的な体質改善はみられないのであって、同号に該当するとの結論は左右されないというべきである。

オ 解散命令の可否
[37] よって、法81条1項1号所定の解散命令事由に基づき、利害関係参加人の解散を命ずることができる。
ア 「宗教法人について」「法令に違反して、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為をしたこと」(法81条1項柱書き及び同項1号)に係る解釈
(ア) 「宗教法人について」(法81条1項柱書き)の解釈
[38] 宗教法人の解散に係る東京高裁平成7年(ラ)第1331号同年12月19日決定・判例タイムズ894号43頁(以下「東京高裁平成7年決定」という。)は、法81条1項1号の適用対象となる宗教法人の行為について、
「宗教法人の代表役員等が法人の名の下において取得・集積した財産及びこれを基礎に築いた人的・物的組織等を利用してした行為であって、社会通念に照らして、当該宗教法人の行為であるといえる」ものでなければならない
との判断基準を定立し、この判断基準が特別抗告審である最高裁平成8年(ク)第8号同年1月30日第一小法廷決定・民集50巻1号199頁(以下「最高裁平成8年決定」という。)でも実質的に支持されているのであるから、本件においても、上記判断基準によって判断すべきである。また、会社の解散命令の事由については、行為の主体が、平成17年法律第87号による改正前の商法(以下「旧商法」という。)58条1項3号では「業務ヲ執行スル社員又ハ取締役」と限定され、会社法824条1項3号では「業務執行取締役、執行役又は業務を執行する社員」と限定されているのであるから、同趣旨である宗教法人の解散命令においても、同様に、行為の主体が代表役員等に限定されるべきである。
(イ) 「法令に違反」(法81条1項1号)の解釈
[39] 東京高裁平成7年決定では、法81条1項1号の解釈につき、
「刑法等の実定法規の定める禁止規範又は命令規範に違反するものであって、しかもそれが著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為」をいう
と説示しており、同号にいう「法令」とは、禁止規範又は命令規範を定めた刑罰法規又は行政法規を指し、民法上の不法行為は同号の法令違反行為に該当しない。
[40] この点に関し、不法行為について定める民法709条は、賠償規範を定めたものであって、禁止規範又は命令規範を定めたものではない。不法行為の性質等につき判示した最高裁平成5年(オ)第1761号、第1762号同9年7月11日第二小法廷判決・民集51巻6号2573頁及び最高裁平成17年(受)第364号同18年3月30日第一小法廷判決・民集60巻3号948頁もこのことを裏付けている。
[41] また、宗教法人の解散命令制度と同趣旨である会社の解散命令制度について、会社法824条1項3号では「業務執行取締役、執行役又は業務を執行する社員が、……刑罰法令に触れる行為をした場合において、……継続的に又は反覆して当該行為をしたとき」と規定しており、信教の自由に対する特段の配慮が求められる宗教法人の解散命令事由の適用範囲を会社法等が規定する会社の解散命令事由より広く解釈することは許されないから、「法令」には刑罰法令違反を伴わない不法行為は入らないと解釈すべきである。
[42] さらに、法81条1項1号にいう「法令」の範囲は、同号の趣旨に照らして絞られなければならない上、憲法31条の趣旨に照らし、法81条1項1号の「法令」に民法709条が含まれると解すると、どのような行為が同条違反に当たり、かつ、上記「法令」違反に該当するかを予測することが困難であるから、このように解することはできない。
[43] したがって、法81条1項1号にいう「法令」とは、禁止規範又は命令規範を定めた刑罰法規又は行政法規を指し、民法上の不法行為は同号の法令違反行為に該当しないというべきである。
(ウ) 「著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為をしたこと」(法81条1項1号)に係る解釈
[44] 「著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為」といえるためには、違反行為の中でも更に悪質かつ甚大な被害をもたらすものでなければならないことはいうまでもない。また、法81条1項1号に該当するためには、違反行為の組織性、継続性及び悪質性の3要件が必要である。
[45] また、上記の継続性に関し、宗教法人の解散命令は、重大な不利益処分効果を生むものであるから、このような処分を行うためには、必要性及び緊急性が現在していることが必須である。

イ「法令に違反」する行為の有無・内容及び規模
(ア) 「法令に違反」する行為の有無・内容及び規模
[46] 「法令に違反」する行為に民法上の不法行為を含むと解することができないとの点を措くとしても、利害関係参加人の信者の行った献金及び物品購入は、自発的な信仰心からされたものであって、そもそも、献金及び物品購入の勧誘が不法行為に当たるような形で行われることはない。
[47] この点に関し、利害関係参加人の元信者(背教者)は、宗教を強制的に離脱させられており、一般的にみて離脱元の宗教に対して過度に攻撃的・敵対的になる傾向にあるだけでなく、また、脱会支援者等による画一的な刷り込みなどによって、虚偽の事実を述べているのであって、その供述に信用性はない。それにもかかわらず、裁判所は、過去の民事判決において、元信者の供述に基づき、誤って不法行為を認定しているが、実際には不法行為に当たる行為はなかったのである。また、訴訟上の和解及び裁判外の示談については、判決による事実認定と判断を経ての最終解決を選ばず、当事者が自発的な合意によって解決をしているのであり、これらの者について、不法行為による被害があったと認定できるものではない。
[48] また、解散命令請求事件の判断の重大性を考えると、非公開の非訟事件手続では一義的に明確な証拠しか認定に用いられてはならず、申立人の提出する過去の民事判決及び元信者(背教者)の供述証拠等は、証拠価値がないというべきである。
(イ) コンプライアンス宣言以降の法令違反の改善の有無・内容及び規模
[49] 利害関係参加人は、不法行為に当たると誤解されるような事態を根絶すべく、徹底した取組としてコンプライアンス宣言を行い、本部から、現場の責任者に指示を発し、信者にも指導を行っている。その結果、同宣言以降、信者間のトラブルは劇的に減少した。32件の民事判決についてみると、同宣言後の献金の支払等につき、信者が提起した訴訟はわずか4件(原告の数は4名)であり、さらに、これらの訴訟中で最後に行われたとされる出捐は平成26年7月のものであって、それ以降の出捐につき、現在に至るまで、訴訟が提起されたことはない。また、訴訟上の和解及び裁判外の示談の数のいずれも減少しており、支払金額の規模も劇的に縮小している。
[50] 民事判決、訴訟上の和解及び裁判外の示談のいずれについても、その圧倒的大部分はコンプライアンス宣言以前のものであって、32件の民事判決で認定された未証し勧誘のような問題性を持ち得る勧誘方法は30年以上前のものであり、現在では、そのような勧誘方法は全く行われておらず、問題状況は完全に解消されている。

ウ 「宗教法人について」(法81条1項柱書き)の該当性
[51] 利害関係参加人の信者の行う献金勧誘等行為は、利害関係参加人から独立した別個の組織である全国しあわせサークル連絡協議会(以下「連絡協議会」という。)又はその後継組織である信徒会の構成員である信者を中心として自主的に行われているものであり、利害関係参加人の代表役員等といった幹部が、自ら勧誘行為を行うことも、信者に勧誘行為をするよう指示することもなく、また、利害関係参加人の組織的な関与もないのであるから、信者の行うこれらの献金勧誘等行為が、「宗教法人について」の要件に該当する余地はない。

エ 「法令に違反して、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為をしたこと」(法81条1項1号)の該当性
[52] そもそも、前述のとおり、利審関係参加人の信者による不法行為が存在しないところ、この点を措くとしても、信者による献金及び物品購入等の勧誘行為につき、「法令に違反して、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為」といえるほどの行為があったとはいえないのは、組織性の観点で、幹部による刑事事件が問題となった、過去の法81条1項1号による解散命令の事案との比較からも明らかである。
[53] また、利害関係参加人においては、コンプライアンス宣言以降の組織的な改革の結果、献金勧誘等行為をめぐる状況が劇的に改善しており、同宣言以降の勧誘行為について民事訴訟を提起されることがなくなるなどし、近時では信者間のトラブルさえほとんどみられず、被害の申告は激減している。さらに、民事判決における損害賠償金、和解金及び示談金といった金銭は全て支払済みであって被害は回復されているから、違反行為及び被害のいずれについても継続性があるという余地はなく、したがって、悪質性もないといえる。
[54] そうすると、違反行為の組織性、継続性及び悪質性の3要件はいずれも現存しないし、また、継続性について述べたところからすれば、解散命令の必要性及び緊急性を欠くことも明らかである。
[55] それにもかかわらず、30年も前の過去の問題を蒸し返して「法令に違反して、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為」に該当するとして解散命令を発令することは到底できない。

オ 解散命令の可否
[56] よって、法81条1項1号所定の解散命令事由に基づいて利害関係参加人の解散を命ずることはできない。
[57]ア 法81条1項2号の「宗教団体の目的を著しく逸脱した行為をした」に該当するか否かについて、法は、公益に寄与する社会的存在としての宗教法人による、公益に適合した宗教活動を予定していることからすれば、目的からの逸脱についての評価は、公益法人として法人格を付与されているという性格を踏まえて行われるべきである。そうすると、営利や収益の獲得が優先された行為は、宗教法人が公益法人として法人格を付与される根拠と相容れないから、目的を著しく逸脱したものとして同号に該当するというべきである。

[58]イ 利害関係参加人は、長期間にわたり、全国各地において、信者を通じて①未証し勧誘をし、財産を差し出さなければならないと思い込ませる、②因縁トークにより不安をあおる、③他の犠牲等を払っても献金等をすべきことを告げるなど、財産的利得を目的として、多数の者を不安や困惑に陥れ、親族を含む多数の者に財産的・精神的犠牲を余儀なくさせる行為をしている。

[59]ウ このような行為は、献金や物品購入を積極的かつ執拗に働き掛けるもので、被害者の自主性・自発性が尊重されているとはいえず、宗教法人の公益性に反するものである。また、甚大な悪影響を及ぼす献金獲得及び物品販売等の行為は、宗教法人の公益的役割におよそ反したものといえる。さらに、利害関係参加人に与えられた法人格は、財産獲得の受け皿として機能しており、法人格を付与した趣旨に反したものであることも踏まえれば、「宗教団体の目的を著しく逸脱した行為をした」(法81条1項2号)ということができる。

[60]エ また、上記イの行為は、法81条1項1号の検討において上記(1)(申立人の主張の要旨)ウで述べたのと同様に、社会通念上、利害関係参加人の業務や活動として行われたものと評価できるから、「宗教法人について」との要件に該当する。

[61]オ よって、法81条1項2号所定の解散命令事由に基づき、利害関係参加人の解散を命ずることができる。
[62] 法81条1項2号の「第二条に規定する宗教団体の目的」とは、布教宣教活動、宗教的な儀式行事及び信者の教化育成などの宗教活動が本分であることを要求するものであり、宗教法人は、公益法人性に本質や存在理由があるのではない。利害関係参加人では、神のため、世界のため、あるいは、救いのために献金の勧誘活動を行い、献金の大部分を海外宣教援助費や教化育成費として支出しているなど、献金勧誘等行為は宗教団体の目的に沿う宗教活動そのものであって、同号該当性が認められる余地はない。
[63] よって、法81条1項2号所定の解散命令事由に基づいて利害関係参加人の解散を命ずることはできない。
[64] 前提事実、掲記の証拠及び審問の全趣旨によれば、次の事実が認められる。
ア 宗教法人設立までの経緯等(前提事実(1)、報告書①〔第4の1、2〔2頁~〕〕)
[65] 利害関係参加人は、文鮮明を教理創始者とする宗教法人である。文鮮明は、昭和29年に大韓民国において「世界基督教統一神霊協会」を創立し、その教えは、昭和33年に日本にもたらされたとされている。利害関係参加人は、昭和39年に「世界基督教総一神霊協会」との名称の宗教法人として設立された。

イ 近時の組織構造等
(ア) 本部の組織構造等(前提事実(1)、甲A1、3、B2の10、乙O13、報告書②〔第1~第2の1〔1頁~〕、第3の3〔27頁~〕〕)
a 意思決定機関等
[66] 利害関係参加人は、東京都渋谷区内に本部(法12条1項3号所定の「事務所」)を置いており、利害関係参加人を代表しその事務を総理する代表役員(会長)や、その意思決定機関として、7名の責任役員で構成される責任役員会を置くなどしている。
b 事務執行機関等
[67] 利害関係参加人は、事務執行機関として、複数の局又は室を設置している。
[68] このうち、法務局(以下、利害関係参加人の事務執行機関としての法務局を指して、単に「法務局」という。)は、利害関係参加人の法令遵守対応を所管しており、その所管事務に関し、「2022年各局事業計画書」と題する書面によれば、法務局は、教会活動と運営の健全化推進、裁判対応、裁判・通知書・内部クレームの未然防止、分派対策等を主要戦略項目として掲げている。
[69] このほか、本部には、委員会(必要に応じて責任役員会の下に設置され、事案の処理に当たる機関。統一教会の本部組織と地方組織に関する規定2条5項)が設置されており、「特別対策委員会」、「人事委員会」、「賞罰委員会」等の委員会がある。
c 本部の職員数
[70] 利害関係参加人の報告によれば、令和4年11月24日時点の本部職員の人員は110名とされている。また、利害関係参加人から提出された令和6年9月30日付けの報告書(乙O13。同報告書の別紙2「通No」の1639~1645)によれば、令和6年10月1日時点で法務局に配置されている職員の数は7名(局長1名、副局長2名並びに課長、次長、主任及び部員が各1名)とされている。
(イ) 地方の組織構造等(報告書②〔第2の2〔11頁~〕、第3の4〔27頁~〕〕)
[71] 利害関係参加人は、令和4年12月時点で、本部の下に地方組織として5つの「地区本部」を、各地区本部の下に67の「教区本部」、268の「教会」及び17の「支部教会」を、各教会の下に159の「認定伝道所」を、それぞれ設置しており、全国各地において活動をしている。
[72] 利害関係参加人の報告によれば、令和4年11月24日時点の地方組織(地区本部、教区本部及び教会)の職員は、地区本部が63名、教区本部が467名、教会が1177名の合計1707名とされている。
(ウ) 本部と地方組織との関係(甲A9、報告書②〔第2の3〔23頁~〕〕)
a 地方組織の予算
[73] 利害関係参加人の地方組織(地区本部、教区本部及び教会)の予算は、利害関係参加人全体の予算の一部を構成し、利害関係参加人の予算は、地方組織の予算を含めて利害関係参加人の本部が統括している。
b 地方組織の人事
[74] 利害関係参加人では、その地区、教区及び教会の各責任者である地区長、教区長、教会長及び副教会長を務める聖職者を「牧会者」とし、牧会者の資格要件として、本部による人事異動命令に従うことが定められており(牧会者規程2条1項、30条)、本部は、地方職員の人事権を有し、例年、当該権限に基づき人事発令を行っている。
c 地方組織の業績評価
[75] 利害関係参加人の報告によれば、利害関係参加人は、地方組織の業績評価に当たって、KPI(重要業績評価指標)を採用しているところ、特に、地区、教区、教会等の活動に係る法令遵守に関しては、法務局が策定するKPIを採用して評価しており、地方組織の活動について、本部が業績評価を通じて管理する体制を採っているとされている。

ウ 利害関係参加人の収支及び財政規模等(報告書③〔第7の1〔17頁~〕、別紙7~別紙9〕、甲A2、B5の26、B6の2の7)
[76] 利害関係参加人の会計年度は、毎年4月1日から翌年3月31日までであるところ(規則27条)、平成27年度から令和4年度までの8会計年度における収支の概要は、別紙1「収支一覧表」記載のとおりであり、次の点を指摘することができる。
[77](ア) 利害関係参加人の平成27年度から令和4年度までの平均収入は年間約409億円、平均支出は年間約341億円である。
[78](イ) 利害関係参加人の収入は、ほぼ全て(99%以上)を信者から献金によっており、この他に預金利息等の僅少な財務収入がある。また、利害関係参加人の支出は、布教費、教会運営費、海外宣教援助費等といった宗教活動支出のほか、固定資産購入等の財務支出や寄付金等の特別支出がある。
[79](ウ) 平成27年度から令和3年度までは、収入は増加傾向、支出はほぼ横ばいで推移し、次期繰越金が毎年度発生し、資産(主に現預金)が積み上がる状況となっていた。令和4年7月に本件銃撃事件が発生したところ、令和4年度は、収入及び支出ともに大きく減少した(収入は前年度から146億円減〔前年度比29%減〕、支出は前年度から42億円減〔前年度比11%減〕)。
[80](エ) 本件銃撃事件の前会計年度(令和3年度)の収支等についてみると、収入は約500億円(うち約499億円が信者からの献金)、支出は約369億円である。
[81](オ) 令和3年度の次年度繰越金は約820億円、令和4年3月末の総資産は約1136億円であり、この総資産のうち現預金が820億円を占めている。
ア 利害関係参加人の信者による物品の販売(甲B1の42〔49頁~〕、B13〔の2、7〔108頁、115頁〕〕、報告書①〔第5の1〔13頁~〕〕)
[82] 利害関係参加人の信者は、昭和46年、高麗人参茶及び高麗大理石壺の販売等を業とする幸世商事株式会社を設立し、その後、昭和48年から昭和50年頃にかけて、全国を6か所の販売エリアに分ける形で、同社の関連販売会社が順次設立されるとともに、各販売会社の下には特約店が設立され、全国に販路が展開されていった(報告書①〔14頁、15頁〕参照。幸世商事株式会社は、後に商号を「世界のしあわせ株式会社」、「株式会社ハッピーワールド」に順次変更しているところ、以下、商号変更の前後を問わず「ハッピーワールド」という。)
[83] ハッピーワールドは、大韓民国から、高麗人参茶、高麗大理石壺、多宝塔(同国の世界遺産である仏国寺を模した工芸品)等を輸入しており、これらの商品は、各販売会社から特約店を通して委託販売員によって販売されており、また、委託販売員は、印章の販売も行っていた。
[84] 利害関係参加人の機関誌である「世界日報」において、昭和49年、広報委員長名で「教会の活動方針」とのコラムが掲載されているところ、伝道活動の方針や具体的手法についての記述に続き、マナと呼ばれる高麗人参関連の商品の販売に関して、
「マナ販売についても今まで以上の努力が傾注されなければならない。《略》マナ販売のみでなく伝道もしなければならないのである。むしろ伝道した基盤の上にマナを販売することが望ましいパターンである。」
などと記述されており,マナと呼ばれる高麗人参関連の商品の販売及びこれと併せての伝道活動が推奨されている。

イ 霊感商法の社会問題化(報告書①〔第5の1〔13頁~〕〕)
[85] 昭和54年頃以降、利害関係参加人の信者による物品販売行為につき、先祖の霊が苦しんでいると告げられたり、先祖の因縁を説かれたりして、高価な印章、壼、高麗人参茶、多宝塔等を購入させられたなどとして、多数の者が、国民生活センター、各地の消費生活センター及び各地の弁護士会に苦情や被害申告を寄せるようになり、このような販売手法は、一般に「霊感商法」と呼ばれ、社会問題となった。

