| 旧統一教会解散命令事件 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| 即時抗告審決定 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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宗教法人解散命令に対する抗告事件 東京高等裁判所 令和7年(ラ)第1003号 令和8年3月4日 第11民事部 決定 抗告人(利害関係参加人) 世界平和統一家庭連合 相手方(申立人) 文部科学大臣 ■ 主 文 ■ 理 由 ■ (別紙1-1)本決定の目次 ■ (別紙1-2)略称一覧表 ■ (別紙2-1)本件確定判決一覧表 ■ (別紙2-2)本件確定判決の判断の概要 ■ (別紙3-1)本件和解一覧表 ■ (別紙3-2)その他の和解一覧表 ■ (別紙4)示談一覧表 ■ (別紙5)刑事訴訟一覧表 1 本件抗告を棄却する。 2 抗告費用は抗告人の負担とする。 1 原決定を取り消す。 2 本件申立てを却下する。 (以下、法人等による寄附の不当な勧誘の防止等に関する法律を「不当寄附勧誘防止法」、平成20年法律第74号による改正前の特定商取引に関する法律を「特商法」、最高裁令和6年7月11日第一小法廷判決・民集78巻3号921頁を「令和6年最判」、最高裁令和7年3月3日第一小法廷決定・民集79巻3号997頁を「令和7年最決」という。本決定の目次は別紙1-1のとおりであり、本決定中で付した主要な略称の一覧表は別紙1-2のとおりである。) [1] 抗告人は、宗教法人であり、相手方は、宗教法人法5条2項に定める抗告人の所轄庁である。本件は、相手方が、抗告人について同法81条1項1号及び2号前段に該当する事由があるとして、同項に基づき、抗告人の解散命令を請求する事案である。 [2] 原審は、抗告人について同法81条1項1号に該当する事由があるとして、抗告人の解散を命ずる旨の決定をした。これに対し、抗告人が、原決定を不服として即時抗告した。 [3] 以下の事実は、後掲各証拠(証拠番号について枝番号を省略した場合は、枝番号を全て含む趣旨である。以下同じ。)及び手続の全趣旨により容易に認められる。 [4] 抗告人は、「天宙の創造神を主神として、聖書原理解説の教義をひろめ儀式行事を行い信者を教化育成する為の財務及び業務並びに事業を行う事」等を目的とする宗教法人である(法人成立は昭和39年7月16日)。(甲A1) [5] 相手方は、宗教法人法5条2項に定める抗告人の所轄庁である。(手続の全趣旨) [6](1) 遅くとも昭和61年末頃から、抗告人の信者らによる物品の販売について、これを「霊感商法」として批判する報道等がされるようになった。また、昭和62年5月には、抗告人による「霊感商法」の被害の根絶と被害者の救済を目的として、全国霊感商法対策弁護士連絡会(以下「全国弁連」という。)が結成された。 [7] そして、昭和62年から、抗告人の信者らによる抗告人への献金の勧誘、物品の販売、伝道・教化(抗告人の信者となるよう勧誘し、抗告人の教義に帰依随順させること。以下同じ。)といった行為により損害を被ったと主張する者や、被害者から損害賠償請求権を相続したと主張する者が、抗告人に対し、損害賠償を求める民事訴訟を提起するようになり、平成6年5月27日の福岡地方裁判所の判決を皮切りとして、抗告人の信者らの行為が不法行為に該当し、抗告人が使用者責任等を負うとして、抗告人に損害賠償を命じる判決が言い渡されるようになった。 (甲B1の1〔17~20頁〕、甲B1の39〔28頁〕、甲B1の51、15の3の1、甲E1~32) [8](2) 抗告人の信者らが、平成19年1月から平成20年10月にかけて、印章、屋内装飾品、仏具、美術工芸品の訪問販売に係る売買契約を締結させるため、人を威迫して困惑させたとして、平成19年12月14日、同月21日、平成20年12月17日及び平成21年5月28日、特商法違反の罪により、抗告人の信者ら7名及び法人1社を罰金刑に処する旨の略式命令が発せられた。 [9] また、抗告人の信者2名が、印章等の販売等を業とする有限会社新世の業務に関し、平成19年10月9日から平成21年2月9日にかけて、街頭で呼び止めた通行人らを同社の営業所に同行させ、印章の売買契約の締結を執拗に迫り、同人らを威迫して困惑させたとして、平成21年11月10日、特商法違反の罪により、同社を罰金刑、同信者らを執行猶予付きの懲役刑及び罰金刑に処する旨の有罪判決が宣告された(以下、この刑事事件を「新世事件」という。)。 (甲B10の1〔7~10頁〕、甲E34~37、手続の全趣旨) [10](1) 平成21年2月10日、新世事件につき、有限会社新世の事務所等が特商法違反の被疑事実により捜索されたところ、同社は抗告人の関係団体であると指摘されている旨の報道がされた。 [11] 抗告人は、こうした事態を受け、全国の教会指導者に対し、平成21年2月12日付け「信者らの活動に関する事件報道について-教会指導者に対する注意と指導-」と題する事務連絡文書(以下「コンプライアンス宣言1」という。)及び同年3月25日付け「信者らの献金奨励勧誘活動及びビデオ受講施設等における教育活動等に対する指導について」と題する事務連絡文書(以下「コンプライアンス宣言2」といい、コンプライアンス宣言1と併せて「コンプライアンス宣言」という。)を発出した。 [12] コンプライアンス宣言においては、①物品販売活動等の収益事業は、法人としての抗告人の目的外の行為であり、抗告人の指導者がこれに関わることはできないこと、②献金と先祖の因縁等を殊更に結びつけた献金奨励・勧誘行為をしないこと、③信者に献金を奨励・勧誘するに当たっては、あくまでも信者本人の信仰に基づく自主性及び自由意思を尊重し、信者の経済状態に比して過度な献金とならないよう十分配慮すること、④献金先が抗告人であることを明示した上で、献金を受け取ること等が記載されている。 (甲B1の62の1、乙P1の1、1の2) [13](2) 平成21年6月11日、新世事件につき、抗告人の信者らが逮捕されるとともに、抗告人の関連施設等が捜索された。(甲B1の63) [14] こうした事態を受け、当時の抗告人の会長であった徳野英治は、平成21年7月14日、世間を騒がせたことについての道義的責任を取るとして、会長を引責辞任した(もっとも、同人は、その後、平成24年12月27日に再び会長に就任している。)。(甲B1の25の8、2の2の1、乙P1の5、3の1) [15] 令和4年7月8日、安倍晋三元内閣総理大臣が銃撃されて死亡する事件(以下「本件銃撃事件」という。)が発生した。 [16] 本件銃撃事件の被疑者の母は抗告人の信者であり、同被疑者が、母が抗告人に対する多額の献金により破産したため、抗告人に恨みがあったところ、安倍晋三元内閣総理大臣が抗告人と近い関係にあると考えていたので銃撃したとの趣旨の供述をした旨、同被疑者の母が不動産を売却するなどして抗告人に対して少なくとも1億円の献金をしていた旨が報じられたことから、抗告人の信者による献金の勧誘の在り方等が社会的に注目される状況となり、①同年8月から11月まで、法務省において法務大臣の主宰により「『旧統一教会』問題関係省庁連絡会議」が開催され、同月10日付けで被害者の救済に向けた総合的な相談体制の充実強化のための方策が取りまとめられ、②同年8月から10月まで、消費者庁において「霊感商法等の悪質商法への対策検討会」が開催され、同月17日付け報告書が取りまとめられたほか、③同年12月には不当寄附勧誘防止法が成立するなど、国による一連の対応が執られた。 (甲B1の66、1の68、1の71~1の73、1の76、1の79、1の88、1の89、1の91) [17] 消費者庁の「霊感商法等の悪質商法への対策検討会」は、令和4年10月17日付け報告書(上記4②)において、抗告人につき、「所轄庁において、解散命令請求も視野に入れ、宗教法人法第78条の2第1項に基づく報告徴収及び質問の権限を行使する必要がある。」と提言した。岸田文雄内閣総理大臣(当時。以下「岸田元首相」という。)は、同日、抗告人に対する宗教法人法78条の2に基づく報告徴収及び質問権の行使に向けた手続を進める旨を表明した。(甲B1の79~1の81) [18] これを受け、相手方は、令和4年11月から令和5年7月にかけて、抗告人に対し、7回にわたり、宗教法人法78条の2第1項に基づく報告を求めた。これに対し、抗告人は、令和4年12月から令和5年8月にかけて、相手方に対し、報告をしたものの、報告を求められた事項のうち一部につき報告しなかったため、当時の抗告人の代表役員であった田中富廣前会長(以下「田中前会長」という。)が同法88条10号により過料に処せられた。(甲B1の96、甲C1~7、9、10、13、14) [19] 相手方は、令和5年10月13日、東京地方裁判所に対し、抗告人について宗教法人法81条1項1号及び2号前段に該当する事由があるとして、同項に基づき、抗告人の解散命令を請求した。(当裁判所に顕著な事実) [20] 以下の理由により、抗告人の解散を命ずるのが相当である。 (1) 抗告人について宗教法人法81条1項1号及び2号前段に該当する事由が認められること [21] 以下のとおり、抗告人について宗教法人法81条1項1号及び2号前段に該当する事由がある。このことは、抗告人について損害賠償責任を認めた民事訴訟の判決、抗告人に対して損害賠償を求める民事訴訟において成立した訴訟上の和解、抗告人に対して訴訟外で損害賠償を求めて成立した示談等から推認することができる。 ア 宗教法人法81条1項1号に該当する事由 [22] 抗告人は、遅くとも昭和55年頃から令和5年頃までの間、その信者らが、多数の者に対し、 ① 抗告人の活動であることを秘して接触し、抗告人の教義を学ぶか否か、あるいは当該教義を信仰するか否かについて判断する機会を与えずに、原罪等の考え方を教え込んだ(未証し)上で、原罪払拭等のためには、自己又は親族が所有する財産を差し出さなければならないと思い込ませて献金に応じさせる ② 先祖の因縁により、自身はもとより、家族、子孫等が重大な不利益を被る事態が生ずるなどと告げて不安をあおり(因縁トーク)、又はそのような不安を抱いていることに乗じて、当該事態を免れるためには、献金又は物品購入をし、先祖の因縁を払拭しなければならない旨告げて、これに応じさせる ③ 他の犠牲等を払っても献金等をすべきことを告げて、その社会的地位や資産状態に照らし、不相当に高額の金銭を支出させる など、相手方の自由な意思決定に制限を加えて、相手方の正常な判断が妨げられる状態で献金又は物品の購入をさせて、少なくとも合計1559名もの多数の者に対して合計204億4788万9157円もの多額の損害を被らせ、その親族を含む多数の者の生活の平穏を害する違法な行為(民法の不法行為に該当する行為)をし、もって、法令に違反して、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為をした。 イ 宗教法人法81条1項2号前段に該当する事由 [23] 抗告人は、遅くとも昭和55年頃から令和5年頃までの間、その信者らが、多数の者に対し、 ① 抗告人の活動であることを秘して接触し、抗告人の教義を学ぶか否か、あるいは当該教義を信仰するか否かについて判断する機会を与えずに、原罪等の考え方を教え込んだ(未証し)上、原罪払拭等のためには、自己又は親族が所有する財産を差し出さなければならないと思い込ませる ② 先祖の因縁により、自身はもとより、家族、子孫等が重大な不利益を被る事態が生ずるなどと告げて不安をあおり(因縁トーク)、又はそのような不安を抱いていることに乗じて、当該事態を免れるためには、献金又は物品購入をし、先祖の因縁を払拭しなければならない旨告げる ③ 他の犠牲等を払っても献金等をすべきことを告げる など、抗告人の財産的利得を目的として、献金の獲得や物品販売に当たり、多数の者を不安又は困惑に陥れ、その親族を含む多数の者に財産的、精神的犠牲を余儀なくさせて、その生活の平穏を害するような行為をし、もって、宗教の教義をひろめ、儀式行事を行い、及び信者を教化育成するという宗教法人法2条に規定する宗教団体の目的を著しく逸脱した行為をした。 (2) 抗告人の解散を命ずることが必要でやむを得ないとはいえないとの抗告人の主張に理由がないこと [24] 抗告人は、コンプライアンス宣言後にこれに基づく対策を周知徹底してきたなどとして、抗告人の解散を命ずることが必要でやむを得ないとはいえないと主張する。 [25] しかしながら、宗教法人の解散を命ずるには、宗教法人法81条1項1号又は2号前段に該当する客観的事実の存在をもって足り、その後の改善傾向の有無や再発のおそれの有無を問わないことは、これらの規定の文理上明確である。 [26] また、コンプライアンス宣言及びその後に抗告人が行った対策は、およそ実効性があるものとはいえない。 [27] よって、抗告人の解散を命ずることが必要でやむを得ないとはいえないとの抗告人の主張は、理由がない。 [28] 以下の理由により、抗告人の解散を命ずるべきではない。 (1) 抗告人について宗教法人法81条1項1号及び2号前段に該当する事由が認められないこと ア 信者らが上記1(1)ア及びイの行為をした事実が認められないこと [29] 過去の民事訴訟の判決等をもって、宗教法人法81条1項1号及び2号前段に該当する事由の有無の判断資料とすることは許容されるべきではない。また、訴訟上の和解や訴訟外の示談から、抗告人の信者らによる不法行為を認定することはできない。 [30] そもそも、抗告人は、収益事業を行っておらず、物品を販売した事実はない。また、抗告人の信者らが、抗告人の活動であることを秘して伝道・教化を行った事実(未証し)はないし、先祖の因縁により、自身はもとより、家族、子孫等が重大な不利益を被る事態が生ずるなどと告げて不安をあおること等(因縁トーク)によって献金を勧誘した事実もない。 [31] したがって、抗告人の信者らが上記1(1)ア及びイの行為をした事実は認められない。 イ 「法令に違反して、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為」(宗教法人法81条1項1号)の要件を満たさないこと [32] 法令違反を伴わない不法行為は、宗教法人法81条1項1号にいう「法令に違反」する行為に当たらない。 [33] また、 ① 献金を勧誘する行為は、抗告人の信者らの間の問題であり、このような限られた部分社会に属する私人間で行われた行為はおよそ「公共」に関わるものではなく、そこで侵害されたと主張されている利益は「私益」であること、 ② 抗告人は、コンプライアンス宣言後、信者らに対し、未証しや因縁トークによる献金の勧誘をしないことや経済状態に比して過度な献金とならないよう配慮すべきことを周知徹底してきたものであり、その結果、コンプライアンス宣言以後の事案で不法行為が認定された民事訴訟の確定判決は2件のみであり、その献金が最後に支払われたのは平成26年であること からすれば、同号にいう「著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為」の要件を満たさない。 ウ 「宗教団体の目的を著しく逸脱した行為をしたこと」(宗教法人法81条1項2号前段)の要件を満たさないこと [34] 相手方の主張する上記1(1)ア及びイの行為は、抗告人の信者らによる伝道・教化や献金の勧誘であるところ、伝道・教化や献金の勧誘が、宗教の教義をひろめ、儀式行事を行い、及び信者を教化育成するという宗教法人法2条に規定する宗教団体の目的に合致することは明らかであるから、宗教法人法81条1項2号前段にいう「宗教団体の目的を著しく逸脱した行為をしたこと」の要件を満たさない。 エ 「宗教法人について」(宗教法人法81条1項柱書)の要件を満たさないこと [35] 過去の民事訴訟で問題とされた献金の勧誘、物品の販売、伝道・教化といった行為は、抗告人とは別の法主体である「全国しあわせサークル連絡協議会」及びその後継組織である「信徒会」の構成員であった信者が行ったものであり、抗告人の代表役員等の幹部が関与した事案は皆無である。したがって、宗教法人法81条1項柱書の「宗教法人について」の要件を満たさない。 (2) 抗告人の解散を命ずることが必要でやむを得ないとはいえないこと [36] 抗告人が、コンプライアンス宣言後にこれに基づく対策を周知徹底してきた結果、民事訴訟の件数は激減しており、抗告人を被告とする民事訴訟のうち一部でも請求が認容されたものは、平成26年7月の事案が最後である。したがって、抗告人の解散を命ずる必要性及び緊急性は存在しない。 [37] 他方において、抗告人の解散命令が認められれば、抗告人自身及びその信者らの宗教結社の自由(憲法20条1項)が侵害されるなど、抗告人自身並びにその信者ら及び職員らに看過し難い不利益が生ずる。 [38] 以上によれば、抗告人の解散を命ずることが必要でやむを得ないということはできない。 [39] 当裁判所は、以下の理由により、 ① 抗告人について宗教法人法81条1項1号に該当する事由があると認められ、 ② 抗告人の解散を命ずることが、抗告人の信者ら等の法的地位や権利関係に及ぼす影響を考慮してもなお、必要でやむを得ないといえる から、抗告人の解散を命ずるべきであると判断する。 [40] 後掲各証拠及び手続の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。なお、コンプライアンス宣言及びこれを踏まえた抗告人の対策等に関する事実は、後記第3(認定事実②)において認定する。 (1) 概要 [41] 抗告人は、当時の所轄庁である東京都知事による規則の認証を受け、日本における宗教法人として、昭和39年7月16日に設立された。設立当時の抗告人の名称は「世界基督教統一神霊協会」(「統一教会」と略称される。)であったが、平成27年8月26日に現在の名称に変更された。(甲A1、甲B1の1〔14頁〕、手続の全趣旨) (2) 組織 [42] 抗告人の意思決定機関は、代表役員及びその他の責任役員で構成する責任役員会である。そのほか、抗告人には、代表役員の諮問機関である評議員会議が置かれている。代表役員は、会長をもって充てられ、抗告人を代表し、その事務を総理する。 [43] 会長、責任役員会及び評議員会議の下に本部組織及び地方組織が置かれている。 [44] 本部組織には、事務執行機関である局等が置かれており、令和4年12月現在、伝道教育局、人事財政局、総務局、法務局等が存在する。 [45] 地方組織には、①地区、②地区の傘下に教区、③教区の傘下に教会が存在し、令和4年12月現在、全国に、①5つの地区(地区本部所在地は、東京都、宮城県、愛知県、大阪府、福岡県)、②67の教区(各都道府県に少なくとも一つ)、③285の教会が存在する。なお、過去には、地区が「リージョン」と称されていたことがあったほか、教区の傘下に教域が、教域の傘下に教会が、教会の下に区域が、それぞれ置かれていたこともあった。地区、教区、教会には、その責任者として、地区長(地区会長と呼ばれることもある。)、教区長、教会長が置かれている。地区長、教区長、教会長及び副教会長を務める聖職者は「牧会者」と呼ばれる。 (甲A2~4、9、甲B2の1、2の31、甲B13の7〔64頁〕、手続の全趣旨) (3) 収入及び予算 [46] 抗告人の収入は、信者からの献金が97%以上を占めている。 [47] 抗告人の予算は、毎年、 ① 各部門(本部各局・各地区本部・各教区本部・各教会)が前年度実績等に基づいて次年度予算案を作成し、本部の予算担当局に提出し、 ② 本部の予算担当局が、本部各局の事業計画と海外宣教援助計画(世界本部や各国教会等の海外の抗告人の関連団体からの財政支援要請に対する援助計画)に基づいて本部の支出計画案を作成し、 ③ 本部の予算担当局が、同支出計画案に基づいて、教会等の本部献金(後記{2}参照)の予算額を調整した上で、本部組織と地方組織の予算案を統合して抗告人全体の次年度予算案を作成し、 ④ 責任役員会及び評議員会議がこれを承認することにより決定され、 地区長会議、全国教区長会議、教会長会議等を通じて地方組織に通達される。 [48] 地方組織の収入は、{1}信者から教会等の当該地方組織への献金である信者献金であり、支出には、{2}当該地方組織から本部に納める本部献金が含まれる。本部の収入は、{3}信者から本部への献金である信者献金(本部に設置している献金箱に納められるもののほか、本部が管理運営する修練所で行われる修練会等の感謝献金、本部の銀行口座に信者から直接振り込まれる献金等がある。)と、{4}地方組織から送金を受ける教会献金(={2})である。抗告人全体の献金収入は、{1}と{3}である。 (甲A2〔21条〕、甲A12〔27、31条〕、甲A13〔61、65条〕、甲B3の1〔11~15、20~21頁〕、甲B3の4〔11~12頁〕、甲B6の2、甲B6の3〔6頁〕、甲B6の4、6の5、甲B13の8〔12頁〕、甲C3の5の1〔5~7頁〕、甲C4の5〔10~13頁〕、乙S1〔資料1~3〕、手続の全趣旨) [49](1) 抗告人の教義の創始者は、朝鮮半島出身の文鮮明である。文鮮明は、昭和29年に韓国において「世界基督教統一神霊協会」との名称の教団(抗告人とは別の組織である。)を創立し、平成9年、同教団の名称が「世界平和統一家庭連合」に変更された( 以下、名称変更の前後を問わず「韓国家庭連合」という。)。文鮮明は、平成24年に死亡し、その後は、その妻である韓鶴子が総裁として同教団を率いているとされる。なお、文鮮明と韓鶴子は、抗告人内において、再臨のメシヤ(救世主)、人類の真の父母であるとして「真の父母様」などと呼ばれている。(甲A19〔3条(1)〕、甲B1の1〔3~8頁〕、甲B1の8の1、1の11、甲B8の1〔1、5頁〕、甲B8の2〔2、3頁〕、手続の全趣旨) [50] 韓国家庭連合は、韓国の首都ソウルから約60キロの場所(清平湖の近く)に本拠地を置いており、同所には、天正宮博物館や天苑宮と呼ばれるドーム型屋根の付いた宮殿様の建物、信者のための修練施設(HJ天宙天寶修練苑〔かつては「天宙清平修錬苑」との名称であったが、令和元年2月15日に現在の名称に変更された。〕を含む。)、宿泊施設、教育施設、病院、飲食店、百貨店、2万5000人収容のホール等が存在する。(甲B5の12、乙C32の1〔16~20、42~46、53~94頁〕、手続の全趣旨) [51](2) 文鮮明は、昭和33年に日本において、昭和34年に米国において、それぞれ布教を開始し、それ以来、世界各国で、複数の組織や財団を設立し、様々な活動を行った。 [52] その活動の範囲は、教義に基づく布教活動にとどまらず、世界平和を実現するための諸活動、「勝共運動」と呼ばれる共産主義に対抗するための国際的な政治活動、大学や高校等の教育施設の運営、病院の運営、新聞社や出版社の創設、リゾート施設の買収・開発・経営、サッカーチームやバレエ団の創設、航空産業団地の造成、世界を高速道路で結ぶ「国際ハイウェイ構想」を実現するための活動等、多岐にわたる。 [53] 文鮮明の死後は、韓鶴子が、これらの活動を引き継いで継続している。 (甲B1の8の1〔29~49頁〕、甲B6の11、7、8の2、甲B13の7〔13~22頁〕、乙C32の1〔112~136頁〕、乙E1、236~241、乙F9の3、乙G9〔157~200、294~302、309~310、343~346頁〕、手続の全趣旨) [54](3) 上記1(3)のとおり、抗告人は、毎年、海外の宣教活動を支援するための費用を予算計上しているところ、その費用は、平成10年当時、抗告人の年間の運営費150億円から180億円のうちの5割から6割を占めており、平成13年当時、抗告人の年間の運営費200億円から350億円のうちの約5割を占めていた。(甲B6の3〔7頁〕、甲B13の8〔12~14頁〕) [55] また、抗告人は、平成7年までに、文鮮明の国際ハイウェイ事業に約100億円出資していた。(乙F23の3の1〔41~42頁〕、乙F23の3の2〔69頁〕) (1) 「万物復帰」等の抗告人の教義 ア 「万物復帰」 [56] 「万物復帰」とは、抗告人の主要な教義の一つであり、人間始祖の堕落によって、神の子としての位置を離れ、本来の価値を失い、万物以下の立場になった人間が、信仰を尽くして万物を神に捧げることにより、本来の神の子としての愛と心情を取り戻し、神と人間と万物の本来の関係が取り戻されていくという教えであるとされる。 [57] 抗告人が平成3年11月1日に発行した「信仰生活と献金」と題する書籍には、 「献金(万物を神にささげること)は、自分自身を神に象徴的にささげることの意味を含んでいますから、『統一原理』の観点から見ても、献金が『自分自身をささげる』精神で行わなければならないとの説明は、極めて的を射た適切な表現であると言えましょう。」、との記載がある。 (甲B5の2〔12~13、21頁〕、甲B8の1〔6~8頁〕、甲B8の7〔13~15頁〕、手続の全趣旨) イ 「エバ国家」又は「母の国」 [58](ア) 文鮮明の著書「神様の祖国解産完成」(平成19年9月1日発行)には、 「日本は母の国です。今年(1998年)の『神の日』の前までは、韓国はアダム国家であり、日本はエバ国家でしたが、父と母の国にしなさいと言いました。」、との記載がある。(甲B8の11〔94、110頁〕) [59] 文鮮明の自叙伝「平和を愛する世界人として」(平成30年4月20日発行。平成21年3月に韓国で出版されたものの日本語版である。)の巻末の「文鮮明師自叙伝日本語版出版委員会」による特別寄稿には、日本の行くべき道に関して文鮮明が語ったこととして、 「現在、神の摂理から見れば、日本は世界の中でエバ国家(母の国)の使命を担っていると言われるのです。」、と記載されている。(乙G9〔375~376、379頁〕) [60](イ) 抗告人の信者は、日本は「エバ国家」、韓国は「アダム国家」であり、「エバ国家」である日本には、伝道活動と経済活動に全力を尽くす使命があると教えられていた。(甲E27の1〔73頁〕。なお、この証拠は、札幌地方裁判所平成24年3月29日判決であるが、この判決を含め、後記6(1)イに挙げる26件の確定判決において認定された事実については、本件においても事実として認定することが相当である。その理由は、後記第2の2(2)ウ(ウ)において述べる。) (2) 文鮮明や抗告人の幹部の発言 [61]ア 文鮮明や、抗告人の会長等の幹部は、信者に対し、 「借りてでも天に捧げようとする心がなくてはならない。」、等と説いていた。(甲E5の2〔9~10頁〕。この証拠は、広島高等裁判所岡山支部平成12年9月14日判決であり、後記6(1)イに挙げる26件の確定判決に含まれる判決である。) [62]イ 抗告人の機関誌である「ファミリー」及び「祝福」には、文鮮明の以下の発言が掲載されている。 [63](ア) 「ファミリー」昭和57年9月号には、同年5月30日の文鮮明の発言として、 「統一教会の会員は必ず万物復帰をしなければなりません。万物復帰をすることによって、皆さんは神に万物を献祭するのです。サタン世界の人々は自分を中心にして自分の利益を求めますが、私たちは神のみ旨のため、世界のために生きるのです。ここが違うのです。この世の人々は11条(10分の1)捧げればよいと言っていますが、私たちは11条ではなく、100パーセント捧げます。それを3年間しなくてはならないのです。」、との記載がある。(甲B8の7〔13~15頁〕) [64](イ) 「祝福」平成元年冬季号には、同年10月3日の文鮮明の発言として、 「ところで、この頃統一教会はとても有名になりましたね。一体全体、統一教会は何をしているところであるかというのです。人々が言っているように、統一教会は経済活動をして金儲けをする教会ですか。また一つの命令が下ればその命令に絶対服従するところでしょうか。そのようにも言えるでしょう。またお金もあると言えるでしょう。また全ての組織的な訓練がよくできているとも言えるでしょう。しかし、そういう内容は全部、付帯条件なのです。それらが根本的な内容ではありません。」との記載がある。(甲B8の9〔12頁〕) [65]ウ 文鮮明は、後述する「全国しあわせサークル連絡協議会」と称される活動体の最高責任者とされるCに対し、献金を進めるよう指示を出したり、抗告人の会長に対し、日本が責任を果たしていないこと、すなわち、日本からの金銭拠出が少ないことを叱責する趣旨で、「エバ国から、はずして欲しいんだったら、今、言いなさい。すぐ、外してやるよ。」と厳しい口調で述べたりしたことがあった。(甲E27の1〔271頁〕、甲E28の1〔140頁〕。これらの証拠は、札幌地方裁判所平成24年3月29日判決及び同裁判所平成26年3月24日判決であり、後記6(1)イに挙げる26件の確定判決に含まれる判決である。) [66]エ 文鮮明が平成24年に死亡し、その妻韓鶴子が韓国家庭連合の総裁を引き継いだ後、上記ア~ウの発言が示す考え方や方針が変更されたことをうかがわせる証拠はない。 (1) 株式会社ハッピーワールドの設立及び代表取締役に係る刑事事件 [67]ア 抗告人の信者らは、昭和46年5月、高麗人参茶の訪問販売及び高麗大理石壺の輸入販売を主たる業務とする幸世商事株式会社(昭和53年3月に「株式会社世界のしあわせ」に商号変更、同年11月に「株式会社ハッピーワールド」に商号変更。以下、商号変更の前後を問わず「ハッピーワールド社」という。)を設立した。同社の設立時から後記イの事件発生後の昭和52年4月までは、抗告人が、信者の設立した同社を応援するため、同社に資金を貸し付けたことがあった。(甲B1の39〔15~16頁〕、甲B1の56〔14頁〕、甲B13の7〔103~104頁〕、甲D326) [68]イ ハッピーワールド社の代表取締役や、抗告人の渉外部長であって財務全般の統括責任者であった者らが、昭和46年8月から昭和47年5月にかけて、複数回にわたり、韓国に向け額面合計2億3000万円の小切手を携帯して空路又は海路により出国し、もって内国支払手段を輸出したとして、外国為替及び外国貿易管理法(当時)違反の公訴事実により、同年12月8日に起訴された。 [69] 神戸地方裁判所は、昭和52年1月21日、公訴事実につき、相当の嫌疑が存するものの有罪とするに十分な証明を欠くとして無罪判決を言い渡したが、同判決においては、 「幸世商事(引用者注:ハッピーワールド社を意味する。)(中略)は、もとより法的には統一協会(引用者注:抗告人を意味する。)と別個の法人ではあるが、いずれも統一協会の信者等で組織され、経営されている会社であって、統一協会から出資や事業資金の貸付を受け、他方統一協会の信者たる右各会社の役員や、従業員等はその報酬、給料の殆んどを統一協会に献金しており、また、右熱狂グループ(引用者注:抗告人等の活動資金の収集を目的として活動している集団とされている。)との関係では、その収集資金の一部が右各会社の事業費に流用されている事実もあり、就中、幸世商事は前記の熱狂グループの販売する人参茶の韓国からの輸入にも当っているのであって、少なくとも以上の限りでは、右各会社と統一協会との間にも人的及び金銭的な関連のあることが認められる。」と判示されている。 (甲B1の1〔14~15頁〕、甲B1の41) (2) Cの代表取締役就任後の活動及び抗告人との関係 [70] 上記(1)イの刑事事件でハッピーワールド社の代表取締役が起訴された昭和47年12月、抗告人の信者であるCが、同社の代表取締役に就任した。その後、昭和48年から昭和50年にかけて全国に同社の関連会社(「販社」と呼ばれる。)が設立され、抗告人の信者らが、ハッピーワールド社及び関連会社の特約店の販売員として、ハッピーワールド社の商品(高麗人参茶、高麗大理石壺)の営業・販売活動に従事するようになった。また、抗告人の信者らは、昭和54年頃から、これらの特約店において、顧客に対する伝道・教化活動を行うようになった。 [71] なお、Cは、抗告人の機関誌(「聖徒」昭和51年1月号、「ファミリー」昭和53年1月号)において、抗告人の本部役員らによる年頭のあいさつを掲載する記事の中で、「局長」との肩書であいさつ文を掲載していた者であり、既に述べたとおり(上記3(2)ウ)、文鮮明から、献金を進めるよう指示を受けることもあった。上記「ファミリー」のCのあいさつ文には、 「特に、この三次路程に課せられた日本のエバ国家の使命が余りにも大きく、また、事実として、先生から絶対的信頼を受け期待の中にある我々でありますが故に、身震いする様な緊張感を覚えるわけです。特にエバ国家としての使命は、万物をいかに復帰し、天の前に供えてゆくか、が原理的意味あいに於いても、すでに示されている様に重大です。その為により本質的伝道拡大が現段階では必須かと思われます。今や、成約時代の信仰は観念の世界で酔いしれることなく、事実ある結果をもたらして、実体として天の前に供物をなし、具体的にまず地上天国をなすという自覚がない限り、成約の信仰者とはいえないと思いますし、旧来の宗教と変わらず、神の国実現は遠いと思います。」と記載されている。 [72] 抗告人の機関誌「成約の鐘」昭和49年2月号には、広報委員長による「教会の活動方針」として、マナ(高麗人参茶を指す。)の販売につき、 「マナ販売についても今まで以上の努力が傾注されなければならない。天が要求する基準を勝利しなければ天宙復帰の重大な計画が狂ってしまうのである。しかも天が願っておられるのはマナ販売のみでなく伝道もしなければならないのである。むしろ伝道した基盤の上にマナを販売することが望ましいパターンである。天の計画としては早くマナ販売の基盤を確立して我々が万物復帰のために多くのエネルギーを裂かなくとも販売ルートができたらそこに流すだけで万物復帰になる状態を願っているのである。今日そのための基台づくりであるからいろんな苦労はあると思うが時は今をおいてないことを自覚して頑張ろうではないか。」との記載がある。なお、抗告人は、昭和52年、当時の所轄庁である東京都に対し、抗告人の事業として高麗人参の販売を行えないか相談したところ、宗教法人の収益事業として認め難いとの指導を受けていた。 (甲B1の1〔14~15頁〕、甲B1の39〔17~20、31~34、68~76頁〕、甲B1の42〔50頁〕、甲B1の43〔21頁〕、甲B1の44〔41頁〕、甲B1の56〔14頁〕、乙F2〔18~25頁〕) (3) 「全国しあわせサークル連絡協議会」と称される活動体の発足 [73]ア 抗告人の副会長は、昭和57年1月19日の年頭訓示の際、 「教会、渉外、事業。だから、完全にこれを一元にしてやって行く。伝道は伝道、事業は事業と、勝共は勝共と、そういうふうに分かれてやってはならないと。必ず主流は、まあ、日本の場合は事業が主体で、教会が従でしょ。」、と発言した。(甲B1の1〔15頁〕、甲B1の45〔22~23頁〕) [74]イ Cは、昭和57年8月、全国の抗告人の信者らによるハッピーワールド社の商品の営業・販売活動及びその顧客に対する伝道・教化活動を統括・指導するための活動体(Cや抗告人は、この活動体は「全国しあわせサークル連絡協議会」という名称であり、抗告人とは別の法主体であったと主張している。以下、「全国しあわせサークル連絡協議会」と称される活動体を「連絡協議会」という。)を発足させた。連絡協議会の事務局は「中央本部」と呼ばれ、Cがその最高責任者となり、全国を複数の「ブロック」に分け、ブロックの傘下に「地区」を置き、月1回「ブロック長会議」を開催するなどして、全国を統括・指導していた。(甲B1の39〔36~37頁〕、乙F2〔25~28頁〕) [75]ウ Cは、昭和57年から、映像を利用した伝道・教化活動を行うため、全国にビデオセンターを設置し、同年8月以降、連絡協議会の活動という名目で、全国の抗告人の信者に以下の(ア)及び(イ)の活動を行わせるようになった。なお、抗告人は、抗告人自身がビデオセンターを設置して伝道・教化活動を行うことについて、当時の所轄庁である東京都に相談していたが、同年10月、東京都から、ビデオ受講時に受講生から料金を徴収する場合、宗教法人が行うことのできない収益事業とみなされる旨の指導を受けた。(甲B1の39〔39~52、63、68~80頁〕、甲B13の2〔31頁〕、甲B13の7〔88頁〕、乙F23の3の1〔33~35頁〕、手続の全趣旨) [76](ア) ビデオセンターに来た者(「ゲスト」と呼ばれる。)に対し、宗教であることや抗告人に関連する活動であることを告げることなく、通常の映画を鑑賞させるなどしながら、抗告人の教義を学習するための映像を見せる。 [77] さらに、ビデオセンターに来た者に対し、「ツーデーズ」→「初級トレーニング」→「スリーデーズ」又は「フォーデーズ」→「新生トレーニング」(7日~12日)→「実践トレーニング」→「献身トレーニング」と呼ばれる一連のセミナーに参加させ、抗告人の教義を学習させる。 [78](イ) 上記(ア)のセミナーを受講した者に対し、①上記(ア)のビデオセンターを通じた伝道・教化活動や、②ハッピーワールド社やその関連会社の特約店の委託販売員として、ハッピーワールド社の商品(高麗人参茶、濃縮茶、高麗大理石壺、多宝塔)の営業・販売活動をするよう求める。また、上記(ア)のセミナーを受講した者から、③抗告人への献金を受領する。(これらの活動に専従する者は、「献身者」と呼ばれる。また、これらの活動に従事する信者らが、「ホーム」と呼ばれる場所で共同生活することがあった。) [79]エ 連絡協議会では、ビデオセンターを通じた伝道・教化活動により獲得する会員数の目標や、委託販売員による営業・販売活動による売上目標を定めていた。昭和61年には、営業・販売活動につき、月100億円という売上目標が設定され、同年12月にこれを達成した。(乙F23の3の1〔25、47~49頁〕、乙F23の3の3〔43頁〕) (4) ハッピーワールド社の商品の販売に関連する不祥事 [80]ア ハッピーワールド社の関連会社の特約店の販売員を務めていた抗告人の信者らが、昭和58年7月27日及び28日、その顧客であった当時47歳の女性に対し、 「あなたがおろした子供や病死した前夫が成仏できずに苦しんでいる。苦しんでいる霊を成仏させないと幸せにはなれず不幸が続く。お盆前に今の夫との間に生まれた子供に大変な事が起こる。娘は酒乱の男と結婚して不幸になる。全財産を投げ出せば霊を成仏させてあげる。財産を全部出しなさい。霊が苦しんでいるのにお金を出さないのか。1500万円出しなさい。1200万円でもよい。」などと繰り返し申し向けるとともに、同女に殴りかかり、同女が部屋から脱出しようとすると出入口に立ちふさがってこれを阻止するなど、執拗に同女を脅迫し、同月29日に現金1200万円を交付させてこれを喝取したとして、昭和59年1月12日、青森地方裁判所弘前支部により、執行猶予付きの懲役刑を言い渡された。 [81] この事件の際、抗告人の機関誌、抗告人の教義が記載された書籍、販売員のマニュアルとみられる資料等が押収された。 (甲B1の39〔80~81頁〕、甲B1の49、1の50、甲B1の56〔25~27、33~35、39~48頁〕、甲B12の2、12の3、甲E33) [82]イ 遅くとも昭和61年末頃から、抗告人の信者らによるハッピーワールド社の商品の販売方法について、これを「霊感商法」として批判する報道等がされるようになった。 [83] ハッピーワールド社は、昭和62年4月、厚生省及び国民生活センターに対し、いわゆる「霊感商法」といわれる誤解を生ずるような物品の販売は一切禁止するよう、同年3月末をもって関連業者に通知した旨の文書を送付した。ハッピーワールド社は、同年5月、抗告人の「対策委員会代表」とされる者に対しても、同趣旨の文書を送付した。 (前提事実2(1)、甲B1の39〔28~30頁〕、甲B1の52~1の54) (5) 連絡協議会の解散及び「信徒会」と称される活動体への引継 [84] 連絡協議会は、平成4年までに解散し、全国の抗告人の信者らが、各地域の「信徒会」と称される活動体(抗告人は、この活動体は、抗告人とは別の法主体であったと主張している。以下、この活動体を単に「信徒会」といい、「連絡協議会」と併せて「連絡協議会等」という。)の活動という名目で、連絡協議会の 「ブロック」や「地区」の活動を引き継いだとされている。(甲B13の2〔48~49頁〕、甲B13の3〔2頁〕、甲B13の5〔2頁〕、甲B13の6〔7頁〕、乙F23の2〔22頁〕) [85](1) 抗告人の信者らが、概ね昭和57年頃から平成20年頃までの間、抗告人への献金の勧誘、物品の販売、伝道・教化(以下、本項において、「献金の勧誘等」という。)を行うに当たって作成、使用したものとみられる文書が存在する。その中には、以下のようなものがある。なお、この中には、上記4(4)ア及び後記7の刑事事件で押収された資料が含まれている。(甲B12の1〔別紙5〕) [86]ア 献金の勧誘等を行う者が、作成、使用したものとみられるマニュアル、メモ、ノート等(甲B12の2、12の3、12の5~12の62、12の64~12の69、12の84) [87] これらのマニュアル等には、①献金の勧誘等の対象者の経済力を把握すべきであること、②対象者が献金の勧誘等に応じる動機となる事情(自分や家族に関する悩みや苦しみ、人生に関する疑問や問題意識等。「ニード」と呼ばれる。)を把握すべきであること、③家系図、手相、姓名判断を利用するなどし、先祖の因縁や霊界の存在を説くべきであること、④抗告人の「万物復帰」の教義を踏まえ、献金の勧誘等を行い、献金の勧誘や物品の販売の数値目標を達成することが重要であること等が記載されている。 [88] 中には、 「絶対に人情的にならないことが必要です。ツボを授かることによってお客様が御父母様を受け入れつながっていくのだという事を信じ、その救いの心情を持つ事が大切です。このような天的な心情で臨みます。印鑑を20~30万で買い、又、100万のSを勧めるという事で、とても人情的になり易いのですが、ここで自分自身の信仰観が試されます。天的に徹しきらなければなりません。」(甲B12の3)、といった、対象者の経済状況を顧みることなく献金や物品の購入を勧誘すべきであるとの趣旨と解し得る記載がある。これらの記載は、上記3(2)アの文鮮明又は抗告人の会長等の幹部の発言(「この世的に見れば最悪でも、天的に見れば最善のことなのです。」、「脅迫であっても真の愛を毎日飲める人をつくれば、神はよくやったと言われるでしょう。」)と類似している。 [89]イ 献金の勧誘等を行う者が、その対象者の経済力や「ニード」を把握し、これを記録するための書式及び実際にこれらを記録したものとみられる文書(甲B12の70~12の83、12の85~12の90) [90](2) 抗告人の本部事務局や地方組織が、抗告人の信者らに対し、献金の勧誘の数値目標を定め、これを達成すべきことを記載した文書や、その達成額・達成率等を記載した文書等(概ね平成2年から平成25年までの間に作成されたもの)が存在する。その中には、以下のようなものがある。(甲B12の1〔別紙6〕) [91]ア ①抗告人の本部事務局が、全国の地区長(又はリージョンの責任者)、教区長、教域長、教会長、信者に対し、②地区(又はリージョン)の事務局が、傘下の教区長、教域長、教会長に対し、③教区本部や教区長が、傘下の教域長、教会長、信者に対し、④教域本部又は事務局や教域長が、傘下の区域長、信者に対し、⑤教会や教会長が、傘下の区域長、信者に対し、それぞれ、一定の期限及び献金の数値目標を掲げて、これを達成すべきことを求める事務連絡文書(甲B12の94~12の101、12の106、12の111~12の114、12の120、12の121、12の123、12の126~12の128、12の130~12の136、12の138~12の146、12の148~12の150、12の152) [92]イ 教区別・教域別・教会別・区域別・担当者別の献金の数値目標・達成額・達成率を記載した表(甲B12の102~12の105、12の107、12の118、12の147の3、12の147の4、12の151、12の180、12の181) [93] この中には、数値目標の達成状況が芳しくない場合に担当者への報告や教会への集合を求める旨が記載されたものもある(甲B12の107、12の180)。 [94]ウ 各区域の信者別に、献金の数値目標の達成額及び残額を記載して管理していたものとみられる台帳(甲B12の119) [95]エ 教区内の各教域に対し、当該教区に割り当てられた献金の目標額を振り分けるための表(甲B12の122) [96]オ 地区長が、平成10年1月18日、信者らに対し、父の国である韓国を救うため、全ての祝福家庭が家や土地を売ってでも同月末までに1万2000ドルの特別献金をしなければならないなどと述べる文鮮明の言葉を代読した上で、献金するよう求める講話の音声反訳文書(甲B12の115)や、抗告人の幹部が、平成11年8月31日、新たに認定された区域長らに対し、「真の父母様」の80歳の誕生日に飛行機を捧げるため、目標額を定めて献金するよう求める講話の内容を記録した文書(甲B12の129) [97](3) 献金した信者に対する抗告人の会長等の名義の感謝状や表彰状(概ね平成11年から平成22年までの間に作成されたもの)が存在する。(甲B12の166~12の170、12の173~12の176、12の183~12の195) (1) 抗告人に損害賠償を命じた確定判決 [98]ア 昭和62年から、抗告人の信者らによる抗告人への献金の勧誘、物品の販売、伝道・教化といった行為により損害を被ったと主張する者や、被害者から損害賠償請求権を相続したと主張する者が、抗告人に対し、損害賠償を求める民事訴訟を提起するようになった。(前提事実2(1)) [99]イ これらの民事訴訟につき、抗告人の信者らの行為が不法行為に該当し、抗告人が使用者責任等を負うとして、抗告人に対して原告への損害賠償を命じて確定した判決が、別紙2-1の本件確定判決一覧表に記載のとおり、26件存在する(以下、これらの判決を「本件確定判決」という。)。本件確定判決の概要は同一覧表に記載のとおりであり、抗告人の信者らの行為の不法行為該当性及び抗告人に係る使用者責任等の成否に関する本件確定判決の判断の概要は別紙2-2に記載のとおりである。(甲E1、3~9、11、13、15、17~19、21~32) (2) 原告に和解金等を支払う内容の訴訟上の和解 [100] 上記(1)アの民事訴訟につき、原告に和解金等を支払う内容の訴訟上の和解が成立した事件が存在する。 [101] もっとも、抗告人が、原告に和解金等を支払う内容の訴訟上の和解に応じる場合には、自らが和解金等の支払債務の債務者となることはなく、信徒会の関係者とされる信者が、利害関係人として和解手続に参加し、和解金等の支払債務の債務者となることが通例である。また、事件によっては、訴訟上の和解において、抗告人が、他の共同被告の負う和解金等の支払債務を担保するため、抗告人の所有する不動産につき抵当権を設定する旨の合意をすることもある。 [102] 原告が、抗告人に対し、抗告人の信者らによる抗告人への献金の勧誘、物品の販売、伝道・教化といった行為につき不法行為が成立し、かつ、抗告人に民法709条又は715条1項に基づく損害賠償責任が成立すると主張して、抗告人に損害賠償を求めた民事訴訟事件につき、以下のア又はイの内容を含む訴訟上の和解が成立したもの(和解金額が請求額を大きく下回り、かつ、少額であるものを除く。)は、別紙3-1の本件和解一覧表に記載のとおりである(以下、別紙3-1の本件和解一覧表に記載された訴訟上の和解を「本件和解」という。)。 [103]ア 信徒会の関係者とされる信者が、利害関係人として、原告に対し、和解金等を支払う債務(単独債務、抗告人以外の共同被告との連帯債務又は抗告人以外の共同被告の負う債務に対する連帯保証債務)を負うこととされたもの(別紙3-1の「抵当権設定」欄に「◎」印を付したものを除く全てのもの) [104]イ 抗告人が、利害関係人や他の共同被告が原告に対して負う和解金等の支払債務を担保するため、抗告人所有の不動産につき抵当権を設定することとされたもの(別紙3-1の「抵当権設定」欄に「〇」印又は「◎」印を付したもの) ((2)全体につき、甲B4の1〔29~30頁、別紙5〕、甲B10の1、甲C3の5の2〔3~4頁〕、別紙3-1の「甲Fの証拠番号」欄記載の甲F号証、手続の全趣旨) (3) 請求者に和解金等を支払う内容の訴訟外の示談 [105] 抗告人の信者らによる抗告人への献金の勧誘、物品の販売、伝道・教化といった行為により損害を被ったと主張する者や、被害者から損害賠償請求権を相続したと主張する者が、弁護士に委任し、抗告人に対し、訴訟外において損害賠償等を請求し、これらの請求者に和解金等を支払う内容の訴訟外の示談が成立した事案も存在する。このうち、抗告人の信者らによる平成22年以降の行為に関するもの(①示談金額が請求額を大きく下回り、かつ、少額であるもの、②本件銃撃事件後に示談が成立したものを除く。)は、別紙4の示談一覧表に記載のとおりである。 [106] 抗告人が、請求者に対して和解金等を支払う内容の訴訟外の示談に応じる場合にも、自らが和解金等の支払債務の債務者となることはなく、信徒会の関係者とされる信者が、和解金等の支払債務の債務者となることが通例である。 (甲B11の1、甲C3の5の2〔3~4頁〕、別紙4の「甲Gの証拠番号」欄記載の甲G号証、手続の全趣旨) (4) 和解金等の支払の実情 [107] 抗告人は、特別対策費を計上して信徒会の関係者とされる信者が支払義務を負う和解金等の支払に充てることもあるが、それ以外の場合には、信者が和解金等の支払のための資金を捻出する。抗告人が特別対策費を拠出するのは、あくまでも、一方又は双方の当事者が信者である等の事情を踏まえて、抗告人が信者を宗教的に指導教化すべき立場にあったことを考慮して、深刻な事案が社会問題に発展することを防ぐことを目的として、やむを得ず行うものとされている。 [108] 平成18年1月1日から令和5年1月6日までに成立した訴訟外の示談の和解金等の合計額約117億円のうち、抗告人が特別対策費を計上して支払に充てた額は、同年2月末時点で約14.8億円にとどまっており、その余の100億円余りについては、和解金等の支払債務の債務者とされた信者らが支払のための資金を捻出した。 [109] なお、平成30年には、近畿圏信徒会の信者及び八尾信徒会の信者が、訴訟外の示談で自らが債務者となった解決金(それぞれ、7500万円、3018万5452円)の支払が到底不可能な状況に追い込まれているとして、抗告人に対して支援を要請したため、抗告人の責任役員会は、同年12月19日、各解決金を上記各信徒会に支援する旨の議決をした。 (甲B2の19、2の20、甲B5の1〔27~33頁、別紙7〕、甲B5の23~5の25、乙P2の2、手続の全趣旨) [110] 平成19年12月14日から平成21年11月10日にかけて、抗告人の信者らによる物品の販売につき、特商法違反の罪により、抗告人の信者らや法人を罰金刑や執行猶予付きの懲役刑に処する旨の略式命令や有罪判決が下された。その概要は、別紙5の刑事訴訟一覧表に記載のとおりである。(前提事実2(2)、甲E34~37) [111] 以下においては、次の(1)~(8)の各略称は、各記載の意味で使用する。 (1) 献金等行為 [112] ①抗告人への献金をし、②抗告人の信者若しくはその関係者から物品を購入し、③抗告人の信者若しくはその関係者に対して貸付金等の名目で金員を交付し、又は④抗告人、抗告人の信者若しくはその関係者が開催する参加費等の発生するセミナーや儀式等に参加する行為 (2) 献金等出捐金 [113] 献金等行為により献金、物品購入代金、貸付金等又は参加費等の名目で支出する金員 (3) 献金等勧誘行為 [114] 献金等行為を勧誘する行為 (4) 伝道教化勧誘等行為 [115] 伝道・教化した上、献金等行為を勧誘したり、抗告人の信者として他の者に対する伝道・教化活動や物品の営業・販売活動に従事するよう求めたりする行為 (5) 献金等勧誘行為等 [116] 献金等勧誘行為及び伝道教化勧誘等行為 (6) 対象者 [117] 献金等勧誘行為等の対象となる者 (7) 因縁トーク [118]ア ①過去及び現在において、対象者やその親族に悩み・不幸・苦しみが発生したことや発生していることは、先祖の悪行や罪等に原因(因縁)がある旨、②先祖の悪行や罪等が原因(因縁)となって、将来、対象者やその親族に悩み・不幸・苦しみが発生する可能性がある旨、あるいは、③先祖や亡くなった対象者の親族が霊界や地獄で苦しんでいる旨を告げるとともに、 [119]イ ①現在の悩み・不幸・苦しみを解消し、②将来の悩み・不幸・苦しみを避け、あるいは、③先祖や亡くなった対象者の親族を霊界や地獄の苦しみから解放するためには、一定の行為をする必要がある旨を告げ、その不安をあおった上で、当該行為を勧誘する手法 (8) 未証し [120] 抗告人に関連する行為であることを秘しつつ、一定の行為を勧誘する手法 (1) 本件確定判決の判断の概要 [121] 本件確定判決は、抗告人の信者らが昭和54年11月(別紙2-1の本件確定判決一覧表の対象者番号13番〔甲E9〕)から平成26年9月(同一覧表の対象者番号137番〔甲E31〕)までに計140名の対象者らに対して行った献金等勧誘行為等が不法行為に該当し、抗告人が使用者責任(ただし、対象者番号135番〔甲E29〕については不法行為責任、対象者番号136番〔甲E30〕については使用者責任及び不法行為責任)を負うと判断した。その概要は、以下のとおりである。 ア 抗告人の信者らの不法行為について (ア) 献金等勧誘行為 [122] 本件確定判決のうち、17件(甲E1、3、4、6~8、19、21~26、29~32)は、諸事情を総合的に考慮した結果、抗告人の信者らによる献金等勧誘行為が、以下のaやbに該当し、勧誘の在り方として社会通念上相当な範囲を逸脱すると認められるとして、不法行為に該当すると判断した(諸事情を総合的に考慮した結果、以下のaやbに該当し、勧誘の在り方として社会通念上相当な範囲を逸脱すると認められる献金等勧誘行為を「不相当献金等勧誘行為」という。)。 [123]a 対象者に対し、未証しにより献金等行為を勧誘したり、因縁トーク等の手法により献金等行為をしないことによる害悪を告知して対象者の不安をあおった上で献金等行為を勧誘したりするなど、対象者の自由な意思を制限し、献金等行為をするか否かについて適切な判断をすることが困難な状態に陥らせた上で、献金等行為を勧誘すること [124]b 対象者に対し、 (a) 対象者の資産や収入に比して過大な献金等出捐金の支払が必要となる献金等行為や、 (b) 対象者の親族の意思に反し、当該親族に無断で、当該親族の財産を原資として、献金等出捐金を支払わせることとなる献金等行為 など、対象者又はその親族に不当な不利益を与え、あるいは、対象者又はその親族の生活の維持に支障が生じることになるような献金等行為を勧誘すること (イ) 伝道教化勧誘等行為 [125] 本件確定判決のうち、その余の9件(甲E5、9、11、13、15、17、18、27、28)は、諸事情を総合的に考慮した結果、抗告人の信者らによる以下のような伝道教化勧誘等行為が、社会通念上相当な範囲を逸脱すると認められるとして、不法行為に該当すると判断した(以下のような伝道教化勧誘等行為であって、社会通念上相当な範囲を逸脱すると認められるものを「不相当伝道教化勧誘等行為」といい、不相当献金等勧誘行為と併せて「不相当献金等勧誘行為等」という。)。 [126]a ①対象者に抗告人への献金や他の者への物品の営業・販売活動及び伝道・教化活動を行わせること、並びに②対象者に行わせる他の者への伝道・教化活動によって①の行為を行う抗告人の信者を再生産することによって、経済的利益を上げる目的で、 [127]b 対象者に対し、伝道・教化する過程において、 (a) 上記aの目的や抗告人に関連する活動であることを秘しつつ、抗告人、抗告人の信者又はその関係者が開催するセミナー等への参加を勧誘したり(未証し)、 (b) セミナー等において、先祖の因縁、自己の罪深さ、地獄や霊界の存在等を教え込みつつ、抗告人の教義に基づく活動をしなければ、あるいは、抗告人の教義から離脱すれば、対象者やその親族が現世又は地獄や霊界において苦しむことになるなどと害悪を告知して不安をあおったりする方法により、 対象者の自由な意思を抑圧し、抗告人の教義に基づく活動をするか否かについて適切な判断をすることが困難な状態に陥らせ、さらには、抗告人の教義から離脱することを困難な状態に陥らせた上で、 [128]c 対象者に対し、抗告人の教義に基づく活動として、抗告人への献金等行為を勧誘したり、他の者に対する無償かつ過酷な物品の営業・販売活動や伝道・教化活動に従事するよう求めたりすること イ 損害について [129] 本件確定判決においては、別紙2-1の本件確定判決一覧表に記載のとおり、計140名の対象者らについて、抗告人の信者らによる不法行為と相当因果関係がある損害として、不法行為に該当する不相当献金等勧誘行為等により、①対象者が支払を余儀なくされた献金等出捐金等(献金等出捐金以外には、抗告人に献金する資金を捻出するために不動産を売却した際に支払を余儀なくされた諸費用等が含まれる。)に相当する額の財産上の損害合計15億1222万8609円、②対象者に生じた精神的苦痛に対する慰謝料合計1億7177万円が、それぞれ認められている。 [130] なお、上記ア(イ)の不相当伝道教化勧誘等行為に係る損害賠償については、慰謝料のみが認められた原告も存在する。また、不相当伝道教化勧誘等行為に係る損害賠償については、他の者に対する物品の営業・販売活動や伝道・教化活動に従事することを余儀なくされた期間の逸失利益を請求する原告も存在したが、いずれの判決においても、逸失利益は損害として認められていない。 ウ 抗告人の責任について [131](ア) 本件確定判決(抗告人自身の民法709条に基づく不法行為責任のみを認めた甲E29を除く。)においては、抗告人につき、概要、以下の事情を根拠として、民法715条1項に基づく使用者責任が認められている。 [132]a 献金後に、抗告人の教会において、献金式等の儀式が執り行われたり(甲E1、4、19)、献金を行った者に対して抗告人の本部から感謝状が送られたり(甲E19、32)、物品の購入代金の支払が抗告人の教会において行われたりすることがあったこと(甲E24)。 [133]b 文鮮明や抗告人の会長等の幹部が、抗告人の信者に対し、抗告人の教義(「万物復帰」)の実践として、経済活動を行い、これにより得られた利益を全て神に捧げるよう求め、抗告人の信者も、抗告人の教義(「万物復帰」)の実践として、献金の勧誘や物品の販売を行っており、これにより得られた利益はそのほとんどが抗告人に帰属したものと推認されること。(甲E1、3~9、11、13、15、17~19、22、24、25、27、28、32) [134]c 抗告人の本部が各地の教会等に対して献金を要請する指示文書や、抗告人の本部が作成した全国の教区における献金等の目標達成率を示す表が存在し(甲E23)、抗告人の教区長が、当該教区における献金額の目標を定め、これを傘下の区域長に伝達し、達成率を報告させたり(甲E28)、抗告人のリージョン事務局において、教域別に献金の達成率を示した一覧表を作成し、定期的に各教域に送付したりしていたこと(甲E19、21、22)。 [135](イ) 抗告人は、本件確定判決(抗告人自身の民法709条に基づく不法行為責任のみを認めた甲E29を除く。)に係る各事件において、問題とされている不相当献金等勧誘行為等は、抗告人とは別の組織であり、かつ、抗告人との間に指揮監督関係が存在しない連絡協議会等の構成員であった信者が行ったものであると主張して、使用者責任を争ったが、本件確定判決においては、概要、以下の事情を根拠として、連絡協議会等は実質的に抗告人と同一の組織であるか、抗告人との間に指揮監督関係が存在するとして、当該主張が排斥されている。 [136]a 連絡協議会等は、抗告人の信者を主要な構成員としており、抗告人の教義に基づく伝道活動や経済活動を行っていたこと。(甲E3、5、6、7、9、11、19、24、32) [137]b 抗告人の役職にある者がこれを辞して連絡協議会等の役職に就いたり、連絡協議会等の役職にある者がこれを辞して抗告人の役職に就いたりするなど、両者の間に人事上の交流があったこと。(甲E3、9、11、24、27、28) [138]c 抗告人の信者の中には、連絡協議会等の存在を知らなかったり、抗告人自身の組織に所属して活動しているのか、あるいは連絡協議会等に所属して活動しているのか認識しないまま、活動を行ったりしていた者がいたこと。(甲E7、9、11、27、28、30) [139]d 抗告人の発行する新聞、機関誌及び小冊子においても、抗告人自体の活動と区別することなく、連絡協議会等の活動に関する記事が掲載されていたほか(甲E13、17、18、30)、連絡協議会の責任者であるとされるCが、抗告人の本部役員(局長)として、抗告人の機関誌の本部役員のあいさつ欄に投稿したことがあったこと(甲E9、11、24)。 [140]e 連絡協議会のある地区の組織図に抗告人の役職が記載されていたほか(甲E27、28)、信徒会を代表する者が信徒会の代表者として行った署名の肩書が抗告人の教会の組織図に記載されている肩書と同一であったり(甲E23)、抗告人の教会の部署として、信徒会の部署とされる教育部、実践部などが挙げられていた冊子が存在したりすること(甲E27)。 [141]f 連絡協議会等が、抗告人から独立した組織であることを示す規則や規約等の団体の運営に関する定めは存在せず、その電話番号が抗告人の教会の電話番号と同一であり、予算の作成や決算の報告等も行われておらず、主たる事務所も存在しないこと。(甲E11、15、18、23、27、28、30) [142](ウ) 本件確定判決のうち、甲E29は、対象者に対し、夫の財産を夫の意思に反して献金することを勧誘した行為について、抗告人による組織的な不法行為として、抗告人の損害賠償責任を認めている。 (2) 本件確定判決に関する検討・評価 [143] そこで、本件確定判決により、抗告人の信者らによる不法行為を認定できるかについて検討する。 [144] 宗教団体が、その教義をひろめ、その宗教活動を維持するため、あるいは、その教義の実践として、信者等に対して任意に献金をするように求めることは、その方法、態様及び金額等が社会的に相当と認められる範囲内である限り、正当な宗教活動の範囲内にあると認められ、これを違法ということはできない。そして、献金の勧誘の過程で、霊的な要素の強い事象等を原因とするわざわいを説くなどすることについては、その内容がおよそ科学的に証明し得ないことなどを理由として、直ちに虚偽であり、違法であると評価することはできないというべきである。しかしながら、宗教団体又はその信者らによる献金を勧誘する行為であっても、社会的に相当と認められる範囲を逸脱した方法・態様等で行われたときには、違法の評価を免れない。そして、どのような場合に献金を勧誘する行為が社会的に相当と認められる範囲を逸脱したといえるかに関する不当寄附勧誘防止法の定め及び令和6年最判の判断は、次のとおりであり、本件においても、これらを前提に判断するのが相当である。 ア 不当寄附勧誘防止法の定め [145] 不当寄附勧誘防止法3条は、法人等は、寄附の勧誘を行うに当たっては、同条各号に掲げる事項に十分に配慮しなければならない旨を定め、 ① 同条1号は、「寄附の勧誘が個人の自由な意思を抑圧し、その勧誘を受ける個人が寄附をするか否かについて適切な判断をすることが困難な状態に陥ることがないようにすること。」を、 ② 同条2号は、「寄附により、個人又はその配偶者若しくは親族(当該個人が民法877条から880条までの規定により扶養の義務を負う者に限る。)の生活の維持を困難にすることがないようにすること。」を、 ③ 同条3号は、「寄附の勧誘を受ける個人に対し、当該寄附の勧誘を行う法人等を特定するに足りる事項を明らかにするとともに、寄附される財産の使途について誤認させるおそれがないようにすること。」を、 それぞれ掲げる。 イ 令和6年最判の判断 [146] 宗教団体又はその信者(以下、本項において、 「宗教団体等」という。)が当該宗教団体に献金をするように他者を勧誘すること(以下、本項において、「献金勧誘行為」という。)は、宗教活動の一環として許容されており、直ちに違法と評価されるものではない。もっとも、献金は、献金をする者(以下、本項において、「寄附者」という。)による無償の財産移転行為であり、寄附者の出捐の下に宗教団体が一方的に利益を得るという性質のものであることや、寄附者が当該宗教団体から受けている心理的な影響の内容や程度は様々であることからすると、その勧誘の態様や献金の額等の事情によっては、寄附者の自由な意思決定が阻害された状態でされる可能性があるとともに、寄附者に不当な不利益を与える結果になる可能性があることも否定することができない。そうすると、宗教団体等は、献金の勧誘に当たり、献金をしないことによる害悪を告知して寄附者の不安をあおるような行為をしてはならないことはもちろんであるが、それに限らず、寄附者の自由な意思を抑圧し、寄附者が献金をするか否かについて適切な判断をすることが困難な状態に陥ることがないようにすることや、献金により寄附者又はその配偶者その他の親族の生活の維持を困難にすることがないようにすることについても、十分に配慮することが求められるというべきである(不当寄附勧誘防止法3条1号、2号参照)。 [147] 以上を踏まえると、献金勧誘行為については、これにより寄附者が献金をするか否かについて適切な判断をすることに支障が生ずるなどした事情の有無やその程度、献金により寄附者又はその配偶者等の生活の維持に支障が生ずるなどした事情の有無やその程度、その他献金の勧誘に関連する諸事情を総合的に考慮した結果、勧誘の在り方として社会通念上相当な範囲を逸脱すると認められる場合には、不法行為法上違法と評価されると解するのが相当である。そして、上記の判断に当たっては、勧誘に用いられた言辞や勧誘の態様のみならず、寄附者の属性、家庭環境、入信の経緯及びその後の宗教団体との関わり方、献金の経緯、目的、額及び原資、寄附者又はその配偶者等の資産や生活の状況等について、多角的な観点から検討することが求められるというべきである。 ウ 検討・評価 [148](ア) 本件確定判決における上記(1)の判断の基礎とされた抗告人の信者らによる行為、損害及び当該信者らや連絡協議会等と抗告人との関係等に関する事実の認定は、認定事実①(ただし、認定事実①のうち、本件確定判決が認定した事実を用いて認定した3(1)イ(イ)、3(2)ア、ウの事実を除く。)と整合するものであって、特段不相当な点は見当たらない。 [149](イ) また、本件確定判決における認定事実を踏まえた上記(1)の判断も、相当である。 [150] なお、この判断のうち、抗告人の信者らによる不相当献金等勧誘行為が不法行為に該当する旨の上記(1)ア(ア)の判断について付言すると、この判断は、上記アの不当寄附勧誘防止法の定めや上記イの令和6年最判の判断の趣旨に沿ったものである(そもそも、これらの法の定めや最高裁判決の判断は、後述するとおり、本件確定判決も含めたこれまでの下級審裁判例の判断を踏まえたものであると解される。)。 [151] 上記アの不当寄附勧誘防止法の定めや上記イの令和6年最判の判断は、寄附や献金の勧誘に限ったものであることに留意する必要はあるが、献金以外の献金等行為も、献金等出捐金の額によっては、無償の財産移転行為に近くなり、対象者の出捐の下にその受益者が一方的に利益を得るという性質のものとなり得ることや、対象者が抗告人の信者らから受けている心理的な影響の内容や程度は様々なものであることからすると、献金と同様に、その勧誘の態様や献金等出捐金の額等の事情によっては、対象者の自由な意思決定が阻害された状態でされる可能性があるとともに、対象者に不当な不利益を与える結果になる可能性があることも否定することができない。よって、献金を勧誘する行為以外の献金等勧誘行為についても、上記アの不当寄附勧誘防止法の定めや上記イの令和6年最判の判断枠組みに沿った判断をすることが相当である。そうすると、本件確定判決の認定した事実関係の下で、抗告人の信者らによる献金等勧誘行為が、不相当献金等勧誘行為として不法行為に該当するとの本件確定判決の判断は、いずれも相当であるというべきである。 [152](ウ) そして、本件確定判決は、いずれも、抗告人が、被告として上記(1)ア~ウの争点について反論・反証を尽くし、上訴の手続を経た後に確定するに至ったものであり、26件もの確定判決により同旨の認定判断が積み重なっていることをも踏まえれば、本件確定判決において認定された事実は、本件における判断に当たっても事実として認定することができ、これを踏まえた本件確定判決の判断についても、本件における判断の前提とすることができると解するのが相当である。 (3) 抗告人の主張に対する判断 [153]ア これに対し、抗告人は、解散命令は宗教法人にとって「死刑宣告」ともいわれるほどの重大な不利益処分であるから、解散命令が請求された事件における事実認定には刑事訴訟と同等の厳格さが要求されるところ、 ① 民事訴訟では、事実及び証拠の収集・提出は当事者の責任とされ(弁論主義)、証拠方法に制限はなく、裁判で求められる証明の程度は「証拠の優越」で足り、裁判所は弁論の全趣旨をも斟酌することができるから、場合によっては証拠によることなく事実認定をすることが可能である、 ② 裁判官のさじ加減で結果が左右される民事訴訟の判決は、証拠としてふさわしくない、 ③ 「社会的相当性」という、不文の法秩序に対する違反の有無は、裁判所による事後的、総合的な利益衡量によって判断されるため、行為者にとって、どのような行為が違反となるのかが一義的に明らかではない、 ④ 民事訴訟においては、判決の認定する事実が実体的真実と一致する保障はなく、民事訴訟制度自体、実体的真実の発見に限界があることを前提に、政策的に立証責任を分配することによって擬制的真実の発見に努めるものであり、このような擬制的真実をもとに宗教法人の解散命令という重大な不利益処分が下されてよいはずがない などとして、民事訴訟の判決(本件確定判決)をもとに解散命令事由の有無を判断することは許容されるべきではないと主張する。 [154] しかしながら、民事訴訟法においては、弁論主義のもとに真実を発見して適切な判断を確保するための手続上の規律が設けられているほか、裁判官による事実認定や判断の誤りを是正するための上訴手続を初めとする不服申立ての制度も設けられている。また、献金等勧誘行為等が不法行為に該当するか否かは事実関係によるのであるから、事案が異なれば判断が異なることは当然にあり得ることである。しかも、抗告人は、被告として、本件確定判決に係る全ての民事訴訟手続に参加し、反論・反証を行い、不服申立てをする機会が与えられていたのである。そうすると、こうした手続を経て確定するに至った本件確定判決の認定した事実を、本件における判断に当たっても事実として認定し、これを踏まえた本件確定判決の判断について、本件における判断の前提とすることは、許容されてしかるべきである。 [155] よって、抗告人の上記主張は、採用することができない。 [156]イ 抗告人は、事後法である不当寄附勧誘防止法の規定や令和6年最判の判断内容を斟酌して過去の不相当献金等勧誘行為の違法性を遡って判断することは許されないと主張する。 [157] しかしながら、そもそも、不当寄附勧誘防止法の定めや令和6年最判の判断は、本件確定判決も含めたこれまでの下級審裁判例が認めてきた勧誘者の負うべき信義則上の注意義務を、確認的に明文化したもの又は整理して判示したものと解されるのであって、不当寄附勧誘防止法の定めや令和6年最判の判断内容を参照しつつ、過去の不相当献金等勧誘行為の違法性を判断することが許されないとはいえない。 [158] よって、抗告人の上記主張は、採用することができない。 [159]ウ 抗告人は、 ① 抗告人の信者らが、未証しによる伝道・教化を行った事実はないし、因縁トークにより献金を勧誘した事実もない、 ② 本件確定判決の原告らは、抗告人に反対する者による拉致監禁や脱会の強要を受けて抗告人から脱会した「背教者」であって、その供述に信用性はない、 などと主張し、本件確定判決による認定・判断を争う。 [160] しかしながら、抗告人は、本件確定判決に係る各事件において、原告らの主張に対する反論・反証を通じ、原告らの主張する事実関係や原告らの供述の信用性を争うとともに、原告らに対する反対尋問をする機会もあったと考えられるのであり、裁判所は、こうした抗告人による訴訟活動の結果をも踏まえた上で、事実を認定し、信者らによる行為の不法行為該当性と抗告人の使用者責任等を認める判断を下したものである。そして、その判断が相当であることについては、上記(2)ウで述べたとおりである。 [161] よって、抗告人の上記主張は、採用することができない。 (4) 小括 [162] 上記(1)から(3)までの検討によれば、 ① 抗告人の信者らは、別紙2-1の本件確定判決一覧表のとおり、昭和54年11月から平成26年9月までの間、計140名の対象者らに対し、不法行為に該当する不相当献金等勧誘行為等を行い、同対象者ら(ただし、甲E29については、対象者の夫である原告)に対し、献金等出捐金等相当額として合計15億1222万8609円の財産上の損害を与えるとともに、合計1億7177万円の慰謝料に相当する精神的苦痛を与えたこと、 ② これらの不法行為につき、抗告人に使用者責任(ただし、甲E29については不法行為責任)が成立すること が認められる。 (1) 信者らの不相当献金等勧誘行為等に対する抗告人の関与の有無 [163]ア 本件確定判決で認定された抗告人の信者らによる不相当献金等勧誘行為等は、未証しや因縁トーク等の手法により害悪を告知して対象者の不安をあおるといった手法を用いている点において、態様が類似している上、全国各地で行われていることから、信者らが個別に自らの考えで行ったものとは考え難く、同一の主体からの組織的な働きかけに基づくものであったことが推認される。認定事実①-5(1)で認定したマニュアル等の存在及び内容は、この推認を裏付けるものである。 [164] また、本件確定判決で認定された抗告人の信者らによる不相当献金等勧誘行為等は、対象者に対して相当の経済的負担や精神的苦痛を強いるものであることから、対象者が簡単に勧誘に応じるとは考え難く、対象者から強い抵抗を受けることも容易に予想されるものであって、こうした不相当献金等勧誘行為等を、信者らが、誰からも何らの働きかけを受けることもなく、自発的に行ったとは考え難い。信者らは、社会通念上相当な範囲を逸脱しない方法・態様による勧誘では達成できないような金額の献金や物品の販売を達成するよう、強い働きかけを受けたからこそ、本件確定判決で認定された社会通念上相当な範囲を逸脱する方法・態様による不相当献金等勧誘行為等を行ったものと推認するのが合理的である。 [165] 以上に加えて、本件確定判決において認定され、抗告人の使用者責任を認める根拠とされた上記2(1)ウ(ア)の事情、すなわち、 ① 献金後に、抗告人の教会において、献金式等の儀式が執り行われたり、献金を行った者に対して抗告人の本部から感謝状が送られたり(認定事実①-5(3)も参照)、物品の購入代金の支払が抗告人の教会において行われたりすることがあったこと、 ② 文鮮明や抗告人の会長等の幹部が、抗告人の信者に対し、抗告人の教義(「万物復帰」)の実践として、経済活動を行い、これにより得られた利益を全て神に捧げるよう求め(認定事実①-3(1)ア、3(2)も参照)、抗告人の信者も、抗告人の教義(「万物復帰」)の実践として、献金の勧誘や物品の販売を行っており、これにより得られた利益はそのほとんどが抗告人に帰属したものと推認されること、 ③ 抗告人の本部が各地の教会等に対して献金を要請する指示文書や、抗告人の本部が作成した全国の教区における献金等の目標達成率を示す表が存在し、抗告人の教区長が、当該教区における献金額の目標を定め、これを傘下の区域長に伝達し、達成率を報告させたり、抗告人のリージョン事務局において、教域別に献金の達成率を示した一覧表を作成し、定期的に各教域に送付したりしていたこと (認定事実①-5(2)も参照) を併せ考慮すれば、 {1} 抗告人が、文鮮明(その死後は韓鶴子)の方針を踏まえ、抗告人の本部組織や地方組織、あるいは、連絡協議会等(連絡協議会等が抗告人の実質的な内部組織であると認められることについては、後記(3)で述べる。)を通じて、信者らに対し、社会通念上相当な範囲を逸脱しない方法・態様による勧誘では達成できないような数値目標を定めて献金や物品の購入の勧誘を行うよう指示したこと、 {2} その結果、抗告人の信者らにより、本件確定判決で認定された不相当献金等勧誘行為等が行われたことを推認することができる。 [166]イ なお、本件確定判決で認定された信者らによる不相当献金等勧誘行為等の中には、献金や物品の購入の勧誘のみならず、①貸付金や積立金名目の金員の交付の勧誘(甲E19、22、24、30)や、②参加費等の発生するセミナー等への参加の勧誘(本件確定判決に係る事案の多くに含まれる。)も含まれる(上記1(1)、(3)、(4)参照)。 [167] しかしながら、本件確定判決によれば、①貸付金等名目の金員の交付の勧誘は、いずれも違法な献金や物品の購入の勧誘の一環として行われている上、交付を受けた貸付金を返済することなく献金に振り替えさせたり(甲E19、22)、違法な勧誘をした信者自身が、自らの分の献金を準備できなかったことや抗告人への献金等により経済的に苦境に追い込まれたことが主な原因で、対象者に貸付金名目の金員を交付させたりした(甲E24)という事情が見受けられる。 [168] また、②セミナー等への参加の勧誘も、いずれも違法な献金や物品の購入の勧誘の一環として勧誘が行われている上、本件確定判決の認定する事情(特に、不相当伝道教化勧誘等行為については、セミナー等への参加の勧誘を含む対象者に対する違法な伝道・教化を行った目的は、{1}対象者に抗告人への献金や他の者への物品の営業・販売活動及び伝道・教化活動を行わせること、{2}対象者に行わせる他の者への伝道・教化活動によって{1}の行為を行う抗告人の信者を再生産することによって、経済的利益を上げる目的であったと認定されていること〔上記2(1)ア(イ)a参照〕)や、Cが連絡協議会の活動という名目でビデオセンターを通じて信者らに行わせた行為の態様(認定事実①-4(3)ウ参照。なお、連絡協議会等が抗告人の実質的な内部組織であると認められることについては、後記(3)で述べる。)に照らせば、セミナー等への参加の勧誘は、結局のところ、これをきっかけとして、対象者に対し、献金や物品の購入をさせ、あるいは、他の者に対する物品の営業・販売活動をさせることによって、経済的利益を上げることも一つの目的であったとみることができる。 [169] 以上によれば、上記アで説示したとおり、抗告人が信者らに対して社会通念上相当な範囲を逸脱しない方法・態様による勧誘では達成できないような数値目標を定めて献金や物品の購入の勧誘を行うよう指示した結果、貸付金等名目の金員の交付や参加費等の発生するセミナー等への参加の勧誘を含む、本件確定判決で認定された抗告人の信者らによる不相当献金等勧誘行為等が行われたことを推認することができる。 [170]ウ そして、 ① 文鮮明や抗告人の会長等の幹部が、信者らに対し、無理をしてでも、全ての財産を神に捧げなければならないとする趣旨の発言をしていたこと(認定事実①-3(2)ア、イ)、 ② 抗告人の信者が使用していたマニュアル等には、対象者の経済状況を顧みることなく献金や物品の購入を勧誘すべきであるとの趣旨と解し得る記載があるところ(認定事実①-5(1)ア)、この記載においては、文鮮明又は抗告人の会長等の幹部の上記①の発言と類似する表現が使用されていること からすれば、上記ア{1}の指示は、抗告人の会長等の幹部の承認の下に行われたものであり、かつ、その際、抗告人の会長等の幹部は、抗告人の信者らが、上記ア{1}の数値目標を達成するためには、社会通念上相当な範囲を逸脱する献金等勧誘行為等を行わざるを得ないことを予想することができたといえるから、抗告人の信者らが本件確定判決で認定された不相当献金等勧誘行為等に及ぶことを少なくとも未必的には容認していたものと推認することができる。 (2) 抗告人が信者らに対して献金や物品の購入の勧誘を指示した目的 [171]ア 文鮮明は、抗告人や韓国家庭連合のみならず、世界各国で、複数の組織や財団を設立し、布教活動にとどまらず、多額の出費を要すると考えられる様々な活動を行っていた(認定事実①-2(1)、(2))。また、文鮮明の著書には、エバ国家である日本(の信者ら)は、無理をしてでも、世界の国々のために、経済的援助をすべきであるとの趣旨と解される記載があるほか(認定事実①-3(1)イ(ア))、文鮮明は、Cに対し、献金を進めるよう指示を出したり、抗告人の会長に対し、日本からの金銭拠出が少ないことを叱責したりしていた(認定事実①-3(2)ウ)。さらに、抗告人の地区長が、平成10年1月18日、信者らに対し、父の国である韓国を救うために家や土地を売ってでも同月末までに1万2000ドルを献金しなければならないと述べる文鮮明の言葉を代読して献金するよう求めたり、抗告人の幹部が、平成11年8月31日、新たに認定された区域長に対し、「真の父母様」の誕生日に飛行機を捧げるために献金するよう求めたりしている(認定事実①-5(2)オ)。実際、抗告人は、毎年、海外の宣教活動を支援するため、抗告人の運営費の5割から6割に相当する100億円程度の費用を計上していたほか、文鮮明の国際ハイウェイ事業に約100億円出資した事実も認められる(認定事実①-2(3))。なお、抗告人は、海外の宣教活動の支援等の名目で、韓国を初めとする海外に送金をしており、送金先には、韓国家庭連合のほか、文鮮明が設立した財団やバレエ団が含まれていた(後記第3の認定事実②-2(1)オ)。文鮮明が平成24年に死亡し、妻の韓鶴子が韓国家庭連合の総裁を引き継いだ後も、本件銃撃事件までは、以上の状況に変化が生じたことを認めるに足りる証拠はない(認定事実①-2(2)、3(2)エ、後記第3の認定事実②-2(1)エ、オ)。 [172] 以上によれば、抗告人が、会長等の幹部の承認の下、信者らに対し、社会通念上相当な範囲を逸脱しない方法・態様による勧誘では達成できないような数値目標を定めて献金や物品の購入の勧誘を行うよう指示したのは、抗告人の献金収入を増大させるのみならず、韓国家庭連合の資金を含む文鮮明(その死後は韓鶴子)の活動資金(その使途は、本件記録上明らかではない。)を獲得する目的によるものでもあったと推認するのが相当である。 [173]イ なお、上記アの推認に関連し、抗告人の信者らによる献金や物品の販売の利益が、抗告人の献金収入及び韓国家庭連合の資金を含む文鮮明 (その死後は韓鶴子)の活動資金、あるいはこれらを獲得するための費用等に充てられたとみても不自然ではないことについて、付言する。 (ア) 献金について [174] 本件確定判決に係る各事件においては、抗告人の信者らが対象者に勧誘した献金が、抗告人への献金であったことについては、争われていない。 [175] もっとも、連絡協議会でCの補佐役を務めたDの別件訴訟の証人尋問における供述(甲B13の2〔40~41頁〕、乙F23の3の1〔33~35、69~70頁〕、乙F23の3の2〔35~37頁〕)によれば、連絡協議会の活動を通じて行われた信者らの献金については、抗告人に収められたもののほか、連絡協議会の担当者において受領し、連絡協議会の活動費用等に充てられたもの(Dは、これを「寄付金」と称している。)も存在することがうかがわれるが、これは、抗告人の献金収入等を獲得するための費用等とみるべきものである。 (イ) 物品の販売の利益について [176] 物品の販売については、抗告人が事業としてこれを行っていたものと認めるに足りる証拠はない。抗告人の信者らは、抗告人とは別の法主体である事業者(ハッピーワールド社、その関連会社、特約店等)の取り扱う商品を、委託販売員として販売してきたものであり、その販売による利益はこれらの事業者が取得するとともに、信者らが委託販売に係る手数料を取得したことがうかがわれる(乙F23の3の1〔33頁〕)。 [177] しかしながら、証拠によれば、 ① 平成7年当時のハッピーワールド社の筆頭株主はCであり、同社の関連会社や特約店の株式についても、抗告人の信者らが保有していたこと(乙F23の3の2〔62頁〕、乙F23の3の3〔23頁〕)、 ② ハッピーワールド社やその関連会社の役員や従業員の多くは、抗告人の信者であり、役員報酬や給与の中から抗告人に献金していたこと(乙F23の3の1〔61~65頁〕) が認められる。 [178] また、連絡協議会でCの補佐役を務めていたDが、別件訴訟の証人尋問において、委託販売を行っていた抗告人の信者らが手数料収入の中から抗告人に献金していたことを供述しているほか(乙F23の3の1〔35頁〕)、本件確定判決においては、物品の委託販売を行っていた抗告人の信者らは、手数料を受領しておらず、若干の小遣いとして月額約1万5000円の金員を受領していたにすぎないと認定されている(甲E8。同旨の認定をするものとして、甲E5、17がある。)。そうすると、抗告人の信者らが受領すべき委託販売の手数料は、その大半が、抗告人への献金に充てられたと認めるのが相当である。 [179] 以上によれば、抗告人の信者らによる物品の販売の利益は、結局のところ、これらの物品の販売に関与した事業者(ハッピーワールド社、その関連会社、特約店等)の株主、役員若しくは従業員である抗告人の信者ら、又は委託販売を行った抗告人の信者らを通じるなどして、抗告人の献金収入等に充てられたとみても不自然ではない。 (ウ) 結論 [180] 以上によれば、抗告人の信者らによる献金や物品の販売の利益が、抗告人の献金収入等、あるいはこれを獲得するための費用等に充てられたとみても不自然ではないというべきである。 [181] なお、文鮮明(その死後は韓鶴子)は、営利事業も営んでおり(認定事実①-2(2))、その利益が韓国家庭連合の資金を含む文鮮明(その死後は韓鶴子)の活動資金の資金源となっている可能性もあるが(乙32の1〔125~128頁〕参照)、そのことは、日本の信者らからの抗告人の献金収入の一部が韓国家庭連合の資金を含む文鮮明(その死後は韓鶴子)の活動資金の資金源とされた事実、ひいては、抗告人が、自らの献金収入だけでなく、韓国家庭連合の資金を含む文鮮明(その死後は韓鶴子)の活動資金を獲得する目的で、日本の信者らに対し、献金や物品の購入の勧誘を行うよう指示していた事実の推認を妨げるものではない。 [182] よって、上記アの推認は合理的であるというべきである。 (3) 抗告人の主張に対する判断 [183] これに対し、抗告人は、本件確定判決で認定された抗告人の信者らによる不相当献金等勧誘行為等は、抗告人とは別の法主体である連絡協議会等の構成員であった信者が行ったものであり、抗告人の指示によるものではないと主張する。 ア 連絡協議会について [184] しかしながら、以下の(ア)~(エ)の事情に照らせば、連絡協議会は、抗告人の幹部であったCが、経済活動と伝道活動を一体化して行っていくとの抗告人の方針 (認定事実①-3(2)、4(2)、4(3)ア)を実行に移すため、抗告人の実質的な内部組織として発足させた活動体であると認めるのが相当であり、抗告人から独立した別の法主体であったと認めることはできない。 [185](ア) 昭和57年8月に連絡協議会を発足させ、その最高責任者を務めたCは、抗告人の幹部(「局長」)であって、抗告人の機関誌(「ファミリー」昭和53年1月号)において、「エバ国家の使命」や「万物復帰」という抗告人の教義に言及しつつ、「観念の世界で酔いしれることなく、事実ある結果をもたらして、実体として天の前に供物」をすることの重要性を説いていたものであり(認定事実①-4(2))、この考え方は、「万物復帰」や「エバ国家」という抗告人の教義を踏まえて日本の信者が神に財産を捧げることや経済活動をすることの重要性を説く文鮮明や抗告人の会長等の幹部の発言(認定事実①-3)と合致する。そして、連絡協議会の活動内容(物品の営業・販売活動、献金の勧誘)は、この考え方に沿ったものである。 [186] なお、連絡協議会でCの補佐役を務めたDは、別件訴訟の証人尋問において、Cが抗告人の本部の役員になったことはないと供述し(乙F23の3の2〔53頁〕)、抗告人の幹部であるEも、別件訴訟の証人尋問において、Cが抗告人の責任役員になったことや局長になったことはないと供述するが(甲B13の8〔52~54頁〕)、Cは、抗告人の機関誌(「聖徒」昭和51年1月号、「ファミリー」昭和53年1月号)において、少なくとも2回にわたり、抗告人の本部役員らによる年頭のあいさつを掲載する記事の中で、何の留保を付することもなく、「局長」との肩書であいさつ文を掲載していたのであるから(認定事実①-4(2))、Cが抗告人の幹部(局長)であったことを否定するDやEの上記供述は、いずれも採用することができない。 [187](イ) Cが昭和57年8月以降に連絡協議会を通じて信者らに行わせた物品の営業・販売活動やビデオセンターを利用した伝道・教化活動は、①もともと、抗告人が自ら実施することを検討し、当時の所轄庁である東京都に相談していた経緯があり(認定事実①-4(2)、4(3)ウ)、また、②抗告人の広報委員長が抗告人の機関誌「成約の鐘」昭和49年2月号において示した、マナ(高麗人参茶)販売のみならず伝道もしなければならず、伝道した基盤の上にマナを販売するルートを作り、万物復帰になる状態を実現していくべきであるとの方針(認定事実①-4(2))や、抗告人の副会長が昭和57年1月19日の年頭訓示の際に示した、経済活動と伝道活動を一元化して行っていくべきであるとの方針(認定事実①-4(3)ア)とも合致している。 [188](ウ) 連絡協議会について、本件確定判決において認定された以下の諸事情が存在する。(上記2(1)ウ(イ)) [189]a 連絡協議会は、抗告人の信者を主要な構成員としており、抗告人の教義に基づく伝道活動や経済活動を行っていたこと。(甲E5、6、7、9、11、19) [190]b 抗告人の役職にある者がこれを辞して連絡協議会の役職に就いたり、連絡協議会の役職にある者がこれを辞して抗告人の役職に就いたりするなど、両者の間に人事上の交流があったこと。(甲E9の1〔129頁〕、甲E11の1〔296~297頁〕) [191]c 連絡協議会や抗告人は、連絡協議会の存在や組織及び活動内容をその活動に当たる抗告人の信者に周知していなかったため、抗告人の信者の中には、自分が抗告人自体の組織に所属し活動しているのか、あるいは連絡協議会に所属して活動しているのかの認識もないまま、活動を行っていた者がいたこと。(甲B13の2〔25~26頁〕、甲E7の1〔17頁〕、甲E9の1〔133~134頁〕、甲E11の1〔292頁〕、甲E27の1〔270~271頁〕、甲E28の1〔139頁〕、乙F2〔34~35頁〕、乙F23の3の1〔10頁〕) [192]d 抗告人が発行していた新聞において、抗告人自体の活動と区別することなく、連絡協議会の活動(アンケートを用いた路傍伝道やツーデーズセミナー、スリーデーズセミナー、フォーデーズセミナー、ライフトレーニング、新生トレーニング等)に関する記事が掲載されていたほか、連絡協議会の責任者であるとされるCが、抗告人の本部役員(局長)として、抗告人の機関誌の本部役員のあいさつ欄に投稿したことがあったこと。(甲E9の2〔9頁〕、甲E11の1〔296頁〕、甲E13の1〔119頁〕、甲E17の1〔74頁〕、甲E18の1〔9~10頁〕、甲E24の1〔117頁〕) [193]e 連絡協議会のある地区の組織図には、抗告人の教会長や副教会長という役職が記載されていたこと。(甲E27の1〔271頁〕、甲E28の1〔139~140頁〕) [194]f 連絡協議会につき、代表者の選任、意思決定、財産管理の方法等、団体の運営に関する規則・規定等の定めや、収支に関する書類等、抗告人から独立して活動をしていたことを示す文書が存在しないこと。(甲E11の1〔291頁〕、甲E15の2〔10頁〕、甲E18の1〔9頁〕、甲E27の1〔268~269頁〕、甲E28の1〔139頁〕) [195](エ) 抗告人は、昭和62年に損害賠償を求める民事訴訟を提起されてから平成7年9月までの間、民事訴訟において、「全国しあわせサークル連絡協議会」という名称の活動体が存在したことを明らかにしておらず、同月になって、連絡協議会でCの補佐役を務めたDが陳述書及び証人尋問において初めてこれを明らかにした。(甲B1の39〔36、123頁〕、乙F23の3の1〔10頁〕、乙F23の3の3〔46~47頁〕) イ 信徒会について [196] そして、信徒会も、以下の(ア)~(ウ)の事情に照らせば、抗告人の実質的な内部組織として、連絡協議会の活動を引き継いだ活動体であると認めるのが相当であり、抗告人から独立した別の法主体であったと認めることはできない。 [197](ア) 信徒会は、連絡協議会が平成4年までに解散した後、連絡協議会の活動を引き継いだとされているところ(認定事実①-4(5))、連絡協議会は、上記アのとおり、抗告人の実質的な内部組織であり、信徒会が、連絡協議会の活動を引き継ぐに当たり、抗告人とは別の法主体として発足したことをうかがわせる証拠は見当たらない。 [198] なお、抗告人が証拠提出する信徒会の代表と称する者の陳述書(乙F24〔2頁〕)においても、 「連絡協議会は91年から92年にかけて全国組織が解散し、地域によってはブロック単位または地区単位で信徒会に名称を変えていきました。横浜では91年秋頃に、横浜地区から横浜信徒会への名称を変更しました。活動内容については横浜の場合、余り変わることはありませんでした。」と記載されている。 [199](イ) ① 抗告人は、損害賠償を請求された事案について訴訟上の和解や訴訟外の示談をする際、自らが和解金等の支払債務の債務者となることはなく、信徒会の関係者とされる信者が和解金等の支払債務の債務者となることが通例であり、現に平成18年1月1日から令和5年1月6日までに成立した訴訟外の示談の和解金等の合計額約117億円のうち、100億円余りについては、和解金等の支払債務の債務者とされた信者らが支払のための資金を捻出しているところ(認定事実①-6(2)~(4))、 ② 信徒会が、真実、抗告人から独立した別の法主体であるとすれば、抗告人が損害賠償を請求された事案に係る合計100億円余りもの和解金等について、抗告人がその支払債務の債務者にならないにもかかわらず、信徒会の関係者とされる信者らがその支払債務の債務者になることに応じるとは考え難く、 ③ このことは、信徒会が、抗告人から独立した別の法主体ではなく、抗告人の実質的な内部組織であり、信徒会の関係者とされる信者らが、抗告人に指示されて和解金等の支払債務の債務者となっている事実を推認させる。 [200] なお、抗告人は、全国弁連の弁護士が、長年にわたり、請求者の代理人として、信徒会の関係者との間で訴訟外の示談に係る合意書等を作成してきたことからすれば、信徒会が抗告人とは別の法主体として存在していることが明らかであると主張する。しかしながら、全国弁連の弁護士が、信徒会が抗告人とは別の法主体であることを認めたとは考え難く、示談を成立させるために、抗告人の意向を踏まえて信徒会の関係者とされる信者を債務者とする合意をしたにすぎないものと考えられるし、信徒会が抗告人と別の法主体であるか否かは、全国弁連の弁護士の行動や認識によってではなく、抗告人と信徒会の関係に関する客観的な事情によって判断されるべきものである。よって、抗告人の上記主張は、採用することができない。 [201](ウ) 信徒会について、本件確定判決において認定された以下の諸事情が存在する。(上記2(1)ウ(イ)) [202]a 信徒会は、抗告人の信者を主要な構成員としており、抗告人の教義に基づく伝道活動や経済活動を行っていたこと。(甲E3、19、24、32) [203]b ①信徒会の青年支部の支部長を務めた後に、抗告人の職員となった者が存在し(甲E24の1〔116頁〕、甲E24の2〔35頁88項〕)、②抗告人の教区長が信徒会の責任者に就任した後、抗告人の教区長や教区の運営本部長に就任したり、信徒会の教育部長を務めた者が抗告人の教会長を務めたりする(甲E27の1〔271~272頁〕、E28の1〔139頁〕)など、両者の間に人事上の交流があったこと。 [204]c 抗告人を退会するまで、信徒会というものが存在することを知らない信者が存在したこと。(甲E30の2〔45頁〕) [205]d 抗告人の発行している新聞、機関紙及び小冊子には、信徒会が行っているとされる営業等の活動について記載されていたことがあったこと。(甲E30の2〔45頁〕) [206]e 信徒会を代表する者が信徒会の代表者として行った署名の肩書が、抗告人の教会の組織図に記載されている肩書と同一であったことがあったほか(甲E23の1〔69頁〕)、抗告人の教会の部署として、信徒会の部署とされる教育部、実践部などが挙げられていた冊子が存在すること(甲E27の1〔269頁〕)。 [207]f 信徒会につき、代表者の選任、意思決定、財産管理の方法等、団体の運営に関する規則・規定等の定めや、収支に関する書類等、抗告人から独立して活動をしていたことを示す文書が存在しないこと。(甲E23の1〔69頁〕、甲E27の1〔268~269頁〕、甲E28の1〔139頁〕) [208]g 信徒会の事務所の電話番号が抗告人の教会の電話番号と同一である信徒会や、主たる事務所が存在しない信徒会が存在したこと。(甲E23の1〔69頁〕、甲E30の2〔45頁〕) (4) 小括 [209] 上記(1)から(3)までの検討によれば、本件確定判決で認定された抗告人の信者らによる不相当献金等勧誘行為等に対する抗告人の関与について、以下の事実を認めることができる。 [210]ア 抗告人は、日本の信者らが無理をしてでも世界の国々のために経済的援助をすべきであるとする文鮮明(その死後は韓鶴子)の方針を踏まえ、抗告人の献金収入を増大させるとともに、韓国家庭連合の資金を含む文鮮明(その死後は韓鶴子)の活動資金を獲得する目的で、会長等の幹部の承認の下、本部組織や地方組織、あるいは、抗告人の実質的な内部組織である連絡協議会等を通じて、信者らに対し、社会通念上相当な範囲を逸脱しない方法・態様による勧誘では達成できないような数値目標を定めて献金や物品の購入の勧誘を行うよう求めた。その際、抗告人の会長等の幹部は、抗告人の信者らが、その数値目標を達成するため、不相当献金等勧誘行為等を行うことを、少なくとも未必的に容認していた。 [211]イ その結果、抗告人の信者らは、抗告人によって定められた数値目標を達成するため、本件確定判決で認定された不相当献金等勧誘行為等を行った。 (1) 本件和解に関する評価・検討 [212] 訴訟上の和解は、受訴裁判所が、訴訟物とされている請求権の存否及び金額について、争点に関する当事者の主張立証を踏まえ、一定の心証を形成した上で、これを踏まえて当事者に和解勧告をし、両当事者が、これを受け容れた場合に成立することが通例である。被告が、受訴裁判所から心証を踏まえた和解勧告を受けることなく、早期解決の観点から、自発的に原告に和解金等を支払う和解が成立することもないわけではないが、本件和解に係る事件は、いずれも、原告が、抗告人に対し、抗告人の信者らによる献金等勧誘行為等につき、不法行為が成立し、かつ、抗告人に民法709条又は715条1項に基づく損害賠償責任が成立すると主張して損害賠償を求める事案であり、本件確定判決に係る各事件や本件における抗告人の対応(抗告人は、いずれにおいても、問題とされた献金等勧誘行為等は、抗告人とは別の法主体である連絡協議会等の構成員であった信者が行ったものであって、抗告人ないしその幹部は関与していないと主張して、抗告人の法的責任を争っている。)に照らしても、本件和解に係る事件の中に、抗告人が、受訴裁判所から心証を踏まえた和解勧告を受けることなく、早期解決の観点から自発的に和解に応じたものがあるとは考え難い。 [213] そうすると、本件和解のうち、①信徒会の関係者とされる信者が、利害関係人として、原告に対し、和解金等を支払う債務(単独債務、抗告人以外の共同被告との連帯債務又は抗告人以外の共同被告の負う債務に対する連帯保証債務)を負うこととされたものについては、受訴裁判所が、抗告人の信者らによる献金等勧誘行為等につき、不法行為が成立し、かつ、抗告人に民法709条又は715条1項に基づく損害賠償責任が成立するとの心証を踏まえて和解勧告し、これを受けた抗告人が、抗告人の実質的な内部組織である信徒会の関係者を利害関係人として和解に参加させ、和解金等の支払債務の債務者とさせたものと認めるのが相当である(上記3(3)イ(イ)参照)。 [214] また、本件和解のうち、②抗告人が利害関係人や他の共同被告が原告に対して負う和解金等の支払債務を担保するために抗告人所有の不動産につき抵当権を設定することとされたものについても、抗告人の信者らによる献金等勧誘行為等につき、不法行為が成立し、かつ、抗告人に民法709条又は715条1項に基づく損害賠償責任が成立するとの心証を踏まえた受訴裁判所からの和解勧告がなければ、抗告人がその所有する不動産につき抵当権を設定する旨の和解に応じるとは考え難いから、抗告人が受訴裁判所から上記心証を踏まえた和解勧告を受けて成立したものと認めるのが相当である。 [215] なお、受訴裁判所が、請求棄却の心証を形成したものの、事案の適切な解決の観点から、被告が原告に対して請求額と比べて少額の解決金を支払う旨の和解案を提案し、その旨の和解が成立する場合がないわけではない。しかしながら、本件和解の和解金額は、いずれも、請求額と比べて少額であるとはいえず、又はある程度まとまった金額であり、抗告人において請求棄却を前提としつつ事案の適切な解決の観点から少額の解決金を支払うことにしたものと評価することは困難である。 [216] そして、被告である抗告人が、裁判所が不法行為と相当因果関係が認められるとの心証を形成した損害の額よりも高額の和解金等を支払う旨の和解を受け容れたとは考え難いから、本件和解において、受訴裁判所は、抗告人の信者らによる不法行為に該当する不相当献金等勧誘行為等により、少なくとも、本件和解において合意された和解金等の額に相当する額の損害が発生したとの心証を形成したものと推認することができる。 (2) 本件和解を踏まえた抗告人の信者らによる不法行為に関する検討 [217] 以上によれば、本件和解は、いずれも、受訴裁判所が、抗告人の信者らによる献金等勧誘行為等につき、不法行為が成立し、かつ、抗告人に民法709条又は715条1項に基づく損害賠償責任が成立するとの心証を形成した上で、両当事者に和解勧告し、両当事者が、これを受け容れたことにより、成立したものと推認するのが相当である。 [218] 上記のような受訴裁判所の心証及び両当事者がこれを受け容れたことに鑑みれば、 ① 抗告人の信者らは、別紙3-1の本件和解一覧表のとおり、早くとも昭和48年3月(対象者番号141番〔甲F14〕)から遅くとも平成28年6月(対象者番号365番〔甲F99〕)までの間、計366名の対象者らに対し、不法行為に該当する不相当献金等勧誘行為等を行い、同対象者らやその関係者に対し、少なくとも、和解金等の合計額である57億5277万6082円の損害を与えたこと、 ② これらの不法行為につき、抗告人に民法709条又は715条1項に基づく損害賠償責任が成立すること を認めることができる。 (3) 本件和解を踏まえた抗告人の関与に関する検討 [219] 上記のとおり、本件和解に係る事案の全てにつき、抗告人に民法709条又は715条1項に基づく損害賠償責任が成立することに加え、上記3(1)から(3)までの検討を併せ考慮すれば、本件和解に係る事案についても、上記3(4)アと同様に、抗告人が、信者らに対し、献金や物品の勧誘を行うよう求めた結果、抗告人の信者らが、上記(2)の不相当献金等勧誘行為等を行ったことを推認することができる。 (4) 抗告人の主張に対する判断 [220]ア これに対し、抗告人は、 ① 抗告人側が和解に応じてきたのは、原告である元信者が献金をした事実が存在することから、原告の今後の生活等を総合的に考慮し、紛争解決のため、受領した献金の一部を解決金という形で返金することとしたものであり、不法行為の成立を認めて和解に応じたものではない、したがって、献金の一部返金という実質を有する訴訟上の和解が成立した事実をもって、不法行為があったと推測するのは筋違いである、 ② 抗告人が被告とされた事件においては、特に原告側の主張・立証が十分でないと裁判所が認めたとき、あるいは、控訴審が原審の違法認定に疑義を抱いたときに、裁判所から和解勧告が行われてきたところ、抗告人が和解に応じてきたのは、裁判所から和解勧告があったことが大きな理由の一つであった、 ③ 裁判所が和解を積極的に推奨しておきながら、抗告人が和解に応じたことをもって解散命令事由を認定するのは不当である、 と主張する。 [221] しかしながら、既に述べたとおり、本件和解の和解金等の額は、いずれも、請求額と比べて少額であるとはいえず、又はある程度まとまった金額であり、抗告人において請求棄却を前提としつつ事案の適切な解決の観点から少額の解決金を支払うことにしたものと評価することは困難である。受訴裁判所が、抗告人の信者らによる献金等勧誘行為等につき、不法行為が成立せず、又は抗告人の損害賠償責任が成立しないとの心証を形成した上で和解勧告した場合、このような和解が成立するとは考え難い。受訴裁判所が、抗告人の信者らによる献金等勧誘行為等につき、不法行為が成立し、かつ、抗告人に損害賠償責任が成立するとの心証を形成し、これを踏まえて和解勧告をしたからこそ、抗告人が、積極的に不法行為の成立を認めるわけではないとしても、判決になった場合には抗告人に損害賠償責任が成立するとの判断を回避することが困難であると考え、和解勧告に応じたものと認めるのが相当である。 [222] また、本件和解が、受訴裁判所の積極的な和解勧告により成立したものであるとしても、本件和解が成立した事実から、抗告人の信者らが、不法行為に該当する不相当献金等勧誘行為等を行い、これらの不法行為につき、抗告人に損害賠償責任が成立することを認定することが許されないというものではない。 [223] よって、抗告人の上記主張は、採用することができない。 [224]イ また、抗告人は、本件和解のうち、別紙3-1の本件和解一覧表の対象者番号361番(甲F93)、対象者番号363番及び364番(甲F98)、対象者番号365番(甲F99)、対象者番号366番(甲F100)に係る各事案(いずれも、各原告が主張する抗告人の信者らの不法行為の中に、抗告人の信者らが平成22年以降に行った献金等勧誘行為等が含まれている事案である。)につき、個別に原告らの主張立証の信用性を争い、不法行為が成立しないと主張する。 [225] しかしながら、この主張は、いずれも採用することができない。その理由は、後記第3(認定事実②)の3(1)イ(イ)、(3)ア(エ)、(3)エ(ア)に記載のとおりである。 [226] 上記2から4までの検討結果を総合すると、以下の事実を認めることができる。 [227](1) 抗告人は、日本の信者らが無理をしてでも世界の国々のために経済的援助をすべきであるとする文鮮明(その死後は韓鶴子)の方針を踏まえ、抗告人の献金収入を増大させるとともに、韓国家庭連合の資金を含む文鮮明(その死後は韓鶴子)の活動資金を獲得する目的で、会長等の幹部の承認の下、本部組織や地方組織、あるいは、抗告人の実質的な内部組織である連絡協議会等を通じて、信者らに対し、社会通念上相当な範囲を逸脱しない方法・態様による勧誘では達成できないような数値目標を定めて献金や物品の購入の勧誘を行うよう求めた。その際、抗告人の会長等の幹部は、抗告人の信者らが、その数値目標を達成するため、不相当献金等勧誘行為等を行うことを、少なくとも未必的に容認した。 [228](2) その結果、抗告人の信者らは、抗告人によって定められた数値目標を達成するため、 [229]ア 別紙2-1の本件確定判決一覧表のとおり、昭和54年11月から平成26年9月までの間、計140名の対象者らに対し、不法行為に該当する不相当献金等勧誘行為等を行い、同対象者ら(ただし、対象者番号135番〔甲E29〕については、対象者の夫である原告)に対し、献金等出捐金等相当額として合計15億1222万8609円の財産上の損害を与えるとともに、合計1億7177万円の慰謝料に相当する精神的苦痛を与え、 [230]イ 別紙3-1の本件和解一覧表のとおり、早くとも昭和48年3月から遅くとも平成28年6月までの間、計366名の対象者らに対し、不法行為に該当する不相当献金等勧誘行為等を行い、同対象者らやその関係者に対し、少なくとも、合計57億5277万6082円の損害を与えた。 [231] 後掲各証拠及び手続の全趣旨によれば、平成21年のコンプライアンス宣言及びこれを踏まえて抗告人が行った不相当献金等勧誘行為等を防止するための対策等につき、以下の事実が認められる。 (1) 抗告人が本件銃撃事件までに行った不相当献金等勧誘行為等を防止するための対策 ア コンプライアンス宣言等 (ア) コンプライアンス宣言1(乙P1の1) [232] 抗告人が、新世事件(前提事実2(2)、別紙5)に関する報道(前提事実3(1))を契機として、全国の地区長、教区長、教域長、教会長に対して発出した平成21年2月12日付け「信者らの活動に関する事件報道について-教会指導者に対する注意と指導-」と題する事務連絡文書(コンプライアンス宣言1)には、以下の記載がある。 [233]1 当法人の目的は、礼拝儀式等の行事を通して教理の伝道、及び信者らの教化・育成にあります。したがって当法人信者らに対する指導者としての責任と権限の範囲はあくまでこの目的の範囲において行われるべきものであります。そのことを理解しつつ、平和理想世界実現と真の家庭完成のために、信仰と精誠を尽くして、みことばを完成すべき我々であります。(イ) コンプライアンス宣言2(乙P1の2) [239] 抗告人が全国の地区長、教区長、教域長、教会長に対して発出した平成21年3月25日付け「信者らの献金奨励・勧誘活動及びビデオ受講施設等における教育活動等に対する指導について」と題する事務連絡文書(コンプライアンス宣言2)には、以下の記載がある。 第1 信者らの献金奨励・勧誘活動についての指導基準(ウ) 「宗教法人 世界基督教統一神霊協会 会員の心得」(乙P1の3) [249] 抗告人は、平成21年6月24日、「宗教法人 世界基督教統一神霊協会 会員の心得」を作成し、全国の地区長、教区長、教域長、教会長に発出した。同文書には、以下の記載がある。 [250] 統一教会活動に際しては社会的責任を果たし、以下のことを遵守します。(エ) コンプライアンス宣言等の周知 [256] 抗告人は、平成21年6月24日、全国の地区長、教区長、教域長、教会長に対し、上記(ウ)の「宗教法人 世界基督教統一神霊協会 会員の心得」を礼拝堂や集会場等の誰でも見ることのできる場所に掲示するよう指示するとともに、コンプライアンス宣言をスタッフルーム等に掲示してコンプライアンスの精神を徹底するよう指示し、同年7月3日までに、ほぼ全ての教会で掲示が実行された。(乙P1の3、乙F106) [257] また、抗告人は、抗告人の機関紙等の平成21年3月号~5月号及び7月号に、上記(ウ)の「宗教法人 世界基督教統一神霊協会 会員の心得」及びコンプライアンス宣言を掲載した。(乙F10~14) イ 「VISION 2020の勝利に向けて-コンプライアンス推進の再確認」(乙P1の5) [258] 抗告人は、平成25年12月11日、全国の地区長、教区長、教会長等に対し、以下の内容を記載した「VISION 2020の勝利に向けて-コンプライアンス推進の再確認」と題する事務連絡文書を発出した。 [259] (前略)当法人はこのコンプライアンス宣言の内容を組織運営の基本とし、健全なる組織の発展に努力してきましたが、今後もこの基本方針は何ら変わることはありませんし、教会組織の社会的発展のためには、より一層コンプライアンスを徹底していかなければなりません。ウ 「牧会者規程」(甲A9) [267] 抗告人は、牧会者(地区長、教区長、教会長及び副教会長を務める聖職者)の使命と役割、職務内容等について定める「牧会者規程」を定め、平成26年10月15日に施行した(乙F107)。 [268] 平成30年11月14日の改定後の牧会者規程35条は、以下のとおり定める。 [269] 法令順守は牧会者の重要な服務基準であるが、下記の3点は特に留意すること。エ 抗告人の名称変更を契機とする伝道活動及び施設の見直し [273] 抗告人は、平成27年8月26日、「世界基督教統一神霊協会」から現在の「世界平和統一家庭連合」に名称を変更した(認定事実①-1(1))。抗告人は、その際、文部科学省の外局である文化庁の宗務課長(当時の抗告人の所轄庁は、相手方であった。)から、「社会から正体隠しと批判されることのないように、信者組織や信者等への指導を含めて、取り得る最大限の措置を講ずるように併せて強くお願いする。」との口頭による指導を受けた(甲B1の1〔21頁〕、甲B1の31~1の33、乙P12の1)。抗告人は、これを受け、以下の各対応を執った。 (ア) 抗告人の名称変更の際の事務連絡文書の発出(乙P1の6) [274] 抗告人は、平成27年8月31日、全国の地区長、教区長、教会長等に対し、「法人の名称変更告知」と題する事務連絡文書を発出した。同文書には、以下の記載がある。 [275] 今回の名称変更に当たり、本部からの指示として今年の8月26日から1年間は、教会の出版物、公式文書、責任者の名刺等には新名称と共に旧名称も併記することとします。従って、各教会で開催される各種行事、週報、伝道用パンフレットには、主催者として 「世界平和統一家庭連合(旧名称・世界基督教統一神霊協会)」と併記して下さい。新名称に伴う当法人の看板等に使用されるロゴ・デザインは追ってお知らせします。(イ) 「伝道活動および施設に関する基準」(乙P1の9)に基づく伝道活動及び施設の見直し [277] 抗告人は、ビデオセンター等の施設で行われた伝道について「正体を隠した伝道」であり違法であるとの判決を受けたことや、文化庁宗務課長から上記のとおり口頭による指導を受けたことを踏まえ、抗告人の信者らが任意に設立、運営するビデオセンター等の施設のうち、一定の基準を満たすものを抗告人公認の伝道施設とし、伝道活動は全て抗告人公認の伝道施設において抗告人の指導の下に行うこととした。(乙P12の1) [278] そこで、抗告人は、「牧会者規程」の下位規定として「伝道活動および施設に関する基準」を定め、平成27年12月15日に施行した。同「基準」には以下のa~eの定めがある。(乙P1の9) [279] その上で、抗告人は、平成27年12月以降、上記基準に基づく伝道施設の公認作業を行った。(乙P1の7、1の8、乙P12) a 第2条(伝道活動の原則) [280] 規程第35条にあるように、牧会者は教会員が伝道活動をするにおいて、家庭連合を明しし、統一原理(家庭連合の教義)を学ぶことを勧誘の当初から明示するよう、教会員を指導しなければならない。従って、勧誘の当初にその正体を隠すと疑われるような、いわゆる「未明し伝道」は行ってはならない。ここでいう、「未明し伝道」とは次のどれか一つにでも該当する伝道手法のことをいう。b 第3条(施設における名称の明記) [286] 牧会者は、教会、伝道所、教育センター、書写堂などの教会施設には、「世界平和統一家庭連合(旧 世界基督教統一神霊協会)」の文言が入った看板を、外部または内部のよく分かる場所に掲げ、家庭連合の施設であることを来場者に明示することに責任を持たなければならない。c 第4条(伝道に使用する文書類への名称の明記) [287] 牧会者は、伝道で使用するビラ、パンフレット、受講申込書類などには、「世界平和統一家庭連合(旧 世界基督教統一神霊協会)」の名称が明記されることに責任を持たなければならない。d 第6条(教会員が任意に未明し伝道の施設を運営することの禁止) [288] 牧会者は、教会員が任意に未明し伝道の施設(文化フォーラム等)を運営し、未明し伝道活動を行うことがないよう、常に注意する。この基準が施行された時点で疑いが持たれる施設が存在する場合は、3ヵ月以内に正常化(家庭連合の伝道所等に変更する等)することに責任を持つ。但し、教会員個人に対する定めである第2条、文書類に関する定めである第4条は、速やかに実行するよう指導する。e 第7条(受講料) [289] 家庭連合の伝道所等では、収益事業とみなされる恐れのある受講料を徴集してはならない。ただし、受講者が任意で行う感謝献金はこれを受けることが出来る。(ウ) 「家庭連合時代の新規伝道・教育に対するガイドライン」(乙P1の10) [290] 抗告人は、伝道所において教義的、社会的、法的にも誤解を受けることのない伝道や教育が行われることを徹底する必要があるとして、「家庭連合時代の新規伝道・教育に対するガイドライン」を作成し、平成28年5月13日に施行した。同ガイドラインには、以下の定めがある。 a 直接伝道について [291] 「伝道活動および施設に関する基準」(平成27年12月15日施行)に示されている、未明かし伝道の禁止、伝道所の看板やチラシ・パンフレットへの法人名明記と旧名称の併記(平成28年8月26日まで)等の方針を遵守する。b 家系図、四柱推命、姓名判断及び手相等の運勢鑑定について [292]① 新規伝道において家系図、四柱推命、姓名判断及び手相等の運勢鑑定は使用しない。既に信仰を持った教会員の信仰教育に資する目的で、家系図(系譜)を用いるのはこの限りでない。なお、先祖解怨等のために先祖名簿として家系図(系譜)を作成することは妨げない。c 入会金、会費、受講料、参加費等について [297] 法人の施設においてこれらの名目で金員を受領することはできない。感謝献金ないし寄付金とし、金額は明示せず、任意の額とする。チラシ・パンフレットに記載する場合も同様である。(2) 民事訴訟等の件数を減少させるための対策 [298]ア 抗告人は、コンプライアンス宣言以降、本件銃撃事件に至るまでの間、 ① 抗告人の信者らの不相当献金等勧誘行為等により損害を被ったと主張する者が、弁護士を代理人として、抗告人に対し、訴訟外で損害賠償等を求める事件、 ② 抗告人の信者らの不相当献金等勧誘行為等により損害を被ったと主張する者が、抗告人に対し、民事訴訟を提起して損害賠償等を求める事件、 ③ 抗告人の信者らの不相当献金等勧誘行為に関連する刑事事件 の件数を減少させることを目的とする一連の対策を執った。抗告人がこのような対策を執った主な目的は、以下の(ア)のとおりであり、対策の主な内容は、以下の(イ)のとおりである。(乙P3、5、8、9、10。後掲各証拠は、事実認定に用いた主な証拠である。) (ア) 対策の主な目的(乙P3の14、5の3、8の1、9の2、9の15、10の6、10の7、10の10、10の12、10の17、10の22) [299]a 解決のための支出を削減すること。 [300]b 民事訴訟や刑事訴訟が多数係属したり、民事訴訟において抗告人自身の不法行為が認定されたりした場合には、 ① そのことが、抗告人に対する解散命令の理由となり、その法人格が消滅する事態となりかねないほか、 ② 抗告人に反対する弁護士等が抗告人の信者を脱会させるための活動をする理由とされる可能性があり、 ③ 抗告人の伝道活動にも支障をきたすことから、 こうした事態を防ぐ必要があること。 [301]c 抗告人に対する社会的評価を獲得すること。 (イ) 対策の主な内容 [302]a 上記(1)のコンプライアンス宣言及びこれを踏まえた一連の対策を徹底し、信者や教会責任者に対するコンプライアンス教育を実施すること。 [303]b 献金の勧誘の対象者(特に高齢の信者)と継続的に意思疎通を図り、その抱える不安要因(家族との関係、金銭問題等)を早期に把握して、相談に乗りながら、その解決を図ること。 [304] 特に、高齢者は、家族の反対を受けて、自分の意思に反して脱会させられたり、返金請求を強要されたりすることがあるため、 ① 高齢者の相談等を実施する、 ② 礼拝、式典での証し文や写真等を残す、 ③ 本人が希望すれば信仰証言の映像を撮影する、 ④ 家族の反対に対抗する法的文書(遺言書、公正証書等)の作成を支援する、 ⑤ 信仰の証となるような文書(日常のありのままの信仰生活、感謝、喜びに関する感想文等)を残す、 ⑥ 献金が信仰に基づき任意に行われたことを示す契約書を残す といった対策を執ること。(乙P5の5、9の1、9の2、9の9、9の16、9の21、10の19) [305]c 献金の勧誘の対象者が、抗告人の信者らによる献金の勧誘等に関する不満を抱えている場合には、弁護士が介入して損害賠償請求等に至る前の段階で解決すること。また、弁護士が介入して損害賠償請求等をされた場合には、訴訟提起前に、訴訟外の示談等による解決を目指すこと。 [306] こうした損害賠償請求等について、訴訟外で何らかの合意をする場合には、和解書・確認書等に清算条項(不起訴合意・債務不存在確認)を必ず入れること。(乙P9の22) [307]イ 上記ア(ア)b①の目的に関連し、抗告人は、抗告人の解散に備えて、コンプライアンス宣言直後の平成21年6月23日の責任役員会及び評議員会議において、抗告人の解散に伴う残余財産は、宗教法人「天地正教」に帰属させる旨の議決をした。(甲B1の35、1の36) [308](ア) 上記議決は、宗教法人法50条1項(解散した宗教法人の残余財産の処分は、合併及び破産手続開始の決定による解散の場合を除くほか、規則で定めるところによる。)及び抗告人の規則30条(この法人の解散に伴う残余財産は、国若しくは地方公共団体又は他の宗教法人のうち、責任役員会において、その定数の3分の2以上の多数の議決及び評議員会議においてその総数の3分の2以上の多数の議決を経て選定したものに帰属する。甲A2)に基づくものである。 [309](イ) 天地正教は、北海道帯広市に主たる事務所を置き、昭和62年12月に設立された宗教法人である(甲D321)。 [310] 本件確定判決の中には、天地正教は抗告人とは全く別の宗教団体であり、抗告人との間に指揮命令関係はないとする抗告人の主張に対し、 「天地正教の教主が昭和47年頃から文鮮明をメシヤとして信奉していたこと、平成元年頃には天地正教から抗告人に入信してくることを前提に、抗告人の信者に対し、統一教会と天地正教の関連を知られないように、天地正教では、統一教会における原理用語を使わないように指示が出されていたこと、抗告人が平成11年に天地正教を事実上吸収合併したとされていることなどに照らせば、遅くとも昭和63年頃には、抗告人と天地正教徒の間に、指揮命令系統が存在したものと認めるのが相当である。」と判示して、抗告人の主張を排斥したものがある(甲E28の1〔142頁〕、甲E28の2〔18頁44項〕)。 (3) 上記(1)及び(2)の対策を推進するための具体的方策 [311]ア 抗告人は、平成21年6月16日から、上記(1)及び(2)の対策を推進するため、KPI(重要業績評価指標)と称する評価指標を導入することとした。これは、全国の各教区、各教会において、以下の(ア)及び(イ)の評価項目ごとに、改善がみられる場合には加点し、問題がみられる場合には減点した上で、その点数を抗告人の本部で集計することにより、各教区、各教会における対策の推進状況を可視化するというものである。(乙P11の1、手続の全趣旨) (ア) 平成26年5月9日時点の評価項目(乙P9の20) [312]
[313]
項目1:事前クレーム対応・解決[314]イ 抗告人の法務局は、平成24年4月9日、全国の地区長、教区長、教会長に対し、「コンプライアンス違反行為等に対するKPI評価による指導改善措置について」と題する事務連絡文書を発出した。その内容は、以下のとおりである。(乙P1の4) [315] 2012年3月19日役員会において、現場のコンプライアンス違反に対してKPI評価を通して是正改善措置を実施することとなりました。それにより教会の健全なより大きな発展がなされることを目的とするものです。つきましては、以下の要領で実施しますので周知徹底をお願いいたします。[325]ウ 抗告人は、コンプライアンス宣言以降、本件銃撃事件に至るまでの間、全国の教会指導者との会議等において、各地区又は各教区におけるKPIの集計結果や、係属中の民事訴訟等の件数の推移等を情報共有しつつ、上記(1)及び(2)の対策を徹底するよう指導を行った。(乙P5、8、9、10) (4) 抗告人が本件銃撃事件後に行った不相当献金等勧誘行為等を防止するための対策 [326] 抗告人は、本件銃撃事件後の令和4年9月、本部に教会改革推進本部を設置し、以下の対策を執った。(乙P6の5、6の6) ア 「教会改革の方向性に関して」(乙P6の5) [327] 抗告人は、令和4年9月20日、地区長、教区長、教会長等に対し、「教会改革の方向性に関して」と題する以下の内容の事務連絡文書を発出した。 (ア) コンプライアンス宣言2の指導基準の追加 [328] コンプライアンス宣言2の 「信者への献金の奨励・勧誘行為はあくまでも信者本人の信仰に基づく自主性及び自由意思を尊重し、信者の経済状態に比して過度な献金とならないよう、十分配慮する。」とする指導基準につき、以下の指導基準を追加する。 [329] ここでいう「過度な」とは、献金により通常の社会生活(家族も含む)を困難にするような程度、あるいは、献金の為に借金をする等のことであることを明示し、献金が信者の生活を圧迫することが決して無いよう指導を徹底致します。(イ) その他の対策 [330]① 政府で対応するとされている被害を訴える方への対応に関して、当法人に対して返金請求や被害を訴えるなどの申し出があった場合は、一件一件誠意を尽くして対応し、自ら早期に解決を図って参ります。イ 「献金を受領する際のガイドライン」(乙P13の8、13の12) [332] 抗告人は、不当寄附勧誘防止法の施行(令和5年1月5日)を受け、同月11日、「献金を受領する際のガイドライン」を策定した。 [333] 同ガイドラインにおいては、今後、過度な献金(献金により通常の社会生活を困難にするような程度、あるいは献金の為に借金をする等)により信徒が生活困難になることを未然に防ぐため、自己申告を原則として、「1回の献金」の金額が月収の10分の3(目安として10万円)以上となる献金を受領する際には、献金者に対して「献金確認書」(乙P13の9)を用いて以下の(ア)~(ウ)の確認を行い、当該献金を受領した際に「献金受領証」(乙P13の10)を発行する旨が定められている。なお、同ガイドラインにおいては、「献金確認書」を用いるかどうかは、「1回の献金」の金額について判断し、同月内に行われた複数回の献金の合計金額について判断するものではない旨が記載されている。 [334](ア) この献金により献金者又は家族の生活に支障を来す心配がないことウ 「伝道・教育に関する新ガイドライン2023」(乙P13の2) [336] 抗告人は、令和5年1月24日、平成27年12月15日施行の「伝道活動および施設に関する基準」(上記(1)エ(イ))と、平成28年5月13日施行の「家庭連合時代の新規伝道・教育に対するガイドライン」(上記(1)エ(ウ))を統合し、内容を加筆した「伝道・教育に関する新ガイドライン2023」を策定した。 エ 「教会改革のためのガイドライン(基本方針)」(乙P13の1) [337] 抗告人は、令和5年1月頃(甲B5の5)、上記アの「教会改革の方向性に関して」の内容に基づき、今後の教会運営における指針を示すものとして、「教会改革のためのガイドライン(基本方針)」を策定した。同ガイドラインには、以下の記載がある。 1.献金奨励・受領について(5) 当審係属後の抗告人の対応 ア 被害を訴える者に対する「補償」と称する対応(乙R1~8、抗告人提出の令和7年12月22日付け報告書、手続の全趣旨) (ア) 対応の概要 [357] 抗告人は、令和7年9月以降、献金等勧誘行為等による被害を訴える者に対し、以下のとおり、 「補償」と称する対応を実施することとした。「補償」を行う原資は、100億円程度としている。 a 趣旨及び目的 [358] 献金等勧誘行為等による被害を訴える者が存在すること自体が社会的に批判され、問題視されている事態を踏まえ、従来の法的責任を重視する考え方から、被害を訴える者が存在することに伴う社会的・道義的責任を重視する考え方に転換し、被害を訴える者に対する「補償」を行う。 b 「補償」の方針の転換 [359] 抗告人は、従来、被害を訴える者に対し、 ① 除斥期間が経過した献金及び消滅時効が完成した献金に関する返金の請求には応じない、 ② 献金以外の物品購入代金に関する返金の請求には応じない、 ③ 解決金の金額は、個々の案件の事情を勘案し、記録上認められた献金額の50~90%程度とし、100%の返金の請求には応じない との対応方針を執ってきた。 [360] しかし、今後は、上記aの趣旨及び目的に従い、 {1} 除斥期間が経過した献金及び消滅時効が完成した献金についても、原則として返金の請求に応じる、 {2} 献金以外の物品購入代金についても、原則として返金の請求に応じる、 {3} 個々の案件の事情に関係なく、原則として、記録上認められた金額の100%の返金の請求に応じる こととする。 (イ) 民事調停事件における対応 [361] 東京地方裁判所において、合計198人の申立人が抗告人に対して献金等の返金等を求める民事調停事件が係属しているところ(うち6人の申立人は取下げ)、抗告人は、これらの事件について上記(ア)bの新たな方針に基づく調停に応じることとし、令和7年10月2日から同年12月8日までの間に、182人の申立人との間で調停が成立した。 [362] これらの調停においては、信徒会の関係者とされる信者ではなく、抗告人自身が解決金の支払債務の債務者となっており、その解決金の総額は36億7936万4266円である。また、これらの調停の調停条項には、当該調停が、もっぱら早期解決を目的とするものであり、不法行為の成否を前提とするものではないことを確認するとの条項が含まれている。 (ウ) 弁護士により構成される委員会による「補償」の対応 [363]a 令和7年10月29日、抗告人から委託を受けた弁護士により構成される「宗教法人世界平和統一家庭連合補償委員会」(以下、本項、b及びcにおいて、「補償委員会」という。)が立ち上げられた。補償委員会は、抗告人との契約に基づき、抗告人から独立した立場で中立公正の見地から「補償」について審査・判断することとされているが、日本弁護士連合会の定める「企業等不祥事における第三者委員会ガイドライン」の要件を充足するものではないとされている。また、解散命令その他の理由により抗告人が解散した場合には、補償委員会も自動的に解散となるとされている。 [364]b 補償委員会の 「補償基準」と題する文書においては、以下の定めがある。 [365](a) 補償基準は、補償委員会において、抗告人の信者又はその近親者からの被害申告の実情を踏まえ、これらの者に対する迅速な補償を図ることを目的とする。[370]c 補償委員会は、令和7年10月31日に「補償」の申請の受付を開始し、同年12月20日現在、申請件数は合計233件、請求総額は44億5760万8699円となっている。申請の受付期間は、原則として、令和8年3月31日までとされている。 イ 抗告人の会長の辞任及び記者会見における謝罪(職1) [371] 田中前会長は、令和7年12月9日、抗告人の会長を辞任した。 [372] 田中前会長は、同日の記者会見において、辞任の理由の一つとして、 「継続して社会をお騒がせしてきたこと、そして今なお被害を訴える方々がいらっしゃることに対する道義的な立場です。私たちの活動が一部の方々に深いご心痛を与えたことは、決して軽視できません。会長として、その責任を真摯に受け止め、社会からの信頼回復に向けた一歩を踏み出すため、辞任を決意いたしました。改めてお詫びさせていただきます。申し訳ありませんでした。」と述べた。 (1) 抗告人の献金収入等の推移 ア 抗告人の献金収入の推移 [373] 平成18年度から令和6年度までの抗告人の献金収入(予算額及び決算額)の推移は、以下のグラフ(単位は億円、1億円未満切り捨て)のとおりである。(甲B3の1〔別紙3、9〕、甲B3の7、5の26、6の2、乙S1〔資料1~3〕)
イ 抗告人の収入・支出・繰越金の推移[374] 平成27年度から令和6年度までの抗告人の収入・支出・繰越金の推移は、以下のグラフのとおりである(単位は億円、1億円未満切り捨て。なお、献金収入以外の収入は、毎年数億円程度であるため、記載を省略している。)。令和4年度までは、毎年、献金収入が支出を上回っていたため、翌年度繰越金の額が年々増加していた。なお、どの年度においても、翌年度繰越金の額は、当該年度末の現預金の額と同額である。(甲B5の26、6の2、乙S1〔資料1~3〕)
ウ 抗告人の資産・負債の推移[375] 平成27年度から令和6年度までの抗告人の資産・負債の推移は、以下のグラフのとおりである(単位は億円、1億円未満切り捨て)。負債はほとんどなく、令和4年度までは、現預金(既に述べたとおり、どの年度においても、当該年度末の現預金の額は、翌年度繰越金の額と同額である。)の増加に伴い、正味資産の額が年々増加していた。(甲B6の2、乙S1〔資料1~3〕)
エ 抗告人の海外宣教援助費の推移[376] 平成27年度から令和6年度までの抗告人の海外宣教援助費(予算額及び決算額)の推移は、以下の折れ線グラフ(単位は億円、1億円未満切り捨て)のとおりである。なお、抗告人は、上記海外宣教援助費以外にも、教化費、祭典費、文化スポーツ振興費等の名目で、海外への送金を行っているため、海外送金額(後記オ参照)は、海外宣教援助費の額を超えることになる。(甲B5の26、6の2、甲C4の5〔9頁〕、乙S1〔資料1~3〕)
