政見放送削除事件
第一審判決

損害賠償請求事件
東京地方裁判所 昭和58年(ワ)第8536号、11029号、12294号
昭和60年4月16日 判決

原告  東郷健  雑民党

被告  国  日本放送協会
代理人 川野辺充子 芦原利治 ほか1名

■ 主 文
■ 事 実
■ 理 由


一 被告日本放送協会は、原告東郷健に対し金30万円及びこれに対する昭和58年9月1日から支払ずみまで年5分の割合による金員を、原告雑民党に対し金30万円及びこれに対する昭和58年12月7日から支払ずみまで年5分の割合による金員を各支払え。
二 原告らのその余の請求を棄却する。
三 訴訟費用は、被告日本放送協会との間に生じたものはこれを3分し、その2を原告らの、その1を被告の負担とし、被告国との間に生じたものは原告らの負担とする。
四 この判決は原告ら勝訴部分に限り仮に執行することができる。

一 請求の趣旨
1 被告両名は連帯して、原告東郷健に対し金100万円、原告法人にあらざる社団雑民党に対し金100万円及びこれらに対する訴状送達の翌日から支払ずみまで年5分の割合による金員を支払え。
2 訴訟費用は被告両名の負担とする。
3 仮執行宣言

二 請求の趣旨に対する答弁
1 本案前の申立
(一) 原告東郷健の被告日本放送協会に対する訴えを却下する。
(二) 原告法人にあらざる社団雑民党の被告両名に対する訴えを却下する。
(三) 訴訟費用は原告らの負担とする。
2 本案の答弁
(一) 原告らの請求を棄却する。
(二) 訴訟費用は原告らの負担とする。
(三) 担保を条件とする仮執行免脱の宣言(被告国)
[1] 原告法人にあらざる社団雑民党(以下「原告雑民党」という。)は、公職選挙法(以下「法」という。)86条の2の政党その他の政治団体として、昭和58年6月26日実施の参議院(比例代表選出)議員の選挙において、東郷健外計10名を候補者とする名簿を選挙長に届け出たものであり、原告東郷健(以下「原告東郷」という。)は原告雑民党の代表者である。

[2] 原告東郷は、昭和58年6月5日、法150条により被告日本放送協会(以下「被告NHK」という。)において政見放送の吹き込みを行い、被告NHKの政見経歴放送実施本部部員がその政見の録音及び録画を行つた。

[3] 右政見放送の吹き込みにおいて原告東郷が発言した内容は別紙「政見放送」に記載のとおりであつたところ、被告NHKの前記職員は別紙「政見放送」中12頁の「めかんち、ちんばの切符なんか、誰も買うかいな」という部分及び21頁の「めかんちやちんばの」という部分の音声をカツトして昭和58年6月16日及び同月20日の2回にわたり放送した。

[4] 放送に先立ち、被告NHKは、昭和58年6月10日付文書をもつて自治省行政局選挙部長に対し、録音、録画した原告東郷の政見放送中に「めかんち」、「ちんば」という不穏当な文言があるとしてカツトの是非を照会したところ、同年同月11日、同部長は、当該部分をカツトすることは法150条1項の規定に違背するものではないと解する旨文書回答した。

[5] 被告NHKの政見経歴放送実施本部部員の行つたカツト及び自治省行政局選挙部長の行つた回答は、いずれも法150条1項の規定に違反する違法行為であり、原告両名の政見放送権を侵害した不法行為である。

6 被告NHKの責任
[6] 前記不法行為は、被告NHKの被用者たる政見経歴放送実施本部部員が、被告NHKの事業である放送事業の執行についてなしたものであるから、使用者たる被告NHKは民法715条により原告らの損害を賠償する責任がある。

7 被告国の責任
[7] 前記不法行為は、自治省行政局選挙部長という国の公権力の行使にあたる公務員が、その職務を行うにつき故意かつ違法に原告らに損害を加えたものであるから、被告国は、国家賠償法1条1項により原告らの損害を賠償する責任がある。