ウ 社会問題化当時の利害関係参加人の信者の言動等
(ア) ハッピーワールド及び利害関係参加人の幹部の言動(甲B1〔の44、45〔6頁、10頁、21頁~23頁〕〕、B13の7〔110頁、118頁〕)
[86] 利害関係参加人の機関誌である「世界日報」では、昭和53年、「年頭のあいさつ」との記事において、利害関係参加人の当時の会長であった久保木修己の挨拶文に続き、「本部役員のあいさつ」の中で、ハッピーワールドの当時の社長であったCが「局長」の肩書で挨拶文を投稿することがあった。
[87] 利害関係参加人の昭和57年当時の副会長であったDは、同年、信者に対する年頭の挨拶で、
「今までの我々の実績は個人の実績です。頑張った、奇蹟が起こった、多宝塔が売れた、これも実績ですよ、偉大な。」、
「今までの教会時代から、教会活動以上に、経済活動時代に入るわけです。」、
「教育、経済はエバ国家だと、伝道は韓国、経済教育は日本と、そうなってくるんです」、
「教会、渉外、事業。だから、完全にこれを一元にしてやって行く。」、
「日本の場合は事業が主体で、教会が従でしょ。」、(欧州の例を挙げつつ、)「これは完全に同じです。日本もそうでしょ。昼間経済やって、夜伝道せよと、その合間に渉外やれと、こういう意味ですよ。」
などと述べ、多宝塔の販売を実績と評しつつ、伝道活動と物品販売活動を一元化して行っていく旨を発言している。
(イ) 利害関係参加人の信者による刑事事件(甲B1〔の39〔25頁、80頁〕、49、50〕、B12〔の2、3〕、E33、報告書⑫〔別紙5〕及び同別紙に掲記の証拠)
[88] 青森地方裁判所弘前支部は、昭和59年1月、利害関係参加人の信者であった被告人3名に恐喝罪の有罪判決(いずれも懲役2年6月、執行猶予5年)を宣告した。同判決における罪となるべき事実は、要旨、被告人3名が、ほか数名と共謀の上、被害女性の家庭が不幸続きであることを知るや、これを利用して同女から金員を喝取しようと企て、被告人の1名が、ホテルの一室に連れ込んだ同女に対し、
「堕胎した子や病死した前夫の霊が苦しんでおり、これを成仏させなければ、現在の夫との間に生まれた子に大変なことが起こる。成仏させるために財産を出すように。」
といった旨を繰り返し申し向け、また、他の被告人2名が、堕胎した子や病死した前夫の霊が乗り移ったと称して同女に殴り掛かったり、同女が部屋から脱出しようとすると出入口に立ち塞がったりするなどして執拗に同女を脅迫して金員の交付を要求し、同女を畏怖させて現金の交付を約束させた上で同女から現金1200万円の交付を受けて喝取したというものであった。
[89] 上記刑事事件の被告人は、利害関係参加人の信者であった特約店の販売員であり、その捜査過程で押収された販売マニュアルには、32件の民事判決に係る審理の際に利害関係参加人の信者による物品販売行為の内容等を立証するために証拠として提出された、多数の販売マニュアル類に記載されたのと同一又は類似する用語及び手法が記載されていた。
(ウ) 霊感商法をめぐる情勢(甲B1〔の52~56〕、B13〔の7〔100頁~〕、8〔69頁~〕〕、B15の3の2、乙F96〔10頁~〕、報告書①〔第5の1〔13頁~〕〕、報告書⑫〔第2の1〔2頁〕、2の2(5)、(6)〔8頁~〕〕)
a 行政機関の対応等
[90] 利害関係参加人は、昭和62年2月、東京都からの要請を受け、霊感商法問題に関して東京都の総務局行政部指導課を訪れた際、信者に対して指導をするようにとの指示を受け、同年3月、ハッピーワールドに対して委託販売に係る申入れを行った。ハッピーワールドは、同年4月、国民生活センター、当時の厚生省及び通産省に対し、「いわゆる『霊感商法』といわれる誤解を生ずるような物品販売は一切禁止することを昭和62年3月末をもって弊社関連業者に徹底通知」した旨などを文書で報告するとともに、同年5月、利害関係参加人に対し、これらの顛末等を報告する内容の文書を送付した。
b 弁護士による連絡会の発足等
[91] 霊感商法に関し、昭和62年5月、全国霊感商法対策弁護士連絡会が発足し、次いで、日本弁護士連合会は、同年7月に意見書「霊感商法被害実態とその対策について」を、昭和63年3月に意見書「霊感商法被害実態とその対策について(その2)」を公表した。
[92] このうち、昭和62年7月に公表された上記意見書は、都道府県の各消費生活センター及び各地の弁護士会に寄せられた相談の申告等を踏まえて作成されたものであり、主として利害関係参加人の信者を念頭に置きつつ、霊感商法の手法の典型的な例として、
① 販売員が戸別訪問を行い、又は街頭アンケートであるなどとして声を掛け、
② 家族関係、財産関係、病歴といった自身や身内の不幸等についての不安や悩みを聞き出し、
③ それらの不幸等の原因は先祖の霊の因縁等によるものである旨を述べ、
④ 不幸を免れるためには商品を購入する必要があるなどと告げ、
⑤ 複数の者が役割分担をしながら、因縁や不幸を告げて殊更に不安をあおるなどして、執拗に物品の購入を迫る
といった手法を指摘しているほか、
⑥ このような手法が、類似のマニュアルの利用などによって、全国的にほぼ同様の態様で行われている旨
などを指摘している。同意見書によれば、昭和55年から昭和62年4月末までに、都道府県の各消費生活センター及び各地の弁護士会に寄せられた相談の申告者及び申告額を合計すると、約1万4600名、約317億円に上るとされている。
c 霊感商法についての相談件数の減少
[93] 上記a及びbの情勢の中、霊感商法についての被害相談等の数は、昭和62年頃から減少するようになったものの、その後も被害相談等は続いていた。また、昭和63年3月に公表された日本弁護士連合会の上記意見書「霊感商法被害実態とその対策について(その2)」によれば、販売手法や商品に変化があった(例えば、宗教的人間関係を形成した上で行われる、展示会等を利用する形での販売手法等も増加している、弥勒仏、宝石、毛皮、絵画、カーペット等といった従来と異なる商品も販売されるようになっている、などの変化があった)旨が指摘されている。
ア ビデオ受講施設の展開
[94] 上記のとおり、霊感商法は、昭和54年頃までには社会問題化していたところ、利害関係参加人の信者は、昭和57年頃から、利害関係参加人の教理を教えるビデオを視聴するための施設としてビデオセンターといった名称のビデオ受講施設を設置するようになり、次第に、全国にこのようなビデオ受講施設等が多数設置され、これらの施設等を拠点として組織的に伝道教育活動が行われるようになった。
[95] 利害関係参加人は、昭和57年10月、ビデオ受講施設の開設について東京都に相談した際、東京都から、ビデオ受講時に受講生から料金を徴収することは収益事業とみなされるため行ってはならないといった指導を受けたことがあった。

イ 32件の民事判決
[96] 利害関係参加人の元信者は、昭和62年3月、利害関係参加人等に対して損害賠償を求める訴訟を札幌地方裁判所に提起した。元信者は、同訴訟において、元信者が違法な勧誘・教化活動により利害関係参加人に入信させられ、霊感商法や偽装募金などの違法行為への従事、無償の労働又は献金や物品購入などの出捐につき強制させられたと主張していた。
[97] その後、利害関係参加人の元信者が、利害関係参加人の信者等による違法な献金勧誘等行為により損害を被ったと主張して、利害関係参加人等に対して損害賠償を求める民事訴訟を各地で提起した。
[98] そのような中、福岡地方裁判所は、平成6年5月、利害関係参加人の信者による献金等の勧誘につき不法行為が成立するとした上で利害関係参加人の損害賠償責任を認める全国で初めての判決をした。同判決は、利害関係参加人の使用者責任を認めて、利害関係参加人に対し、原告2名に対する合計3760万円の支払を命ずるものであり、平成8年2月、福岡高等裁判所が利害関係参加人の控訴を棄却し、平成9年9月、最高裁判所が利害関係参加人の上告を棄却し、確定した。
[99] 上記の福岡地方裁判所による判決の後、利害関係参加人の損害賠償責任を認める民事判決が続くようになった(32件の民事判決)。
[100] 利害関係参加人の信者が経営する複数の物品販売店に関して、平成19年以降、販売店の客に対し、当該客又はその親族の不幸と先祖の因縁等を結び付けて、不幸を免れるためには印章等の物品を購入する必要があるなどと申し向けて売買契約の締結を執拗に迫り威迫困惑させるなどしたという特定商取引法違反の刑事事件が複数件発生し、利害関係参加人の信者が逮捕され、利害関係参加人の施設に対して強制捜査が行われるなどした。そして、これらの刑事事件につき、平成19年12月から平成21年11月にかけて、それぞれ別の物品販売店に関する4件の刑事事件の裁判において、物品販売店の経営者等である利害関係参加人の信者が刑罰(罰金刑又は執行猶予付き懲役刑)を科された(前提事実(3))。
[101] これらの刑事事件の概要等は、次のとおりである。

ア 印章販売店E(甲B12〔の39、40〕、E34)
[102] 沖縄簡易裁判所は、平成19年12月、利害関係参加人の信者であった被告人3名に対し、特定商取引法違反の罪で罰金の略式命令を発した。同略式命令における罪となるべき事実は、要旨、沖縄県に所在する印章販売店であるEの代表者として同店を経営する被告人、同店で店長として実質的に同店を経営する被告人、同店従業員である被告人の合計3名が、同店において、勧誘目的であることを告げずにビラを配布して同店に来訪するように要請し、同ビラを見て同店に来店した者に対し、従業員である被告人が、
「家庭運が弱いです。交際していた男性との別れ話は、それが原因ですよ。いい家庭を持つことができないですよ。今年から来年にかけて運がすごく悪い年なんです。今よりも悪くなります。」、
「特別な印鑑を持って、それを押すことによって、運勢は上がっていくんですよ。」
などと申し向けるなどして、印章の売買契約の締結を長時間にわたって執拗に迫り、もって訪問販売に係る売買契約を締結させるため、人を威迫して困惑させたというものであり、罰金額は不明である。

イ 株式会社F(甲B12〔の41~45、65の2〕、E35)
[103] 新潟簡易裁判所は、平成20年1月、利害関係参加人の信者であった被告人3名に対し、特定商取引法違反の罪で罰金の略式命令を発した。同略式命令における罪となるべき事実は、要旨、新潟市内に本店を置き、屋内装飾品・仏具等の販売及び易断の提供の訪問販売等を業とする株式会社Fの代表取締役として業務全般を統括管理する被告人及び同社の従業員である被告人2名の合計3名が、それぞれ別の機会に別の客2名に対し、同社内において、
「嫁いだ先で苦労をされたね。旧姓は凶数なので、女性が苦労する数なんですよね。……来年は、北の運気で真冬の時期になるので、急に運気が停止し、1年間心身ともに忍耐を強いられる年回りになります。数珠が……お守りになります。翡翠の念珠は、どうですか。」
などと、屋内装飾品及び仏具の売買契約の締結を長時間にわたって執拗に迫り、もってそれぞれ訪問販売に係る売買契約を締結させるため、人を威迫して困惑させたというものであり、罰金額は、代表取締役である被告人及びほか1名の被告人につきそれぞれ罰金50万円、その余の被告人1名につき罰金40万円であった。

ウ 有限会社G(甲B12の65の1 E36、報告書⑫〔第2の1〔2頁〕、2の2(5)、(6)〔8頁~〕、別紙5〕及び同別紙に掲記の証拠)
[104] 福岡簡易裁判所は、平成21年5月、法人である被告人(有限会社G)及び利害関係参加人の信者であった同社の販売外交員である被告人に対し、特定商取引法違反の罪で罰金の略式命令を発した。同略式命令における罪となるべき事実は、要旨、福岡市に本店を置き、半貴石、美術工芸品等の訪問販売等を業とする法人(有限会社G)である被告人及び同社の販売外交員である被告人につき、販売外交員である被告人が複数回にわたり、訪問した住宅の住民1名に対し、
「お母さんの先祖が悪いことをして、その悪い先祖の霊が家に憑いてるんだよ。」、
「結婚しないことは、罪で、地獄に行くことになるの。あなたは、そういう罪を犯しているのよ。でも、こうした問題を解決して、運気を良くする水晶があるの。あなたの場合、命と引換えるつもりで家に置かないとね。お姉さんのために、今、お金を出すべきよ。」
などと、先祖の悪霊等の影響で地獄に行く運命にあり、美術工芸品を購入すれば、その運命を逃れられる旨などを申し向けるなどして、美術工芸品の売買契約の締結を執拗に迫り、もって訪問販売に係る売買契約を締結させるため、人を威迫して困惑させたというものであり、罰金額はそれぞれ罰金50万円であった。
[105] 株式会社Fに係る捜査においては、関係先から、販売マニュアル(姓名鑑定から販売につなげていく詳細な手法や、利害関係参加人の教理に関する内容が記載されたもの)が押収されたが、有限会社Gに係る捜査においても、関係先から、上記販売マニュアルと完全に同一の販売マニュアルが押収されていた。また。これらのマニュアルには、32件の民事判決において利害関係参加人の信者による物品販売行為の内容等を立証するために証拠として提出された、昭和50年代後半頃から用いられてきた多数の販売マニュアル等に記載されたのと同一又は類似する用語及び手法が記載されていた。

エ 有限会社新世(甲B1〔の62~65〕、B12〔の36~37、46~48、55~56、58、66、69、72〕、E37、H10の5)
[106] 東京都に本店を置く有限会社新世は、平成21年2月、特定商取引法違反の被疑事実でその事務所等の捜索を受け、同年6月、同社の代表取締役社長等の幹部が逮捕されたほか、利害関係参加人の関連施設が捜索された。
[107] 東京地方裁判所は、平成21年11月、特定商取引法違反の罪で、法人である被告人(有限会社新世)及び利害関係参加人の信者であった同社の役員である被告人両名に対し、有罪判決を宣告した。同判決における罪となるべき事実は、要旨、東京都渋谷区所在の建物を営業所とし、印章等の販売等を業とする法人(有限会社新世)である被告人、同社の代表取締役社長として業務全般を統括する被告人及び同社の取締役兼営業部長として営業部門を総括する被告人につき、同社の役員である被告人両名が、同社の販売員と共謀の上、それぞれ、別の機会に街頭で呼び止めた通行人5名を同営業所に同行させ、同所において、
「先祖の人たちは、たくさんの人を殺してきていますね。その因縁が、あなたの家に降りかかっています。」、
「先祖の因縁を振り払うためには、あなたの身分にふさわしい印鑑を持った方がよろしいかと思います」、
「印相さえよくすれば、先祖の因縁を振り払うことができます」
などと、同人らの悩みや不幸が先祖の因縁等のためであり、印章を購入すれば、先祖の因縁を払い、あるいは運勢を良くすることができる旨などをそれぞれ執拗に申し向けるなどして、印章の売買契約を迫り、同人らをそれぞれ威迫して困惑させたというものであった。
[108] 上記判決は、法人である被告人(有限会社新世)に対して罰金800万円の刑を、代表取締役である被告人に対して懲役2年(執行猶予4年)及び罰金300万円の刑を、取締役兼営業部長である被告人に対して懲役1年6か月(執行猶予4年)及び罰金200万円の刑を、それぞれ科すものであり、量刑の理由の中では、被害者5名に対して合計376万円を支払わせて印章を購入させたこと、同社の役員及び販売員らの全員が利害関係参加人の信者であること、印章販売の手法が、信仰と混然一体となっており、それがマニュアルや講義によって多数の販売員らに周知され、販売員らはこのような販売手法が信仰にかなったものと信じて強固な意志で実践していたこと、利害関係参加人の信者を増やすことをも目的として違法な手段を伴う印章販売が行われていたことが説示された。
[109] また、上記判決の罪となるべき事実では、被告人らが被害者らに対し、昭和39年に発生した幼児に対する身代金目的の誘拐殺人事件の犯人には同人の先祖が上記幼児の先祖に殺されているといった因縁(殺傷因縁)がある旨を申し向けて威迫をしていることが認定されているところ、有限会社新世の代表取締役は、上記幼児に係る因縁を申し向けて勧誘を行う手法や物品販売を通じて利害関係参加人の布教を図る内容が解説されたDVDに出演したり、利害関係参加人の信者に対してそのような内容の物品販売の講義を行ったりしていた。
ア コンプライアンス宣言及びその発出当時の出来事(前提事実(4)、甲A6~8、B1〔の62~63〕、B13の9、報告書⑩〔別紙1、別紙2〕、報告書⑪〔別紙1〕及び甲E~Gのうちこれらの別紙に掲記の「判決番号」等に対応するもの、報告書⑭〔別紙1〕及び同別紙に掲記の証拠、本文に掲記の証拠)
[110](ア) 利害関係参加人については、コンプライアンス宣言の出される前年の平成20年以前において、21件の民事判決で117名の原告につき、利害関係参加人の損害賠償責任が認められており、認容額の合計額は約6億3700万円であった。これに、平成20年以前に成立した訴訟上の和解及び裁判外の示談についての原告及び被害申告者の人数並びに和解金及び示談金の額を合わせた3つの類型(民事判決、訴訟上の和解及び裁判外の示談)の合計人数は879名、合計額は約99億8300万円となる。
(民事判決については、32件の民事判決のうち、一審判決の言渡日が平成20年以前のものを対象としており、報告書⑩の別紙1「判決一覧表」の判決番号1から21までがこれに該当する。認容額については、同一覧表の判決番号1から21までの認容額の欄の金額を合計しており、上級審で訴訟上の和解が成立した6件の一審判決〔判決番号2、10、12、14、16、20〕での認容額は除いている。また、上記6件の一審判決に係る合計29名については、訴訟上の和解が成立した人数との間で重複のないよう計上している。)
[111] また、平成19年以降、利害関係参加人の信者が経営する物品販売店に関して、特定商取引法違反の刑事事件が連続して発生しており(上記(4))、有限会社新世は、平成21年2月、特定商取引法違反の被疑事実でその事務所等の捜索を受けた。
[112](イ) 利害関係参加人は、平成21年2月13日、「全国責任者会議における『教会指導者に対する注意と指導』」との公文を発出した。同公文は、教会指導者(地区長、教区長、教域長及び教会長)に対し、信者の活動に関わる厳重注意と指導の徹底に合わせて、違反があった場合の教会指導者に対する具体的処分に言及するなど、次の①から③までの点を通知するものであった。
① 教会指導者が信者の指導において、物品販売活動との関係で、関わりを問われるような誤解や嫌疑を受けることのないように厳重に注意すること
② 信者が関わる様々な社会における活動が社会的問題や事件として疑われるようなことのないように、信仰上において正しい指導を徹底するよう努めること
③ 今後、上記①及び②に違反するような事実が明らかになった場合には、利害関係参加人の本部として、教会指導者に対して処分等を含めた取組をすること
[113](ウ) 利害関係参加人は、平成21年3月、「信者らの献金奨励・勧誘活動及びビデオ受講施設等における教育活動等に対する指導について」との公文を発出した。同公文は、全国の教会指導者(地区長、教区長、教域長及び教会長)に対し、次の①から⑥までの点を信者に指導監督することなどを求めるものであった。
① 献金奨励及び勧誘活動につき、先祖の因縁等を殊更に結び付けた行為をしないこと
② 信者への献金奨励及び勧誘行為は飽くまでも信者本人の信仰に基づく自主性及び自由意思を尊重し、信者の経済状態に比して過度な献金とならないよう十分配慮すること
③ 献金は、統一原理を学んだ者から、献金先が利害関係参加人であることを明示して受け取ること
④ 上記①から③までについて、教会指導者が責任を持ち、信者の献金奨励及び勧誘行為において、社会的な批判を受けるような行為が行われないよう指導監督すること
⑤ ビデオ受講施設等における教育活動等につき、統一原理を用いる場合、勧誘の当初からその旨明示すること
⑥ 法令遵守(コンプライアンス)として、特定商取引法を始めとする法令違反との批判を受けないよう配慮し、勧誘に際しては、「威迫・困惑させた」「不実を告知した」と誤解されるような行為がないように注意すること
[114] 上記公文は、利害関係参加人の信者の献金勧誘等行為につき利害関係参加人に損害賠償責任を認めたそれまでの民事判決において不法行為の成否の判断に当たって繰り返し指摘されてきた要素に触れつつ、上記(4)の刑事事件で問題となった特定商取引法違反(威迫・困惑)に言及する内容となっていた。
[115](エ) また、利害関係参加人は、平成21年中に、これらの公文以外にも、信者の法令遵守に係る文書を複数発出した。
[116] このうち、同年6月に発出された「KPI報告について」と題する公文は、教会指導者(地区長、教区長、教域長及び教会長)に宛てて、全国の状況を総合的に評価するため、KPI(重要業績評価指標)を導入することになった旨を通知するものであり、併せて、各教区別の前月のKPIを文書送付日の当日中に報告することを依頼するものであった。
[117](オ) 利害関係参加人は、平成21年6月23日、責任役員会及び評議員会議において、残余財産の帰属先について、北海道帯広市に主たる事務所を置く宗教法人である天地正教とする決議を行った(規則30条。法50条参照)。天地正教は、昭和62年12月に設立され、その目的は、「この法人は、弥勒菩薩を本尊として、天地正教の教義をひろめ、儀式行事を行い、及び信者を教化育成することを目的とし、その目的を達成するために必要な業務を行う。」とされており、32件の民事判決の中で献金先等として認定されたことのある宗教法人である(甲A2、B1〔の27の7、35~36〕、E14〔69、70頁〕、E28の1〔104頁〕、報告書⑦〔第2の1〔12頁~〕〕)。