オ 抗告人の海外送金の状況[377] 抗告人が平成30年度から令和4年度までに海外に送金した額(単位は億円、1億円未満切り捨て)は、上記棒グラフのとおりであり、少なくとも、平成30年度が約83億円、令和元年度が約144億円、令和2年度が約157億円、令和3年度が約179億円、令和4年度が約93億円である。その主な送金先は韓国(韓国家庭連合のほか、文鮮明が設立した財団やバレエ団が含まれる。)であり、韓国への送金額が海外送金額全体の9割を超えている。 [378] 令和5年度以降の抗告人の海外送金額は、証拠上明らかではないが、本件銃撃事件後、海外宣教援助費名目での支出が激減し、令和5年度以降は0円になったこと(上記エ)に伴い、大幅に減額した。 (甲B1の8の1〔35頁〕、甲B6の1、6の6、6の9、6の11、6の12、甲C4の5〔9頁〕、手続の全趣旨) (2) 献金についての牧会者(地区長、教区長、教会長及び副教会長を務める聖職者)の役割及び評価基準 [379]ア 平成30年11月14日改定後の「牧会者規程」9条は、 「牧会者は、十一条献金を捧げる伝統を、教会員に指導しなければならない。また、教会員の信仰の成長に応じて、十分の三献金ができるように教育・指導を行う。これは、天一国創建のために、十分の一は教会のため、十分の一は国のため、十分の一は世界のために天に捧げる、という新しい天の伝統に基づくものである。」と定める。(甲A9) [380] なお、「十一条献金」とは収入の10分の1をもってする献金を、「十分の三献金」とは収入の10分の3をもってする献金を、それぞれ意味する。抗告人が平成3年11月1日に発行した「信仰生活と献金」と題する書籍によれば、「十分の一献金」は、ほとんどのキリスト教会において行われているところ、文鮮明が 「将来の理想世界では税金は30%である。10%は教会のため、10%は国のため、10%は世界のためである。だから今、韓国は30%献金をやっている。」と発言したことを踏まえ、統一教会は必ずしも「10分の1の献金」だけに固執することなく、できれば「10分の3献金」を目標として努力するよう奨励しているとされている。(甲B5の2〔17~18頁〕、手続の全趣旨) [381]イ 上記「牧会者規程」44条2項は、 「牧会者の人事評価は、人格・能力に対する定性評価40%と、将来に対する取り組みへの定性評価10%、実績に対する定量評価50%を原則とする。」と定め、47条は、 「実績に対する定量評価項目は、『牧会者の実績に対する定量評価基準』に定める。」と定める。(甲A9) [382] 令和3年度の「牧会者の実績に対する定量評価の基準」においては、複数の評価項目が挙げられ、各評価項目に「ウェイト」(全体に占める割合)が割り振られているところ、評価項目の中に「献金」が存在し、そのウェイトは全体の20%、その計算方法は「年間予算に対する信者献金の2021年3月~2021年12月の充足率」とされている。(甲B3の5) [383] すなわち、牧会者の人事評価において、「年間予算に対する信者献金の2021年3月~2021年12月の充足率」が牧会者の人事評価全体に占める割合は、「牧会者規程」44条2項に定める「実績に対する定量評価」50%×「牧会者の実績に対する定量評価の基準」に定める「献金」の評価項目のウェイト20%=10%となる。 (3) 抗告人による献金に関する文書の作成・発出 ア 抗告人の本部による「先祖解怨」に関する事務連絡文書 [384](ア) 「先祖解怨」とは、「血統のつながっている私たちの先祖を地獄の苦しみの生活から解怨して、霊界の修錬所に送ってあげることにより過去の罪を分立して祝福を受けることができる霊人にする」ための儀式であり、韓国の清平にあるHJ天宙天寶修錬苑(旧・天宙清平修錬苑)という施設で行われる。(甲B5の13〔12頁〕、甲B5の27〔12頁〕、認定事実①-2(1)) [385] 「先祖解怨」は、平成11年から始まり、同年1月8日当時、「真の父母様」(文鮮明とその妻である韓鶴子)は、信者らに対し、120代前までの先祖を解怨しなければならないと説いていた。しかし、その後、平成16年までに、「真の父母様」は、信者らに対し、さらに遡って210代前までの先祖を解怨しなければならないと説いたとされている。(甲B8の18〔5~6、74頁〕) [386](イ) 「天宙清平修錬苑」が平成24年9月1日に発行した「先祖解怨・祝福受付ガイドブック」第7版によれば、「先祖解怨」には、先祖解怨感謝献金を完納することが必要であるとされており、その額は、日本人の場合、①1~7代前までの先祖の解怨につき70万円、②8代より前については7代ごとに3万円とされている。(甲B5の13〔12~13頁〕、手続の全趣旨。もっとも、抗告人は、①については現在10万円となっており、②については現在7000円となっていると主張するが、その裏付けとなる証拠は提出していない。) [387] 同ガイドブックには、以下の記載がある。(甲B5の13〔49~59頁〕) ①【不幸の根本的な原因】[405](ウ) 抗告人は、平成30年8月1日、「先祖解怨と孝情奉献書の恩恵」と題する書籍を発行した。同書籍には、先祖解怨について、以下の記載がある。(甲B5の27〔11~14頁〕) [406] 地獄で生きる先祖は、苦痛に次ぐ苦痛、激痛に次ぐ激痛の中で、その苦しみから逃れるために子孫に救いを求めてきます。先祖が少しでも上の霊界に上がって楽になるためには、子孫に頼らざるを得ないのです。このため、先祖の霊界での苦痛が地上の子孫の苦痛(病気や事故)として現れる場合があります。苦しむ先祖が多ければ多いほど、子孫もまた苦しい生活を強いられることになるのです。先祖の苦痛が鏡のように子孫の家庭に映っているとも言えます。[415](エ) 抗告人の本部は、平成30年10月19日、全国の地区長、教区長、教会長等に対し、「真の父母様」から令和2年2月6日までに、さらに遡って430代前までの「先祖解怨」を完了しなければならないとの特別な指示がされたとする「天宙清平修錬苑分苑と430代の先祖祝福完了に関する指示事項」と題する事務連絡文書を発出した。同文書には、211代前から430代前までの先祖解怨については、先祖解怨感謝献金は必要ないが、210代前までの先祖解怨感謝献金が完納されていることが必要条件であると記載されている。(甲B2の15の3) [416](オ) さらに、抗告人の本部は、令和3年8月26日、全国の地区長、教区長、教会長等に対し、「真の父母様」から430代前までの「先祖解怨」の申請期限が令和4年8月まで延長された旨の事務連絡文書を発出した。同文書においては、令和4年8月以後、211代前から430代前までの解怨を行う場合には、従前どおり、先祖解怨感謝献金を支払う必要があるとの趣旨の記載がある。(甲B2の15の5、手続の全趣旨) イ 抗告人の西東京教長及び杉並教会における献金の目標額及び実績額に関する文書 [417] 平成24年から平成25年にかけて、①抗告人の西東京教区の傘下の各教会が集めた献金の実績額を記載した表が作成されているほか、②同教区の傘下の杉並教会における献金の目標額及び実績額、同教会において献金の勧誘の対象者や集める献金の目標額を各信者に割り当てる表を記載した文書が作成されている。(甲B12の1〔別紙6の2~3頁〕、甲B12の102~12の105) ウ 抗告人の本部によるその他の献金に関する事務連絡文書 [418] 抗告人の本部は、平成29年1月12日から令和4年3月24日までの間、全国の地区長、教区長、教会長等に対し、金額や期限を定めて特別献金(特別な目的のために行う献金)や感謝献金(折に触れて特別に感謝を表す献金)を案内する事務連絡文書を複数回にわたり発出した。(甲B2の15の1、2の15の2、2の15の4、2の15の6、2の15の7、甲B5の2〔23~24頁〕、甲B5の6) [419] コンプライアンス宣言の翌年である平成22年以降の抗告人の信者らによる不相当献金等勧誘行為等の状況及び損害賠償請求等の状況は、次のとおりである。 (1) 平成22年以降に抗告人の信者らにより不相当献金等勧誘行為等が行われたことが認められる事案 ア 本件確定判決 [420] 本件確定判決において、抗告人の信者らによって平成22年以降に行われた献金等勧誘行為が不相当献金等勧誘行為であり、不法行為に該当すると認められ、かつ、抗告人の使用者責任が認められた事案は、以下の3名の対象者に係る事案であり、各判決の判断の概要は、以下のとおりである。 (ア) 別紙2-1の本件確定判決一覧表の対象者番号137番(甲E31) a 対象者による献金等出捐金(合計403万0500円) [421](a) 平成25年4月以降に支払った受講料 合計18万円 (b) 平成25年5月19日及び23日に支払った先祖供養や祝福結婚式に関する献金 合計344万円 (c) 平成25年11月から平成26年9月までの間の4回の韓国の清平への渡航費用37万円、霊肉祝福を受けるための衣装代3万円及び指輪代1万0500円 b 判断の概要 [422] 別紙2―2の第25の1のとおり。 (イ) 別紙2-1の本件確定判決一覧表の対象者番号139番(甲E32) a 対象者による献金等出捐金(平成22年以降の支出であることが明らかなものに限る。合計669万0400円。) [423](a) 先祖解怨又は先祖祝福のために支出した献金(①、②、④、⑤の合計191万0400円)や参加費(③の8万円) ①平成22年11月26日 特別解怨 3万7700円 ②平成24年1月22日 先祖解怨 87万7200円 ③平成24年6月15日~17日 清平修練会 8万円 ④平成24年6月17日 先祖解怨・先祖祝福 89万7200円 ⑤平成25年10月27日 先祖祝福 9万8300円 (b) 以下の献金(合計470万円) 平成23年12月1日 献金 40万円 平成25年5月 天福函 430万円 b 判断の概要 [424] 別紙2-2の第26の2(2)、(5)のとおり。 (ウ) 別紙2-1の本件確定判決一覧表の対象者番号140番(甲E32) a 対象者による献金等出捐金(平成22年以降の支出であることが明らかなものに限る。合計616万0700円。) [425](a) 先祖解怨・先祖祝福等のために支出した献金、参加費等(合計567万1700円) 平成23年1月23日 先祖解怨・先祖祝福 75万0400円 平成23年3月12日 先祖解怨 80万0400円 平成23年5月8日 先祖解怨・先祖祝福 73万4900円 平成23年10月23日 先祖解怨・先祖祝福 143万1100円 平成23年12月18日 先祖解怨 96万9700円 平成24年4月22日 先祖解怨・先祖祝福・特別解怨 79万5100円 平成24年9月16日 先祖解怨・先祖祝福 11万0100円 平成25年1月19日 未婚霊人祝福 3万5500円 平成25年3月8日~9日 清平・お迎え 4万4500円 (b) 平成23年末頃に支払った自叙伝の購入代金36万9000円 (c) 平成25年10月16日及び12月19日の12万円の献金 b 判断の概要 [426] 別紙2-2の第26の3(2)、(4)、(5)のとおり。 イ 本件和解 [427](ア) 本件和解のうち、別紙3-1の本件和解一覧表の対象者番号365番の事案(甲F99。その概要は以下のa及びbのとおり)については、請求原因において不法行為に該当すると主張されている献金等勧誘行為等が平成22年以降のもののみであるから、受訴裁判所が、平成22年以降の献金等勧誘行為等が不法行為に該当し、かつ、抗告人に民法709条又は715条1項に基づく損害賠償責任が成立するとの心証を形成したものと認められる。したがって、この事案については、抗告人の信者らが、原告に対し、平成28年2月から6月までの間、不法行為に該当する不相当献金等勧誘行為等を行い、少なくとも和解金180万円相当の損害を与えたこと、かつ、抗告人の責任が成立することが認められる。 a 和解金額 [428] 180万円 b 原告の主張する請求原因の概要 [429] 抗告人の信者は、平成28年1月、東京・新宿の街頭で原告に声をかけ、抗告人の伝道活動であることを隠してビデオ受講に誘い込み、その後の伝道・教化によって、原告に対し、原告の先祖はほとんど地獄におり、先祖の天法に反する行為が原告の運勢に影響するので、悪因縁のある先祖を供養し、運勢を変える必要があるなどと先祖の因縁をリアルに信じさせ、四柱推命鑑定によって恐怖心を与え、その結果、原告は、 ① 同年3月21日、両親の直系及び母方4家系の感謝還元祈願礼式を行うための献金として40万円を支払い、 ② 同年4月25日、血統転換式を行うための献金として140万円を支払い、 ③ 同年5月、心の書写を行うための献金として1310円を支払い、 ⑤ 同年6月17日に脱会するまで、受講料等として13万8117円を支払い、 ほぼ全ての蓄えを吐き出させられた。 [430](イ) なお、抗告人は、この事案につき、 ① 原告が訪問した抗告人の伝道所には「宗教法人世界平和統一家庭連合杉並家庭教会(旧世界基督教統一神霊協会)」と明記した看板を掲示していた(乙Q2の1)から、「正体を隠した勧誘」をされたとする原告の主張は意図的な虚偽である、 ② 原告は、180万円を献金した際、「所願成就」と題する文書に願い事を記載しており(乙Q2の2、2の3)、そこには先祖の因縁や地獄の恐怖などという言葉は全くない などとして、原告に対する献金等勧誘行為等につき不法行為が成立しないと主張する。 [431] しかしながら、受訴裁判所は、上記証拠(乙Q2)も含め、当事者双方から提出された証拠を全て踏まえて争点に関する心証を形成したものと考えられるのであり、その中から上記証拠(乙Q2)のみを取り出して不法行為が成立しないと断じることは困難であるといわざるを得ず、受訴裁判所が上記(ア)の心証を形成したことにつき、合理的な疑いを生じさせるものとはいえない。したがって、抗告人のこの主張は、上記(ア)の認定を左右するものではない。 (2) 平成22年以降に抗告人の信者らにより不相当献金等勧誘行為等が行われた可能性が相応に認められる事案 ア 令和6年最判(甲E39) [432] この判決に係る事案は、抗告人の信者であった亡Aが抗告人に献金をしたことについて、亡Aの長女(亡Aは、原告として訴訟を提起した後、控訴審係属中に死亡し、同人の長女が亡Aの訴訟上の地位を承継した。)が、抗告人らに対し、上記献金は抗告人の信者らの違法な勧誘によりされたものであるなどと主張して、不法行為(主位的には共同不法行為、予備的には使用者責任)に基づく損害賠償等を求めるものである。 [433] この判決においては、原審の確定した事実関係の概要として、以下の(ア)及び(イ)の事実が記載されており、以下の(ウ)のとおり、抗告人の信者らが平成22年以降に献金を勧誘した行為が含まれている。同判決は、 「亡Aは、平成17年以降、1億円を超える多額の本件献金を行い、平成20年以降は、自己の所有する土地を売却してまで献金を行っており、残りの売得金を松本信徒会に預け、同信徒会を通じてさらに献金を行うとともに、同信徒会から生活費の交付を受けていたのであるが、このような献金の態様は異例のものと評し得るだけでなく、その献金の額は一般的にいえば亡Aの将来にわたる生活の維持に無視し難い影響を及ぼす程度のものであった。」などと説示した上、以下の(イ)a{1}、{2}の献金を勧誘する行為が不法行為法上違法であるとはいえないとの原審の判断には、献金勧誘行為(宗教団体又はその信者が当該宗教団体に献金をするよう他者を勧誘すること)の違法性に関する法令の解釈適用を誤った結果、この判決の説示する判断枠組み (上記第2の2(2)イ参照)に基づく審理を尽くさなかった違法があるとして、原判決の一部を破棄し、東京高等裁判所に差し戻した。 [434] 以下の(ア)~(ウ)の事実は、抗告人が被告となっている民事訴訟の第一審及び控訴審における当事者双方の主張立証を踏まえて認定された事実であり、かつ、上告審が原審(控訴審)の確定した事実関係として判断の基礎とした事実であるから、本件においても、事実として認定することができる。 [435] そして、 ① 上告審においては、以下の(イ)a{1}の平成21年までの献金のうち6580万円に関する部分のみが不服の対象とされており、平成22年以降の献金を勧誘する行為は不服の対象とされていないこと、 ② 令和6年最判は、不服の対象外である以下の(イ)b{3}の献金を勧誘する行為の違法性については言及していないこと に留意する必要はあるものの、以下の(ア)~(ウ)の事実及び令和6年最判における上記説示を踏まえれば、以下の(ウ)の平成22年以降の献金(合計1144万8000円)を勧誘する行為についても、不法行為に該当する可能性が相応に認められ、かつ、抗告人に対して献金がされ、抗告人の実質的な内部組織である松本信徒会(上記第2の3(3)イ参照)が土地の売得金の預託を受けていることからすれば、抗告人の使用者責任が成立する可能性も相応に認められるというべきである。 [436](ア)a 亡Aは、昭和4年生まれの女性であり、昭和28年に亡Bと婚姻し、その後3女をもうけた。亡Aには、昭和22年に妹が11歳で早世する、昭和34年に亡Bの母が自殺する、平成10年に二女が離婚する、亡Bが重病にかかり、平成17年8月以降、入退院を繰り返すなどの不幸な出来事があった。 [437]b 亡Aは、抗告人の信者であった三女の紹介により、平成16年以降、松本信徒会(長野県松本市所在の抗告人の松本教会に通う信者らによって構成される組織)が運営する施設に通い始め、遅くとも平成17年以降、松本教会等において、抗告人の教理を学ぶようになった。その教理の中には、病気、事故、離婚等の様々な問題の多くは怨恨を持つ霊によって引き起こされており、そのような霊の影響から脱して幸せに暮らすためには献金をして地獄にいる先祖を解怨することなどが必要であるというものがあった。 [438]c 亡Aは、平成16年、抗告人の信者の勧めにより妹の供養祭を行い、平成21年から平成27年までの間、少なくとも13回にわたり、韓国で行われた抗告人の修練会において、先祖を解怨する儀式等に参加した。 [439](イ)a 亡Aは、抗告人に対し、{1}平成17年から平成21年までの間、十数回にわたり合計1億0058万円を献金した。これに加えて、亡Aは、平成20年から平成22年までの間、自己の所有する土地を3回にわたり合計約7268万円で売却し、{2}その売得金のうち合計480万円を抗告人に献金した。上記の各献金は、抗告人の信者らによる献金の勧誘を受けて行われたものであった。 [440]b そして、その余の売得金は松本信徒会に預託され、平成27年までの間に、その中から、{3}合計約2066万円が同信徒会を通じて抗告人に献金され、合計約3046万円が亡Aに生活費等として交付された。 [441](ウ) この事件の第一審及び控訴審の判決(甲B13の28、13の29)が認定した事実によれば、 a 亡Aが土地の売得金から献金した上記(イ)a{2}の480万円のうち、平成22年以降に献金したのは、同年5月21日に献金した80万円であり、 b 亡Aが松本信徒会に預託した土地の売得金の中から献金した上記(イ)b{3}の約2066万円のうち、平成22年以降に献金したのは、平成23年1月13日から平成27年6月17日までに献金した合計1064万8000円であり、 これらの合計額は1144万8000円となる。 イ 本件和解以外の訴訟上の和解 [442](ア) 本件和解以外に、原告が、抗告人の信者らによる平成22年以降の献金等勧誘行為等につき、抗告人に損害賠償や不当利得の返還を求めて民事訴訟を提起し、訴訟上の和解が成立した事案は、別紙3-2のその他の和解一覧表のとおりである(上記第1の6(2)ア、イの内容を含まないなど、本件和解と異なる点は、「備考」欄に記載のとおり。)。 [443](イ) 同一覧表のうち、対象者番号368番の事案(甲F95)は、原告が、平成26年1月1日時点において意思能力を喪失していたところ、同月以降、抗告人に対し、合計1873万円を献金し、抗告人が、これを受領し、もって法律上の原因なく利得していると主張して、抗告人に対し、不当利得に基づく返還請求を行う事案である。 [444] この事案については、利害関係人(信徒会の関係者とされる信者)が原告に対して和解金1200万円を支払う旨の和解が成立しているから、受訴裁判所において、原告が、抗告人に対し、少なくとも1200万円の不当利得返還請求権を有するとの心証を形成し、これに基づき和解が成立したものと認められる。 [445] この事案の訴訟物は、不法行為や使用者責任に基づく損害賠償請求権ではないものの、抗告人が、平成26年1月以降、意思能力を喪失した原告から、少なくとも1200万円という多額の献金を受け取っている事実に照らせば、抗告人の信者により不法行為に該当する不相当献金等勧誘行為が行われた可能性が相応に認められ、かつ、抗告人に対して献金がされ、抗告人の実質的な内部組織である信徒会(上記第2の3(3)イ参照)の関係者とされる信者が利害関係人として和解金の支払債務の債務者となっていることからすれば、抗告人に使用者責任が成立する可能性も相応に認められるというべきである。 [446](ウ) これに対し、抗告人は、 ① 上記事件において、原告は、精神科医師の鑑定書を提出し、これに基づき、原告が平成26年から意思能力を喪失していたと主張したが、この主張には相当な疑義があった、 ② 他方において、原告につき「認知症ではない。」とする平成27年1月27日発行の医師の診断書(乙Q1)が存在した、 ③ しかしながら、抗告人代理人と原告代理人との間で、訴訟外で話合いが行われ、原告が高齢であり、成年後見に付されていることに鑑み、原告の今後のためにも一定の解決をするという方向性で話合いが進んだ、 ④ その後、裁判所が、訴訟外の話合いの存在を知り、和解期日が設けられ、双方譲歩の上で和解成立に至った と主張する。 [447] しかしながら、意思能力を喪失していたとの原告の主張立証に相当な疑義があるにもかかわらず、抗告人が、請求額1873万円の約3分の2に相当する1200万円の和解金を支払うとの合意に応じたとは考え難い。 [448] 抗告人が、受訴裁判所から意思能力を喪失していたとの心証の開示を受けたか、意思能力を喪失していたとの原告の主張を争うことが困難であると自ら判断したからこそ、上記和解に応じたと考えるのが合理的である。 [449] よって、原告の上記主張は、上記(イ)の判断を左右するものではない。 (3) 平成22年以降に抗告人の信者らにより不相当献金等勧誘行為等が行われた可能性が否定できない事案 ア 本件和解 [450] 本件和解に係る事案のうち、請求原因において不法行為に該当すると主張されている献金等勧誘行為等に平成22年以降のものが含まれているもの(上記(1)イの別紙3-1の本件和解一覧表の対象者番号365番の事案を除く。)は、以下のとおりである。 [451] これらの事案については、請求原因に平成22年より前の献金等勧誘行為等が含まれていること、合意された和解金等の額が主張されている損害の総額を下回ることからすれば、受訴裁判所が、和解勧告に当たり、平成22年より前の不相当献金等勧誘行為等のみが認められるとの心証を形成したのか、平成22年以降の不相当献金等勧誘行為等も認められるとの心証を形成したのかが明らかではなく、いずれの可能性も否定できない。 [452] したがって、これらの事案については、平成22年以降に不相当献金等勧誘行為等が行われ、かつ、抗告人に使用者責任が成立すると確実に認定することはできないものの、その可能性を否定することもできない。 (ア) 別紙3-1の本件和解一覧表の対象者番号361番の事案(甲F93) [453] 請求原因においては、平成22年以降の献金等勧誘行為等として、平成22年2月17日から平成23年7月22日までに献金(合計200万円)を勧誘した行為が不法行為に該当すると主張されている。 (イ) 別紙3-1の本件和解一覧表の対象者番号363番の事案(甲F98) [454] 請求原因においては、平成22年以降の献金等勧誘行為等として、平成22年1月22日から平成28年5月までに献金や物品購入等(合計973万9560円)を勧誘した行為が不法行為に該当すると主張されている。 (ウ) 別紙3-1の本件和解一覧表の対象者番号364番の事案(甲F98) [455] 請求原因においては、平成22年以降の献金等勧誘行為等として、平成25年2月頃に献金34万円を勧誘した行為が不法行為に該当すると主張されている。 (エ) 別紙3-1の本件和解一覧表の対象者番号366番の事案(甲F100) [456] 請求原因においては、平成22年以降の献金等勧誘行為等として、平成22年4月16日から平成26年8月5日頃までに献金(合計1701万円)を勧誘した行為が不法行為に該当すると主張されている。 [457] 本件は、一審判決(乙B9の10)において、原告の訴えが一部却下され、その余の訴えに係る請求が棄却されたものの、控訴審において、利害関係人が原告に対して解決金として2340万円を支払う旨の和解が成立した事案である。上記1701万円のうち、一審判決(乙B9の10)が認定した平成22年以降の献金の額は、889万6600円である。 [458] なお、抗告人は、本件の原告は、この訴訟において、証拠を捏造して虚偽の主張及び供述をしており、一審判決(乙B9の10〔27頁19~24行目〕)においても原告の供述が虚偽又は誤認に基づくものである可能性が極めて高いと判断されたと主張し(乙B8の2も参照)、この原告に対する献金等勧誘行為につき不法行為が成立すると推認することは不当であると主張する。しかしながら、抗告人は、この訴訟の際にも同様の主張をしたと考えられるところ、そうであるにもかかわらず、控訴審において2340万円の解決金を支払う旨の和解が成立している。一審判決で原告の請求が全て排斥されたにもかかわらず、抗告人が控訴審で2340万円というまとまった金額の解決金を支払う旨の和解に応じたのは、控訴審の裁判所が、当該原告に対する献金等勧誘行為につき不法行為が成立し、かつ、抗告人が責任を負うとの心証を形成した上で、その心証を踏まえて抗告人に和解勧告をしたからであると認めるのが相当である。よって、抗告人の上記主張は、採用することができない。 [459] また、抗告人は、当該和解の解決金2340万円は、平成16年又は平成17年の「氏族復帰」に係る献金2100万円についてのものであり、平成22年以降の献金についてのものではないと主張する。しかし、抗告人が提出する証拠(乙Q13)を見ても、原告が主張する財産的損害の内訳が記載され、その中に「氏族復帰」に係る献金2100万円が含まれるにとどまり、当該献金2100万円をもとに解決金の額が合意されたことをうかがわせる記載は何ら存在しない。よって、抗告人の上記主張は、採用することができない。 イ 本件和解以外の訴訟上の和解 [460] 別紙3-2のその他の和解一覧表のうち、以下の事案については、以下に述べるとおり、平成22年以降に不相当献金等勧誘行為等が行われ、かつ、抗告人に使用者責任が成立する可能性を否定することができない。 (ア) 別紙3-2のその他の和解一覧表の対象者番号367番の事案(甲F94) [461] この事案では、請求原因において、平成22年1月から平成25年6月までの間に献金や物品購入(合計1186万3000円)を勧誘した行為が不法行為に該当すると主張されており、合意された和解金の額は2000万円である。 [462] この事案については、請求原因に平成22年より前の献金等勧誘行為等が含まれていること、合意された和解金等の額が主張されている損害の額を下回ることからすれば、受訴裁判所が、和解勧告に当たり、平成22年より前の不相当献金等勧誘行為等のみが認められるとの心証を形成したのか、平成22年以降の不相当献金等勧誘行為等も認められるとの心証を形成したのかが明らかではなく、いずれの可能性も否定できない。また、和解調書上、原告に対する和解金2000万円の支払債務の債務者とされたのは、抗告人以外の共同被告であり、当該共同被告が抗告人の実質的な内部組織である信徒会の関係者とされる信者なのか否かが証拠上明らかではないため、受訴裁判所が、和解勧告に当たり、抗告人に使用者責任等が成立するとの心証を形成したのか、共同被告は責任を負うが抗告人に使用者責任等が認められないとの心証を形成したのかが明らかではなく、いずれの可能性も否定できない。 [463] したがって、この事案については、平成22年以降に不法行為に該当する不相当献金等勧誘行為等が行われ、かつ、抗告人に使用者責任が成立すると確実に認定することはできないものの、その可能性を否定することもできない。 (イ) 別紙3-2のその他の和解一覧表の対象者番号369番の事案(甲F96) [464] この事案では、請求原因において、平成22年以降(平成27年2月~9月)に献金等(合計176万円)を勧誘した行為のみが不法行為に該当すると主張されており、合意された和解金の額は140万8000円である。請求原因において不法行為に該当すると主張されている勧誘行為が平成22年以降のもののみであるから、受訴裁判所が、平成22年以降の上記勧誘行為が不法行為に該当し、これにより、原告が、少なくとも140万8000円の損害を被ったとの心証を形成したものと認められる。 [465] しかしながら、和解調書上、原告に対する和解金140万8000万円の支払債務の債務者とされたのは、抗告人以外の共同被告であり、当該共同被告が抗告人の実質的な内部組織である信徒会の関係者とされる信者なのか否かが証拠上明らかではないため、受訴裁判所が、和解勧告に当たり、抗告人に使用者責任等が成立するとの心証を形成したのか、共同被告は責任を負うが抗告人に使用者責任等が認められないとの心証を形成したのかが明らかではなく、いずれの可能性も否定できない。 [466] したがって、この事案については、平成22年以降に不法行為に該当する不相当献金等勧誘行為等が行われ、かつ、抗告人に使用者責任が成立すると確実に認定することはできないものの、その可能性を否定することもできない。 ウ 訴訟外の示談 [467](ア) 抗告人の信者らによる平成22年以降の献金等勧誘行為等により損害を被ったと主張する者や、被害者からその損害賠償請求権を相続したと主張する者が、弁護士に委任して、抗告人に対し、訴訟外で損害賠償等を請求し、示談が成立した事案(①示談金額が請求額を大きく下回り、かつ、少額であるもの、②本件銃撃事件後に示談が成立したものを除く。)は、別紙4の示談一覧表のとおりである。(認定事実①-6(3)) [468] 同一覧表記載の献金等勧誘行為等の対象者は合計132名であり、平成22年以降、令和2年10月(対象者番号77番〔甲G607〕)までに支出したと主張されている献金等出捐金の合計額は8億7309万5909円(平成22年以降であることが明らかであるものに限る。)である。 [469](イ) 訴訟外の示談は、裁判所の心証を踏まえて成立するものではないため、訴訟外の示談が成立したことをもって、平成22年以降に抗告人の信者らによって不法行為に該当する不相当献金等勧誘行為等が行われ、かつ、抗告人に使用者責任が成立すると確実に認定することはできない。 [470] しかしながら、これらの事案については、弁護士が受任し、請求者の代理人として抗告人との間で交渉を行うことを経て、抗告人の従前の対応方針(上記1(5)ア(ア)b)にもかかわらず、示談が成立していることや、示談金額を見ても、請求額と比べて少額であるとはいえず、又はある程度まとまった金額であることからすれば、抗告人の信者らにより不法行為に該当する不相当献金等勧誘行為等が行われ、かつ、抗告人が責任を負うとの請求者の主張に、ある程度の根拠があるものと考えられる(なお、本件銃撃事件後に示談が成立した事案については、抗告人が、抗告人に対する社会的な批判の高まりを意識して、請求者の主張に必ずしも十分な根拠がない事案であっても示談に応じた可能性が否定できないことから、別紙4の示談一覧表には含めていない。)。 [471] したがって、これらの事案については、平成22年以降に不法行為に該当する不相当献金等勧誘行為等が行われ、かつ、抗告人に使用者責任が成立する可能性が否定できないというべきである。 エ 抗告人の主張に対する判断 [472] (ア) これに対し、抗告人は、上記ア~ウの訴訟上の和解や訴訟外の示談に係る事案につき、個別に原告や請求者らの主張立証の信用性を争い、各対象者に対する献金等勧誘行為等につき不法行為が成立するとは認められないと主張する。このうち、別紙3-1の本件和解一覧表の対象者番号366番の事案(甲F100)に係る抗告人の主張を採用することができない理由は、既に上記ア(エ)で説示したとおりであるので、その余の事案に係る抗告人の主張について検討する。 [473] 既に述べたとおり、上記ア~ウの事案は、いずれも、弁護士が受任し、原告や請求者の代理人として、訴訟手続における主張立証を行い、あるいは、訴訟外における抗告人との間の交渉を経て、訴訟上の和解や訴訟外の示談が成立しているのであり、和解金等の額も、請求額と比べて少額であるとはいえず、又はある程度まとまった金額であることから、不法行為に該当する不相当献金等勧誘行為等が行われたとする原告や請求 者の主張が、およそ根拠に欠けるものであったとは考え難い。 [474] また、抗告人が、上記ア~ウの事案につき、原告や請求者の主張立証の信用性を争う根拠として挙げる証拠(その主要なものは、別紙3-1の本件和解一覧表、別紙3-2のその他の和解一覧表、別紙4の示談一覧表の各「備考」欄に<個別反証>と付記して記載したとおりである。)の中には、対象者が抗告人において活動している様子を撮影した写真、対象者が作成した感想文、対象者が他の信者らと交わしたLINEのメッセージ、対象者において献金が純粋な信仰心に基づき自由意思によって行ったものである旨を記載した文書等が含まれるが、いずれも断片的なものにとどまり、ともに提出されている陳述書等の他の証拠と併せてみても、これらの証拠をもって、不法行為の成立を否定することは困難である。のみならず、抗告人は、民事訴訟等の件数を減少させるため、①礼拝、式典での証し文や写真等を残す、②信仰の証となるような文書(日常のありのままの信仰生活、感謝、喜びに関する感想文等)を残す、③献金が信仰に基づき任意に行われたことを示す契約書を残すといった対策を執っていたのであるから(上記1(2)ア(イ)b)、証拠として提出されている上記写真等も、こうした対策の一環として作成されたものである可能性があり、そうであるとすれば、紛争の発生を予期して作成されたものであるから、その証拠力には限界があるといわざるを得ない。 [475] なお、抗告人は、別紙4の示談一覧表の対象者番号112番の事案(甲G844)につき、当該事案の請求者(対象者でもある。)の代理人弁護士が作成した抗告人に損害賠償を求める通知書(甲G844の1)には、抗告人の信者に欺罔・脅迫されて献金等出捐金を交付させられたなどの記載があるところ、これは、当該弁護士が、請求者自身の主張や認識に基づかない虚偽の事実を捏造して記載したものであると主張する。そして、抗告人は、これを裏付ける証拠として、当該請求者が、令和7年5月9日、知人である抗告人の現役信者らに対し、弁護士に「脅された」と言った覚えはないなどと話している録音データ(乙Q28の1)及びその反訳書(乙Q28の2)を証拠提出する。しかしながら、同反訳書(乙Q28の2)によれば、当該現役信者らは、当該請求者が現在も親しく交流している知人であることが認められるところ、当該請求者が、録音されていた会話において、当該現役信者らとの摩擦や軋轢を避けるため、当該現役信者らに対し、弁護士に話した内容について事実と異なる内容を述べた可能性を否定できない。したがって、当該録音データ(乙Q28の1)を根拠として、上記通知書(甲G844の1)に虚偽の事実が記載されているということは困難である。 [476] 以上によれば、抗告人による個別の主張立証を踏まえても、上記ア~ウの事案につき、不法行為に該当する不相当献金等勧誘行為等が行われた可能性が否定できないとの判断は左右されない。 [477](イ) 抗告人は、 ① 訴訟上の和解や訴訟外の示談に係る事案(上記ア~ウの事案を含む。以下、本項において、「和解等事案」という。)につき受任した弁護士は、そのほとんどが全国弁連に所属する弁護士であるところ、全国弁連に所属する弁護士は、常習的に虚偽の主張や証拠の捏造を行ってきたものであるから、その主張は信用性がない、 ② 抗告人を異端として敵視するキリスト教牧師や職業的脱会屋が、抗告人の信者の親を使って当該信者を拉致監禁させ、監禁現場に赴いて抗告人からの脱会を説得し、信仰を強制的に捨てさせるという行為を行ってきたものであり、こうした行為により信仰を捨てるに至った「背教者」は、抗告人に対する敵意と憎悪の念を植え付けられ、虚偽の主張や供述を平然と行うようになるところ、和解等事案の原告や請求者は、いわゆる「背教者」であるから、その主張や供述は信用性がない、 ③ 相手方は、抗告人の信者らの不相当献金等勧誘行為等により被害を被ったと主張する者の陳述書(甲H号証)を証拠として提出するところ、その中には、虚偽の事実を捏造して記載したものが存在すること(特に、甲H18、252、268、276)からすれば、和解等事案の原告や請求者の主張や供述についても信用できない との趣旨の主張をする。 [478] しかしながら、和解等事案につき、原告や請求者、あるいは、これらの者を代理する弁護士の主張や供述に全く信用性がないのであれば、不法行為が成立する可能性もないはずであり、献金等の返還の請求に関する抗告人の従前の対応(上記1(5)ア(ア)b)を考慮すれば、不法行為が成立する可能性がないにもかかわらず、抗告人が訴訟上の和解や訴訟外の示談に応じるとは考え難い。抗告人が訴訟上の和解や訴訟外の示談に応じてきたことについて、合理的な説明はされていないといわざるを得ない。 [479] また、抗告人による上記(ア)の個別の主張立証を踏まえて検討しても、上記ア~ウの事案について、代理人弁護士や相手方が、原告や請求者本人が述べてもいない虚偽の事実を、本人が主張し供述した事実として主張立証しているものと認めることはできない(特に、別紙4の示談一覧表の対象者番号112番の事案 〔甲G844〕については、上記(ア)で説示したとおりである。)。なお、抗告人が特に信用性を強く争う陳述書(甲H18、252、268、276)の作成者は、別紙3-1の本件和解一覧表、別紙3-2のその他の和解一覧表、別紙4の本件示談一覧表のいずれの対象者にも含まれていない。 [480] 以上によれば、抗告人の上記主張は、いずれも採用することができない。 [481](ウ) なお、抗告人は、文部科学省や法務省から裁判の件数を減少させるよう指導を受けてきたことから、これに応じて信徒会に対して訴訟外の示談を推奨してきたものであり、訴訟外で示談した事実を解散命令事由にされるのであれば、抗告人は国からだまし討ちに遭ったようなものであると主張する。 [482] しかしながら、仮に、抗告人が、上記のような指導を受けた事実があったとしても、その指導は、抗告人に対し、訴訟外の示談に応じることにより民事訴訟の表面上の件数を減少させることを求める趣旨ではなく、不相当献金等勧誘行為等を防止することにより民事訴訟の件数を減少させることを求める趣旨であったというべきである。抗告人が訴訟外の示談に応じざるを得ない事案が発生しているという事実は、不相当献金等勧誘行為等がなおも行われている可能性が否定できないことを示しており、そうであるとすれば、抗告人が文部科学省や法務省からの指導の趣旨を真に踏まえた対応を執ったと評価することは困難であるし、ひいては、上記事実から不相当献金等勧誘行為等が行われた可能性が否定できないと推認することが不当であるということもできない。 [483] よって、抗告人の上記主張は、採用することができない。 (4) 小括 [484] 以上をまとめると、以下のとおりとなる。 ア 平成22年以降に抗告人の信者らによって不法行為に該当する不相当献金等勧誘行為等が行われ、かつ、抗告人に使用者責任等が成立すると認められる事案(上記(1)) (ア) 対象者 [485] 4名 (イ) 期間 [486] 平成22年11月(別紙2-1の本件確定判決一覧表の対象者番号139番)~平成28年6月(別紙3-1の本件和解一覧表の対象者番号365番) (ウ) 平成22年以降の損害額 [487] 以下の合計1868万1600円 a 本件確定判決に係る3名の対象者(別紙2-1の本件確定判決一覧表の対象者番号137番、139番、140番)が支出した献金等出捐金の合計額1688万1600円(403万0500円+669万0400円+616万0700円) b 本件和解に係る1名の対象者(別紙3-1の本件和解一覧表の対象者番号365番)が支出した献金等出捐金180万円(和解金相当額) イ 平成22年以降に抗告人の信者らによって不法行為に該当する不相当献金等勧誘行為等が行われ、かつ、抗告人に使用者責任等が成立する可能性が相応に認められる事案(上記(2)) (ア) 対象者 [488] 2名 (イ) 期間 [489] 平成22年5月~早くとも平成27年6月(始期、終期ともに、令和6年最判〔甲E39〕の亡A) (ウ) 平成22年以降の損害として認められる可能性のある金額 [490] 以下の合計2344万8000円 a 令和6年最判(甲E39)の亡Aが献金した1144万8000円 b 別紙3-2のその他の和解一覧表の対象者番号368番の対象者が献金した1200万円(和解金相当額) ウ 平成22年以降に抗告人の信者らによって不法行為に該当する不相当献金等勧誘行為等が行われ、かつ、抗告人に使用者責任等が成立する可能性が否定できない事案(上記(3)) (ア) 対象者 [491] 138名(本件和解4名、本件和解以外の訴訟上の和解2名、訴訟外の示談132名) (イ) 期間 [492] 平成22年以降令和2年10月(別紙4の示談一覧表の対象者番号77番)まで (ウ) 平成22年以降の損害として認められる可能性が否定できない金額 [493] 以下の合計9億1545万6469円(以下のとおり、損害として認められる可能性が否定できない上限の金額である。) a 本件和解に係る4名の対象者(別紙3-1の本件和解一覧表の対象者番号361番、363番、364番、366番) 200万円+973万9560円+34万円+1701万円(いずれも平成22年以降に支出したと主張されている献金等出捐金相当額。和解金相当額ではなく、主張されている金額であることから、損害として認められる可能性が否定できない上限の金額となる。) b 本件和解以外の訴訟上の和解に係る2名の対象者(別紙3-2のその他の和解一覧表の対象者番号367番、369番) 1186万3000円(平成22年以降に支出したと主張されている献金等出捐金相当額。したがって、損害として認められる可能性が否定できない上限の金額となる。)+140万8000円(和解金相当額) c 訴訟外の示談に係る132名の対象者(別紙4記載の対象者全員) 8億7309万5909円(平成22年以降に支出したと主張されている献金等出捐金の合計額。示談金相当額ではなく、主張されている金額であることから、損害として認められる可能性が否定できない上限の金額となる。) [494](1) 認定事実②-1のとおり、抗告人は、平成21年2月12日以降、コンプライアンス宣言を踏まえた一連の対策を執っている。後記2、4においてこの対策が十分なものであったといえるか否かを検討するが、その前提として、抗告人が執るべきであった対策を検討する。 [495](2) 上記第2の5のとおり、抗告人の信者らが不相当献金等勧誘行為等を行ったのは、そもそも、抗告人が、信者らに対し、社会通念上相当な範囲を逸脱しない方法・態様による勧誘では達成できないような数値目標を定めて献金や物品の購入の勧誘を行うよう求め、抗告人の会長等の幹部において、抗告人の信者らが、その数値目標を達成するため、不相当献金等勧誘行為等を行うことを、少なくとも未必的には容認したことによるものであった。すなわち、抗告人の信者らにより不相当献金等勧誘行為等が行われてきた根本的な原因は、抗告人にあるというべきである。 [496] そうであるとすれば、抗告人としては、抗告人の信者らにより不相当献金等勧誘行為等が行われてきた根本的な原因が抗告人にあることを認めた上で、 ① 信者らに対し、不相当献金等勧誘行為等を行うことを容認しないことを明らかにした上で、信者らによる不相当献金等勧誘行為等を防止するための具体的かつ実効性のある措置(以下「不相当献金等勧誘行為等防止措置」という。)を執るとともに、 ② より根本的な対策として、信者らに対し、数値目標を定めて献金や物品の購入の勧誘を行うよう求めることを取りやめるか、数値目標を定めて献金の勧誘を行うよう求めることを継続するのであれば、献金や献金の勧誘を行ってきた信者らからその実情等を聴取するなどして、社会通念上相当な範囲を逸脱しない方法・態様による勧誘を行った場合に達成することの可能な献金の金額を把握した上、数値目標を当該金額にまで下げるとともに、数値目標達成に向けた信者らに対する心理的圧迫を緩和するための具体的かつ実効性のある措置(以下「数値目標緩和措置」という。)を執るべきであった。 [497] (3) 上記第2の5(2)で認定した不相当献金等勧誘行為等の内容や規模に鑑みれば、抗告人が、不相当献金等勧誘行為等防止措置及び数値目標緩和措置の両方を確実に実施しなければ、信者らによる不相当献金等勧誘行為等を防止することは困難であると考えられる。 [498] 上記1を前提として、抗告人がコンプライアンス宣言を踏まえて本件銃撃事件までに行った対策について検討し、評価する。 (1) 不相当献金等勧誘行為等防止措置について [499]ア 確かに、抗告人は、コンプライアンス宣言後、 ① 抗告人が物品販売活動等の収益事業にかかわるべきでないこと、 ② 因縁トークや未証しによる献金の勧誘をすべきでないこと、 ③ 信者の経済状態に比して過度な献金とならないよう十分配慮すべきこと を明らかにし、全国の教会指導者を通じ、こうした考え方を信者に周知するとともに、KPIと称する評価指標によって、これらの対策の進捗状況を可視化した上で、その集計結果を全国の教会指導者に情報共有しつつ、指導を行っている。さらに、抗告人は、ビデオセンター等の伝道施設の見直しにも取り組んでいる。(認定事実②-1(1)、(3)) [500]イ しかしながら、まず上記ア②の対策(因縁トークや未証しによる献金の勧誘の禁止)について検討すると、次のとおり、抗告人は、上記ア②の対策を執りながら、他方において同対策の実効性を減殺する行為ないし同対策と矛盾する行為に及んでいるということができる。 [501] すなわち、抗告人の本部は、平成30年10月19日、全国の地区長、教区長、教会長等に対し、 {1} 「真の父母様」から、令和2年2月6日までに430代前までの「先祖解怨」を完了しなければならないとの特別な指示がされた、 {2} 211代前から430代前までの解怨については、先祖解怨感謝献金は必要ないが、210代前までの先祖解怨感謝献金が完納されていることが必要条件である とする事務連絡文書を発出している(認定事実②-2(3)ア(エ))。さらに、抗告人の本部は、令和3年8月26日、全国の地区長、教区長、教会長等に対し、 {1} 「真の父母様」から430代前までの「先祖解怨」の申請期限が令和4年8月までに延長された、 {4} 令和4年8月以後、211代前から430代前までの解怨を行う場合には、従前どおり、先祖解怨感謝献金を支払う必要がある とする事務連絡文書を発出している(認定事実②-2(3)ア(オ))。これらは、実質的には、抗告人が、地方組織を通じて、信者らに対し、令和2年2月6日までに(最終的には令和4年8月までに)、210代前までの先祖解怨感謝献金を完納するよう求める行為にほかならない。 [502] そして、先祖解怨の儀式が行われるとされている韓国の「天宙清平修錬苑」(現・HJ天宙天寶修練苑)が平成24年9月1日に発行した「先祖解怨・祝福受付ガイドブック」第7版や抗告人が平成30年8月1日に発行した「先祖解怨と孝情奉献書の恩恵」と題する書籍には、子孫の不幸(病気、事故、家族の不和・不倫・離婚、子供の非行、経済的な問題)の原因(因縁)は、地獄で苦しんでいる先祖にあり、先祖を地獄の苦しみから解放して天国に引き上げる「先祖解怨」を行うことが、子孫の幸福につながるとの趣旨の記載があるところ(認定事実②-2(3)ア(イ)、(ウ))、これは、因縁トークの内容と酷似しているといえる。抗告人は、これらの書籍等は、抗告人の信者らの間に広く普及しているものではないと主張し、これに沿う証拠(乙F109)を提出するが、これらの書籍等に上記記載が存在することは、抗告人が、上記記載の内容を抗告人の信者らに伝えていることを推認させるのであって、これらの書籍等自体を読んだ信者らが少ないとしても、この推認が妨げられるものではない。 [503] 上記第2の2(2)で説示したとおり、抗告人が、宗教団体として、その教義をひろめ、その宗教活動を維持するため、あるいは、その教義の実践として、信者等に対して任意に献金をするように求めることは、その方法、態様及び金額等が社会的に相当と認められる範囲内である限り、正当な宗教活動の範囲内にあると認められ、これを違法ということはできない。そして、献金の勧誘の過程で、霊的な要素の強い事象等を原因とするわざわいを説くなどすることについては、その内容がおよそ科学的に証明し得ないことなどを理由として、直ちに虚偽であり、違法であると評価することはできないというべきである。しかしながら、先祖解怨感謝献金についてみると、上記のとおり、「先祖解怨」には、先祖解怨感謝献金を完納することが必要であるとされており、しかも求められる献金の額は、信者の経済的状態にかかわらず一定であり、かつ、高額である(認定事実②-2(3)ア(イ))。したがって、対象者に対し、上記記載の内容を伝えてその不安をあおり、「先祖解怨」の完了を求めることは、不相当献金等勧誘行為等になりかねない危険を内包しているというべきである。 [504] 以上のとおり、抗告人は、コンプライアンス宣言後、全国の教会指導者に対し、因縁トークによる献金の勧誘を禁止しつつ、上記事務連絡文書により、「先祖解怨」の完了を信者らに働きかけるよう求めているのであって、抗告人の後者の行為は、不相当献金等勧誘行為等になりかねない危険を内包していることを考慮すれば、上記ア②の対策の実効性を減殺する行為であるというべきである。このことは、そもそも、抗告人において因縁トークによる献金の勧誘の禁止を徹底する意思があったのか自体に疑いを生じさせるものといわざるを得ない。 [505] 実際、本件確定判決においては、別紙2-1の本件確定判決一覧表の対象者番号139番及び140番の対象者(甲E32)が平成22年以降に支払った「先祖解怨」のための献金を勧誘する行為につき、不法行為が認定されている(認定事実②-3(1)ア(イ)、(ウ))。また、別紙4の示談一覧表の「先祖解怨」欄に「〇」印を付した48件の事案においては、平成22年以降に支払った「先祖解怨」のための献金を勧誘する行為が不法行為に該当すると主張されている。 [506]ウ 次に上記ア③の対策について検討すると、抗告人は、信者の経済状態に比して過度な献金とならないよう十分配慮すべきであるとはいうものの、その具体例としては、「短期間の高額の献金」を挙げるにすぎず(認定事実②-1(3)イの「コンプライアンス違反行為等に対するKPI評価による指導改善措置について」と題する事務連絡文書の2.(3)②)、本件銃撃事件が発生するまでに、信者の経済状態に比して過度な献金となる金額の目安を定めたり、目安となる金額を超える献金を勧誘することを防止するための具体的な方策を定めたりするなど、上記ア③の対策を信者らに徹底させるための具体的かつ実効性のある措置を執った形跡は見当たらない。 [507] 抗告人は、本件銃撃事件後に、不当寄附勧誘防止法の施行を受けて「献金を受領する際のガイドライン」を定め、月収の10分の3(目安として10万円)以上の献金を受領したり、特別な収入(遺産相続や資産売却、定期性預金の解約、退職金等、通常、使用にあたって家族の同意を得るべき収入)を原資とする献金を受領したりする場合に、「献金確認書」を用いて献金者の意思を確認する措置を執っているが(認定事実②-1(4)イ)、このことは、逆に、本件銃撃事件が発生するまでは、こうした措置を執っていなかったことを推認させる。 [508] 実際、本件確定判決においては、 ① 別紙2-1の本件確定判決一覧表の対象者番号139番の対象者が平成23年12月1日に支出した献金40万円及び平成25年5月に支出した献金430万円につき、抗告人の信者らが、既に献金等の額が2300万円以上に達していた同対象者に対して献金を勧誘したことや、後者の献金430万円の原資が亡母の遺産であって、同対象者やその夫の資産を原資とするものではなかったこと(別紙2-2の第26の2(5))等を理由として、 ② 同一覧表の対象者番号140番の対象者が平成23年1月から平成25年3月までの間に先祖解怨等のために支出した献金等合計567万1700円につき、同対象者が既に1440万円を献金していたにもかかわらず、類似の目的で高額の支出をさせたこと(別紙2-2の第26の3(2))等を理由として、 それぞれ不法行為が認定されている(甲E32)。 [509] また、令和6年最判(甲E39。認定事実②-3(2)ア参照。)においては、亡Aがした献金(平成22年5月21日及び平成23年1月13日から平成27年6月17日までの間に献金された合計1144万8000円を含む。)について、 「亡Aは、平成17年以降、1億円を超える多額の本件献金を行い、平成20年以降は、自己の所有する土地を売却してまで献金を行っており、残りの売得金を松本信徒会に預け、同信徒会を通じてさらに献金を行うとともに、同信徒会から生活費の交付を受けていたのであるが、このような献金の態様は異例のものと評し得るだけでなく、その献金の額は一般的にいえば亡Aの将来にわたる生活の維持に無視し難い影響を及ぼす程度のものであった。」と説示されている。 [510]エ そして、KPIと称する評価指標を見ても、以下の(ア)及び(イ)のとおり、不相当献金等勧誘行為等自体を防止するための対策よりも、民事訴訟等の件数を減少させるための対策により多くの点数が配分されている(認定事実②-1(3)ア参照)。不相当献金等勧誘行為等自体を防止することが民事訴訟等の件数の減少につながることは確かであり、現に、抗告人は、民事訴訟等の件数を減少させるための対策として、コンプライアンス宣言を踏まえた一連の対策の徹底やコンプライアンス教育の実施を盛り込んでいる(認定事実②-1(2)ア(イ)a)。しかし、KPIと称する評価指標における各評価項目への以下のような点数の配分は、不相当献金等勧誘行為等自体の防止に向けた取組が不十分であったとしても、民事訴訟等の件数を減少させることにより、低い評価を受けることを回避することを可能とするものであり、かつ、教会指導者らに対し、そのような行為に及ぶ動機を与えるものであるといわざるを得ない。 [511](ア) 平成26年5月9日時点のもの a 不相当献金等勧誘行為等を防止するための対策 加点要素(番号4、7~9、14) 合計 55点 減点要素(番号14) 合計 5点 b 民事訴訟等の件数を減少させるための対策 加点要素(番号1~3、13) 合計 70点 減点要素(番号10~12) 合計 280点(刑事事件を除いたとしても合計80点) [512](イ) 平成27年3月26日頃に改訂された後のもの a 不相当献金等勧誘行為等を防止するための対策 加点要素(番号5、6、12) 合計 50点 減点要素(番号12) 合計 5点 b 民事訴訟等の件数を減少させるための対策 加点要素(番号1~4、11) 合計 80点 減点要素(番号8~10) 合計 280点(刑事事件を除いたとしても合計80点) [513]オ これに対し、抗告人は、抗告人によるコンプライアンス宣言に基づく指導を受け、これを遵守してきた旨を述べる信者らの陳述書(乙L1~24、乙F90記載の乙J号証及び乙K号証、乙F91記載の乙I号証)を証拠提出するとともに、証人Fが、当審における証人尋問及び陳述書(乙E205の2の1〔14~15頁〕)において、これに沿う証言等をするが、いずれも、上記イ~エの疑問ないし問題点を解消するものとはいい難い。 [514]カ 以上の検討によれば、抗告人がコンプライアンス宣言後に執った上記アの対策は、不相当献金等勧誘行為等自体を防止することよりも、むしろ、解散命令の請求等の事態に発展することを防ぐため、民事訴訟等の件数を減少させることにより問題を顕在化させないことに重点を置くものであって、不相当献金等勧誘行為等自体を防止するための具体的かつ実効性のある措置とはいい難く、不相当献金等勧誘行為等防止措置としては不十分なものであったと評価せざるを得ない。 (2) 数値目標緩和措置について [515] 上記(1)アで説示したとおり、抗告人は、物品の販売につき、抗告人が物品販売活動等の収益事業にかかわるべきでないことを明らかにするとともに、物品の営業・販売活動の拠点となったビデオセンター等の伝道施設の見直しに取り組んでいる。このような状況に鑑みれば、抗告人が、コンプライアンス宣言後、信者らに対し、数値目標を定めて物品の購入の勧誘を行うよう求めているか否かは明らかではない。 [516] そこで、以下では、対象を献金に絞り、 ① 抗告人は、コンプライアンス宣言後も、信者らに対し、数値目標を定めて献金の勧誘を行うよう求めているか、 ② 仮に求めているとして、数値目標緩和措置を執ったといえるか について検討する。 ア 抗告人がコンプライアンス宣言後も信者らに対して数値目標を定めて献金の勧誘を行うよう求めているか [517](ア) ① 抗告人の収入は、信者からの献金が97%以上を占めているところ、抗告人の収入を含む予算は、抗告人の本部の予算担当局が作成した予算案を責任役員会及び評議員会議が承認することにより決定され、地方組織に通達されること(認定事実①-1(3))、 ② 平成30年11月14日改定後の「牧会者規程」によれば、十一条献金(収入の10分の1をもってする献金)を捧げる伝統を教会員に指導し、教会員の信仰の成長に応じて、十分の三献金(収入の10分の3をもってする献金)ができるように教育・指導を行うことが、牧会者(地区長、教区長、教会長及び副教会長を務める聖職者)の役割とされていること(認定事実②-2(2)ア)、 ③ 令和3年度の牧会者の人事評価項目の中に、年間予算に対する信者献金の充足率(牧会者の人事評価の全体に占める割合は10%)が含まれていること(認定事実②-2(2)イ)、 ④ 抗告人の本部が、全国の地区長、教区長、教会長等に対し、平成30年10月19日、210代前までの先祖解怨感謝献金の完納が必要となる430代前までの先祖解怨を令和2年2月6日までに完了しなければならないとする事務連絡文書を発出するとともに、平成29年1月12日から令和4年3月24日までの間、金額や期限を定めて特別献金(特別な目的のために行う献金)や感謝献金(折に触れて特別に感謝を表す献金)を案内する事務連絡文書を発出していること(認定事実②-2(3)ア(エ)、ウ)、 ⑤ 平成24年から平成25年にかけて、抗告人の西東京教区や同教区傘下の杉並教会において、献金の目標額及び実績額、献金の勧誘の対象者や集める献金の目標額を各信者に割り当てる表が記載された文書が作成されていること(認定事実②-2(3)イ) からすれば、抗告人は、コンプライアンス宣言後も、責任役員会及び評議員会議による予算の決定を通じて実質的に献金収入の数値目標を定め、これを各地方組織(地区、教区、教会)に割り当て、年間予算に対する献金の充足率を牧会者の人事評価項目とすることによって、牧会者(地区長、教区長、教会長及び副教会長を務める聖職者)らに対し、割り当てられた献金収入の数値目標を達成するよう求めているものと認めるのが相当である。 [518] このことは、世界平和統一家庭連合の国際本部(抗告人とは別団体とされる。)から依頼され、抗告人の調査・改革に携わっていると称する弁護士(本件では抗告人代理人を務めている。)が、相手方に対して令和4年12月14日付けで提出した「文部科学省の家庭連合に対する解散命令請求の不行使を求める申入書」(甲B3の4〔11~12頁〕)において、 「家庭連合では、1964年の法人規則制定以来、毎年、信者からの年間献金目標額(『予算』)を本部の責任役員会(中略)が設定してきた。」、と記載されていることによっても裏付けられている。 [519] なお、上記申入書には、「各教会が各信徒に対して個別に目標額を伝えることはない」との記載があるが、 ① 実際に献金の勧誘を行うのは信者であり、牧会者のみでこれを行って献金収入の数値目標を達成することはできないと考えられること、 ② 上述したとおり、杉並教会において、献金の勧誘の対象者や集める献金の目標額を各信者に割り当てる表が記載された文書が作成されていること からすれば、「各教会が各信徒に対して個別に目標額を伝えることはない」との上記申入書における主張を採用することはできず、牧会者が、献金収入の数値目標を達成できるよう、その担当する地方組織に属する信者らに対し、数値目標を割り当てた上で献金の勧誘を行うよう求めているものと認めるのが相当である。 [520](イ) これに対し、抗告人は、 ① 予算は「献金目標」ではない、 ② 予算は、牧会者が自分の担当する地方組織の前年度実績に基づいて作成した予算案が基礎となって決定されるものであり、抗告人の本部が各地方組織に一方的に割り当てるものではない、 ③ 牧会者の献金に関する評価は、人事評価全体の10%にすぎず、献金の充足率を牧会者の評価項目に挙げているのは、教会の健全運営が目的であり、献金目標の達成が目的であると解釈するのは誤りである と主張する。 [521] しかしながら、抗告人が、献金の数値目標をその旨明示して定めているわけではないとしても、上記(ア)の①~⑤の事情に鑑みれば、予算に定められた献金収入の額が、実質的に献金の数値目標として機能すること自体は否定し難い。 [522] また、抗告人の予算が、各地方組織が作成する予算案を踏まえて決定されているとしても、抗告人の予算には、本部各局の事業計画と海外宣教援助計画に基づく支出も含まれるのであり(認定事実①-1(3))、海外の宣教活動を支援するための費用の額は抗告人の年間の運営費の相当大きな割合を占めていたこと(認定事実①-2(3)、認定事実②-2(1)エ、オ)を考慮すれば、予算の決定後に各地方組織に割り当てられる献金収入の額が、当該地方組織の牧会者が作成した当初予算案の献金収入の額や、当初予算案を作成したときに達成可能と考えた献金収入の額を超えることはあり得ると考えられ、少なくとも、それらの額の範囲内にとどまることが保障されているわけではないと考えられる。 [523] そして、年間予算に対する信者献金の充足率に関する評価が牧会者の人事評価全体の10%にすぎず、上記充足率を評価項目に挙げている目的が教会の健全運営にあるとしても、上記充足率を評価項目に掲げること自体が、牧会者に対し、担当する地方組織に割り当てられた献金収入の数値目標を達成しなければならないと感じさせる客観的な要因になることは否定できない。 [524] よって、抗告人の上記主張は、上記(ア)の認定を左右するものではない。 イ 抗告人が数値目標緩和措置を執ったといえるか [525] もっとも、抗告人が、信者らに対し、数値目標を定めて献金の勧誘を行うよう求めること自体が全く許されないというわけではなく、数値目標が適切な水準に設定されているのであれば、問題はない。そうすると、上記第2の5のとおり、抗告人の信者らにより不相当献金等勧誘行為等が行われてきたことを踏まえ、抗告人が、コンプライアンス宣言後、上記1(2)②の数値目標緩和措置を執ったといえるかが問題となる。 [526] この点につき、抗告人は、コンプライアンス宣言後、本件銃撃事件が発生するまでの間に、様々な対策を執ったことを主張立証しており、仮に数値目標緩和措置を執っていたとすれば、その旨を主張立証しないことは考え難いところ、数値目標緩和措置を執ったとの主張立証はしていない。 [527] また、抗告人の献金収入の推移(認定事実②-2(1)ア)によれば、抗告人の献金収入の予算額は、コンプライアンス宣言後の平成22年以降も、それまでとほぼ同水準の500億円前後で推移しており、平成27年度から平成29年度までの3年間は400億円~420億円程度まで下がったものの、平成30年度以降は500億円前後に戻り、令和4年度には、コンプライアンス宣言前を超える560億円となっている。平成27年度から平成29年度までの3年間の減額の理由は明らかではないものの、抗告人が、献金や献金の勧誘を行ってきた信者らからその実情等を聴取するなどして、社会通念上相当な範囲を逸脱しない方法・態様による勧誘を行った場合に達成することの可能な献金の金額を把握した上で、献金収入の予算額を減額したと認めるに足りる証拠はない。 [528] そして、平成27年度から令和3年度までの献金収入の決算額を見ても、予算額の8割から9割程度の額となっている。(なお、令和4年度の献金収入の決算額の予算額に対する割合の減少及び令和5年度以降の献金収入の予算額の減額は、後記4(3)ウ(ア)で述べるとおり、本件銃撃事件の影響によるものである。) [529] 以上によれば、抗告人は、コンプライアンス宣言後、本件銃撃事件が発生するまでの間に、数値目標緩和措置を執っていないと認めるのが相当である。 [530] 上記2の検討を踏まえ、コンプライアンス宣言後に抗告人の信者らが不法行為に該当する不相当献金等勧誘行為等を行ったか、行ったとして抗告人がそのことに関与したか、について検討する。 (1) コンプライアンス宣言後の抗告人の信者らによる不法行為 [531]ア 上記2のとおり、抗告人は、コンプライアンス宣言を踏まえた一連の対策を執ってはいるものの、献金収入の予算額はコンプライアンス宣言前とほぼ同水準で推移しており、かつ、数値目標緩和措置は執られていない。そうすると、抗告人の信者らは、コンプライアンス宣言後も、なお、抗告人から、社会通念上相当な範囲を逸脱しない方法・態様による勧誘では達成できないような献金収入の数値目標を達成するよう求められていたものと認められる。そして、認定事実②-2(1)アのとおり、抗告人の信者らは、こうした抗告人からの要求に応じ、平成27年度から令和3年度までの間、献金収入の予算額(すなわち目標額)の8割から9割程度の額(331億円~499億円)の献金を集めることに成功している。抗告人の信者らが、コンプライアンス宣言後、社会通念上相当な範囲を逸脱する方法・態様による勧誘を行うことなく、コンプライアンス宣言前と同水準の額の献金を集めることができたとは考え難い。 [532]イ 上記2(1)カで述べたとおり、抗告人がコンプライアンス宣言後に執った対策は、不相当献金等勧誘行為等自体を防止することよりも、むしろ、民事訴訟等の件数を減少させることにより問題を顕在化させないことに重点を置くものであって、不相当献金等勧誘行為等防止措置としては不十分なものであった。そのため、抗告人の信者らは、献金収入の数値目標を達成すべく献金の勧誘を行いつつ、対象者と継続的に意思疎通を図る、献金が信仰に基づき任意に行われたことを示す文書を作成する、不起訴合意をするなどといった方法で、当該対象者が不満や疑問を抱くことを防止し、当該対象者に損害賠償請求をさせず、仮に損害賠償請求がされたとしても、弁護士が介入したり民事訴訟を提起されたりする前に、訴訟外の示談によって解決することにより(認定事実②-1(2)ア(イ)b、c参照)、民事訴訟等の件数を減少させ、問題を顕在化させないようにしていたと考えられる(上記2(1)エも参照。)。 [533] 実際、抗告人の信者らは、弁護士が介入する前の段階で、対象者から、信仰に基づき自由意思で献金したことを示す文書や不起訴合意に係る書面を取っていたことが認められる(甲E39(平成6年最判)、甲F100、甲G844の2、甲H18〔資料4〕、甲H125〔資料30〕、乙B9の11、9の12、乙Q22の1等)。 [534]ウ そして、現に、コンプライアンス宣言後も、 ① 平成22年以降に、抗告人の信者らによって不法行為に該当する不相当献金等勧誘行為等が行われ、かつ、抗告人に使用者責任等が成立すると認められる事案(対象者4名、平成22年以降の損害額は合計1868万1600円)、 ② その可能性が相応に認められる事案(対象者2名、平成22年以降の損害として認められる可能性のある金額は合計2344万8000円)、 ③ その可能性が否定できない事案(対象者138名、平成22年以降の損害として認められる可能性が否定できない上限の金額は合計9億1545万6469円) が発生している(認定事実②-3(4))。 [535] 上記①のとおり、本件確定判決や本件和解により、平成22年以降に抗告人の信者らによって不法行為に該当する不相当献金等勧誘行為等が行われ、かつ、抗告人に使用者責任等が成立すると確実に認められる事案は、対象者4名に係る事案にとどまる。しかし、これは、上記②、③の事案の存在も併せ考慮すると、抗告人の信者らが、不法行為に該当する不相当献金等勧誘行為等を行わなくなったことによるものではなく、抗告人において民事訴訟等の件数を減少させるための対策を執ったこと(上記イ)によるものであるとみるのが相当である。 [536] 抗告人は、 {1} 平成27年から本件銃撃事件前の令和3年までは、抗告人に関する独立行政法人国民生活センターへの消費生活相談の件数は、他の宗教団体と比較して並外れて件数が多かった事実はないこと(乙F110、乙R2)や、 {2} 日本司法支援センター(法テラス)が令和4年11月14日に運用を開始した霊感商法等対応ダイヤルにつき、同日から令和7年9月30日までの相談件数1万4158件のうち、抗告人のみに関連する相談件数は3012件であり、そのうち金銭的トラブルに関する相談件数は1217件にとどまること を指摘するが、相談件数が上記{1}、{2}の程度にとどまっていたことは、抗告人において民事訴訟等の件数を減少させるための対策を執っていたこと(上記イ)も影響していたものとみるのが相当である。 [537]エ 以上のとおり、 ① 抗告人の信者らが、コンプライアンス宣言後も、抗告人から、社会通念上相当な範囲を逸脱しない方法・態様による勧誘では達成できないような献金収入の数値目標を達成するよう求められ、この要求に答えていたこと(上記ア)、 ② 抗告人の信者らが、献金収入の数値目標を達成すべく献金の勧誘を行いつつ、民事訴訟等の件数を減少させることにより問題を顕在化させないようにしていたこと(上記イ)、 ③ 実際、コンプライアンス宣言後も、不法行為に該当する不相当献金等勧誘行為等が行われ、かつ、抗告人に使用者責任等が成立すると認められる事案や、その可能性が否定できない事案が発生していること(上記ウ) からすると、抗告人の信者らは、コンプライアンス宣言後も、少なくとも本件銃撃事件が発生するまでの間、抗告人によって定められた献金収入の数値目標を達成するため、以下の(ア)や(イ)に該当し、勧誘の在り方として社会通念上相当な範囲を逸脱すると認められる献金を勧誘する行為(以下「不相当献金勧誘行為」という。不相当献金勧誘行為は、概念上、不相当献金等勧誘行為等に含まれるものである。)を継続して行っていたものと認めるのが相当であり、この不相当献金勧誘行為は、不法行為に該当するというべきである。 (ア) 対象者の自由な意思を制限し、献金をするか否かについて適切な判断をすることが困難な状態に陥らせた上で、献金を勧誘すること (イ) 対象者又はその親族に不当な不利益を与え、あるいは、対象者又はその親族の生活の維持に支障が生じることになるような献金を勧誘すること (2) コンプライアンス宣言後の抗告人の信者らによる不相当献金勧誘行為に対する抗告人の関与 [538] ① 本件確定判決において、抗告人の信者らが不法行為に該当する不相当献金等勧誘行為等を行い、かつ、抗告人に使用者責任等が成立すると判断されていたこと(上記第2の2(1))、 ② 信者らが本件確定判決で認定された不相当献金等勧誘行為等を行ったのは、そもそも、抗告人が、抗告人の献金収入を増大させるとともに、韓国家庭連合の資金を含む文鮮明(その死後は韓鶴子)の活動資金を獲得する目的で、会長等の幹部の承認の下、本部組織や地方組織、あるいは抗告人の実質的な内部組織である連絡協議会等を通じて、信者らに対し、社会通念上相当な範囲を逸脱しない方法・態様による勧誘では達成できないような数値目標を定めて献金や物品の購入の勧誘を行うよう求め、その際、抗告人の会長等の幹部は、抗告人の信者らが、その数値目標を達成するため、不相当献金等勧誘行為等を行うことを、少なくとも未必的には容認していたことによるものであったこと(上記第2の3(4)) からすれば、抗告人の会長等の幹部は、不相当献金等勧誘行為等防止措置及び数値目標緩和措置を執らなければ、信者らによる不相当献金勧誘行為を防止することは困難であり、信者らによる不相当献金勧誘行為が継続することを容易に認識することが可能であったと認められる。そして、抗告人は、コンプライアンス宣言後も、平成22年以降に抗告人の信者らによって行われた献金等勧誘行為等により損害を被ったと主張する者や、被害者から損害賠償請求権を相続したと主張する者から、訴訟外で損害賠償等の請求を受け続け、訴訟外の示談に応じているのであるから(別紙4、認定事実②-3(3)ウ)、抗告人の会長等の幹部は、信者らが、コンプライアンス宣言後も不相当献金勧誘行為を継続していることを容易に認識することが可能であったと認められる。 [539] そうであるにもかかわらず、抗告人の会長等の幹部は、コンプライアンス宣言後も、本件銃撃事件が発生するまでの間、不相当献金等勧誘行為等防止措置を十分に執らず、また、数値目標緩和措置を全く執らず(上記2)、責任役員会及び評議員会議において、コンプライアンス宣言前と同水準の献金収入の予算額を決定し続けたものであるところ(認定事実②-2(1)ア)、これは、この間に相当多額の海外送金が継続されていたこと(認定事実②-2(1)エ、オ)も併せ考慮すると、抗告人の献金収入、ひいてはこれを原資とする文鮮明(その死後は韓鶴子)の活動資金(韓国家庭連合の資金を含む。)の減少を防ぐためであったと認めるのが相当である。 [540] 以上の諸事情を総合考慮すれば、コンプライアンス宣言後も抗告人の信者らによる不相当献金勧誘行為が継続して行われてきた根本的な原因は、抗告人にあるというべきである。 [541] 上記1で述べたとおり、抗告人の信者らによる不相当献金等勧誘行為等を防止するためには、抗告人が、抗告人の信者らにより不相当献金等勧誘行為等が行われてきた根本的な原因が抗告人にあることを認めた上で、不相当献金等勧誘行為等防止措置及び数値目標緩和措置の両方を確実に実施することが必要不可欠である。 [542] しかし、抗告人が、コンプライアンス宣言後、本件銃撃事件までの間、不相当献金等勧誘行為等防止措置を十分に執らず、数値目標緩和措置を執らなかったことは、上記2で述べたとおりである。 [543] そこで、以下では、抗告人による本件銃撃事件後の対策等(認定事実②-1(4)、(5))について検討し、評価する。 (1) 不相当献金等勧誘行為等防止措置について [544]ア 抗告人は、本件銃撃事件後、「教会改革の方向性に関して」と題する事務連絡文書を発出するとともに、不当寄附勧誘防止法をも踏まえ、「献金を受領する際のガイドライン」や「教会改革のためのガイドライン(基本方針)」を策定し、コンプライアンス宣言2にいう「過度な献金」の具体的な内容を明らかにするとともに、抗告人の信者らが対象者の意思を確認して「過度な献金」を勧誘しないようにするための具体的な措置として、「1回の献金」の金額が月収の10分の3(目安として10万円)以上となる献金を受領する際には、「献金確認書」を用いて、献金者に対し、①この献金により献金者又はその家族の生活に支障を来す心配がないかどうか、②この献金のために新たな借入れをしていないかどうか、③特別な収入を原資とする献金について、家族の同意を得ているかどうかの確認を行うこと等を定めている。(認定事実②-1(4)ア(ア)、イ、エ) [545]イ また、抗告人は、上記「教会改革のためのガイドライン(基本方針)」の1.(6)において、「先祖解怨」につき、いわゆる先祖の因縁や霊界(特に地獄)の様相等を殊更に強調することで不安感や恐怖感を抱かせることのないよう求めている。(認定事実②-1(4)エ) [546] そして、抗告人は、上記「教会改革のためのガイドライン(基本方針)」の1.(2)⑤において、献金した者に対し、自己の意思に基づく献金であって返還を求める意思がないことを記載した念書等を作成することを控えるよう求めている。(認定事実②-1(4)エ) (2) 数値目標緩和措置について [547] 抗告人は、本件銃撃事件後、「教会改革の方向性に関して」と題する事務連絡文書において、全世界の宣教活動への支援のための費用を減額し、予算全体を減額する旨を表明している(認定事実②-1(4)ア(イ))。 [548] 実際にも、抗告人の海外宣教援助費の額(いずれも概数)は、平成27年度から令和3年度までの間、予算額は78億円~100億円の範囲であり、決算額は予算額に若干欠ける程度であったのに対し、令和4年度は、予算額は90億円と従前並みであったものの、決算額は51億円と減少し、令和5年度は予算額が50億円、決算額が0円、令和6年度は予算額及び決算額ともに0円となった(認定事実②-2(1)エ)。 [549] 以上も一因となって、抗告人の献金収入の額(いずれも概数)は、令和4年度の予算額は560億円とコンプライアンス宣言前を超える額であったものの、決算額は348億円となり、令和5年度は予算額が229億円、決算額が194億円、令和6年度は予算額が120億円、決算額が127億円であり、令和3年度までと比較して大幅に減額している(認定事実②-2(1)ア)。 [550] このような令和5年度以降の献金収入の予算額の減額に加え、抗告人の信者らが本件銃撃事件後に行った不相当献金勧誘行為が問題となった民事訴訟や訴訟外の示談の事案の有無が証拠上明らかではないことに鑑みれば、本件銃撃事件後、抗告人は、信者らに対し、社会通念上相当な範囲を逸脱しない方法・態様による勧誘では達成できないような数値目標を定めて献金の勧誘を行うよう求めておらず、したがって、信者らは不相当献金勧誘行為を継続していない可能性があることは否定できない。(乙C146、令和7年11月21日付け抗告人最終主張書面(4)〔18頁の図表5-2、5-3、添付資料1〕も参照。) (3) 信者らによる不相当献金勧誘行為が行われるおそれがあるか [551] しかしながら、以下の事情を総合すると、現在もなお、抗告人の信者らによる不相当献金勧誘行為が行われるおそれがあると認められる。 ア 過度な献金を勧誘しないようにするための上記(1)の措置が不十分であること [552] 上記(1)アの措置は、1回当たりの献金額を基準とするものであり、同月内に行われた複数回の献金の合計金額を基準とするものではないことが、「献金を受領する際のガイドライン」において明文をもって明らかにされている(認定事実②-1(4)イ)。したがって、1回当たりの献金額が月収の10分の3(目安として10万円)未満となるように何回かに分けて献金することによって、この措置の適用を回避することが可能であることから、当該信者が一定期間に行った献金総額にも注意しなければ、過度な献金を防ぐという目的を達成することはできない。また、特別な収入を原資とする献金について、家族の同意が直ちに得られない場合でも、家族の同意なしに献金を受領することができる道が残されている(認定事実②-1(4)イ(ウ))。したがって、上記(1)アの措置の実効性は、適切な運用がされるかによって左右されることから、当該措置だけでは不相当献金等勧誘行為等防止措置として不十分というべきである。 イ 献金収入の予算額を減額した上記(2)の措置の実効性が明らかではないこと [553] 抗告人の本件銃撃事件後の対策のうち、根本的に重要なものは、献金収入の予算額を減額した上記(2)の措置である。なぜならば、この措置は、献金の数値目標達成に向けた信者らに対する心理的圧迫を緩和し、もって、信者らによる不相当献金勧誘行為を抑制する効果があると考えられるからである。 [554] しかしながら、抗告人が、献金収入の予算額を減額するに当たり、献金や献金の勧誘を行ってきた信者らからその実情等を聴取するなどして、社会通念上相当な範囲を逸脱しない方法・態様による勧誘を行った場合に達成することの可能な献金の金額を把握した上で、献金収入の予算額を減額したことをうかがわせる証拠はない。したがって、減額後の献金収入の予算額が、不相当献金勧誘行為を確実に防止できる金額なのかどうかは明らかではなく、抗告人が献金収入の予算額を減額した上記(2)の措置が、数値目標緩和措置として実効性のある措置であるといえるのかどうかも明らかではない。 ウ 抗告人が献金収入の予算額を再び引き上げるおそれがあること [555] そして、以下の(ア)~(エ)によれば、抗告人が、今後、再び、献金収入の予算額を引き上げ、信者らに対し、社会通念上相当な範囲を逸脱しない方法・態様による勧誘では達成できないような数値目標を定めて献金の勧誘を行うよう求めるおそれがあると認められる。 (ア) 献金収入の予算額の減額が一時的・暫定的な措置にすぎないことがうかがわれること [556] 抗告人は、相手方から、宗教法人法78条の2第1項に基づき、全世界の宣教活動への支援のための費用を減額し、予算全体を減額する措置を執ることとした経緯及び理由について報告を求められたのに対し、令和5年2月7日付けで、 「安倍元首相への銃撃事件以降、当法人に対する多くの批判的報道がなされ、被害を受けたという者がメディア上で被害を訴え、また、政府においても連絡会議の設置等対応に追われるに至った。こうした状況下で同じ活動を継続することは非常識的であるばかりか、本来、社会から広く尊敬と信頼を得るべき宗教法人としてあってはならないことである。そこで献金に対して一旦ブレーキをかけ、コンプライアンス宣言で約した『過度な献金』が再び起きていないかを再点検し、必要に応じて改革を実行すべきと判断し、取り急ぎ、収入予算の削減、海外宣教支援の停止等に踏み切った。」と報告した(甲C3の4〔別添4(4)〕、甲C3の5の1〔10~11頁〕)。 [557] この報告内容は、抗告人が、不相当献金勧誘行為を防止するための抜本的・恒久的措置として自発的に献金収入の予算額の減額を行ったというよりも、本件銃撃事件後の社会的な批判という外発的な要因に対応するための一時的・暫定的な措置としてやむなく献金収入の予算額の減額を行ったにすぎないことをうかがわせるものであり、抗告人が、一連の対応を執って社会的な批判が収まった後、再び、献金収入の予算額を引き上げるおそれがあることを基礎づける事情である。 (イ) 抗告人がコンプライアンス宣言を踏まえた一連の対策を執った際も献金収入を維持することを優先したこと [558] 抗告人が執ったコンプライアンス宣言を踏まえた一連の対策も、新世事件という外発的な要因に対応する形で執られたものであり、自発的に執られたものではない(前提事実3(1))。 [559] また、既に述べたとおり、抗告人がコンプライアンス宣言後に執った一連の対策は、不相当献金等勧誘行為等自体を防止することよりも、むしろ、解散命令の請求等の事態に発展することを防ぐため、民事訴訟等の件数を減少させることにより問題を顕在化させないことに重点を置くものであって、不相当献金等勧誘行為等自体を防止するための具体的かつ実効性のある措置とはいい難く、不相当献金等勧誘行為等防止措置としては不十分なものであった(上記2(1)カ)。しかも、数値目標緩和措置については全く執らなかったものであって、コンプライアンス宣言後も、献金収入の予算額の水準はそれまでとほぼ変わらず、平成27年度から平成29年度までの3年間は減額されたものの、その後、増額し、令和4年度にはコンプライアンス宣言前を超える額となったものである(上記2(2)イ)。 [560] そして、新世事件の際に引責辞任した当時の抗告人の会長であった徳野英治は、その3年後に再び会長に就任している(前提事実3(2))。 [561] これらの事情は、抗告人が、新世事件後も、不相当献金等勧誘行為等自体を防止するよりも、コンプライアンス宣言を踏まえた一連の対策を形として執ることにより社会的な批判をかわし、民事訴訟等の件数を減少させて解散命令の請求等の事態に発展することを防ぎつつ、献金収入を維持することを優先したことを推認させる事情であり、ひいては、抗告人が、本件銃撃事件後も同様に、一連の対応を執って社会的な批判が収まった後、再び、献金収入の予算額を引き上げるおそれがあることを基礎づける事情である。 (ウ) 抗告人が、現在もなお、信者らにより不相当献金等勧誘行為等が行われてきた根本的な原因が抗告人にあることを認めていないこと [562] 抗告人は、コンプライアンス宣言後のみならず、本件銃撃事件後の現在に至ってもなお、一貫して、信者らにより不相当献金等勧誘行為等が行われてきた根本的な原因が抗告人にあること(すなわち、抗告人の信者らが不相当献金等勧誘行為等を行った原因は、抗告人が、献金収入を増大させ、あるいは、その減少を防ぐため、信者らに対し、社会通念上相当な範囲を逸脱しない方法・態様による勧誘では達成できないような数値目標を定めて献金や物品の購入の勧誘を行うよう求めたことにあること)を認めていない。 [563] 抗告人は、本件の審理においても、 ① 抗告人の本部は、全国の教会に対し、各種献金の案内をすることはあるが、教会に指示して、全国の信者に対して統一的に献金を求めることはないし、教会が信者に対して献金を指示することもなく、献金をするか否かは信者の自主性に任されている、 ② 予算は、抗告人の本部が各地方組織に一方的に割り当てるものではなく、献金目標でもない、 ③ 不相当献金等勧誘行為等は、抗告人とは別の法主体である連絡協議会等の構成員であった信者が行ったものであり、抗告人の指示によるものではない として、抗告人の法的責任を否定し続けている。 [564] そして、抗告人は、訴訟上の和解や訴訟外の示談でもこのような姿勢を貫いており、信者らによる不法行為に該当する不相当献金等勧誘行為等につき抗告人に責任があると解される場合も、抗告人自身が和解金等の支払債務の債務者となることはなく、連絡協議会等の関係者とされる信者らを債務者とし、当該信者らに和解金等の資金の大部分を捻出させている(認定事実①-6(2)~(4))。 [565] なお、抗告人は、令和7年9月以降、抗告人の資金から約100億円(なお、認定事実②-2(1)ウのとおり、抗告人が令和6年度末に保有する現預金の額は約668億円であった。)を捻出し、被害を訴える者に対し、「補償」と称する対応を実施することとしたほか、田中前会長は、同年12月9日に抗告人の会長を辞任し、記者会見において謝罪した(認定事実②-1(5))。しかし、 ① この「補償」の趣旨及び目的(認定事実②-1(5)ア(ア)a)、 ② この「補償」の方針に基づいて東京地方裁判所において成立した調停の調停条項中に当該調停が不法行為の成否を前提とするものではないことを確認する旨の条項が存在すること(認定事実②-1(5)ア(イ))、 ③ 田中前会長の記者会見における発言内容(認定事実②-1(5)イ) を見ると、抗告人や田中前会長による上記一連の対応は、抗告人が、不相当献金等勧誘行為等が行われてきた根本的な原因が抗告人にあることを認めた上で実施するものではなく、「被害を訴える者が存在することに伴う社会的・道義的責任」を果たすために実施するものにとどまるものと認められる。 [566] 抗告人が、抗告人の信者らによって不相当献金等勧誘行為等が行われてきた根本的な原因が抗告人にあることを認めることなく、不相当献金等勧誘行為等は抗告人とは別の法主体である連絡協議会等の構成員であった信者が行ったものにすぎないという姿勢を維持し続ける限り、抗告人が、今後、再び、献金収入の予算額を引き上げ、信者らに対し、社会通念上相当な範囲を逸脱しない方法・態様による勧誘では達成できないような数値目標を定めて献金の勧誘を行うよう求めるおそれがあるといわざるを得ない。 (エ) 抗告人の幹部が韓鶴子からの過度な活動資金の拠出の要求を拒絶する意思も能力も有していないことがうかがわれること [567] 証拠(甲B5の21)によれば、 ① 本件銃撃事件後の令和5年6月、韓鶴子が、抗告人の幹部を集め、 「日本という国が恵みを受けて経済大国になれたのは、天が祝福したから。天からの祝福を受けた者は、必ず恵みを施さなければならない。」、と発言したこと、 ② 抗告人の教会改革推進本部長が、NHKの取材に対し、韓鶴子の上記①の発言について、 「宗教の教祖は大なり小なりそういうところがあると思うのですが、わりとオーバーな表現をされているんだと思うんですけれども。やはりいまの日本の政界から誤解されているということをこのままの状態で放っておくのではなくて、もっとしっかり頑張れと。そして正しいことをきちんと訴えかけなさいという意味だと私は理解しています。多少の言葉じりの問題はあったとしても。」と述べ、また、「献金は過度なものであってはならないという方針と逆をいく発言では?」との記者の質問に対し、 「そこだけとっていることと、韓鶴子総裁は献金と結びつけては全くないわけで。その一部だけが教えの全てであるかのようにするのはミスリードです。(私たちが)過剰に献金を負担しないといけない責任があるという意味では全くない。」と述べたこと が認められる。 [568] また、証拠(甲B6の16、6の17)によれば、 ③ 共同通信社は、令和5年7月3日、韓鶴子が、同年6月末の教団内部の集会で、 「日本は第二次世界大戦の戦犯国家で、罪を犯した国だ。賠償をしないといけない。」と発言していたとして、抗告人は、年間数百億円にも上るとされる日本から韓国への送金を今後は取りやめると説明していたが、「トップが依然、韓国への経済的な見返りを正当化したことになる。」と報道したこと、 ④ この報道に対し、抗告人は、同年7月4日付けのプレスリリースにおいて、韓鶴子の上記③の発言は、 「日本は、第二次世界大戦で被害を与えた国々に対して世界宣教で世界を助けなければならない」、という趣旨であり、上記報道は、韓鶴子の発言の一部を切り取り曲解し、的外れな非難をするものであるとの見解を公表したこと が認められる。 [569] 韓鶴子の上記①、③の発言は、文鮮明が、「エバ国家」又は「母の国」である日本の信者らが無理をしてでも世界の国々のために経済的援助をすべきであるとする考え方の下、抗告人の会長に対し、日本からの金銭拠出が少ないことを叱責したこと(認定事実①-3(1)イ、3(2)ウ)と軌を一にするものであり、韓鶴子が、本件銃撃事件後もなお、抗告人に対し、抗告人の献金収入から韓国家庭連合の資金を含む自らの活動資金を拠出するよう強く要求する姿勢を維持していることを推認させる。 [570] この点につき、抗告人は、上記プレスリリースにおいて、共同通信の上記報道は韓鶴子の発言の一部を切り取り曲解するものであると非難する。しかし、 {1} 「天からの祝福を受けた者は、必ず恵みを施さなければならない。」、「賠償をしないといけない。」との韓鶴子の発言は、抗告人又は日本における抗告人の信者らが、日本が第二次世界大戦で被害を与えた韓国を含む世界の国々のために経済的援助をしなければならないとの趣旨であると理解するのが自然であること、 {2} 抗告人は、本件銃撃事件が発生した当時、多額の海外宣教援助費を計上し、海外(9割超が韓国である。)に多額の資金を送金していたこと(認定事実②-2(1)エ、オ)、 {3} 上記①、③の発言当時、岸田元首相の方針に基づき、抗告人の解散命令に向けて、宗教法人法78条の2第1項に基づく報告徴収手続が進行中であったこと(前提事実5)、 {4} 抗告人が解散されることになれば、日本の信者らの献金を原資とする上記{2}の送金に悪影響が生じ、韓鶴子の活動資金が減少することが予想されたこと を総合考慮すれば、韓鶴子の上記①、③の発言は、解散命令が抗告人やその信者らの信教の自由に対して与える影響のみならず、韓鶴子の活動資金に与える悪影響をも懸念し、解散命令の請求に踏み切る姿勢を示した岸田元首相を非難したものとみるのが相当であるから、上記推認が左右されることはない。 [571] そして、韓鶴子の上記①、③の発言に対する抗告人の教会改革推進本部長の上記②のコメントや抗告人の上記④の見解は、韓鶴子を擁護するものであり、抗告人の幹部が、韓鶴子からの過度な活動資金の拠出の要求を拒絶する意思も能力も有していないことをうかがわせる。 [572] そもそも、抗告人が、信者らに対し、社会通念上相当な範囲を逸脱しない方法・態様による勧誘では達成できないような数値目標を定めて献金や物品の購入の勧誘を行うよう求めた目的の一つは、韓国家庭連合の資金を含む文鮮明(その死後は韓鶴子)の活動資金を獲得し、その減少を防ぐことであったこと(上記第2の5(1)、上記第4の3(2))を考慮すれば、抗告人の幹部をめぐる上記事情は、今後、韓鶴子又はその後継者からの活動資金の拠出の要求が強くなれば、抗告人が、これを拒絶することができず、再び、献金収入の予算額を引き上げ、信者らに対し、社会通念上相当な範囲を逸脱しない方法・態様による勧誘では達成できないような数値目標を定めて献金の勧誘を行うよう求めるおそれがあることを基礎づける事情であるといわざるを得ない。 エ 小括 [573] 以上のとおり、抗告人は、本件銃撃事件後、献金収入の予算額を減額する措置を執ってはいるものの、数値目標緩和措置として実効性のある措置といえるのかどうかが明らかではないのみならず、今後、再び、献金収入の予算額を引き上げ、信者らに対し、社会通念上相当な範囲を逸脱しない方法・態様による勧誘では達成できないような数値目標を定めて献金の勧誘を行うよう求めるおそれがあると認められる。 [574] その場合、抗告人が本件銃撃事件後に執った抗告人の信者らが「過度な献金」を勧誘しないようにするための措置は、それだけでは実効性のある措置と評価することは困難であり、不相当献金等勧誘行為等防止措置としては不十分であることから、抗告人の信者らは、抗告人によって定められた数値目標を達成するため、不相当献金勧誘行為を行う可能性が高い。このことは、抗告人が、コンプライアンス宣言後、不十分とはいえ、因縁トークや未証しによる献金の勧誘をすべきでないこと、信者の経済状態に比して過度な献金とならないよう十分配慮すべきことを明らかにし、これを信者に周知したにもかかわらず、抗告人の信者らが、抗告人によって定められた数値目標を達成するため、不相当献金勧誘行為を継続して行ったこと(上記3(1))によって裏付けられている。 [575] 上記1から4までの検討結果を総合すると、以下の事実を認定することができる。 [576](1) 抗告人の会長等の幹部は、不相当献金等勧誘行為等防止措置及び数値目標緩和措置を執らなければ、信者らによる不相当献金勧誘行為が継続することを容易に認識することが可能であった。そうであるにもかかわらず、抗告人の会長等の幹部は、コンプライアンス宣言後も、本件銃撃事件が発生するまでの間、抗告人の献金収入及び韓国家庭連合の資金を含む文鮮明(その死後は韓鶴子)の活動資金の減少を防ぐため、不相当献金等勧誘行為等防止措置を十分に執らず、また、数値目標緩和措置を全く執らず、責任役員会及び評議員会議において、コンプライアンス宣言前と同水準の献金収入の予算額を決定し、これを地方組織に通達させた。抗告人は、これにより、本部組織や地方組織、あるいは、抗告人の実質的な内部組織である信徒会を通じて、信者らに対し、社会通念上相当な範囲を逸脱しない方法・態様による勧誘では達成できないような数値目標を定めて献金の勧誘を行うよう求め続けた。 [577](2) その結果、抗告人の信者らは、コンプライアンス宣言後も、本件銃撃事件に至るまでの間、抗告人によって定められた数値目標を達成するため、不法 行為に該当する不相当献金勧誘行為を継続して行った。 [578](3) 本件銃撃事件後、抗告人は、抗告人の信者らが「過度な献金」を勧誘しないようにするための具体的な措置を定めたが、適切な運用がされるかによって実効性が左右されるものであり、それだけでは、不相当献金等勧誘行為等防止措置としては不十分である。また、本件銃撃事件後、抗告人は、献金収入の予算額を減額する措置を執ったが、数値目標緩和措置として実効性のある措置といえるのかどうかが明らかではないのみならず、抗告人が、今後、再び献金収入の予算額を引き上げ、信者らに対し、社会通念上相当な範囲を逸脱しない方法・態様による勧誘では達成できないような数値目標を定めて献金の勧誘を行うよう求めるおそれがある。 [579](4) 以上によれば、現在もなお、抗告人の信者らによる不相当献金勧誘行為が行われるおそれがある。 [580] 上記第2の5及び第4の5の認定事実を踏まえ、抗告人の解散を命ずることの可否について検討する。以下においては、まず、 ① 抗告人について解散命令事由(宗教法人法81条1項1号に該当する事由)があると認められるかを検討し、これが認められる場合、 ② 抗告人の解散を命ずることが、抗告人の信者ら等の法的地位や権利関係に及ぶ影響を考慮してもなお、必要でやむを得ないといえるかを検討する。 (1) 「法令に違反して」(宗教法人法81条1項1号) [581] 抗告人の信者らは、 ① 別紙2-1の本件確定判決一覧表のとおり、昭和54年11月から平成26年9月までの間、計140名の対象者らに対し、不法行為に該当する不相当献金等勧誘行為等を行い、同対象者ら(ただし、対象者番号135番〔甲E29〕については、対象者の夫である原告)に対し、献金等出捐金等相当額として合計15億1222万8609円の財産上の損害を与えるとともに、合計1億7177万円の慰謝料に相当する精神的苦痛を与え(上記第2の5(2)ア)、 ② 別紙3-1の本件和解一覧表のとおり、早くとも昭和48年3月から遅くとも平成28年6月までの間、計366名の対象者らに対し、不法行為に該当する不相当献金等勧誘行為等を行い、同対象者らやその関係者に対し、少なくとも、合計57億5277万6082円の損害を与えたものであり(上記第2の5(2)イ)、 ③ コンプライアンス宣言後も、本件銃撃事件に至るまでの間、不法行為に該当する不相当献金勧誘行為を継続して行ったこと(上記第4の5(2)) が認められる。 [582] 民法709条の不法行為を構成する行為は、宗教法人法81条1項1号にいう「法令に違反」する行為に当たると解するのが相当である(令和7年最決)。この法解釈が誤りであるとする抗告人の主張は、採用することができない。 [583] したがって、抗告人の信者らによる上記①~③の行為は、宗教法人法81条1項1号にいう「法令に違反」する行為に当たるというべきである。 (2) 「宗教法人について」(宗教法人法81条1項柱書) [584] 抗告人の信者らが上記(1)①、②の行為を行ったのは、抗告人が、会長等の幹部の承認の下、信者らに対し、社会通念上相当な範囲を逸脱しない方法・態様による勧誘では達成できないような数値目標を定めて献金や物品の購入の勧誘を行うよう求め、その際、抗告人の会長等の幹部が、抗告人の信者らが、その数値目標を達成するため、不相当献金等勧誘行為等を行うことを、少なくとも未必的に容認したことによるものである(上記第2の5)。そして、抗告人の信者らが上記(1)③の行為を行ったのは、抗告人の会長等の幹部が、不相当献金等勧誘行為等防止措置及び数値目標緩和措置を執らなければ、信者らによる不相当献金勧誘行為が継続することを容易に認識することが可能であったにもかかわらず、コンプライアンス宣言後も、不相当献金等勧誘行為等防止措置を十分に執らず、また、数値目標緩和措置を全く執らず、責任役員会及び評議員会議において、コンプライアンス宣言前と同水準の献金収入の予算額を決定してこれを地方組織に通達させ、これにより、抗告人が、信者らに対し、社会通念上相当な範囲を逸脱しない方法・態様による勧誘では達成できないような数値目標を定めて献金の勧誘を行うよう求め続けたことによるものである(上記第4の5(1)、(2))。 [585] 以上によれば、上記(1)①~③の行為につき、宗教法人法81条1項柱書にいう「宗教法人について」の要件を満たすというべきである。 (3) 「著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為」(宗教法人法81条1項1号) ア 検討 [586] これまでに述べたとおり、抗告人が、信者らに対し、社会通念上相当な範囲を逸脱しない方法・態様による勧誘では達成できないような数値目標を定めて献金や物品の購入の勧誘を行うよう求めたのは、抗告人の献金収入を増大させるとともに、韓国家庭連合の資金を含む文鮮明(その死後は韓鶴子)の活動資金を獲得する目的によるものであり(上記第2の5(1))、コンプライアンス宣言後も、本件銃撃事件までの間、社会通念上相当な範囲を逸脱しない方法・態様による勧誘では達成できないような数値目標を定めて献金の勧誘を行うよう求め続けたのは、抗告人の献金収入及び韓国家庭連合の資金を含む文鮮明(その死後は韓鶴子)の活動資金の減少を防ぐ目的によるものであった(上記第4の5(1))。抗告人が、宗教法人として活動するために献金収入を得ること、献金収入の中から、教義を同じくする関連団体である韓国家庭連合の資金や、教義の創始者である文鮮明やその後継者とされる韓鶴子の活動資金を拠出すること自体は、宗教法人法6条に反しない限り許されるが、信者らが不相当献金等勧誘行為等を行うことを未必的に容認し、あるいは、信者らによる不相当献金勧誘行為が継続することを容易に認識することが可能であるにもかかわらずその防止のために十分な措置を執らず、その結果、その対象者に損害を与えてまで、上記目的を実現することが許されないことはいうまでもない。その意味で、上記目的は、不当というべきである。 [587] また、抗告人の信者らによる不相当献金等勧誘行為等の態様は、抗告人が定めた献金等の数値目標を達成するため、マニュアルを作成するなどして組織的に、 ① 未証しや因縁トークを初めとする害悪の告知といった方法により、対象者の自由な意思を制限し、献金等行為をするか否かについて適切な判断をすることが困難な状態に陥らせた上で、献金等行為を勧誘し、あるいは、対象者又はその親族に不当な不利益を与えたり、対象者又はその親族の生活の維持に支障が生じたりすることになるような献金等行為を勧誘し(不相当献金等勧誘行為)、 ② 対象者の自由な意思を抑圧し、抗告人の教義に基づく活動をするか否かについて適切な判断をすることが困難な状態に陥らせ、さらには、抗告人の教義から離脱することを困難な状態に陥らせた上で、対象者に対し、抗告人の教義に基づく活動として、抗告人への献金等行為を勧誘したり、他の者に対する無償かつ過酷な物品の営業・販売活動や伝道・教化活動に従事するよう求めたりする(不相当伝道教化勧誘等行為) というものであって(上記第2の2(1)ア)、極めて悪質である。 [588] そして、上記(1)①~③のとおり、抗告人の信者らは、遅くとも昭和54年11月から本件銃撃事件までの42年間以上という長期間にわたり、確実に認定できる者に限っても506名に上る全国の対象者等(本件確定判決及び本件和解に係る事案の原告らの住所については、甲B10の1〔別紙1、2〕参照)に対し、極めて多額に上る財産上の損害及び多大な精神的苦痛(本件確定判決の対象者らやその関係者につき、献金等出捐金等相当額合計15億1222万8609円の財産上の損害及び合計1億7177万円の慰謝料に相当する精神的苦痛。本件和解の対象者らやその関係者につき和解金合計57億5277万6082円。)を与えたものである。上記(1)③のとおり、コンプライアンス宣言後も、抗告人の信者らにより不相当献金勧誘行為が継続して行われており、損害は、上記に限定されるものではないこと、上記財産上の損害の発生は、対象者だけでなく、その家族・親族にも影響を及ぼし得るものであることを考慮すれば、抗告人の信者らによる不相当献金等勧誘行為等の結果は重大であるというべきである。 [589] 以上のような目的の不当性、不相当献金等勧誘行為等の態様の悪質性及び結果の重大性に鑑みれば、抗告人の信者らの上記(1)①~③の行為は、宗教法人法81条1項1号にいう「著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為」に当たるというべきである。 イ 抗告人の主張に対する判断 [590](ア) これに対し、抗告人は、 献金等勧誘行為等は抗告人の信者らの間の問題であり、このような限られた部分社会に属する私人間で行われた行為はおよそ「公共」に関わるものではないこと、 不相当献金等勧誘行為等によって侵害されたと主張されている利益は「私益」であること からすれば、抗告人の信者らの不相当献金等勧誘行為等が「著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為」に当たるとするのは粗雑な論理であると主張する。 [591] しかしながら、抗告人の信者らの不相当献金等勧誘行為等によって侵害された対象者の利益は、対象者が抗告人の内部においてのみ有する利益ではなく、対象者が社会生活において有する財産上の利益であり、精神的苦痛を受けることなく平穏に生活する利益である。そして、個々の侵害された利益自体は「私益」であるとしても、上記アで説示したとおり、抗告人の信者らによる組織的かつ悪質な不相当献金等勧誘行為等により、多人数の対象者に極めて多額に上る財産上の損害及び多大な精神的苦痛が発生したことや、これらの損害の発生は、対象者のみならず、その家族・親族にも影響を及ぼし得るものであることに鑑みれば、一般市民が財産上の利益を侵害されることなく平穏に生活することのできる社会秩序を維持するという公共の利益が損なわれたものとみるべきであって、抗告人の信者らによる不相当献金等勧誘行為等は、「著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為」に当たるというべきである。 [592] 抗告人の上記主張は、採用することができない。 [593](イ) 抗告人は、コンプライアンス宣言以後の事案で不法行為が認定された民事訴訟の確定判決は2件のみであり(別紙2-1の本件確定判決一覧表の対象者番号137番〔甲E31〕、139番及び140番〔甲E32〕の各事案。平成22年以降に生じた損害額合計約1700万円。)、その献金が最後に支払われたのは平成26年9月(対象者番号137番)であって、最近発生した事例の件数及び被害額は著しく少ないことからすれば、「著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為」に該当するとは到底認められないと主張する。 [594] しかしながら、抗告人の信者らは、コンプライアンス宣言後も、本件銃撃事件に至るまでの間、抗告人によって定められた数値目標を達成するため、不法行為に該当する不相当献金勧誘行為を継続して行っていたものと認められる(上記第4の3(1)、5(1)、(2))。その件数や被害額は必ずしも明らかではないが、抗告人がコンプライアンス宣言後もそれまでと同水準の献金収入の予算額(目標額)を定め、抗告人の信者らに対して目標額の達成を求め、抗告人の信者らはこれに答えて目標額に近い献金を集めることに成功していたこと(認定事実②-2(1)ア、上記第4の2(2)イ)からすれば、不相当献金勧誘行為の件数や被害額は、コンプライアンス宣言後も、それまでと同水準で推移したものと推認するのが合理的である。コンプライアンス宣言後に抗告人の信者らが行った献金等勧誘行為等につき不法行為に該当すると認めた民事訴訟の判決が大幅に減少したことは、抗告人の信者らが、不法行為に該当する不相当献金等勧誘行為等を行わなくなったことによるものではなく、抗告人が民事訴訟等の件数を減少させるための対策を執ったことによるものであるとみるのが相当であるから(上記第4の3(1)ウ)、上記推認を妨げるものではない。 [595] 抗告人の上記主張は、採用することができない。 [596](ウ) 抗告人は、本件確定判決に係る一部の事案(別紙2-1の本件確定判決一覧表の対象者番号88番〔甲E21〕、対象者番号93番〔甲E25〕、対象者番号135番〔甲E29〕、対象者番号136番〔甲E30〕、対象者番号137番〔甲E31〕並びに対象者番号139番及び140番〔甲E32〕の各事案)につき、これらの事案についての個別事情を指摘しつつ、これらの事案の判決で認められたコンプライアンス宣言後の不相当献金等勧誘行為が「著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為」に該当しないと主張する。 [597] しかしながら、この主張のうち、上記各判決による事実認定及び判断の相当性を争う主張を採用することができないことは、上記第2の2(2)及び(3)で説示したとおりである。そして、上記各判決が認定した信者らの不法行為の内容や損害額に照らせば、各不法行為を個別に見ても、行為態様は悪質であり、結果は重大であるといわざるを得ず、ましてや、抗告人の信者らによる不相当献金等勧誘行為等を全体として見たときに「著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為」に該当するとの上記アの判断を左右するものとはいえない。 [598] 抗告人の上記主張は、採用することができない。 (4) 結論 [599] 以上によれば、抗告人について宗教法人法81条1項1号に該当する事由があると認められる。 (1) 判断枠組み(最高裁平成8年1月30日第一小法廷決定・民集50巻1号199頁参照) [600]ア 宗教法人法は、宗教団体が礼拝の施設その他の財産を所有してこれを維持運用するなどのために、宗教団体に法律上の能力を与えることを目的とし(同法1条1項)、宗教団体に法人格を付与し得ることとしている(同法4条)。すなわち、同法による宗教団体の規制は、専ら宗教団体の世俗的側面だけを対象とし、その精神的・宗教的側面を対象外としているのであって、信者が宗教上の行為を行うことなどの信教の自由に介入しようとするものではない(同法1条2項、85条参照)。同法81条に規定する宗教法人の解散命令の制度も、法令に違反して著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為(同条1項1号)や宗教団体の目的を著しく逸脱した行為(同項2号前段)があった場合、あるいは、宗教法人ないし宗教団体としての実体を欠くに至ったような場合(同項2号後段、3号から5号まで)には、宗教団体に法律上の能力を与えたままにしておくことが不適切あるいは不必要となるところから、司法手続によって宗教法人を強制的に解散し、その法人格を失わしめることが可能となるようにしたものであり、会社の解散命令(会社法824条)と同趣旨のものであると解される。 [601] したがって、解散命令によって宗教法人が解散しても、信者は、法人格を有しない宗教団体を存続させ、あるいは、これを新たに結成することが妨げられるわけではなく、また、宗教上の行為を行い、その用に供する施設や物品を新たに調えることが妨げられるわけでもない。すなわち、解散命令は、信者の宗教上の行為を禁止したり制限したりする法的効果を一切伴わないのである。 [602] もっとも、宗教法人の解散命令が確定したときはその清算手続が行われ(宗教法人法49条3項、49条の2、51条)、その結果、宗教法人に帰属する財産で礼拝施設その他の宗教上の行為の用に供していたものも処分されることになるから(同法49条の2、50条参照)、これらの財産を用いて信者らが行っていた宗教上の行為を継続するのに何らかの支障を生ずることがあり得る。このように、宗教法人に関する法的規制が、信者の宗教上の行為を法的に制約する効果を伴わないとしても、これに何らかの支障を生じさせることがあるとするならば、憲法の保障する精神的自由の一つとしての信教の自由の重要性に思いを致し、憲法がそのような規制を許容するものであるかどうかを慎重に吟味しなければならない。 [603]イ また、解散命令により宗教法人が解散し、その清算の結了等により法人格が消滅した場合(宗教法人法48条の2、49条の5、破産法35条)には、その時点まで存続していた宗教法人の職員と当該宗教法人との間の雇用契約は終了するものと解される。したがって、解散命令が、宗教法人の職員の法的地位や権利関係に及ぼす影響について考慮することも必要となる。 [604]ウ そうすると、宗教法人法81条1項1号に基づき、宗教法人の解散を命ずるためには、解散命令が、当該宗教法人に係る法人格を付与された宗教団体及びその信者ら並びに当該宗教法人の職員らの憲法上の権利を含む法的地位や権利関係に及ぼす影響を考慮してもなお、当該宗教法人の行為に対処するため、当該宗教法人の解散を命ずることが、必要でやむを得ないといえることを要すると解するべきである。 (2) 抗告人の解散を命ずる必要性 [605] 抗告人の信者らによる不相当献金等勧誘行為等は、抗告人が、信者らに対し、社会通念上相当な範囲を逸脱しない方法・態様による勧誘では達成できないような数値目標を定めて献金や物品の購入の勧誘を行うよう求めたことにより行われたものであった(上記第2の5、第4の5(1)、(2))。抗告人の信者らが本件銃撃事件後に行った不相当献金等勧誘行為等が問題となった民事訴訟等の存在は、証拠上明らかではないが、現在もなお、抗告人の信者らによって不相当献金勧誘行為が行われるおそれがある(第4の5(3)、(4))。そこで、以下では、上記(1)の判断枠組みに基づく検討を行うに当たり、まずは、抗告人の信者らによる不相当献金勧誘行為を防止するために抗告人の解散を命ずる必要性があるかについて検討する。 ア ①抗告人が不相当献金勧誘行為を防止するための実効性のある対策を自発的に執ることが期待できるか、②解散命令が不相当献金勧誘行為を防止するための実効性のある手段となるか [606] これまで述べてきたとおり、抗告人の信者らが不相当献金等勧誘行為等を行ってきたのは、抗告人が、抗告人の献金収入及び韓国家庭連合の資金を含む文鮮明(その死後は韓鶴子)の活動資金を確保するため、信者らに対し、社会通念上相当な範囲を逸脱しない方法・態様による勧誘では達成できないような数値目標を定めて献金や物品の購入の勧誘を行うよう求め続けたことによるものである。 [607] 抗告人のこの姿勢は、新世事件後も変わらず、コンプライアンス宣言後も、抗告人の献金収入及び韓国家庭連合の資金を含む文鮮明(その死後は韓鶴子)の活動資金の減少を防ぐため、不相当献金等勧誘行為等防止措置を十分に執らず、また、数値目標緩和措置を全く執らず、信者らに対し、社会通念上相当な範囲を逸脱しない方法・態様による勧誘では達成できないような数値目標を定めて献金の勧誘を行うよう求め続けたため、信者らは、不相当献金勧誘行為を継続して行った。 [608] そして、抗告人は、本件銃撃事件後の現在もなお、 ① 信者らにより不相当献金等勧誘行為等が行われてきた根本的な原因が抗告人にあることを認めておらず、 ② 実効性のある不相当献金等勧誘行為等防止措置を執っておらず、 ③ 献金収入の予算額を減額する措置を執ってはいるものの、数値目標緩和措置として実効性のある措置といえるのかどうかが明らかではないのみならず、今後、再び、献金収入の予算額を引き上げ、信者らに対し、社会通念上相当な範囲を逸脱しない方法・態様による勧誘では達成できないような数値目標を定めて献金の勧誘を行うよう求めるおそれがある ことが認められる。その場合、抗告人の信者らは、抗告人によって定められた数値目標を達成するため、不相当献金勧誘行為を行う可能性が高い。 [609] このように、信者らによる不相当献金勧誘行為を防止するよりも、抗告人の献金収入及び韓国家庭連合の資金を含む文鮮明(その死後は後継者の韓鶴子)の活動資金の維持・確保を優先するという抗告人の姿勢は、新世事件及び本件銃撃事件を経ても変わっていないと考えられることからすると、抗告人が、今後、不相当献金勧誘行為を防止するための実効性のある対策を自発的に執ることは期待し難い。 [610] そして、これまで説示してきたように、抗告人の信者らにより不相当献金等勧誘行為等が行われてきた根本的な原因が抗告人にあることに照らせば、抗告人の解散を命ずることは、信者らによる不相当献金勧誘行為を防止するための実効性のある手段となり得るというべきである。 イ 解散命令以外に執り得る手段があるか [611] 抗告人は、仮に抗告人の信者らが違法な献金の勧誘をしているというのであれば、解散命令より制限的でない手段(LRA)である不当寄附勧誘防止法に基づく措置を執るべきであるところ、こうした措置は執られていないと主張する。 [612] 不当寄附勧誘防止法6条、7条2項~4項及び16条は、法人が同法3条(寄附の勧誘を行うに当たっての配慮義務)の規定を遵守していないため、当該法人から寄附の勧誘を受ける個人の権利の保護に著しい支障が生じていると明らかに認められる場合や、法人が不特定又は多数の個人に対して同法4条(寄附の勧誘に関する禁止行為)又は5条(借入れ等による資金調達の要求の禁止)の規定に違反する行為をしていると認められる場合において、一定の要件の下、内閣総理大臣が当該法人に対して勧告等をすることができる旨を定めており、当該法人が勧告等に従わなかった場合については、公表や刑事罰による制裁に関する規定を定めている。 [613] しかしながら、上記アの説示に鑑みれば、抗告人が、不当寄附勧誘防止法に基づく勧告等や制裁を受けたとしても、信者らによる不相当献金等勧誘行為等の根本的な原因が抗告人にあることを認めて、抜本的・恒久的措置として実効性のある不相当献金等勧誘行為等防止措置や数値目標緩和措置を執るとは考え難い。 [614] よって、不当寄附勧誘防止法に基づく勧告等や制裁の措置は、抗告人の信者らによる不相当献金勧誘行為を防止するための実効性のある手段とはなり得ないというべきである。 [615] 抗告人の信者らによる不相当献金勧誘行為を防止するための実効性のある手段は、抗告人の解散命令以外には見当たらない。 ウ 小括 [616] 以上のとおり、 ① 抗告人が、今後、再び、献金収入の予算額を引き上げ、信者らに対し、社会通念上相当な範囲を逸脱しない方法・態様による勧誘では達成できないような数値目標を定めて献金の勧誘を行うよう求めるおそれがあると認められ、その場合、信者らは不相当献金勧誘行為を行う可能性が高いこと(上記ア)、 ② 抗告人が、今後、不相当献金勧誘行為を防止するための実効性のある対策を自発的に執ることは期待し難く、抗告人の解散を命ずることは、信者らによる不相当献金勧誘行為を防止するための実効性のある手段となり得ること(上記ア)、 ③ 抗告人の信者らによる不相当献金勧誘行為を防止するための実効性のある手段は、抗告人の解散命令以外に見当たらないこと(上記イ) からすれば、抗告人の信者らによる不相当献金勧誘行為を防止するため、抗告人の解散を命ずる必要性があるというべきである。 [617] なお、抗告人は、民事訴訟の判決において命じられた損害賠償債務を全て履行してきたこと、訴訟上の和解や訴訟外の示談の和解金等は全て支払済みであることからすれば、抗告人の解散を命ずる必要性及び緊急性は存在しない旨の主張をする。しかしながら、上述したとおり、抗告人の解散を命ずる必要性があるといえるのは、既に発生した被害の回復を図るためではなく、抗告人の信者らが今後再び不相当献金勧誘行為を行うことを防止するためである。そして、抗告人が「補償」と称する被害回復のための対応を行っていることを考慮しても、抗告人が、今後、再び、献金収入の予算額を引き上げ、信者らに対し、社会通念上相当な範囲を逸脱しない方法・態様による勧誘では達成できないような数値目標を定めて献金の勧誘を行うよう求めるおそれがあると認められることについては、上記第4の4(3)ウで説示したとおりであり、その場合、信者らが不相当献金勧誘行為を行う可能性が高いことは、上記第4の4(3)エで説示したとおりである。よって、抗告人の上記主張は、採用することができない。 (3) 解散命令が宗教団体としての「世界平和統一家庭連合」及びその信者ら並びに抗告人の職員らの法的地位及び権利関係に及ぼす影響 [618] 次に、解散命令が、宗教団体としての「世界平和統一家庭連合」及びその信者ら並びに抗告人の職員らの法的地位及び権利関係に及ぼす影響について検討する。 ア 抗告人の主張 [619] 抗告人は、 ① 解散命令が出れば、抗告人の信者が、礼拝・集会の施設を奪われ、説教者も解雇されていなくなり、団体を結成して組織として宗教活動を行うことができなくなるから、抗告人自身及びその信者らの宗教結社の自由(憲法20条1項)が直接制約されることになる、 ② 本件銃撃事件後に偏向報道がされ、相手方から解散命令の請求がされたことを受け、抗告人の信者に対する犯罪行為、社会的差別・疎外及び迫害が頻発し、深刻な人権侵害が発生しており、二世信者の自殺者まで出ている状況にあるところ、解散命令が出れば、社会的波及効果として、社会的差別・疎外及び迫害が激化し、極めて深刻な人権侵害が生じることは必定である、 ③ 国際結婚により日本に在住する外国人信者及びその家族は1万人を超えるところ、外国人信者にとって、抗告人の教会施設は、日本国内で生きていく上で欠かせない社会的コミュニティの場であり、解散命令によって外国人信者及びその家族が日本国内の居場所を失うことになれば、家庭離散・家庭崩壊などの甚大な被害を生じ、国際問題を引き起こしかねない、 ④ 抗告人の教義に基づき結ばれた夫婦から生まれた二世信者らは、その出自・アイデンティティが信仰と密接にかかわることから、解散命令により、自己の存在意義と価値そのものを否定されたに等しい精神的苦痛を被ることになる として、抗告人の解散を命ずることは、憲法11条(基本的人権の享有)、13条(幸福追求権)、14条1項(法の下の平等)、20条1項(信教の自由)、22条1項(居住、移転及び職業選択の自由)に違反する旨を主張する。 [620] また、抗告人は、⑤令和6年9月30日現在、1933名の職員とその扶養家族2441名を抱えているところ(乙O13〔別紙1〕)、解散命令の直接的な法律効果として、抗告人の全職員が解散命令後の清算結了時までに必ず解雇され、職員及び家族の生存権(憲法25条1項)や扶養子弟の教育を受ける権利(憲法26条1項)が脅かされることになるから、抗告人の解散を命ずることは、憲法25条1項、26条1項に違反するとも主張する。 [621] そして、二世信者であり抗告人の職員でもある証人G及び日本在住の外国人信者である証人Fは、当審の証人尋問において、上記①~⑤と同旨の証言をする。また、抗告人は、上記①~⑤に沿う証拠として、信者や職員その他の関係者の陳述書等(乙E号証、乙J号証、乙K号証、乙N号証、乙O号証。証人Gの陳述書〔乙K24、乙O446〕及び証人Fの陳述書等〔乙E205、205の2〕を含む。)を提出する。 イ 解散命令が宗教団体としての「世界平和統一家庭連合」及びその信者らの法的地位及び権利関係に及ぼす影響(上記ア①~④の主張)について [622] 確かに、上記(1)アで述べたとおり、抗告人の解散命令が確定したときは、その清算手続が行われ、その結果、宗教法人に帰属する財産で礼拝施設その他の宗教上の行為の用に供していたものも処分されることになるから、これらの財産を用いて信者らが行っていた宗教上の行為を継続することに何らかの支障を生ずることがあり得ることが認められる。しかし、その支障は、解散命令に伴う間接的で事実上のものであるにとどまる。 [623] また、解散命令によって抗告人が解散しても、 ① 抗告人の幹部や信者らが、法人格を有しない宗教団体として「世界平和統一家庭連合」を存続させ、あるいは、新たに宗教団体を結成することが妨げられるわけではなく、組織として宗教活動を行うことができなくなるわけではないし、 ② 抗告人の外国人信者ら及びその家族が日本国外への移住や職業の変更を強いられるわけでもなく、 ③ 抗告人の信者らの存在意義や価値そのものが否定されるわけでもない。 [624] そもそも、抗告人の信者らにより不相当献金等勧誘行為等が行われてきた根本的な原因は、抗告人の会長を初めとする幹部が、文鮮明(その死後は後継者の韓鶴子)の方針を踏まえ、信者らに対し、社会通念上相当な範囲を逸脱しない方法・態様による勧誘では達成できないような数値目標を定めて献金や物品の購入の勧誘を行うよう求めたことにあるのであり、抗告人の信者らが、抗告人の解散命令によって、社会的差別・疎外や迫害を受けるいわれはない(そもそも、いかなる理由があろうとも、抗告人の信者らに対する社会的差別・疎外や迫害が許されるものでないことはいうまでもない。)。 ウ 解散命令が抗告人の職員らの法的地位及び権利関係に及ぼす影響(上記ア⑤の主張)について [625] 確かに、上記(1)イで述べたとおり、解散命令により宗教法人が解散し、その清算の結了等により法人格が消滅した場合には、その時点まで存続していた宗教法人の職員と当該宗教法人との間の雇用契約は終了するものと解される。しかしながら、抗告人は、法人格を失ったとしても、その実体がある限り、法人格を有しない宗教団体としては存続し得るのであるから、職員と抗告人との間の雇用契約は、法的には終了することになるものの、職員と当該宗教団体との間の雇用契約として存続する可能性がある。また、仮に、職員と当該宗教団体との間の雇用契約が成立しなかったとしても、当該職員は、雇用保険や生活保護等の社会保障給付を受け得るのであるから、直ちに、当該職員やその家族の生存権(憲法25条1項)や扶養子弟の教育を受ける権利(憲法26条1項)が侵害されるということにはならない。 エ 小括 [626] 以上によれば、抗告人が主張し、証人G及び証人Fが証言し、同証人らを含む抗告人の信者や職員その他の関係者の陳述書等(乙E号証、乙J号証、乙K号証、乙N号証、乙O号証)に顕れた諸事情を考慮しても、抗告人の解散を命ずることにより、宗教団体としての「世界平和統一家庭連合」及びその信者ら並びに抗告人の職員らの憲法上の権利を含む法的地位及び権利関係に、看過し難い影響が及ぶということはできない。 (4) 総括 [627]ア 上記(1)から(3)までの検討結果を総合すると、宗教団体としての世界平和統一家庭連合及びその信者ら並びに抗告人の職員らの憲法上の権利を含む法的地位及び権利関係に及ぼす影響を考慮してもなお、信者らによる不相当献金勧誘行為を防止するため、抗告人の解散を命ずることが、必要でやむを得ないといわざるを得ない。また、抗告人の解散を命ずることが、憲法11条、13条、14条1項、20条1項、22条1項、25条1項、26条1項に違反するともいえない。 [628]イ なお、抗告人は、 ① 宗教法人の解散を命ずるためには、解散を命ずる必要性及び緊急性が存在することが必要不可欠であるところ、本件においては、そのような必要性及び緊急性は存在しない、 ② 宗教法人の解散命令が憲法20条1項に違反するか否かを審査するに当たっては、厳格な基準を採用すべきであるところ、(a)抗告人の解散を命ずることが、やむにやまれぬ重大な公益を保護するために必要不可欠であること、(b)公益に対する明白かつ現在の危険が存在すること、(c)抗告人の解散を命ずることにより公益の保護を達成できることが証拠によって裏付けられていること、(d)解散命令以外のより制限的でない手段(LRA)によってはその目的を達成することができないこと、のいずれの要件も満たされていない、 ③ そうすると、本件において、抗告人の解散を命ずることは、「必要でやむを得ない」ということはできず、憲法20条1項に違反する と主張する。 [629] 抗告人の上記主張は、上記(2)及び(3)に説示する事情だけでは抗告人の解散を命ずることが「必要でやむを得ない」ということができないという趣旨であると解されるが、その主張は、上記(1)の説示(とりわけ、解散命令は、信者の宗教上の行為を禁止したり制限したりする法的効果を一切伴わないこと)に鑑み、採用することができない。 [630] 以上によれば、①抗告人について宗教法人法81条1項1号に該当する事由があると認められ、②抗告人の解散を命ずることが、抗告人の信者ら等の法的地位や権利関係に及ぼす影響を考慮してもなお、必要でやむを得ないといえるから、抗告人の解散を命ずるべきである。 [631] 抗告人は、 ① 本件確定判決は、「社会的相当性」や「公序良俗」といった社会規範の逸脱又は違反を理由として献金等勧誘行為等の違法性を認定しているが、こうした社会規範の内容は、法定されておらず、一般人に対して予測可能な基準を提供するものではなく、このようにあいまいかつ不明確な基準で解散命令の可否を決定するのは、「宗教又は信念を表明する自由については、法律で定める制限であつて公共の安全、公の秩序、公衆の健康若しくは道徳又は他の者の基本的な権利及び自由を保護するために必要なもののみを課することができる。」と定める自由権規約18条3項に違反し、かつ、憲法98条2項に違反する、 ② 宗教法人法81条1項1号は、「著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為をしたこと」と定めるところ、「公共の福祉」は、自由権規約18条3項において宗教的表現の自由に対する制約が許される事由として列挙されておらず、かつ、その内容が法定されていないことからすれば、「公共の福祉」の侵害を理由として宗教法人の解散を命ずることができるとする宗教法人法81条1項1号は、自由権規約18条3項に違反すると主張する。 [632] しかしながら、解散命令は、宗教法人の法人格を失わせる効力を有するにとどまり、信者の宗教上の行為を禁止したり制限したりする法的効果を一切伴わないものであるところ(上記第5の2(1)ア参照)、ある行為が宗教法人法81条1項1号所定の行為に当たるといえるためには、その行為が単に法令に違反するだけでなく、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為でなければならないことなどに照らせば、宗教法人法81条1項1号の規定が、宗教法人の解散命令の事由を定めるものとして、不明確であるとも過度に緩やかであるともいえない(令和7年最決参照)。また、民法709条の不法行為を構成し、かつ、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為は、自由権規約18条3項にいう「公共の安全、公の秩序、公衆の健康若しくは道徳又は他の者の基本的な権利及び自由」を侵害する行為に該当するといえる。そして、抗告人の信者らによる不相当献金等勧誘行為等が不法行為に該当するとの本件確定判決の判断は、その行為態様に照らせば、民法709条の解釈・適用として合理的かつ明確であって、一般人にも十分に予測可能であるといえる。 [633] 以上によれば、自由権規約18条3項及び憲法98条2項違反をいう抗告人の上記主張は、いずれも採用することができない。 [634](1) 証拠によれば、以下の事実が認められる。 [635]ア 内閣は、国会法74条に基づく参議院議員の質問に対し、令和4年10月14日、以下のとおり答弁した。(乙A7) [636] 宗教法人法(昭和26年法律第126号)第81条第1項は「裁判所は、宗教法人について左の各号の一に該当する事由があると認めたときは、所轄庁、利害関係人若しくは検察官の請求により又は職権で、その解散を命ずることができる」と定めているが、憲法の定める信教の自由の保障及び宗教法人法の趣旨を踏まえれば、宗教法人については、所轄庁による関与は抑制的であるべきであり、法人格を剥奪するという極めて重い措置である解散命令の請求については、十分慎重に判断すべきであると考えている。[638]イ 岸田元首相(当時の内閣総理大臣)は、令和4年10月18日、衆議院予算委員会において、 「宗教法人の解散事由については、平成7年に東京高等裁判所が示し、そして平成8年に最高裁判所で確定した判決において考え方が示されております。その中に、法人の代表役員が法人の名の下で取得した財産や人的、物的組織等を利用して行った行為であること、また、社会通念に照らして当該法人の行為と言えること、そしてもう一つ、刑法等の実定法規の定める禁止規範又は命令規範に違反するものであること、こういった要件を満たし、それが著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為、又は宗教団体の目的を著しく逸脱したと認められる行為であることが客観的な事実として明白であることが必要、こうした考え方が示されております。刑法等の実定法規、このように記されています。これをどう解釈するのかということであります。」と答弁し、さらに、「禁止規定と命令違反というのは、民法の、今おっしゃった不法行為ですね、組織的、これは入らないという理解ですね。」との議員の質問に対し、 「おっしゃるように、民法の不法行為、これは入らないという解釈であります。」と答弁した。(乙A10) [639]ウ 岸田元首相(当時の内閣総理大臣)は、令和4年10月19日、参議院予算委員会において、以下のとおり答弁した。(乙A11) [640] 御指摘のように、昨日、宗教法人の解散命令の要件として、東京高等裁判所が示した刑法等の実定法規の定める禁止規範又は命令規範について民法上の不法行為は入らないと答弁いたしましたのは、この決定の内容についてのお尋ねがありましたので、これまでの考え方を説明したものであります。これまでは、高等、東京高等裁判所決定に基づき、刑法等の実定法規の定める禁止規範又は命令規範は、刑法など罰則により担保された実定法規が典型例と解してきたところであります。[645]エ 最高裁判所は、令和7年3月3日、令和7年最決において、民法709条の不法行為を構成する行為は、宗教法人法81条1項1号にいう「法令に違反」する行為に当たると解するのが相当であるとの判断を示した。(甲C13) [646]オ 本件の原審は、令和7年3月25日、令和7年最決を引用し、民法709条の不法行為を構成する行為は、宗教法人法81条1項1号にいう「法令に違反」する行為に当たると解するのが相当であると判断した上で、抗告人について同号に該当する事由があると認められるとして、抗告人の解散を命ずる原決定をした。(当裁判所に顕著な事実) [647](2) 抗告人は、上記(1)の事実関係の下、 ① 政府は、宗教法人法81条1項1号にいう「法令に違反」とは刑事事件のみを指すとの見解を明確に示していたにもかかわらず、令和4年10月19日、一夜にして法解釈を変更し、民法上の不法行為であってもこれに該当する旨の見解を示した、 ② この法解釈が、最高裁判所の追認により公権的に確定したのは、令和7年3月3日である、 ③ そうであるにもかかわらず、令和4年10月19日又は令和7年3月3日より前の不法行為を理由として、抗告人の解散を命ずることは、遡及処罰を禁止する憲法39条前段の趣旨に違反する と主張する。 [648] しかしながら、内閣による法解釈は、裁判所を拘束するものではないから、内閣による宗教法人法81条1項1号の解釈の変更によって、宗教法人が解散命令を受けるか否かが変わるという関係にはない。したがって、仮に内閣による同号の解釈に変更があったとしても、裁判所が、同号について変更後の内閣の解釈と同様の解釈をした上で、内閣による法解釈の変更前の抗告人の行為につき、同号を適用して、抗告人の解散を命ずることが、憲法39条前段の定める遡及処罰の禁止の趣旨に反するということはできない。 [649] また、最高裁判所が、令和7年最決より前に、民法709条の不法行為を構成する行為は宗教法人法81条1項1号にいう「法令に違反」する行為に当たらないとの判断を示した事実はない。 [650] 以上によれば、抗告人の上記主張は、採用することができない。 [651](3) 抗告人は、上記(1)の事実関係の下、 ① 抗告人の解散を命じた原決定が、本件銃撃事件の原因が抗告人にあるかのような誤った報道とこれにあおられた世論を背景に、「何としても抗告人を解散させる」という国家的意図からされたものであることは、一夜にして不可解な法解釈の変更がされた事実、原決定の直前の令和7年3月3日に令和7年最決が明らかに文理に反する強引な拡張解釈を強行したことからみて明らかである、 ② そうすると、原決定は、抗告人という特定の宗教に対する恣意的な「狙い撃ち」であって、憲法20条1項の保障する信教の自由を直接的に侵害するものである、 ③ また、原決定は、国が抗告人を弾圧しようとする「宗教的意義」ある目的をもって行われたものであるから、抗告人に対して「圧迫、干渉を加えるもの」(最高裁平成9年4月2日大法廷判決・民集51巻4号1673頁)に該当するものであって、憲法20条が制度として保障する政教分離原則に違反する と主張する。 [652] しかしながら、本件銃撃事件後の報道や世論、上記(1)の内閣による法解釈の経緯及び令和7年最決の時期や内容から、原決定が「何としても抗告人を解散させる」という国家的意図や抗告人を弾圧しようとする目的で抗告人の解散を命じたと推認することはできない。ほかに、原決定が、このような意図や目的で抗告人の解散を命じたと認めるに足りる証拠はない。 [653] よって、抗告人の上記主張は、前提を欠くものであって、採用することができない。 [654] 抗告人は、 ① 解散命令の手続は、国が宗教法人に対して解散という不利益処分を命じることが許容されるか否かという「法律関係の存否」に関する紛争であるから、「純然たる訴訟事件」及び「法律上の争訟」に該当することが明らかである、 ② 解散命令は、宗教法人に対する死刑に相当する極めて重い処分であり、国家と宗教法人の間の対立的な紛争であるなどと主張し、解散命令に対する即時抗告の審理について、漫然と非公開の非訟事件手続によると定めた宗教法人法81条7項は、憲法32条及び82条に違反する と主張する。 [655] 憲法82条1項は、「裁判の対審及び判決は、公開法廷でこれを行ふ。」と規定しているが、この規定にいう裁判とは、現行法が裁判所の権限に属せしめている一切の事件につき裁判所が裁判という形式をもってするすべての判断作用ないし法律行為を意味するものではなく、そのうち固有の司法権の作用に属するもの、すなわち、裁判所が当事者の意思いかんにかかわらず終局的に事実を確定し当事者の主張する実体的権利義務の存否を確定することを目的とする純然たる訴訟事件についての裁判のみを指すものと解すべきである(最高裁昭和35年7月6日大法廷決定・民集14巻9号1657頁、昭和40年6月30日大法廷決定・民集19巻4号1089頁、昭和40年6月30日大法廷決定・民集19巻4号1114頁、昭和41年3月2日大法廷決定・民集20巻3号360頁、昭和45年6月24日大法廷決定・民集24巻6号610頁等参照)。 [656] 上記第5の2(1)アで説示したとおり、宗教法人法81条1項は、宗教団体に法律上の能力を与えたままにしておくことが不適切あるいは不必要となる一定の事由がある場合、公益的見地から、その法人格を失わせるため、裁判所に宗教法人の解散を命ずる権限を与えたものと解される。同項は、裁判所が、「所轄庁、利害関係人若しくは検察官の請求により」宗教法人の解散を命ずることができる旨を定めるが、上記のような解散命令の制度の趣旨・目的に照らせば、これは、同項に定める者が、裁判所に対し、宗教法人の解散を命ずる権限の行使を請求できる旨を定めたものと解すべきであって、同項に定める者に対し、宗教法人を直接の相手方として解散するよう求めることができる実体的な権利を与えたものとは解されない。 [657] そうすると、宗教法人の解散命令は、裁判所が、相対立する当事者の間において、当事者の意思いかんにかかわらず、終局的に事実を確定し、当事者の主張する実体的権利義務の存否を確定することを目的とする純然たる訴訟事件についての裁判とはいえない。 [658] このことは、解散命令に対する即時抗告に係る裁判についても同様に当てはまるというべきである。この点につき、抗告人は、仮に、宗教法人の解散命令が行政庁の行う行政処分であるとすれば、これに対する取消訴訟が公開で審理されたはずであるところ、宗教法人法が、信教の自由の保障の見地から、解散命令の権限を、行政庁ではなく裁判所に与えたことが仇となり、解散命令に対する不服申立ての審理が非公開の手続により行われることは、矛盾であって背理であると主張する。しかしながら、宗教法人の解散命令は、行政庁の行う行政処分ではなく、裁判所の行う司法上の決定であり、その決定に対する即時抗告を、行政処分に対する取消訴訟と同視することはできないというべきである。 [659] なお、抗告人は、解散命令に関する事件は、憲法82条2項ただし書にいう「憲法第三章で保障する国民の権利が問題となつてゐる事件」に該当するとも主張するが、同項ただし書は、同条1項により公開が義務付けられる事件の対審について、公開しないで行うことができる場合を定める同条2項本文の例外を定めた規定であり、そもそも同条1項により公開が義務付けられない事件の対審については適用されないものと解すべきである。 [660] よって、抗告人の上記主張は、採用することができない。 [661] 以上によれば、宗教法人法81条1項1号に基づき、抗告人の解散を命ずるべきであり、これと同旨の原決定は相当である。よって、本件抗告は理由がないからこれを棄却することとして、主文のとおり決定する。 裁判長裁判官 三木素子 裁判官 下馬場直志 裁判官 南宏幸 第一 抗告の趣旨 第二 事案の概要 第1 事案の要旨……[1] 第2 前提事実……[3] 1 当事者……[4] 2 抗告人の信者らの行為に関する民事訴訟及び刑事訴訟の係属……[6] 3 抗告人によるいわゆる「コンプライアンス宣言」の発出等……[10] 4 元内閣総理大臣に対する銃撃事件の発生……[15] 5 解散命令の請求……[17] 第3 相手方及び抗告人の主張の要旨 1 相手方の主張の要旨……[20] 2 抗告人の主張の要旨……[28] 第三 当裁判所の判断……[39] 第1 認定事実①……[40] 1 抗告人の概要、組織、収入及び予算……[41] 2 文鮮明及びその活動、抗告人による海外の宣教活動の支援……[49] 3 「万物復帰」等の抗告人の教義及び文鮮明や抗告人の幹部の発言……[56] 4 株式会社ハッピーワールド及び「全国しあわせサークル連絡協議会」や「信徒会」と称される活動体の活動……[67] 5 献金の勧誘等に関するマニュアルや数値目標を記載した文書等……[85] 6 抗告人に対する損害賠償請求の状況……[98] 7 抗告人の信者らによる物品の販売についての刑事訴訟の状況……[110] 第2 認定事実①を踏まえた検討 1 略称……[111] 2 本件確定判決を踏まえた抗告人の信者らによる不法行為に関する検討……[121] 3 本件確定判決を踏まえた抗告人の関与に関する検討……[163] 4 本件和解を踏まえた検討……[212] 5 総括……[226] 第3 認定事実②……[231] 1 コンプライアンス宣言及びこれを踏まえた抗告人の対策……[232] 2 コンプライアンス宣言後の抗告人における献金収入等の実情……[373] 3 抗告人の信者らによるコンプライアンス宣言後の不相当献金等勧誘行為等の状況及び損害賠償請求等の状況……[419] 第4 認定事実②を踏まえた検討 1 抗告人が執るべきであった対策……[494] 2 抗告人がコンプライアンス宣言を踏まえて本件銃撃事件までに行った対策についての検討・評価……[498] 3 コンプライアンス宣言後の抗告人の信者らによる不法行為及び抗告人の関与に関する検討……[530] 4 抗告人が本件銃撃事件後に行った対策等についての検討・評価……[541] 5 総括……[575] 第5 解散命令の可否……[580] 1 抗告人について宗教法人法81条1項1号に該当する事由があると認められるか……[581] 2 抗告人の解散を命ずることが、抗告人の信者ら等の法的地位や権利関係に及ぼす影響を考慮してもなお、必要でやむを得ないといえるか……[600] 3 結論……[630] 第6 抗告人のその他の主張に対する判断 1 市民的及び政治的権利に関する国際規約18条3項等違反に関する主張について……[631] 2 内閣の法解釈及び令和7年最決に関連する憲法違反の主張について……[634] 3 憲法32条及び82条違反に関する主張について……[654] 第四 結論……[661] (別紙1-1)本決定の目次 (別紙1-2)略称一覧表 (別紙2-1)本件確定判決一覧表 (別紙2-2)本件確定判決の判断の概要 (別紙3-1)本件和解一覧表 (別紙3-2)その他の和解一覧表 (別紙4)示談一覧表 (別紙5)刑事訴訟一覧表
