第2次久米孔子廟訴訟
控訴審判決

久米至聖廟撤去を怠る事実の違法確認等請求控訴事件
福岡高等裁判所那覇支部 令和4年(行コ)第5号
令和5年4月13日 民事部 判決

口頭弁論終結日 令和5年1月26日

控訴人 (原審原告) A、B
上記両名訴訟代理人弁護士 徳永信一

被控訴人(原審被告) 那覇市長 C(以下「被控訴人市長」という。)
被控訴人(原審被告) 那覇市
    同代表者市長 C(以下「被控訴人市」という。)
上記両名訴訟代理人弁護士 上原義信 仲里豪 宮尾尚子 崎山敬太郎

被控訴人市長補助参加人兼被控訴人市参加人
           一般社団法人久米崇聖会(以下「補助参加人」という。)
           同代表者代表理事 D
同訴訟代理人弁護士    当山尚幸 大島優樹 大島義則

■ 主 文
■ 事 実 及び 理 由


1 本件各控訴をいずれも棄却する。
2 控訴費用は控訴人らの負担とする。

1 原判決を取り消す。
2 被控訴人市長が、原判決別紙物件目録記載の各土地につき、補助参加人に対し、上記各土地を敷地とする原判決別紙施設目録記載の久米至聖廟(本件施設)の収去及び上記各土地の明渡しを請求することを怠る事実が違法であることを確認する。
3 被控訴人市が、補助参加人に対し、令和元年5月29日にした本件施設を対象とする固定資産税減免処分のうち、大成殿及び啓聖祠(床面積合計84.37平方メートル)に係る部分が無効であることを確認する。
(以下、略称については原判決のとおり。ただし、原判決中、「原告」を「控訴人」と、「被告」を「被控訴人」と、「当庁」を「那覇地方裁判所」と、「別紙」を「原判決別紙」とそれぞれ読み替える。)

[1] 本件は、被控訴人市の住民である控訴人らにおいて、当時の那覇市長が平成26年3月28日付けで補助参加人に対して原判決別紙物件目録記載の各土地所在の松山公園(被控訴人市が管理する都市公園)の敷地(本件土地)内に久米至聖廟(本件施設)を設置することの許可をし、かつ、令和元年5月19日付けで本件施設の一部である大成殿及び啓聖祠について固定資産税の減免処分(本件減免処分)をしたことは、政教分離原則(憲法20条1項後段、同条3項、89条)に違反する無効なものであると主張して、① 被控訴人市長に対し、地方自治法242条の2第1項3号に基づき、補助参加人に対して本件施設の撤去及び本件土地の明渡しを請求することを怠る事実(本件怠る事実)が違法であることの確認を求める(原審における請求の趣旨第1項(控訴の趣旨第2項に対応))とともに、② 被控訴人市に対し、同条1項2号に基づき、補助参加人に対する本件減免処分のうち大成殿及び啓聖祠に係る部分が無効であることの確認を求めた(原審における請求の趣旨第2項(控訴の趣旨第3項に対応))事案である。
[2] 原審が控訴人らの請求をいずれも棄却したところ、控訴人らがこれを不服として控訴した。

[3] 関係法令等の定め、前提事実、争点及び争点に関する当事者の主張は、次のとおり訂正するほかは、原判決の「事実及び理由」第2の2から5までのとおりであるから、これを引用する。

[4](1) 原判決4頁13行目の「丙150」の後に「、弁論の全趣旨」と加える。

[5](2) 原判決24頁18行目の「度の」を「との」に、27頁26行目の「該当する資産」を「該当する固定資産」に、28頁1行目の「場合」を「と認められる場合」にそれぞれ改める。

[6](3) 原判決30頁20行目の各「受益的処分」をいずれも「授益的処分」に改める。

[7](4) 原判決61頁4行目冒頭から5行目末尾までを次のとおり改める。

区分 単位 使用料
公園施設を設ける場合  売店、飲食店その他の施設  占用面積1平方メートルにつき1月  360円

[8](5) 原判決62頁5行目の「因り」を「より」に改め、63頁5行目末尾に改行の上、次のとおり加え、同11行目の「賃借」を「貸借」に、同14行目の「一、二」を「(1)、(2)」に、同15行目の「三」を「(3)」に、同18行目の「四~六」を「(4)~(6)」にそれぞれ改める。
「第2章 減免の対象 第1 減免の対象資産 (2) 公益減免
 公益のために直接専用する固定資産(有料で使用するものを除く。)
ア、イ (略)
ウ 拝所、共同井戸等の土地及び家屋
エ~カ (略)」
[9] 当裁判所も、原審同様、控訴人らの請求はいずれも棄却すべきものと判断する。その理由は、次のとおり訂正し、後記2のとおり判断を付加するほかは、原判決の「事実及び理由」第3の1及び2のとおりであるから、これを引用する。