イ コンプライアンス宣言後の施策(報告書⑭〔第1の2、3〔2頁~〕、別紙1〕)
[118] 利害関係参加人は、コンプライアンス宣言後も、同宣言の延長線上にあり、同宣言を拡充する趣旨の公文等を逐次発出しており、平成27年に利害関係参加人の名称が現在の世界平和統一家庭連合に変更されるに際しては、監督官庁である文化庁から、名称を隠しての宗教活動を行わないよう厳重に指導がされていたことなどを受け、教会指導者等に対し、従前の取組の徹底に加え、教会施設の看板等や、伝道で使用するビラ,パンフレット、受講申込書類等に、「旧世界基督教統一神霊協会」などと、旧名称を明記するよう求める公文を発出している。

ウ 利害関係参加人におけるコンプライアンス宣言前後の予算の変動状況(甲A2、報告書③〔別紙3〕)
[119] 利害関係参加人の毎年度(毎年4月1日から翌年3月31日まで)の予算は、責任役員会で承認されているところ、
① 平成20年度の予算は、コンプライアンス宣言前の同年2月19日に承認され、信者献金による収入を545億円と計上しており、
② 平成21年度の予算は、同年2月10日に承認され、信者献金による収入を525億円と計上しており、
③ 平成22年度の予算は、同年2月26日に承認され、信者献金による収入を478億円と計上しており、
信者献金の予算計上額(見込み額)については、同宣言の前後で減少しているものの、大きな減少はない。

エ 法令遵守に係る事業計画等の内容(甲B5の23、B13〔の13~27〕、B14〔の15~25〕、報告書⑭〔第1の5〔9頁〕、別紙2〕のほか、本文に掲記の証拠)
[120] 利害関係参加人は、本件報告徴収に対し、平成21年のコンプライアンス宣言以降、法務局が中心となり法令遵守の徹底を行っており、法務局では、毎年年初に事業計画を立ててその年の達成目標を決め、責任役員会に報告し、その承認を受けた上で、現場の法務部長に伝達している旨を回答した。
[121] 利害関係参加人の本部において法令遵守を所管する部局は法務局であり、法務局が作成し、傘下の各単位の法務担当責任者との定例の会議等において用いられた事業計画、報告等に係る会議資料(以下「法務局会議資料」という。)には、コンプライアンス宣言及びその後の施策の効果及び達成状況、未達の場合の要因の分析及び対策等が記載されている。これに関連して、複数の法務局会議資料において、訴訟提起の件数の減少とともに、通知書の送付件数の減少も重要な数値目標とされていて、通知書送付に至る前段階における信者間での解決や、問題が大きくなる前段階での本部等への相談が推奨されており、また、数値目標の記載に関連して、通知書の送付の前段階でのクレーム数又は事前解決数が相当数あることを示すとともに、これらの数が通知書の送付件数を上回っていることをうかがわせる内容の記載がある(甲B5の23、B13〔の18、19〕参照)。
[122] 同様に、複数の法務局会議資料において、コンプライアンス宣言以降、信者の献金の意思を確認するためであるとして、合意書面や念書等による記録化が推奨されている。この点に関し、本件の記録上、同宣言以降、利害関係参加人に対して裁判上又は裁判外において金銭請求を行わない旨を約束する旨の書面(合意書面及び念書等)が作成された事案を少なくとも7件確認することができるところ、このうち6件は、これらの書面が作成された後に、判決において効力を否定されるか、訴訟上の和解又は裁判外の示談において相当額の金銭支払を含む合意が成立するかしている(甲E31、32、39、F100、G531、H18、125、乙B9〔の10~12〕)。
[123]ア 利害関係参加人は、平成27年8月26日、文部科学大臣から、名称を「世界平和統一家庭連合」に変更する規則変更の認証を受けたところ、その際、監督官庁である文化庁の宗務課長は、利害関係参加人に使用者責任を認める民事判決が続いている状況等を踏まえ、利害関係参加人に対し、過去の判決の指摘を踏まえて利害関係参加人の運営を改善するよう口頭での指導を行った。

[124]イ 利害関係参加人は、平成27年9月、「家庭連合出帆」本部会議において、「家庭連合としての出帆に際して。名称変更後における我々の運営と活動の基本方針」との方針を周知した。同方針には、基本方針として、次の内容が挙げられている。
① 直接伝道:伝道で「正体隠し」と批判を受けることのないように
・家庭連合の名前を当初から証して(あかして)伝道する。
② 家系図による「因縁話」の禁止:確定判決で認定された状況を解消する
・家系図による「因縁トーク」で教育、献金勧誘をしない。
③ その他
・物販との関わりを持たない。関わりを疑われるようなことがあってはならない。
・高齢者の献金については、本人の意思能力と信仰、生活能力、家族状況などに配慮して、無理な献金による問題が生じないように注意する。

[125]ウ また、利害関係参加人は、平成27年12月、信者が任意に運営する受講施設につき、利害関係参加人の管理下に置くための方策として、一定条件を満たすものを教会公認の伝道所として認定する「認定伝道所制度」を導入することを通知した。本件報告徴収に対する利害関係参加人の報告によれば、その後、信者らの任意の受講施設から利害関係参加人の伝道所への転換を完了し、全ての伝道所において、利害関係参加人の管理の下で伝道活動が行われるようになったとされている。
ア 国の施策及び弁護団の発足等
[126](ア) 令和4年7月8日に本件銃撃事件が発生し、その直後から、利害関係参加人の活動が社会的に注目される状況となり、消費者庁において、同年8月、霊感商法等に関するこれまでの消費者庁の対応を検証するとともに、消費者被害の発生及び拡大の防止を図るための対策等を検討するため、「霊感商法等の悪質商法への対策検討会」の開催が決定され、審議を経て、同検討会の報告書が取りまとめられた。また、法務省において、同月、悪質商法などの不法行為の相談及び被害者の救済を目的として、関係省庁間で情報を共有するとともに、被害者への救済機関等のあっせん等につき関係省庁による連携した対応を検討するため、法務大臣の主宰により、「『旧統一教会』問題関係省庁連絡会議」が設置された。
[127](イ) また、全国霊感商法対策弁護士連絡会(昭和62年発足。上記(2)ウ(ウ)b)は、令和4年11月、「今国会での被害者救済に向けた法整備を求める声明」を発表し、また、利害関係参加人に対し被害回復を求めて交渉及び訴訟などに取り組むことを目的に掲げた全国統一教会被害対策弁護団が発足した。
[128](ウ) 立法分野においては、令和4年12月10日、法人等による寄附の不当な勧誘を禁止するとともに、当該勧誘を行う法人等に対する行政上の措置等を定めることにより、法人等からの寄附の勧誘を受ける者の保護を図るため、「法人等による寄附の不当な勧誘の防止等に関する法律」が成立し、霊感等による知見を用いた勧誘による消費者被害の深刻化に対応するため、同日、「消費者契約法及び独立行政法人国民生活センター法の一部を改正する法律」が成立した。
[129](エ) 全国統一教会被害対策弁護団は、令和5年2月、利害関係参加人に対して、集団交渉等の申入れを行う通知書(第1次)を送付し、以降、同年9月までの間に、第2次から第5次まで、合計124名の元信者についての通知書を送付した。なお、これらの通知書における請求額の合計額は、約39億円である。

イ 利害関係参加人の対応等
[130] 利害関係参加人に対して損害賠償を請求する民事訴訟及び裁判外の示談交渉等においては、利害関係参加人から元信者に対して献金の時期及び額の分かる記録(領収証等)が交付されていないことから、銀行残高やメモ類等から推測を行うことが長年にわたって多くみられていた(甲E1~32、F1~100、G1~971)。
[131] 利害関係参加人は、本件銃撃事件後の令和4年9月20日、「信者への献金奨励は《略》信者の経済状況に比して過度な献金とならないよう、十分配慮しなければならない。」などの内容が記載された「再送 教会改革の方向性に関して」を発出し、さらに、同年12月頃、「献金を受領する際のガイドライン」を策定して、月収の10分の3以上の献金を受領する際などには、献金者に対して「献金確認書」を用いて確認を行い、その結果を記録するとともに、当該献金を受領した際には「献金受領証」の発行を行うとし、さらに、令和5年1月頃、「教会改革のためのガイドライン(基本方針)」を策定した。
[132] 上記の「教会改革のためのガイドライン(基本方針)」には、「献金奨励の際の禁止事項」として、次の①から⑤までの内容が記載されている。
① 家系図・霊能力等を用いた献金奨励の禁止
② 献金のための新たな借入れの禁止
③ 居住建物、事業用建物等の売却による献金奨励の禁止
④ 認知症及び精神疾患の者からの献金受領に関して
 認知症を患っている、又は、その疑いがある者からの献金受領はしないようにする。また、精神疾患を抱えている者からの献金に関しても、基本的には受領しないようにする。ただし、症状の度合いが軽く、家族も了承している場合であり、かつ、少額である場合に関しては、受け取ることもできる。
⑤ 献金受領後の念書等の取り交わしに関して
 献金した者が、その献金が自己の意思に基づく献金であって、返還を求めるなどの意思がないことを記載した念書等を作成することは行わないようにする。
[133] 文部科学大臣は、令和4年11月21日以降、7回にわたり、法78条の2第1項に基づき利害関係参加人に対して報告を求めた(本件報告徴収)。
[134] 本件報告徴収及びこれに対する利害関係参加人の回答のうち、KPIの導入実施状況、法令遵守違反に対する指導改善措置の有無及び法令遵守違反に対する制裁等の有無に係る部分の内容等は、次のアからウまでのとおりである。

ア KPIの導入実施状況(甲B1の33、B4の6、B14〔の3、13〔209頁〕、14〔22頁〕〕、C2〔の4、5〕、C4〔の4、5〔16頁〕〕、C6〔の4、5〔10頁〕〕、C7〔の4、5〔10頁〕〕、報告書⑭〔第3の2〔11頁~〕〕)
(ア) KPIに係る質問の内容及び意図等
[135] KPI(重要業績評価指標)とは、一般に、「組織のビジョンの実現、組織目標の達成及び戦略実行の成功確保のための業績指標」などと定義されている。そして、本件報告徴収手続における利害関係参加人の回答によれば、利害関係参加人は、地方組織(地区、教区及び教会等)の活動に係る法令遵守に関し、法務局の策定したKPIを採用しているとされている。
[136] 文部科学大臣は、本件報告徴収において、利害関係参加人の設定したKPIが自らの設定した目標達成のために有用であるかどうかなどを検討するためには、①利害関係参加人の設定した目標等、②利害関係参加人が目標達成のために決定的に重要なものとして選出した指標、③実際に利害関係参加人で起きる事象と当該指標への当てはめや評価方法、④利害関係参加人の目標と方針が利害関係参加人の一部門である法務局に展開された経緯や状況、⑤KPIの具体的な運用状況、について把握することを要するとの理解の下で、上記①から⑤までの諸点等について具体的に回答し、これらに係る資料を提出するよう繰り返し求めた(第2回、第5回~第7回報告徴収)。
(イ) 利害関係参加人の回答状況
[137] これに対し、利害関係参加人は、第2回報告徴収における回答として、
「コンプライアンス宣言を受けての法人の改革は、法人組織を客観的に評価することにより透明性を確保し、組織改善を行うため『KPI』による評価方法を導入し、現場教会のコンプライアンス意識を徹底すると共に、客観的数値の報告を求めました。教会ごとにそれぞれの業務を可視化し、それを本部で検討し現場にフィードバックすることにより組織改革を行うもので、責任者会議や法務部長会議でその内容がフィードバックされ、意識改革と組織改革が進みました。」
との説明をしたものの、文部科学大臣によるその後の複数回の質問に対し、既にした回答又は提出済みの資料で十分と考えるなどとの回答を繰り返した。
[138] 本件報告徴収に対して利害関係参加人が提出した資料の中には、KPIの算定基準及び集計結果が記載された表等が一部みられるものの、利害関係参加人の回答状況は上記のとおりであり、上記(ア)の①から⑤までの諸点についての具体的な回答はなく、説明資料も提出されていない。

イ 法令遵守違反に対する指導改善措置の有無(甲A7、B2の49、C1〔の4、5〕、C4〔の4、5〕、C5〔の4、5〔15頁〕〕、C6〔の4、5〔10頁〕〕、報告書⑭〔第3の4〔15頁~〕〕)
(ア) コンプライアンス宣言及びその後の施策(指導改善措置関連)
[139]a 利害関係参加人は、平成21年のコンプライアンス宣言において、公文を発出し、教会指導者(地区長、教区長、教域長及び教会長)に対し、利害関係参加人の信者の献金勧誘等行為につき利害関係参加人に損害賠償責任を認めてきた民事判決において不法行為の成否の判断に当たって繰り返し指摘されてきた要素に触れつつ、禁止される行為を具体的に挙げ、教会指導者が責任を持って信者を指導監督することを指示するなどしていた。また、利害関係参加人は、法令遵守につき、コンプライアンス宣言の後も、同宣言の延長線上にあり、同宣言を拡充する趣旨の公文等を逐次発出しているほか、法令遵守を所管する法務局では、毎年の事業計画の立案の際などにおいて、同宣言及びそれ以降の施策の効果及び達成状況、未達の場合の要因の分析及び対策の検討等を定期的に行っていた(上記(5))。
[140]b このような中、利害関係参加人は、平成24年4月、「コンプライアンス違反行為等に対するKPI評価による指導改善措置について」との公文を発出し、教会指導者に対し、「現場のコンプライアンス違反に対してKPI評価を通して是正改善措置を実施することとなりました」として、改善実施の方法につき、
① 「コンプライアンス違反」があった場合、法務局は事実調査をして責任役員会に報告の上、当該責任者に対して改善勧告書を送付すること、
② 改善勧告書を受けた責任者は、1か月以内に、改善計画書を提出した上、計画書の内容を実行しなければならないこと、
③ 改善計画書が期限内に提出されない場合や計画書に書かれたことが実行されないなどの場合は、改善がされるまで、問題の重要度に応じたKPIのマイナスポイントを与えられるという形で業務評価に反映すること
などを通知しており、また、上記①の「コンプライアンス違反」とされる内容について、コンプライアンス宣言において禁止された行為と同種の行為が、より具体的に定められていた。
(イ) 利害関係参加人の回答状況
[141] 平成24年4月に発出された上記(ア)bの公文によれば、「コンプライアンス違反」があった場合、法務局は事実調査をして責任役員会に報告するとされているところ、利害関係参加人は、第1回及び第4回報告徴収における回答を通じて、平成18年1月以降の責任役員会議事録を全て提出した旨を回答しているが、利害関係参加人が提出した上記議事録によれば、同月以降の責任役員会において、上記の「コンプライアンス違反」に関する報告は議題として上程されていない。
[142] 文部科学大臣は、本件報告徴収において、利害関係参加人に対し、上記(ア)a及びbの公文で言及された指導改善措置等につき、その有無及び具体的な内容について、2回にわたって回答を求めた(第5回、第6回報告徴収)。
[143] これに対し、利害関係参加人は、
「2009年のコンプライアンスに関する公文を発出して以来、常時、コンプライアンスの徹底を指導しているが、その記録は報告徴収①で報告した資料が全てである。」、
「常時、責任者や牧会者等の会議や現場スタッフらの集会、面談等でコンプライアンスの徹底を指導し注意してきたのは、これまでの資料で示したとおりである。特定の事案に対する改善指導、制裁措置の資料を提出していないから、“実績”がないということはない。」
などと回答しているところ、利害関係参加人が第1回報告徴収における回答の際に提出した資料を含め、本件報告徴収に対する回答の中には指導改善措置が行われたことを示す具体的な資料はなかった。