※ 抗告人の信者らの行為の不法行為該当性及び抗告人に係る使用者責任等の成否に関する各確定判決の判断の概要は、別紙2-2「本件確定判決の判断の概要」に記載のとおりである。 ※ 「認定された財産上の損害」欄、「認定された慰謝料」欄、「認定された逸失利益」欄に斜線〔─で代替〕を付したものは、請求がされなかったことを意味する。 ※ 「不法行為と認定された抗告人の信者らの行為の概要」欄(対象者番号137番、139番、140番)においては、平成22年以降の支出であることが明らかな金額を下線付きの太字で示した。 ※ 本件確定判決においては、抗告人と区別して「統一教会」又は「統一協会」との文言が使用されていることがある。別紙2-1、2-2においては、その場合、「統一教会」との文言を使用することとした。 ※ 本件確定判決において、以下の各用語は、それぞれに掲げる内容を意味するものとして使用されている。
[1] 以下、「対象者番号」とは、別紙2-1「本件確定判決一覧表」の対象者番号を意味する。対象者番号1~140番の対象者である原告ら(ただし、原告とはなっていない対象者番号90番、135番の対象者を除く。)につき、順に「原告1」~「原告140」との略称を付し(「原告90」、「原告135」との略称は付されないこととなる。)、対象者番号90番、135番の対象者につき、「対象者90番」、「対象者135番」との略称を付する。対象者以外の個人(抗告人の信者ないし関係者)の氏名には、原則として、事件ごとに小文字のアルファベットの仮称を付する。 1 原告1に対する献金勧誘行為の違法性 [2] ① 原告1は、抗告人の信者であるaらによって霊界のことや統一原理等を内容とするビデオを見せられたり、先祖の因縁を説き聞かされたりした上で500万円の献金や700万円の献金等をさせられるなど、既に因縁の話や霊界で亡夫が苦しんでいることがあたかも真実であるかのように同原告に思わせる状況が作出され、同原告もこれを真に受けていたこと、 ② このような状況に乗じて、抗告人の信者であるbらは、同原告に対する教育予定を組み、予め把握していたものと思われる同原告の所持する亡夫の生命保険金額に基づいて献金額を決定し、これを同原告から献金させるべく、10日間の講習によって統一原理等を集中的に教育した後に同原告をマンションの一室に呼び出していること、 ③ 4畳半の比較的狭い個室において、約6時間余りの長時間にわたり、bが同原告に対してその家系図を示すなどして再三強い口調で先祖の因縁や献金に応じなければ不幸が起こるなどと執拗に害悪を説き、抗告人の信者であるcらが同原告の両脇に座ってその手を握り、bの話に呼応して献金を促すなどして、同原告を退去することもままならない、いわば軟禁状態といっても過言でない状況に置いて、同原告の不安をあおり、同原告を困惑に陥れて3000万円の献金を承諾させ、さらに、その献金について、同原告に対して口止めをしていたこと、 ④ そして、その結果、同原告は、その取得した亡夫の生命保険金の大部分を出捐してしまったこと が認められる。そうすると、抗告人の信者であるbらによる同原告に対する3000万円の献金勧誘行為は、その目的、方法、結果において、社会的に相当な行為であるということはできず、民法709条に定める違法な行為といわなければならない。 2 原告2に対する献金勧誘行為の違法性 [3] 原告2は、 ① ビデオにより抗告人の教義等の講習を受けた後、同原告の他に抗告人の信者であるdとeのみが在室する博多教育文化センターの個室内において、eから、心情話や悩み事を聞かれた後、その悩み事や内縁の夫の死亡が母方の祖母の因縁であるなどの因縁話や亡夫の訴えを強い口調で言われたうえで、その因縁を清算するための献金が要求され、さらに直ちにその要求に応じなければ救われないなどと言われて長時間にわたる執拗な勧誘を受けたこと、 ② その結果、直ちに献金に応じなければならないような状況に追い込まれて不安に駆られ、困惑に陥ったために、210万円の多額な献金を承諾したこと、 ③ 同原告の献金額は、あらかじめ決定されていたばかりでなく、その後も抗告人の信者らによる同原告に対する金銭の出捐要求がされていること、 ④ eらは、同原告に対し、その献金について口止めをしていたこと が認められる。そうすると、抗告人の信者であるeらによる同原告に対する210万円の献金勧誘行為は、その目的、方法、結果において、社会的に相当な行為であるということはできず、民法709条に定める違法な行為といわなければならない。 3 抗告人の使用者責任 [4] ① 原告1に対する3000万円の献金勧誘に関与したb、c及びf、原告2に対する210万円の献金勧誘に関与したd及びeは、いずれも抗告人の信者であるが、特に、b、d及びfは、いずれも、統一原理を受け入れて身も心も抗告人に捧げるべく、仕事を辞め、家族から離れてホームと呼ばれる場所で他の信者と共同生活をするなどしながら抗告人のために活動を行う献身をしていた者であること、 ② dは、原告2の210万円の献金を勧誘した当時、抗告人の教義の内容を成す万物復帰といわれるものは、サタンに奪われた財産を神の側に取り戻すことを意味する教えであり、いわゆる霊感商法や抗告人への献金を求める行為はその教えに基づいた実践であると理解していたものであり、同じく抗告人に献身して印鑑の訪問販売などの活動をしていた抗告人の元信者であるgやhも、dと同趣旨の理解をしていたこと、 ③ 原告1の3000万円の献金は、cを介して抗告人のもとに受け入れられており、その際、抗告人福岡教会において、教会長が礼を述べるとともに、献金の使途先として抗告人と関係がある事業の説明をし、抗告人の信者らによる祝福のための儀式が行われていること が認められる。さらに、 ④ 原告2が210万円の献金をした場所は、原告2に対して抗告人の教義についての講義やその教祖文鮮明をメシヤの再臨として教えた博多教育文化センターであることが認められ、 ⑤ 同献金の際のeの発言内容や原告2の認識内容等からすると、原告2の210万円の献金も抗告人のもとに受け入れられたものと推認するのが相当である。 [5] 以上の事実からすると、原告らに対する献金勧誘行為を行った抗告人の信者らのうち、多くの者が抗告人に献身し、その指揮に従っていたものと認められるので、抗告人と同信者らとの間には実質的な指揮監督の関係があったものと認められ、したがって、同信者らは、民法715条に定める抗告人の被用者の地位にあるものと断ずるのが相当である。そもそも、同信者らの献金勧誘行為の対象は宗教的活動の場における献金であり、しかも、その帰属先は抗告人と認められるのであるから、抗告人の宗教活動に密接に関連しているものといえるばかりでなく、献金勧誘行為そのものが抗告人の教義に基づく実践行為であると認められ、あまつさえ、原告1に対しては抗告人の福岡教会において祝福の宗教的儀式も執り行われているのであるから、民法715条に定める抗告人の「事業の執行につき」という要件を十分に充足しているものと認めるのが相当である。そうすると、抗告人は、抗告人の信者らによる原告らに対する違法な献金勧誘行為について、民法715条に定める使用者責任を負っていることになる。 1 原告3に対する献金勧誘行為の違法性 [6] 原告3に対する抗告人の信者らによる本件献金勧誘行為には、 ① 予め財産の把握が行われた上、執拗に献金の勧誘が行われていること、 ② 勧誘の当初において宗教であることを明確に否定していること、 ③ 同原告の身上及び本件献金勧誘行為を受けた当時の健康状態及び精神状態(夫が原因不明の難病にかかり、寝たきりの状態になった末、死亡したこと。同原告が、夫を亡くした直後に看病疲れのため胃潰瘍となり、入院するなどしたこと。30歳を超える長男がいまだ独身であったため、その結婚について心配していたこと。)に照らせば、因縁話等による不安感等を覚えやすい状態にあったものといえるところ、家系図を示して具体的にかつ執拗に、 「色情因縁がある」、「絶家の因縁がある」、「自分の代で因縁を取り除いておかないと孫子に因縁が出てくる」などと因縁話がなされ、抗告人の信者組織の運営する奈良カルチャーセンターにおける同原告の受講内容は、6回に及ぶaのカウンセリングや、3日連続の個人路程(人生の中での出来事を告白文のような形で書かせるもの)など、個人の抱える悩み等を十分聞き出した上で、これに応じた因縁話等をするという内容であり、同原告の不安感を助長させていること、 ④ 姓名判断が用いられていない外は奈良地区における多数の者に対する抗告人への献金勧誘と同様の勧誘方法が行われていること、 ⑤ 奈良カルチャーセンターでの受講につき他言を禁じられたこと などの点が認められる。以上からすれば、同原告に対する抗告人の信者らによる本件献金勧誘行為は、奈良カルチャーセンターを運営する抗告人の信者組織の活動として、組織的な献金勧誘行為の一環としてなされたものであり、その目的、手段及び結果は社会通念上相当な範囲を超えているというべきであるから、抗告人の信者らの同行為には違法性があるといわなければならない。 2 原告4に対する献金勧誘行為の違法性 [7] 原告4に対する抗告人の信者らによる本件献金勧誘行為には、 ① 統一教会であることを明確に否定して献金勧誘行為が行われていること、 ② 予め財産の把握がなされ、これに基づき献金額及び献金に至るまでのスケジュールが決められていたこと、 ③ 家系図を示すなどして、 「先祖が今までの恨みのようなものをもっていて、子供ができない」などと具体的に因縁話が行われていること、 ④ 受講につき他言を禁じられていること、 ⑤ 抗告人の信者組織が運営する東大阪カルチャーセンターにおいて行われた多数の者に対する抗告人への献金勧誘と同様の方法であること などの点が認められる。以上によれば、同原告に対する抗告人の信者らによる本件献金勧誘行為は、東大阪カルチャーセンターを運営する抗告人の信者組織の活動として、組織的な献金勧誘行為の一環としてなされたものであり、その目的、手段及び結果は社会通念上相当な範囲を超えているというべきであるから、抗告人の信者らの同行為には違法性があるといわなければならない。 3 抗告人の使用者責任 [8] 抗告人の信者による原告らに対する本件各献金勧誘行為は、抗告人の信者組織(信徒会)の活動としてなされたものである。しかし、宗教法人は、その信者組織がその宗教法人の教義とは異質の理念に基づいて活動しているなどの特段の事情のない限り、その信者組織に対して、実質的な指揮監督関係を有していると認めるのが相当であるところ、本件においては、全証拠によるも同特段の事情を認めることはできない。かえって、 ① 抗告人の信者組織は抗告人の信者を獲得するための活動をしていること、 ② 抗告人の奈良教会長であったb及び東大阪教会長であったcは、その前に抗告人の信者組織の職員であり、このことからすると抗告人の職員と抗告人の信者組織とは人的交流があると認められること、 ③ 抗告人の信者組織の構成員である抗告人の信者らは、抗告人の教義の実践として、抗告人の信者組織の活動に従事していたこと からすれば、抗告人の信者組織と抗告人とは実質的に一体の関係にあると推認される。したがって、抗告人と本件各献金勧誘行為をした抗告人の信者らとの間には、実質的な指揮監督関係があったというべきである。そして、本件各献金は、抗告人に対してなされたものであるから、本件各献金勧誘行為は、抗告人の宗教活動に密接な関係があり、かつ抗告人はこれにより利益を得ているものといえるから、抗告人の事業の執行についてなされたものといわなければならない。そうであれば、抗告人は、民法715条に基づき、原告らに対し、同人らが本件各献金勧誘行為によって被った損害を賠償すべき責任があるといわなければならない。 [9] 抗告人は、抗告人の信者組織は抗告人とは別個の組織であって、同組織に対して指揮監督関係はなく、その不法行為を防止する可能性はないから、民法715条による責任を負わないと主張するが、上記説示に照らし採用できない。 1 原告5に対する献金勧誘行為の違法性 [10] aらによる原告5に対する献金の勧誘行為は、 ① 抗告人の信者組織が地区ごとに献金の目標額を定め、献金説得のビデオを作成し、予め周到に同原告の資産や家系について聞き出し、肉親を次々に亡くし、長男の養育問題に悩んでいた同原告の心情的な弱点を詳しく調査把握した上で、 ② 同原告の相談に乗るなどしてその信頼を得たbにおいて、霊能力の高い者であるとしてaを同原告に引き合わせ、横浜フォーラムにおいて、aから同原告に対し、その祖父母、両親、実兄らの死亡した原因は祖先の因縁によるものであって、その害悪が同原告の子供の早死や絶家をもたらす運命にあり、これを救うためには、献金をしなければならないと説き、 ③ 同原告がaの説明に抵抗感を覚えたり、知人からの助言を得て抗告人から遠ざかりかけるや、aらは、同原告に対し、抗告人の真実を見極めるようにと説得に努める一方で、bと同原告との間に形成されてきた信頼関係を利用して横浜フォーラムに通わせ、 ④ 平成3年12月29日には同原告の実家の先祖解放祭を行い、幼少時に覚えた歌を共に歌うなどして気分を高揚させた上で、2100万円もの高額の献金をすることを同原告に承諾させ、同月31日、預金を引き出させて同額を献金させ、更に平成4年2月28日、210万円を同様に献金させ、800万円を抗告人に貸し付けさせる というものであった。 [11] 原告5が献金するに至るまでの上記のようなaらの言動は、{1} 肉親を相次いで失った原因が祖先の罪にあるのであり、それが長男にも及ぶかのように執拗に説くなどして、同原告をして不安な心理状態に陥れ、同原告の家系が絶家するかもしれない運命を逃れるためには、すべてを神に捧げることが必要であると思い込ませ、また、 {2} 同原告のためにその実家の先祖解放祭を実施してその気分を高揚させ、抗告人に対して献金することを決意させるとともに、bの働きかけにより同原告との間に形成された信頼関係を強化し、更に、 {3} 同原告が献金する際には、同原告が自宅を出て、銀行で金銭を引き出し、これを持って抗告人横浜教会に到着するまでの間、信者らが同行して、献金の決意をひるがえさないように心理的抵抗を加えて献金式に臨ませるなどして献金を行わせた というもので、それはさながら同原告の心理を自在に操っているかのようであり、その結果同原告は多額の献金をするに至ったものと認められる。少なくとも、同原告が献金を決意し、献金式に臨んだ時点においては、到底同原告がその自発的意思により献金を決意し、これを実行したものとは考えられないものであって、抗告人の信者らが、計画的に、その役割を分担して、同原告をして、献金をしなければ最愛の肉親の身に重大な危害が及ぶかもしれないと思い込ませて、献金の名の下に多額の金銭を交付させることは、社会的に到底是認し得るものではなく、不法行為を構成するものといわなければならない。 2 抗告人の使用者責任 [12] ① 原告5に対する一連の献金の勧誘行為は、抗告人の信者であり、その信者組織(連絡協議会ないし信徒会)に属するa、b、cらにより、組織的、計画的に、抗告人の教義の伝道の過程で行われていること、 ② 同原告の献金に至る経過の中で行われた重要な儀式である同原告の実家の先祖解放祭、同原告の母親の霊界解放祭や二回の献金式は、抗告人の横浜教会において行われていること、 ③ 同原告の献金は抗告人に対してなされているものであること などに照らせば、抗告人の信者による同原告に対する献金の勧誘行為は、抗告人の教義の実践行為としての宗教活動ないしはそれと密接に関連する布教活動として行われたものとして、抗告人の事業の執行について行われたものであるといわなければならない。また、抗告人の信者らによる同一連の献金の勧誘行為は、同原告に献金を行わせるまでの間に関与した者、勧誘行為の態様、献金額、献金が抗告人に対してされ、抗告人においてなんらの躊躇もなく高額の献金を受けていること等の事情に照らしてみれば、抗告人の直接又は間接の指揮監督に基づいてされたものと推認するのが相当である。したがって、抗告人は、aらによる不法行為について、民法715条による責任を負うべきものである。 [13] 抗告人は、抗告人の信者組織に対して何らの指揮監督関係を持たないとも主張するが、宗教法人と信者の組織とは、同じ目的のために存立することは明らかであり、宗教法人があって初めて信者組織も存立しうるのであり、当該宗教法人の存立目的を達成するのに必要な限度、方法において、宗教法人が信者組織を規律することは当然予定されており、前記認定によれば、抗告人においても事情は同じと認められ、信者組織に対する指揮監督関係があると推認することができ、前記判断を左右するには足りない。 1 抗告人あるいは信者組織の宗教活動あるいは経済活動の実態 [14] 昭和57年頃、抗告人の信者組織(連絡協議会)のブロック長会議において、抗告人の教義を布教、伝道するため、非信者に抗告人の教義に関するビデオを見せる施設としてビデオセンターを設置することが決定され、各地にこれが設置された。 [15] そこでは、それら抗告人の組織活動や教義布教活動等に専従する献身者と呼ばれる抗告人の信者が中心になってその運営に当たっていた。 [16] 岡山のクリエイトもこのビデオセンターの一つであって、抗告人の岡山地区信者組織所属の信者らがその運営に当たっていた。 [17] 上記信者組織は、抗告人の信者の配置及び活動場所を決めて布教活動又はこれに伴う献金勧誘等の活動に当たらせ、抗告人に対する献金の窓口となり、月毎あるいは年毎に新規信者の獲得数や献金又は収益事業による売上金の目標額を決めてこれを地区毎に分担させ、献金の説得に至るまでの手順についてビデオ等による手引きを作成して、非信者及び既に信者となった者に対し、その先祖らの色情因縁、殺傷因縁等を説き、そのような因縁から解放されるためには、全財産を献金する必要があると説明するように指導していた。 2 抗告人の教義と抗告人あるいは信者組織の経済活動 [18] 抗告人の教義として、万物復帰の教えがあり、これは、堕落して万物より劣る身になってしまった人間が、万物を主管してゆく神の子としての本来の姿に戻るための条件として、神に対して万物を復帰させる(捧げる)というものであり、その具体的な実践として、真心を尽くして神に献金すべきこととされる。さらに、教祖である文鮮明や、抗告人の会長等の幹部によって、 「借りてでも天に捧げようとする心がなくてはならない。」、等と説かれる。 [19] そして、抗告人の信者が役員となって株式会社ハッピーワールド等の販売会社を経営し、韓国の統一教会企業で製造された大理石の壺等を輸入し、抗告人の信者が、その実践活動として、詐欺的で暴利的な霊感商法によって販売してきた。また、抗告人の信者は、その実践活動として、街頭で珍味売りをしたり、宝石、毛皮、呉服、絵画の展示会を開いてこれらを販売し、自ら抗告人に多額の献金をし、あるいは他者に働きかけて多額の献金をさせてきた。抗告人の信者は、経済活動をするに当たって、天法は地法に優ると信じ、地上天国の実現のために「復帰した万物」を用いるのであるから、他人を騙してもそれは、その人のためには罪滅ぼしになり、その人のためになるものと考え、詐欺的商法に対しても罪障感をもたないまま、販売マニュアルに沿って販売成績をあげることに懸命となる。 [20] 抗告人の信者が献金勧誘活動、販売活動等の経済活動によって得た多額の資金は、信者のもとには残ることなく、ほとんどが抗告人に渡る。 [21] 以上認定した事実からすると、抗告人自ら、あるいは、少なくともその信者組織において、万物復帰の実践のための活動として、霊感商法等違法な商取引を含む系統的・組織的な資金獲得活動をしてきているものと推認するほかない。 3 原告6に対する不法行為の成否 [22] 抗告人の信者組織は、予め組織的に作成されたマニュアルに従い、構成員たる信者らにおいて有機的一体として行動し、 ① 信者であるa、bにおいて、抗告人の信者組織が主催する展示会等を通じて販売する商品を購入させ、あるいは抗告人への献金をさせ、ひいては抗告人の信者に勧誘する目的であるのに、敢えてその目的を隠し、原告6に対し、文化サークルの勧誘であると虚言を弄し、抗告人の信者組織の運営する教義伝道のためのビデオセンター「クリエイト」をサークル活動をする場所であると偽って、同センターに誘い入れ、ビデオ講座代金を支払わせてビデオ講座に入会させた上、アンケートに記入させて、同原告の財産等に関する情報を収集し、 ② 抗告人の信者組織が開催した展示会に誘って絵画購入を勧めても同原告が購入せず、手紙や電話により同原告を誘ってもビデオセンターに同原告が通って来なくなるや、aにおいて、さらに、実体は抗告人の信者組織の幹部によるものであるのに、クリエイトとは別のYOUなる団体が主催する占い師の講演会がある旨虚言を弄して同原告を誘った上、幹部のcを、講演をしながら全国を巡り歩いている占い師であると紹介し、cから 「このままの生活を続けていたら大変なことになる。今が転換期です。」と殊更に同原告を不安にする言葉を言わせ、aが 「あの方は占いの当たる先生です。現在遠のいているクリエイトにも来て見ませんか。」と付言して、同原告をクリエイトに通わせる契機を与え、 ③ 同原告に対し、霊界や神の存在についてのビデオを見せ、超常現象に関するビデオを見せて、霊界の存在を信じるきっかけを作らせ、 ④ 同原告に対し、前回に引き続き、dという女性を全国を歩いている占い師であると紹介して、同原告が書いた家系図について占わせ、 「このような女性ばかりの家系はこの後途絶えてしまう。」などと言わせて、同原告をさらに不安にさせ、 ⑤ 前記の「占い師」と同一人であると気がついていない同原告に対し、aにおいて、今度は「立派な人」としてcを同原告に紹介して、親身になって相談に乗らせ、神とか霊界というものにつき受け入れられないでいる同原告に対し、cから 「私もこの問題について何十年も疑ってきて、研究してこの道にたどりついた。」などと助言させて、同原告に神や霊界に対する関心を強めさせ、 ⑥ 真実は抗告人の信者組織の幹部であるのに、文化サークル「クリエイト」の先輩であるとして、eを同原告に紹介して、親しみを持たせ、 ⑦ 同原告の信頼感を得たeから、さらに、抗告人の信者組織の幹部であるfを全国を歩いている指折りの占い師であるとして同原告に紹介させ、家系図をもとにfから 「あなたの祖先は殿様だから、相当人を苦しめてきただろう。」などと話させて、同原告の不安を助長させるとともに、クリエイトでもっと学ばなければならないと思うようにさせ、 ⑧ その4日後、午後7時頃から2時間にわたり、同原告に対し、クリエイトのセンター所長のgが、 「この世にメシヤが現れる時がきている。」などと一対一の特別講義をした後、初めて抗告人教団名を同原告に明かし、アジア、アフリカで生活苦の人たちに医療援助しているビデオを見せて、抗告人の素晴らしさを印象づけた上、メシヤが文鮮明であることを初めて明かし、クリエイトのスタッフ以外に同原告しかセンター内にいない状態で、e、gほかスタッフが入れ替わり立ち替わり、同原告に対し、 「あなたはサタンの子だから、神の子になるためには自分の持っているものを捨てなければならない。」などと言って、金銭の出捐を迫り、同原告が10万円を出しても構わないというと、 「それではだめだ。すべてを捧げなさい。」などと、午後12時ころまで執拗に同原告に迫って、同原告の全財産である60万円を差し出すことに応じさせ、 ⑨ 自己の財産全部を抗告人に献金として支払って、蓄えをなくしたことから、抗告人に救いを求める気持ちに傾いた同原告を修練会に誘い、参加費用を出させてスケジュールが詰まり睡眠も不足するようなセミナーに参加させて教化し、さらに新生セミナーの段階では、同原告の給料の大半を抗告人の関係で費消させ、また、同原告の生活を管理して、抗告人の影響力を強め、 ⑩ 実践トレーニングの段階では、同原告をして、逆に、マニュアルに沿い、嘘を言って、殊更に抗告人の正体を隠し、アンケートを行い、クリエイトに勧誘させる活動をさせ、20人くらいからアンケートを取り、そのうち3、4名をクリエイトに通わせるまでにさせ、抗告人の信者組織主催の絵画展に知人を誘うようにまで至らせたものである。 [23] 上記一連の行為を全体として、また客観的にみると、抗告人の信者組織において、予め個人情報を集め、献金、入信に至るまでのスケジュールも決めた上で、その予定された流れに沿い、殊更に虚言を弄して、正体を偽って勧誘した後、さらに偽占い師を仕立てて演出して欺罔し、徒に害悪を告知して、原告6の不安をあおり、困惑させるなどして、同原告の自由意思を制約し、執拗に迫って、同原告の財産に比較して不当に高額な財貨を献金させ、その延長として、さらに宗教選択の自由を奪って入信させ、同原告の生活を侵し、自由に生きるべき時間を奪ったものといわざるを得ない。 [24] そうすると、本件において、抗告人の信者組織のメンバーが周到に計画したスケジュールに従って、有機的に連携してなした一連の行為が宗教的行為と評価しうるとしても、その目的、方法、結果が社会的に相当と認められる範囲を逸脱しており、教義の実践の名のもとに他人の法益を侵害するものであって、違法なものというべく、故意による一体的な一連の不法行為と評価されることとなる。 4 抗告人の責任 [25] 抗告人の信者らによる一連の勧誘、教化行為あるいは経済活動は、抗告人自らが指示していると推認してもやむを得ない状況があるといえなくもないが、少なくとも、抗告人の宗教活動ないしはそれと密接に関連する布教活動の一環として行われ、かつ、抗告人の教義、信仰の実践活動と認められる。したがって、抗告人の信者らが抗告人法人と別に組織・団体を構成し、その信者組織の意思決定に従って布教活動あるいは経済活動を行う場合であっても、抗告人とその信者組織とは同じ目的のために存立し、信者組織は、宗教法人たる抗告人を母体とし、その存立基盤としているのであって、抗告人の存立目的を達成するのに必要な限度と方法において、抗告人が信者組織ないしはその構成員である信者らを規律・監督することが本来予定されているとみるべく、しかも、現にこれが実行されているのであるから、抗告人において、信者組織に対する実質的な指揮監督関係があるものということができる。 [26] そうすると、抗告人は、少なくとも、その信者組織の信者らが有機的一体としてなした不法行為につき、これが抗告人の事業の執行についてなされたものとして、民法715条の使用者責任を負うべきこととなる。 1 抗告人とその信者組織等 [27] 抗告人の発足後、その伝道を効果的に行う経済基盤を確保するため、その信者らによって、幸世物産株式会社(昭和44年に統一産業株式会社と商号変更)が設立された。また、その競争会社があった方がよいとの考えから、昭和46年に幸世商事株式会社が設立され、それが昭和53年に株式会社ハッピーワールド(ハッピーワールド社)となった。ハッピーワールド社は、各地方にある特約店に商品を販売してもらっていたところ、昭和53、4年ころ、同特約店等の間で開いていた販売促進のための親睦会活動が活発化すると、親睦会に参加した信者らの間で、商品の紹介や販売が行われるようになると同時に、抗告人の伝道活動もされるようになり、その後、それが全国的に展開されるようになった。 [28] 昭和57年8月に上記のような活動を行う信者組織が組織化されて、全国しあわせサークル連絡協議会(連絡協議会)が発足した。そのブロックは、ハッピーワールド社の商品の卸し先である販社と呼ばれた特約販売会社の販売エリア毎に設けられた。連絡協議会は、東京都内に中央本部を置き、全国にある各ブロックの長によるブロック長会議によって意思決定が図られ、各ブロックのブロック長が、その地域で行われる活動の責任者であり、このような組織の下、抗告人の信者らが、伝道活動や経済活動を行っていた。また、販社及びその系列の特約店では、展示会を行う際、抗告人の信者が動員してくる客に対して、物品等を販売していた。 2 原告7に対する勧誘行為について [29] 原告7の62万円の献金については、 ① 抗告人の信者らは、自らが抗告人の信者であることを明らかにしないまま、手相や家系図の話で、原告7の興味を引き付けて連れ出し、運勢鑑定の専門の人物であると言って紹介された信者が、原告7が1年前に流産していること等の悩みを聞き出して、そのような不安な出来事を気に掛けていた原告7に色情の因縁があるとか、殺傷の因縁がある等と述べるとともに、原告7の子供が病気になる等の因縁による不幸の到来を指摘して、原告7の不安を殊更にあおっていること、 ② さらに、霊界に詳しい簡単に会えない人物であると紹介された別の信者において、同様に、抗告人の信者であることを明らかにしないまま、原告7に対し、殺傷や色情の因縁があること、その祖母が地獄にいること等を申し向けて不安をあおり、その信者が信者勧誘の責任者に指示を受けに行っている間に、別の信者が自分もここにきて救われたと言って原告7に献金等をする気にさせようとしていること、 ③ その後、霊界に詳しい簡単に会えない人物として紹介された信者が、原告7が家族に内緒で出せる金額を聞き出し、原告7の郵便貯金が70万円あると知った上で、先祖を解放するためには、62万円を捧げる必要があると言って、献金先や正確な用途も告げないまま同金員を拠出させたこと が認められる。 [30] 以上の一連の流れや、原告8、原告9に対する献金勧誘行為もほぼ同様な方法でなされていること等に照らせば、抗告人の信者らの原告7に対する62万円の献金勧誘行為は、通常の宗教的な伝道に付随する献金勧誘行為等とは異なり、献金による利益の獲得それ自体を目的として、あらかじめ定められた一定の手順に従って、組織的、計画的に行われたものであると認められる。そして、その方法及び態様も、抗告人の名前も明らかにせず、因縁の話やこれによる不幸の到来を指摘して、原告7の不安を殊更にあおり、困惑させるなどして献金を獲得しており、原告7が冷静な通常の判断力をもって献金についての意思決定をなし得る状況であったとは認め難い。さらに、その献金の額も、原告7の有していた郵便貯金のほとんど全部であり、金額的にも決して低いものとはいえないことなどからすれば、同献金勧誘行為は、社会通念上許容されうる範囲を著しく逸脱し、違法性を帯びるものといわざるをえない。 3 原告8に対する勧誘行為について (1) 献金について [31] まず、原告8の300万円の献金については、 ① 抗告人の信者は、抗告人の信者であることを明かさないまま、手相や姓名判断を口実に、原告8から、母親が死亡した話等を聞き出した上、波乱運があるなどと言って、原告8を誘い出したこと、 ② 家系図の先生であり、なかなか会えない優秀な先生であるとして別の信者を紹介し、その信者において、原告8が死んだ母親のことを気にかけていることを知るや、原告8に対し、その母親が地獄にいるという思いにさせてショックを与え、殊更に不安をあおっていること、 ③ 原告8が、ビデオを見るうちに、因縁や霊界が恐怖の対象となってきたりする反面、母親を供養しようとする気持ちが強くなってきていることに乗じ、カウンセラーであるaが、bを霊界に詳しく修行を積んでいる先生であるとして紹介し、bにおいて、もっと思いを込めて先祖供養するようにと指摘していること、 ④ その後、bが、母親の供養をする気持ちの強い原告8に対し、献金として300万円の金額を提示し、さらに、魔が入るからなどと言って3日以内に用意するように指摘し、300万円の献金を受領した直後、霊界で苦しんでいる母親が開放された旨を述べていること などが認められる。 [32] 以上の一連の流れや、原告7、原告9に対する献金勧誘行為もほぼ同様な方法でなされていること等に照らせば、抗告人の信者らの原告8に対する300万円の献金勧誘行為は、通常の宗教的な伝道に付随する献金勧誘行為等とは異なり、献金による利益の獲得それ自体を目的として、あらかじめ定められた一定の手順に従って、組織的、計画的に行われたものであると認められる。そして、その方法及び態様も、抗告人の名前も明らかにせずに原告8を誘い出した上、因縁の話やこれによる不幸の到来を指摘して、その不安を殊更にあおり、困惑させるとともに、原告8が死んだ母親に対する思慕の念が深いことを利用し、献金による供養を強くしょうようし、かつ、金額の提示後は、それにつき熟慮の機会も与えないまま、献金を要求しており、原告8が冷静な通常の判断力を有する状態で献金についての意思決定をなし得る状況であったとは認め難い。さらに、その献金の額も、300万円と相当に高額であることなどからすれば、同献金勧誘行為は、社会通念上許容されうる範囲を著しく逸脱し、違法性を帯びるものといわざるをえない。 (2) 人参茶の販売について [33] 原告8は、平成3年2月27日、人参茶24個を172万8000円で購入しているところ、その購入については、原告8は、当時、300万円の献金や家系図の購入等でかなりの出費をしていたため購入する予定ではなかったにもかかわらず、信者組織の販売目標を達成するための一環として、人参茶のカウンセラーが、原告8に生命保険をもとに金銭の借り入れをさせてまで人参茶の購入を迫った上、原告8の同情を買うような話をして涙を流して席を立つ反面、原告8のビデオ受講の際のカウンセラーaにおいて、原告8が母親のことを強く想っていることを利用し、自分との間で信頼関係が醸成されてきていることに乗じて、夕べ原告8の母親がaの枕元に立ったなどという話をして、原告8に172万8000円もする高額で大量の人参茶を購入させたことが認められる。 [34] ① このような物品販売行為は、通常の宗教的な伝道に付随する物品販売行為の域を越え、物品販売による利益の獲得それ自体を目的として、組織的、計画的に行われたものであると認められること、 ② その方法及び態様も、単に強引であるというにとどまらず、原告8のaに対する信頼感を利用し、aにおいて、原告8の死んだ母親の話を持ち出すなどして、その心情を揺さぶり、冷静な判断力を失わせるような方法で購入を迫っていること、 ③ 同販売にかかる人参茶の量は、通常の使用を前提にして、数年分の量であること からすれば、同人参茶の販売行為は、社会通念上許容されうる範囲を著しく逸脱し、違法性を帯びるものといわざるを得ない。 4 原告9に対する勧誘行為について [35] 原告9の200万円の献金については、 ① 抗告人の信者らは、抗告人の信者であることを明らかにせず、手相や姓名判断を口実に原告9に接触したものであること、 ② 原告9の家系図を見た信者のcにおいて、原告9に対し、男の人が早死にする因縁があり、このままでは大変であると言って、その不安をあおり、また、dにおいて、原告9の両親が地獄で苦しんでいるなどと言ってその不安をさらにあおっていること、 ③ さらに、eらが、原告9に対し、修行を積んだ先生であるとしてfを紹介し、fにおいても、地獄の話をして不安をあおった上、事前に原告9から聞き出した財産状況をもとに、3日以内に献金をすることを迫ったこと などが認められる。 [36] 以上の一連の流れや、原告7、原告8に対する献金勧誘行為もほぼ同様な方法でなされていること等に照らせば、抗告人の信者らの原告9に対する200万円の献金勧誘行為は、通常の宗教的な伝道に付随する献金勧誘行為とは異なり、献金による利益の獲得それ自体を目的として、あらかじめ定められた一定の手順に従って、組織的、計画的に行われたものであると認められる。そして、その方法及び態様も、抗告人のためにすることを明らかにせず、因縁の話やこれによる不幸の到来を指摘して、原告9の不安を殊更にあおり、困惑させるなどし、また、金額の提示後も、魔が入るなどとして、それにつき熟慮の機会も与えないまま、献金を要求しており、原告9が冷静な通常の判断力を有する状態で献金についての意思決定をなし得る状況であったとは認め難い。さらに、その献金の額も、金額的に決して低いものとはいえないことなどからすれば、同献金勧誘行為は、社会通念上許容されうる範囲を著しく逸脱し、違法性を帯びるものといわざるをえない。 5 抗告人の責任 [37] 各不法行為が行われた平成元年ないし平成3年当時、その不法行為を行った信者らは、連絡協議会という信者団体に所属し、その宗教的活動及びそれと事実上一体をなす販社等の業務に従事していたものと認められ、法律的には、宗教法人である抗告人の役職員であったとはいえないし、その法人としての宗教活動に従事していたともいえないと考えられる。 [38] しかしながら、連絡協議会が当時行っていた宗教活動は、まさに抗告人の教義の流布、宣伝そのものであるし、それが全国的な組織を形成して、各地に宗教活動のための施設、拠点を有して大規模に行われていたこと、なお、このような信者団体の活動を通じる以外の方法で、抗告人が、新たな信者を獲得するための宗教的勧誘活動ないし布教活動を積極的に行っていたことを窺わせる証拠もないことなどからすれば、宗教法人としての抗告人の活動は、連絡協議会という信者団体の活動に支えられ、それを基盤として、その信者組織を維持、拡大し、広くその教義を流布していったものと認められるのであるから、連絡協議会は、実質的にみて、抗告人と事実上一体を成す組織であると認めるのが相当である。 [39] また、仮に、組織上の同一性が認められないとしても、このような両者の関係からすれば、抗告人が、連絡協議会の運営を全く信者らの自主的な活動に委ね、放置していたとは考えられないのであって、抗告人は、連絡協議会の基本的な運営方針、活動状況を把握し、それを左右できる立場にあったと推認されるし、信者らの伝道及び献金勧誘等の行為についても、連絡協議会を通じて、違法な行為がなされないように指揮、監督しうる立場にあったものと認められる。 [40] そして、同信者団体の構成員らが行っていた献金勧誘行為及び物品の販売行為は、宗教的伝道行為あるいはそれに付随する行為の外観をとって行われているものであるし、内容的にみても、それらの行為は抗告人の教義の実践としての側面を有すると認められるのであるから、これらの行為を外形的・客観的にみれば、抗告人の宗教的活動の一環であると認めるのが相当であり、その信者らの上記各行為は、抗告人の事業の執行につきなされたものというべきである。 [41] したがって、抗告人は、その信者らの違法な献金勧誘行為及び物品販売行為によって、原告らが被った各損害について、民法715条によりこれを賠償する責任を負う。 1 販売行為の違法性 [42] 抗告人の信者による原告10及び原告11に対する物品販売は、伝道活動の費用や抗告人本部への納入金等を獲得するための実質的な献金勧誘行為であるということができる。 [43] 原告10に対して物品購入を勧誘した抗告人の信者らは、同原告の娘の眼に障害があるのは先祖の非道な行為の因縁であると決め付け、更に将来身内に障害者が生まれるなどと述べて、同原告を不安に陥れることにより、それぞれが数百万円という高額な物品の購入を承諾させたものであり、その代金には、老後に備えるべき退職金の一部が充てられたものである。上記行為は、社会通念上相当と認められる範囲を著しく逸脱する勧誘行為であり、違法であるというべきである。 [44] 原告11に対して物品購入を勧誘した抗告人の信者らは、夫が入院したばかりで不安を抱えている同原告に対し、夫の病気は先祖の悪性格の因縁であると決め付け、更に子供にも不幸が及ぶなどと述べて、同原告をして、因縁を断ち切るためには壺等を購入し、人参茶を飲んで血をきれいにするほかないと困惑させて、物品の購入を承諾させたものである。上記行為は、社会通念上相当と認められる範囲を著しく逸脱する勧誘行為であり、違法であるというべきである。 2 抗告人の使用者責任 [45] ① 各原告に対して不法行為を行った抗告人の信者らは、上記不法行為当時連絡協議会に所属していることになっていたこと、 ② 連絡協議会自体が営業活動とともに抗告人と同様の教義に基づく宗教活動を行う集団の組織であったこと、 ③ 同組織の実態は抗告人の地方組織と混同しかねないものであり、信者の中には両者を分別して認識していない者もあったこと からすれば、抗告人は、連絡協議会の活動状況を把握し、これに影響を及ぼすことができる立場にあり、信者らの行為についても、違法な行為がなされないように指揮、監督のできる立場にあったものということができる。 [46] そして、これらの不法行為が実質的に抗告人の献金勧誘行為たる性質を有し、実際にも勧誘した信者(外交員)が取得すべき手数料等は抗告人に上納されているのである。このことからすれば、抗告人の信者らが行った上記各不法行為は、抗告人の信者たる地位を離れ、独自の活動としてされたものと評することはできず、むしろ、抗告人の信者としての立場で、抗告人の伝道活動のために必要な資金を獲得する目的の下にされた行為であったというべきであるから、外観上抗告人の宗教活動の一環として、あるいはこれに付随する行為として行われたといわなければならない。これらの事情に、抗告人と献金勧誘者(外交員)とが、宗教組織とその信者という関係にあることをも考え併せれば、抗告人は、これらの者に対し、指揮監督をし得る立場にあったと解するのが相当である。 [47] したがって、抗告人は、その信者らの行った不法行為の使用者責任を負うべきものである。 1 本件各物品の販売行為の違法性について [48] ① 原告12に対する本件各物品(多宝塔、高麗人参濃縮液及び釈迦塔)の販売を担当した抗告人の信者であるaらは、一体となって、あらかじめ同原告の家庭環境や資産状況を把握した上で、同原告に対し、強い口調で、殺傷因縁ないし色情因縁といった宗教的な言葉を使い、これを同原告の家庭環境上の問題の原因であると断言し、このような問題を回避するためには宗教的な意味合いを有する高額の物品を購入しなければならず、これを断るならば同原告の家族にさらなる不幸が起きるなどと執拗に害悪を説いて家族のことで悩みを抱える同原告の不安をあおって困惑に陥れ、 ② 同原告が展示会場から退去しようとするやさらに害悪を告知して引き留めるなど、いわば軟禁状態に近い状態に置いて長時間にわたって執拗に物品を購入するよう勧誘を継続し、 ③ その結果、3回にわたり、同原告が夫の遺産として取得した財産の大部分に相当する合計8400万円もの物品購入を承諾させたものであること が認められる。また、上記各物品購入について、aらは、同原告に対し、家人に対して口外しないよう申し渡しているが、その目的は、同原告が本件各物品を購入したことを家人に知られることにより脅迫的な勧誘に対するクレームを付けられることを防ぐためであったものと推認できる。さらに、同原告が購入を承諾した後、代金の支払までの間、抗告人の信者がほぼ常時付き添っていたが、その目的は、同原告において購入の意思を翻すことなく確実に代金の支払をするよう監視するためであったものと推認できる。 [49] 以上によれば、抗告人の信者による本件各物品の販売行為は、たとえその目的が何らかの宗教活動の一環という面を有するとしても、その方法及び結果において、到底社会通念に照らして相当な行為であるとはいえず、明らかに違法な行為といわなければならない。 2 抗告人の責任について [50] ① 文鮮明は、抗告人の信者に対して行う説教の中で、再三にわたり、万物復帰と称する資金集めのための経済活動を行うように指示、扇動していた。また、抗告人の幹部は、抗告人の信者に対し、再三にわたり万物復帰を行うよう指示し、組織全体で100億円の売上げを達成するという趣旨の標語を用いるなどして、抗告人の信者に対し、販売活動の推進を督励していた。 ② 抗告人の信者が関与した複数の霊感商法事件と本件の手口は極めて類似している。 ③ 抗告人の信者の間では、万物復帰が抗告人の教理の伝道活動と同様に重要な活動とみなされており、万物復帰の実践として、マナと称する人参液や多宝塔等の販売活動が行われていたところ、本件においても、aは、万物復帰の実践として人参液等の販売活動を行っていたと証言している。 ④ 抗告人の指示により、人参液等の物品販売等を業とする株式会社ハッピーワールド等の物品販売会社への信者の人事異動ないし人事交流が行われていた。 ⑤ aは、文鮮明ないしその信じる神様に対して顧客が多宝塔を授かって救われるように祈っていた旨証言するなど、物品販売活動と文鮮明ないし抗告人の教理との密接な関連性が認められるほか、被告bは、昭和61年当時、抗告人の教理である統一原理を伝道するために、ビデオセンター等に友人等を連れていく伝道活動を行っていたこと、また、展示会に勧誘した顧客を統一教会につなげたいと考えていたことを供述しており、かつ、同原告は、多宝塔の購入後、被告bらの指示により、ビデオセンターに通い、抗告人の教理について学習をしている。 ⑥ 文鮮明は、万物復帰によって得た利益は活動に従事する者に帰属してはならないと言明しており、抗告人の信者においても、経済活動によって獲得した利益は最終的に文鮮明のもとへ集められると教えられ、個々の信者には、食費及び小額の小遣いが支払われるのみであった。本件においても、被告bは、商品を販売しても商品の販売量に応じた販売手数料等を受領することなく、すべて会計を担当する者に渡しており、小遣いを受領していたにすぎない旨供述し、また、cも、委託販売員は直接手数料を受領しておらず、小遣いとして約1万5000円の金員を受領していたにすぎないと証言している。 [51] 以上認定の各事実を総合して判断すれば、本件を含め、抗告人と連絡協議会等の物品販売活動を行う信者組織との間には、少なくとも実質的な指揮監督関係が存在するものと推認でき、多宝塔等の物品の販売活動に従事した抗告人の信者らは、民法715条所定の抗告人の被用者の地位にあるものと認められる。 [52] また、前記認定の事実によれば、かかる物品の販売活動は抗告人の教理の実践としてなされており、かつ、上記販売活動によって獲得した利益の大部分は抗告人に帰属しているものと認められるから、本件各物品販売を含めた物品の販売活動は抗告人の事業の執行についてなされているものと認められる。本件における被告bらによる同原告に対する本件各物品の販売活動も、形式上会社法人である大心商会と同原告との取引という形態をとっているとはいえ、抗告人の事業の執行についてなされたものであることは明らかである。 [53] したがって、抗告人は、被告bらによる同原告に対する違法な物品販売行為について民法715条所定の使用者責任を負う。 1 抗告人の活動について [54](1) 抗告人の教義には「万物復帰」の教えがあり、 「本来の愛の秩序は、人間が堕落しなければ、神、人間、万物という愛の秩序であったものが、人間が堕落したことによって、人間が万物以下に墜ちてしまい、神、万物、人間という秩序になってしまった。人間は神の前に帰るため、本来の神との関係を取り戻すために、万物を復帰、すなわち、万物を信仰をもって、真心を尽くして神の前に捧げる、すなわち献金していかねばならない。」と説かれる。 [55] そして、抗告人の教祖である文鮮明は、 「統一教会の会員は必ず万物復帰をしなければなりません。万物復帰をすることによって、皆さんは神に万物を献祭するのです。」、などと説教をし、これが「み言葉」として機関誌(「ファミリー」)で信者に向けて紹介されている。 [56](2) 全国しあわせサークル連絡協議会が設置したビデオセンターでは、抗告人の信者同士で共同生活を営み、組織の活動や抗告人の教義の布教活動等に専従する「献身者」と呼ばれる抗告人の信者が中心になってその運営に当たっていた。ビデオセンターの運営に当たっていた抗告人の信者は、「ゲスト」と呼ばれるビデオ受講者の獲得のため街頭での勧誘活動を行い、統一原理に共鳴し信仰を持つようになった者から献金を集め、さらに、特約店の委託販売員として、株式会社ハッピーワールド(ハッピーワールド社)の取扱商品の営業販売活動に従事した。連絡協議会では、抗告人の信者の配置及び活動場所を決め、新規信者の獲得数や献金又は収益事業による売上金の目標額を決めさせて、これを競わせるなどしていた。 [57] 連絡協議会では、昭和57年ころから、ビデオセンターで受講したゲストの教育方法としてセミナー等が整備されていった。セミナー等は有料であり、受講者は料金を支払って参加する。その内容は、いずれも抗告人の教義の講義であり、ビデオセンターではビデオ視聴による講義が、他のセミナー等では講師による講義が、それぞれ行われる。ビデオセンターでは、当初から抗告人の名称やその教祖である文鮮明の名前、あるいはセミナー等の主催者が連絡協議会であることが受講者に明かされることはなく、これらはフォーデーズセミナーの中で明かされる。 [58] 抗告人の役職にある者が連絡協議会の役職を兼務することはなかったが、抗告人の役職にある者がこれを辞して、連絡協議会の役職に就いたり、連絡協議会の役職にあった者が抗告人の役職に就いたりすることがあった。 [59](3) 全国大学連合原理研究会(原理研)は、昭和39年9月に発足した団体で、文鮮明が解明した「統一原理」を学び、絶対的価値観に基づいて政治、宗教、経済、科学など色々な分野を探求し、宗教的精神を実践する、大学生の学術・奉仕サークルの連合体である(原理研の創始者は文鮮明である。)。 [60] 原理研の会員の中には、抗告人の会員でない者もおり、大学卒業後は統一原理とは全く関係のない一般の企業等に就職していく者もいる。しかし、原理研の会員の中には、抗告人の会員となり、大学卒業後は抗告人の信者組織である連絡協議会の活動に携わったり、抗告人の信者が作った会社に就職する者も少なからずいる。 [61](4) 抗告人の信者は、統一原理による理想の実現のために、献身的な生活を送る決意を固め、「ホーム」と呼ばれる信者らが自主運営する施設で共同生活を送り、信仰を深めるとともに、伝道活動や経済活動に従事する(ただし、抗告人の信者がすべてホームで生活しているわけではなく、在家の信者もいる。)。 [62] 抗告人の信者(献身者)は、抗告人の教義である「万物復帰」の教えの下、この教えを実践していることになると信じて、経済活動に奔走する。 [63] この際、連絡協議会や抗告人は、連絡協議会の存在や組織及び活動内容をその活動に当たる抗告人の信者に周知させていないため、信者は、自分が抗告人自体の組織に所属し活動しているのか、あるいは連絡協議会に所属して活動しているのかの認識もないままに、「救われる(人格の完成)」ために、抗告人の教義の実践であると信じて、伝道活動及び経済活動を行う。 [64](5) 上記認定事実によれば、抗告人の信者による一連の勧誘・教化行為は、抗告人の宗教活動ないしそれと密接に関連する布教活動の一環として行われており、抗告人の教義、信仰の実践行為に他ならない。 [65] そして、連絡協議会(昭和57年発足)によるビデオセンターの設置(昭和57年ころ)やハッピーワールド社の取扱商品の販売活動は、本来抗告人自身が行うことを企図していた活動を、抗告人に代わって行っているものということができる。そして、ハッピーワールド社の社長Cは、抗告人が発行している機関誌(ファミリー)の昭和53年1月号に本部役員(局長)として年頭のあいさつを寄せていることが認められ、同人が抗告人の幹部の一人であることが明らかであることや、個々の信者は、自分が抗告人自身の組織に所属し活動しているのか、あるいは連絡協議会に所属して活動しているのかの認識がないまま、抗告人の教義の実践であるとして伝道活動及び経済活動を行っていることを合わせて考慮すると、連絡協議会による活動は、宗教法人である抗告人自身の活動として抗告人によって承認(少なくとも黙示的に承認)されたものというべきである。また、原理研は、創始者が文鮮明であることやその活動内容からして、学生信者の獲得ないし抗告人の教義を学生に広めるために、抗告人が作った組織であることは明らかである。 [66] 以上のことからすると、抗告人は、抗告人の信者が抗告人の活動として行う勧誘・教化活動についてはもちろんのこと、信者が連絡協議会や原理研という信者組織を構成し、その活動として勧誘・教化行為を行い、また、経済活動を行う場合であっても、これらに対して実質的な指揮監督関係を有するものと認めるのが相当である。 2 被侵害利益・違法性について (1) 目的の不当性 [67] 抗告人の信者になると、修練会や研修会の講義を受けることを通じて、教義に共感して献身するように導かれ、献身すると、自らの預金をすべて献金するだけではなく、住居と食事は与えられるものの、わずかな金員の支給を受けるだけで、早朝から深夜まで、教義とは無関係な各種の商品(珍味、印鑑、壺など)の販売活動等に従事させられている。そして、その販売活動たるや、マイクロバスによる訪問販売の場合は肉体的、精神的に極限まで追いつめられる長時間で苛酷な労働を強いられ、いわゆる霊感商法の場合は根拠のない因縁話を作り上げ、相手方を困惑、畏怖させて高額の商品を購人させるとの違法な販売方法が行われているのである。信者をして福祉団体への寄付名目等で集めさせた金員も、実際はそのほとんどを抗告人が取得する仕組みになっており、このような集金方法が社会的相当性を逸脱していることは明らかである。また、これらの活動においては、実現できそうにもない過重なノルマが課され、献身者はその実現に向けて過酷な労働の継続を強いられている。これらの事実や、抗告人においては、販売活動に従事したり献金をすることができない身体障害者や生活保護受給者に対しては伝道をしないよう指導していることからしても、抗告人による原告らに対する勧誘行為は、結局のところ、献身者による過大な献金や過酷かつ社会的相当性を逸脱した経済活動ないし労働による経済的利益の確保と、抗告人に同様の利益をもたらす新たな信者を継続的に獲得するために行われていたものであることが明らかであり、このような目的は、宗教の本来の目的から大きく逸脱した著しく不当なものといわざるをえない。 (2) 勧誘・教化方法の不当性 [68]ア 原告13に対する勧誘方法は、統一原理の講義であることを説明せずに、単に聖書の勉強会であるとして執拗に勧誘し、4、5回で終わると説明された勉強会が終わると次のコースを準備し、これが終わるとまた次のコースを勧めるという手法を使って、統一原理に対する理解を徐々に浸透させて行き、しかも、その過程では、信者らが同原告に極めて親切に接し、できるだけホームへ立ち寄らせることによって抗告人やその信者らに対する親近感や信頼感を植え付けるとともに、他者の意見を聞く機会を奪い、アベルらの指示に絶対服従するように仕向けていったものということができる。その結果、同原告は、統一原理や文鮮明の言うことが絶対であり、同じ手法で新規の信者を勧誘し、因縁トークを用いて霊感商法を行うことに抵抗感がなくなるどころか、逆に、そうすることが当人のための救いであると信じ、抗告人のやり方を批判する言動はサタン圏の誤った考えであるとして無視するようになっていった。そして、同原告は、抗告人の教義から離脱すれば、自分だけでなく親兄弟に災いがあると教えられてこれを固く信じ、抗告人から離脱することが困難な状態になっていったものである。このように、同原告に対する勧誘・教化は、前記の不当な目的を秘して行われたものであることはいうに及ばず、極めて巧妙な手法で同原告を抗告人に引き込み、一旦入ってしまうと、抗告人から脱会することができない心理状態に追い込んでいったというものである。また、同原告が献身するために当時勤務していた会社を退社した際、これに反対する両親が来阪した際には、献身すれば給料が支給され、社会保険にも加入できると虚偽の説明をして両親を納得せしめてしまったことも、勧誘・教化方法の不当性の一場面と指摘することができる。 [69]イ 原告14の場合は、映画を見るとの口実を設けて誘い出され、宗教であることを隠され自己啓発であると騙されてビデオセンターに連れて行かれた上、受講を拒否しているのに、2人がかりで長時間にわたって説得して受講を承諾させられたものであり、事前の説明もなく、一つのコースが終わると次のコースを無理矢理受けさせるという手法を使って抗告人の教義に深入りさせられ、アベルの指示に絶対服従させるように仕向けられていったということができる。そして、抗告人に対する批判に耳を貸さなくなり、抗告人からの離脱が困難となっていった経緯は、原告13の場合と同様である。 [70]ウ 原告15の場合は、初めて親元を離れ、友人、知人もおらず、アパートで心細く思っていたときに、本の紹介を口実に訪ねてきたaから、同人が原理研のメンバーであることや原理研が主宰している講演会であることなどを知らされないまま、アメリカ帰りの講師の講演であるとして講演会に勧誘されたものであり、講演会終了後、a及び講演会に何回か参加したという女性に囲まれ、2泊3日の講演会としてツーデーズセミナーへの参加を勧められて参加を承諾してしまい、その後はaが同原告にほとんど密着するように行動を共にし、同原告に各コースの研修を順次受けさせて次第に原理研や抗告人にのめり込ませていったものである。そして、同原告が、アベルや上司の指示に絶対服従するように仕向けられ、同原告自らが考え判断することができないように教え込まれてゆき、抗告人に対する批判に耳を貸さなくなり、抗告人からの離脱が困難となっていった経緯は、原告13の場合と同様である。 [71]エ 以上のとおり、原告らに対する一連の勧誘・教化の方法は、いずれも口実を設けて原告らに接近し、宗教団体の勧誘であることを秘して、勉強会、セミナー、講演会に誘った上で、段階を踏んだ研修を連続して受けさせることによって統一原理に対する理解を徐々に浸透させるとともに、原告らが他者の意見を聞いたり、自ら考え、判断する機会や時間的余裕を奪い取っていくという巧妙な手法で行われるものである。しかも、抗告人を批判する言動はサタン圏の誤った考えであると教え込んで、他者の意見や批判に耳を傾けないように仕組み、自らが行っている活動に疑問を持つようになっても、抗告人の教義から離脱すれば、自分だけでなく親兄弟に災いがあるとの恐怖心を持たせることによって、原告らをして抗告人から離脱することが困難な状態に追い込んでいったものである。 [72] このような勧誘・教化の方法は、相手方の自由な意思による判断を妨げる手法を計画的に執ることによって、抗告人の教義にそれと知らないうちに引きずり込み、いったん取り込んだ後は、抗告人から離脱できないような心理状態に追い込んでいくというもので、本来自由な意思で選択されるべき信仰を詐欺的に植え付け、その恐怖心をもって継続を強いるものといわざるを得ず、その方法が社会通念上相当な範囲を超えていることは明らかである。抗告人は、原告らが、その自由な意思で信仰し、その各行為を行ったものであると主張するのであるが、原告らがその自由な意思を完全に喪失していたとまではいえないとしても、上記のような巧妙な手段で原告らを勧誘・教化したことは、これを違法といって差し支えない。 (3) 結果の不当性とまとめ [73] 以上のとおり、抗告人の信者らによる原告らに対する勧誘・教化等の行為は、献身者による過大な献金や過酷かつ社会的相当性を逸脱した経済活動等による経済的利益の確保と、抗告人に対して同様の利益をもたらす新たな信者の獲得という不当な目的の下に、信仰の自由を阻害するような不当な方法によって、原告らに過大な献金、過酷な労働を強いた上、信仰の自由を阻害したまま抗告人の教義に盲従することを余儀なくさせるという著しく不当な結果を生ぜしめたものであり、いずれの原告に対する関係でも、違法な行為というべきである。 3 抗告人の責任原因について [74] 上記1記載のとおり、抗告人は、抗告人の信者が抗告人の活動として行った勧誘・教化活動はもちろんのこと、抗告人の信者が連絡協議会や原理研といった信者組織の活動として行った勧誘・教化行為及び経済活動に対しても実質的な指揮監督関係を有すると認めることができ、また、これらの行為は、抗告人の布教活動及びそれに基づく実践活動の一環として行われた行為であるから、抗告人の事業の執行についてされたものということができる。 [75] したがって、抗告人は、民法715条1項に基づき、抗告人の信者らの原告らに対する違法行為につき、原告らが被った損害を賠償する責任を負うというべきである。 1 連絡協議会の中央本部等の組織と抗告人との関係 (1) 独立の団体たる連絡協議会の有無 [76] ア 抗告人は、協会員(注:この判決では、抗告人の教義を主観的に信仰し、抗告人において、その信者であることを認める者を「信者」といい、客観的・外形的に経済活動や伝道活動を行う信者を「協会員」ということとするとされている。)らによって構成される中央本部及び各ブロック以下の組織は、昭和57年8月ころから平成4年ころまで存在した協会員の任意団体である連絡協議会に帰属し、抗告人とは全く関係がない旨主張する。 [77] 確かに、昭和56年ころ、全国各地において、しあわせグループの販社ないし特約店を主体とする「しあわせ会」という団体が存在し、Cが中心となって、これを全国的に組織化したことが認められる。 [78]イ しかしながら、連絡協議会が存在した当時において当然作成されていてしかるべき代表者の選任、意思決定の方法、財産管理等の組織についての定めや収支を示す資料は一切提出されていない。中央本部において、連絡協議会を示す看板等が設置されたことはなく、昭和57年8月ころから平成4年ころまでの間の時点において作成された連絡協議会の存在を対外的に示す資料も一切提出されていない。抗告人の主張によれば、いわゆる霊感商法問題について、抗告人が調査を依頼したのは、株式会社ハッピーワールドであり、当時具体的な販売活動に携わっていたはずの連絡協議会ではない。昭和62年5月1日付けで上記調査依頼に対する回答をしたのは株式会社ハッピーワールドであり、そこには、連絡協議会の存在を示す記載はない。そもそも、信者らの任意団体たる連絡協議会の存在が訴訟上主張され始めたのは、いわゆる霊感商法問題について最初に民事訴訟が提起された昭和62年から7年を経過した後のことである。 [79] また、協会員らは、ブロックが中央本部の下にあり、中央本部を統括する責任者がCであることを認識していたが、「連絡協議会」という名称を知らなかった。 [80] そして、いわゆる信者団体と抗告人との間に様々なあつれきがあったとの証言(証人D)を裏付ける具体的な証拠はないし、連絡協議会が消滅したという平成4年ころ前後において、ブロック以下の部署や活動内容に何らかの変化があったことも見受けられない。 [81]ウ 以上によれば、抗告人と区別された独立の団体としての連絡協議会の存在自体、極めて疑わしいといわざるを得ない。 (2) 抗告人への帰属の有無 [82] 中央本部以下の組織の構成員は、少なくともその大半が、協会員又は抗告人の教義を学ぶ者であり、抗告人の構成員又はその予備群にほかならない。そして、中央本部以下の組織がそれ自体独立の団体であったことは極めて疑わしいのであるから、これが抗告人自体に属するとの原告らの主張には相当の合理性が認められる。しかしながら、抗告人はこれを否定するので、以下この点につき検討する。 [83]ア 協会員らは、経済活動と抗告人の本来的事務に属する伝道活動とを分け隔てなく行っており、それが異なる主体に属する活動であるとの観念を有していたとは認め難く、かえって、ブロック以下の部署における活動がすべて抗告人の活動であると認識していたと認められる。少なくとも昭和58年ころまでは、抗告人の公式的な組織としての布教所が地区本部とも称され、地域の代表的な教会がブロック本部と呼ばれていたこと、中央本部がいずれの団体に属するのかが対外的に何ら表示されていなかったこと、ブロック以下の部署の活動を担う者の少なくとも大半が協会員であり、しかも、その活動に専従することは「献身」と呼ばれており、その活動内容が抗告人の教義に密接に関連することなどからすると、協会員らが、その組織が抗告人に帰属すると考えることはごく自然であり、それにもかかわらず、ブロック以下の部署が任意団体に属すると認識していた旨の協会員の証言は、不自然であって信用できない。 [84]イ Hの手記には、協会員が資金カンパ、歳末助け合い募金、印鑑・大理石壷・多宝塔の販売等を行うようになったのは、昭和55年の文鮮明の経済局設置命令により、抗告人が経済第一主義に変質したからである旨の記載がある。そして、抗告人の副会長が、「ファミリー」の昭和57年10月号において、 「今までキリスト教は、長い間十分の一献金という発想をしてきました。自分の中の十分の一を神に帰すというのです。しかし今はもう、そういう悠長なことをやっていられないのです。今では百パーセント神に帰さなければならないのです。その内容は何かというと、結局宗教の精神を示すために経済を通してやるという道なのです。」などという文章を寄稿していること、昭和61年6月14日、東京大学原理研究会の責任者(その後東京ブロックのブロック長でもあった。)が、「抗告人の経済部門」とか、「抗告人の事業部」とか、「抗告人の事業体」などと発言したことがあることなどは、Hの手記の内容に沿うものであり、これらの事実は、抗告人に経済事業を担当する部門が存在することをうかがわせる。 [85]ウ 抗告人は、東京都に対し、昭和52年ころ、法人の収益事業として正式に人参茶販売を許可してもらえないかと相談し、その規模が大きすぎるなどの理由で許可しない旨の指導を受け、また、ビデオ受講施設を法人として行えないかと相談し、昭和57年10月末、東京都総務局行政部指導課から、ビデオ受講時に受講者から料金を徴収することが収益事業とみなされ、教会は規則にないものを行ってはならないとの注意を受けたことがある。そうすると、東京都からこうした指導・注意を受けなければ、上記活動は抗告人の公式的な活動となっていたであろうことが推測される。 [86]エ C及びDが各ブロック全体の売上げ等の目標を月100億円と定めたのは、 「統一運動その他もろもろの行事という中で我々自身が考えていったときに、経済規模を拡大していかないと、個々の信者さんが献金されるボリュームというのを考えてみたら今の経済規模では到底追いつかない。で、我々自身の連絡協議会のトータルボリュームを大きくしないことにはそれだけの目標に到達しないということを計算」したことによる。ブロック以下の部署における活動内容は、統一運動を支援する目的の下になされているだけではなく、宗教活動にわたるものも含まれる。抗告人自身による公式の伝道活動については、関係者の供述以外にその具体的な規模や態様を認め得る資料に乏しく、他方、ブロック以下の部署においては、信者獲得のための伝道活動が不断に行われ、その中で行われる21修は抗告人が主催するものであるし、もとより抗告人への入会に際しては抗告人の場が用いられており、抗告人宛の献金も活発にされている事情がある。こうした協会員の活動を、統一運動の宗教分野の中心に位置する抗告人が関わりを持っていなかったなどとは到底考え難い。 [87]オ C及びDは、抗告人の草創期の信者であり、Cは、「ファミリー」の昭和53年1月号に抗告人の「局長」の肩書きを付したあいさつ文を寄せるなどしたことがある。また、Dは、昭和61年6月4日、韓国の文鮮明の許に赴いた抗告人幹部40人の1人であって、韓国統一教会の機関誌「史報」には40人の中でも6番目に名前が記載されている。これらの事実に照らし、C及びDが抗告人の公式的な役職に就任していたか否かはさておき、抗告人内部において、実質的に多大な影響力を有していたことが明らかである。 [88]カ 岩見沢教会の帳薄等に照らし、抗告人の公式的な組織の末端に近い開拓教会では、献金とともに、本来各販売店ないし委託販売員においてなされるべき商品の売上げ等の記録が一体としてなされており、販売店やビデオセンターヘの人員の配置についても、開拓教会において統一的に把握されていたことが認められる。これを歴史的にみても、「祝福」の昭和49年冬季号には、任地と責任分担の表において、株式会社ハッピーワールドや「学生部」、地域の「団長」等、国内外の配属先が一体として記載されており、このことは、抗告人が、友好団体、販社、地域のまとめ役等を含めた協会員の人事全般を統括していたことをうかがわせる。公認教会制度の発足後も、抗告人の正規の職員とそれ以外の協会員の人事交流は存続しており、このことは、抗告人は、ブロック以下の部署における各協会員の活動内容を不断に把握し続けていることを物語る。 (3) 小括 [89] 以上によれば、中央本部及び各ブロック以下の部署については、その存在自体極めて疑わしい連絡協議会なる独立の任意団体であったと解することはできず、その名称がHのいう「経済局」であるか否かはさておき、抗告人の非公式的な一部門に属していたか、あるいは、抗告人の本来の事業である伝道活動をその協会員が組織的継続的に行ってきたものである以上は、少なくとも、その活動が、抗告人のものとして明示的又は黙示的に許容され、その実質的な指揮監督下に置かれていたと推認するのが自然であり、合理的である。 2 協会員の行為の違法性 [90](1) 本件の原告ら(原告16~32)は、いずれも時期を異にして抗告人への加入を勧誘されて加入した者であり、その加入に至る経緯はいずれも事情を異にしている。しかし、抗告人の協会員による原告らに対する加入の勧誘等は、組織的体系的に整然と行われていることに注目すべきである。 [91] その勧誘等の手段方法について指摘すべき特徴的なことは、次のとおりである。 [92]ア 第1の特徴は、その勧誘等の方法が、長年の組織的勧誘等の経験に基づいた手法に基づき、組織的体系的目的的に行われているという点である。 [93] すなわち、 ① 毎月の動員、献金、販売等の目標を定め、その達成のため、宗教教義の勧誘であることを厳に秘匿して行う友人からの電話のほか、街頭アンケートや各戸訪間における手相、占い、姓名判断などでの反応を契機として、人生相談や各種占い、あるいは生涯学習、カルチャーセンターの名のもとに、抗告人の教義を伝道する目的で設置されたと認めるべきビデオセンターヘと言葉巧みに導き、 ② そこにおいても、宗教教義の伝道活動であることを悟られないように各種教養・娯楽ビデオを混入させつつ、抗告人の教義に関心を持たせるようにし、また、その教義を正当として受け容れやすいような抗告人の教義に関するビデオを視聴させたうえで、さらなる学習意欲や好奇心をかきたてる。そして、 ③ いずれも周到な準備と計画の下に企画されたプログラムである、未婚者については、余人を排した合宿等の形式によるツーデーズセミナー、ライフトレーニング、フォーデーズセミナーからさらに新生トレーニング、実践トレーニングを経て実践活動へと、既婚者については、同様に初級、中級、上級コースから実践活動へと、言葉巧みに導き、 ④ この間、善良にして親切で明朗な協会員による親身の指導と激励や賞賛の中で高揚感溢れる連帯意識を醸成して心情的帰属意識を植え付ける一方、過程ごとに受講者の感想を集約してその教義の浸透度を確認把握する中で、その悩みや弱点、本人や家族先祖の病歴や不幸な歴史、さらには心情解放展と称して本人が過去に抱いた罪障感を巧みに告白させ、探索したうえ、 ⑤ 抗告人の教義とは直接の関連のない手相、姓名判断や家系図等を用いた根拠も疑わしい因縁話などにより、その心理的弱みを巧妙に突いてその不安をあおるなどして畏怖困惑させ、宗教的救いを希求する心情をかきたてて、抗告人の教義の学習の浸透を図ってきた。 