8 損害
[8] 前記不法行為は原告両名の政見放送権を侵害するものであり、その損害額は、それぞれ100万円である。

[9] よつて、原告両名は、被告両名に対し、不法行為に基づく損害賠償請求権に基づき、請求の趣旨記載の金員の支払を求める。
1 (被告NHK)
[10] 違法な政見放送により侵害される権利ないし利益は政党その他の政治団体の得票であつて、候補者個人に対する投票その他の権利ないし利益ではなく、候補者の個人としての権利ないし利益が直接に侵害されることとはならない。原告東郷は被告NHKに対する訴えにつき原告適格を有しない。

2 (被告両名)
[11] 原告雑民党は法人にあらざる社団と認められる要件を具備しておらず、当事者能力を有しないから、原告雑民党の訴えは不適法である。
1 (被告NHK)
[12](一) 請求原因1、2は認める。
[13](二) 同3のうち、カツト部分を争う。カツトしたのは、別紙「政見放送」中12頁の「めかんち、ちんば」という部分のみである。その余は認める。
[14](三) 同4は認める。
[15](四) 同5、6、8は争う。

2 (被告国)
[16](一) 請求原因1は認める。
[17](二) 同2は不知。
[18](三) 同3のうち、カツト部分を争う。カツトされたのは別紙「政見放送」12頁の「めかんち、ちんば」の部分のみである。その余は不知。
[19](四) 同4は認める。
[20](五) 同5、7、8は争う。
[21] 法150条1項後段の規定は、通常人がこれを聴いても直ちにその違法性を認識できるようなものまでそのまま放送するように義務づけているとは条理上考えられない。法150条の2は、政見放送の品位を損なう言動をしてはならない旨規定している。本件のように、通常人に対し、客観的に明らかに身体障害者に対する差別感、侮べつ感を与える特定の文言である場合には、これをカツトしても違法はない。

[22] 被告NHKは、全国民の基盤に立つ公共放送の機関であるから、放送内容について国内番組基準を制定し、人権・人格・名誉を尊重し、人心に不快の念を起こさせるような表現はしないことを定めているが、本件でカツトした文言は、番組基準に照らして被告NHKにおいて使用することができないものである。

[23] 本件カツトによつて、原告両名の政見が視聴者に伝達されなかつたり、ゆがめられて伝えられたことはなく、原告両名の法律上の利益等が侵害されていないことは明らかである。

[24] (被告NHK)被告NHKは、自治省の指示を仰ぎ、前記回答に基づいて本件カツトをしたものであつて、被告NHKに責任はない。

[25] (被告国)被告NHKは、法、同施行令並びに政見放送及び経歴放送実施規程(自治省告示)の定めるところにより政見放送を実施するものであり、被告国からの指示ないし委託により実施するものではなく、被告国に責任はない。
[26] 争う。
[27] 法150条1項は客観的に明らかに刑罰法規に触れる行為さえそのまま放送すべきことを義務づけている。本件政見放送の内容はそのようなものですらない。本件カツト部分で原告東郷が言つたことは、差別者たちへの怒りと糾弾であつたのであり、身体障害者に対する差別感、侮べつ感を与えるものではない。法150条の2は公職の候補者自身に対し品位保持義務を訓示的に課したにとどまる。
[28] 政見放送については、被告NHKに編集の自由は認められておらず、国内番組基準を適用することはできない。
[29] 本件カツトにより、差別用語を平気で使つている人間に対する心からなる怒りの表現が削除され、また本件カツトは録音についてのみなされ、原告東郷はテレビの画面の中で口だけ動かして言葉が出て来ないという場面を放送されたのみならず、政見放送をそのまま放送することができる権利を侵害された。
[1] 被告NHKは、原告東郷には原告適格がない旨主張するが、本件訴訟において、原告東郷は、違法な政見放送により自己の権利、利益が侵害されたと主張してその損害の賠償を求めているのであるから、原告東郷に原告適格があることは明らかである。