ウ 法令遵守違反に対する制裁等の有無(甲A5、9、B2〔の3、21、22〕、C1の5、C4〔の4、5〔6頁〕〕、C5〔の4、5〔15頁〕〕、C6〔の4、5〔10頁〕〕、C7〔の4、5〕、報告書⑬〔第6〔16頁~〕〕、報告書⑭〔第3の3〔14頁~〕〕)
(ア) コンプライアンス宣言及びその後の施策(制裁等関連)
[144] 利害関係参加人は、平成21年のコンプライアンス宣言において、公文を発出し、教会指導者(地区長、教区長、教域長及び教会長)に対し、信者の活動に関わる注意と信者への指導の徹底を指示しつつ、これに違反するような事実が明らかになった場合には、法人本部として教会指導者に対して具体的な処分等を含めた取組をする旨を伝達するなどしており、その後も、同宣言の延長線上にあり、同宣言を拡充する趣旨の公文等を逐次発出している(上記(5))。
(イ) 制裁等に係る規定の内容
[145] 利害関係参加人においては、その教会員(信者全般)につき、「この法人の定める規則・規程・方針等に従わないとき」、「故意・過失または怠慢により、教会活動において重大な失態があったとき」、「故意にこの法人の信用を損なうような行為をしたとき」等の場合には、除籍処分に処し、情状によって戒告・譴責・謹慎・降格等に処するなどといった、信者への制裁等についての定めを有しており、これらの制裁等は、利害関係参加人の責任役員会等の機関の意思決定(承認又は決定等)を通じるなどして行うとされている(教会員表彰懲罰規定3条~5条、13条、就業規則38条、41条、42条、牧会者規程59条参照)。
(ウ) 利害関係参加人の回答状況
[146] 利害関係参加人は、第1回報告徴収における回答において、平成18年2月から令和4年11月までの責任役員会議事録を全て提出した旨を回答している。これらの議事録によれば、利害関係参加人は、平成18年1月以降の責任役員会において、利害関係参加人の意思決定に従わなかった者等に対する教会員表彰懲罰規定に基づく除籍処分の制裁等が議題となった例が16回ある一方で、法令遵守違反について、同規定等に基づく制裁等に関し、責任役員会は開催されていない。
[147] また、文部科学大臣は、複数回にわたって(第5回~第7回報告徴収)、利害関係参加人に対し、法令遵守に関する自らの指針等に違反し又は不適切な献金勧誘等行為が行われたことを理由とする制裁等の有無・内容について質問を行ったところ、
「コンプライアンスに関する各規程の遵守徹底を常時、指導しているが、その記録は報告徴収①で報告した資料が全てである。」、
「常時、責任者や牧会者等の会議や現場スタッフらの集会、面談等でコンプライアンスの徹底を指導し注意してきたのは、これまでの資料で示したとおりである。特定の事案に対する改善指導、制裁措置の資料を提出していないから、“実績”がないということはない。」、
「信者の献金奨励行為に関して懲罰処分に及んだ事例はない。2009年のコンプライアンスに関する公文を発出して以来、信者に対して日常の活動において常に指導・注意を行っており、それは教会員表彰懲罰規定に定める手続によるものではない。」
などと回答しており、また、本件報告徴収を通じ、利害関係参加人の回答において、具体的な事例についての制裁等があったことを示す資料は提出されていない。
ア 民事判決(甲E1~32、乙B9〔の1、4~7、9〕、報告書⑩〔第2の2〔2頁~〕、別紙1〕のほか、本文に掲記の証拠)
(ア) 概要
[148] 本件の記録上、利害関係参加人の信者による違法な献金勧誘等行為により損害を被ったと主張して利害関係参加人等に対して不法行為に基づく損害賠償を求める民事訴訟を提起し、利害関係参加人に対する請求の全部又は一部が認容されることのあった事件は、一審判決の数を基準にすると32件存在する(32件の民事判決)。
[149] 32件の民事判決において、利害関係参加人の損害賠償責任が判決によって認められた原告の数は169名である。これらの169名の原告の大部分は、昭和50年代後半以降にビデオ受講施設等の教育施設での受講を通じて利害関係参加人の信者となった者である。
[150] また、32件の民事判決のうち、26件での原告140名については、いずれも上訴審まで争われた上で、最終的に利害関係参加人の損害賠償責任を認める内容の確定判決を得ており、確定判決における認容額の合計額は、18億0167万2477円である。その余の6件での原告29名については、一審判決により、利害関係参加人の損害賠償責任が認められた後、控訴審において訴訟上の和解が成立しており、確定判決を得ていないものの、これらの原告29名の一審判決での認容額の合計額は3億7731万円(一人当たり平均約1301万円)であるのに対し、控訴審での和解額の合計額は4億2821万4397円(一人当たり平均約1476万円)であり、全体的にみると、控訴審において、一審判決での認容額を上回る水準で訴訟上の和解をしている。
[151] 32件の民事判決は、平成6年5月27日から令和3年3月26日までの間に各地の地方裁判所で一審判決の言渡しがされたものであり、不法行為の成立が認められた献金勧誘等行為に係る献金の支払等は、昭和54年5月から平成26年7月までの間のものである。
(時期につき、報告書⑩の別紙1「判決一覧表」における、判決番号9・被害者番号14の者と判決番号31・被害者番号166の者を参照。以下、報告書⑩の別紙1「判決一覧表」、別紙2「和解一覧表」及び報告書⑪の別紙1「被害通知・示談一覧表」について、これらの別紙に掲記の判決、訴訟上の和解又は被害通知等の該当箇所を指す際に、これらの別紙の記載を付すことなく、同別紙の「判決番号」「被害者番号」等の表現を用いて、単に「判決番号9」「被害者番号14」等という。)
(イ) 確定した民事判決の結果の内訳
[152] 本件の記録に表れている確定した民事判決のうち、元信者本人が原告となるか又は元信者の有していた損害賠償請求権を相続したとする元信者の相続人が原告となるかして、利害関係参加人に対して民事訴訟を提起し、当該元信者に対する献金勧誘等行為の違法性の有無の判断がされた事案(非信者である近親者等〔元信者の親等〕が独自の慰謝料等の損害賠償を求めた事案と消滅時効や不起訴・清算合意等を理由として請求が全部棄却された事案という二つの類型〔[ア]〕以外の事案、すなわち、元信者に対する献金勧誘等行為の違法性の有無の判断がされていない事案以外の事案)についての原告の内訳は、次のとおりである。
[153] まず、32件の民事判決において、①請求の全部又は一部が認容される形での勝訴判決が確定した類型につき、25件の原告139名が当該類型に該当する([イ])。このほか、32件の民事判決において、②全部棄却の判決が確定した類型につき、2件の原告4名が当該類型に該当する([ウ])。
[154] また、③利害関係参加人の提出した証拠に係る民事判決(32件の民事判決と重複するものを除く。以下同じ。)において、全部棄却の判決が確定した類型につき、5件の原告9名が当該類型に該当する([エ])。
[155] 上記①から③までを合わせた152名のうち、請求の全部認容又は一部認容のいずれかの形で利害関係参加人に対する勝訴の確定判決を得た者は139名であり,9割を超える者(139÷152=約0.914)が、何らかの形で請求が認容される確定判決を得ていることになる。([ア]非信者である近親者等が独自の慰謝料等の損害賠償を求めた事案及び消滅時効等を理由として違法性の有無の判断がされなかった事案の原告は、合計で68名存在する〔判決番号24の原告のうち1名〔独自の損害賠償請求〕、判決番号27の原告のうち26名〔23名は独自の損害賠償請求、3名は元信者であり消滅時効を理由に全部棄却〕、判決番号28の原告のうち37名〔24名は独自の損害賠償請求、13名は元信者であり消滅時効を理由に全部棄却〕、判決番号29の原告1名〔被害者番号164。独自の損害賠償請求〕〕。[イ]32件の民事判決において、請求の全部又は一部が認容される形での勝訴判決が確定した類型に該当するものは26件の原告140名であるところ、このうち、1件の原告1名〔上記の判決番号29・被害者番号164の者〕は、非信者である原告が、信者であった妻が原告の財産を原告の意思に反して献金していたとして利害関係参加人に対して独自の損害賠償請求をするものであり、元信者に対する献金勧誘等行為の違法性の有無の判断がされていないため、計上していない。[ウ]32件の民事判決において、全部棄却の判決が確定した類型に該当するものは、判決番号5の原告1名〔甲E5、乙B9の1〕、判決番号11の原告3名〔甲E11〕を合わせた2件の原告4名である。[エ]利害関係参加人の提出した証拠に係る民事判決において、全部棄却の判決が確定した類型に該当するものは、乙B9〔の4~7、9〕に係る5件の原告9名である〔記録上、上訴審で訴訟上の和解が成立したことが確認できない者は、全部棄却の判決が確定したものとして計上している。〕。)
(ウ) 判決において認定された利害関係参加人の責任原因等
[156] 32件の民事判決では、利害関係参加人の信者の献金勧誘等行為に係る不法行為の成否及び損害額が主要な争点として争われており、多くの判決では、献金や物品購入等に係る不法行為の成否の判断に当たって、勧誘に用いられた言辞や勧誘の態様、献金者等の属性、家庭環境、入信の経緯及びその後の宗教団体との関わり方、献金等の経緯、目的、額及び原資、献金者等又はその近親者等の資産や生活の状況といった事情についての認定がされている。
[157] また、32件の民事判決のうち、30件では利害関係参加人の使用者責任が認定され、その余の2件では利害関係参加人自身の不法行為が認定されている(なお、一審判決において利害関係参加人の責任が認められ、控訴審において訴訟上の和解が成立した事案については、一審判決の判示に依っている。)。
a 利害関係参加人の使用者責任を認定したもの
[158] 32件の民事判決のうち、30件(判決番号29、30以外の判決)においては、利害関係参加人に使用者責任(民法715条)が認められるとして、利害関係参加人について損害賠償責任が認められている。
[159] そして、上記30件の判決においては、利害関係参加人の信者に対する使用関係(実質的な指揮監督関係)及び当該献金勧誘等行為の事業執行性を根拠付ける事実として、
① 利害関係参加人の信者が、利害関係参加人の教理を伝道する過程の一環として、その信者を獲得し、利害関係参加人に献金等をさせることを目的として、献金勧誘等行為をしていること、
② 利害関係参加人の信者によるこのような献金勧誘等行為の内容は利害関係参加人の教理と密接に関連し、当該行為自体がその教理の実践とされていること、
③ 当該行為による献金等に係る経過の中で、利害関係参加人の儀式が行われるなど、利害関係参加人の教会が関わる形で献金等がされていること、
④ 利害関係参加人の信者による献金勧誘等行為として、全国的に画一的な内容の活動が行われていること、
⑤ 利害関係参加人の信者による献金勧誘等行為が、その相手方からみて、利害関係参加人の活動と認識されるものであること、
⑥ 当該行為による献金等が、利害関係参加人に対して行われ、利害関係参加人に帰属していること、
⑦ 利害関係参加人の本部から全国の教区や各教会に宛てられた、献金等の目標達成率を示す表や献金勧誘等行為に関する指示文書が存在すること、
⑧ 多額の献金を行った者に対し、利害関係参加人の本部から感謝状が贈られていること、
⑨ 利害関係参加人が、信者や信者組織の活動状況につき、報告を受けて把握していること
等の事実が認定され、利害関係参加人の使用者責任が認められている。
b 利害関係参加人自身の不法行為を認定したもの
[160] 32件の民事判決のうち、2件(判決番号29、30)においては、利害関係参加人自身の不法行為が成立するとして、利害関係参加人について損害賠償責任が認められている。このうち1件(判決番号29の東京高裁平成28年6月28日判決)は、利害関係参加人の信者による献金勧誘等行為について、利害関係参加人の組織的な不法行為であるとして、利害関係参加人に民法709条に基づく損害賠償責任を認め、その余の1件(判決番号30の東京高裁平成29年12月26日判決)は、利害関係参加人の信者による献金勧誘等行為について、利害関係参加人自身が行った不法行為ということもできるとして、利害関係参加人に民法709条に基づく損害賠償責任を認めている。
(エ) 32件の民事判決において証拠として提出されたマニュアル等の特徴(報告書⑫〔別紙5、別紙6〕及びこれらの別紙に掲記の証拠)
[161] 32件の民事判決においては、利害関係参加人に対する損害賠償責任を基礎付けるためなどの証拠として、原告から、献金勧誘等行為についてのマニュアルや、数値目標・ノルマ等が記載された文書が提出されている。これらの大部分は、昭和50年代後半からコンプライアンス宣言が出された平成21年までに用いられたものであるところ、その内容として、
① 自身や親族に、複雑な家庭環境があったり、何らかの不幸な出来事が生じていたりするなどの困難な事情を抱える者から、当該事情を聞き出すための具体的手法、
② 自身や親族の病気、事故、離婚等といった既に発生し又は将来発生することのある種々の深刻な問題の多くは、怨恨を持つ霊の因縁等によって引き起こされており、このような問題を解消するためには、献金や物品購入等をすることが必要である旨を教育・指導し、その教育・指導を通じて献金や物品購入等をさせる具体的手法のほか、
③ 入信の勧誘や教育・指導行為をすることのみならず、献金及び物品購入等の勧誘行為を含む行為を通じて新たな信者を獲得し、利害関係参加人のために献金等をさせることは、教理に関連しており、その実践として目指すべきものである旨
が多数記載されている。
[162] また、上記のマニュアルや文書には、用いられた時期や場所が異なるものの間で、同一又は類似の文言及び記載内容が多数みられる。
(オ) 平成22年以降の傾向
[163] 32件の民事判決における169名の原告のうち、コンプライアンス宣言の翌年である平成22年以降の献金の支払等について損害賠償を請求し、不法行為が成立すると判断がされたのは、2件の原告3名である(判決番号31・被害者番号166、判決番号32・被害者番号168及び169。判決番号32の被害者番号167については、判決書〔甲E32〕によれば、違法であると認定された献金勧誘等行為に基づく献金の支払等は、いずれも平成21年までに行われている。)。このうち、献金の支払等の開始時期が平成22年以降であるとされるのは、1件の原告1名である(判決番号31・被害者番号166)。
[164] また、上記2件の原告3名につき、認容額のうち平成22年以降に献金の支払等がされたと認定されたものに係る額は、合計1761万1600円であり、判決において違法であると認定された献金勧誘等行為に基づく献金の支払等のうち、最も遅い時期の支払等は平成26年のものである(上記の合計額は、判決番号31の認容額の全額と、判決番号32の認容額のうち平成22年以降に献金の支払等がされたと認定されたもの〔甲E32の1の別紙2、別紙3参照〕に係る損害の額を、合算した金額である。)。

イ 訴訟上の和解(甲B13の2〔2頁~〕、F1~100、報告書⑩〔第3〔4頁~〕、別紙2〕、報告書⑪〔第1の2〔1頁~〕〕)
(ア) 概要
[165] 本件の記録上、利害関係参加人の信者による違法な献金勧誘等行為により損害を被ったと主張して利害関係参加人等に対して損害賠償を求める民事訴訟を提起し、訴訟上の和解が成立したものは100件あり、その原告数は448名である(32件の民事判決のうち、控訴審において訴訟上の和解が成立した6件〔原告数29名〕を含む。)。これらの原告448名のうち、約58%の者が100万円以上の和解金の支払合意をしている(このうち、コンプライアンス宣言の翌年である平成22年以降の献金の支払等について損害賠償を請求し訴訟上の和解をした原告9名の中で、100万円以上の和解金の支払合意をした者は8名であり、その割合は約89%である。別紙2「訴訟上の和解一覧表(コンプライアンス宣言後関連)」参照)。
[166] 上記100件の訴訟上の和解における和解金の合計額は、61億1941万1071円である(このうち、一審判決により、利害関係参加人の損害賠償責任が認められた後、控訴審において訴訟上の和解が成立している上記6件〔原告数29名〕の和解金の合計額は、4億2821万4397円である。)。
[167] また、上記100件の訴訟上の和解は、平成8年4月12日から令和3年11月11日までの間に成立したものであり、訴状等において不法行為に当たるとして主張されている献金勧誘等行為に係る献金の支払等は、昭和52年12月から平成28年6月までの間のものである(時期につき、和解番号20で番号214の者と和解番号99で番号447の者を参照)。
(イ) 訴訟上の和解における債務者
[168] 上記100件の訴訟上の和解における448名の原告との間で訴訟上の和解を行い和解金支払債務を負った者は、少なくとも、ほぼ全てが利害関係参加人以外の者であり、訴訟当事者以外の第三者が、和解金の支払債務者となる例が多くみられる。
[169] 取り分け、ハッピーワールド又はその代表者であったIが和解金の支払債務者となる場合が多くみられ、訴訟上の和解をした者の総数448名のうち281名を占め(約62%)、和解金の合計額の61億1941万1071円のうち39億6441万4915円を占めており(約65%)、人数及び金額ともに全体の6割超に上っている(報告書⑩の別紙2「和解一覧表」の「債務者」欄を基に集計。ただし、人数につき、同一の者が訴訟上の和解を複数回行い、その支払債務者のいずれもハッピーワールド又はIであるものについては、1名として計上している。)。
(ウ) 平成22年以降の傾向
[170] 上記100件の訴訟上の和解における448名の原告のうち、コンプライアンス宣言の翌年である平成22年以降の献金の支払等について損害賠償を請求している者は、8件の原告9名であり、このうち、献金の支払等の開始時期が同年以降であるとする者は、3件の原告3名(和解番号442・番号95、和解番号443・番号96、和解番号447・番号99)であり、最も遅い時期での献金の支払等とされているのは、平成28年のものである。
[171] また、上記8件の原告9名の和解金のうち、平成22年以降の献金の支払等に係る推計額の合計額は、5355万1971円であり、このうち、献金の支払等の開始時期が平成22年以降であるとしている3件の原告3名についての和解金の合計額は、1520万8000円である(別紙2「訴訟上の和解一覧表(コンプライアンス宣言後関連)」参照)。
(上記の「推計額」とは、各和解金の額に、総支払期間〔総月数〕のうちコンプライアンス宣言後の支払期間〔月数〕の占める割合を乗じて、同宣言後の献金の支払等に係る和解金の額を推計した額であり、献金の支払等の開始時期が平成22年以降の者についての和解金〔全額が計上されることになる。〕を含んでいる。以下、訴訟上の和解のほか、裁判外の示談においても同様の方法で推計額を算定する。算定方法の詳細は、別紙2「訴訟上の和解一覧表(コンプライアンス宣言後関連)」及び別紙3「裁判外の示談一覧表(コンプライアンス宣言後関連)」の算定方法に関する説明を参照。また、以下、「推計額」とは、和解金及び示談金につき、このような方法により算定された金額を指すものとする。)

ウ 裁判外の示談(甲B2の19、B5〔の23、24〕、C4の5〔13頁~〕、C5の5〔10頁~〕、G1~971、報告書⑤〔第3〔27頁〕、別紙7〕、報告書⑪〔第1の3〔2頁〕、別紙1〕)
(ア) 概要
[172] 本件の記録上、利害関係参加人の信者による違法な献金勧誘等行為によって損害を被ったとして、利害関係参加人に対して損害賠償を求め、裁判外の示談をした者の数は971名であり、裁判外の示談における合意額の合計額は125億2680万5609円である。これら971名のうち、約76%の者が100万円以上の示談金の支払合意をしている(このうち、コンプライアンス宣言の翌年である平成22年以降の献金の支払等につき損害賠償を請求して裁判外の示談をした167名の中で、100万円以上の示談金の支払合意をした者は154名であり、上記167名に占める割合は約92%である。別紙3「裁判外の示談一覧表(コンプライアンス宣言後関連)」参照)。
[173] 上記971名に係る裁判外の示談は、平成14年5月22日から令和5年8月31日までの間に成立したものであり(番号914の者と番号531の者を参照)、通知書等により不法行為に当たると申告されている献金勧誘等行為に係る献金の支払等は、昭和53年9月から令和4年8月までの間のものである(番号570の者と番号430の者を参照)。
(イ) 裁判外の示談に至る通常の手順
[174] 上記971名の大部分は、弁護士に委任をし、預貯金口座の引出し情報やメモ等から献金等の時期及び額を特定するなどした上で、違法な献金勧誘等行為に当たるとする具体的な事情を指摘して返金等を求める通知書を利害関係参加人に送付し、その後、多くは、利害関係参加人の信者との間で、事実確認等の文書のやりとりを複数回経るなどして、裁判外の示談に至っている。また、上記の通知書は、利害関係参加人に送付される際に、その監督官庁である文化庁に参考送付されることが通常である。
(ウ) 裁判外の示談における債務者
[175] 上記971名に係る裁判外の示談の債務者は、いずれも利害関係参加人以外の者であり、個人の場合は、信徒会代表などの肩書を付して合意する例が多く、法人の場合は、購入した商品に係る物品販売店であることが多い。
(エ) 返金の原資
[176] 利害関係参加人は、本件報告徴収に対する回答において、平成18年1月1日以降における、裁判外で受けた損害賠償請求の通知書に関し、返金の合意に至った件数は961件、返金の合意額は約117億円であると報告しており、また、このうちの一部(平成18年度から平成31年度までに成立した13件の裁判外の示談における約14億8000万円)については、利害関係参加人が原資を拠出したと報告しており、これらの報告によれば、裁判外の示談における示談金の原資の多くは、利害関係参加人以外の者が負担していることになる。
(オ) 平成22年以降の傾向
a 通知書の送付数
[177] 利害関係参加人が本件報告徴収に対して提出した資料によれば、利害関係参加人に対する通知書の送付件数は、平成21年には156件であったが、平成22年には98件と減少し、以降も減少傾向にあり、令和元年には10件、令和2年には13件となり、令和3年には6件まで減少している。もっとも、上記資料によれば、本件銃撃事件のあった令和4年には通知書の送付件数は31件に増加している。また、全国統一教会被害対策弁護団(令和4年発足。上記(7)ア(イ))は、令和5年2月、利害関係参加人に対し、集団交渉等の申入れを行う通知書(第1次)を送付しており、以降、同年9月までの間に、第2次から第5次まで、合計124名の元信者について、請求額の合計額が約39億円に上る通知書を送付している(上記(7)ア(エ))。
b 裁判外の示談等の数(別紙3「裁判外の示談一覧表(コンプライアンス宣言後関連)」)
[178] 本件の記録上、コンプライアンス宣言の翌年である平成22年以降の献金の支払等につき損害賠償を請求する者は179名である。このうち、裁判外の示談が成立した者は167名であり、さらにこのうち50名については、献金の支払等の開始時期が平成22年以降であると主張している。
[179] そして、上記167名に係る示談金のうち、平成22年以降の献金の支払等に係る推計額の合計額は、9億1362万8590円である(上記167名に係る示談金の額を請求額で除した割合〔回収率〕は約56%である。)。また、上記167名のうち、献金の支払等の開始時期が同年以降であると主張している50名についての示談金の合計額は、2億6441万0630円である。
[180] また、上記179名について、平成22年以降に被害を受けた(献金の支払等があった)と申告する者の数を時期ごとにみると、平成22年に被害を受けたと申告する者の数は134名、平成23年は109名、平成24年は89名であり、その後も減少を続けて、平成30年は16名、平成31年(令和元年)及び令和2年はそれぞれ7名、令和3年及び令和4年はそれぞれ3名となっている。ただし、上記aのとおり、利害関係参加人の報告によれば、令和4年には31件の通知書の送付があったとされるところ、本件の記録上、同年の通知書として確認できるのは13件であり(報告書⑪の別紙1「被害通知・示談一覧表」の「通知日」欄参照)、その余の18件の通知書について、被害を受けたと申告されている時期は記録上明らかでない。また、令和5年に送付された、合計124名の元信者の集団交渉に係る通知書についても、被害を受けたと申告されている時期は記録上明らかでない。