[10](1) 原判決31頁23行目の「都市公園」の前に「地方公共団体の設置に係る」と、同26行目の「困難」の前に「不適当若しくは」とそれぞれ加え、32頁23行目の「ある施設が」を「ある者が施設を設置して」に、同24行目の「その撤去」を「当該者に対してその施設の撤去」にそれぞれ改める。

[11](2) 原判決33頁17行目の「「本件設置許可及び撤去させないこと」を「、本件設置許可の取消しや契約の解除をして本件施設を撤去させないこと」に、同18行目冒頭の「法242条」を「地方自治法242条」に、同行目の「財務会計法上」を「財務会計上」にそれぞれ改め、同19行目の「。」」を削り、同22行目の「補助参加人ら」を「補助参加人」に改め、34頁16行目の「20」の後に「、丙89」と、35頁18行目の「那覇市観光協会」の前に「一般社団法人」とそれぞれ加える。

[12](3) 原判決35頁22行目末尾に改行の上、次のとおり加える。
(ウ) なお、補助参加人は、前件最高裁判決後、① 本件施設の公園側(多目的広場等のある側)にある扉を常時開放することとし、② 本件施設につき「琉球と中国の永い交流の歴史を今に伝え、観光や学習の場及び文化活動に寄与するとともに、地域貢献を図る施設」であることなどを記載した案内看板を設置し、③ 既に取りやめていた本件施設における「学業成就(祈願)カード」の販売については今後も販売しないこととしたほか、④ 松山公園の利用者が本件施設の広場(御庭)に自由に出入りすることができる旨を明示した上で文化・教養・スポーツ又はイベント等の活動のために本件施設の広場(御庭)の敷地全体を利用することができることなどを記載した「久米至聖廟施設「明倫堂」及び「広場(御庭)」使用規程」を定めることなどを予定している。」
[13](4) 原判決35頁24行目の「53」の後に「、丙131、144、168、弁論の全趣旨」と、36頁6行目の「丙3」の後に「、89」と、同20行目の「参加人」の前に「補助」と、同26行目の「乙4」の後に「丙11、14」と、38頁21行目の「乙」の後に「1~」と、同行目の「38」の後に「、丙14」とそれぞれ加える。

[14](5) 原判決39頁15行目及び21行目の各「3月21日」をいずれも「4月1日」に、同16行目の「同年4月1日」を「同日」にそれぞれ改め、同19行目の「12条1項2号」の後に「(同改正前の15条1項2号と同内容のもの)」と、40頁3行目の「14~19」の後に「、26~28」と、同行目の「39~42」の後に「、45、46」とそれぞれ加える。