[2] 被告両名は、原告雑民党は法人にあらざる社団の要件を具備せず、当事者能力がない旨主張するが、原告雑民党が法86条の2の政治団体であり、昭和58年6月26日実施の参議院(比例代表選出)議員の選挙において10名の候補者名簿を選挙長に届け出たものであり、原告東郷がその代表者であることは当事者間に争いがなく、〈証拠略〉によれば、原告東郷は、同性愛者や身体障害者への差別の排除を目的として「雑民の会」なる組織を結成したこと、「雑民の会」は約5000人の会員を有し、会員からの寄付により原告東郷を中心として月刊誌の発行、公演、映画上映などの活動を行つてきたものであること、前記参議院(比例代表選出)議員選挙において、原告東郷及び「雑民の会」の会員が中心となり「雑民党」なる政党を結成し、性愛に対するあらゆる束縛と偏見に対してこれを打破し差別意識を根絶させることを志す旨を定めた党則を選挙管理委員会に提出したこと、原告雑民党の供託金は「雑民の会」の会員の寄付によりまかなわれたことが認められ、以上の事実からすると、原告雑民党は社団の実体を備え、当事者能力を有しているというべきである。
[3] 原告雑民党が法86条の2の政治団体であり、昭和58年6月26日実施の参議院(比例代表選出)議員の選挙に候補者名簿を届け出たこと、原告雑民党の代表者が原告東郷であることは当事者間に争いなく、原告東郷が昭和58年6月5日、被告NHKにおいて政見放送の吹き込みを行い、被告NHKの政見経歴放送実施本部部員がその録音及び録画を行つたこと、右政見放送において原告東郷が発言した内容は、原告らがカツトを主張する部分を除き別紙「政見放送」記載のとおりであること、被告NHKの職員が別紙「政見放送」12頁の「めかんち、ちんば」という部分をカツトして放送したことは、被告らとの間で争いなく、或いは弁論の全趣旨により認めることができる。

[4] 被告NHKの職員が別紙「政見放送」中12頁の「めかんち、ちんば」という部分をカツトして放送したことは、前記のとおりであるが、これを超えて原告主張のカツトがなされたことを認めるに足りる証拠はない。検甲第1号証によれば、原告主張の別紙「政見放送」中12頁の部分については、「そんな有名人がしても、まあ満員にするの大変やのに、あの無名の、まあ、あの」という部分から「でつて、そんなもん、満員にならないわ」という部分に至るまで約1.2秒の間音声がカツトされていることが認められるが、カツトの時間からすると、この間に「めかんち、ちんばの切符なんか、誰も買うかいな」という発言がされていたと認めることはできない。また、右検甲第1号証からは、別紙「政見放送」中21頁において、何らかのカツトが行われた形跡をうかがうことはできず、原告主張の「めかんちやちんばの」という発言が録音の上カツトされたと認めることはできない。〈証拠略〉中、原告主張に添う部分は採用できない。

[5] 法150条1項後段は、日本放送協会は、政見を録音し又は録画し、これをそのまま放送しなければならない旨規定しており、この規定は、日本放送協会が内容を審査検討して放送の諾否を決するようなことは、政見発表の自由を侵害し又は侵害するおそれがあるので、これを禁止して選挙の公正を保障しようとしているものと解される。
[6] ところで、本件カツトは別紙「政見放送」中12頁の「めかんち、ちんば」という文言について行われたものであつて、右文言がそのまま放送されたとしても、直ちに他の法益を侵害するとは考えられない。〈証拠略〉によれば右文言が身体障害者に対する差別用語であると認められるが、〈証拠略〉によれば、原告東郷は右文言を他人の言葉として引用したものであつて、差別のために用いたものではないことが認められ、右文言をそのまま放送することが直ちに他の法益を侵害するものではなく、本件カツトは法150条1項後段の規定に違反するものという外ない。
[7] 法150条の2は、政見放送としての品位を損なう言動をしてはならない旨規定しているが、この規定は、政見放送としての品位を損なう言動をしないよう候補者の自覚をうながすものであつて、本件カツトを適法とするものではない。

[8] 〈証拠略〉によれば、被告NHKは、国内番組基準を制定し、人権・人格・名誉を尊重し、人心に不快の念を起こさせるような表現はしないことを定めているが、これは、政見放送に適用すべきものではない。