エ 民事判決、訴訟上の和解及び裁判外の示談の全体的規模
(ア) 全期間
[181] ① 32件の民事判決のうち、26件での原告140名については、利害関係参加人の損害賠償責任を認める内容の確定判決を得ており、最終的な認容額の合計額は、18億0167万2477円であり(上記ア(ア))、
② 訴訟上の和解が成立した100件の原告448名の和解金の合計額は、61億1941万1071円であり(上記イ(ア))、
③ 裁判外の示談をした971名の示談金の合計額は、125億2680万5609円である(上記ウ(ア))。
[182] これらの3つの類型の合計人数は1559名、合計額は204億4788万9157円となる。
(イ) 平成21年以前
[183] 上記(ア)のうち、コンプライアンス宣言が出された平成21年以前の献金の支払等につき損害賠償の請求をした者についてみると、
① 32件の民事判決のうちの31件の原告168名がこれに当たり、同年以前の献金の支払等に係る認容額の合計額は17億8406万0877円であり、
② 訴訟上の和解が成立した者のうちの97件の原告445名がこれに当たり、和解金のうち、同年以前の献金の支払等に係る推計額の合計額は60億6585万9100円であり、
③ 裁判外の示談が成立した者のうちの921名がこれに当たり、示談金のうち、同年以前の献金の支払等に係る推計額の合計額は116億1317万7019円である。
[184] これらの3つの類型の合計人数は1534名、合計額は194億6309万6996円となる。
(上記の各数値は、①人数については、上記(ア)の各人数から、献金の支払等の開始時期が平成22年以降であるとする者の人数〔上記アからウまでの各「平成22年以降の傾向」の項を参照〕を減じることで算出しており、②金額については、上記(ア)の各金額から後記(ウ)の各金額を減じることで算出している。)
(ウ) 平成22年以降
[185] 上記(ア)のうち、コンプライアンス宣言の翌年である平成22年以降の献金の支払等につき損害賠償の請求をした者についてみると、
① 32件の民事判決のうちの2件の原告3名がこれに当たり、同年以降の献金の支払等に係る認容額の合計額は1761万1600円であり、
② 訴訟上の和解が成立した者のうちの8件の原告9名がこれに当たり、和解金のうち、同年以降の献金の支払等に係る推計額の合計額は5355万1971円であり、
③ 裁判外の示談が成立した者のうちの167名がこれに当たり、示談金のうち、同年以降の献金の支払等に係る推計額の合計額は9億1362万8590円である。
[186] これらの3つの類型の合計人数は179名、合計額は9億8479万2161円となる。
(上記の各数値は、上記アからウまでの各「平成22年以降の傾向」の項で認定したところを移記又は集計している。なお、上記(イ)の①から③までの各人数との各合計人数が、上記(ア)の①から③までの各人数を超えるのは、平成21年以前及び平成22年以降の双方において献金の支払等をしたと申告する者がいることによる。)
[187] 法81条1項及び同項1号によれば、「宗教法人について」「法令に違反して、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為をしたこと」が解散命令の要件とされているところ、まず、これらの条文上の要件に係る解釈を行い(後記(1))、次いで、要件該当性の判断のために、「法令に違反」する行為の有無・内容及び規模等について検討を行い(後記(2))、その上で、これらの条文上の要件の該当性を判断し(後記(3)、(4))、最後に、信教の自由の観点を踏まえた解散命令の当否の判断を行う(後記(5))。
ア 「宗教法人について」(法81条1項柱書き)の解釈
[188](ア) 法人自体が事実的・自然的な行為の主体となることはできず、また、法81条1項柱書き及び同項1号は、法令違反行為の主体を限定していないことからすれば、「宗教法人について」法令違反行為をしたとの事由が認められる場合とは、法令違反行為が、社会通念上、当該宗教法人の行為であるといえる場合をいうものと解すべきである。例えば、当該宗教法人と無関係の者が法令違反行為をした場合はもちろん、当該宗教法人と関わりのある者によるものであっても、当該宗教法人の存在や活動と無関係に法令違反行為がされた場合には、それをもって、当該宗教法人について法令違反行為をしたとの事由(同項柱書き及び同項1号)が認められることはないと解される。
[189] 他方で、宗教団体に法人格が認められ、法人としての法律上の能力が与えられるのは、当該宗教団体が財産を所有、維持、運用し、その目的達成のための業務及び事業を運営することに資するためであり(法1条)、また、宗教法人の解散命令の制度は、法令に違反して、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為(法81条1項1号)や宗教団体の目的を著しく逸脱した行為(同項2号前段)があった場合等に、宗教団体に法律上の能力を与えたままにしておくことが不適切となることから、司法手続によって宗教法人を強制的に解散し、その法人格を失わせることが可能となるようにしたものであると解される(最高裁平成8年決定参照)。このことに照らすと、宗教法人と関わりを持つ者が法令違反行為を行った場合において、当該行為者の当該宗教法人における立場、その行為と当該宗教法人の業務又は事業との関連性(行為の目的及び態様、行為に至る経緯,行為の結果及びその効果の帰属等)、その行為についての宗教法人の関与等の事実関係を踏まえて、当該行為者の法令違反行為が当該宗教法人の業務又は事業の執行又は運営として行われたものと評価できるときは、特段の事情のない限り、その行為は、社会通念上、当該宗教法人の行為であるということができ、当該「宗教法人について」法令違反行為があったということができる。
[190](イ) これに対し、利害関係参加人は、東京高裁平成7年決定が、法81条1項1号の適用対象となる「宗教法人の行為」について、
「宗教法人の代表役員等が法人の名の下において取得・集積した財産及びこれを基礎に築いた人的・物的組織等を利用してした行為であって、社会通念に照らして、当該宗教法人の行為であるといえる」ものでなければならない
との判断基準を定立し、これが特別抗告審である最高裁平成8年決定でも実質的に支持されているとして、利害関係参加人に対する損害賠償請求の事案には、利害関係参加人の代表役員等の幹部役職員が関わった事案はないから、上記基準に適合しないことが明らかであると主張する。
[191] しかし、東京高裁平成7年決定は、宗教法人オウム真理教に対する解散命令申立事件という個別事案において、当該事案の事実関係に即して判断をするために上記説示をしたにすぎず、また、その特別抗告審である最高裁平成8年決定では、上記説示に係る点については何らの判断も示されていないのであるから、「宗教法人について」法81条1項1号所定の行為をしたとの事由が認められる場合が、東京高裁平成7年決定で示された場合に限定されるということはできない。そもそも、同項柱書き及び同項1号は、「宗教法人について」、法令に違反して、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為をしたとの事由があると認められる場合に、当該宗教法人の解散を命ずることができると規定しており、その規定上も、宗教法人自体が法令違反の行為主体となることを要件としていないのであるから、当該宗教法人の代表役員等の幹部役職員が直接法令違反行為に関わっていない限り、当該宗教法人について法令違反の行為をしたとの事由(同項柱書き及び同項1号)を認めることができないと解すべきとはいえない(最高裁令和7年決定参照)。
[192](ウ) また、利害関係参加人は、会社の解散命令の事由については、旧商法58条1項3号で、行為の主体が「業務ヲ執行スル社員又ハ取締役」(会社法824条1項3号では「業務執行取締役、執行役又は業務を執行する社員」)に限定されていることを指摘する。
[193] しかし、行為の主体を具体的に限定している旧商法(会社法)の上記規定をもって、異なる文言で規定されている法81条1項1号について、行為者を代表役員や幹部役職員に限定すべきことの根拠とすることはできない。そして、文理上、旧商法及び会社法が上記のとおり行為の主体を規定しているのに対し、同項柱書き及び同項1号は、上記のとおり行為の主体を明示的に特定していないのであり、同号について行為者を利害関係参加人が主張する範囲に限定して解することは相当ではないというべきである。

イ 「法令に違反」(法81条1項1号)の解釈等
(ア) 「法令に違反」の解釈
[194] 法81条1項柱書きは、「裁判所は、宗教法人について左の各号の一に該当する事由があると認めたときは、所轄庁、利害関係人若しくは検察官の請求により又は職権で、その解散を命ずることができる。」と規定し、同項1号は、「法令に違反して、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為をしたこと」と規定するところ、民法709条の不法行為を構成する行為は、次のとおり、同号にいう「法令に違反」する行為に当たると解される。
[195] この点に関し、利害関係参加人は、民法709条は、一定の行為をした者が損害賠償責任を負う旨を定める賠償規範にとどまり、当該行為を禁止する旨などを定める規定(禁止規範及び命令規範)ではなく、同条の不法行為を構成する行為は同条違反の行為ではないのであって、これが法81条1項1号にいう「法令に違反」する行為に当たると解することはできないなどと主張する。
[196] しかし、民法709条が一定の行為を禁止する旨を定めた規定であるとはいえないものの、同条の不法行為を構成する行為は、不法行為法上違法と評価される行為、すなわち、一定の法規範に違反する行為であり、行為者は、同条という法令の規定により損害賠償責任を課せられるのであって、これらの点に鑑みれば、同条の不法行為を構成する行為が法81条1項1号にいう「法令に違反」する行為に当たると解したとしても、同号の文理に反するものではない。
[197] むしろ、上記のように解することが法81条1項1号の趣旨に沿うものというべきである。すなわち、法は、宗教団体が礼拝の施設その他の財産を所有してこれを維持運用するなどのために、宗教団体に法律上の能力を与えることを目的とし(法1条1項)、宗教団体に法人格を付与し得ることとしているところ(法4条)、法81条1項1号が宗教法人の解散命令の事由として「法令に違反して、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為をしたこと」と規定している趣旨は、同号所定の事由がある場合には、宗教団体に法律上の能力を与えたままにしておくことが不適切となるところから、司法手続によって宗教法人を強制的に解散し、その法人格を失わしめることが可能となるようにすることにあると解される(最高裁平成8年決定参照)。そうであるところ、民法709条の不法行為を構成する行為は、故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害するものであるから、当該行為が著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる事態を招来するものであってこれに関係した宗教団体に法人格を与えたままにしておくことが不適切となることも、十分にあり得ることである。したがって、同条の不法行為を構成する行為が法81条1項1号にいう「法令に違反」する行為に当たると解することは、同号の上記趣旨に沿うものというべきである。
[198] また、解散命令は、宗教法人の法人格を失わせる効力を有するにとどまり、信者の宗教上の行為を禁止したり制限したりする法的効果を一切伴わないものであるところ(最高裁平成8年決定参照)、ある行為が法81条1項1号所定の行為に当たるといえるためには、その行為が単に法令に違反するだけでなく、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為でなければならないことに照らせば、上記のように解したとしても、同号の規定が、宗教法人の解散命令の事由を定めるものとして、不明確であるとも過度に緩やかであるともいえない。
[199] 以上によれば、民法709条の不法行為を構成する行為は、法81条1項1号にいう「法令に違反」する行為に当たると解するのが相当である(最高裁令和7年決定)。
[200] 利害関係参加人は、このほか、法81条1項1号にいう「法令」には、刑罰法令違反を伴わない行為は含まれないなどと主張するが、いずれも採用の限りでない。
(イ) 不法行為の成否の判断基準
[201]a 宗教団体又はその信者が当該宗教団体に献金をするように他者を勧誘することは、これにより寄附者が献金をするか否かについて適切な判断をすることに支障が生ずるなどした事情の有無やその程度、献金により寄附者又はその配偶者等の生活の維持に支障が生ずるなどした事情の有無やその程度、その他献金の勧誘に関連する諸事情を総合的に考慮した結果、勧誘の在り方として社会通念上相当な範囲を逸脱すると認められる場合には、不法行為法上違法と評価されると解するのが相当である。そして、上記の判断に当たっては、勧誘に用いられた言辞や勧誘の態様のみならず、寄附者の属性、家庭環境、入信の経緯及びその後の宗教団体との関わり方、献金の経緯、目的、額及び原資、寄附者又はその配偶者等の資産や生活の状況等といった判断要素について、多角的な観点から検討することが求められるというべきである(最高裁令和4年(受)第2281号同6年7月11日第一小法廷判決・民集78巻3号921頁)。
[202]b この点に関し、金銭の支払とともに、物品の授受があったとしても、その物品の客観的交換価値が乏しく、宗教的価値が専らであるなど、金銭支払の趣旨が献金と同視できるような場合にも、上記と同様の判断基準が妥当するというべきである。
[203] また、物品が客観的交換価値を有し、物品の購入といえるような場合でも、物品購入の判断に当たって直接又は間接に意思決定が抑圧され、物品の客観的交換価値及び購入者の資産や生活の状況等に照らして不当に高額といえるような事情があるなど、上記aで説示した判断要素を多角的に考慮した結果、社会通念上相当な範囲を逸脱すると認められるときは、不法行為法上違法と評価されると解するのが相当である(以下、献金勧誘行為及び物品販売行為等に係る上記の不法行為の判断基準を総称して「本件判断基準」という。)。

ウ 「著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為をしたこと」(法81条1項1号)の解釈
[204] 法81条1項1号は、宗教法人の解散命令の事由として、法令に違反して、「著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為をしたこと」と規定しており、単に法令に違反することだけでなく、その法令違反行為によって公共の福祉が害されること、さらに、その程度が著しいことを要求し、加えて、著しく公共の福祉が害されることが「明らかに認められる」ことをも要件として、その事由を限定していることからすれば、同号所定の解散命令事由は、その文言のとおりに限定的に判断されるべきものといえる(これに加え、宗教法人の解散命令制度の性質及び信教の自由の観点を踏まえた限定的解釈を行うべきことについては、後記(5)アにおいて論ずる。)。
[205] 上記のとおり解釈される「宗教法人について」「法令に違反して、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為をしたこと」という要件に該当するか否かを検討するに当たり、まず、本件における「法令に違反」する行為(不法行為)の有無・内容及び規模について、そのような不法行為を誘発させる問題状況の有無・内容を含め、コンプライアンス宣言の前と後に分けて検討する。