[15](6) 原判決41頁7行目の「土地の提供行為の態様」を「土地の提供及び占用の態様」に改め、同13行目冒頭から42頁3行目末尾までを次のとおり改める。
「なお、本件怠る事実(原審における請求の趣旨第1項)の違法の有無は、口頭弁論終結時(令和5年1月26日)における事実関係に基づいて判断すべきであるから、上記の総合的な判断に当たっては、前件最高裁判決が本件使用料(平成26年4月1日から同年7月24日までの分)の全額免除が違憲であると判断したこと(前提事実(5)オ(イ))を受けて、被控訴人市長が本件使用料やその後の期間(時効消滅していない平成28年6月分以降のもの)に係る公園使用料を請求し補助参加人がそれを納付したこと(同(6))などを含め、上記の時点までの経緯や事情が考慮されるべきである。」
[16](7) 原判決43頁7行目の「同エ」を「同ア、エ」に、同15行目の「認定事実ア」を「認定事実ア、エ」にそれぞれ改め、同22行目末尾に「そして、釋奠祭禮の祭官は、例年、「祭主」1名(補助参加人の理事長)及び「執事」約25名(補助参加人の会員約200名から応募した者)が務め、運営委員会の下で準備を行うこととされている(丙88、90~92、弁論の全趣旨)。」と加え、同25行目の「宗教的行事を」から同26行目の「団体」までを「組織的な宗教的行事を行うことを重要な目的の一つとする団体」に改め、44頁23行目末尾に改行の上、次のとおり加える。
「なお、補助参加人は、前件最高裁判決の判示内容を受けて一定の措置を講じたことが認められるが(認定事実イ(ウ))、釋奠祭禮については、琉球王朝時代に国事として行われていたものを再現し、その無形文化財への指定を目指しているなどと主張するものの、孔子の霊の存在を前提とする宗教的意義を払拭するような具体的内容を伴うものではない。」
[17](8) 原判決46頁10行目の「本件施設の」の後に「観光資源等としての意義や」と加え、同13行目の「本件土地提供の態様等」を「本件土地の提供及び占用の態様等」に改め、同17行目から18行目にかけての「開放されており」の後に「(なお、前件最高裁判決後、公園側にある扉は常時開放されるようになった。)」と加え、同25行目末尾に改行の上、次のとおり加える。
「被控訴人市長は、前件最高裁判決が本件使用料(平成26年4月1日から同年7月24日までの分)の全額免除が違憲であると判断したこと(前提事実(5)オ(イ))を受けて、令和3年5月、補助参加人に対し、過去に遡って、本件使用料及びその後の期間(平成28年6月分以降のもの)に係る公園使用料を請求し、補助参加人はそれを納付した(同(6)、弁論の全趣旨)。」
[18](9) 原判決47頁15行目から16行目にかけての「公園施設の一部の利用という世俗的、公共的な目的によるもの」を「本件施設の観光資源等としての意義や歴史的文化的価値に着目した世俗的、公共的なもの」に、同24行目の「補助参加人」を「特定の宗教」に、48頁2行目の「使用料」を「本件使用料」にそれぞれ改める。

[19](10) 原判決49頁25行目冒頭から50頁3行目冒頭の「また、」までを削り、同15行目の「拝所等の」から同16行目の「であって、」までを「用途に供される家屋で、当該地域の共同体的施設として、」に改める。

[20](11) 原判決52頁6行目の「那覇市税条例」から同10行目の「いうほかない。」までを
「固定資産税の減免の該当項目のうち「公益減免」(那覇市税条例71条1項2号)と「その他減免」(同項4号)を挙げて固定資産税の減免申請をした(乙50)のに対し、那覇市担当者による調査等の結果が記載された「久米崇聖会 減免申請調査事項」と題する文書(乙51)においては、「那覇市税条例第71条1項4号および(中略)減免取扱基準第3章第2公益減免(3)「拝所、共同住宅井戸等の土地及び家屋」との記載とともに、昨年(平成30年)までは「その他減免」に基づいて減免していたものの、「地域又は不特定多数の者が利用する拝所、共同井戸等で、当該地域の共同体的施設として、その本来の使用に際し制限のないもの」に該当するものとして「公益減免」を適用して減免する旨の記載がされているのであるから、本件減免処分が同項2号に基づいてされたものであり、同項4号に係る記載が誤記であることは明らかである。」
に、同11行目の「規程」を「規定」に、同16行目及び18行目の各「受益的処分」並びに同17行目の「本件受益処分」をいずれも「授益的処分」にそれぞれ改める。
[21] 控訴人らは、前件最高裁判決が本件土地の使用料を全額免除した処分が違憲無効である旨を判示しているからといって、全額免除が解消されれば違憲状態も解消されるとはいえず、平成24年最高裁判決(第二次空知太神社訴訟最高裁判決)の判断枠組みに照らし、適正な賃料の支払に加え、宗教施設の縮小、祭祀の態様の変更等の判断要素についての比較衡量を通じて判断されるべきであるとし、本件では、適正な賃料の支払以外の点は改められていないから、補助参加人による宗教的儀式である釋奠祭禮の実施を容易にし、那覇市の行事であるかのような外観を付与し、もって特別の便宜を与え、援助するものというべきである旨主張する。
[22] しかし、前件最高裁判決は、本件土地の使用料の全額免除の合憲性及び使用料に係る債権の管理の違法性に関して判断したものにすぎず、本件施設の設置につき許可を与えた行為の合憲性や本件土地に係る不動産の管理の違法性については直接の判断を示したものではないことに照らせば、本件では、後者の点(本件怠る事実)につき、改めて、口頭弁論終結時までの経緯や事情を全体として総合考慮して判断すべきことは、当審による訂正後の「事実及び理由」第3の2(2)アにおいて判示したとおりである。これと異なる控訴人らの上記主張は採用することができない。