[9] 被告NHKが自治省行政局選挙部長に対して本件カツトにつき照会したところ、同部長は本件カツトが法150条1項の規定に反するものでない旨の回答をしたことは当事者間に争いがないが、被告NHKは、法、同施行令、並びに政見放送及び経歴放送実施規定(自治省告示)の定めるところにより政見放送を実施するものであり、国からの指示ないし委託により実施するものではない。従つて、被告NHKが右回答に従つたとしてもその責を免れず、本件カツトが選挙部長の右回答に因るものということはできない。

[10] 本件カツトが原告両名の政見放送をそのまま放送することができる権利を侵害したことは、明白である。〈証拠略〉によつても、本件カツトにより原告両名の政見が視聴者に伝達されなかつたり、ゆがめられて伝えられたものとは認め難いが、本件カツトによる権利侵害、侵害された権利の重大性に変りはない。被告NHKは原告両名に対しそれぞれ損害賠償金30万円を支払うべきものとするのが相当である。
[11] 以上の次第で、原告らの本訴請求は、原告両名が、被告日本放送協会に対し、それぞれ金30万円及び主文記載の訴状送達の翌日から支払ずみまで民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度において理由があるからこれを認容し、その余は失当であるから棄却し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法89条、92条但書、93条を、仮執行宣言につき同法196条1項をそれぞれ適用して主文のとおり判決する。