ア コンプライアンス宣言以前の不法行為の有無・内容及び規模
(ア) 32件の民事判決の原告につき献金勧誘等行為による献金の支払等があった時期
[206] 霊感商法は、昭和54年頃には社会問題となっていたところ(認定事実(2)イ)、利害関係参加人は、昭和62年、東京都の総務局行政部指導課を訪れた際に、信者に対して指導を行うようにとの指示を受けることがあり、その頃以降、霊感商法についての被害の申告数は縮小傾向となった(認定事実(2)ウ(ウ)a及びc)。
[207] 利害関係参加人の信者は、霊感商法が社会問題となっていた中、昭和57年頃から、利害関係参加人の教理を教えるビデオを視聴するためのビデオ受講施設を設置するようになり、次第に、このようなビデオ受講施設が全国に設置されるようになった。32件の民事判決において利害関係参加人に対する損害賠償請求が認められた169名の原告の大部分は、昭和50年代後半以降に、ビデオ受講施設等の教育施設での受講を通じて利害関係参加人の信者となった者であり、献金勧誘等行為による献金の支払等に係る財産権等の侵害について不法行為の成立が認められている(認定事実(3)ア、(9)ア(ア))。
(イ) 32件の民事判決に係る被害の内容及び規模等
a 32件の民事判決の概要
[208] 認定事実(9)ア(ア)のとおり、32件の民事判決では、169名の原告について、利害関係参加人の信者による献金勧誘等行為につき不法行為が成立するとの判断がされているところ、これらの判決は、平成6年5月から令和3年3月までの間に各地の地方裁判所で言い渡された判決、あるいは、同判決に対する上訴審の判決であり、これらのうちの多くの判決(26件の原告140名に関するもの)は、いずれも上訴審まで争われた上で原告に対する不法行為が成立するとの判断が確定しており、その余の判決(6件の原告29名に関するもの)のいずれについても、地方裁判所において原告に対する不法行為が成立するとの判断がされ、高等裁判所において相当額の金銭(一人当たり平均約1476万円)が支払われる形での和解が成立したものである(また、上記の原告29名に係る一審判決での認容額の一人当たり平均は約1301万円であり、原告一人当たりの平均額でみると、一審判決での認容額を上回る水準で訴訟上の和解をしている。)。
[209] そして、32件の民事判決では、利害関係参加人の信者の献金勧誘等行為に係る不法行為の成否及び損害額が主要な争点として争われており、不法行為の成否の判断に当たっては、概ね、本件判断基準においても判断要素となるような事実が認定されている(認定事実(9)ア(ウ))。
b 32件の民事判決の判断構造等
[210](a) 32件の民事判決の事実認定においては、不法行為の判断要素等の判断にとって重要な事実については、これらの事実に係る原告及び関係者の供述につき反対尋問が経られているだけでなく、利害関係参加人が提出・申請した書証及び人証も踏まえ、主張立証が尽くされた上で裁判所により信用性が吟味されているのであり、基本的に、32件の民事判決において認定された、不法行為の判断要素に関する事実関係(少なくとも、これと概ね同様又はこれに近い事実関係)が実際に存在した蓋然性は高いといえる。
[211](b) この点に関し、利害関係参加人は、原告の訴訟代理人によるねつ造等がされた供述により32件の民事判決で誤った事実認定が繰り返されているなどとして、これらの民事判決の認定に用いられた供述証拠、ひいてはこれらの民事判決はおよそ証拠価値がないなどと主張する。
[212] しかし、32件の民事判決の事実認定の手法は上記(a)のとおりであって、原告の提出した供述証拠のみによって認定がされたのではなく、双方から提出された証拠等を踏まえ、各裁判所が、それぞれの審級で独立して判断を行う中で、原告の主張についても、採用できない部分は採用せず、各判決における原告ごとにそれぞれの不法行為に関して認定がされたものであって、利害関係参加人の上記主張は採用することができない。
c 32件の民事判決において不法行為の成立が認められた献金勧誘等行為に係る類型的傾向等
(a) 32件の民事判決において、不法行為の成立が認められた献金勧誘等行為に類型的傾向があること
[213] 証拠(甲E1~32)によれば、32件の民事判決の中で、昭和50年代後半から、コンプライアンス宣言の出された平成21年頃までの間の献金の支払等に関して損害賠償の請求をした168名の原告につき、不法行為の成立が認められた献金勧誘等行為について、① 献金勧誘等行為にみられる特徴、② そのような特徴を有する献金勧誘等行為が生ずる背景事情として、時期、場所を問わず、次のような事実が数多く認定されていることが認められる。
① 献金勧誘等行為にみられる特徴について
[214] 原告の大部分は、自身や親族に、複雑な家庭環境があったり、利害関係参加人への入信以前において何らかの不幸な出来事が生じていたり、あるいは、高齢等のため判断能力に制約があったりするなどの困難な事情を抱えており、その上で、周囲の信者から、自身や親族の病気、事故、離婚等といった既に発生し又は将来発生することのある種々の深刻な問題の多くは、怨恨を持つ霊の因縁等によって引き起こされており、そのような霊の影響から脱して幸せに暮らすためには献金をして地獄で苦しんでいる先祖等を解怨することが必要であるなど、このような問題を解消するために献金や物品購入等をすることが必要であるといった教育や指導を繰り返し受けていた。
[215] 原告の大部分は、上記の教育や指導を受ける中で、更に、周囲の信者から、先祖等の因縁により自身や親族の不幸が生じているなど、怨恨を持つ霊によって上記のような深刻な問題が引き起こされているといった事態を告げられた上で、これらの事態を免れるためには献金や物品購入等をしなければならないなどと告げられ、これに応じて、繰り返し、献金や物品購入等をしていた。
[216] また、上記のように献金や物品購入等をした原告の相当数は、金融業者や親族から借財して原資を捻出する、他に十分な資産がないにもかかわらず、本人や近親者等の保険や預金を解約し、あるいは、遺産や退職金の全部又は大部分を出捐するなどといった形で原資を捻出するなどして、献金や物品購入等を繰り返し行っており、これにより本人や近親者等の生活の維持に重大な支障が生ずる事態が発生していた。
② そのような特徴を有する献金勧誘等行為が生ずる背景事情について
[217] 利害関係参加人の信者は、利害関係参加人の教理を伝道する過程の一環として、その信者を獲得し、利害関係参加人のために献金等をさせることを目的として、献金勧誘等行為をしていた。
[218] 利害関係参加人の信者によるこのような献金勧誘等行為の内容は、利害関係参加人の教理と密接に関連し、献金勧誘等行為自体がその教理の実践とされていた。
(b) 32件の民事判決における類型的傾向についてのまとめ
[219] 上記bで説示したことのほか、32件の民事判決で上記(a)のとおり共通して数多く認定されている事実関係は互いに相まって推認力を高め合う関係にあることを考慮すると、少なくとも、昭和50年代後半からコンプライアンス宣言の出された平成21年頃までの間における、不法行為の成立が認められた献金勧誘等行為については、上記(a)で指摘した特徴及び背景事情を有するという類型的傾向が認められるといえる。
[220] この点に関し、利害関係参加人は、32件の民事判決における169名の原告(利害関係参加人の信者による献金勧誘等行為につき不法行為が成立すると判断された者)以外の原告及び利害関係参加人が指摘したその他の民事判決における原告について、請求が全部又は一部棄却された事案が多数存在しているのでこの点を考慮すべきである旨を主張する。
[221] まず、請求が全部棄却された事案については、そのような事案における原告は相当数(80名)存在するが、その多く(67名)は、元信者の近親者等(元信者の親等)であって利害関係参加人の信者となったことのない者が独自の損害賠償を求めた事案の原告であるか、又は、消滅時効や清算合意等が請求棄却の理由とされた事案の原告であって、これらは、いずれも、利害関係参加人の信者による献金勧誘等行為の違法性に係る実質的な判断がされなかったものである(認定事実(9)ア(イ)[ア]参照)。そして、献金勧誘等行為が違法であるとは認められないと判断された事案の原告は、13名にとどまり(認定事実(9)ア(イ)[ウ]、[エ]参照)、しかも、献金勧誘等行為が違法であるとは認められないとの判断は、不法行為法上違法であるとの評価に達しないということにすぎず、上記の類型的傾向が否定されることを意味するものでもないから、32件の民事判決における上記169名の原告について上記の類型的傾向が認められることは左右されない。
[222] また、請求が一部棄却された事案については、32件の民事判決は、請求が一部棄却(一部認容)された事案であるところ、上記の類型的傾向は、正にこれらの判決において繰り返し認定されているものであり、このような一定の傾向があることを裏付けるものであるといえる。
(c) 32件の民事判決における類型的傾向が利害関係参加人の信者による献金勧誘等行為に存在していたと認められること
[223] そして、認定事実(3)ア、(9)ア(ウ)、(エ)によれば、
(i) 遅くとも昭和50年代の後半以降、利害関係参加人の信者は、全国各地に多数の拠点を置き、組織的に伝道教育活動を行うようになっていったこと、また、
(ii) 32件の民事判決において、利害関係参加人の信者による献金勧誘等行為として、全国的に画一的な内容の活動が行われている旨が繰り返し認定されており、実際に、献金勧誘等行為のマニュアルや、数値目標・ノルマ等が記載された文書について、その文言及び記載内容に、時期や場所を問わず、同一性・類似性があること、
さらに、上記の組織性・画一性等に加え、
(iii) 利害関係参加人の信者が献金勧誘等行為に当たって用いるなどしていた上記のマニュアル及び文書(その性質上、32件の民事判決における原告の周囲の信者のみならず、それ以外の相当数の信者においても利用・参照することが見込まれるものである。)において、①献金勧誘等行為の重点的な対象となる者が抱える困難な事情を把握するための具体的手法や、それらの者が有する種々の深刻な問題と怨恨を持つ霊の因縁等とを結び付けて献金や物品購入等をさせる具体的手法につき、献金勧誘等行為にみられる特徴についての類型的傾向として摘示した事実(上記(a)①)と合致する内容の記載がみられ、②献金勧誘等行為の位置付け(信者及び献金等の獲得を目的として献金勧誘等行為がされていることや、献金勧誘等行為の内容が利害関係参加人の教理に関連し、献金勧誘等行為自体が教理の実践とされ、伝道の一環となっていること)につき、上記の特徴を有する献金勧誘等行為が生ずる背景事情についての類型的傾向として摘示した事実(上記(a)②)と合致する内容の記載がみられること
を指摘することができる。
[224] そうすると、32件の民事判決において、不法行為の成立が認められた献金勧誘等行為についてみられた上記(a)の①及び②の類型的傾向が、少なくとも、昭和50年代後半から、コンプライアンス宣言の出された平成21年頃までの間、利害関係参加人の信者による献金勧誘等行為について、全国的に、少なくない割合でみられたと推認することができる。そして、これらの2つの類型的傾向については、献金勧誘等行為に係る上記(a)の①の特徴は、上記(a)の②の背景事情が存在することによって生じやすくなっているという関係を指摘することができる。
[225] そうであるとすると、利害関係参加人の信者による献金勧誘等行為については、少なくとも上記の期間において、全国的に、
[1] 利害関係参加人の信者が、入信前から自身や親族に、複雑な家庭環境、不幸な出来事、高齢等による判断能力の制約等があるなどの困難な事情を抱える者(一般に、次の[2]のような教育・指導及び勧誘による影響を受けやすい者)に対し、
[2] 利害関係参加人の教理を伝道する過程で、その教理に関連して、種々の深刻な問題の原因の多くは怨恨を持つ霊の因縁等によるものであり、このような問題を解消するためには献金等が必要である旨を繰り返し申し向けるなどして献金等を行うよう勧誘し(種々の深刻な問題と因縁等とを結び付けた、教育・指導及び献金等の勧誘の反復継続)、
[3] その結果、借財等により原資を捻出するなどして、本人や近親者等の生活の維持に重大な支障が生ずる献金等を繰り返し行わせる(生活の維持に重大な支障が生ずる支出という結果の反復継続)
ものとなるおそれがある状況が生じていたと認められる(以下、そのようなおそれがある状況を指して「本件問題状況」という。)。
d 32件の民事判決に係る被害の有無・内容及び規模等についてのまとめ
[226] 上記aからcまでで説示したところによれば、32件の民事判決において認定された、不法行為の判断要素に関する事実関係(少なくとも、これと概ね同様又はこれに近い事実関係)が実際に存在した蓋然性は高いといえるだけでなく、利害関係参加人の信者による献金勧誘等行為については、本件問題状況が、昭和50年代後半から平成21年頃までの間、全国的に生じていたといえ、上記168名の原告は、本件問題状況が現実化した際にみられる事実関係を具体的に主張し、これが判決によって認定されたものといえる。
[227] そうすると、上記168名の原告につき、全体的・統計的にみた場合に、本件判断基準(上記(1)イ(イ)のとおり,献金等をするか否かについて適切な判断をすることに支障が生ずるなどした事情、献金等により生活の維持に支障が生ずるなどした事情等を総合的に考慮して、社会通念上相当な範囲を逸脱すると認められるかを判断する。)の下においても、32件の民事判決において認められたのと同種・同様の不法行為が認められる蓋然性は高いということができ、したがって、合理的な推測として、上記168名の原告の大部分につき、32件の民事判決で認定された献金勧誘等行為に係る不法行為があったと認めることができるほか、32件の民事判決で認定された損害額の合計額である約17億8400万円に準ずる程度の損害が生じたと認めることができる。
(ウ) 訴訟上の和解及び裁判外の示談等に係る被害の内容及び規模
a 訴訟上の和解及び裁判外の示談についても相当程度の被害が認められること
[228](a) 認定事実(9)イ、ウ、エ(イ)によれば、訴訟上の和解及び裁判外の示談が成立した者のうち、平成21年以前の献金の支払等について損害賠償を請求している者の数は、訴訟上の和解につき445名、裁判外の示談につき921名である。
[229](b) 利害関係参加人の信者による献金勧誘等行為について、本件問題状況が、少なくとも昭和50年代後半から平成21年頃までの間、全国的に生じていたと認められることは、上記(イ)c(c)で説示したとおりであるところ、訴訟上の和解及び裁判外の示談が成立した者の大部分は、本件問題状況が現実化した際に献金勧誘等行為にみられるのと同様の事実関係を、具体的に指摘して献金勧誘等行為につき被害を訴えている上、訴訟上の和解について約6割、裁判外の示談については約4分の3の者が、100万円以上の、いわゆる見舞金の水準にとどまらない程度の支払合意をしている。
[230](c) そうすると、訴訟上の和解と裁判外の示談とで蓋然性の程度の差異はあるものの、合理的な推測として、①訴訟上の和解が成立した445名(平成21年以前の献金の支払等に係る和解金の推計額の合計額約60億6600万円)及び②裁判外の示談が成立した921名(同年以前の献金の支払等に係る示談金の推計額の合計額約116億1300万円)のうち、上記①及び②の合計人数に近い程度の人数について、本件判断基準の下でも利害関係参加人の信者による献金勧誘等行為につき不法行為が成立すると認めることができ、上記のとおり不法行為が成立する事案において、上記①及び②の合計額に近い程度の損害が生じたと認めることができる。なお、利害関係参加人が個々の被害申告者の説明の信用性について指摘している点は、上記の認定を覆すに足りるものではない。
b 本件問題状況の程度
[231] 上記aのとおり、訴訟上の和解及び裁判外の示談についても、相当数の原告(訴訟上の和解)及び被害申告者(裁判外の示談)について不法行為が成立すると認められ、これらの者の大部分は、本件問題状況が現実化した際に献金勧誘等行為にみられるのと同様の事実関係を具体的に指摘しているのであるから、少なくとも昭和50年代後半から平成21年頃までの間、利害関係参加人の信者による献金勧誘等行為について、本件問題状況が、全国的に、しかも、多くみられたということができる。
c 顕在化していない被害の存在が否定されないこと
[232] 周囲の信者等との人間関係等といった心理的な障壁や、献金等についての領収証等が発行されないことに伴う立証上の困難も想定されることを踏まえると、違法な献金勧誘等行為により被害を受けた者の全てが弁護士に依頼をするなどして解決を求めるとは考え難く、被害を受けたにもかかわらず被害を訴えない者や、被害を訴えたとしても、弁護士を介した交渉に至らず信者間での何らかの解決をする者がいる可能性がないとはいえない。この点を念頭に置き、また、上記bで指摘した本件問題状況の程度を踏まえると、訴訟上の和解及び裁判外の示談において主張されたもの以外に、違法な献金勧誘等行為による顕在化していない被害が存在することは否定されないというべきである。
(エ) コンプライアンス宣言以前の不法行為の内容及び規模
[233] 上記(ア)から(ウ)までで説示したところからすれば、コンプライアンス宣言以前において、利害関係参加人の信者により行われた不法行為に該当する献金勧誘等行為について、被害を受けた人数及び被害の額ともに、類例のない膨大な規模の被害が生じていたということができる。