また、これらの過程で、相手方の信頼ないし無防備に乗じ、様々な機会を利用してその資産や収入を把握しつつ、財産などの経済的物質的利益に執着する卑しさを強調して、陰に陽に献金の慫慂をし、あるいは物品の販売をしてきた。 [94]イ 第2の特徴は、抗告人の協会員は、上記のように組織的体系的目的的に宗教団体である抗告人への加入を勧誘等するに当たり、当初はこの点を厳に秘しているという点である。 [95] 抗告人への勧誘の初期段階においては、宗教団体の活動であることはもとより、宗教に関する勧誘であることさえ秘匿するばかりか、特定の宗教教義に関する伝道ではないか、あるいはまた、宗教そのものの宣伝ではないかと尋ねられた際に、その者の宗教的寛容性の程度に関わりなく、これを完全に否定する態度を堅持し、あるいは巧妙にはぐらかす一方で、プログラム内容について外部の親子や夫婦に話をしないように言葉巧みに指導していたのであるが、これは、勧誘に当たっての欺罔的手段を弄したものといわざるを得ない。 [96]ウ 第3の特徴的な点は、抗告人の協会員がその勧誘に当たって、抗告人の宗教教義とは本来関連がないような手法を駆使し、その教義上からも根拠があるとは考えられないような害悪を告知するなどして、欺罔威迫するという勧誘等の方法を用いていることである。 [97] すなわち、抗告人の協会員は、原告らに対する伝道活動に当たって、抗告人の教義とは本来関連がないというべき手相、姓名判断や家系図鑑定をほとんど例外なく行っているが、その判断や鑑定を行う者は、単に市販されている本や内部のマニュアル本を学習し、先輩の講義を受けただけであるにもかかわらず、もっともらしい鑑定等を行うばかりか、時には、あたかも、斯界の権威であるかのように霊能力を偽装し、虚偽の事実を告知して鑑定等を行い、その伝道活動への関心をあおったり、教義上の根拠のない害悪を告知して献金や物品の購入を迫ったりしている。こうした行為は、その教義の伝道方法としての相当性を欠いているというべきである。とりわけ、こうした行為が、いわゆる霊感商法といわれる詐欺ないし恐喝行為というべき勧誘方法と類似した手法を、抗告人の協会員の勧誘のマニュアルとして踏襲した結果とうかがわれる点は、その違法性を判断する上で見逃すことはできない。 [98](2) 次に、抗告人の信者による一連の勧誘行為の目的について検討する。 [99] その勧誘の目的は、抗告人の信者となる協会員の獲得であることは明らかである。問題は、その獲得した協会員の行う活動にある。協会員は、上記のような不公正な手段を駆使してでも、さらに新たな協会員の獲得のために活動することが求められる一方、万物復帰を始めとした宗教教義の名の下では抗い難い献金や出捐が間断なく、また時には、自らの資産や収入から考えると不相当というべき献金が求められるだけでなく、その修行過程のプログラムとして、それ自体が抗告人の教義とは直接の関連性があるとは認められない各種商品(印鑑、宝石、毛皮、絵画、茶、化粧品、サウナ設備、浄水器、珍味)の販売活動や目的を偽った募金活動などに従事することが組み入れられ、その積極的な活動が執拗に求められることである。そして、その販売活動に当たっては、常に客観的にみても達成が困難と考えられるような販売目標を、それも動員人数と売上金額を各人ごとに定めることになっており、その目標の到達のために、極端な例としてはキャラバン隊にみられるような肉体的精神的限界を極め、あらゆる手段を尽くすことが求められる一方、そのような労役の提供に見合うような対価の支払は一切ないに等しいばかりか、原告らの多くは、自ら購買者となって、その売上げに協力することが求められ、また、一連の活動の過程においては法規に触れることも厭わないものとされ、その目標の成就すなわち集金活動の成功こそが信仰のあかしとさえ受けとられるような体系に組み入れられている。このような経済活動が一時的偶然的なものではなく、また、特定の宗教上の必要に迫られたものあるいは宗教教義そのものの現実化とみるべき事情もなく、むしろ、これを外形的客観的に見る限り、経済的利得のために、宗教教義の名を冠して、労働法規を始めとする強行法規を潜脱しようとしていたものといわざるを得ない。 [100] 抗告人の協会員が、協会員となった原告らに求め、あるいは求めようとしていたものは、上記のような勧誘、献金及び経済活動なのであって、これを外形的客観的に観察して直裁に表現すれば、原告らの財産の収奪と無償の労役の享受及び原告らと同種の被害者となるべき協会員の再生産という不当な目的にあったということになる。 [101](3) 以上の認定判断に基づいて本件の原告らに対する一連の勧誘活動等を見ると、結局、それらは、 ① 原告らの財産の収奪と無償の労役の享受及び原告らと同種の被害者となるべき協会員の再生産という不当な目的に基づきながら、これを秘匿した上、 ② 人の弱みに巧みにつけ込み、宗教教義とは直接の関連のない不安をあおり立て畏怖困惑させながら、信仰に到達し得る段階までは抗告人という宗教団体の教義であることを否定するなどしてこれを明かすことなく、その救いを抗告人の教義に求めるように誘導すべく組織的体系的目的的に教育を施し、その各過程において、入教関係費、各種物品購入費用を出捐させ、また、 ③ 抗告人の教義であることを明らかにした後には、上記のような目的を知らない原告らをして、宗教教義の名の下に、さらに同様の費用を出捐させたほか、無償の労役の提供をさせたり、新たな協会員獲得のための伝道活動に従事させたもの であって、社会的にみて相当性があると認められる範囲を逸脱した方法及び手段を駆使した、原告らの信仰の自由や財産権等を侵害するおそれのある行為というべきであって、いずれの原告に対する関係においても、違法性があると判断すべきものである。 3 抗告人の責任原因 [102] 上記1のとおり、原告らに対する違法行為に携わった協会員が所属する部署(抗告人が連絡協議会と呼ぶ組織)は、抗告人の非公式的な一部門に属していたか、あるいは、少なくとも、その活動が、抗告人のものとして明示的又は黙示的に許容され、その指揮監督下に置かれていたと推認され、かつ、協会員の上記違法行為は、いずれも抗告人の教義の伝道ないしそれに基づく宗教的体験の場としてなされたものであるから、上記違法行為は、外形的に抗告人の事業の執行につきなされたものといえる。そして、上記認定の事実に照らせば、原告らに対して直接勧誘した者はともかく、抗告人が連絡協議会と呼ぶ組織の責任者においては、少なくとも、それらの行為の違法性を当然認識していたと推認するのが相当である。 [103] そうすると、抗告人は、少なくとも、協会員の行った上記違法行為について民法715条1項に定める使用者責任を免れない。 1 献身に至らしめる勧誘・教化行為の違法性について [104](1) まず、原告らに対する一連の勧誘・教化行為の方法について検討する。 [105]ア 原告33に対する勧誘・教化行為の方法は、要するに、以下のとおりである。 [106] 同原告は、aから自己啓発サークルであるとの説明を受けてビデオセンター(NCF)に入会し、特定の宗教団体の教義であるとは気付かないまま抗告人の教義を学習し、霊界や悪霊の存在を徐々に意識するようになっていったが、入会の約3か月後、ワンデーセミナーに参加し、そこで、抗告人の名称や伝道目的を知るに至り、この時点で、ビデオセンター等から遠ざかることを決意した。 [107] しかしながら、その後、ビデオセンターのスタッフは、同原告をビデオセンターにつなぎ止める目的で、同原告から特に要請がなかったにもかかわらず、同原告の家族や先祖の病歴や不幸な歴史を聞き出し、いずれ同原告の家族にも不幸が訪れるなどと述べ、ビデオセンターで徐々に霊界や悪霊の話が植え付けられていることを利用して、その心理的弱みにつけ込み、次のセミナーに参加することを勧めた。そして、その後のセミナー及びトレーニングで、同原告には氏族を救う使命があり、使命を知った者がこれを果たさないと、先祖が救われず不幸な出来事が家族や親族に次々と起こるだけでなく、死後霊界の地獄で先祖に責められるなどと教え、同原告を抗告人の教義から離脱することを困難な精神状態にさせた。平成元年8月、同原告のいとこが21歳の若さで水難事故で死亡した際には、bが、死亡の原因は、同原告の家族が統一教会に反対するからであるなどと述べ、同原告の不安を更にあおって献身に至らしめた。 [108] さらに、セミナー及びトレーニングの講師等は、救いを求める心情をあおられた同原告に対し、救いの条件として、カイン(部下ないし後輩)はアベル(上司ないし先輩)の指示に絶対服従しなければならないなどと教え、また、同原告の判断に基づく行動をサタンが働いたなどと述べ、同原告に対し、自己の判断で行動することを許さなかった。 [109]イ 原告34に対する勧誘・教化行為の方法は、要するに、以下のとおりである。 [110] 同原告は、自己の生き方に悩んでいたころ、cからビデオセンターで人生について学べると説明され、ビデオセンターに行ったところ、姓名判断で転換期を迎えているなどと言い当てられ、ビデオセンターに入会することを決めた。 [111] そして、ツーデーズセミナーの後、ビデオ講座で、低い霊界に行った先祖の協助(働きかけ)があると不幸な出来事が起こること、先祖の願いに応えないと先祖の救いが絶たれ、霊界で先祖から責められるといった教えを受け、職場の人間関係で行き詰まっていたことと先祖の協助を結び付け、自己が先祖を救う立場にあることを意識するようになったころ、ビデオセンターのスタッフから、日本の朝鮮半島の植民地支配時代の行為について罪悪感を持たされ、その後、自己の叔父が朝鮮半島で警察官をしていたことを知ったため、先祖の罪を具体的に意識させられた。 [112] また、初級トレーニングでは、自己の罪を意識するように言われ、徹底的にメシヤの心情と自己の罪を理解しようと努め、自己の罪深さを実感するようになっていった。また、アベル(上司ないし先輩)に絶対服従するように教えられ、班長にその日1日の出来事を報告し、それが神様に近い出来事であったのか又はサタンが働いたものだったかを教えられた。 [113] フォーデーズセミナーのころになり、原理を知ってその道を行かなければ、知らないでその道を行かない人よりもっとひどい地獄に堕ち、先祖、子孫ともに苦しみ続けるなどと言われ、抗告人の教義から離脱することが困難な状態となり、献身に至った。 [114]ウ 原告35に対する勧誘・教化行為の方法は、要するに、以下のとおりである。 [115] 同原告は、ビデオセンター及びツーデーズセミナーにおいて堕落論を学習し、自己の堕落性を強調され、このまま神の願わない自分勝手な結婚をすると、罪が子に遺伝すると教えられ、不安な気持ちにさせられたが、自分の罪を解決する方法についてはその場で教えてもらえず、これを知るには次のライフトレーニングに参加せざるを得ないという気持ちにさせられてライフトレーニングに参加し、そこで、抗告人の名称や伝道目的を知らされた。 [116] 上記の時点で、同原告は、抗告人に対する抵抗感を感じたものの、スタッフから、仮に今まで学んできたことが真理であったら大変なことになると言われて不安に思い、その後のセミナー等にも参加したが、そのうち、原理の道を知った者が原理の道を離れると、原理の道を知らない者より罪が重くなり、死後、霊界で苦しむなどと言われるようになって、抗告人の教義から離脱することが困難な状態になり、献身に至った。 [117] また、その過程で、スタッフは、同原告に対し、堕落エバなどと呼んで度々叱りつけ、堕落人間であることを強く意識させ、その判断に自信をなくすようにし向けた。 [118](2) 次に、原告らに対する一連の勧誘・教化行為の目的について検討する。 [119]ア 上記目的が抗告人の新規信者の獲得にあることは自明であるが、抗告人の献身信者の間では、伝道に当たり、抗告人の教義とは直接関係がなく、かつ、本人の求めがないのに姓名判断をし、今が転換期であるなどといった話をしたり、家系図に基づく因縁話をしたりすることがマニュアル化されていることが認められる。すなわち、抗告人の信者らの伝道活動は、純粋に抗告人の教義を広めることを目的としたものではなく、相手方を畏怖困惑させ、それによって抗告人の教義からの離脱を困難にすることに主眼を置いていたものといわざるを得ない。 [120]イ そして、一連の勧誘・教化行為によって献身に至った信者は、抗告人の新規信者獲得のために伝道活動を行うほか、その教義とは直接関係がない商品(ハンカチ、茶、宝石、珍味、印鑑等)の販売行為に従事させられるところ、その活動には厳しい達成目標が課せられており、信者の努力よりも実績を重視する実績至上主義が採用されており、献身信者に対して上記活動に見合う対価の支払はなく、売上金の使途が信者に明らかにされているものとも認められない。また、抗告人の信者が抗告人の教義上原罪から解放される唯一の手段である祝福に参加するには、140万円という多額の感謝献金をすることが条件となっていた。 [121]ウ また、伝道の対象者からは、実践メンバーとしてやっていけない者、身体の不自由な者、病人、時間のない者を排除するよう指導されていたことが認められるのであり、抗告人の新規信者獲得のための伝道活動は、純粋に宗教上の目的に出たものであるかどうかは疑わしく、献身後、過酷な伝道活動や物品販売活動に従事できる者を獲得することにあったものと推認することができるのである。 [122]エ 以上によれば、原告らに対する勧誘・教化行為は、原告らに献金及び無償で物品販売活動等を行わせること並びにそのような行為をする抗告人の信者を再生産することによって、経済的利益を上げることもその目的であったものと推認するのが相当である。 [123](3) 以上の判示によれば、上記勧誘・教化行為は、前記(2)認定の不当な目的で行われていたにもかかわらず、原告らに対しては、その不当な目的を秘匿したまま、先祖の因縁話をしたり、霊界の先祖からの働きかけや自己の罪深さを意識させたりするなどして不安をあおり、それによって、次の教化プログラムに進ませ、ある程度抗告人の教義を教え込んだ時点で、抗告人の教義を知った者がこれから離れると、より罪が重くなり、死後霊界で低い場所に行って苦しむとか、先祖の救いの道が絶たれ、霊界で先祖に讒訴されるなどと述べ、抗告人の教義から離脱することを困難な精神状態にしたものというべきである。さらに、その過程では、原告らが、堕落人間であることを意識させられ、救いを求める心情をかきたてられているのを利用して、救いのためには堕落人間である自分が自己の判断で行動することは許されず、アベルの指示に絶対服従しなければならないなどと指導し、その上、原告らの考えや行動をサタンの働きであるとか堕落エバなどと述べ、また、抗告人に反対する意見をサタンであるなどと述べ、これに耳を傾けさせず、結果として、原告らの自由意思を阻害しているものといわざるを得ない。 [124](4) したがって、上記判示の原告らに対する勧誘・教化行為は、不当な目的に基づく社会的相当性を逸脱した方法で、結果として原告らの自由意思を阻害しているものといわざるを得ず、原告らの信教の自由を侵害する違法な行為というべきである。 2 献金強要の違法性について [125](1) dが、原告34に献金をさせた方法は、次のとおりである。 [126] すなわち、平成3年6月25日、dは、同原告に対し、日本が朝鮮半島を植民地支配していた時代のビデオを見せ、同じ日本人としての罪悪感を持たせて献金を勧め、少額であれば献金してもよいという気持ちにさせ、翌26日、dは、同原告に対し、再度ビデオ「恨」を見せ、同原告の罪悪感を更にあおった上、霊界の先祖が救いを求めている旨話をし、献金によって罪を清算するよう述べ、さらに、お金に執着する気持ちは邪心であるなどと言い、同原告の預金全額を献金するよう要求し、献金の日を翌日と指定し、100万円を献金させた。 [127](2) また、 ① dが同原告に見せたビデオは、抗告人の教義とは直接関係ないものであり、受講生の誰もがビデオセンターで見せられるわけではなく、同原告も特に視聴を希望したものということはできず、 ② それまで献金の意向を持っていなかった同原告が、同日中に献金を考え始めており、 ③ 同原告がビデオセンターに初めて行ったとき、アンケートで預金額を回答させられていたものということができるのであって、 以上によれば、dの前記行動の目的が、同原告に献金を決意させることだけにあったことは明らかである。 [128](3) しかも、dの説得の方法は、同原告がもともと献金の意向を持っていたわけでもないのに、ビデオによって日本人としての罪悪感をあおり、先祖の救いが献金にかかっているかのような発言をして同原告を困惑させるものである上、執拗であって、また、同原告の預金全額という不相当に高額な献金をするについて、熟慮の余地を与えず、即断を迫っているものであり、その結果として、同原告は、100万円を献金してしまっている。 [129](4) 以上によれば、dの同原告に対する献金説得行為は、その目的、方法及び結果において、社会的に相当な行為であるとはいうことはできず、違法というべきである。 3 抗告人の責任原因 [130](1) 抗告人は、ビデオセンター、各種セミナー及びトレーニング、ホーム等は抗告人が運営、主催するものではなく、抗告人の信者組織である連絡協議会において設置され、管理運営されていたものであるから、抗告人とは実質的な指揮監督関係にない旨主張する。 [131] しかしながら、ビデオセンターから始まる一連の勧誘・教化過程においては、抗告人の信者獲得のため、抗告人の教義の教化行為が組織的かつ不断に行われており、その結果献身に至った信者も、抗告人の教義の実践活動として伝道活動や経済活動に励んでいるものということができる。 [132] また、抗告人は、昭和57年4月から、ビデオによる伝道システムを検討し、これに着手していたものであるから、東京都の指導がなければ、上記活動は、抗告人の公式活動として行われていたであろうと推認することができる。 [133] そして、一連の過程において、スタッフや講師は、受講生等に対し、その参加しているセミナー等が抗告人とは別個の信者組織に属する活動であるとは説明していなかったことが認められる。 [134](2) また、抗告人は、株式会社光言社から中和新聞を発行しているところ、同新聞には、抗告人自体の活動と特に区別することなく、アンケートを用いた路傍伝道やツーデーズセミナー、スリーデーズセミナー、フォーデーズセミナー、ライフトレーニング、新生トレーニング等の記事が掲載され、抗告人としても、上記活動を認識し、積極的に推奨していることが認められる。 [135] そして、研修等の過程では、抗告人に対する献金も行われているのであって、抗告人がホームに対し、献金の種類と意義を説明し、献金を励行するよう呼びかけていることも認められるのである。 [136](3) 以上によれば、原告らに対する各行為に携わった信者の活動は、抗告人の活動として明示的(少なくとも黙示的)に許容され、抗告人の実質的指揮監督下に置かれていたものと認められ、かつ、同各行為は、抗告人の教義の伝道及びそれに基づく実践活動の場で行われたものであるから、抗告人の事業の執行についてなされたものということができる。 [137] したがって、抗告人は、原告らに対する違法行為について、民法715条1項に基づき責任を負うものというべきである。 [138] この判決では、宗教法人としての抗告人及び信者組織の両者を含めた意味で「統一協会」との用語を用いるとされている。この項においては、判決で「統一協会」との文言が使用されている場合、「統一教会」との文言を使用することとする。 1 信者活動に対する抗告人の指揮・命令関係の有無について [139] 抗告人は、万物復帰の教えの内容及び抗告人が収益事業を一切行っていないことに照らせば、信者らによる入信勧誘・教化行為や、それに続く献身者等による経済活動が、抗告人の活動として明示的又は黙示的に許容されているということはなく、信者組織ないし個々の信者に対する抗告人の指揮・命令が認められるということもない旨主張する。 [140] しかしながら、原告らに対する抗告人の信者組織ないしそれに属する信者らの入信勧誘・教化行為及び献身後の経済活動に対する指揮・命令は、極めて組織的かつ不断に行われ、また、その方法も、人間心理の弱点を巧妙についた、その意味では周到に練り上げられたものとなっており、しかも、そのような活動の主体となった信者組織が全国的に展開していたことが明らかである。そして、本来、宗教法人ないし団体にとって、入信勧誘・教化行為は、その活動の中心を占めるものと解されるところ、抗告人が、別途、自らの組織と自認するような組織をもって、上記のような活動を行っていたことを認めるに足りる確たる証拠はなく、その一方、抗告人の信者組織と抗告人との関係についても、その信者組織が、組織上、あるいは規則・規程等を設けてその規定上、抗告人から独立して、上記の活動を行っていたことを認めるに足りる確たる証拠もない。さらに、抗告人又はその信者らが主催するセミナー等において、物品の販売活動等の意義が抗告人の万物復帰の教義との関連で講義されるとともに、参加者が万物復帰の教義の実践として実際に物品の販売活動等を行うことを要請されていたこと、献身者らによる経済活動においても、 「個人が勝利せずして全体の勝利はなく、限界を超えてこそ神に出会える。責任のない自由はない。実績のない自由はない。」などとして、献身者ら全体として実績を出すように日常的に求められていたことが認められる上、そのような献身者らによる経済活動は、ほとんど無償で、かつ、過酷なまでに厳しい指示の下で行われていたことから、全体として、相当多額の経済的利益が上がっていたものと推認されるところ、入信勧誘・教化行為と結び付いて組織的に行われていた上記経済活動の状況から、その利益も、ほとんどが抗告人に帰属していたもの(その最終的な帰属者が誰であるかは、しばらく措く。)と優に推認することができる。 [141] 上記の諸点にかんがみると、抗告人の信者組織ないしそれに属する信者らの行為は、入信勧誘・教化行為についてはもとより、経済活動についても、抗告人の活動として明示的(少なくとも黙示的)に許容されており、信者組織ないしそれに属する信者らに対し抗告人の実質的な指揮・命令が及んでいたものというべきである。 [142] したがって、抗告人の上記主張は採用することができない。 2 被侵害利益、違法性について [143](1) まず、原告ら(原告36~42)に対する一連の勧誘・教化行為の方法について検討する。 [144] 原告らに対する勧誘・教化行為は、原告らの関心事や私的な悩み等を利用して言葉巧みに原告らに近付き、徐々に抗告人の教義への関心を持たせつつ、段階を踏んだセミナー(修練会)やトレーニング等に参加させ、統一原理に対する理解を徐々に浸透させ、さらには教義の実践と称して具体的な伝道活動や経済活動に従事させ、その過程で自らが勧誘された過程や、自らが現に行っている活動に多少の疑問を呈するようになっても、信仰を止めることによって自己及び一族全員の現世での救済が得られなくなるという心理を持たせることによって統一教会からの離脱を困難にする契機を有するものであったということができる。 [145](2) 次に、抗告人の勧誘・教化の目的及び結果について検討する。 [146] 抗告人(直接的には、抗告人の信者組織ないしそれに属する信者ら)の勧誘・教化の目的が、抗告人の新規信者の獲得にあることは明らかであるが、抗告人の献身者は、伝道活動や経済活動に当たり、アベルと称する信仰上の上司から過酷なノルマを常に課され、ほとんど無償に近い報酬で、抗告人の教義とは直接関係がない珍味販売等の商品販売活動に奔走させられたり、マニュアルに従って姓名判断や家系図に基づく因縁話をして印鑑、壺、多宝塔等を販売するよう指示されていた。そして、伝道の対象者については、実践メンバーとしてやっていけない者、身体の不自由な者や病人(これらの者は、宗教の本来の目的からすれば、まさに伝道の対象とされるべき者と考えられる。)、時間のない者を排除するよう指導されていた。 [147] そうすると、原告らに対する抗告人(直接的には、抗告人の信者組織ないしそれに属する信者ら)の伝道活動は、抗告人の教義を広めることを目的としたものではあるが、結局は、勧誘された者を抗告人の教義から離脱することを困難にしつつ、信仰が深まった者に、献身という名の抗告人の実践活動家になるよう勧誘し、献身後は献金及び無償での物品販売活動等の経済活動を文字どおり献身的に行わせ、さらには、献身者による伝道活動によってそのような経済活動及び伝道活動をする献身者を拡大再生産し、経済的利益を上げるという宗教の本来の目的から大きく逸脱した極めて不当な目的を持つものであるといわざるを得ない。そして、この不当な目的による抗告人(直接的には、抗告人の信者組織ないしそれに属する信者ら)の勧誘・教化によって、原告らは献身者として、相当長期間にわたって、はなはだ過酷な無償労働に専従させられ、婚姻の実態はなく、婚姻の届出の手続もとってはいないものの、自らの意思で選択した者ではない相手との結婚式を挙げさせられ(原告37~39の3名)、両親ら家族との接触も断つという重大な結果が生じているということができる。 [148](3) 以上によれば、原告らに対する抗告人(直接的には、抗告人の信者組織ないしそれに属する信者ら)による勧誘・教化行為は、極めて不当な目的に基づく著しく社会的相当性を逸脱した方法であり、結果として原告らの自由意思を阻害したものといわざるを得ず、原告らの信教の自由や婚姻の自由を侵害する違法な行為というべきである。また、献金(ビデオセンターの受講料やセミナー等の参加費を含む。)や印鑑等の購入についても、個別的に見れば、いわゆる因縁トークといわれるものが行われていないものもあるが、いずれの献金等や購入についても、抗告人(直接的には、抗告人の信者組織ないしそれに属する信者ら)による違法な勧誘・教化行為が大前提となっているのであるから、抗告人が、当該違法行為によって、原告らの財産権を侵害したと評価することができる。 [149](4) これを原告ら一人一人についてみると、次のとおりである。 ア 原告36 [150] 原告36は、aから、「統一教会」との表示のあるパンフレットを交付され、抗告人の教会で話を聞くことを勧誘されたものであるが、その際、aは、新しい真理の話を聞こうと言って同原告を勧誘したものであり、勧誘の目的が伝道活動や物品販売活動等の経済活動に従事する献身者を獲得することによって経済的利益を上げることにあることを隠し、統一教会の教義の創始者が文鮮明であることもホーム生活や献身があることも知らせないまま同原告を抗告人の教義に誘い込み(同原告は、キリスト教の一宗派と考えて抗告人に入会している。)、その後は、組織的なセミナー等を通じて、同原告を徐々に抗告人の教義から離脱することが困難な精神状態に追い込んでいったものであるから、このような入信勧誘・教化行為は違法というべきである。 イ 原告37 [151] 原告37は、bから勧誘されて抗告人の教会に通うようになり、統一教会に入会したものであるが、その際、修練会に参加したことを両親や知人に話すとサタンが入り、学んできたことをサタンに奪われてしまうと注意された上、勧誘の目的が上記アのとおりであることはもとより、統一教会の教義の創始者が文鮮明であることもホーム生活や献身をしての活動があることも知らされず、その旨の認識もないまま、その後、組織的なセミナー等を通じて、徐々に抗告人の教義から離脱することが困難な精神状態に追い込まれていったものであるから、このような同原告に対する入信勧誘・教化行為は違法というべきである。 ウ 原告38 [152] 原告38は、勧誘者であったcから、同人が統一教会の信者であることもクリスマスパーティの主催者がその信者組織であることも知らされないまま、同パーティに誘われたことに始まり、勧誘の目的が上記アのとおりであることはもとより、抗告人の教義の伝道であることすら知らされないまま、聖書の勉強という形で抗告人の教義に誘い込まれ、その後、組織的なセミナー等を通じて、徐々に抗告人の教義から離脱することが困難な精神状態に追い込まれていったものであるから、このような同原告に対する入信勧誘・教化行為は違法というべきである。 エ 原告39 [153] 原告39は、統一教会の信者であることを伏せたままのdから、因縁トークによって印鑑及び壺を購入させられた上、その後、勧誘の目的が上記アのとおりであることはもとより、抗告人の教義の伝道であることすら知らされないまま、ビデオセンターへの勧誘に始まる組織的なセミナー等を通じて、抗告人の教義に誘い込まれ、徐々に抗告人の教義から離脱することが困難な精神状態に追い込まれていったものであるから、このような同原告に対する入信勧誘・教化行為は違法というべきである。 オ 原告40 [154] 原告40は、勧誘の目的が上記アのとおりであることはもとより、抗告人の教義の伝道であることすら知らされないまま、ビデオセンターへの勧誘に始まり(同原告が見せられたビデオセンターのパンフレットには、人生、世界、結婚等の様々な分野の勉強ができるとの記載があったが、「統一教会」の表示はなかった。)、その後も、組織的なセミナー等を通じて、抗告人の教義に誘い込まれ、徐々に抗告人の教義から離脱することが困難な精神状態に追い込まれていったものであるから、このような同原告に対する入信勧誘・教化行為は違法というべきである。 カ 原告41 [155] 原告41は、勧誘の目的が上記アのとおりであることはもとより、抗告人の教義の伝道であることすら知らされないまま、路上でのアンケート、ビデオセンターへの勧誘に始まる組織的なセミナー等を通じて、抗告人の教義に誘い込まれ(同原告を勧誘したeは、同原告に対し、同ビデオセンターについて、宗教ではないと説明している。)、徐々に抗告人の教義から離脱することが困難な精神状態に追い込まれていったものであるから、このような同原告に対する入信勧誘・教化行為は違法というべきである。 キ 原告42 [156] 原告42も、勧誘の目的が上記アのとおりであることはもとより、抗告人の教義の伝道であることすら知らされないまま、路上でのアンケート、ビデオセンターへの勧誘に始まる組織的なセミナー等を通じて、抗告人の教義に誘い込まれ(同ビデオセンターに「統一教会」の関連施設であることを示す表示はなく、同原告を勧誘したfは、同原告に対し、青年のサークルであり、同原告と同じ学生も来ていると説明している。)、徐々に抗告人の教義から離脱することが困難な精神状熊に追い込まれていったものであるから、このような同原告に対する入信勧誘・教化行為は違法というべきである。 3 抗告人の責任原因について [157] 抗告人の信者組織ないしそれに属する信者らによる原告らに対する違法な入信勧誘・教化行為は、いずれも組織的かつ計画的に、抗告人の教義の伝道の過程又はその実践としての活動として行われたものであり、それについては、上記1で認定説示したとおり、抗告人の実質的な指揮・命令が及んでいたものということができる。そして、上記1で説示したとおり、本来、宗教法人ないし団体にとって、入信勧誘・教化行為は、その活動の中心を占めるものであると解されるところからすると、上記の違法な入信勧誘・教化行為は、抗告人の事業の執行につき行われたものというべきであり、また、それを行った信者らは、抗告人がその事業のために使用した者と評価することができるから、その限りにおいて、抗告人の被用者に当たるものと解すべきである。 [158] したがって、抗告人はその信者組織ないしそれに属する信者らによる原告らに対する違法な入信勧誘・教化行為について、民法715条1項の使用者責任を負うべきものというべきである。 [159] この判決では、宗教法人としての抗告人及び信者組織の両者を含めた意味で「統一協会」との用語を用いるとされている。この項においては、判決で「統一協会」との文言が使用されている場合、「統一教会」との文言を使用することとする。 1 信者活動に対する抗告人の指揮・命令関係の有無について [160] 抗告人は、統一教会の信者らによる伝道活動・経済活動や教育プログラムは全て信者組織である連絡協議会の活動であって、抗告人は何ら関知していない(抗告人と信者の活動との間に指揮・命令関係はない。)旨主張する。 [161](1) しかしながら、ビデオセンターへの勧誘等から始まる一連の勧誘・教化過程においては、抗告人の信者獲得のため、抗告人の教義の教化行為が組織的かつ不断に行われており、その結果献身に至った信者も、抗告人の教義の実践活動として伝道活動や経済活動に励んでいるものということができる。また、抗告人は、ビデオセンターの設置による伝道を検討していたが、収益事業に当たるとの東京都の指導によってこれを断念したというのであるから、東京都の指摘がなければ、宗教法人としての抗告人自身の活動としてビデオセンターの設置が行われたと推認することができる。 [162](2) さらに、抗告人は、株式会社光言社から中和新聞を発行しているところ、同新聞には、抗告人自体の活動と特に区別することなく、ビデオセンターによる伝道活動の報告や、地区ごとの伝道数を競わせる伝道大会等の記事が掲載されていることが認められ、この事実からすれば、抗告人としても、上記活動を認識し、積極的に推奨していることが明らかである。そして、研修等の過程では、抗告人に対する献金も行われているのである。 [163](3) 以上によれば、一連の抗告人への入信勧誘・教化行為や、それに続く献身者等による経済活動は、形式上は統一教会の信者組織あるいは個々の信者が主体となって行っていたものであったとしても、宗教法人としての抗告人の活動として明示的(少なくとも黙示的)に許容されており、実質的には信者組織あるいは個々の信者に対する抗告人の指揮・命令が認められるというべきであり、抗告人の上記主張は採用することができない。 2 被侵害利益、違法性について [164](1) まず、原告ら(原告43~51)に対する一連の勧誘・教化行為の方法について検討する。 [165] 原告らに対する勧誘・教化行為は、原告らの関心事や私的な悩み等を利用して言葉巧みに原告らに近付き、徐々に抗告人の教義への関心を持たせつつ、段階を踏んだセミナー(修練会)やトレーニング等に参加させ、統一原理に対する理解を段々に浸透させ、さらには教義の実践と称して具体的な伝道活動や経済活動に従事させ、その過程で自らが勧誘された過程や、自らが現に行っている活動に多少の疑問を呈するようになっても、信仰を止めることによって自己及び一族全員の現世及び来世での救済が得られなくなるという心理を持たせることによって統一教会からの離脱を困難にさせるものであったということができる。 [166](2) 次に、抗告人の勧誘・教化の目的及び結果について検討する。 [167] 抗告人の勧誘・教化の目的が、抗告人の新規信者の獲得にあることは明らかであるが、抗告人の献身者は、伝道活動や経済活動に当たり、アベルと称する信仰上の上司から指示され、ほとんど無償に近い報酬で、抗告人の教義とは直接関係がない珍味販売等の商品販売活動に奔走させられたり、姓名判断や家系図に基づく因縁話をして印鑑、壺、多宝塔等を販売する活動に従事させられたりしていた。そして、伝道の対象者については、実践メンバーとしてやっていけない者、身体の不自由な者や病人(これらの者は、宗教の本来の目的からすれば、まさに伝道の対象とされるべき者と考えられる。)、時間のない者を排除するよう指導されていた。 [168] そうすると、原告らに対する抗告人の伝道活動は、抗告人の教義を広めることを目的としたものではあるが、結局は、勧誘された者を抗告人の教義から離脱することを困難にしつつ、信仰が深まった者に、献身という名の抗告人の実践活動家になるよう勧誘し、献身後は献金及び無償での物品販売活動等の経済活動を文字どおり献身的に行わせ、さらには、献身者による伝道活動によってそのような経済活動及び伝道活動をする献身者を拡大再生産し、経済的利益を上げるという宗教の本来の目的から大きく逸脱した極めて不当な目的を持つものであるといわざるを得ない。そして、この不当な目的による抗告人の勧誘・教化によって、原告らは献身者として、相当長期間にわたって、はなはだ過酷な無償労働に専従させられ、婚姻の実態はないものの、自らの意思で選択した者ではない相手との結婚式を挙げさせられ、入籍までした者もおり、さらに、両親ら家族との接触も断たれるという重大な結果が生じているということができる。 [169](3) 以上によれば、原告らに対する抗告人による勧誘・教化行為は、極めて不当な目的に基づく著しく社会的相当性を逸脱した方法であり、結果として原告らの自由意思を阻害したものといわざるを得ず、原告らの信教の自由や婚姻の自由を侵害する違法な行為というべきである。また、献金(ビデオセンターの受講料やセミナー等の参加費を含む。)や物品(印鑑等)の購入についても、個別的に見れば、いわゆる因縁トークといわれるものがその都度行われていないものもあるが、いずれの献金等や物品購入についても、抗告人による違法な勧誘・教化行為が大前提となっているのであるから、抗告人が当該違法行為によって、原告らの財産権を侵害したと評価することができる。 3 抗告人の責任原因について [170] 抗告人の信者らがした原告らに対する入信勧誘・教化行為は、先祖の因縁や死後の世界で苦しむなどと必ずしも真実であるとはいい難い事実を執拗に告げて、原告らに恐怖を感じさせる等の方法によって入信させ、また、離脱が困難な精神状態に追いつめて抗告人における活動を継続させるなどの態様に照らせば、社会通念上許容される限度を逸脱しており、違法といわなければならないところ、抗告人の信者らの上記行為は、抗告人の教義の伝道や実践の過程において、組織的かつ計画的に行われたものである。そして、抗告人の信者らの上記活動は、抗告人の信者やその活動資金の獲得等に直結するものであって、抗告人の組織の維持、拡大や宗教活動に欠くことのできないものであることを考えれば、抗告人の事業の執行に関してされたものということができる。さらに、抗告人の信者らの上記活動が組織的、計画的に行われていたことや、原告らによる物品の販売等によって生じた利益も、上記活動に関与した信者らによって収得されたのではなく、抗告人の組織に納められていたと推測されること、原告らの中には抗告人に対する献金を求められた者もいたことなどの事情にかんがみれば、信者らの上記入信勧誘・教化行為は、抗告人の幹部等の明示ないしは黙示の指揮、命令のもとにされていたことは、容易に推認することができるから、上記信者らは、本件に関しては、抗告人の被用者の立場にあったものと考えるのが相当である。 [171] そうすると、抗告人の指揮、監督の下にある信者らは、抗告人の事業を執行するにあたって、原告らに対する違法な入信勧誘・教化行為を行い、このことによって、原告らの権利を侵害するなどして、原告らに財産上、非財産上の損害を与えたことは明らかといわなければならないから、抗告人は、使用者責任(民法715条1項)に基づき、原告らに対し、損害賠償責任を負担しなければならない。 [172] この判決では、宗教法人としての抗告人及び信者組織の両者を含めた意味で「統一教会」との用語を用いるとされている。この項においては、判決で「統一教会」との文言が使用されている場合、そのまま「統一教会」との文言を使用することとする。 1 信者活動に対する抗告人の指揮・命令関係の有無について [173] 抗告人は、統一教会の信者らによる伝道活動・経済活動や教育プログラムは全て信者組織である連絡協議会の活動であって、抗告人は何ら関知していない(抗告人と信者の活動との間に指揮・命令関係はない。)旨主張する。 [174](1) しかしながら、ビデオセンターへの勧誘等から始まる一連の勧誘・教化過程においては、抗告人の信者獲得のため、抗告人の教義の教化行為が組織的かつ不断に行われており、その結果献身に至った信者も、抗告人の教義の実践活動として伝道活動や経済活動に励んでいるものということができる。 [175] 本来、宗教法人ないし宗教団体にとって、入信勧誘や教化行為は、その活動の中心となるものであるが、抗告人が、信者組織であるとする連絡協議会とは別個に、自らの組織であると自認するような組織をもって、入信勧誘・教化行為を行っていたと認めるに足りる的確な証拠はない(他方、抗告人が信者組織であるとする連絡協議会と抗告人との関係についても、連絡協議会が、規則や規定等によって、抗告人から独立して活動することとされていたと認めるに足りる証拠もない。)。抗告人は、ビデオセンターの設置による伝道を検討していたが、収益事業に当たるとの東京都の指導によってこれを断念したというのであるから、東京都の指摘がなければ、宗教法人としての抗告人自身の活動としてビデオセンターの設置が行われたと推認することができる。 [176](2) さらに、抗告人は、株式会社光言社から中和新聞を発行しているところ、同新聞には、抗告人自体の活動と特に区別することなく、ビデオセンターによる伝道活動の報告や、地区ごとの伝道数を競わせる伝道大会等の記事が掲載されていることが認められ、また、抗告人又はその信者らが主催するセミナー等において、物品の販売活動や献金の意義が万物復帰の教義と関連して講義されるとともに、参加者自らも、万物復帰の教義の実践として、実際に物品の販売活動や物品の購入・献金などを要請されており、信者による経済活動に際しては、信者が全体として実績を出すことが日常的に求められていたことが認められる。 [177] これらの事実からすれば、抗告人としても、上記活動を認識し、積極的に推奨していることが明らかである(研修等の過程では、抗告人に対する献金も行われている。) [178](3) 以上によれば、一連の抗告人への入信勧誘・教化行為や、それに続く献身者等による経済活動は、形式上は統一教会の信者組織あるいは個々の信者が主体となって行っていたものであったとしても、宗教法人としての抗告人の活動として明示的(少なくとも黙示的)に許容されており、信者組織ないしそれに所属する個々の信者に対して、実質的な抗告人の指揮・命令が及んでいたというべきであり、抗告人の上記主張は採用することができない。 2 被侵害利益、違法性について [179](1) まず、原告ら(原告52~86)に対する一連の勧誘・教化行為の方法について検討する。 [180] 原告らに対する勧誘・教化行為は、原告らの関心事や私的な悩み等を利用して言葉巧みに原告らに近付き、徐々に抗告人の教義への関心を持たせつつ、段階を踏んだセミナー(修練会)やトレーニング等に参加させ、統一原理に対する理解を段々に浸透させ、さらには教義の実践と称して具体的な伝道活動や経済活動に従事させ、その過程で自らが勧誘された過程や、自らが現に行っている活動に多少の疑問を呈するようになっても、信仰を止めることによって自己及び一族全員の現世及び来世での救済が得られなくなるという心理を持たせることによって統一教会からの離脱を著しく困難にさせるものであったということができる。 [181](2) 次に、抗告人の勧誘・教化の目的及び結果について検討する。 [182] 抗告人の勧誘・教化の目的が、抗告人の新規信者の獲得にあることは明らかであるが、抗告人に入信した信者、特に献身者は、伝道活動や経済活動にあたり、アベルと称する信仰上の上司から指示され、ほとんど無償に近い報酬で、抗告人の教義とは直接関係がない珍味販売等の商品販売活動に奔走させられたり、姓名判断や家系図に基づく因縁話をして印鑑、壺、多宝塔等を販売する活動に従事させられたりしていた。そして、伝道の対象者からは、実践メンバーとしてやっていけない者、身体の不自由な者や病人(これらの者は、宗教の本来の目的からすれば、まさに伝道の対象とされるべき者と考えられる。)、時間のない者を排除するよう指導されていた。 [183] そうすると、原告らに対する抗告人の伝道活動は、抗告人の教義を広めることを目的としたものではあるが、結局は、勧誘された者を抗告人の教義から離脱することを困難にしつつ、信仰が深まった者に、抗告人の実践活動家になるよう勧誘し(最終的には献身者となるよう勧誘する。)、実践活動を決意した者に対しては、献金及び無償での物品販売活動等の経済活動を行わせ(献身者には文字どおり献身的に活動を行わせる。)、さらには、実践活動に従事する信者(献身者を含む。)による伝道活動によって、そのような経済活動及び伝道活動をする信者を拡大再生産し、経済的利益を上げるという宗教の本来の目的から大きく逸脱した極めて不当な目的を持つものであるといわざるを得ない。そして、この不当な目的による抗告人の勧誘・教化によって、原告らは、相当長期間にわたって、はなはだ過酷な無償労働に専従させられたり、婚姻の実態はないものの、自らの意思で選択した者ではない相手との結婚式を挙げさせられたりし(入籍までした者もいる。)、さらに、両親ら家族との接触を断たれる等の重大な結果が生じているということができる。 [184](3) 以上によれば、原告らに対する抗告人による勧誘・教化行為は、極めて不当な目的に基づく著しく社会的相当性を逸脱した方法であり、結果として原告らの自由意思を大きく阻害したものといわざるを得ず、原告らの信教の自由や婚姻の自由を侵害する違法な行為というべきである。また、献金(ビデオセンターの受講料やセミナー等の参加費を含む。)や物品(印鑑等)の購入についても、個別的に見れば、いわゆる因縁トークといわれるものがその都度行われていないものもあるが、いずれの献金等や物品購入についても、抗告人による違法な勧誘・教化行為が大前提となっているのであるから、抗告人が当該違法行為によって、原告らの財産権を侵害したと評価することができる。 3 抗告人の責任原因について [185] 各原告らに対して入信や実践活動への従事などを勧誘し、その後に伝道活動及び経済活動に従事させた信者組織ないしそれに属する信者らの各行為は、経済的な利益を追求するという目的のもとに抗告人の活動として許容され、かつ、上記信者組織ないしそれに属する信者らが、統一教会の創始者であり抗告人やその信者に対して絶大な影響力を持つ文鮮明やその配下というべき抗告人の幹部らの意を受けて、その指揮・命令の下、組織的・計画的に実行したものと評価できる。 [186] そして、宗教法人ないし宗教団体にとって、入信勧誘や教化行為は、その活動の中心となるものであるから、抗告人の信者組織ないしそれに属する信者らによる違法な入信勧誘・教化行為は、抗告人の事業の執行について行われたものであるというべきであり、また、実際に入信勧誘や教化行為を行った信者らは、抗告人がその事業のために使用した者と評価できるから、その限度においては、抗告人の被用者にあたると評価すべきである。 [187] したがって、抗告人は、民法715条1項に基づいて、その信者組織ないしそれに属する信者らによる原告らに対する違法な入信勧誘・教化行為について、原告らに生じた損害を賠償する責任を負うというべきである。 1 抗告人の信者らによる原告87に対する献金勧誘行為の違法性について (1) 平成3年8月12日頃に1000万円を貸し付けさせ、平成4年初め頃にそのうち未弁済の600万円を抗告人に対する献金に振り替えさせた行為 [188] これらの一連の貸付要求行為及び献金勧誘行為は、抗告人であることを秘して近づき、先祖因縁等の教えを植え付けた原告87に対し、具体的な害悪を告知して、殊更に同原告の不安、恐怖心等をあおり、1000万円を貸し付けさせた上で、最終的には600万円という過大な献金に振り替えさせたものと認められるから、社会的に相当な範囲を逸脱する違法な行為というべきである。 (2) 平成5年6月1日に5000万円を貸し付けさせ、平成7年8月4日に同5000万円を抗告人に対する献金に振り替えさせるとともに、同月9日に700万円を抗告人に献金させた行為 [189] これらの一連の貸付要求行為及び献金勧誘行為は、先祖因縁等の教えを植え付けた原告87に対し、具体的な害悪を告知して、殊更に同原告の不安、恐怖等をあおり、最終的には5700万円という著しく過大な献金をさせたものと認められるから、社会的に相当な範囲を逸脱する違法な行為というべきである。 (3) 総生畜献金の勧誘行為 [190] 抗告人の信者は、原告87に対し、 「あなたの分だけでは足りず、お母さんの分も併せて献金しないと、お母さんも助からず、地獄に行くことになる。」などと具体的な害悪を告知して、同原告の不安や恐怖心をあおり、総生畜献金名下に、自分の分に母親の分も加えた二人分の献金として、平成10年2月1日に160万円、同月24日に40万円、同年3月29日に200万円、同年5月12日に20万円の合計420万円を抗告人に献金させたのであるから、この総生畜献金の勧誘行為は、社会的に相当な範囲を逸脱した違法な行為というべきである。 (4) 平成14年分の献金 [191]ア 被告a及び被告bは、献金をしなければ、原告87の長男やその子にどんな災厄が降りかかるか分からないなどとして同原告の不安をあおって3000万円の献金を迫り、不安に陥った同原告をして、平成14年3月29日に3000万円を抗告人に献金させた。 [192] かかる献金勧誘行為は、抗告人の教義を植え付けた同原告に対し、具体的な害悪を告知して、殊更に同原告の不安、恐怖心等をあおり、3000万円という著しく過大な献金をさせたものと認められるから、社会的に相当な範囲を逸脱する違法な行為というべきである。 [193]イ 被告a及び被告bは、献金をしなければ、日本の国は滅び、同原告の一家に未来はありませんなどとして同原告の不安をあおって5000万円の献金を迫り、不安に陥った同原告をして、平成14年5月27日に5000万円を抗告人に献金させた。 [194] かかる献金勧誘行為は、抗告人の教義を植え付けた同原告に対し、具体的な害悪を告知して、殊更に同原告の不安、恐怖心等をあおり、5000万円という著しく過大な献金をさせたものと認められるから、社会的に相当な範囲を逸脱する違法な行為というべきである。 [195]ウ 被告a、被告c及びdは、さいたま市において文鮮明の三男が出席した大会が開催された直後、レストランに同原告を呼び出して説得を行い、同原告に対し、献金は自分から進んでやらなければ意味がないと心理的圧力を加えて自ら献金を申し出るように仕向け、平成14年7月19日に3000万円を抗告人に献金させた。 [196] 同原告は、被告cらの上記説得により、献金をしなければ、日本が滅びて同原告の一家も滅び、子や孫が不幸になることは何としても避けなければならないという思いに追い詰められ、不安や恐怖心により自由な意思決定を阻害された状態で、3000万円という著しく過大な献金をしたものと認められるから、この献金の勧誘行為は、社会的に相当な範囲を逸脱した違法な行為というべきである。 [197]エ 被告a及び被告bは、同原告の家系図を用いて、家族や先祖の因縁の話を持ち出し、同原告の不安をあおって7000万円の献金を迫り、不安に陥った同原告をして、平成14年8月30日に7000万円を抗告人に献金させた。 [198] かかる献金勧誘行為は、抗告人の教義を植え付けた同原告に対し、具体的な害悪を告知して、殊更に同原告の不安、恐怖心等をあおり、7000万円という著しく過大な献金をさせたものと認められるから、社会的に相当な範囲を逸脱する違法な行為というべきである。 (5) 平成15年分の献金 [199] eは、献金をしなければ、原告87の長女のオートバイ販売店の出店がうまくいかなくなるなどとして同原告の不安をあおって300万円の献金を迫り、不安に陥った同原告をして、平成15年5月30日に300万円を抗告人に献金させた。 [200] かかる献金勧誘行為は、抗告人の教義を植え付けた同原告に対し、具体的な害悪を告知して、殊更に同原告の不安、恐怖心等をあおり、300万円という過大な献金をさせたものと認められるから、社会的に相当な範囲を逸脱する違法な行為というべきである。 2 抗告人の使用者責任について [201] 抗告人は、被告c、f及びgが所属していたブロック、地区は連絡協議会の組織であって、抗告人の組織ではなく、また、被告c、f及びgらが後に所属した信徒会も抗告人とは別個の組織であり、そこに何らの指揮監督関係もない旨主張する。 [202] しかし、 ① 連絡協議会ないし信徒会も抗告人の信者を主要な構成員としており、連絡協議会ないし信徒会も抗告人の勧誘や抗告人の教義の伝道・教育等を目的としていること、 ② 抗告人のリージョン事務局において、教域別献金達成率一覧表が作成されていること、 ③ 原告87が献金を行った際、抗告人の教会が主催する献金式等が行われていること、 ④ 多額の献金を行った同原告に対し、抗告人の本部から感謝状が贈られていること、 ⑤ 同原告からの献金はすべて抗告人に交付されていること などの事情を勘案すると、これらの信者組織の構成員である信者の活動に抗告人の指揮監督が及び得る関係にあると認めるのが相当である。 [203] また、上記の事情からすれば、本件において、抗告人の信者らが同原告に対してした献金勧誘行為は、抗告人の事業の執行につきされたものと認めるのが相当である。 [204] したがって、抗告人は、抗告人の信者らが同原告に対してした不法行為につき、民法715条の責任を負う。 1 抗告人の葛西教域での活動 [205](1) 本件で問題となっている葛西地域は、「葛西」という教域に含まれ、その中には、葛西教会と呼ばれる抗告人非公認の教会や葛西信徒会と呼ばれる組織が存在し、教会長であったaと婦人部長であったbとが葛西信徒会の中心であり、同教域の代表者になっていた。 [206](2) 葛西信徒会の場合、信者からの献金は、まず、教区又は信徒会に支払われ、教区又は信徒会の担当者からリージョンを通して抗告人本部に渡され、献金者の氏名は信徒会から抗告人に報告される。東京都内を管轄するリージョンの事務局からは、少なくとも1週間に1、2回、各教域に抗告人に対する献金の達成率を示した表が送付される。 [207](3) また、葛西信徒会では、信者がビデオセンターや抗告人に関連する商品を販売する商店を運営しており、葛西信徒会に所属する信者も実際にそれらの店に赴き、客と話をするなどして、その運営に協力している。抗告人に関連する主な商品としては、五輪塔や高麗人参濃縮液などが挙げられ、特に高麗人参濃縮液については、抗告人内で一般に「マナ」あるいは「M」などと呼ばれている。なお、天運石は、韓国清平の世界平和統一家庭連合から日本の抗告人に渡され、公認教会又は信徒会から各個人の信者に手渡される。 [208](4) 被告cは、この葛西信徒会に所属する抗告人の信者で、bの指示の下で抗告人の布教活動に従事していた。被告cは、原告88のように葛西信徒会の関連施設に通う抗告人の信者に対して、上記の教義に加えて、次のような、いわゆる殺傷因縁、色情因縁及び財の因縁に関する話をしていた。 [209]ア 殺傷因縁とは、先祖が武士で、その先祖が過去に人をあやめたことから地獄で苦しんで助けを求めており、その結果、子孫にいろいろな災難を起こすものである。 [210]イ 色情因縁とは、先祖が男女問題で間違いを起こしたため、異性の恨みを買って地獄で苦しみ助けを求めており、その結果、子孫にいろいろな災難を起こすものである。 [211]ウ 財の因縁とは、先祖が財を成すに当たり、たくさんの人の恨みを買って地獄で苦しみ助けを求めており、その結果、子孫にいろいろな災難を起こすものである。 2 勧誘行為等の違法性について [212] 本件では、被告cのほか、b、d、e、fなどの抗告人の関係者が、原告88に対し、入れ替わり立ち替わり、先祖の因縁とその因縁に苦しんでいる先祖の霊を助けることの必要性を説き、そのためには五輪塔(126万円)、天運石(3個合計480万円)、聖本(3000万円)、高麗人参茶(99万8000円。ただし、損害として認定したのは、消費した2箱分を除く83万円である。)などを購入することや多額の献金をすることが必要であると信じ込ませ、高額なこれらの物品を購入させただけではなく、確定しているだけでも365万円に上る多額の献金等をさせたものであるところ、同原告は、そもそも夫の残した遺産以外にめぼしい財産もない状態の未亡人で、特に裕福というわけではなく、つつましく暮らしていたことは、被告cやbなどの抗告人の関係者も十分に承知していたのであるから、そのような同原告に対して、仮に、その先祖の霊を助けるためとはいえ、その財産全部をむしり取るような形で高額の物品等を購入させたり、献金を求めたりすることは、社会的に相当な範囲内の行為であるということはできない。 [213] また、葛西信徒会又は抗告人に対する100万円の貸付金のうち返済されていない95万円については、同原告が5か月前に被告cの依頼を断り切れずに貸し付けた100万円に関する一連の事実経過(5万円ずつ15万円が返済された段階で、残債権分については献金をする形で請求を放棄させられた。)にかんがみると、被告cらは、上記貸付金残金95万円についても、5万円ずつ何回か返済した後、残債権分について献金の形で請求を放棄させるつもりであったと推認することができる。したがって、上記貸付金残金95万円についても不法行為に基づく損害額に算入するのが相当である。 [214] さらに、同原告は、同原告に代わって被告cやbが韓国へ渡航して祝福を受けたり霊を迎えに行ったりするための費用として渡航費用合計21万円を負担しているところ、被告cらが抗告人の信者であり、韓国の清平に行くことは自分自身のためになることであるから、同原告の代わりに行くというのは口実にすぎないというべきである。したがって、これらの渡航費用は、本来同原告が負担すべきものではなく、詐欺的なものというほかはないから、不法行為に基づく損害額に算入するのが相当である。 3 抗告人の法的責任について [215] 本件において違法性が認められる各勧誘行為等は、いずれも被告cやbなどを中心とする抗告人の信者によって組織的になされたものであるところ、抗告人は、定期的に信者の日常的な活動等について報告を受け、その活動状況等を把握していたばかりではなく、いわゆる教会や信徒会や婦人部などの組織を通じて、その献金目標額の達成等を含め、教会に関する信者の活動等について影響を及ぼすことができる立場にあったものと認めることができる。そのような実態を総合的に勘案するならば、本件で問題となっているような各信者による物品販売行為や献金勧誘行為等は、抗告人の資金集めとしての側面が大きく、直接、間接にかかわらず、抗告人の指示、指導の下に行われていたものであることは明らかといわなければならない。このような行為実態に照らすならば、抗告人は、信者による教会関連の物品の販売や献金の勧誘について、社会的に相当な範囲を超えることがないように十分に指導し、仮にも信者によって違法な行為がなされないよう指揮、監督することが必要であったということができる。 [216] そして、本件勧誘行為等のうち違法とされたものに基づく原告88の支出は、その外観上、いずれも抗告人の宗教的活動の一環としてなされたものと認めることができるから、抗告人の事業の執行につきなされたものと解するのが相当である。したがって、抗告人は、同原告との関係で違法と判断された前記の各勧誘行為等につき、使用者としての不法行為責任を負うべきものといわなければならない。 1 抗告人の信者らによる原告89に対する献金の違法性について (1) 平成2年の献金及び平成3年4月の献金について [217] 被告aから原告89が自宅マンションを所有しているとの報告を受けた被告bは、抗告人に対する献金額を確保するため、同原告に自宅マンションを担保に借入れをさせて、借入金を抗告人に貸し付けさせ、その後の時期を見てこれを抗告人に対する献金に振り替えさせようと考え、同原告に告げることなく自宅マンションの登記簿謄本を入手し、民間の不動産会社(以下、この事件において、「本件会社」という。)から自宅マンションを担保に7000万円を借り入れることが可能であることを確認した上、被告aや被告cに対し、時期をみて抗告人の献金に切り替えさせることを前提に、抗告人の教義を説くなどしながら、同原告をして、自宅マンションを担保に7000万円を借り入れさせて抗告人に対して貸付期間を3年とする約定で全額を貸し付けさせるように勧誘するように指示した。これを受けた被告cは、かねてから不倫関係にあった男性のことを精神的に清算し切れずにいた同原告に対し、被告a同席の下、自宅マンションには、長い間、男性との間の愛の問題がこもっている、神の真の愛を中心とした家庭を築くためには、同原告が不倫関係にあった男性と同棲に近い生活をしていた自宅マンションを聖別する必要があり、聖別するためには自宅マンションを担保に金員を借り入れ、全額を抗告人に貸し付ける必要があるなどと述べ、抗告人への貸付けを迫った。その結果、かねてから不倫関係にあった男性のことを精神的に清算し切れずにいた同原告は、自宅マンションを聖別しなければ、不倫関係にあった男性との関係を精神的に清算することができず、神の真の愛を中心とした新たな家庭を築くことができないとの不安にかられたことから、被告bからの借入れの申入れを受け入れ、平成2年6月27日に抗告人に6234万9131円を貸し付けるとともに、本件会社に対して同日から平成3年6月14日までの前払利息、事務手数料、調査料及び契約書貼付の印紙代として合計726万4069円を、司法書士に対して抵当権の設定登記手続及び条件付き賃借権設定仮登記手続に要した38万6300円をそれぞれ支払い、同原告及び本件会社の連署の質権設定承認請求書の確定日付費用として600円を支払った(これらの諸費用の合計は765万0969円である。)。 [218] その後、被告a及び被告cは、平成2年11月、転居を口にした同原告に対し、自宅マンションを売却して転居するという意志を翻意させないように固めさせた上で、献金をしなければ、色情因縁を解消することができないなどと不安をあおって献金を迫り、自宅マンションを売却し、自宅マンションの売買代金を抗告人に献金しなければ、色情因縁を解消することができず、新しい出発をすることができないなどと不安にかられた同原告は、平成3年4月1日、上記貸付金6234万9131円等を抗告人への献金に振り替えるとともに新たに抗告人に1608万5780円を献金した。 [219] これらの一連の貸付けの要求行為及び献金の勧誘行為は、抗告人の信者である被告aらが、共謀の上、同原告に対し、具体的な害悪を告知して、殊更に同原告の不安をあおり、著しく過大な献金をさせたものであり、同原告が自由な意思決定を阻害された状態で献金等をさせられたということができるから、社会的に相当な範囲を逸脱する違法な行為というべきである。そして、上記6234万9131円のほか、上記765万0969円についても、上記不法行為がなければ支出しなかったものであるから、同原告がこれらの金員を支払った平成2年6月27日の時点で損害が発生しているというべきである。また、同原告が平成3年4月1日に本件会社に対して支払った解約金140万円と戻し利息131万1780円との差額である8万8220円についても、上記不法行為がなければ支出しなかったものであり、上記不法行為と相当因果関係のある損害であるというべきであり、同日に献金された1608万5780円と同様に同原告が支出した同日の時点で損害が発生しているというべきである。 [220] 結局、損害は、 ① 献金相当額(上記6234万9131円と1608万5780円の合計額である7843万4911円)、 ② 同原告が支出を余儀なくされた諸費用(上記765万0969円と8万8220円の合計額である773万9189円) となる。 (2) 平成3年5月の献金について [221] 原告89は、平成3年5月16日、株式の売却代金5363万6135円を抗告人に献金したが、この献金については、被告cにおいて、同原告に対して2000万円の用立てを求めるに際し 「今、●●(原告89の姓)さんは、54歳で7年周期でやってくる転換期にある。」と言った上で、同原告が上京した30歳を基点に7年周期を見ると、同原告が付き合っていた前記不倫関係にあった男性が、同原告の37歳時に糖尿病検査を受診し、45歳時に脳血栓で倒れたことをメモ用紙に書き出しつつ、 「決断しなければならない。神様との間の責任分担を果たさなければならない。」、などと献金を求められたことから、同原告は、献金することにより先祖の解怨をしなければならないと畏怖したことによるものである。そうすると、この献金勧誘行為は、抗告人の信者である被告cが、同原告に対し、具体的な害悪を告知して、殊更に不安をあおり、著しく過大な献金をさせたものであり、同原告が自由な意思決定を阻害された状態で献金をさせられたということができるから、社会的に相当な範囲を逸脱する違法な行為というべきである。 2 抗告人の責任について [222] 前記1で判断したとおり、 ① 不法行為と評価することができる前記献金勧誘行為等は、抗告人の信者らである被告aらが、共謀の上、抗告人へ献金をさせるため、抗告人の教義に基づいて行われたものであり、前記献金勧誘行為によってされた原告89からの献金は最終的にすべて抗告人に交付されていること、 ② 被告bは抗告人の運営する組織である「サミット」(東京都世田谷区所在のビデオセンター)の部長、被告cは 「サミット」の教師、被告aは 「サミット」における同原告の担当者であり、いずれも単なる抗告人の一信者というわけではないこと、 ③ 抗告人においては、教域別献金達成率の一覧表が作成されており、献金達成率を高めることが求められていること が明らかであり、これらの事情に照らせば、被告aらの活動に抗告人の実質的な指揮監督関係が及び得る関係にあり、前記献金勧誘行為等が、抗告人の事業の執行につきされたものであるということができる。 [223] したがって、抗告人は、被告aらが同原告に対してした前記1の不法行為につき、民法715条の使用者責任を負う。 1 各勧誘行為等の違法性について (1) 昭和62年1月21日の印鑑購入(40万円)(勧誘行為等1)について [224] aは、夜間に突然、対象者90番の自宅を訪問した上、同対象者に対して、夫やその父が若くして死亡したことについて、その原因が先祖の悪因縁にあり、このままでは悪因縁によって同対象者の二人の息子(原告ら)も同様に若くして死亡する危険があると断定的に告げて同対象者を不安に陥れ、そのような同対象者の心理状態につけ込んで、弥勒印を授かれば上記危険を回避することができる旨告げて、高額の印鑑の購入を迫り、 「今日に意味があるのです。これを逃すと後悔しますよ。」などと殊更に不安をあおるような言葉を述べて、同対象者にその場で上記印鑑の購入を決意させたものと認められる。 [225] したがって、勧誘行為等1は、社会的に相当と認められる範囲を逸脱しており、違法というべきである。 (2) 昭和62年1月26日から28日にかけての多宝塔購入(4300万円)(勧誘行為等2)について [226] aらは、上記(1)の印鑑購入契約の直後から、祈祷や水行を行った上で、同契約締結のわずか5日後に、上記(1)のとおり不安に陥れた対象者90番に対して、霊能者の先生にもっと詳しくみてもらった方がよいなどと告げて、同対象者をマンションの一室に連れていった上、aらが付き添う中で、霊能者の先生と呼ばれる者が、夫の残した財産をささげなければ子が生きる道はないなどと、先祖の悪因縁を更に強調するような文言を告げ、隣に付き添うaらもそれに同調する発言をして、同対象者の不安を殊更にあおった上で、同対象者にその場で、夫の遺産のうち流動資産の大部分を占める4300万円もの極めて高額の多宝塔の購入を決意させたものと認められる。 [227] したがって、勧誘行為等2は、社会的に相当と認められる範囲を逸脱しており、違法というべきである。 (3) 昭和62年9月18日の弥勒像購入(1000万円)(勧誘行為等3)について [228] 対象者90番は、ビデオセンターにおいて、先祖の悪因縁に関連する内容のビデオを視聴するなどした後に抗告人に入信していたものであるが、勧誘行為等1及び同2の約8か月後に、bらが、勧誘行為等2の際とは別の霊能者の先生と呼ばれる者を同対象者の自宅に連れていき、同霊能者が同対象者に異性関係について告白させた上、夫の残した財産がまだ残っているからそれをすべてささげるように告げ、上記(1)及び(2)のとおり、既に先祖の悪因縁についての恐怖心を抱き、多額の物品購入をしていた同対象者から、夫の遺産である株式の売却により捻出した1000万円という極めて高額の弥勒像を購入させたものと認められる。 [229] したがって、勧誘行為等3は、社会的に相当と認められる範囲を逸脱しており、違法というべきである。 (4) 平成8年3月29日の独身祝福献金(100万円)(勧誘行為等6)について [230] 勧誘行為等6は、c教区長が、祝福の恵みを受けながら献金をせず負債だけを残すと霊界でそれが問われるなどと述べて献金を勧誘したものである。そして、対象者90番が、抗告人の信者らの行為によって先祖因縁について強い不安や恐怖心を抱かされ、夫の遺産の大半を拠出したことについて、その後その不安や恐怖心が遮断された形跡が一切認められないことなど、勧誘行為等6に至るまでの経緯、前記に認定した同対象者の心情(二人の息子が夫と同じように若くして死亡することのないように願う心情)やc教区長が同対象者の心情を認識していたと推認できることも考慮すれば、上記勧誘行為は、既に不安や恐怖心を抱いている同対象者の心理状態につけ込み、暗に献金をしないことによる害悪を告げ、あるいは、心理的な圧力を掛けて献金を迫ったものということができ、献金額(100万円)も当時の同対象者の資産状況に照らして比較的高額であるといえる。 [231] したがって、勧誘行為等6は、もはや同対象者の自由な意思に基づくものということはできす、社会的に相当と認められる範囲を逸脱したものとして、違法というべきである。 (5) 平成9年3月から12月にかけての清心塔献金(4回計310万円)(勧誘行為等7)について [232] 対象者90番は、平成9年3月10日、韓国の清平で行われた宮殿の起工式に参加し、文鮮明から宮殿を建てる意味を説明された上、 「ここに集まった皆さんは310を約束しますか。」と言われて挙手を求められ、周囲の者が手を挙げたので自らも挙手した。 [233] 勧誘行為等7は、韓国の清平において約束をせざるを得ない状況の下で献金を約束した同対象者に対して、同対象者の帰国後、教区長や教会長等と同様の立場にあるdが、その状況を踏まえた上で、約束したのに献金しないと負債になると述べて献金を要請したものである。これは、勧誘行為等6と同様、同対象者の心理状態につけ込み、暗に献金をしないことによる害悪を告げ、あるいは、心理的な圧力を掛けて献金を迫ったものということができ、献金額(310万円)も、同対象者が平成9年3月から同年12月にかけて4回に分けて支払っていることからも明らかなとおり、当時の同対象者の資産状況に照らして不相当に過大であるといえる。 [234] したがって、勧誘行為等7は、もはや同対象者の自由な意思に基づくものということはできず、社会的に相当と認められる範囲を逸脱したものとして、違法というべきである。 (6) 平成9年9月1日のつぼ購入(160万円)(勧誘行為等8)について [235] 家族を悪霊から守るものとしてつぼ等の物品を販売する行為は、通常の宗教活動にも伴うものとして、それ自体が社会的に相当とされる範囲を逸脱するとまではいえない。しかし、dは、先祖因縁と関連付けて、高額なつぼ(160万円)の購入を要請し、さらに、今なら半額であると述べて購入をせき立て、対象者90番が勧誘行為等7の献金の分割払をいまだ終えていない段階でつぼの購入代金を支払わせたものであり、前記に認定した同対象者の心情(二人の息子が夫と同じように若くして死亡することのないように願う心情)や、dは、教区長や教会長等と同様の立場にあり、同人にも上記のような同対象者の心情についての認識があったことが推認されることも考慮すれば、上記勧誘行為は、同対象者の心情につけ込み、心理的な圧力を掛けて、当時の同対象者の資産状況に照らして不相当に高額な物品の購入を迫ったものということができる。 [236] したがって、勧誘行為等8は、もはや同対象者の自由な意思に基づくものということはできず、社会的に相当と認められる範囲を逸脱したものとして、違法というべきである。 (7) 平成10年3月9日の総生畜献金(210万円)(勧誘行為等9)について [237] 総生畜献金は、抗告人の教義に沿う内容の献金であり、このような献金を要請することは抗告人の通常の宗教活動に伴うものとして、それ自体が社会的に相当とされる範囲を逸したものということはできない。しかし、当時の北福岡教区長は、 「一人210万円を献金しないと罪を清算できない。」などと述べて献金を勧誘したものであり、これは、210万円という高額の献金をしなければ対象者90番の身に害悪があるかのように暗に告げて献金を求めたものということができ、前記に認定した同対象者の心情(二人の息子が夫と同じように若くして死亡することのないように願う心情)や、同教区長がこれを認識していたと推認できることも考慮すれば、既に不安や恐怖心を抱いている同対象者の心理状態につけ込み、当時の同対象者の資産状況に照らして不相当に過大な献金を求めたものということができる。 [238] したがって、勧誘行為等9は、もはや同対象者の自由な意思に基づく献金ということはできず、社会的に相当と認められる範囲を逸脱したものとして、違法というべきである。 (8) 平成11年3月29日の解怨義務献金(280万円)(勧誘行為等10)について [239] 韓国の清平修練苑で行われている先祖解怨式は、霊的な要素が強いものの、抗告人の行っている宗教的儀式であり、それ自体及びそのための献金が、社会的に相当な範囲を逸脱するものとして、直ちに違法なものということはできない。しかし、対象者90番が入信後に所属していた教会のe婦人部長(後記2(2)参照)が、同対象者に対して、数日間にわたって、献金額が3000万円に達することを目安として授与されることとされている聖本を授かるように言って、同対象者に聖本を授かる決意をさせた上で、f教域長が、 「霊界で苦しんでいる霊人たちを解放してやらないと地上人に苦しいと訴えて病人やけが人が出る。」と告げて献金を求めたものであり、前記に認定した同対象者の心情(二人の息子が夫と同じように若くして死亡することのないように願う心情)や、e婦人部長がこれを認識していたことも考慮すれば、先祖因縁による不安や恐怖心に加え、聖本を授かるためにも献金をしなければならないという思いを抱いていた同対象者の心理状態につけ込み、当時の同対象者の資産状況に照らして不相当に過大な献金をさせたものと認められる。 [240] したがって、勧誘行為等10は、もはや同対象者の自由な意思に基づく献金ということはできず、社会的に相当と認められる範囲を逸脱したものとして、違法というべきである。 (9) 平成11年12月から平成12年9月にかけての愛天愛国献金(3回計760万円)(勧誘行為等11)について [241] f教域長が、 「献金しない者はメシヤ(文鮮明)に対する裏切り者です。」、などと述べて献金を勧誘したものである。これは、抗告人の信者にとっては一般に強い影響力のある文鮮明の名前を挙げて心理的圧力を掛け、対象者90番の不安や恐怖心をあおり、しかも、抗告人に入信していない原告二男の分についても同対象者に献金をするよう求めて、当時の同対象者の資産状況に照らして極めて高額の献金(合計760万円)をさせたものと認められる。 [242] したがって、勧誘行為等11は、もはや社会的に相当と認められる範囲を逸脱しており、違法というべきである。 (10) 平成12年8月4日の聖本追加献金(200万円)(勧誘行為等12)について [243] f教域長は、愛天愛国献金を完納するように、あるいは、早く聖本授与の目安である献金額3000万円に近付くようになどと述べて、献金を求めたものである。そして、f教域長は、上記(9)のとおりその献金要請行為自体が違法というべきである愛天愛国献金の完納を急がせた上、二人の息子が若死にしないようにするためにも聖本を授からなければならないという心情を有していた対象者90番に対し、上記のとおり心理的な圧力を掛けているが、本来、聖本は、抗告人の様々な宗教的儀式等のための献金が3000万円に達したことを目安として信者に授与されるにすぎず、それ自体が献金の対象となる性質のものではないにもかかわらず、聖本そのものの獲得のためだけに献金を求めたものと認められ、同対象者の心理状態につけ込んで、当時の同対象者の資産状況に照らして不相当に過大な献金をさせたものと認められる。 [244] したがって、勧誘行為等12は、もはや同対象者の自由な意思に基づく献金ということはできず、社会的に相当と認められる範囲を逸脱したものとして、違法というべきである。 (11) 平成11年11月から平成12年11月にかけての翼献金(6回計80万円)(勧誘行為等13)について [245] 勧誘行為等13は、f教域長が、 「これをしないのはメシヤ(文鮮明)への裏切りです。」と述べて献金を勧誘したものである。これは、抗告人の信者にとっては一般に強い影響力のある文鮮明の名前を挙げて、心理的圧力を掛け、対象者90番の不安や恐怖心をあおり、抗告人の宗教的儀式や宗教活動等とは直接かかわりのない名目の献金を勧誘したものと認められる。 [246] したがって、勧誘行為等13は、勧誘行為等11(上記(9))と同様、もはや同対象者の自由な意思に基づく献金ということはできず、社会的に相当と認められる範囲を逸脱したものとして、違法というべきである。 (12) 平成13年2月23日の聖本追加献金(165万円)(勧誘行為等14)について [247] g教会長及びe婦人部長が、聖本を持参して対象者90番の自宅を訪れ、聖本授与の目安額にいまだ達していない同対象者に対して、先祖が聖本を早く授かってほしいと言っている、まとまったお金を入金すれば聖本を今日授けることができるなどと述べて、献金を勧誘し、即日、銀行で165万円を下ろさせたものである。これは、二人の息子が若死にしないようにするためにも聖本を授からなければならないという心情を有していた同対象者に対して、上記のとおり心理的な圧力を掛けて、聖本の獲得のためだけに献金を殊更にせき立て、同対象者の心理状態につけ込んで、当時の同対象者の資産状況に照らして高額の献金をさせたものと認められる。 [248] したがって、勧誘行為等14は、もはや同対象者の自由な意思に基づく献金ということはできず、社会的に相当と認められる範囲を逸脱したものとして、違法というべきである。 (13) 平成13年12月14日の大使館建設献金(原告二男分の72万円)(勧誘行為等16の④)について [249] 勧誘行為等16の④は、平和大使館の建設のための献金を勧誘するものであり、献金を求める際に具体的な害悪の告知等はされていない。しかし、e婦人部長は、一人72万円とされている大使館建設献金について、対象者90番に対して、抗告人に入信していない原告二男の分を含めた二人分合計144万円の献金を求めており、前記に認定した同対象者の心情(二人の息子が夫と同じように若くして死亡することのないように願う心情)や、e婦人部長がその心情を認識していたことも考慮すれば、上記のように原告二男の分の献金という名目で同対象者に対して献金を求めた行為は、同対象者の心理状態につけ込んで、不相当に多額の献金をさせたものと認められる。 [250] したがって、勧誘行為等16の④のうち、原告二男の分として献金を求めた部分については、社会的に相当と認められる範囲を逸脱したものとして、違法というべきである。 (14) 平成14年8月12日の総生畜献金(210万円)、祝福献金(140万円)(勧誘行為等19の①、②)について [251] 原告二男の分の総生畜献金及び祝福献金として献金されたものであり、献金に至る具体的状況は明らかとはいえないものの、後記勧誘行為等19の③と同様、二人の息子が若死しないようにするためにも2冊目の聖本を授からなければならないという対象者90番の心情につけ込んで、当時の同対象者の資産状況に照らして不相当に過大な献金をさせたものと評価せざるを得ず、社会的に相当と認められる範囲を逸脱しており違法というべきである。 (15) 平成14年12月20日の聖本オーナー献金(330万円)(勧誘行為等19の③)について [252] h教会長が、2冊目の聖本獲得へ向けた献金を開始せざるを得ない状況の下にあった対象者90番に対して、2冊目の聖本摂理を言い渡し、既にナンバーが打たれた聖本を先に授与したものである。これは、当該聖本のオーナー献金として700万円の献金が必要であるなどと告げて、二人の息子が若死にしないようにするためにも2冊目の聖本を授からなければならないという心情を有していた同対象者に対して、心理的な圧力を掛け、かつ、その心理状態につけ込んで、当時の同対象者の資産状況に照らして不相当に過大な献金をさせたものと認められる。 [253] したがって、勧誘行為等19の③は、もはや社会的に相当と認められる範囲を逸脱しており、違法というべきである。 (16) 平成15年10月の天一国聖酒献金(原告二男分の70万円)(勧誘行為等21)について [254] 勧誘行為等21は、天一国聖酒式と呼ばれる抗告人の宗教的儀式に際しての献金であり、勧誘文言も抗告人の宗教的活動の域を出ておらず、これらをもって直ちに違法ということはできない。しかし、i教会長は、対象者90番に対して、 「息子さんの分も含めて210万円を献金してください。」と述べて献金を勧誘しており、当該献金額210万円のうち70万円は、原告二男の分の天一国聖酒献金の一部として献金されたものである。これは、抗告人に入信していない原告二男の分の同献金を同対象者に負担させるものであり、前記に認定した同対象者の心情(二人の息子が夫と同じように若くして死亡することのないように願う心情)やi教会長もそのような心情を認識していたものと推認できることも考慮すれば、同対象者の心理状態につけ込んで、不相当に多額の献金を要請したものと認められる。 [255] したがって、勧誘行為等21のうち、原告二男の分として献金を要請した部分については、違法というべきである。 (17) 平成15年10月から12月にかけての天聖経追加献金(3回計172万円)(勧誘行為等22)について [256] i教会長が、1冊目の天聖経にあと少しであるとして172万円の献金を求め、さらに、e婦人部長が夜間対象者90番の自宅を訪問して、献金を勧誘したものである。これは、二人の息子が若死にしないようにするためにも2冊目の聖本を授からなければならないという心情を有していた同対象者に対して、天聖経は抗告人の宗教的儀式等のための献金額が430万円に達したことを目安として授けられるものにすぎず、聖本と同様、それ自体が特定の献金の対象となる性質のものではないにもかかわらず、天聖経そのものの獲得のためだけに献金を殊更にせき立て、同対象者の心理状態につけ込んで、当時の同対象者の資産状況に照らして高額の献金をさせたものと認められる。 [257] したがって、勧誘行為等22は、もはや社会的に相当と認められる範囲を逸脱したものとして、違法というべきである。 (18) 平成16年1月から4月にかけての聖地解放献金(11回計427万円)(勧誘行為等23)について [258] 勧誘行為等23は、抗告人松濤本部のj部長及びi教会長が、日本が過去に韓国を植民地とし、韓国人に対してひどいことをしたことや、韓国人の慰安婦等の恨霊が強いことなどを告げて献金を求めたものである。この点、韓国の清平修練苑における修練会においても、日本人には日本の植民地時代の韓国人の慰安婦等の霊が入っているなどと因縁にかかわる話がされているところ、それ自体を違法ということはできない。しかし、対象者90番は、前記に認定した心情(二人の息子が夫と同じように若くして死亡することのないように願う心情)を有しており、抗告人の信者らから言われて既に何度も韓国の清平修練苑における清平修練会に参加し、日本人には韓国の慰安婦等の霊が入って様々なわざわいを起こしているなどという話を繰り返し聞かされ、先祖因縁等に対する不安や恐怖心を持ち続けていたものであり、これに対し、j部長やi教会長は、清平修練会での話の内容を当然に認識しているものというべきことに加え、i教会長は、同対象者が上記のような心情を有しており、また、清平修練会に繰り返し参加していることを容易に認識し得たものである。そうすると、j部長が献金の勧誘をした上、重ねてi教会長が慰安婦の恨霊の話をすることは、上記のような心情を有している同対象者に対し、先祖因縁等に対する不安や恐怖心を想起させることで心理的な圧力を掛け、その心理状態につけ込んで、当時の同対象者の資産状況に照らして不相当に過大な献金を求めたものと認められる。また、同対象者は、自らの分(140万円)以外にも、原告長男の分(137万円)及び原告二男の分(150万円)について、抗告人側から、原告ら分の献金を働き掛けられたわけではないにもかかわらず支払っており、このことは、同対象者が、上記勧誘によって、息子らが若死にしないようにとの思いを抱き献金したことを裏付けるものと評価することができる。 [259] したがって、勧誘行為等23は、もはや社会的に相当と認められる範囲を逸脱したものとして、違法というべきである。 (19) 平成16年6月から8月にかけての真のお父様85歳献金(原告長男及び原告二男の分に係る2回計170万円)(勧誘行為等25)について [260] i教会長が、85歳を迎える文鮮明の願いにこたえなければならないなどと述べて献金を要請したものである。これは、献金をしないことによる害悪を直接に告知したものではないが、i教会長は、原告長男らも文鮮明の祝福を受けていると述べて、一人85万円である献金について、対象者90番のほか、抗告人に入信していない原告らの分も合わせた3名分の献金を求めており、前記に認定した同対象者の心情(二人の息子が夫と同じように若くして死亡することのないように願う心情)やi教会長が同対象者の心情を認識していたものと推認できることを考慮すれば、同対象者に心理的な圧力を掛け、その心理状態につけ込んで、不相当に多額の献金をさせたものと認められる。 [261] したがって、勧誘行為等25のうち、原告長男及び原告二男の分として2名分170万円の献金を要請した部分については、社会的に相当と認められる範囲を逸脱したものとして、違法というべきである。 (20) 平成16年11月の天聖経追加献金(2回計125万7000円)(勧誘行為等27)について [262] i教会長は、対象者90番に対して、 「3冊目の天聖経にあと少しです。これを完納して3家庭に1冊ずつの目標を達成してください。」と述べて勧誘し、同対象者は、原告二男の会社の資金を無断流用して支払ったものである。これは、二人の息子が若死にしないようにするためにも2冊目の聖本を授からなければならないという心情を有していた同対象者に対して、天聖経そのものの獲得のためだけの献金を殊更にせき立て、同対象者の心理状態につけ込み、当時の同対象者の資産状況に照らして高額の献金(125万7000円)をさせたものと認められる。 [263] したがって、勧誘行為等27は、社会的に相当と認められる範囲を逸脱したものとして、違法というべきである。 (21) 平成17年4月1日の天聖経追加献金(209万9000円)(勧誘行為等34)について [264] e婦人部長は、対象者90番に対して、 「あと200万円ほどで4冊目の天聖経に手が届く。」と述べたものである。これは、二人の息子が若死にしないようにするためにも(同対象者において)2冊目の聖本を授からなければならないという心情を有していた同対象者に対して、天聖経そのものの獲得のためだけに献金を殊更にせき立て、同対象者の心理状態につけ込んで、当時の同対象者の資産状況に照らして高額(209万9000円)の献金をさせたものと認められる。 [265] したがって、勧誘行為等34は、社会的に相当と認められる範囲を逸脱したものとして、違法というべきである。 (22) 平成12年8月から平成18年6月にかけての解怨献金(20回計957万円)(勧誘行為等38)について [266] 上記(8)のとおり、清平修練会における役事や先祖解怨式自体を違法ということはできない。 [267] しかし、対象者90番は、抗告人の信者らによって先祖の悪因縁について強い不安や恐怖心を抱かされ、それによって、息子らが若死にしないことを願う心情を抱くようになり、清平修練会に参加するようになる前から、上記のような心情に基づき、既に多額の物品購入や献金等を行っていたものである。そして、清平修練会の内容を当然に認識しているというべきf教域長やe婦人部長が、同対象者に対して、清平修練苑における先祖解怨式等への参加を勧め、その結果、同対象者は、約6年の間に20回にもわたって、清平修練会に参加し、それに伴い多額の解怨献金(合計957万円)を行ったものである。以上のような、勧誘行為等38に至るまでの経緯や献金当時の同対象者の資産状況等に照らせば、解怨献金については、同対象者は、専ら先祖の悪因縁を断ち切るためには清平において先祖解怨を行うほかはないとの心理状態に陥らされた上で、上記献金を行っていたものと認められ、もはや同対象者の自由な意思に基づく献金であるということはできない。 [268] 以上によれば、勧誘行為等38は、抗告人の信者らが、同対象者の心理状態につけ込んで、当時の同対象者の資産状況に照らして不相当に過大な献金をさせたものと認められ、もはや社会的に相当と認められる範囲を逸脱しており、違法というべきである。 2 抗告人の責任について (1) 勧誘行為等1から3まで(愛興や連絡協議会による物品販売)について [269] 抗告人は、これら物品販売行為に抗告人は一切関与しておらず、販売代金が抗告人に入金された事実もないから、使用者責任を負わないと主張し、証人aも、連絡協議会や愛興(連絡協議会の九州ブロック北九州地区の代理店)は抗告人の組織ではなく、印鑑及び多宝塔の販売代金は愛興の会計担当者に渡したなどと、これに沿う供述をする。 [270] しかし、証人aは、生活手段として愛興で活動していたと供述する一方で、抗告人の信仰を育て、世界の平和や人々の幸せに貢献するために愛興で販売員として活動していたなどとも供述し、自身が受け取ることのできた印鑑や多宝塔の販売手数料について、会計に一任していたので分からないなどと、極めてあいまいな供述に終始している。そして、商品の販売主体である愛興は、ホームで共同生活を行う抗告人の信者のみによって構成され、その売上げの一部が抗告人への献金に回ることもあること、本件においても、aが、物品販売の後、因縁等について勉強するためとして、対象者90番を抗告人の教義等について解説するビデオ等を見るビデオセンターに誘い、その結果、同対象者が抗告人へ入信するに至っていること、同対象者は、aを「霊の親」と呼んで、自身を伝道した人物と認識し、購入した多宝塔や弥勒像を抗告人の宗教的行事の際に飾ったりしていることが認められ、これらの事実も総合すれば、連絡協議会若しくは愛興と抗告人との関係を否定する証人aの供述はにわかに信用し難い。そして、上記各事実に照らせば、抗告人は、物品販売行為を行う連絡協議会等の活動状況等を把握し、勧誘行為等1から3までの物品販売行為にかかわった連絡協議会に所属する者ら(いずれも抗告人の信者であると認められる。)に対しても、社会的に相当と認められる範囲を逸脱することがないように指導を及ぼし得る立場にあったものと認められるから、抗告人と勧誘行為等1から3までにかかわった連絡協議会に所属する者らとの間には、実質的な指揮監督関係があるということができる。そして、上記の事情に加え、前記の各勧誘行為の態様、特に抗告人の信者らが述べた文言等に照らせば、物品販売行為は、いずれも万物復帰の教え等、抗告人の教義の実践ともいうべきものであり、その外形上、抗告人の宗教的活動の一環としてなされたものと認められるから、抗告人の事業の執行につきなされたものということができる。 [271] したがって、抗告人は使用者責任を負うというべきである。 (2) 抗告人に対する献金等について [272] 違法であると認められる各勧誘行為等において対象者90番に対する献金等を勧誘した者は、いずれも抗告人の信者であり、そのうち、教区長や教会長等は、抗告人職員の立場にある者であり、教区や教会において、ほかの信者らに対して一定の責任を負うべき立場にあったものと認められる。なお、抗告人は、勧誘行為等7及び8について献金要請等を行ったdは、抗告人とは別の法主体である世界平和家庭連合の地区長であると主張するが、そうであったとしても、dは、教区長や教会長等と同様、ほかの信者らに対して一定の責任を負うべき立場にあったものと認められる。 [273] また、e婦人部長については、証人eは、婦人部長は教会の役職ではなく信徒会の役職であり、同人は一信徒にすぎないと供述する。しかし、 ① 証人eが信徒会を代表して行ったと供述する署名の肩書きが「ひびき野教会婦人部長」となっていることが認められるほか、証拠によれば、ひびき野教会の組織図として「婦人部長e」の記載があること(証人kは、同組織図は信徒会の連絡網として作成したと供述するが、同組織図の記載内容に照らし採用できない。)、 ② 抗告人作成の文書中にひびき野教域の教域長と並んで「婦人部長e」の記載があること、 ③ 証人eが信徒会のものと供述する事務所の電話番号がひびき野教会の電話番号と同一であること、 ④ 信徒会の規約は存在せず、予算作成、決算報告等は行われておらず、役員構成やeが婦人部長に選任された経緯等も極めて不明確であること、 ⑤ ひびき野信徒会の事務長兼ひびき野教会の総務の手伝いをしていたというkが、ひびき野教会のメールアドレスから送信したメールには、ひびき野信徒会という文言は一切なく、かえって「ひびき野教会」との記載があること が認められる。これらの事実を総合すれば、信徒会という組織が抗告人と別個独立のものとして存在すること自体疑わしいといわざるを得ず、仮に信徒会が存在するとしても、上記各事実に照らせば、信徒会が抗告人組織と明確に区別されているとは到底いい難く、信徒会と抗告人組織とは実質的に一体であるというべきである。以上に加え、前記認定のとおり、e婦人部長は、同対象者に対する勧誘行為等の多くにおいて、献金等を要請するなどしていることからすれば、婦人部長が教会の役職であるか否かにかかわらず、e婦人部長は、教会に所属するほかの信者らに対して献金等を要請する立場にあり、教区長や教会長等と同様に、ほかの信者らに対して一定の責任を負うべき立場にあったものと認められる。 [274] そして、証拠によれば、松濤本部から各教会等に対する献金要請行為に関する指示文書や、全国の教区に対して献金等の目標達成率を示す表が存在することが認められ、これらの事実も総合すると、抗告人は、同対象者に対する献金等を勧誘した抗告人の信者らに対して、社会的に相当と認められる範囲を逸脱することがないように指導を及ぼし得る立場にあったものと認められるから、抗告人と同対象者に対する献金等を勧誘した抗告人の信者らとの間には実質的な指揮監督関係があるということができる。そして、抗告人に対する献金等のうち違法であると認められるものは、いずれも抗告人の教義の実践というべきものであり、その外形上、抗告人の宗教的活動の一環としてなされたものであることが明らかであるから、抗告人の事業の執行につきなされたものであるということができる。 [275] したがって、抗告人は使用者責任を負うというべきである。 (3) 清平への献金(勧誘行為等7及び同38)について [276] これらの勧誘行為等を行った抗告人の信者らと抗告人との間には、上記(2)に認定説示したとおり、実質的な指揮監督関係があるということができる。そして、清平修練苑は、抗告人において聖地であるとされる韓国の清平に文鮮明が創設し、抗告人の重要な宗教的儀式である先祖解怨式等を行う施設であるから、抗告人と密接な関係を有することは明らかであり、これら勧誘行為等は、その外形上、抗告人の宗教的活動の一環としてなされたものであることが明らかである。 [277] したがって、抗告人の主張するように、献金の最終的な受領者が清平修練苑であるか否かにかかわらず、抗告人は使用者責任を負うというべきである。 1 抗告人の信者らによる原告91に対する不法行為について (1) 原告91についての個別事情 [278] 原告91は、平成8年3月20日にaに勧誘されて以降、夫(夫も共同原告となっていたが、夫の請求は全部棄却された。)に抗告人に入会していることが発覚した平成18年4月22日まで、結婚して仙台に転居する際の平成14年8月から同年12月までの期間を除く約10年の間、継続的に抗告人の教義及びその信者らに関わっていたものである。そして、同原告は、上記約10年の間、学習や献金をするに当たって、ほぼ抗告人の信者らの指示どおりの行動をとっている。 [279] そうすると、同原告は、平成8年3月20日から平成15年8月19日までの約7年半もの間、東京及び仙台において、最低でも週1回の頻度で世田谷フォーラム及び運勢鑑定所、オアシスに通い、ビデオの鑑賞や抗告人の信者による講義により、家族や人間関係等の各種教養に混じって、創造原理や堕落論等の抗告人の教義を、それと知らないまま教え込まれ、さらに、その間、同原告の家系に関係する具体的な因縁話を度々されることにより、先祖の因縁やそれに起因する不幸を殊更に意識させられ、堕落論や人間の罪等の抗告人の教義の内容とも相まって、抗告人の信者らから、不安や恐怖心を植え付けられていったものと推認される。さらに、同原告は、平成15年8月19日にそれまで学んできたことが抗告人の教義に関わることであることを知った後も、新生トレーニング、実践トレーニング、前戦隊及び家庭和への配属と、間断なく抗告人の信者、教義に関わっていることからすれば、上記不安は以降も継続していたものといえる。なお、平成14年9月から平成15年1月までの期間を境に同原告に関わる抗告人の信者が変わっているが、当該信者らによる同原告への教育及び献金等勧誘の内容と態様に特段違いがないことに鑑みれば、同原告に対する抗告人の信者らの影響は上記期間に関係なく継続していたものと解される。 (2) 平成8年3月25日の念珠の購入(41万2000円) [280] bは、原告91に対し、同原告の祖母らが若くして亡くなっていることに関連して、同原告が短命の家系で肉親の縁が薄いことを告げた上で、罪の清算と身を守るためには新しいことを始めることが必要である、念珠は運勢を危険から守ってくれるなどと話しており、あたかも同原告も短命であるかのように暗示をして不安をあおり、念珠の購入を迫っている。 [281] したがって、かかる物品購入勧誘行為は、勧誘に際してなされた上記発言自体が、同原告の不安をあおるものであり、同原告の自由な意思決定を不当に制約して、41万2000円という高額の念珠を購入させたものと認められ、社会的に相当な範囲を逸脱する違法な行為というべきである。 (3) 平成8年4月30日の400万円の献金 [282] cは、aから先祖に深い因縁があって、それを引きずっている等と告げられて、不安をあおられていた原告91に対し、多くの先祖は、地獄で苦しんでいる、先祖を救わないと、先祖と同じ苦しみを受けることになるし、家族や子孫も同じ因縁を生きなければならなくなるとさらに不安をあおり、その結果、同原告は、抗告人に関与するようになってから1か月程度しか経っていないにもかかわらず、400万円という高額の献金をするに至った。 [283] 以上によれば、同原告が400万円の献金をする原因となったcの行為は、社会的に相当な範囲を逸脱する違法なものというべきである。 (4) 平成8年6月29日の世田谷フォーラムへの入会(入会金及び受講料21万円) [284] 原告91は、世田谷フォーラムに入会するに際して、aから、心の勉強を続けてもっと心情を高めるようにした方がいい、これまでのところとは別のよいところがあるなどと言われており、それ以前にも、同原告は、cから、先祖が地獄で苦しんでおり、家系の代表として先祖を救うことが使命である、先祖を救わないと同原告及びその家族、子孫まで先祖と同じ苦しみを受けると告げられるなどして、自分や家族、子孫の不幸を免れるために、先祖を救わなければならないことを強く意識させられていたものと認められる。このような経過において行われたaの心の勉強を続けるようにとの発言は、同原告に対し、まだ学習が終了していないことを示唆し、継続を促すものであって、先祖を救う使命を植え付けられた同原告に対し、継続するよう心理的な圧力を加えるものであるといえる。そうすると、同原告の世田谷フォーラムへの入会は、抗告人の信者らによる違法行為に基づいてなされたものであるというべきである。なお、その後の受講料についても、勉強の継続をせざるを得ない状況の下に支出させられたものと認められる。 (5) 平成8年8月31日の120万円の献金 [285] 原告91は、cから霊界で先祖が苦しんでいることや先祖の因縁について話をされて、120万円という多額の献金をしているが、従前から抗告人の信者に霊界で先祖が苦しんでいる等の話をされて、不安をあおられており、cの話は、このような不安をさらにあおるものであるといえる。 [286] したがって、同原告の120万円の献金についての抗告人の信者らの行為は、社会的に相当な範囲を逸脱する違法なものというべきである。 (6) 平成9年6月5日の親族系譜の購入(50万4000円) [287] dは、講演の中で家系図作成の大切さを述べ、eは、先祖供養として家系図を作るべきだと発言しているところ、親族系譜を作ることが先祖供養になるという説明自体は、殊更不合理であるとはいえない。しかしながら、上記(4)に説示のとおり、原告91は、cから、同原告の家系に関わる因縁話とそれに起因する不幸を具体的に告げられることなどにより不安を植え付けられており、そして、その不幸を免れるためにも先祖供養が必要であることを意識させられていたものと認められる。そうすると、eが、同原告に対し、先祖供養のためであるといって、親族系譜の購入を勧める行為は、親族系譜を購入することで先祖の因縁の不安から免れることができるが、反対に購入しない場合には、先祖の因縁を断ちきることができず、不幸が起こることを同原告に意識させるものであり、同原告に不安を抱かせ、自由な意思決定を不当に制約して、高額の親族系譜の購入を勧誘するものであるといわざるを得ない。 [288] したがって、上記勧誘行為は、従前の抗告人の信者らによる同原告への教育等の内容及び態様も考慮すれば、社会的に相当な範囲を逸脱した違法な行為というべきである。 (7) 平成11年2月20日及び23日の700万円の献金 [289] 被告fは、原告91に対し、同原告に先祖の悪い霊がとりついており不幸になるとか、地獄で苦しんでいる先祖を氏族の中心人物である同原告が救わなければならないなどと言って同原告の不安をあおり、同原告に700万円という高額な献金をさせたものである。 [290] したがって、上記発言自体が、同原告に対する具体的な害悪の告知であり、同原告の不安を殊更にあおって自由な意思決定を不当に制約し献金させたものと認められるから、同被告の献金勧誘行為は社会的に相当な範囲を逸脱した違法な行為というべきである。 (8) 平成13年6月20日の400万円の献金 [291] 被告fは、原告91の父親や父親の弟に起こった具体的な不幸を基に、先祖の因縁を告げ、また、同原告が当時結婚前の交際中であった夫の母親が余命わずかと告げられたことから、同原告が使命を果たさなければ夫の一家が絶家になると話すなど、同原告の不安をあおり、同原告に400万円という高額な献金をさせたものである。 [292] したがって、上記発言自体が、同原告に対する具体的な害悪の告知であり、同原告の不安を殊更にあおって自由な意思決定を不当に制約し献金させたものと認められるから、同被告の献金勧誘行為は違法な行為というべきである。 (9) 平成15年4月2日のメキシコオパールペンダントの購入(19万9500円) [293] 原告91がメキシコオパールペンダントを購入するに際し、抗告人の信者であるアドバイザーは、先祖や神様が愛の完成を望んでいるからとして、購入を勧誘している。上記発言は、抗告人の教義を教え込まれ、それと関連付けて先祖の因縁等を植え付けられて不安をあおられていた同原告に対し、先祖や神の望みに応えるよう高額の物品の購入を要求するものであって、純粋な信仰心からの購入を示唆するものとは言い難い。したがって、かかる物品購入勧誘行為は、従前の抗告人の信者らによる同原告に対する教育、勧誘等の内容及び態様を考慮すれば、社会的に相当な範囲を逸脱した違法な行為というべきである。 (10) 平成15年9月の12万円の献金 [294] gは、原告91に対し、先祖の因縁を解放しないといけない、子供を授かる条件になる、万物復帰して家族を救う基台を立てることが大切などといって献金を勧誘している。上記発言は、先祖の因縁を植え付けられた同原告に対し、先祖の因縁による家族への不幸(特に、先祖の因縁と合わせて子供を授かる条件などという発言をしていることからすれば、家族が絶家になるような事態)を意識させて不安をあおり、同原告の自由な意思決定を不当に制約して12万円という高額の献金を勧誘するものであるから、上記献金勧誘行為は違法な行為というべきである。 (11) 平成15年12月12日頃の天運石の購入(320万円) [295] 仙台教会の婦人部長は、原告91に対し、天運石を持っていると悪霊がその中に入ることで家系が守られると述べた上で、同原告の一家の先祖、現世、子孫代々を不幸から救うためとして、天運石の購入を勧めている。婦人部長の発言は、先祖の因縁等を植え付けられた同原告に対し、先祖の因縁から家族が不幸になることを意識させ、同原告の自由な意思決定を制約して320万円という高額の天運石の購入を勧誘したものであるから、上記勧誘行為は違法な行為というべきである。 (12) 平成16年2月19日の家系図の購入(170万円) [296] hは、原告91に対し、同原告の家族並びに先祖、現世及び子孫のためであるとか、先祖に起きたことが繰り返すなどと言って、家系図の購入を勧誘している。hの発言は、先祖の因縁等を植え付けられた同原告に対し、先祖の因縁が繰り返し起こり、同原告の家族並びに先祖、現世及び子孫に不幸が起こることを意識させ不安をあおって、家系図の購入を勧誘したものである。したがって、上記発言自体が、同原告に対する具体的な害悪の告知に当たり、同原告の不安を殊更にあおって自由な意思決定を不当に制約して勧誘したものと認められるから、かかる勧誘行為は社会的に相当な範囲を逸脱した違法な行為であるというべきである。 (13) 平成16年3月23日のパールネックレスの購入(13万1250円) [297] iは、原告91に対し、神様、お父様、お母様、そして先祖のために、物品購入という形で貢献しなければならない、先祖がこれを授かることを願っているなどと述べ、パールネックレスの購入を勧誘している。iの発言は、先祖の因縁の恐怖を植え付けられ、また、抗告人の教義を教え込まれた同原告に対し、神様及びメシヤである文鮮明など、抗告人の教義上重要な存在のために、あるいは先祖のために貢献しなければならないなどと、その文言及び内容からして、半ば強制的に物品購入を勧誘するものであり、同原告の純粋な信仰心からの物品購入を示唆するものとは言い難い。そうすると、上記勧誘行為は、同原告に対し心理的な圧力を加え、自由な意思決定を不当に制約して、パールネックレスの購入を勧誘したものであるというべきであるから、かかる勧誘行為は社会的に相当な範囲を逸脱した違法な行為であるというべきである。 (14) 平成16年4月23日の960万円の貸付け(後記(17)に振り替えられた345万円を除いて返還されている。) [298] hは、原告91に対し、神のためにどうしてもお金が必要だなどと述べた上で、天のために尽くすことが先祖の因縁の解放のためになるなどとして、先祖の因縁と関連付けて金銭の貸付けを要求している。hの上記発言は、従前から抗告人の教義を教え込まれ、先祖の因縁に対する不安を植え付けられた同原告の不安をあおり、自由な意思決定を不当に制約して貸付けを要求するものであるといえるから、かかる貸付けの要求は社会的に相当な範囲を逸脱した違法な行為であるというべきである。 (15) 絵画購入等 ア 平成16年7月8日の85万円の献金 [299] 婦人部長は、文鮮明の活動の過酷さを伝え、その頑張りに応えなければならないとして、献金を指示しているが、婦人部長の発言は、その内容からして原告91にのみ告げられたものではなく、同原告を含む複数の信者らに向けられたものであると認められる。しかし、同発言は、その文言及び内容に鑑みれば、抗告人の教義を教え込まれた同原告ら信者に対し、再臨のメシヤである文鮮明の過酷な活動に応えるためとして、抗告人の信者に心理的な圧力を加え、85万円もの多額の献金を半ば強制するものであるといえ、純粋な信仰心からの献金を示唆するものとはいい難い。したがって、婦人部長の上記献金指示は、同原告の自由な意思決定を不当に制約して献金を勧誘するものであるから、かかる勧誘行為は違法な行為というべきであって、それが同原告を含む複数の信者に向けてなされたものであるからといって、上記勧誘行為の違法性が否定されることにはならない。 イ 平成16年9月30日の絵画の購入(18万9000円) [300] g及び勧誘担当者は、同原告に対し、先祖、家族及び子孫のため、子供を授かるため、絵画を購入するようにと述べている。gらの上記発言自体は、直ちに相手方の不安をあおるような内容のものではないものの、同原告は、従前、抗告人の信者らから、先祖の因縁により先祖だけでなく、家族や子孫まで不幸になる、先祖の因縁により同原告の家族が絶家する恐れがあるなどと告げられ、先祖の因縁に対する不安を植え付けられているのはこれまでに認定したとおりである。そうすると、gらの上記勧誘行為は、従前の抗告人の信者らによる発言とも相まって、同原告の先祖の因縁に対する不安をあおり、自由な意思決定を不当に制約して、絵画の購入を迫るものであるといえるから、社会的に相当な範囲を逸脱した違法な行為と認められる。 (16) 平成16年10月13日から平成18年3月15日までの被告jに対する合計434万3000円の貸付け(その後17万3000円を返済) [301] 被告jは、原告91に対し、具体的な返済の見込みがないにもかかわらず、何度も電子メールで貸付けを申し込み、これに応じて、同原告が、同被告に対し、合計434万3000円という多額の金員を貸し付けた。同被告が、同原告に借金をしたのは、自らの分の献金を準備できなかったことと抗告人に対する献金等により経済的に苦境に追い込まれたことが主な原因である。同被告が同原告から借り入れた金員から献金として抗告人に多額のものが支払われた。また、同被告は、同原告の霊の親(同原告を最初に抗告人に勧誘した信者のこと)の代理であり、同原告は、同被告がこのような立場にあったため、金銭の貸付けを断れなかった。他方、同被告は、同原告が断らないのを見越して、金銭の貸付けを依頼した。 [302] 以上のことからすると、同被告の同原告に対する借入れの申込みは、両名間の個人的な貸借であるにとどまらず、抗告人内における立場を濫用した社会的に相当な範囲を逸脱した違法な行為であるといえる。 (17) 平成17年2月10日の天聖経の購入(345万円) [303] 婦人部長は、原告91に対し、文鮮明の遺言書であるといわれる天聖経は一家に1冊持っていなければならない、子供を授かる条件になるなどとして、天聖経の購入を勧誘している。婦人部長の上記発言は、従前から抗告人の教義を教え込まれ、先祖の因縁の恐怖を植え付けられた同原告に対し、天聖経が、抗告人において再臨のメシヤとされる文鮮明の遺言書であり、しかも、購入することで、子供を授かる条件になる、すなわち、同原告の家族が絶家になるのを免れることを示唆し、購入せざるを得ない心理状況に追い込むものであって、同原告の自由な意思決定を不当に制約して購入を勧誘したものと認められる。したがって、かかる勧誘行為は、社会的に相当な範囲を逸脱する違法な行為というべきである。 [304] 天聖経の購入代金は、前記(14)の960万円の貸付けの一部345万円が振り替えられており、同原告は、同額の損害を被ったと認められる。 (18) 王冠ペンダントの購入等 ア 平成17年4月5日の王冠ペンダントの購入(100万円) [305] hは、原告91に対し、王冠ペンダントを授からなければ、今までのことが無意味になるかのように告げ、また、子供を授かる条件などとして、先祖の因縁に関連することも述べて、購入を迫っている。そうすると、上記勧誘行為は、従前から抗告人の教義を教え込まれ、先祖の因縁に対する不安を植え付けられた同原告の不安を殊更にあおり、自由な意思決定を不当に制約して、王冠ペンダントの購入を勧誘するものであるといえるから、社会的に相当な範囲を逸脱した違法な行為であるといえる。 イ 平成17年7月8日の南北統一献金(16万円) [306] 同原告は、教区長から、南北統一のための献金を指示されている。同原告が、南北統一のためと指示されただけで16万円もの献金をすることは、不自然であり、このような献金をするに至ったのは、抗告人の信者から先祖の因縁等を告げられて、不安をあおられ、その影響があったことによるものと認められる。 [307] したがって、南北統一献金を指示した教区長の行為は、個別的に不安をあおったものではないものの、同原告が抗告人の信者による従前からの働きかけで不安をあおられた状態になっていることを利用したものであるといえ、社会的に相当な範囲を逸脱した違法なものであるといえる。 ウ 平成17年10月4日の本聖殿彫刻のための献金(140万円) [308] 同原告は、教区長から、本聖殿彫刻のための献金を勧誘され、140万円を支払っているが、教区長の文言は、上記献金をすることにより、罪をもったまま死んだ人たちを救うことができる旨告げるものであり、従前から抗告人の教義と先祖の因縁に対する不安を植え付けられた同原告に対して、霊界の存在を意識させ、不安をあおるものであるといえる。そうすると、上記発言に基づく献金勧誘行為は、従前の抗告人の信者らによる同原告に対する教育等の内容及び態様に鑑みれば、同原告の不安をあおり、自由な意思決定を不当に制約して献金を勧誘するものであり、社会的に相当な範囲を逸脱した違法な行為であるといえる。 2 抗告人の信者らによる原告92に対する不法行為について (1) 原告92についての個別事情 [309] 原告92は、平成6年10月1日にkに勧誘されて以降、平成17年1月末に脱会するまで約10年の間、継続的に抗告人の教義及びその信者らに関わっていたものである。そして、同原告は、上記約10年の間、学習や献金をするに当たって、ほぼ抗告人の信者らの指示どおりの行動をとっている。 [310] そうすると、同原告は、平成6年10月2日から平成7年3月まで、サンソレイユ及びリードというビデオセンターに週2、3回通って、抗告人の信者らから、同原告の家系についての具体的な因縁話を語られることにより、霊界の存在や先祖の因縁等を殊更に意識させられ、また、抗告人の教義である創造原理、堕落論、復帰原理、終末論などの講義を受け、それと知らないまま教え込まれて、上記先祖の因縁等と結びつくことで、先祖の因縁や神の摂理を全うできないことに対する不安を植え付けられていき、後記フォーデーズセミナーを受講する直前の同年2月20日に、それまで学んできたことが抗告人の教義に関わることであることを知った後も、新生トレーニング等を経ることで、抗告人の教義にさらに深く関わり、その不安が強められていったものと推認される。なお、同原告は、両親に抗告人の信者らと関わっていることが発覚して以降、一時期伝道活動等ができない時期があったものの、その期間も両親との関係から活動しづらい状態にあっただけで、抗告人の信者らから献金の勧誘を受けており、継続して抗告人の信者らの影響下にあったものと認められる。 (2) 平成6年10月のビデオセンター受講料(8万5000円) [311] 原告92は、kやlから、ビデオセンターに通えば、正しい家族関係や生き方が分かる、職場関係や家族関係がよくなるなどと言われて、kやlが抗告人の信者であると知らないまま、ビデオセンターへの入会を勧誘され、さらに、転換期にいい運勢をつかめなくて、どんどん悪い方向に行った人もいるなどとも告げられている。この点、上記発言は、悪い方向に行った人はいるなどとして、同原告についても同様のことが起きるかのような暗示を与えてはいるものの、kやlらの発言には、同原告についてどのような悪い影響があるのか具体的な指摘はなく、同原告自身、その当時、病院での勤務を通じて、家族とはどうあるべきか、尊厳のある死や生き方とは何かについて深く考えており、「正しい家族関係というものがあって、それを学べるのならば、それが仕事に生きるかもしれない」と思って入会を受け入れていることが認められる。しかし、同原告は、ビデオセンターに通うようになったことを契機に、抗告人の信者らと長期間にわたって深く関わるようになり、後述する抗告人の信者らによる違法な行為により、多額の金銭を支出させられるに至ったこと、後述するようにkやlが違法行為に直接関わっていることからすれば、kやlによる上記ビデオセンターへの勧誘行為は、後述する抗告人の信者らの同原告に対する違法行為を導く手段として行われたと認めるのが相当であるから、それ自体の違法性を否定することができない。 [312] したがって、同原告によるビデオセンター受講料8万5000円の支出は、抗告人の信者らの違法行為によるものと認めるのが相当である。 (3) 平成7年2月10日の印鑑3本セットの購入(12万円) [313] mは、原告92に対し、家庭運がよくないこと、それにより子供にも害が及ぶこと、その悪い因縁は悪霊となった先祖が影響していること、印相を見ても家庭運が欠けており、そこを補うように彫って作った霊的に優れた印鑑でなければ、悪い因縁から解放されないことを告げ、印鑑3本を購入するよう勧誘している。mの上記発言は、サンソレイユ(ビデオセンター)に通うようになって先祖の因縁等を植え付けられていた同原告に対し、先祖の悪い因縁により、同原告はおろか子供にまで害が及ぶとして、同原告の不安を殊更にあおるものであり、印鑑を販売する業者等がする開運等の話を超えて、同原告の自由な意思決定を不当に制約して印鑑を購入するように働きかけるものであるから、上記勧誘行為自体が、社会的に相当な範囲を逸脱する違法な行為であるというべきである。 (4) 平成7年2月22日からのフォーデーズセミナーの受講費用(4万円) [314] 原告92は、抗告人の信者から、フォーデーズセミナーを受講するように勧められて参加しているが、この際に、フォーデーズセミナーを受講しなければ今まで学んできたことが無駄になるなどと言われている。また、その後、フォーデーズセミナーに参加する直前に、同原告が、学習していることが抗告人の教義に関わることであることを知ると、抗告人の信者らは、同原告に対し、 「もし、ここでやめたら、先祖がせっかく条件を立ててあなたをメシヤである文鮮明師のもとまで導いてきたのに先祖を裏切ることになる。地獄から出られなくなる。」などといってフォーデーズセミナーへの参加を促している。そうすると、抗告人の信者は、上記発言により、抗告人の教義及びそれに関連して先祖の因縁を植え付けられた同原告の不安を殊更にあおり、自由な意思決定を不当に制約してフォーデーズセミナーへの参加を勧誘したものであるから、かかる勧誘行為は社会的に相当な範囲を逸脱した違法な行為であるというべきである。 (5) 平成7年3月から11月までの月例献金等(52万0323円) [315] 原告92は、平成7年3月から同年9月までホーム(信者らが共同生活する場所)での生活費として28万円、同年3月から同年11月まで月例献金として23万5323円、名節献金として5000円を支払っている。まず、ホームでの生活費に関して、同原告は、kから、 「学んだことを具体的に生活に活かす訓練をするために、次は新生トレーニングだね。」などと学習を継続することが当然であるかのような指示をされて新生トレーニングに参加しているが、上記指示の文言だけでは、必ずしも同原告の自由な意思決定を制約するものとは言い切れない。しかし、これまでのビデオセンターでの学習及びフォーデーズセミナーを通じて、同原告は、抗告人の信者らから、抗告人の教義や先祖の因縁等を教え込まれており、その上で、同原告がフォーデーズセミナーを受講する直前に抗告人の教義を学んでいたことを知った際に、抗告人の信者らから、 「もし、ここでやめたら、先祖がせっかく条件を立ててあなたをメシヤである文鮮明師のもとまで導いてきたのに、先祖を裏切ることになる。地獄から出られなくなる。」などと言われていることからすれば、途中でやめることができない不安な心理状態におかれていたものと認められる。そうすると、新生トレーニングや実践トレーニングに伴うホームでの生活及びそれに伴うホーム費の支出は、同原告の自由な意思決定が制約された状況の下でなされたものであり、抗告人の信者らの違法な行為に基づくものであると認められる。 [316] 他方、月例献金や名節献金など定期的な支出を要求される献金については、抗告人の教義上、抗告人の信者であればするものとされており、抗告人の教義上重要なものであるといえる。そして、上記のように、同原告が、抗告人の信者らから、抗告人の教義に関連して、同原告の先祖の因縁やそれに起因する不幸を告げられていたことを考えると、上記のように抗告人の教義上基本的な献金に応じざるを得ない状態にあったと認めることができ、そうであれば、当該献金は、同原告の自由な意思決定が制約された状況の下でなされたものであり、抗告人の信者らの違法な行為に基づいて支出されたものというべきである。 [317] なお、これ以降の月例献金及び名節献金についても、同原告について、抗告人の信者らとの関わり方に変化があったものとは認められないことからすれば、いずれも上記判断と同様に抗告人の信者らによる違法な行為に基づく献金と評価でき、また、月例献金や名節献金と基本的な性質を同じくする、定期的な支出を要求される献金(心情献金、家庭献金、侍義献金、教会員献金)も、同様に評価するのが相当である。 (6) 平成7年5月の訪米ツアー代(87万円) [318] 原告92は、nから、人数がそろわないとメシヤが苦しむ、そして災害が起きるかもしれないなどと言われ、訪米ツアーに行くよう指示されている。nは、上記発言により、抗告人の教義を教え込まれていた同原告に対し、メシヤが苦しむなどと抗告人の信者であれば従わざるを得ないような内容を告げて心理的圧迫を加え、さらに災害が起こるかもしれないとして不安をあおっている。そうすると、上記発言自体が、同原告に心理的圧迫を加えて、殊更に不安をあおるものであり、上記発言に基づく勧誘行為は、同原告の自由な意思決定を不当に制約するものであるから、社会的に相当な範囲を逸脱した違法行為であるといえる。 (7) 祝福献金(平成7年6月から平成8年6月まで合計119万6000円を支払) [319] 原告92は、lから祝福を指示されている。上記祝福献金の指示も、抗告人の信者らによる同原告に対する一連の献金勧誘行為等の一環としてなされたものであり、原罪を除くために不可欠である祝福の重要性にかんがみれば、抗告人の信者らから、抗告人の教義とそれに関連付けて先祖の因縁に対する不安を植え付けられていた同原告は祝福献金をせざるを得ない心理状態にあったものと認められる。したがって、同原告が支払った祝福献金は、その自由な意思決定が制約された状況の下でなされたものであり、抗告人の信者らによる社会的に相当な範囲を逸脱した違法な行為に基づき支出されたものというべきである。 (8) 救国献金(平成7年11月6日に60万円を支払) [320] 原告92は、抗告人の信者から、献金のノルマを達成しないと、日本が摂理国家から外され、国全体の天運がなくなり、経済的破綻や災害が起こるなどと告げられた。このような抗告人の信者の発言は、抗告人の信者から継続的に不安をあおられていた同原告の不安をさらにあおるものである。したがって、このような発言に基づく献金勧誘行為は、同原告の自由な意思決定を不当に制約するものであって、社会的に相当な範囲を逸脱した違法なものである。 (9) 救国献金(平成8年6月27日に90万3222円を支払) [321] 原告92は、抗告人の信者から、献金をしなければ、日本が摂理国家から外れ、国全体の天運がなくなり、経済的破綻や災害が起こるなどと告げられている。抗告人の信者の発言は、抗告人の教義を教え込まれた同原告に対し、日本が摂理国家から外れ、神の救いが受けられないことを示唆して心理的圧迫を加え、さらに、日本に経済的破綻や災害が起こるかもしれないなどと殊更に不安をあおるものである。そうすると、かかる発言に基づく献金勧誘行為は、同原告の自由な意思決定を不当に制約するものであるから、社会的に相当な範囲を逸脱した違法な行為であるといえる。 (10) kからの献金依頼(ルーマニア献金)(平成9年7月14日に40万円を支払) [322] 原告92は、kから、献金の勧誘を受けている。ルーマニアに宣教に行っていたkは、一時帰国した際、同原告に対し、ルーマニアの病気の子供たちのための心電図の費用としての勧誘であると述べるとともに、抗告人の宣教基盤作りの一環であることを伝えており、同原告が同金額を支出するに当たって、同原告が従前植え付けられていた不安をあおるような言動があったとは認められない。しかし、同原告がkからの献金依頼に応じたのは、抗告人の信者らから抗告人の教義を繰り返し教え込まれ、霊の親であるkの依頼を断れなくなっていたためである。したがって、kが不安をあおるような言動をしたことが認められないとしても、上記献金は、同原告の自由な意思決定が不当に制約された状態で行われたものであり、kの同原告に対する献金の依頼は、社会的に相当な範囲を逸脱した違法な行為であるといえる。 (11) oからの金銭支出依頼(平成9年11月頃に20万円を支払) [323] 原告92は、oから韓国人と祝福を受けるため渡韓費用20万円を出してほしいと依頼され、これに応じた。このように、同原告がoから金銭の支出の依頼に応じたのは、抗告人の信者から抗告人の教義を繰り返し教え込まれ、霊の親であるkのさらに霊の親であるoの依頼を断れなくなったこと及び抗告人の教義における祝福の重要性を知っていたことによるものである。確かにoは、上記支出の依頼において同原告の不安をあおるような言動をしたことが認められないものの、以上によれば、同原告は、自由な意思決定が不当に制約された状態で、oの金銭支出依頼に応じたのであり、このような支出をoが依頼したことは、社会的に相当な範囲を逸脱した違法な行為であるといえる。 (12) 清平特別修練会(平成10年9月11日から14日まで)に参加した際の渡航費、会費、先祖解怨献金(合計9万円) [324] 原告92は、pから、清平に行くよう指示を受けている。pは、同原告から抗告人の活動と両親のことで悩んでいると告げられたことから、清平に行くよう勧めたものであるが、そもそも、同原告は、両親から抗告人に関わることを反対され、抗告人の活動ができないが、活動をしないと自分や家族らに不幸が起こることに対する恐怖について悩んでいるのであり、この恐怖心は、従前抗告人の信者らから植え付けられたものであると認められる。また、抗告人の教義を教え込まれた同原告は、抗告人にとって特別な聖地である清平に行くようにと指示を受ければ断ることはできないものともいえる。そうすると、同原告の清平修練会参加とそれによる費用の支出は、同原告の自由な意思決定が制約された状況の下でなされたものであり、抗告人の信者らによる違法行為に基づくものであるといえる。他方、先祖解怨献金についても、従前の抗告人の信者らの教育及び献金等勧誘の内容と態様からすれば、同原告が純粋に信仰心から支出したものとは考えられず、同じく同原告の自由な意思決定が制約された状況の下でなされたものであり、抗告人の信者らによる社会的に相当な範囲を逸脱した違法な行為に基づくものと認められる。 (13) 平成10年9月15日及び19日に支払ったビデオセンター再入会金(合計8万5000円)、その後に支払ったフォーデーズセミナー参加費(4万円) [325] pは、原告92に対し、先祖や家族を救う氏族メシヤとしての使命を意識させ、また、 「あなたは1回落ちこぼれたのよ。まだ、先祖を救えるほど原理を理解していない。」などとも言って、ビデオセンターに通うよう指示をしている。pの上記発言は、抗告人の教義を教え込まれ、それと関連して先祖の因縁に対する不安を植え付けられた同原告に心理的な圧力を加え、同原告の自由な意思決定を不当に制約して、ビデオセンターに行くことを指示するものであるから、かかる発言に基づく指示は、社会的に相当な範囲を逸脱した違法な行為というべきであり、ビデオセンターへの再入会及びこれに引き続くフォーデーズセミナーにかかる同原告の支出も違法な行為に基づくものと認められる。 (14) 新生トレーニング及び研修トレーニングの間の献金等(平成10年12月から平成11年11月にかけて合計77万1335円を支払) [326] 原告92は、新生トレーニング、研修トレーニングを受け、この間、ホームでの生活費48万円、名節献金8000円及び月例献金28万3335円を支出したが、これらの支出が抗告人の信者らの同原告に対する社会的に相当な範囲を逸脱した違法な行為に基づくものであることは、前記(5)のとおりである。 (15) 祝福献金(平成11年2月7日の祝福式)(170万円) [327] 原告92は、pから祝福式に参加することを勧誘されており、従前の抗告人の信者らによる同原告に対する教育及び献金行為等の内容と態様からすると、前記(7)の場合と同様に、同原告が純粋に信仰心から祝福式への参加と祝福献金の支出を決めたものであると考えることはできず、前述した抗告人の信者らの不当な影響の下、従わざるを得ない心理状態にあったものと推認される。そうすると、上記祝福式への参加及び祝福献金の支出は、同原告の自由な意思決定が制約された状況の下でなされたものであり、抗告人の信者らの社会的に相当な範囲を逸脱した違法な行為に基づくものというべきである。 (16) 清平修練会(平成11年9月28日~30日)に参加した際の渡航費、会費、先祖解怨献金(合計9万円) [328] qは、原告92に対し、同原告の霊の子(同原告が誘って信者になった者のこと)が保護されたことに関連付け、それを拉致されたと表現し、次は同原告の番であり、拉致監禁されないためにも清平に行って悪霊を分立しなければならない、霊の子がサタンに奪われた罪も同原告が負わなければならないなどと、抗告人の教義を教え込まれた同原告の不安を殊更にあおって、清平へ行かせている。そうすると、上記発言自体が、同原告に対する具体的な害悪の告知に当たり、かかる発言に基づくqの指示は、同原告の自由な意思決定を不当に制約するものであるから、社会的に相当な範囲を逸脱した違法な行為というべきである。 (17) 平成11年12月から平成12年6月までに支払った月例献金等(16万3074円) [329] 原告92は、抗告人の信者から指示され、マイクロ活動に参加し、月例献金15万9074円、名節献金4000円を支出したが、これらの支出が、抗告人の信者らの同原告に対する社会的に相当な範囲を逸脱した違法な行為に基づくものであることは、前記(5)のとおりである。 (18) 総生蓄献金(平成12年6月頃までに130万円を支払) [330] 原告92は、抗告人の信者らから、総生蓄献金の勧誘を受けているが、抗告人の信者らの発言は、天国に入るため総生蓄献金をしなければならない、献金しなければ死後は地獄に落ちるなどと、抗告人の教義を教え込まれた同原告の不安を殊更にあおるものといえる。そうすると、上記発言自体が、同原告に対する具体的な害悪の告知に当たり、かかる発言に基づく献金勧誘行為は、同原告の自由な意思決定を不当に制約するものであるから、社会的に相当な範囲を逸脱した違法な行為であるというべきである。 (19) 平成12年2月の合同結婚式に参加した際の献金(40万円) [331] 原告92は、qから言われて、合同結婚式に参加するためという名目で40万円を支払ったが、このような献金の支出は、同原告の自由な意思決定が不当に制約された状況の下でされたものと認められ、qの献金勧誘が社会的に相当な範囲を逸脱した違法な行為に基づくものであると認められることは、前記(7)と同様である。 (20) 平成12年4月の千葉における修練会費(7万円) [332] 原告92は、マイクロ活動が負担になっていたことから、qに心情を整理するようにということで、千葉中央修練所での修練会に参加させられている。そもそも、同原告は、抗告人の信者らの指示によりマイクロ活動に従事していたものであり、従前の抗告人の信者らの同原告に対する教育及び献金行為等の内容と態様に鑑みれば、同原告は従わざるを得ない心理状態にあったものと推認される。また、千葉中央修練所での修練会への参加も、同様に同原告の自発的な意思とはいえない。そうすると、千葉中央修練所での修練会の参加と修練会費の支出は、同原告の自由な意思決定が制約された状況の下でなされたものであり、抗告人の信者らによる社会的に相当な範囲を逸脱した違法な行為に基づくものであるといえる。 (21) 食当中の献金(平成12年8月から平成13年10月までの月例献金等12万1140円、先祖祝福献金12万1700円) [333] 月例献金等の定期的な献金が、抗告人の信者らの原告92に対する社会的に相当な範囲を逸脱した違法行為に基づくものであることは、前記(5)のとおりである。 [334] また、先祖祝福献金については、同原告は、qから勧誘を受けているが、従前の抗告人の信者の同原告に対する教育及び献金行為等の内容と態様に鑑みれば、同原告が純粋な信仰心から先祖祝福献金をしたものとは考え難く、抗告人の信者らの不当な影響の下、従わざるを得ない心理状態にあったものと推認される。そうすると、上記祝福献金の支出は、同原告の自由な意思決定が制約された状況の下でなされたものであり、抗告人の信者らによる社会的に相当な範囲を逸脱した違法な行為に基づくものであるというべきである。 (22) 清平修練会(平成13年10月13日から同年11月21日まで)に参加した際の渡航費、会費、先祖解怨献金(合計17万6000円) [335] 原告92は、rから、 「清平で献金しないと悪霊が払われず、伝道ができない。そうすると、祝福も受けられないし、氏族復帰が難しくなる。」と言われている。rの上記発言は、清平に行かなければ、祝福も受けられないし、氏族復帰が難しくなる、すなわち、救いが受けられないことを同原告に示唆するものであり、従前の抗告人の信者らの同原告に対する教育及び献金等勧誘の内容及び態様からすれば、同原告の不安を殊更にあおり、自由な意思決定を不当に制約するものであるといえる。したがって、上記発言に基づく指示は、従前の抗告人の信者らによる同原告に対する教育等の内容及び態様を考慮すれば、社会的に相当な範囲を逸脱した違法な行為であるというべきである。 (23) 月例献金等(平成13年12月から平成14年3月までの合計24万4576円、平成14年4月から平成15年3月までの8万5100円、平成15年4月から平成17年1月までの53万8312円) [336] 原告92は、研修トレーニング、店舗活動中等に月例献金等を支出したが、これらの支出が、抗告人の信者らの同原告に対する社会的に相当な範囲を逸脱した違法な行為に基づくものであることは、前記(5)のとおりである。 (24) 清平修練会に参加した際の渡航費、会費、先祖解怨献金(平成15年8月~9月の会費等9万8000円、平成16年3月24日~26日の会費等8万6000円、平成16年10月9日~11月17日の会費等9万8000円) [337] 原告92は、平成15年8月から同年9月までの清平修練会、平成16年3月24日から同月26日までの清平修練会、同年10月9日から同年11月17日までの清平修練会に参加するに当たって、それぞれ、相対者(平成14年2月に参加した合同結婚式の相手)が参加する、祖母の解怨をしなければならない、文鮮明が日本の婦人を再教育しなければならないと言った、という理由で参加の指示をされている。そして、従前の抗告人の信者らの同原告に対する教育及び献金等勧誘の内容及び態様からすれば、同原告はいずれの指示にも従わざるを得ない状況にあったものと解され、純粋に信仰心から清平の修練会に参加しているとはいい難い。そうすると、同原告の清平修練会参加とそれに係る費用の支出は、いずれも同原告の自由な意思決定が制約された状況の下でなされたものであり、抗告人の信者らによる社会的に相当な範囲を逸脱した違法な行為に基づくものであるというべきである。 (25) 総生蓄献納物献金(平成15年4月から12月頃までの間に支払った35万7500円) [338] 原告92は、総生蓄献納物献金について、支払わなければ地獄にとどまることになるなどとの発言を受けていたことが認められる。そうすると、同原告による総生蓄献納物献金の支出は、純粋な信仰心からなされたものではなく、地獄にとどまるなどとして心理的な圧力を受け、自由な意思決定を不当に制約された状態の下でなされたものと認められる。したがって、上記総生蓄献納物献金は、抗告人の信者による違法な行為に基づき支出されたものというべきである。 (26) 天一国聖酒感謝献金(平成15年11月に支払った20万円) [339] 原告92は、天一国に入るためには、聖酒を飲まなければならないと言われて、天一国聖酒感謝献金をしている。抗告人の教義上、聖酒式を経ることで原罪が完全に清算されて消滅するとされていることからすれば、そのための献金も抗告人の教義の域を超えるものではない。しかしながら、上記献金の指示も、抗告人の信者らによる同原告に対する一連の献金勧誘行為等の一環としてなされたものであり、同原告に対する従前の抗告人の信者らの教育及び献金勧誘行為等の内容と態様を考慮すれば、同原告の献金は天一国へ入れないことに対する不安から支出されたものであって、純粋な信仰心から献金をしたものとは言い難い。そうすると、同原告が支払った天一国聖酒献金は、同原告の自由な意思決定が制約された状況の下でなされたものであり、抗告人の信者らによる社会的に相当な範囲を逸脱した違法な行為に基づき支出されたものというべきである。 3 抗告人の責任について [340] 抗告人は、抗告人の信者らが統一運動を支援するために自主的に組織した団体(信徒会)が、上記のような行為を行っているのであって、抗告人が使用者責任を負う理由はないと主張する。 [341] しかしながら、抗告人が主張する信者らが任意に組織した団体である信徒会については、抗告人への勧誘や抗告人の教義の伝道、教育等を目的として活動していることは明らかであり、また、本件の抗告人の信者らが所属する信徒会の行為だけを比較しても、ビデオセンター、新生トレーニング、実践トレーニング及び物品の販売等、所属する信徒会が違っても、画一的な内容の活動が行われていることからすれば、各信徒会間で全国的に高度な組織的一体性があることが推認される。 [342] さらに、本件の個別事情として、 ① 抗告人の信者らが原告91に対して行った勧誘行為の結果として授かることになった天運石の交付とその対価の支払が、教区長が関わって仙台教会で行われ、また、家系図の代金が仙台教会において支払われるなど、同原告の金銭の支出等が抗告人の人物や教会が関わる形で行われていること、 ② 被告sが、信徒会青年支部の支部長を辞めた後、平成21年2月から抗告人の職員となっており、信徒会と抗告人の人的関係が完全に分離されていないこと、 ③ 上記信者らが原告らに行った勧誘行為等の結果として支出された献金を抗告人が受領していること が認められる。 [343] そうすると、抗告人の主張によれば、信徒会は、各教会に属する信者らが任意に組織したものであるにもかかわらず、上述のように、信徒会相互間には全国的に高度な組織的統一性が認められる上、信徒会から抗告人へ献金が交付され、信徒会と抗告人との間の人的関係が少なからず存在する。抗告人の元職員であるtは、信徒会及び抗告人が信徒会の前身であると主張する全国しあわせサークル連絡協議会は存在しなかったと供述しているところ、抗告人が上記連絡協議会の責任者であると主張するCが、抗告人の機関誌の本部役員のあいさつ欄に、局長として寄稿しており、上記供述が全く根拠を欠くとはいい難い。以上に鑑みれば、信徒会がおよそ抗告人から独立して存在していたものとは考え難く、抗告人の信者と抗告人の間には、指揮監督関係があったものと認めるのが相当である。 [344] その上で、 ① 上記信者らが、抗告人の教義の実践と称して、物品販売活動やビデオセンター等への勧誘活動を行っていること、 ② 物品販売活動に際して、抗告人の教義に関わる内容を告げて購入を促していること からすれば、上記信者らが行った経済活動及び伝道活動は、外形上、抗告人の宗教的活動の一環と してなされたということができるから、抗告人の事業の執行につきなされたものと解すべきである。 [345] したがって、上記認定の不法行為について、抗告人は、民法715条に基づき、原告らに対し、損害賠償責任を負うというべきである。 [346] なお、抗告人は、抗告人の目的に商品売買等の収益事業は含まれず、上記信者らの行動は抗告人の事業の執行について行われたものではないと主張する。そして、証拠によれば、抗告人の規則において、収益事業は出版業しか定めておらず、この出版業も抗告人は行っていないことが認められるが、前示の事実からすると、これらのことから、抗告人の信者らが本件において行った経済活動及び伝道活動は、抗告人の事業の執行について行われたものであるという前記判断が妨げられるものではない。 [347] 当事者間に争いのない事実及び証拠によれば、 ① 抗告人の福井教会所属の信者は、「ヘブン」と称する研修施設を運営していたこと、 ② 原告93は、ヘブンにおいて、提供された教材の視聴等を続けていたが、平成20年6月17日のヘブンの「主ゼミ」と称する催し物に参加するまでは、抗告人は各種の社会問題を引き起こしている団体であると認識しており、抗告人の教義を信仰する意思を有しなかったこと、 ③ 同原告は、同年3月26日、ヘブンの「所長」と称していたaに対し、500万円を交付したこと、 以上の事実が認められる。 [348] 前記で認定した事実及び証拠によれば、被告b、a及びcは、同原告がcからの献金の要請に応じて、ヘブンにおいてcが主催した「祈願礼式」と称する先祖供養の儀式のために500万円をaに交付したことを知っていたと認められる。そして、a又はcが、同原告の承諾を得ないで、同原告の献金であると称して、上記500万円を抗告人に交付したことは当事者間に争いがない。 [349] 抗告人は、従前から、信者の任意団体と称する各種団体の行った違法な言動を伴う物品の販売や献金の受領について、訴訟において、抗告人が実質的に上記団体の構成員を指揮監督していたと認定されて使用者責任を課されることを繰り返してきたのに、本件当時も、ヘブンの構成員から交付された500万円を、何ら同原告自身にその趣旨や経緯を確認することなく(このような確認をしたことを認めるに足りる証拠はない。)、同原告からの献金として受領したこと(抗告人も自認する。)を考慮すると、抗告人は、本件当時既に、その確認の必要がないと判断することができる程度には、上記500万円が同原告からヘブンを経由して抗告人に交付された経緯等を把握していたと推認するべきである。そして、それにもかかわらず、被告ら、a及びcが、ヘブンは抗告人とは全く無関係であると主張ないし供述していること自体から、被告b、a及びcが、ヘブンの研修参加者に関する情報を抗告人に対して継続的に報告し続けていることを推認することができるのであり、このような関係がある以上、抗告人は、被告b、a及びcの抗告人への献金勧誘に関する活動について、実質的に指揮監督していたと推認すべきである。 [350] そうすると、そもそもcは、当初から抗告人への献金原資とする意図を秘して、当時は抗告人の教義を信仰する意思を有しなかった同原告に対し、祈願礼式の資金名目でヘブンへの金員の提供を勧誘したと推認すべきであるし、被告bも(aも)、cの意図を知りながら、同原告からヘブンへの金員の提供実現に協力したと推認すべきであって、このような行為が同原告の信仰の自由を侵害する違法な行為であることはいうまでもない。 1 3億円の献金(平成12年4月6日及び11日)に係る勧誘行為の違法性について [351] 原告94の養母は、同原告にとって大切な存在であり、また、高齢で心臓手術という生命への危険性の高い手術が直後に控えているという状況の下であることから、通常の状況下とは異なり、同原告に対する勧誘行為の態様に相当程度配慮すべき状況であったところ、抗告人は、こうした状況における同原告の不安に乗じて、演出等を用いて、同原告をして、聖本を入れることにより養母の命を助けられると考えるに至らしめた上、病気の原因が同原告の実父母の先祖因縁に起因する旨述べるなどして不安を助長した本件勧誘行為により、同原告は、自由意思を阻害されて3億円の献金を行ったものである。同原告が本件における一連の献金によって所有する不動産の固定資産税の支払もできない状態となったことに照らしても、本件勧誘行為には、社会的相当性を逸脱した違法があるといわなげればならない。 2 6543万2720円の献金(平成16年6月2日から11月11日まで)に係る勧誘行為の違法性について [352] aは、原告94との面談において、同原告に対し、自分の財産や養母の財産及び同原告が叔母から預かっていた預金等の遺産が全てなくなるまで献金するように執拗に求め、さらに、それを果たさないと、同原告の子供に危害が及ぶなどを告げたことが認められ、同原告は、その結果、6543万2720円の献金をした事実が認められる。 [353] このようなaの献金勧誘行為は、害悪を告げて、同原告を畏怖させて、同原告に同原告及び周辺者の献金を執拗に迫るものであり、不法行為と評価すべきである。 3 抗告人の責任について [354] aは、抗告人の信者であり、抗告人の中部教域の年間計画書に、aへの面談候補者の決定が記載されていること、aが、原告94ではなく、抗告人の信者であるb等から同原告との面談費用等を受け取っていることなどからすれば、同原告とaの面談は、抗告人の中部教域における行事の一環として行われたと認められる。抗告人は、中部教域は非公認教会であり、実質は信徒会であると主張するが、中部教域には、抗告人から、抗告人の教域長が派遣されるなど、実質は抗告人を構成する組織の一部であると認められるから、中部教域の主導下で行われたaとの面談における不法行為については、抗告人も民法715条によって責任を負うというべきである。 [355] この判決では、文脈に応じて宗教団体としての抗告人を「統一協会」というとされている。この項においては、判決で「統一協会」との文言が使用されている場合、「統一教会」との文言を使用することとする。 1 統一教会の信者の伝道・教化活動の違法性 (1) 統一教会の信者による伝道活動について [356]ア 統一教会の信者が原告ら(原告95~131)に対して組織的に行った一連の伝道活動は、宗教性を秘匿しながら、手相、家系図、姓名判断などの運勢鑑定を用いたり、霊界や因縁を語って恐怖心をあおることをも厭わないで、原罪や霊界・因縁が実在する害悪であると信じ込ませる手法で行われている。 [357]イ また、入信後は、人生と財産を差し出し、経済活動に従事するとの特異な宗教的実践が求められ、多額の集金に成功することが信仰の証しであるとされる組織体系に組み入れられることになるが、原告らに対しては、そのことを知らせないで、とにかく統一教会の信仰を持つよう伝道がされた。 [358]ウ 統一教会の信者が原告らに行わせたマイクロ活動(マイクロバスで寝泊まりしながら、日本全国を転々として、ハンカチ、珍味、コーヒー豆等の物品を訪問販売する活動)は、客観的にみれば、労働基準法を無視した過酷な労働環境の下、虚偽の事実を告げて物品を販売するというものである。さらに、統一教会の信者が求める金銭の拠出は、性急かつ過剰であり、相手方の経済状態を考慮しないという意味で情け容赦がない。マイクロ活動に従事させたり性急かつ過剰な金銭拠出を求める行為は、経済的収奪と言い得るものである。 [359]エ 結局、統一教会の宗教的実践とは、多額の集金が信仰の証しであるとされ、自分自身も経済的収奪を受ける組織体系に組み込まれることを意味するが、原告らは、そのような組織体系に組み入れられることを全く知らされないで信仰を植え付けられ、そのような組織体系に組み入れられることを拒絶することができなかったのである。 (2) 統一教会の信者による教化活動について [360]ア 統一教会の信者は、教化活動の様々な場面において、原告らに対し、心理的に、家族や友人・知人との接触を怖れるよう仕向け、必要とあれば、「対策」と称して、物理的にも、家族や友人・知人との接触を妨げ、原告らが信者以外の者と感情を共有することを禁じている。 [361] 心理的に家族との接触を怖れるよう仕向ける方法は、恐怖心を利用したものである。原告らは、先祖の因縁を清算する使命があり、その使命を果たさなければ先祖も現世の家族も苦しみ続けると教えられるが、現世の家族はサタンとつながっている(サタンの支配下にある)ため原告らを棄教させようと企てていると教えられるから、結局、家族との交流を保って棄教させられると使命が果たせず、先祖も現世の家族も苦しみ続けるとの恐怖心が生じ、家族との健全な交流が断絶させられる結果、情緒の形成が歪められ、信仰を持ち続けるように仕向けられるのである。 [362]イ また、原告らは、献金や物品購入による金銭拠出の不足が信仰の怠りにつながり、救済(先祖、自分自身及び現世の家族の罪の清算)の否定につながるとする教化活動を継続的に受けていたことが明らかである。原告らは、救済の否定という不安や恐怖にあおられ、献金や物品購入の目標額に不足が生じないよう、自分自身の貴重な蓄えを取り崩したり、嘘をついて家族の蓄えを取り崩させたり、嘘をついて他人に物品販売をしたり、高利金融業者から金を借りるなどしているのである。 (3) まとめ [363] 以上のとおりであって、統一教会の信者が原告らに対して行った伝道活動は、宗教性や入信後の実践内容を秘匿して行われたもので、自由意思を歪めて信仰への隷属に導く不正なものであるし、統一教会の信者が原告らに対して行った教化活動は、家族等との交流を断絶させ、金銭拠出の不足が信仰の怠りであり救済の否定につながると教えて信仰を維持させ、特異な宗教的実践を継続させようとする不正なものである。 [364] そして、これら不公正な伝道・教化活動は、原告らに財産を差し出させ、原告らを集金活動に従事させるという特異な宗教的実践を強制するものであり、客観的にみれば、統一教会が経済的利益を獲得する目的で行われたといわざるをえない。原告らに対する伝道・教化活動と同様の手法で、経済取引の勧誘が行われたとすれば、そのような勧誘はわが国の法律では取締りの対象とさえなるのである。 [365] したがって、統一教会の信者が原告らに対して行った伝道・教化活動は、社会的相当性の範囲から著しく逸脱する民事上違法な行為であるといわなければならない。 2 統一教会の原告らに対する損害賠償責任 [366](1) 前記のとおり、統一教会の信者が原告らに対して行った伝道・教化活動は、社会的相当性の範囲を著しく逸脱する違法なものであり、民法709条所定の不法行為を構成するといわざるをえない。 [367] そして、信者の不法行為は、統一教会の宗教教義の実践として行われたことが明らかであるから、抗告人は、民法715条に基づき、信者の不法行為によって原告らに生じた損害を賠償すべき責任を負う。 [368](2) 抗告人は、宗教活動は民法715条1項にいう「事業」に該当しないとか、抗告人の規則に規定されていない活動について事業執行性を認めることはで きないなどと主張する。しかし、使用者責任は、被用者を使用することで活動範囲を広げて利益を得ている以上、その活動により生じた損害にも民事責任を持つべきであるという報償責任原理、あるいは、他人を使用することで新たな危険を作出している以上、その危険が実現化して生じた損害についても民事責任を負うべきであるという危険責任原理に由来するものである。報償責任原理及び危険責任原理のいずれに照らしても、宗教活動が「事業」から除外されると解すべき理由はなく、抗告人が、信者の不法行為について民法715条所定の使用者責任を免れる理由はない。 3 連絡協識会及び信徒会について [369](1) 抗告人は、ビデオセンターでの伝道活動を含め、これまで認定判断してきた信者による伝道・教化活動、原告らを含む信者が行っていた経済活動は、一部の信者による任意の信徒団体(連絡協議会又は信徒会)が行っていた活動であって、統一教会は一切関与していないし、統一教会には献身制度はなく、原告らは信徒団体に献身していたにすぎないと主張するので、この主張について検討する。 [370](2) 連絡協議会又は信徒会が抗告人とは別個独立の信徒団体であったとすれば、その信徒団体は極めて多数の信者により構成され、全国で活動していたはずであるから、団体の運営に関する基本的な事項を定めた規約が存在するはずであり、連絡協議会の収支を示す書類なども当然作成されていたはずであるが、そのような資料は、一切、抗告人から提出されていない。また、経済活動については、売上目標が毎月設定され、目標達成が非常に重視されており、その売上目標はかなり高額であったにもかかわらず(例えば、旭川支部のある月の目標は、経済活動全体で1500万円であったことが認められる。)、連絡協議会と信徒会はいずれも、それらの収支に関して税務申告を行っていなかった。 [371](3) さらに、連絡協議会の北海道ブロック岩見沢地区の活動拠点の建物(名称は「アイカム」)の賃借人が「婦人サークル協会連合会」という団体であり、連絡協議会の北海道ブロック旭川地区の出発決断式の主催団体が「統一運動推進連合協議会(ときわの会)」という団体とされており、連絡協議会が活動主体として対外的に表示されるのが自然であると考えられる場面において、実体不明の団体名が主体として現れている。 [372](4) 横浜信徒会の代表者であったという証人aは、横浜における連絡協議会及び信徒会の活動をまとめた冊子として「神奈川統一運動史」を作成し、平成19年3月に完成させたと供述する。 [373] しかし、同冊子には、抗告人と連絡協議会・信徒会各々の部署や構成員が混在して記載されており、むしろ両者が同一組織であることを推認させる内容となっている。すなわち、同冊子には、信徒会とされる組織が「横浜教会」や「横浜西教会」などと表記され、「横浜教会」の部署として、信徒会の部署とされる教育部、実践部などが挙げられている上、「横浜教会」の一部署という位置づけで、抗告人の公認教会である横浜教会が「教会」として記載されている。他方で、連絡協議会・信徒会の組織を記載するのであれば一部署として記載されるべきビデオセンターが「友好団体」とされている。 [374] また、抗告人歴代会長、横浜を管轄するリージョンの歴代会長、教区の歴代リーダーという抗告人の幹部が掲載されたすぐ後に、「歴代信徒代表」としてaを始めとする連絡協議会又は信徒会の責任者が掲載されている上、教区歴代リーダーとして掲載されている7名のうち2名は、連絡協議会の幹部とされる人物である。 [375] 「横浜教会年表」と題する年表の中には、連絡協議会又は信徒会の役職とされる信徒代表などの人事と、抗告人の役職とされる教区長の人事が区別なく記載されている上、連絡協議会が発足したとされる昭和57年の前年の欄に、連絡協議会の役職とされるブロック長の人事が記載されている。 [376] さらに、抗告人の職員であるb中央神奈川教区長が巻頭言を述べているが、その内容は、別組織である信徒会の運動史完成を祝うものと理解するのが困難であり、むしろ、抗告人中央神奈川教区が主導して同冊子を作成したというものとなっている。そして、そのことを裏付けるように同冊子に掲載されたメッセージの中に「発行に際し、企画主管されたb教区長」とか「第二地区、中央神奈川教区として統一運動史を発刊することができた恵みを感謝申し上げます」という記載がある。 [377](5) 入信した原告らは、例外なく、自分の活動は、連絡協離会や信徒会としての活動ではなく、統一教会の宗教教義の実践であったと供述している。それだけではなく、現在も信者として活動している抗告人側の証人らも、自身の所属する団体の正式名称を長らく知らずにいたと証言しており(例えば、証人aは、昭和60年に献身者となったが、連絡協議会という名称を知ったのは今から約10年前であると証言している。)、自分が献身して活動する団体の正式名称を知らないというのは余りにも不自然である。 [378](6) 伝道活動や経済活動の出発決断式には、会長を始めとする抗告人の幹部や教会長などがたびたび出席しており、抗告人の会長(当時)が自ら経済活動の目標金額を提示したことが認められるほか、連絡協議会の役職であるはずの管区長が文鮮明に直接会うこともあり、信者は、そのことを根拠に史上最高の実績を出すよう言われたことが認められる。 [379] さらに、文鮮明は、連絡協議会の最高責任者とされるCに対して献金の指示を出していたし、抗告人の会長(当時)に対しては、日本からの金銭拠出が少ないことを叱責する趣旨で 「エバ国から、はずして欲しいんだったら、今、言いなさい。すぐ、外してやるよ」などと厳しく迫ったことや、その場にいたbが「11月29日までに100やります」と決意表明しているのである。 [380](7) 連絡協議会の岩見沢地区の組織図には、教会長や副教会長という役職が記載されており、また、旭川地区の組織図には、「神」「真の父母」とある下に「会長」「社長」と記載され、その下に管区長など連絡協議会のものと主張されている役職が記載されている。 [381](8) 人事面においては、証人cは、北神奈川教区長を務めていたdが教区長を辞めた後に川崎信徒会の信徒代表に就任し、信徒代表を辞めた後に再び教区長に就任したと証言しており、その証言内容を前提としても、抗告人と信徒会が人事面で密接に連携していたことがうかがわれる上、dが信徒代表を務めていたとされる時期には、教区の運営本部長も務めていたことが認められる。また、証人eは、信徒会の教育部長を務め、その職を退いた翌年の平成8年から教会長に就任したと証言するが、同人は、信徒会の役職に就いていた平成6年の時点で教会長に就任していたことが認められる。 [382] 会計面においては、岩見沢地区において、統一教会に上納すべき献金の一部が地区の収入とされていたことが認められるほか、川崎支部においても、統一教会において最も基本的な献金である月例献金の一部を支部の経費に使っていたことが認められる。 [383](9) 以上の諸事情にかんがみれば、宗教団体である抗告人の組織とは別個独立に、連絡協議会又は信徒会という信徒団体が組織されていたとは到底認めることができず、抗告人が連絡協議会又は信徒会として主張する組織は抗告人の一部を構成するものであって、先に認定した信者の活動は、すべて抗告人の宗教活動として行われていた事実を左右すべき事情は何ら見当たらない。 1 抗告人の信者らの伝道・教化活動の違法性 (1) 方法 [384] 抗告人の信者らの伝道・教化活動の方法には、以下のような特徴がある。 [385] 抗告人の信者らは、勧誘の初期段階においては、対象者に対し、当該勧誘行為が宗教団体の活動であることを秘匿し、教化過程において学ぶ内容は宗教の教義ではなく真理である旨告げ、特定の宗教教義に関する伝道ではないかと尋ねられてもなお、これを否定したりはぐらかしたりするとともに、教化過程を受講することやその内容について、家族や友人等、対象者の周囲の人間について話さないよう指導していた。 [386] また、抗告人の信者らは、対象者に対し、先祖の因縁話、霊界の先祖からの働きかけについて話したり、自己の罪深さを意識させたりするなどして不安をあおり、それによって次の教化過程に進ませ、その過程においては、対象者が堕落人間であることを意識させて救いを求める心情を喚起し、救いを得るためには堕落人間である自分自身の判断で行動することは許されず、より神に近い存在であり先輩の信者であるアベルに対して絶対的に服従しなければならない旨指導した。そして、ある程度の統一教会の教義を教え込んだ段階に至った後で、対象者に対し、これまでの教育内容が統一教会の教義である旨明かすとともに、一旦その教義を知った後で教義から離脱した場合、それ自体罪悪であるとか、地獄に堕ちたり、霊界の先祖から責められたりすることになる旨教えていた。このような抗告人の信者らの伝道・教化活動については、その方法がマニュアル等によって整備され、組織的かつ体系的に実施されていた。 [387] そして、これらの特徴は、原告ら(原告132~134)に対する伝道・教化活動にも見られたものである。すなわち、原告132は、スリーデーズセミナーを受けて初めてメシヤの存在を明かされ、その後別の講義において初めてメシヤが文鮮明であることを明かされている。原告133は、悩みが解決できる場所、自己啓発などを行っているカルチャーセンターのような場所であると言われてビデオセンターに講義を受けに行って、ライフトレーニングにおいて初めてメシヤを明かされている。原告134を最初に勧誘したaは、統一教会の勧誘であることを明かさずに原告134を勧誘しており、原告134は、中級コースにおいて初めて、それまでの学習内容が統一教会の教義であり、メシヤが文鮮明であることを明かされている。また、原告132は、スリーデーズ後の講義に際し、夫には心の修養のためのセミナー受講だと説明するよう求められ、原告133は、ツーデーズセミナー参加時には、親に対し、友達の家に泊まると説明し、フォーデーズセミナーに際しては、家族に対し、友人と旅行に行くと説明するよう言われている。原告132は、脱会意思を伝えたところ、体にメスが入ると言われたり、原告133は、脱会後に人生は悲惨なものになる、地獄に堕ちると言われたりした。 (2) 目的 [388] 抗告人の信者らの伝道・教化活動の目的が、直接的には統一教会の新規信者獲得にあることは明らかである。 [389] ところが、さらに本件についてみると、統一教会の教義の内容等に照らしても、伝道・教化活動の対象者を特定の者に限定すべき事情は何ら存在しないにもかかわらず、抗告人の信者らが伝道・教化活動に際して参照すべきものとされたマニュアル等によれば、会社で「長」のつく人(指導者タイプ)、国家試験、特に職業機能を身につけている人、スポーツ大会上位出場者、学生(国立大学等)、公的精神のある人や財のある人等を優先して伝道の対象者とする方とし、身体の不自由な者、病気のある者等、精神的な支えを必要とする可能性が高いと思われる人々については、かえって伝道・教化活動の対象から排除するよう記載されている。また、たとえば、伝道・教化活動の具体的方法が記載されたマニュアル(アフタートークマニュアル)には、 「主管する」との項目の下に「伝道とは時間とお金を奪うこと」と記載されており、このマニュアルを実際に使って伝道・教化活動の対象者とされた者の名簿には、対象者毎に預貯金額等を記載する欄が設けられている。以上によれば、抗告人の信者らの伝道・教化活動は、教義の布教等、純粋な宗教的目的によるものとは認められず、金銭を集める目的も相当程度有していたものといわざるをえない。 [390] 抗告人の信者らは、伝道・教化活動を行うに当たり、マニュアル等に従って、対象者に対し、抗告人の教義とは直接の関係がない姓名判断をして今が転換期である旨の話をしたり、家系図鑑定を行った上で因縁話をしたりしていた。 [391] しかも、一連の伝道・教化活動によって献身者となった信者は、新規信者獲得のために伝道活動を行うばかりか、統一教会の教義とは直接関係のないハンカチ、茶、宝石、珍味、印章等といった商品の販売という経済活動に従事させられ、その活動には厳しい販売目標が課せられていた。加えて、統一教会の教義上、人間が原罪から解放される唯一の手段である祝福を受けるためには、感謝献金をすることが必要であるとされていたのである。 [392] これらの事情に照らせば、抗告人の信者らの伝道・教化活動は、教義の布教等の純粋な宗教的目的に基づくものではなく、対象者に献金及び無償の物品販売活動等を行わせるとともに、そのような行為をする信者を再生産することによって、経済的利益を獲得することに目的があったと推認するのが相当であり、伝道・教化活動の目的は不当なものであるとの評価を免れない。確かに、宗教団体の多くは、通常信者による献金(仏教でいうところの喜捨、布施等)によりその経済的基盤を確立するものであるから、宗教団体がその信者に対して献金を求めること自体が直ちに不当であるとは認められない。しかし、これは、自らの選択で特定の宗教に帰依した者が自らの意思に基づき宗教団体に対して金銭を拠出すること(すなわち、拠出しない自由を前提とする。)を求めるものであるから、不当でないといえるのである。これに対し、統一教会の場合は、これまでに認定してきたように、主に金銭を拠出することのできる人間を対象として伝道し、その自由意思に基づかずに帰依させた(入信させた)のであり、かつ、献金も、既に自由意思に基づかず統一教会の教義を教えられた者に対して、統一教会の教義、すなわち蕩減献金、祝福献金等をしなければ祝福されないとの教えの下でなされたもので、自由意思に基づいてなされたものとは認めがたいから、前提を異にするというべきである。 (3) 結論 [393] 以上によれば、抗告人の信者らの伝道・教化活動は、不当な目的に基づき、相当性を欠いた方法によって行われ、結果的に対象者の信教の自由(信じるか否かを選択する自由)を侵害したものであって、原告らに対する違法な行為であったというべきである。 [394] そして、抗告人の信者らの経済活動は、万物復帰を推進する活動として、抗告人の信者らによって体系的に整えられた各種マニュアル等に従って組織的に行われていたものであることに照らせば、抗告人の信者らの原告らに対する販売行為は、前述した経済的利益を獲得するという目的を達するための手段の一環として行われたものであると言えるから、抗告人の信者らの原告らに対する販売行為や献金を求める行為もまた、違法な行為であったというべきである。 2 抗告人の責任について [395] 前記のとおり、抗告人の信者らが原告らに対して行った伝道・教化活動は、民法709条の不法行為を構成する。 [396] そして、抗告人の信者の不法行為は、統一教会の実践活動として行われたのであるから、抗告人は民法715条1項に基づき責任を負うというべきである。 [397](1) この点、抗告人は、民法715条1項が報償責任に基づく規定であるとすれば、同条にいう「事業」は何らかの利益を生むものである必要があるが、宗教活動は「事業」に含まれないところ、抗告人は、宗教活動以外の事業は全く行っていないなどと主張する。 [398] しかしながら、民法715条1項に基づく使用者責任は、被用者を使用し自己の活動範囲を拡大して利益を得ている以上、公平の観点からみて、使用者は、被用者を使用することで生じた損害についても負担すべきであるという報償責任の考え方や、被用者を使用することで危険な状態を生じさせている使用者は、その危険によって生じた損害についても負担すべきであるという危険責任の考え方に基づくものであるところ、いずれの考え方によっても、被用者(=信者)の活動が宗教活動である場合には使用者責任の対象から外れるべきであると解することはできないから、抗告人の主張は失当である。 [399](2) また、抗告人は、抗告人の信者らによる伝道・教化活動及び販売活動は、一部信者が結成した任意の信徒団体(連絡協議会又は信徒会)や一部の信者が経営する企業等による独自の活動であって、抗告人は関与していない旨主張する。 [400]ア しかしながら、連絡協議会又は信徒会が抗告人とは別個の団体であるのであれば、その団体は多数の信者によって構成され、かつ、全国的に組織化されているはずであるから、代表者の選任、意思決定、財産管理の方法等、団体の運営に関する定めや収支に関する書類等が当然作成されているはずにもかかわらず、抗告人からこうした資料は一切提出されていない。 [401] また、連絡協議会の北海道ブロック岩見沢地区の活動拠点の建物の賃借人は「婦人サークル協会連合会」、連絡協議会の北海道ブロック旭川地区の出発決断式の主催団体は「統一運動推進連絡協議会」とされるなど、連絡協議会の名が対外的に表示されるのが通常と思われる場面においても、連絡協議会の名は表示されていない。 [402] そして、別訴の証人となった抗告人の信者らは、それまで「連絡協議会」の名称を知らず、証人となるに当たり初めて「連絡協議会」の名称を知らされたと供述している。 [403] さらに、人事面においては、教区長が信徒会の責任者に就任した後、教区長や教区の運営本部長に就任したり、信徒会の教育部長を務めた者が翌年には教会長を務めたりするなど、抗告人と信徒会との間に密接な関係があったことがうかがわれる。 [404] 加えて、連絡協議会岩見沢地区の組織図には、教会長や副教会長という役職が記載されていること、連絡協議会旭川地区の組織図には「神」「真の父母」とある下に「会長」「社長」と記載され、その下に抗告人の主張によれば連絡協議会の役職とされる「管区長」の記載がある。 [405] これらのことからすれば、連絡協議会や信徒会が抗告人とは別個独立の団体として存在していたことには、疑問が残るといわざるを得ない。 [406]イ そして、抗告人において区域長の役職が公職とされていることや、抗告人の韓国人牧会者が講演を行い教区長が司会を務めた抗告人の行事の記録に教域長なる役職が記載されていること、抗告人の本部から教区長等に充てた修練会参加者募集に関する文書が教域を経て区域長にも配信されていることからすれば、抗告人には、本部、地区、教区、教域、区域といった各組織が存在し、教区、教域、区域の各長として、教区長、教域長、区域長がそれぞれ配置されていたと認めるのが相当である。 [407] 伝道・教化活動については、日本で100万人を復帰せよとの文鮮明による指示を受け、その後の聖日礼拝で抗告人の会長が、100万人分の名簿をコンピューターに入れるよう講演で発言した旨が紹介され、教会長が3倍化を目指すとか、100万人伝道のために、北海道では4万人、旭川支部では1000人を伝道することを目標とするなどと発言している。 [408] また、経済活動についても、 ① 文鮮明自らが、連絡協議会の最高責任者とされるCに対し、献金を進めるよう指示を出したり、抗告人の当時の会長に対し、日本が責任を果たしていないこと、すなわち、日本からの金銭拠出が少ないことを叱責する趣旨で、 「エバ国から、はずして欲しいんだったら、今、言いなさい。すぐ、外してやるよ!」と厳しい口調で述べたりしたほか、 ② 伝道活動や販売活動の出発決断式には、会長をはじめとする抗告人幹部や教会長などが出席し、 ③ 抗告人の教区長が、当該教区の決断式において、当該教区の伝道対象者数、祝福を受けさせる人数及び献金額の目標を発表したり、区域長会議において、献金の達成率の報告や目標達成のための激励をしたりし、 ④ 教区の事務局は、各区域長に対し、伝道の状況等、区域のメンバーの活動内容について報告するよう求めており、各区域長宛ての文書に、各区域の高麗人参茶や男女美化粧品、その他物販の販売達成目標と到達率を記載した文書が添付され、そこに教区長から「BP伝道御苦労様でした。」などとコメントが寄せられており、 ⑤ 教区の月間スケジュール表には、印鑑展を意味する「I展動員路程」や下部組織である各区域の動員及び売上目標が記載されていた。 [409]ウ さらには、宝飾展、呉服展、CB展、絵画展等の各種展示会を主催し、その他に一和高麗人参茶、男女美化粧品、印鑑等の商品の販売も行っていた北翔クレインや、高麗人参茶等を販売していた有限会社愛ワールド、印鑑等の販売を行っていたハッピーワールド社等の会社は、いずれもその大半が抗告人の信者らによって構成され、その売上げの大半は抗告人の信者ら又はその動員による親族や友人によるものであり、これら売上げによって取得した金員の大半は、抗告人の各組織の経費や活動資金、抗告人への献金等に使用されたものと認められる。 [410]エ これらの事情等に照らせば、結局のところ、抗告人の信者らの伝道・教化活動及び販売活動は、文鮮明を教祖とする統一教会の活動として行われたものと認めるのが相当であって、抗告人とは別に抗告人の信者らが結成した任意の信徒団体(連絡協議会又は信徒会)や企業等が組織され、当該組織において抗告人の信者らの活動が行われていたとの抗告人の主張を採用することはできない。 [411](3) さらに、抗告人は、天地正教は抗告人とは全く別の宗教団体であり、抗告人との間に指揮命令関係もない旨主張する。 [412] しかしながら、天地正教の教主が昭和47年頃から文鮮明をメシヤとして信奉していたこと、平成元年頃には天地正教から抗告人に入信してくることを前提に、抗告人の信者に対し、統一教会と天地正教の関連を知られないように、天地正教では、統一教会における原理用語を使わないように指示が出されていたこと、抗告人が平成11年に天地正教を事実上吸収合併したとされていることなどに照らせば、遅くとも昭和63年頃には、抗告人と天地正教徒の間に、指揮命令系統が存在したものと認めるのが相当である。 1 抗告人に対する献金等について [413](1) 抗告人は、信者に対し、信者は氏族メシヤとして、家系や先祖を代表して、家族を救い、先祖を救う立場にあり、そのためには、献金や伝道をすることを使命としており、これに従わない場合には、自分も家族も不幸になり、先祖も救われないと指導していた。そして、壮婦は、献金して夫を救うこと、夫の家系を救うことこそが信者としての使命であるとして、夫や親の金、子のために積み立てた金を拠出するように指示されていた。 [414](2) 抗告人は、信者に対し、どれくらいの財があるのかを聞き取るとともに、壮婦の場合には、夫の金をどれだけ管理し、自己の判断でどれだけ金を動かせるかを聞き取って、上位の立場にあり指導役の信者であるアベルに報告していた。そして、アベルは、信者に対し、家族の対応を知って、家族との接し方や献金の仕方を指導し、家族の状況に変化があれば逐一報告をするように指示をし、夫の意思に反して献金をすることに躊躇していた信者に対しては、説得をしていた。抗告人においては、アベルの指示は絶対に服従しなければならないとされていた。 [415](3) 抗告人は、伝道される過程にあるゲストや信者について献金の目標を把握した表を作成し、また、実績及び目標まで幾ら残っているかについても公表されていた。 [416](4) 抗告人の内部は、平成20年までは、全国を16のリージョンに区分し、そのリージョン内を更に幾つかの教区に分けていたが、その後は、地区、教区の順に地区割りがされている。教区は更に区域に分かれており、一つの区域は6~10名程度の信者で構成され、そして、区域を取りまとめる区域長、複数の区域をまとめる代表区域長がいる。日曜日の礼拝や訓読会などの集まりの後に、各区域の区域長や代表区域長が出席して行われる区域長会議や代表区域長会議では、区域長がまず区域の信者をまとめ、代表区域長に献金の実績を報告し、代表区域長がそれを女性責任者である婦人部長に報告するとともに、各区域長に対し献金の指示がなされていた。 [417](5) メシヤである文鮮明の後継者と目されている文鮮明の子が、月1回来日して、献金を指示した。 2 抗告人の不法行為に基づく損害賠償責任について [418] 抗告人においては、組織的活動として、信者の財産状態を把握した上で、壮婦に対しては、献金によって夫を救い、夫の家系を救うという使命のために、夫の財産を夫の意思に反して内緒で献金する等の名目で交付させており、これを受けて専業主婦である対象者135番が行った献金等について、その原資が夫である原告の財産であり、原告の意思に反して出捐されたことを認識していたと認められるから、上記出捐について、組織的な不法行為として原告に対する損害賠償責任を負うというべきである。 1 抗告人又はその信者らによる勧誘、教化の不法行為該当性について (1) 抗告人の勧誘、教化の社会的相当性 ア 主証(平成16年4月下旬に世田谷フォーラムの当時の所長から、ここでの教えは、統一教会の教えであり、文鮮明が再臨主(メシヤ)であること及び統一教会はキリスト教に代わる宗教として立てられた宗教であること等を初めて知らされたこと)までは抗告人であることを秘していたこと [419] 抗告人は、原告136に対する勧誘、教化を開始してから約2年7か月が経過した時点にお5 いて、今まで教えてきたことが統一教会の教えであり文鮮明がメシヤであることを告げたのであり、それまで、統一教会や文鮮明のことを秘していたものである。 [420] 抗告人は、同原告に対し、抗告人の教義を伝道し、その信者となるよう教化育成しているにもかかわらず、抗告人への引込みが成功するように意図して、これを知らせず、かつ、知られないようにしていたということができる。 [421] そして、抗告人又はその信者らは、警戒心を抱かれないようにした上で、個人情報を詳細に聞き出し、その情報をもとに、母親との疎遠な関係、職場の上司との不倫といった同原告の懸念を指摘し、さらに先祖の因縁等の話をして不安をあおる結果となったことも併せ考慮すると、主証により統一教会であること等を伝えた平成16年4月までの勧誘、教化は、社会的に相当と認められる範囲を明らかに逸脱するものと認めることができ、このことは、後記のとおり、個々の献金等の支出が不法行為に当たるかどうかを判断するに当たって、極めて重要な要素となるというべきである。 イ 抗告人であることを明かした後について [422] 抗告人は、同原告に対し、主証の段階において、ここが統一教会であることや、文鮮明がメシヤであること等を伝えているが、約2年7か月にわたる組織的な教化によって、同原告が抗告人の教えを信じ、主証を受け入れる心理状態であることを確認して行われたものである。主証の後も、同原告にはそれまで継続された不相当な勧誘、教化による影響が続いていたのであって、抗告人によるその後の教化は、この影響を利用して行われたものと認められる。そして、主証の後も、公式7年路程や献身活動の内容を知らせず、献身を決意する段階において、献身者の具体的活動の内容を知らせなかったものであることも併せて考慮すると、主証の後の勧誘、教化も、社会的に相当な範囲内にあったとは認められない。ただ、主証の後は、同原告は抗告人による献金や献身行為等の勧誘が抗告人の教義によることを理解していたと認められるから、主証の後の個々の献金等の支出や、献身行為は、個々の行為による支出額や行為の内容等が社会的に不相当と認められるかどうかを検討した上で、不法行為に当たるかどうかを判断するのが相当である。 ウ 再入会について [423] 同原告は一旦世田谷フォーラムの受講を中断し、その後に再入会を希望している。しかしながら、同原告は、上記再入会の時期においては、世田谷フォーラムで学んでいる内容に抗告人の教義が含まれていることを知らされておらず、知らないままにそれが普遍的な真理であると教えられていた最中にあったのであるから、同原告が自ら連絡を取って再入会したことをもって、抗告人による当初の勧誘、教化の影響がなくなったとはいえないし、その後の教化が相当なものであったともいえない。 (2) 個別の行為についての不法行為の成否の検討 ア 主証前の献金、物品購入、受講等による金員支出 [424] 主証により統一教会であること等を伝えた平成16年4月より前の勧誘、教化は、社会的に相当と認められる範囲を明らかに逸脱するものであり、統一教会であることなどが知らされていれば、原告136は、念珠や指輪、高麗人参茶等を購入したり、献金(浄財)をしたり、受講料を支払ったりしなかった可能性が大きい。したがって、同月より前に、抗告人が同原告に対して、献金、物品購入、受講を勧めて金員を支出させた支出番号3、4、7ないし12、17、18に係る各行為は、その金額が不相当に高額である(同7、12等)か、そうとはいえない(同3、8〔指輪代としてみると著しく高額とはいえない。〕)かにかかわらず、また、相応の対価を受け取っていたとしても(指輪や受講料等)、不法行為であると認められる。 イ 主証後の献金、物品購入、受講等による金員支出 (ア) 献金等 [425] 支出番号20(世田谷フォーラム献財)、33(祝福献金)、70、76、93、102及び110(十分の一献金〔抗告人の教義に基づき収入の十分の一に相当する額を献金するもの〕)、80及び81(本殿聖地(天正宮))は、同原告の当時の収入に比して著しく高額であるといわざるを得ず、上記各献金は、通常の信仰活動としての献金の範囲を超えていると評価できる。そして、前記(1)で説示したとおり、主証後の行為であっても献金等の支出を勧誘したことは社会的に相当な範囲を逸脱していると認められることも併せて考慮すると、これらの支出を勧誘し、献金等の支出をさせたことは、不法行為に当たるというべきである。 (イ) 受講料、儀式参加費等 [426] 支出番号44、46、47(先祖解怨、天運石、修練会参加費)は、同原告が勤務先を退職するに伴って受領した金員を原資として、同じ日に合計130万円もの金員を支出させたものであり、仮に何らかの儀式に参加する費用あるいは何らかを取得する対価であったとしても、社会的相当性を欠くものであり、前記と同様に支出を勧誘された経緯も考慮すると、これらの支出をさせたことは不法行為に当たるということができる。 [427] また、支出番号73、79、87、96、100、105、109及び112(積立金)は、修練会と呼称される宗教儀式に参加するための積立金であると説明されているものであるが、その具体的用途は明らかでなく、これらの支出を勧誘したことは社会的相当性を欠くものであり、前記と同様に、これらの支出をさせたことは不法行為に当たる。 ウ その他の行為 [428] 主証前の上記アで認定したもの以外の抗告人による行為、すなわち、同原告が平成13年9月15日に最初に声をかけられ先祖の因縁等の話をされたこと、家系の状況等を聞かれ話したこと、その後抗告人とは知らされずに同月24日から等々力鑑定所へ通所をさせられたこと、平成14年7月から世田谷フォーラムで受講させられたこと等は、いずれも金員の支出を伴わないものであっても、同原告は精神的苦痛を受けたと認められるから、不法行為が成立する。 [429] 主証後については、教義の学習を継続したことや修行をしたこと等が直ちに不法行為に当たるということはできないが、平成21年10月14日に合同結婚式に参加したことについては、同原告が抗告人に関係を持ち、入信するに至った経緯が、これまで述べてきたとおり、不相当な勧誘、教化によるものであり、合同結婚式で祝福を受けるように指示されたことも主証前の不相当な教化による影響を利用して行われたといえることや、抗告人における宗教的な行為であることを考慮しても合同結婚式が社会的に相当と認められるか疑問がないわけでないことからすると、これによって同原告が精神的苦痛を受けたことについて不法行為が成立するというべきである。 2 抗告人の責任について [430] 抗告人は、原告136に対する勧誘、教化は世田谷信徒会が行ったものであって抗告人は関与をしていないとし、抗告人は不法行為責任を負わない旨主張する。 [431] しかしながら、世田谷信徒会には主たる事務所が存在しないことは、当事者間に争いなく、同原告は、抗告人を退会するまで、信徒会というものが存在することを知らなかったものであり、抗告人の信者が信徒会に入る手続はなく、aは信徒会に入ったのは世田谷教会に入ったときであると原審において証言している。 [432] そして、抗告人の発行している新聞、機関紙及び小冊子には、抗告人が、信徒会が行っていると主張する営業等について記載され、抗告人が主体となって推進していることを示すものである。 [433] 抗告人の主張する信徒会は、宗教法人が行うべき教義を広め、信者の教化育成を担っているということになるが、世田谷信徒会が、抗告人とは別の組織として存在していたと認めるに足りる証拠はない。抗告人は、信徒らから報告を受けて被勧誘者の個人情報を把握していたものである。 [434] また、抗告人は、同原告の支出状況を把握していたものであり、抗告人世田谷教会で唯一の会計担当者であったbは、天運風水館(同原告が販売活動に従事していた念珠等の販売店)の売上げや経費の会計も担当していた。 [435] 以上検討したところからすると、世田谷信徒会は抗告人内の一組織というべきであり、同原告に対する違法な勧誘及び教化活動は、抗告人の行っている伝道活動として抗告人の信者が行ったものであり、抗告人自身が行った不法行為ということもできるから、抗告人は、民法715条、709条に基づき、損害賠償責任を負う。 1 抗告人の信者の共同不法行為について [436] 原告137は、平成23年4月頃、被告aから、同原告の長男の病気に関する不安をあおられて家系図を作成することを決め、被告bのもとで家系図を作成し、平成25年4月、cから同原告の夫や長男の不幸が先祖の因縁によるものではないかとの不安をあおられて町田家庭教会に通うようになり、さらに町田家庭教会において、ビデオや講義、講師(d、e、被告f及び被告g)との会話によって、同原告の夫や長男が地獄で苦しんでいるとの不安や恐怖心をあおられ続ける中で、先祖供養や祝福結婚式を受けることとし、平成25年5月19日及び23日、これらの献金( 合計344万円)をしたことが認められる。 [437] そうすると、抗告人の信者において、同原告が町田家庭教会に通うに当たり同原告に受講料(平成25年4月以降に支払った合計18万円)の支払を求めることや、同原告に先祖供養や祝福結婚式に関する献金(平成25年5月19日及び23日に支払った合計344万円)を求めることは、社会的に相当な範囲を逸脱した行為として違法と評価せざるを得ない。また、抗告人の信者において、同原告に対し、祝福結婚式の儀式をするために韓国の清平に行かなければ終わらないと申し向けた上で、平成25年11月から平成26年9月までの間に4回同原告を清平に渡航させ、渡航費用(37万円)や霊肉祝福を受けるために支出したと認められる衣装代(3万円)及び指輪代(1万0500円)を支出させた行為も、同じく社会的に相当な範囲を逸脱した行為として、違法であると認められる。 2 抗告人の責任について [438] まず、原告137に対する加害行為は、同原告が町田家庭教会に通うよう勧誘したり、先祖供養や祝福結婚式の献金を勧誘したりしたことであり、いずれも抗告人の宗教活動の事業の執行につきなされたものと認められる。 [439] 次に、被告gは抗告人の職員であるから、抗告人は被告gのした不法行為について使用者責任を負う。 [440] また、被告gは町田家庭教会の伝道部長であり、町田家庭教会の教会長を上司とし、更にその上部の者として伝道教育部長があること(被告g本人)からすると、抗告人は、抗告人の信者(少なくとも被告b、被告f、d及びe)に対する関係においても、信者への献金勧誘に関し、直接又は間接の指揮監督関係を有するというべきである。 [441] 以上より、抗告人は、抗告人の信者(被告b、被告f、被告g、d及びe)が同原告に対してした前記1の不法行為につき、使用者責任を負う。 1 原告138に対する抗告人の信者らの勧誘行為の違法性について (1) 平成17年4月の700万円の献金(天聖経、天運石(大)及び石板) [442] aは、霊能師であるbから亡母の苦しみや悲しみを指摘されて強い衝撃を受け、また、亡母を癌で早くに亡くし癌に対する強い恐怖心を抱いている原告138に対し、天運石を授かれば先祖が救われる、癌のリスクを取り除くために天運石を授かったら良いなどと述べて勧誘したことが認められる。そうすると、aは、同原告の亡母に対する強い思いや癌に対する強い恐怖心に乗じて天運石を授かるよう勧誘したというべきである。しかも、aは、同原告に対し、大きな家系(資産や社会的地位がある家系)には大きな悪霊が付いているため、一番大きい天運石が良いなどと申し向けて、700万円という高額な支出をさせている。これらの事情を総合すれば、aの当該勧誘行為は、その方法、態様、金額等に照らし、もはや社会通念上相当と認められる範囲を逸脱したものといわざるを得ない。よって、上記700万円の献金勧誘行為は違法であると認めるのが相当である。 (2) 平成19年5月9日の2667万円の献金 [443] cは、原告138の母方の先祖に皇族に嫁いだ女性がいたことに着目し、同原告に対し、日本の歴史全てを蕩減しなければ日本は滅びる、皇族を復帰しなければ日本の歴史の蕩減は終わらない、皇族に嫁いだ先祖を有するのは同原告のみであり、同原告にしかその責任を果たすことはできないなどと説き、同原告が既に抗告人の教義を受け容れ、その実践課程に入り、信者としての使命感やこれに背くことへの恐怖心を強めていたことに乗じ、これを殊更にあおり立てて、皇族復帰のための献金をするよう勧誘したというべきである。 [444] しかも、cは、同原告に対し、平成19年が皇紀2667年に当たるという客観的に見れば合理性を欠くと評価せざるを得ない理由を付けて、極めて高額であることが明らかで、かつ、その当時の同原告にとってマンション購入資金を除くと亡母から相続した遺産のほぼ全てに当たる2667万円という献金を勧誘しているのであって、当該献金額は社会通念に照らして不当に高額であるといわざるを得ず、同原告の意思決定の自由が上記信者としての使命感等により著しく阻害されていたことをうかがわせる。 [445] そうすると、cの上記勧誘行為は、その方法、態様、金額等に照らし、社会通念上相当と認められる範囲を逸脱したものといわざるを得ず、上記2667万円の献金勧誘行為は違法であると認めるのが相当である。 (3) 先祖解怨のための合計79万円の支出(①平成19年2月8日の70万円、②同年12月16日の3万円、③平成20年6月22日の5万円及び平成21年7月19日の9万円のうち8万円を除く部分) [446] 抗告人の信者らは、亡母の悲しみや苦しみに強い衝撃を受けていた原告138に対し、霊界にいる亡母の救済のためには先祖解怨や先祖祝福を行う必要があるなどと説き、そのための献金等を勧誘したものと認められる。そうすると、抗告人の信者らは、まさに同原告の亡母に対する強い思いに乗じて先祖解怨の献金をするよう勧誘したというべきである。しかも、抗告人の信者らは、亡母を救うという同種の目的のために既に700万円(上記(1))を支出した同原告に対し、更に献金等の名目でかなりの支出をさせているのであって、これらの事情を総合考慮すると、抗告人の信者らの当該勧誘行為は、その方法、態様、金額等に照らし、社会通念上相当と認められる範囲を逸脱したものと評せざるを得ない。 2 原告139に対する抗告人の信者らの勧誘行為の違法性について (1) 平成10年1月27日の1300万円の献金 [447] 原告139は、それまでのビデオセンターでの受講を通じ、先祖の99.9%が地獄におり、因縁は地獄にいる先祖が地上の子孫に伝える警告であること、因縁を清算しなければ先祖を地獄から中間霊界に引き上げることなどができず、その結果、子孫に表れた悪影響を断ち切ることはできないこと、色情因縁は長男が立たない(長生きできずに早死してしまう)といった悪影響を及ぼすことなどを学んだことが認められる。このような講義内容から、同原告が自身の家系には色情因縁があり、また、同原告自身も婚前交渉という罪を犯している、これらが長男に悪影響を及ぼし、現在の不登校等の問題を生じさせている、これらの悪影響(因縁、罪)を清算しなければ長男に更なる悪影響が及びかねないとの考えに至ったことは何ら不自然ではない。そして、dは、そのような考えを有するに至り、かつ、長男の将来について強い不安を有する同原告に対し、自身の罪と先祖の因縁を清算するという目的のために献金をするよう勧誘したのであるから、同原告の長男の将来に対する強い不安、恐怖心に乗じて因縁清算のために1300万円を献金するよう勧誘したというべきである。加えて、1300万円という金額はそれ自体極めて高額である上、その当時同原告が管理していた預金のほぼ全額に相当するものであったことからすれば、当該金額は社会通念に照らして不当に高額であったと評価せざるを得ないし、また、こうした高額な献金をさしたる躊躇もなく行うこと自体、同原告の正常な意思決定の自由が阻害されていることをうかがわせる。そうすると、同原告が当該献金をして喜びを感じたことを勘案しても、dの当該勧誘行為は、その方法、態様、金額等に照らし、もはや社会通念上相当と認められる範囲を逸脱したものと認めるのが相当であるから、上記1300万円の献金の勧誘行為は違法であると認められる。 (2) 先祖解怨又は先祖祝福のために平成11年8月25日から平成25年までの間に支出した合計576万7600円の献金(うち平成22年以降の支出であることが明らかなものは191万0400円)や合計26万2000円の参加費等(うち平成22年以降の支出であることが明らかなものは8万円) [448] 原告139は、地獄にいる亡祖母を救い、絶対善霊にして家族を守ってもらおうと考えて先祖解怨・先祖祝福を行っているところ、これは、亡祖母を地獄から救ってあげたいという思いがあったことも否定し得ないが、同原告が長男の将来に対して強い不安を有していたことからすれば、同原告がビデオセンターでのそれまでの講義を通じ先祖の因縁等によって長男に悪影響が生じているとの認識を有していたことがその大きな要因となっていたと認めるのが相当である。そして、先祖解怨を行う条件としては献金をしなければならず、献金を怠ると先祖が地獄に戻ってしまい、更に子孫に悪影響を及ぼすなどと説かれていたことなどからすれば、結局、抗告人の信者らは、同原告の長男の将来に対する強い不安や恐怖心に乗じて先祖解怨や先祖祝福のための献金をするよう勧誘したというべきである。しかも、抗告人の信者らは、既に平成10年1月27日の時点で因縁清算等のために1300万円(上記(1))を献金していた同原告に対し、平成11年8月以降、全く同一のものではないにしても、類似の目的のために合計576万7600円(この中に、平成22年11月26日から平成25年10月27日までに支出した献金合計191万0400円が含まれる。)という当該意思決定の自由に疑義を抱かせる高額な献金の支出をさせたのであって、これらの事情を総合すると、抗告人の信者らの当該勧誘行為は、その方法、態様、金額等に照らし、社会通念上相当と認められる範囲を逸脱したものといわざるを得ない。よって、上記献金勧誘行為は、いずれも違法であると認めるのが相当である。 [449] そして、先祖解怨、先祖祝福については韓国の清平で行わなければならず、そこで修練会に参加する必要があり、式服等も必要とされていることからすれば、清平祝福式服、清平修練会の参加費、バス代や旅費合計26万2000円(この中に、平成24年6月15日から17日までに支出した清平修練会の参加費8万円が含まれる。)の支出も上記の違法な勧誘行為と相当因果関係が認められるというべきである。 (3) 平成11年9月14日の360万円の献金(天運石) [450] 原告139は、抗告人の信者のなかで霊的感性が高いと位置付けられていたeから、長男の登校拒否等は憲兵をした先祖がいることなどが関係しているとして、清平で父母の先祖祝福を行うことや天運石を授かることを勧められ、平成11年9月14日、360万円を献金して天運石を受領した事実が認められる。 [451] 上記認定事実によれば、eは、同原告の長男の将来に対する強い不安や恐怖心に乗じて、その解決方法として天運石を授かることを勧誘したというべきであり、その額も360万円と高額であること、同原告は、eと会った当時、既に1300万円という高額な献金をしていたこと(上記(1))を併せ考慮すれば、これらの献金の額は意思決定の自由に疑義を生じさせるものといえるから、eの当該勧誘行為は、その方法、態様、金額等に照らし、社会通念上相当と認められる範囲を逸脱したものと認めるのが相当である。 [452] よって、上記360万円の献金の勧誘行為は違法であると認められる。 (4) 平成12年9月27日から平成13年2月13日までの197万円の愛天愛国献金 [453] 本件において、原告139が当該献金をするに至った具体的な経緯は明らかではないものの、同原告が当該献金をするために夫名義で100万円を借り入れたことからすれば、同原告は、その当時、当該献金をする経済的余裕はない状況にあったと認めるのが相当である。そして、上記献金を開始した時点での同原告の献金等の支出額が既に合計で2000万円以上に達していたこと、当該支出が物品購入等の場合のように対価を観念できるものではなく、献金といういわば無償行為(贈与)に近い性質のものであること、上記のとおり夫名義で100万円もの借金をしてまで献金を行っていることなどを併せ考慮すると、同原告が愛天愛国献金をするに至った具体的な経緯が明 らかでないという事情を考慮してもなお、当該勧誘行為は、当該意思決定の自由が相当阻害された状況の下において、既に多額の献金等をしている同原告の資力を無視してされたものといわざるを得ず、その方法、態様及び金額等が社会通念上相当と認められる範囲を逸脱したものと認めるのが相当である。 [454] よって、上記197万円の献金の勧誘行為は違法であると認められる。 (5) 平成13年頃から平成25年5月までの合計1374万円の献金(うち平成22年以降の支出であることが明らかなものは、平成23年12月1日に支出した献金40万円及び平成25年5月に支出した天福函名目の献金430万円の合計470万円) [455] 原告139がこれらの献金をするに至った具体的な経緯は明らかではないものの、これらは、同原告が既に献金をする経済的余裕がない状況にあった平成12年10月(上記(4))と近接した平成13年頃以降のものであり、同原告の経済的な状況について特段の変化はなかったと推認するのが合理的である。実際、平成15年4月から平成18年6月までの合計491万6000円の献金の原資は借入金や義父からの贈与金であり、平成25年5月の天福函名目での430万円の献金の原資は亡母の遺産であって、いずれも同原告ないし夫自身の資産を原資とするものではなかったことが認められる。それにもかかわらず、抗告人の信者らは同原告に対し複数回にわたって上記各献金として合計1374万円もの献金(この中に、平成23年12月1日及び平成25年5月に支出した献金合計470万円が含まれる。)を勧誘していること、上記各献金を開始した平成13年頃の時点での同原告の献金等の額が既に合計で2300万円以上に達していたことなどを併せると、上記各献金をするに至った具体的な経緯が明らかでないという事情を考慮してもなお、当該勧誘行為は、意思決定の自由が相当程度阻害された状況の下において、既に多額の献金等をしている同原告の資力を無視してされたものといわざるを得ず、その方法、態様及び金額等が社会通念上相当と認められる範囲を逸脱したものと認めるのが相当である。 [456] よって、上記合計1374万円の献金の勧誘行為は、いずれも違法であると認められる。 3 原告140に対する抗告人の信者らの勧誘行為の違法性について (1) 平成14年4月14日の1440万円の献金(ただし、後に340万円返還) [457] 原告140は、それまでのビデオセンターでの受講を通じ、先祖の99.9%が地獄におり、因縁は地獄にいる先祖が地上の子孫に伝える警告であること、因縁を清算しなければ先祖を地獄から中間霊界に引き上げることなどができず、その結果、子孫に表れた悪影響を断ち切ることはできないこと、色情因縁は長男が立たない(長生きできずに早死してしまう)といった悪影響を及ぼすことなどを学んだことが認められる。また、そのような講義等を踏まえた上で、dは、同原告に対し、同原告の家系は女系家族で男が立たない、先祖が地獄にいることにより長男に悪いことが起こる、先祖を地獄から解放し、長男を立たせて家系を守るのが同原告の役割である、入籍していない内縁の夫との間で長男をもうけたことが罪に当たる、長男が病気がちなのはそれが原因であるなどと述べたことが認められる。これらの講義やdの発言から、同原告が、母の兄弟が早死するなどしたことは先祖の因縁によるものである、長男が病気がちなのは先祖の因縁や自らの色情因縁によるものである、これらの悪影響(因縁、罪)を清算しなければ長男に更なる悪影響が及びかねないとの考えに至ったことは何ら不自然ではない。そして、そのような考えを有するに至り、かつ、長男の将来について強い不安を有する同原告に対し、dは、上記のとおり、自身の罪と先祖の因縁を清算するという目的のために献金をするよう勧誘したのであるから、dによる上記の献金の勧誘は、同原告の長男の将来に対する強い不安や恐怖心に乗じて行われたというべきである。加えて、1440万円という金額はそれ自体極めて高額である上、その原資は同原告がマンション購入の頭金及び長男の大学進学費用として貯蓄したものであって、余剰資金の類ではないことなどからすれば、当該金額は社会通念に照らして不当に高額であって、同原告は意思決定の自由が阻害された状態にあったと評価せざるを得ない。そうすると、dの当該勧誘行為は、その方法、態様、金額等に照らし、もはや社会通念上相当と認められる範囲を逸脱したものと認めるのが相当であるから、上記1440万円の献金の勧誘行為は違法であると認められる。 (2) 先祖解怨・先祖祝福等のために平成14年10月19日から平成25年3月9日までに支出した合計914万5650円の献金、参加費等(うち平成22年以降の支出であることが明らかなものは567万1700円) [458] 原告140は、教育部において先祖解怨や先祖祝福についての講義を受けたことが認められるところ、これらについては、先祖解怨を行う条件として献金をしなければならず、献金を怠ると先祖が地獄に戻ってしまい、子孫に悪影響を及ぼすものとされ、先祖解怨をした上で先祖祝福をすることにより初めて先祖の霊が絶対善霊になる、先祖解怨・先祖祝福は韓国の清平で行わなければならず、そこで修練会に参加する必要があるなどと説かれていた。 [459] 以上に加え、前記(1)のとおり、これまでの講義等を通じて同原告には先祖の因縁が長男に悪影響を及ぼしているとの認識があったことを考慮すると、結局、抗告人の信者らは、同原告の長男の将来や内縁の夫から別れ話を持ち出されたことに対する不安、恐怖心に乗じて先祖解怨(平成23年1月以降の内縁の夫の家系の先祖解怨を含む。)や先祖祝福のための献金をするよう勧誘したというべきである。しかも、抗告人の信者らは、既に因縁清算のために1440万円(前記(1))を献金した同原告に対し、そのわずか6か月後である平成14年10月以降、同一のものではないにしても、類似の目的のために献金や交通費等として合計900万円を上回る高額な支出(この中に、平成23年1月から平成25年3月までの間に支出した献金等合計567万1700円が含まれる。)をさせたのであって、同原告は意思決定の自由が恒常的に阻害されていたことがうかがわれる。これらの事情を総合考慮すると、抗告人の信者らの当該勧誘行為は、その方法、態様、金額等に照らし、社会通念上相当と認められる範囲を逸脱したものと評価せざるを得ない。 [460] よって、上記合計914万5650円の献金等の勧誘行為は、いずれも違法であると認められる。 (3) 平成15年から平成18年までの合計889万5000円の献金 [461] 原告140は、平成15年から平成18年までの間に平和王国創建等の名目で合計889万5000円を献金しているところ、同原告がこれらの献金をするに至った具体的な経緯は必ずしも明らかではないものの、平成14年4月に因縁清算の献金(前記(1))をしたことにより同原告自身の預金はほぼ尽きたこと、平成15年4月の時点での同原告の献金等の額が既に合計で約1600万円に達していたこと、同原告は、平成16年に天聖経を受領するために430万円の献金をした際には、資金的な余裕がなく、使途を隠して内縁の夫から資金提供を受けたこと、平成15年から平成18年までの合計889万5000円の上記各支出は、物品購入等の場合のように対価を観念できるものではなく、献金といういわば無償行為(贈与)に近い性質の支出であることなどを総合考慮すると、これらの献金をするに至った具体的な経緯が必ずしも明らかでないという事情を勘案してもなお、これらの勧誘行為は、意思決定の自由が相当大きく阻害された状況の下において、既に多額の献金をしている同原告の資力を無視してされたものといわざるを得ず、その方法、態様及び金額等が社会通念上相当と認められる範囲を逸脱したものと認めるのが相当である。 [462] よって、上記合計889万5000円の各献金の勧誘行為はいずれも違法であると認められる。 (4) 平成23年末頃に支払った自叙伝の購入代金36万9000円 [463] 原告140は、平成23年末頃に抗告人の信者から伝道活動の一環として自叙伝(注:文鮮明の自叙伝を指すものと考えられる。)を配布するよう指示され、それぞれ、一冊900円の自叙伝を400冊、一冊300円の自叙伝を30冊購入し、代金合計36万9000円を支払った事実が認められる。これは、抗告人の伝道活動の一環であるにもかかわらず、抗告人の信者であることを理由に経済的負担を課するものであって、いわば抗告人の教義の実践であるためその指示を断ることができないという同原告の心理状態に乗じたものであって、抗告人の教義に対する理解を深め、これを広めようとする自由な信仰心の表れであるとはいえず、支払った代金額が上記程度のものであるとしても、その方法、態様及び金額等が社会通念上相当と認められる範囲を逸脱したものと認めるのが相当である。 [464] よって、上記自叙伝購入の勧誘行為は違法であると認められる。 (5) 平成25年10月16日及び12月19日の12万円の献金 [465] 原告140がこれらの献金をするに至った具体的な経緯は必ずしも明らかではないものの(平成25年10月16日の献金については同原告自身も何のための献金であったかは失念した旨主張している。)、平成25年10月の時点で同原告の献金額の合計が2000万円を超えていたこと、平成25年10月16日及び同年12月19日の各支出は、物品購入等の場合のように対価を観念できるものではなく、献金といういわば無償行為(贈与)に近い性質の支出であることなどを総合考慮すると、これらの献金をするに至った具体的な経緯が必ずしも明らかでないという事情を勘案してもなお、これらの勧誘行為は、既に多額の献金をしている同原告の資力を無視してされたものである上、度重なる献金行為によって、これに抗することが困難な心理状態に乗じて行われたとみるのが自然であって、その方法、態様及び金額等が社会通念上相当と認められる範囲を逸脱したものと認めるのが相当である。 [466] よって、平成25年10月16日及び同年12月19日の各献金の勧誘行為は、いずれも違法であると認められる。 4 抗告人の信者らの勧誘行為に関する抗告人の責任について [467] 抗告人は、抗告人とは別組織の信徒会が原告らに対する勧誘を行っており、抗告人は信徒会の行為について責任を負わない旨主張する。 [468] しかしながら、 ① 信徒会は、抗告人の信者を主要な構成員としており、抗告人への勧誘や抗告人の教義の伝道・教化活動等を目的として活動していること、 ② 多額の献金を行った抗告人の信者に対しては抗告人の代表者が感謝状等を贈呈していたこと、 ③ 抗告人の主張によれば信徒会は全国組織であるにもかかわらず、信徒会の地域の名称がないこと、 ④ 抗告人の信者らの献金は最終的に抗告人に納められること などの事情を勘案すると、信徒会が抗告人とは別個の法人格として存在するとは認め難く、これらの信者組織(信徒会)の構成員である抗告人の信者の活動に抗告人の指揮監督が及び得る関係にあるものと認めるのが相当である。 [469] したがって、抗告人は、抗告人の信者らが原告らに対してした前記の違法な各勧誘行為(不法行為)につき、民法715条の使用者責任を負う。 以 上
※ 「原告の主張する不法行為の概要」欄に原告以外の対象者の存在について記載していない場合は、原告=対象者である。 ※ 「抵当権設定」は、抗告人が、和解金等の支払債務を担保するため、抗告人所有の不動産につき抵当権を設定することとされたもの。「◎」は共同被告が債務者、「〇」は利害関係人が債務者のもの。 ※ 他の事件において同一の対象者が存在する場合、当該対象者の対象者番号を白抜き数字〔太字で代替〕で示した。 ※ <個別反証>欄に記載されている証拠の意味については、本決定本文「理由」第三の第3の3(3)エ(ア)参照。 ※ 下線を付して太字で示した部分(対象者番号362番、364~367番)は、平成22年以降の献金等出捐金の額を示した。
※ <個別反証>欄に記載されている証拠の意味については、本決定本文「理由」第三の第3の3(3)エ(ア)参照。 ※ 下線を付して太字で示した部分は、平成22年以降の献金等出捐金の額を示した。
※ ①合意書しか証拠提出されていないなど、請求者の主張内容が明らかでないものや、②署名や押印がされていない合意書や合意書案しか証拠提出されていないものは、除外している。 ※ 「請求者の主張」欄について
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