  裁判官 大前和俊 高橋祥子 喜多村勝徳
 なぜ雑民党を造つたかという事は、あの私が今、50歳になつた……大学を出て50歳までの28年間の物語を、歴史を聞いてもらう事によつて、雑民党の設立の意図が分かると思うのですよね。だから、ちよつと聞いて欲しいと思います。それから何故、オカマになつたかというのは、この前、京都大学の講演で聞かれたのですけど、私がオカマになつてなかつたら、銀行のオエライさんか、或いは、大学の教授に、今頃はなつていたと思うけれど、でも、ホモだとかゲイだとかいう事を隠して、自分に偽わつて生きるよりも、自分に忠実に生きてこれた今の私は、本当に幸せだと思つています。で、私の過去は、大学を出て、銀行員になつて、結婚して、子供ができて、それからアメリカに行つて、アメリカのブロイラー産業を見て、それで日本に初めて、ブロイラー産業を入れて、それで生産したんですけれども、見事に失敗して、1億数千万の借金を背負つて、それから私は、一番身近で自分のあの好きな小資本でできるつていうゲイバーを、借金を払うために作りました。で、初めの内は、その鬘を見てはびつくりしたり、そのスポンジのおつぱいを見てはびつくりしたりしたんですけれども,その売上の殆んどを、借金に持つていくために、ママとマスターを雇つていたのにも拘わらず、辞めてしまい、皆がストライキをするという羽目に落ち入つて、私はジーパンでままよつて出て、そのうちに、メーキヤツプして浴衣着て、ままよつていうようになつて、その次には、厚化粧して、あの、女装してみたり、色々して、隠していたのが、だんだんだんだん表へ出て、経営するようになつてまいりました。で、その内に、あの「陰花植物群」ていう本を書こうかなと思つて東京へ参りましたらその体を売つている高校生がいて、で、その高校生を連れて帰つて、その高校生から、私は、色々の勉強を教わりました。マルクスやレーニンやマツクスウエーバや、或いは学園闘争やら、そんな話を聞いて、彼の影響で、私の大学時代の自分の社会科学方法論なんかを考えるようになつて、一体、神様であつた天皇が、なぜ人間に宣言しにやいかんのやろか私が、天皇が、あの、朕なら、私はほんまもんのチンチンの方がええわ……なんて思うようになつたり、それで我々の税金の80億を何故そんなに使わにやいかんのやろと考える様になりました。で、或いは政治家は、300年の間、物価を下げた政治家が1人もいないのに、「物価を下げる、下げる」つて、民衆に愚弄するんだろうか。そんな事を考えたり、それからまあ、NHKの事も言つたりしたんですけども、この度、NHKは結局、私の性のタブーと闘うなんて、あの、ニユースで言つてくれて、それでもう、この度NHKの悪い事はちよつと、やめとこうかなつて……いうカンジで……NHKもこの十何年の間に、大部変わつたと思います。それから私は、あの、「陰花植物群」を作つて、彼に出会つて、彼が60年安保の時に、色々その話をした事から、結局、今から12年前に、参議院に立候補する事になつたんです。で、やつぱり、性を通して、差別を訴えてきた訳ですけど、あのホモの人達の間では、私の名前はちよつとは知つていても、一般には何も知らないで、東郷健と言つても、誰も見向きもしない。だから私は、雨の暑い日、私のマネージヤーに「オカマを上につけたらどうかしら」つて言うたら、「そんな恥かしい事できへんわ」つて言うたから、キユーとひねつたら、「イタイ」つていうのが外に聞こえてきて、「じや私がするわ」つて、「オカマ、オカマ、オカマの東郷健が参りました」つて言うたら、そんなら、雨の中、荷物を持つている人が、バタツて荷物を落として、びつくりしたように私を見ている。「じやー、これでいこう」つていう事で、オカマの東郷健は、「オカマ、オカマ」つて東京じゆう言い回つて、とうとうオカマの代名詞みたいになつてしまいました。それでまた借金です。そして私は、あの、東京に来て、トイチとか、10日に1割取るとか、商品金融とか、商品金融……商品を5万円買つたら、5万円貸す。けれども1週間後に、10万円払わにやいかん。というものがあつたんで、私はその後、3年後、「再び女に化けたが、恨むは前に穴がない、不渡り、不渡り、不渡りブルースつていうような事を喋つて、この金融界の事を、高利貸の事を喋つたんですけども、それでも誰も、私の言う事は聞いてくれない。そして10年も経つて、今頃になつて、サラリーローンの問題を出したり、自殺者を出したりするつていうのは、政治家の考え方であつて、落ちるだけ落ちた私は、地球の裏側に立つて、物事をもつともつと考える様になつてしまいました。で、だから、私がいない間に、借金の差押さえで、何にもかも無くてて、住む事ができなくなつた時、私は、40にもなつて、恥かしい話ですけども、私の老いた母に、「70万円、マンシヨンの費用を送つて欲しい」つて泣きつきました。そいで、「親なら私の事を信じて欲しい」つて言うたんですけど、その後、母は「オカマの子は生んだ覚えは無い」と夢にまで言うて、死んでしまいました。