イ コンプライアンス宣言後の不法行為の有無・内容及び規模
(ア) コンプライアンス宣言の経緯及び内容等(認定事実(4)~(6)、(7)イ)
[234] 利害関係参加人の信者が経営する複数の物品販売店につき、平成19年以降、販売店の客に対し、当該客又はその親族の不幸と先祖の因縁等を結び付けて、不幸を免れるためには印章等の物品を購入する必要があるなどと売買契約の締結を執拗に迫り威迫困惑させるなどしたという特定商取引法違反の刑事事件が複数件発生し、利害関係参加人の信者が逮捕され、利害関係参加人の施設に対して強制捜査が行われるなどした上、これらの刑事事件の裁判において、平成19年12月から平成21年11月にかけて、それぞれ別の物品販売店4店に関し、物品販売店の経営者等である利害関係参加人の信者が刑罰(罰金刑又は執行猶予付き懲役刑)を科されることがあった。
[235] 利害関係参加人は、上記のように刑事事件が続く状況において、平成21年にコンプライアンス宣言を出しており、それまでの民事判決において不法行為の成否の判断に当たって繰り返し指摘されてきた要素に加え、上記の刑事事件で問題となっていた特定商取引法違反(威迫・困惑)に言及しつつ、教会指導者に対し、信者の法令遵守の指導監督を求める公文を発出するなどした。また、利害関係参加人は、その後も、同宣言の延長線上にあり、同宣言を拡充する趣旨の公文等を逐次発出するなどしており、平成27年に利害関係参加人の名称を現在の世界平和統一家庭連合に変更するに際しては、監督官庁である文化庁から、名前を隠しての宗教活動を行わないよう厳重に指導がされたことなどを受け、教会指導者等に対し、従前の取組の徹底に加え、教会施設の看板等や、伝道で使用するビラ、パンフレット、受講申込書類等に、「旧世界基督教統一神霊協会」などと、旧名称を明記するよう求める公文を発出した。また、利害関係参加人は、本件銃撃事件後に、順次、法令遵守に係る各種ガイドライン等を策定して発出しており、これらにおいて、①信者が一定の水準以上の献金を行う際には、書面による意思確認をし、献金を受領した際には領収証の発行を行う、②信者による献金のための新たな借入れを禁止する、③認知症の者などから献金受領はしない、④信者からの献金の際に、自発的な献金であって返還を求める意思がない旨などを記載した念書等の作成をしないことなどが定められている。
(イ) コンプライアンス宣言後の被害申告(訴訟提起等の件数)の傾向
a 民事判決及び訴訟上の和解についての傾向(認定事実(9)ア(オ)、イ(ウ))
[236] 利害関係参加人の信者による献金勧誘等行為に係る損害賠償請求に関し、コンプライアンス宣言の翌年である平成22年以降の民事訴訟の状況についてみると、32件の民事判決における169名の原告のうち、同年以降の献金の支払等につき不法行為が成立するとの判断がされたのは2件の3名であり、このうち、献金の支払等の開始時期が同年以降であるとされるのは1件の1名のみであり、不法行為が認められたもののうち、最も遅い時期の献金の支払等は平成26年のものとなっている。
[237] 訴訟の提起が前提となる訴訟上の和解についても同様の減少傾向がみられ、本件の記録上、訴訟上の和解をした者が448名確認できるところ、平成22年以降の献金の支払等につき損害賠償を請求した者で訴訟上の和解をした者は8件の9名であり、このうち、献金の支払等の開始時期が同年以降であるとする者は3件の3名であり、最も遅い時期での献金の支払等とされているのは平成28年のものとなっている。
b 裁判外の示談についての傾向(認定事実(9)ウ(オ))
[238] 裁判外の示談については、平成22年以降の献金の支払等につき通知書により損害賠償の請求をした者は179名と相当数存在し、また、請求が近時まで途切れておらず、民事判決及び訴訟上の和解とは異なる傾向がみられる。もっとも、上記179名につき、当該時期に被害を受けた(献金の支払等をした)と申告する者の数を時期ごとにみると、平成22年中に被害を受けたと申告している者の数は134名と相当の規模であり、その後しばらくの間は一定程度の数の被害申告があるものの、減少が続き、平成31年以降は、1桁台の人数となっている(平成31年〔令和元年〕及び令和2年がそれぞれ7名、令和3年及び令和4年がそれぞれ3名)。また、利害関係参加人の提出した資料によれば、通知書による請求件数(献金勧誘等行為の時期を問わない年別の送付件数)は、平成21年の156件からほぼ一貫して減少を続け、令和3年には6件となっている。
(ウ) コンプライアンス宣言後の本件問題状況の有無及び程度
[239] 利害関係参加人は、コンプライアンス宣言以降の徹底した取組により、32件の民事判決等で指摘された問題が根本から改善解消し、違法な献金勧誘等行為による被害がなくなっている旨を主張し、このことは訴訟提起件数等の数値の減少(上記(イ)a及びb)に表れている旨を指摘しており、確かに、利害関係参加人が指摘するとおり、同宣言後の被害申告(訴訟提起等の件数)には減少傾向がみられる。
[240] そこで、後記(エ)において本件問題状況の程度を踏まえたコンプライアンス宣言後の不法行為の内容及び規模の検討を行うに先立ち、まず、被害申告(訴訟提起等の件数)の傾向に係る考慮要素(後記a)、当該考慮要素を踏まえた同宣言後の本件問題状況の有無及び程度についての検討方法等(後記b)につき論じ、その上で、本件問題状況に対する根本的な対策が講じられたといえるか否か(後記c)、本件問題状況の残存の程度(後記d)につき論じて、コンプライアンス宣言後の本件問題状況の有無及び程度について検討することとする。
a 被害申告(訴訟提起等の件数)の傾向に係る考慮要素
[241] 本件問題状況におけるおそれが現実化することで不法行為に該当する献金勧誘等行為が生ずるということができるところ、不法行為に該当する献金勧誘等行為により被害を受けた者につき、[a]弁護士に委任するなどして、利害関係参加人に対して通知書を送付し、また、民事訴訟を提起するといった形で、被害申告が顕在化するものもあれば、[b]被害を訴えたとしても、利害関係参加人又はその信者との間で何らかの形で解決が行われて、顕在化しないもの、[c]被害を受けたにもかかわらず、被害を訴えないものといった類型が想定できる(以下、「被害申告が顕在化する類型」とは、上記[b]の類型を含まず、上記[a]の類型のみを指すものとする。)。
[242] 上記(イ)において指摘した数値面での傾向は、飽くまで上記[a]の類型についてのものであるところ、同類型(被害申告が顕在化する類型)の数値面に減少傾向がみられる場合には、本件問題状況も緩和している可能性があるとはいえるものの、このような数値面での減少傾向から、本件問題状況の緩和が直ちに認められるものではないし、本件問題状況に対する実効的な対策が講じられたことが直ちに認められるものでもない。上記[a]の類型についての数値面での減少傾向は、弥縫策の類によっても生じ得るから、本件問題状況の有無及び程度を検討するに当たっては、上記[b]及び[c]の類型も十分に念頭に置く必要がある。
(a) 数値面に係る考慮要素
① 民事判決及び訴訟上の和解についての傾向(上記(イ)a)に係る考慮要素(認定事実(5)エ、(9)ウ(オ))
[243] 法務局会議資料の内容からすれば、利害関係参加人の本部は、訴訟提起の件数の減少を重要な数値目標としているといえるところ、平成22年以降に成立した裁判外の示談において、合意額を請求額で除した割合(回収率)は約56%と半額を超える割合に達している。被害を訴える者の側からみれば、多大な労力及び長い期間が見込まれる訴訟の提起を回避すべく、裁判外の示談の段階で相当額の金銭を得て解決を行うとの意思決定に向かうことも考えられ、訴訟提起の件数の減少、ひいては、民事判決及び訴訟上の和解の数の減少については、裁判外の示談の傾向も併せて検討をする必要があるといえる。
② 裁判外の示談についての傾向(上記(イ)b)に係る考慮要素(認定事実(5)エ、(9)ウ(オ))
[244] まず、本件の記録上、コンプライアンス宣言の翌年である平成22年以降の献金の支払等につき通知書により損害賠償請求をしている者は179名と相当数存在する(このうち、裁判外の示談が成立したことが確認できる者は167名である。)。
[245] この点に関し、本件報告徴収の際に利害関係参加人が提出した資料によれば、通知書の送付件数は、コンプライアンス宣言後に減少傾向がみられるものの、本件銃撃事件をきっかけとして利害関係参加人に対する社会的な注目が高まった令和4年には、31件に増加し、令和5年2月から同年9月にかけて、合計124名と相当数の元信者が利害関係参加人に対して集団交渉等の申入れを行う通知書を送付している。上記の令和4年に送付があったとされる31件の通知書のうち、本件の記録上確認できるのは13件であり、その余の18件の通知書について、被害を受けたと申告されている時期は記録上明らかでなく、また、上記の令和5年に送付された124名の元信者の集団交渉等に係る通知書について、被害があったと申告されている時期も記録上明らかでない。そうすると、平成22年以降の献金の支払等につき通知書により損害賠償請求をする者の実数は、上記179名にとどまらないこと(被害申告が顕在化する類型〔上記[a]の類型〕の数が上記179名にとどまらないこと)が想定される。
[246] また、複数の法務局会議資料において、利害関係参加人の本部は、訴訟提起の件数の減少とともに、通知書の送付件数の減少も重要な数値目標としており、通知書の送付に至る前段階における信者間での解決、あるいは、問題が大きくなる前段階での本部等への相談が推奨されている。さらに、法務局会議資料には、数値目標の記載に関連して、通知書の送付の前段階でのクレーム数又は事前解決数が相当数あることや、これらの数が通知書の送付件数を上回っていることをうかがわせる内容の記載があり、被害申告が顕在化しない類型(上記[b]及び[c]の類型)が相当程度存在することが想定される。
(b) 内容面に係る考慮要素(コンプライアンス宣言後の被害申告の内容)
[247] 通知書により損害賠償請求をした上記179名のうち大部分が、コンプライアンス宣言後の献金勧誘等行為の態様として、本件問題状況が現実化した際にみられるのと同様の事実関係、すなわち、
[1] 利害関係参加人の信者が、入信前から自身や親族に、複雑な家庭環境、不幸な出来事、高齢等による判断能力の制約等があるなどの困難な事情を抱える者に対し、
[2] 利害関係参加人の教理を伝道する過程で、その教理に関連して、種々の深刻な問題の原因の多くは怨恨を持つ霊の因縁等によるものであり、このような問題を解消するためには献金等が必要である旨を繰り返し申し向けるなどして献金等を行うよう勧誘し、
[3] その結果、借財等により原資を捻出するなどして、本人や近親者等の生活の維持に重大な支障が生ずる献金等を繰り返し行わせたこと
などを指摘して、損害賠償を求めている(甲G及び報告書⑪の別紙1「被害通知・示談一覧表」のうち、別紙3「裁判外の示談一覧表(コンプライアンス宣言後関連)」の「番号」欄に掲記の番号に対応するもの)。
(c) 評価
[248] 被害申告の傾向に係る考慮要素についてこれまで説示してきたところからすれば、コンプライアンス宣言後においても、通知書の送付を中心として多数の被害申告があるものの、顕在化している被害申告の数は同宣言後において減少が続き、近時における被害申告の数は相当に減少しているといえる。しかし、平成22年以降の献金の支払等につき通知書により損害賠償請求をした者の実数が、本件の記録上確認できる上記179名にとどまらないことが想定されるだけでなく、上記の被害申告の数は、飽くまで、被害申告が顕在化する類型(上記(a)の[a]の類型)のものであり、本件問題状況の緩和を直ちに意味するものでも、本件問題状況に対する実効的な対策が講じられたことを直ちに意味するものでもない上、根本的な対策ではない弥縫策の類によっても減少し得るといえるところ、実際に、通知書送付に至る前段階における信者間での解決等が推奨されていることも考慮すると、被害申告が顕在化しない類型(上記(a)の[b]及び[c]の類型)が相当程度存在することが想定される点を十分に念頭に置く必要があるといえる。
b 被害申告の傾向に係る考慮要素を踏まえたコンプライアンス宣言後の本件問題状況の有無及び程度についての検討方法等
[249] 上記aで述べたところを踏まえると、コンプライアンス宣言後の本件問題状況の有無及び程度について検討を行うに当たっては、被害申告が顕在化する類型(上記a(a)の[a]の類型)の記録上把握できる数値面のみに着目するのは適当でなく、被害申告が顕在化しない類型(上記a(a)の[b]の類型)や被害申告がされない類型(上記a(a)の[c]の類型)を考慮する必要がある。
[250] そこで、まず、前提として、違法な献金勧誘等行為に対する利害関係参加人による指導監督の可否や機会の有無等(後記(a)及び(b))について検討し、その上で、コンプライアンス宣言後の本件問題状況の有無及び程度についての検討方法(後記(c))について論じることとする。
(a) 違法な献金勧誘等行為に対する利害関係参加人による指導監督の可否等
[251] 認定事実(1)イによれば、利害関係参加人は、本部に意思決定機関のほか事務執行機関として複数の局又は室を設置し、本部の下に全国各地の地方組織として地区本部、教区本部・協会・支部教会、認定伝道所といった機関を設置しており、系統立った階層構造の組織を有しているといえるところ、利害関係参加人としては、その信者によるその宗教活動に関係する行為について何か問題があれば、このような組織を通じるなどして指導監督を及ぼすことが可能であったと考えられる。
[252] この点に関し、利害関係参加人は、利害関係参加人から独立した別個の組織である連絡協議会又はその後継組織である信徒会が存在しており、利害関係参加人の信者の行う献金勧誘等行為は、それらの組織の構成員である信者を中心として自主的に行われているものである旨を主張している。
[253] しかし、連絡協議会又は信徒会が利害関係参加人から独立した別個の組織として活動をしているのであれば通常作成されているはずの規約類及び会計帳簿類等といった、組織の実在を示す的確な証拠は本件で提出されていない。かえって、コンプライアンス宣言及び同宣言後に利害関係参加人が発出した文書類や法務局会議資料によれば、利害関係参加人は、地区、教区、教域及び教会といった利害関係参加人の傘下にある公式の機関のみを対象として献金勧誘等行為に係る禁止事項を伝達しており(認定事実(5)~(7)参照)、信者組織が利害関係参加人から独立した別個の組織として活動をしてきたのであれば、当該組織に対して当然行われるはずの働き掛け(献金勧誘等行為に係る禁止事項の伝達)等が行われた形跡はうかがわれず、連絡協議会又は信徒会が利害関係参加人から独立した別個の組織として存在していたというには重大な疑義がある。
[254] また、仮に、連絡協議会又は信徒会に何らかの実体があるとしても、コンプライアンス宣言以前において、約30年もの長期間にわたり、全国的に共通・類似の方法で行われてきた献金勧誘等行為は、正に利害関係参加人の宗教活動にほかならず、このような行為が、利害関係参加人の信者により数多く行われていながら、利害関係参加人による連絡協議会又は信徒会を介しての指導監督さえ及ばない形で継続してきたものとは想定し難い上、利害関係参加人が信者による献金勧誘等行為に対して指導監督を及ぼすことができない状況があったことをうかがわせる事情も見当たらない。そして、同宣言後においても、そのような状況が生じたことはうかがわれない。
[255] 以上によれば、利害関係参加人は、遅くとも昭和50年代の後半頃から、コンプライアンス宣言の前後を通じ、信者による献金勧誘等行為に対して指導監督を及ぼすことができたといえる。
(b) 違法な献金勧誘等行為に対する利害関係参加人による指導監督の契機及び機会の有無等
① 霊感商法に対する指導監督の実情
[256] 怨恨を持つ先祖の霊の因縁等により不幸が生ずるといった不安を利用して物品の購入をさせるといった霊感商法は、昭和54年頃までに社会問題化していたところ、昭和59年には、利害関係参加人の信者であった被告人3名が、被害女性に対し、その家庭が不幸続きであることを知るやこれを利用して同女から金員を喝取しようと企て、同女の亡くなった親族の因縁により不幸が起こる旨を申し向けるなどして執拗に同女を脅迫して1200万円を喝取したとして、恐喝罪の有罪判決(いずれも懲役2年6月、執行猶予5年)が宣告された。その後、利害関係参加人は、昭和62年に、霊感商法問題に関して東京都の総務局行政部指導課を訪れた際に、信者に対して指導をするようにとの指示を受け、ハッピーワールドに対し、委託販売に係る申入れを行った。その後、ハッピーワールドは、当時の厚生省等に対し、「いわゆる『霊感商法』といわれる誤解を生ずるような物品販売は一切禁止することを昭和62年3月末をもって弊社関連業者に徹底通知」した旨を文書で報告するとともに、利害関係参加人に対し、これらの顛末等を報告する内容の文書を送付し、昭和62年頃以降は被害申告の件数が減少するようになった(認定事実(2)ウ(イ)、(ウ))。
[257] しかし、コンプライアンス宣言のきっかけといえる、平成19年から平成21年にかけて発生した4件の刑事事件では、先祖の因縁等を殊更に告げて不安をあおり高額な物品の購入をさせるといった、霊感商法におけるのと同様の手法が用いられていたほか、上記刑事事件の捜査において押収された販売マニュアル類については、昭和50年代後半頃から用いられてきた多数の販売マニュアル類との間に、文言及び記載内容の同一性・類似性がみられるなどしており(認定事実(2)イ、(4))、霊感商法からの連続性がみられた。
② 違法な献金勧誘等行為に対する指導監督の契機及び機会
[258] 利害関係参加人は、その信者による献金勧誘等行為につき、コンプライアンス宣言以前において、多数の民事訴訟を提起されており、平成6年には、その信者による献金勧誘等行為につき不法行為が成立するとした上で利害関係参加人の責任を認める判決がされ、それ以降も、本件問題状況が現実化した際にみられるような事実関係が認定されて利害関係参加人の損害賠償責任を認める判決が繰り返され、同宣言の出される前年の平成20年以前において、27件の民事判決で117名の原告につき、利害関係参加人の損害賠償責任が認められ、認容額の合計額は約6億3700万円となり、これに、同年以前に成立した訴訟上の和解及び裁判外の示談の人数及び和解金・示談金を合わせると、879名もの人数につき、約99億8300万円もの額の支払義務が利害関係参加人に生じている(認定事実(5)ア(ア))。
[259] このように、利害関係参加人にとって明確に認識できる範囲だけでも、その信者による献金勧誘等行為によって、社会通念上極めて重大で深刻といえる状況が存在していたということができる。
[260]③ 上記①及び②によれば,利害関係参加人は、信者による献金勧誘等行為に対する指導監督のための十分な契機及び機会を有していたといえる。
(c) コンプライアンス宣言後の本件問題状況の有無及び程度についての検討方法
[261] 以上述べたところからすれば、利害関係参加人は、遅くとも昭和50年代の後半頃から、その信者による献金勧誘等行為に対して指導監督を及ぼすことができたといえ(上記(a))、また、指導監督のための十分な契機及び機会を有していたものである(上記(b))。
[262] それにもかかわらず、霊感商法が社会問題となった後にビデオ受講施設を通じた布教等が行われるようになった昭和50年代後半頃から、コンプライアンス宣言が出された平成21年頃までの約30年の長期間にわたり、上記ア(ウ)bのとおり、利害関係参加人の信者による献金勧誘等行為について、本件問題状況が、全国的に、しかも、多くみられたのである。
[263] そうすると、本件問題状況は相当に根深いものであって、コンプライアンス宣言及びその後の同様の施策にあるように、禁止行為を定めるなどして教会指導者等に伝達や周知するといった対応等があったとしても、本件問題状況に対する対策として、利害関係参加人の組織体質及び相当数の信者の行動の在り方を大きく変化させるような根本的な対策(本質的で実効性のある対策)が講じられたといえなければ、本件問題状況は残存していくと考えるのが合理的である。
[264] そこで、コンプライアンス宣言後の本件問題状況についての検討として、以下、本件問題状況に対する根本的な対策が講じられたといえるか否かにつき検討する。
c 本件問題状況に対する根本的な対策が講じられたといえるか否か
(a) 通常行われるであろう調査及び指導監督等が行われた形跡がうかがわれないこと
① 調査及び指導監督の実施状況
[265] 本件問題状況に対して根本的な対策を講じるためには、全国で活動を行っている利害関係参加人の信者について、大規模で実質の伴った調査を行うなどして、献金勧誘等行為の実情及び本件問題状況が生ずる原因を把握することが対策の出発点として必要となると考えられるところ、そのような調査等が行われた形跡はない。
[266] また、利害関係参加人は、コンプライアンス宣言及びその後の施策について、公文等を発出し、又は、機関誌等に掲載しているところ、さらに、教会指導者等を通じて一般信者に対する指導監督を繰り返し行ってきた旨を主張するが、一般信者に対する指導監督の根拠として挙げるのは、専ら教会指導者や信者の供述であり、これらの取組が実際に一般信者レベルにまで広く及んでいたとすれば、その際に使用された説明文書などの客観的な裏付け資料が多数存在することが想定されるが、そのような裏付け資料は提出されていない。
[267] このほか、コンプライアンス宣言において、利害関係参加人が信者の法令遵守の状況を客観的に評価して指導監督につなげるために導入するとしたKPI(重要業績評価指標)に関し、文部科学大臣は、本件報告徴収において、KPIが利害関係参加人の設定した目標の達成に有用であるかどうかを検討するため、①利害関係参加人の設定した目標等、②利害関係参加人が目標達成のために決定的に重要なものとして選出した指標、③実際に利害関係参加人で起きる事象と当該指標への当てはめや評価方法、④利害関係参加人の目標と方針が利害関係参加人の一部門である法務局に展開された経緯や状況、⑤KPIの具体的な運用状況の諸点等を明らかにするよう繰り返し質問を行っており、根本的な対策の一環と評価し得る形でKPIの導入と運用がされていたのであれば、利害関係参加人にとって、上記の諸点等に関して実質的な回答をするのが合理的であるといえるところ、利害関係参加人が提出した資料の中にはKPIの算定基準及び集計結果が記載された表等が一部存在するものの、利害関係参加人から上記の諸点等に関して実質的な回答はされておらず、実質的な回答をしないことについての合理的な説明もされていない(認定事実(8)ア)。
② 法令遵守違反に対する指導改善措置及び制裁等の実施状況
[268] 利害関係参加人は、平成24年4月、KPIに関し、
① 「コンプライアンス違反」があった場合、法務局は事実調査をして責任役員会に報告の上、当該責任者に対して改善勧告書を送付すること、
② 改善勧告書を受けた責任者は、1か月以内に、改善計画書を提出した上、計画書の内容を実行しなければならないこと、
③ 改善計画書が期限内に提出されない場合や計画書に書かれたことが実行されないなどの場合は、改善がされるまで、問題の重要度に応じたKPIのマイナスポイントを与えられるという形で業務評価に反映すること
などといった具体的方策を定めた上で通知していたところ、文部科学大臣は、本件報告徴収において、上記の方策の実施状況について繰り返し質問したものの、利害関係参加人は、特定の事案に対する改善指導、制裁措置の資料を提出していないことから実績がないということはないなどと回答するにとどまっており、これらの方策が実際に行われた形跡はうかがわれない(認定事実(8)イ)。
[269] また、利害関係参加人は、コンプライアンス宣言の中で平成21年に発出した公文において、それまでの民事判決において献金勧誘等行為に係る不法行為の成否の判断に当たって繰り返し指摘されてきた要素に触れつつ、禁止される行為を具体的に挙げて教会指導者に対して信者への指導を徹底するよう指示し、また、教会指導者の指導に問題があった場合に具体的な処分を行うことがある旨の言及をしている(認定事実(5)ア)。この点に関し、利害関係参加人においては、その信者一般等につき、除名などの制裁等を科すことのできる規定等を有しており、上記の制裁等は利害関係参加人の責任役員会等の機関の意思決定を通じて行われることとなっている(認定事実(8)ウ)。
[270] そして、コンプライアンス宣言後の献金勧誘等行為(平成22年以降の献金の支払等に係る献金勧誘等行為)につき、利害関係参加人の責任を認めた判決が少数ながら存在し、訴訟上の和解も少数ながら存在するだけでなく、上記の献金勧誘等行為につき、弁護士に委任した上で利害関係参加人の本部に通知書が送付され、裁判外の示談に至ったものが167名もの多数存在し(認定事実(9)ア(オ)、同イ(ウ)、同ウ(オ))、その大部分が、先祖の因縁等と不幸等とを結び付けた献金勧誘など、同宣言等により利害関係参加人が禁止した行為が利害関係参加人の信者により行われた事実を指摘しつつ被害を申告している(上記a(b))。
[271] しかし、コンプライアンス宣言以降の利害関係参加人の責任役員会議において、利害関係参加人の意思決定に従わなかった者等に対する除籍処分の制裁等が議題となった例は複数あるにもかかわらず、同宣言等の施策に違反した者に対する制裁等を議題として責任役員会が開催された例はなく、法令遵守違反を理由とする信者等に対する制裁等やそのための検討・調査が行われた形跡はうかがわれない(認定事実(8)ウ(ウ))。
③ 調査、指導監督、改善措置及び制裁等の実施状況についての評価
[272] 上記①及び②で指摘したところからすれば、現在に至るまで、利害関係参加人の組織体質及び相当数の信者の行動の在り方を大きく変化させるような、根本的な対策(本質的で実効性のある対策)が実際に講じられた形跡や、講じられようとしていたのであれば通常されるはずの行動がとられた形跡は、いずれもうかがわれない。
(b) 対策の具体的内容及び実情につき法令遵守実現の観点から問題のある部分がみられること
[273] 利害関係参加人の本部において法令遵守を所掌している法務局が傘下の各単位の法務担当責任者との定例の会議等において用いた複数の資料(法務局会議資料)の内容によれば、利害関係参加人は、コンプライアンス宣言以降、信者の献金の意思を確認するためであるとして合意書面や念書等による記録化を推奨している(認定事実(5)エ)。
[274] 他方、利害関係参加人に対して損害賠償を請求する民事訴訟や裁判外の示談交渉等において、元信者の下には献金の時期及び額の分かる記録(領収証等)が残っていないため、銀行残高やメモ類等からの推測を行わざるを得ず、立証上の困難が生ずることが長年にわたって多くみられており、民事訴訟や裁判外の交渉等の相手方である利害関係参加人においても、このような状況を当然に把握していたといえるところ、コンプライアンス宣言以降においても、本件銃撃事件により利害関係参加人の信者の献金等が社会的に注目を集めるに至るまでは、利害関係参加人が、献金等を行った信者宛てに領収証の発行等を行うように指導等をした形跡はうかがわれない(認定事実(7)イ)。
[275] さらに、合意書面や念書等の作成の実情についてみても、本件の記録上、コンプライアンス宣言以降において、不起訴合意又は清算合意を含んだ合意書面等が作成された事案が7件確認されているところ、このうち6件は、一旦これらの書面が作成された後に、判決において効力を否定されるか、訴訟上の和解又は裁判外の示談において相当額の金銭の支払がされるかしており、信者の献金の意思を確認するためであるとして作成される書面の作成状況に関して問題のある部分が存在することがうかがわれる(認定事実(5)エ)。
(c) 評価
[276] 上記(a)及び(b)によれば、コンプライアンス宣言以降、現在まで、利害関係参加人の組織体質及び相当数の信者の行動の在り方を大きく変化させるような根本的な対策(本質的で実効性のある対策)が講じられたということはできず、同宣言の後も、本件問題状況が残存していく状態にあったと考えるのが合理的である。
d 本件問題状況の残存の程度
[277] これまで説示してきたところによれば、
① コンプライアンス宣言以降、利害関係参加人の組織体質及び相当数の信者の行動の在り方を大きく変化させるような根本的な対策が講じられたとはいえず、本件問題状況が相当に根深いものであったことからすると、本件問題状況は残存していく状態にあったと考えるのが合理的であること、
② 実際に、同宣言後の被害申告(顕在化する形での被害申告)が相当数存在し、数の減少はあるものの近時まで途切れることなく続いており、しかも、申告する被害の内容(上記a(b))につき、本件問題状況が現実化した際にみられる事実関係と同様のものであること
を指摘することができる。
[278] この点に関し、顕在化する形での被害申告の数は、コンプライアンス宣言後において減少傾向が続き、近時における数は相当に減少しているが、既に説示したとおり、このような被害申告の数は、本件問題状況の緩和を直ちに意味するものではなく、根本的な対策ではない弥縫策の類によっても減少し得るといえるところ、実際に、通知書送付に至る前段階における信者間での解決等が推奨されていることも考慮すると、被害申告が顕在化しない類型に該当するものが相当程度存在することが想定される点を十分に考慮すべきである(上記a(c))。
[279] 以上によれば、コンプライアンス宣言以前において利害関係参加人の信者による献金勧誘等行為について全国的に多くみられていた本件問題状況は、相当に根深いものであるところ、同宣言後は緩和傾向がみられ、同宣言以前との比較において相当程度緩和しているものとうかがわれるが、根本的な対策が講じられたとはいえないことからすると、同宣言後においても直ちに大きく改善されることはなく残存しており、その後も途切れず残存していく状態にあったといえ、現在においても、なお看過できない程度に残存していると解するのが相当である。
(エ) 本件問題状況の程度を踏まえたコンプライアンス宣言後の不法行為の内容及び規模の検討
a 裁判外の示談を中心に相当程度の被害が存在すること
[280](a) コンプライアンス宣言の翌年である平成22年以降の献金の支払等につき利害関係参加人に対して損害賠償請求をした上で金銭の支払を得た者についてみると、32件の民事判決のうちの2件の原告3名については、同年以降の献金の支払等に係る認容額の合計額は約1760万円であり、訴訟上の和解が成立した8件の原告9名については、同年以降の献金の支払等に係る和解金の推計額の合計額は約5360万円である。そして、裁判外の示談については、同年以降の献金の支払等について損害賠償を請求して裁判外の示談に至った167名の示談金のうち、同年以降の献金の支払等に係る示談金の推計額の合計額は約9億1300万円である。これらの3つの類型の合計人数は179名、合計額は約9億8500万円となる(認定事実(9)エ(ウ))。
[281](b) 32件の民事判決に係る不法行為の内容及び規模等について既に説示したところ(上記ア(イ))を基に、本件問題状況の残存の程度について指摘した点(上記(ウ))を踏まえると、上記(a)の2件(3名)の民事判決の事案については、本件判断基準の下においても、当該民事判決において認められたのと同種・同様の不法行為が認められる蓋然性は高いということができ、当該民事判決において献金勧誘等行為につき不法行為が成立すると判断された原告につき、当該民事判決で認定された献金勧誘等行為に係る不法行為があった蓋然性が高いといえるほか、当該民事判決で認定された損害額の合計額である約1760万円に準ずる程度の損害が生じた蓋然性が高いといえる。
[282] また、訴訟上の和解及び裁判外の示談についてみると、訴訟上の和解及び裁判外の示談が成立した者の大部分は、本件問題状況が現実化した際にみられるのと同様の事実関係を具体的に指摘して献金勧誘等行為につき被害を訴えている上、訴訟上の和解及び裁判外の示談が成立した者の約9割の者が100万円以上と、いわゆる見舞金の水準にとどまらない程度の和解金又は示談金の支払合意をしている(認定事実(9)イ(ア)、ウ(ア))。
[283](c) これらを基に、本件問題状況の残存の程度について指摘した点(上記(ウ))を踏まえると、民事判決と訴訟上の和解と裁判外の示談とで蓋然性の程度の差異はあるものの、上記(a)に記載した合計人数(民事判決につき3名、訴訟上の和解につき9名、裁判外の示談につき167名の合計である179名)とそれほど異ならない程度の人数について、本件判断基準の下でも利害関係参加人の信者による献金勧誘等行為につき、合理的な推測として、不法行為が成立すると認めることができ、上記のとおり不法行為が成立する事案において、上記(a)に記載した認容額及び推計額の合計額(民事判決につき約1760万円、訴訟上の和解につき約5360万円、裁判外の示談につき約9億1300万円の合計である約9億8500万円)とそれほど異ならない程度の損害が生じたと認めることができる。なお、利害関係参加人が個々の被害申告者の説明の信用性について指摘している点は、上記の認定を覆すに足りるものではない。
b 顕在化していない被害の存在が否定されないこと
[284] ①本件問題状況の残存の程度について指摘した点(上記(ウ)d)、②コンプライアンス宣言後において、献金勧誘等行為による被害申告が顕在化しない類型に当たるものが相当程度存在すると想定されること(上記(ウ)a(c))、③周囲の信者等との人間関係等といった心理的な障壁や、献金等についての領収証等が発行されていないことに伴う立証上の困難といった理由から、違法な献金勧誘等行為により被害を受けた者の全てが弁護士に依頼をするなどして解決を求めるとは考え難いこと(上記ア(ウ)c参照)などを踏まえると、上記の民事判決、訴訟上の和解及び裁判外の示談において主張されたもの以外に、違法な献金勧誘等行為による顕在化していない被害が存在することは否定されないというべきである。
c 評価
[285] 上記a及びbで説示したところからすれば、コンプライアンス宣言後においても、利害関係参加人の信者により行われた不法行為に該当する献金勧誘等行為について、その被害は縮小傾向にあるものの、近時まで途切れることなく続いており、なお看過できない程度の規模の被害が生じているということができる。
[286] 利害関係参加人の信者により行われた不法行為に該当する献金勧誘等行為(上記(2))につき、コンプライアンス宣言の前後を通じて広く当てはまる点として、上記の献金勧誘等行為は、利害関係参加人の教理を伝道する過程の一環として、利害関係参加人の信者を獲得し、利害関係参加人のために献金等をさせることを目的として行われており、上記の献金勧誘等行為の内容が利害関係参加人の教理と密接に関連し、上記の献金勧誘等行為自体がその教理の実践とされていたことを指摘することができる(上記(2)ア(イ)c(a)及び(c)参照)。
[287] そうすると、利害関係参加人の信者により行われた不法行為に該当する献金勧誘等行為については、総じて、その目的は利害関係参加人の資金や信者の獲得にあり、その効果も利害関係参加人のために生ずるという利害関係参加人の宗教活動であって、利害関係参加人の事業と非常に密接な関連性があるということができる。また、利害関係参加人の関与等の面についてみても、利害関係参加人が、コンプライアンス宣言の前後を通じて、利害関係参加人の信者による献金勧誘等行為に対して指導監督を及ぼすことができたといえることは、既に説示したとおりである(上記(2)イ(ウ)b(a))。
[288] 以上によれば、利害関係参加人の信者により行われた不法行為に該当する献金勧誘等行為(上記(2))の多くのものは、利害関係参加人の事業である宗教活動の執行又は運営として行われたものと評価でき、社会通念上、利害関係参加人の行為ということができるのであって、「宗教法人について」(法81条1項柱書き)に該当するというべきである。
ア コンプライアンス宣言の前後を通じた不法行為(「法令に違反」する行為)の規模等
(ア) コンプライアンス宣言の前後を通じた不法行為全体の規模及び継続性(認定事実(9)エ)
[289]a 利害関係参加人の信者による献金勧誘等行為について損害賠償請求を行った者に関し、
① 32件の民事判決のうち、26件での原告140名については、利害関係参加人の損害賠償責任を認める内容の確定判決を得ており、最終的な認容額の合計額は18億0167万2477円であり、
② 訴訟上の和解が成立した100件の原告448名の和解金の合計額は61億1941万1071円であり、
③ 裁判外の示談をした971名の示談金の合計額は125億2680万5609円である。
[290] これらの3つの類型の合計人数は1559名、合計額は204億4788万9157円となる。
[291]b 上記aのうち、コンプライアンス宣言の出された平成21年以前の献金の支払等について損害賠償の請求をした者についてみると、
① 32件の民事判決のうちの31件の原告168名がこれに当たり、同年以前の献金の支払等に係る認容額の合計額は約17億8400万円であり、
② 訴訟上の和解が成立した者のうちの97件の445名がこれに当たり、同年以前の献金の支払等に係る和解金の推計額の合計額は約60億6600万円であり、
③ 裁判外の示談が成立した者のうちの921名がこれに当たり、同年以前の献金の支払等に係る示談金の推計額の合計額は約116億1300万円である。
[292] これらの3つの類型の合計人数は1534名、合計額は約194億6300万円となる。
[293]c 上記aのうち、コンプライアンス宣言の翌年である平成22年以降の献金の支払等について損害賠償の請求をした者についてみると、
① 32件の民事判決のうちの2件の原告3名がこれに当たり、同年以降の献金の支払等に係る認容額の合計額は約1760万円であり、
② 訴訟上の和解が成立した者のうちの8件の9名がこれに当たり、同年以降の献金の支払等に係る和解金の推計額の合計額は約5350万円であり、
③ 裁判外の示談が成立した者のうちの167名がこれに当たり、同年以降の献金の支払等に係る示談金の推計額の合計額は約9億1360万円である。
[294] これらの3つの類型の合計人数は179名、合計額は約9億8470万円となる。
[295]d そして、既に説示したとおり、利害関係参加人の信者により行われた不法行為に該当する献金勧誘等行為について、コンプライアンス宣言以前において、被害人数及び被害額とともに、類例のない膨大な規模の被害が生じていたということができ(上記(2)ア(エ))、また、同宣言後においても、被害は縮小傾向にあるものの、近時まで途切れることなく続いており、なお看過できない程度の規模の被害が生じているということができる(上記(2)イ(エ)c)。
(イ) 利害関係参加人の信者により行われた不法行為に該当する献金勧誘等行為の態様の悪質性及び結果の重大性
[296] コンプライアンス宣言の前後を通じて認められる、利害関係参加人の信者により行われた不法行為に該当する献金勧誘等行為(上記(2))については、
[1] 利害関係参加人の信者が、入信前から自身や親族に、複雑な家庭環境、不幸な出来事、高齢等による判断能力の制約等があるなどの困難な事情を抱える者に対し、
[2] 利害関係参加人の教理を伝道する過程で、その教理に関連して、種々の深刻な問題の原因の多くは怨恨を持つ霊の因縁等によるものであり、このような問題を解消するためには献金等が必要である旨を繰り返し申し向けるなどして、献金等を行うよう勧誘し、
[3] その結果、借財等により原資を捻出するなどして、本人や近親者等の生活の維持に重大な支障が生ずる献金等を繰り返し行わせていること
などを指摘することができ、本件問題状況が現実化しているものといえる。
[297] このように、利害関係参加人の信者により行われた不法行為に該当する献金勧誘等行為の態様は、総じて悪質であり、また、その結果についても、資金面の問題を通じて本人や近親者等の生活の維持に重大な支障が生じ、長期間にわたって深刻な影響を受けた者が相当数存在すると推認され、重大であるといえる。