[23] 控訴人らは、上記の判示に係る総合判断を行うとしても、一般人の宗教意識に照らして本件施設の設置を許容するには、① 本件委員会等が取りまとめた案に近づけ、本件施設のフェンス等を除去してより開放的なものとするか、② 釋奠祭禮の式次第から宗教的部分を取り除くか、③ 補助参加人の閉鎖的性格(会員資格の限定)を変容させるかのいずれかをしなければ、公園内の公共的施設としての性格は得られず、宗教団体が管理運営する宗教的施設でなされる宗教的儀式を公的な公園で恒常的に実施することは、使用態様について何らかの差異や工夫を設けるのでなければ、限度を超えた便宜の供与である旨主張する。
[24] しかし、本件施設が宗教性を有し、補助参加人が宗教団体に該当する一方で、本件設置許可がされるに至った経緯(本件施設を松山公園の一部に設置することには、それに相応しい歴史的文化的な背景が存在し、那覇市のまちづくりの基本方針等にも合致することから、本件設置許可は、本件施設がこのような歴史・文化の保全や観光振興等に資することに着目して、これを公園施設の一部として用いるという世俗的・公共的な目的の下に行われたことなど)や、本件土地の提供及び占用の態様等(本件土地につき廉価とはいえない使用料を負担する一方で、一般市民への無料開放がされていることなど)の諸般の事情を考慮し、社会通念に照らして総合的に判断すれば、本件設置許可が特定の宗教に対する援助・助成に当たるものとはいえないことは、同第3の2(2)イないしオにおいて判示したとおりであって、更に控訴人ら主張の上記①ないし③の措置が採られない限り上記援助・助成に当たると評価すべきであるとまではいえない。したがって,控訴人らの上記主張は採用することができない。
[25] このほか、控訴人らが本件設置許可の違憲性について主張するところも上記結論を左右するものとはいえない。
[26] 控訴人らは、① 「久米崇聖会 減免申請調査事項」と題する文書(乙51)には那覇市税条例71条1項2号の記載がないことや、被控訴人市が原審における審理の最中に初めて本件減免処分に係る根拠規定の記載が誤記であると主張して更正処分を行ったことからすれば、被控訴人市は同項4号に基づいて固定資産税の減免処分を行う認識を持っていた可能性が濃厚であること、② 処分理由の教示は市における財政民主主義を担保して市長の恣意的運用を統制するという重要な役割を担っており、仮にその教示の誤りが看過されて授益的処分が恣意的ないし不当に行われることとなれば、市民が不利益を被ること、③ 本件減免処分が行われてから3年が経過しても根拠条項の誤記だとしてその性質を変更できるとするのは余りに便宜的に過ぎるなどとして、本件減免処分は無効である旨主張する。
[27] しかし、上記①については、当審による訂正後の原判決の「事実及び理由」第3の2(3)イにおいて判示したとおり、本件減免処分が従前の「その他減免」(那覇市税条例71条1項4号)ではなく、「公益減免」(同項2号)に基づいてされたものであり、同文書やこれを前提とする本件減免処分の通知書における同項4号との記載が誤記であることは明らかであり、他に被控訴人市が同号に基づいて本件減免処分を行う認識を有していたと認めるに足りる的確な証拠はない(そのため、当該誤記の訂正に係る更正処分によって本件減免処分の性質が変更されたとする上記③の主張は、その前提を欠くものといわざるを得ない。)。また、上記②については、本件減免処分に当たって上記文書のとおり公益減免を前提とする調査検討がされ、その旨の決裁がされていること(乙50、51)や、最終的な適用条項以外の点について誤りがあるとは認められないことを踏まえれば、上記の誤記の存在は、行政庁の判断の恣意性を直ちに示すものとはいえず、また、不服申立ての便宜を与えるという理由提示の趣旨を害すものともいえない。
[28] したがって、控訴人らの上記主張はいずれも採用することができない。
[29] 以上によれば、控訴人らの請求をいずれも棄却した原判決は正当であり、本件各控訴はいずれも理由がないから、これを棄却することとして、主文のとおり判決する。

  裁判長裁判官 谷口豊  裁判官 下和弘  裁判官 吉賀朝哉

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