イ 要件該当性の判断
[298] 利害関係参加人の信者により行われた不法行為に該当する献金勧誘等行為(「法令に違反」する行為)は、コンプライアンス宣言前後の約40年の長期間にわたり、全国的な範囲で行われており、総体として、類例のない膨大な規模の被害を生じさせたものといえ、同宣言後についてみても、その被害は縮小傾向にあるものの、近時まで途切れることなく続いており、なお看過できない程度の規模の被害が生じている。そして、利害関係参加人の信者により行われた不法行為に該当する献金勧誘等行為の態様の悪質性及び結果の重大性について説示したところも踏まえると、上記の献金勧誘等行為は、個人の利益である財産権及び生活の平穏等の侵害を通じ、単に公共の福祉を害するというだけでなく、総体として、「法令に違反して、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為」(法81条1項1号)に該当するものというべきである。
ア 信教の自由の考慮について
[299](ア) 宗教法人の解散命令制度は、法令に違反して、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為(法81条1項1号)等があり、宗教団体に法律上の能力を与えたままにしておくことが不適切となった場合において、司法手続によって宗教法人を強制的に解散し、その法人格を失わせることが可能となるようにしたものであり、専ら宗教法人の世俗的側面(非宗教的側面)を対象とし、かつ、専ら世俗的目的(非宗教的目的)によるものであって、宗教法人及び信者の精神的・宗教的側面に容かいする意図によるものではない(法律上の能力を与えたままにしておくことの適否の限度で審査を行うものであって,宗教法人及び信者の教理や活動全般の是非を評価するなど、その精神的・宗教的側面に立ち入ろうとするものではない。)。また、解散命令によって宗教法人が解散しても、信者は、法人格を有しない宗教団体を存続させ、あるいは、団体又は法人を新たに適正な形で結成することが妨げられる効果があるわけではなく、宗教上の行為を行い、その用に供する施設や物品を新たに調えることが妨げられるわけでもない。すなわち、解散命令は、それ自体は信者の宗教上の行為を禁止したり制限したりする法的効果を一切伴わないものである(最高裁平成8年決定、最高裁令和7年決定参照)。
[300] もっとも、宗教法人の解散命令が確定したときは、その清算手続が行われ(法49条2項、51条)、清算に係る当該宗教法人の規則の定めの有無及び内容いかんによって最終的な帰属関係は異なり得るものの、当該宗教法人に帰属する財産を用いて信者らが行っていた宗教上の行為を継続するのに支障を生じさせることがあり得る(法50条参照)。このように、宗教法人に関する解散命令が、信者の宗教上の行為自体を法的に制約する効果を伴わないとしても、支障を生じさせることがあり得ること及び憲法の保障する信教の自由の重要性に鑑みると、宗教法人に解散を命ずるためには、法81条1項柱書き及び同項1号に該当することに加え、解散命令が、判断時までの同号該当行為を踏まえた当該宗教法人に対する措置として必要でやむを得ないものといえることを要すると解すべきである。
[301](イ) この点に関し、申立人は、法81条1項1号の「法令に違反して、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為をした」との文言は、同項4号の「一年以上にわたつて代表役員及びその代務者を欠いていること」などの文言とは異なり、現在性を要求しているとはいえないなどとして、解散命令の可否の判断に当たっては、過去の法令違反事実の存在をもって足り、その後改善傾向が認められるか否かや再発のおそれの有無までは問わない旨を主張する。
[302] しかし、法令に違反して、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為(同項1号)があった場合に、宗教団体に法律上の能力を与えたままにしておくことが不適切といえるか否かを判断するといった解散命令の判断の性質に加え、憲法が保障する信教の自由の重要性にも鑑みれば、過去のものを含めた法令違反事実に加え、現在に至るまでの状況及び将来の再発のおそれなどを踏まえ、判断時において解散命令が必要でやむを得ないものといえるか否かを検討すべきである。
[303] もっとも、他方で、既に説示したとおり、宗教法人の解散命令制度は、専ら宗教法人の世俗的側面を対象とし、かつ、専ら世俗的目的によるものであって、宗教法人や信者の精神的・宗教的側面に容かいする意図によるものではないこと、解散命令は、信者の宗教上の行為を禁止したり制限したりする法的効果を一切伴わないものであり、飽くまで、法律によって与えられた地位である宗教法人としての法人格につき、それを与えたままにしておくことが不適切となった場合に当該法人格を失わせるとの法的効果を有するものにとどまり、当該法人格の喪失により事実上生ずる影響は、法人格を有していたことに伴う反射的利益に対するものということができることを踏まえれば、利害関係参加人の主張する点のうち、解散の緊急性が現在していることが必須であるといった解釈は採用することができない。

イ 解散命令が必要でやむを得ないといえるか否かの検討
(ア) 献金勧誘等行為に係る被害と利害関係参加人の対応
[304]a 既に説示したとおり、利害関係参加人の信者により行われた不法行為に該当する献金勧誘等行為は、約40年もの長期間にわたり、全国的な範囲で行われており、総体として、類例のない膨大な規模の被害を生じさせているものであり、コンプライアンス宣言後についてみても、その被害は縮小傾向にあるものの、近時まで途切れることなく続いており、なお看過できない程度の規摸の被害が生じているということができる。また、上記の献金勧誘等行為の態様は総じて悪質であり、その結果についても、資金面の問題を通じて本人や近親者等の生活の維持に重大な支障が生じ、長期間にわたって深刻な影響を受けた者も相当数存在すると推認され、重大であるといえる。このような被害が生じたこと自体は、その被害に対し、損害賠償金、和解金、示談金等の形で後に金銭の支払がされたとしても、変わるところはない。
[305]b 利害関係参加人の信者により行われた不法行為に該当する献金勧誘等行為は、本件問題状況が現実化した際にみられるものといえるところ、本件問題状況に関し、利害関係参加人は、32件の民事判決、訴訟上の和解及び裁判外の示談に係る膨大な数の事案(これらの3つの類型における、原告及び被害申告者の合計人数は約1560名、認容額、和解金及び示談金の合計額は約204億4800万円である。)に接し、本件問題状況が現実化した際にみられる事実関係について繰り返し指摘を受けており、取り分け、32件の民事判決における169名の原告に関しては、上記の事実関係を判決で指摘され、法令上許容されないとの司法判断が繰り返されているのである。
[306]c 利害関係参加人は、コンプライアンス宣言の前後を通じて、その信者による献金勧誘等行為に対して指導監督を及ぼすことができたといえることは既に説示したとおりであり、また、上記bの32件の民事判決、訴訟上の和解及び裁判外の示談は、指導監督のための十分な契機及び機会であったといえるのであって、利害関係参加人において、本件問題状況に対し、根本的な対策(本質的で実効性のある対策)を講ずべき状態が継続していたといえる。
[307] それにもかかわらず、利害関係参加人は、コンプライアンス宣言以降においても、本件問題状況に対して根本的な対策を講じているとはいえず、その結果、利害関係参加人の信者により行われた不法行為に該当する献金勧誘等行為によって上記aのような被害が近時まで途切れることなく継続的に発生しているのであるから、もはや、利害関係参加人に事態の改善を図ることを期待するのは困難というべきである。
[308] そして、上記の献金勧誘等行為による被害の全体像に加え、現在においても、本件問題状況、すなわち、同種類似の被害を生じさせるおそれがある状況がなお看過できない程度に残存しているところ、本件問題状況が現実化した際にみられる、利害関係参加人の信者により行われる不法行為に該当する献金勧誘等行為の特徴(すなわち、利害関係参加人の信者が、自身や親族に困難な事情を抱える者に対し、種々の深刻な問題の原因の多くは怨恨を持つ霊の因縁等によるものであり、このような問題を解消するためには献金等が必要である旨を繰り返し申し向けるなどして、献金等を行うよう勧誘し、その結果、借財等により原資を捻出するなどして、本人や近親者等の生活の維持に重大な支障が生ずる献金等を繰り返し行わせるという特徴)は、上記の献金勧誘等行為の背景事情(すなわち、利害関係参加人の信者は、利害関係参加人の教理を伝道する過程の一環として、その信者を獲得し、利害関係参加人のために献金等をさせることを目的として、献金勧誘等行為をしており、利害関係参加人の信者によるこのような献金勧誘等行為の内容は、利害関係参加人の教理と密接に関連し、献金勧誘等行為自体がその教理の実践とされていたという背景事情)が存在することにより生じやすくなっているという関係にある(上記2(2)ア(イ)c(c)参照)。このような構造の下、利害関係参加人は、不法行為に該当する上記の献金勧誘等行為によって得られた献金収入等につき、法人格を利用して収受管理し、宗教法人に与えられた税制上の優遇措置を受けていることを指摘することができる。
[309] 以上の諸点は、解散命令が必要でやむを得ないものといえるか否かの判断に当たって十分に考慮されるべきである。
(イ) 解散命令が必要といえるか否か
[310] 宗教法人における法人格は、宗教活動の便宜のために与えられていると解されるところ(法1条、2条)、利害関係参加人は、その宗教活動の過程で生じた、その信者により行われた不法行為に該当する献金勧誘等行為(法令違反行為)により、類例のない甚大な被害を生じさせ、現在においても、同種類似の被害を生じさせるおそれがある状況がなお看過できない程度に残存しているところ、利害関係参加人に事態の改善を図ることを期待するのは困難というべきである。
[311] また、利害関係参加人は、上記(ア)で説示した構造の下、不法行為に該当する上記の献金勧誘等行為によって得られた献金収入等につき、法人格を利用して収受管理し、宗教法人に与えられた税制上の優遇措置を受けている。
[312] 以上によれば、利害関係参加人に上記の法人格を与えたままにしておくことは極めて不適切であり、このような事態への対処としては、もはや、解散によってその法人格を失わせるほかに適当かつ有効な手段は想定し難く、解散を命ずることが必要というべきである。
(ウ) 解散命令がやむを得ないといえるか否か
[313] 利害関係参加人は、司法機関により、利害関係参加人の信者による不法行為に該当する献金勧誘等行為について、法令上許容されないとの判断を繰り返し受け、さらに、コンプライアンス宣言の後においても上記の献金勧誘等行為につき通知書による多数の被害申告も受けるなどしており、本件問題状況に対する根本的な対策を講ずる契機及び機会を有していたにもかかわらず、同宣言以降も、上記の根本的な対策を講ずることなく、本件問題状況を徹底して解消するための方策を講じていないのであり、現在まで不十分な対応に終始しているといえる。
[314] そうすると、上記(ア)で指摘した点、特に、利害関係参加人の信者により行われた不法行為に該当する献金勧誘等行為は、本件問題状況が現実化した際にみられるものであるところ、上記の献金勧誘等行為により、これまでに類例のない甚大な被害が生じており、現在においても、本件問題状況、すなわち、同種類似の被害を生じさせるおそれがある状況がなお看過できない程度に残存していること、利害関係参加人は、本件問題状況に対する根本的な対策を講ずる契機及び機会を有していながら、上記の根本的な対策を講じておらず、もはや、利害関係参加人に事態の改善を図ることを期待するのは困難というべきであること、宗教法人の解散命令制度は、飽くまで、法律によって与えられた地位である宗教法人としての法人格につき,それを与えたままにしておくことが不適切となった場合にその法人格を失わせるとの法的効果を有するものにとどまり、当該法人格の喪失により事実上生ずる影響は、当該法人格を有していたことに伴う反射的利益に対するものであることからすれば、利害関係参加人に解散を命ずることは、やむを得ない法的措置であるということができる。

ウ 小括
[315] 以上によれば、利害関係参加人に対する解散命令は、必要かつやむを得ないものというべきである。
[316] 以上のとおり、利害関係参加人について法81条1項1号所定の事由があると認められ、かつ、利害関係参加人に対する解散命令は、必要かつやむを得ないものであるといえる。
[317] よって、本件申立ては理由があるから、法81条1項に基づき、主文のとおり決定する。

  裁判長裁判官 鈴木謙也  裁判官 笹本哲朗  裁判官 寺戸憲司


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