私は駆けつけて、私は泣くだけ泣いて、そいで私は、今でもその骨を、枕元に置いた儘、生きてますけど、その時初めて、「ごめんね」つて言うて、それでそれでも私は、その時から、もつともつと、何とかしてでも、この言いかけた事は、やつていこうつていう事になつて、その年、「雑民の会」というものを造つて、その年、香典が何百万か有りましたから、その香典で、“太陽はいらない”つていうあの郵便貯金ホールでコンサートを始めましたけど、「そんな有名人がしても、まあ満員にするの大変やのに、あの無名の、まあ、あの、“メカンチ・チンバノキツプナンカ、ダレモカウカイナ”」でつて、「そんなもん、満員にならないわ」つて言われたけど、やつたらやつぱり、それも借金で大変でした。けど、そんな時から私は死を考える事になりました。亡くなつた椎名麟三は、あの死の10年間ぐらい、私とか、妹とか、私の母をモデルに小説を書いてますけど、彼が「地球を青い」つて言うた事とか、それから、人間、今こうして喋べつていても、いつ死ぬかもしれない。人間は欲望が深いから、死ぬという事を考えないんですよね。地球も、或いは国も、いつかはやがて、滅びていく。滅びていくにも拘わらず、誰もそんな事知らないで、それで、軍拡とか、戦争とか、国を取られるとか、或いは、そういう事言うているけど、非核三原則とかいうのは、あの原爆が投下されて、大変な目におうたからできた法律にも拘わらず、あのまあ、中曽根というのは、そういうのをドンドコ、ドンドコ進めています。だから私は、中曽根はレーガンにオカマを掘られているつていう事を聞いているつて言うているんですけど、あの、そういう感じで……、この間、私のホモの友達の自衛隊員が、「あのボクは、メキシコで、原爆投下の練習とか、ミサイルの練習してきた」つて言うたけど、そんな事、やがて、遅かれ早かれ、あの、国がなくなるんならば、今の儘、守つていつて、抵抗していくのが、我々雑民である民衆の叫びじやないかつて、私みたいな者が言つてます。そんな事から私は、色々やつているうちに、病気になつて、5万円しか無くつて、そいで、あの、出版社に応援してもらつて、20年ぶりにアメリカへ行つて、そいで、20年前のアメリカと、ものすごい自由になつた今のアメリカを見て、退廃したけれども、好きになつて、そいで雑民の論理ていうのと、その後、“欲情のキスをどこにするか”それは、名前を見たら、当然セツクスの問題だろうつて言うけれども、セツクスを通して私は家父長制と天皇制ていうのをその中に叫びました。そして81年私は、あの、またアメリカへ行つて、ニユーヨークで、そいで、あの、ゲイの原因不明の病気が、80年6月から流行つて、1年もの間に、2百何人の内、48パーセントの人が亡くなつたつていう話を聞いて、私は、さつそく厚生省に問い合わせました。小田課長つて、性病課で、あの、どうしてくれるか考えんと、日本にも、ビールス性肝炎が上陸したように、あの、やがてそれも、流行るんじやないか。日本には、いつぱいホモ旅館ができてやつているけど、その衛生面の事をどう考えているかつて聞いたけど、少数のゲイの人達の問題については、何等考えてないつて言うんですよね。だから、もしそれがなつたとしても、不潔なセツクスだから、或いは、少数のセツクスだからつて、人から笑われて、記事にされるだけで、あの、大変な事だと思います。だから私が今、ゲイの雑誌をこさえている中で、それを取上げたら、ニユーヨークの、アメリカ中にでてる“アドバゲイト”つていう雑誌は、それを1面に、1ページにわたつて、大きく取り上げてくれて、あの、日本での私の活動を、書いてくれたんですけど…日本には、そういう事が無い。でも、この選挙に出れたのも、やはりゲイの雑誌を、レズの皆様とゲイの人達が爆発的に買つてくれはつたから、今日まで居られたと思います。ここで厚くお礼を申し上げます。で、こういう事を最近になつて、マスコミが書いているけど、そのマスコミを、だから私は、日和見て言うんです。もう私が書いてから、もう2年も経つてから書いてるんですね。今度の場合でも、朝日新聞は、大変な高圧的でした。で、この度の選挙では、結局、あの、10人を寄せないかんていうので、9人も色々な人を寄せたんですけれど、結局、あの、演説をしなかつたり、あの、病気で倒れたり、色々して、とりあえず、10人ていう人数を揃えたんですけれど……でも、まあ雑民党ていうのは、そういう感じで、私の母が亡くなつて、雑民の会を造つて、それから出発して、8年目に党を、漸くここで、拵えました。だから、全国の皆さん、それと、あの、ゲイから或いはレズビアンから、エスエムから、或いは疎外された人々、或いは少数の、或いは差別されて、或いはめかんちやちんばのある身障者とか、そういう差別されている人達と手を繋ぎたいと思つてます。で、私は、あの、絶えず少数の人つていうのは、私はあの同じレベルの人どうしが喧嘩する、或いは弱者が弱者どうしを、こう、喧嘩するつていう事……とつても、あの、表現する場合が有つたら、それは嫌で、喋つているんですけれど、この度、芸能界で、マリフアナなんか吸うてるのは、もう常識になつているんで、結局、それがあの映画のシヨーを貰つたから、マリフアナになつたり……私もニユーヨークで、ランママンで、芝居をやつても結局、そういう地位ができた役者達が、私がランママンに出る事を邪魔したり、そういう事がいつぱいありました。でもそういう事もあつて、この十何年間のうちに、今は中学生から、「僕はゲイだけど、あの、親は、東郷さんは気持悪いつて言うてるけど、僕は黙つて、ゲイで校内暴力にも参加してないし、で、あの、東郷さん、頑張つて欲しい。僕達がもうちよつと選挙権ができるようになつたら、やるから……」ていうような励ましの言葉も頂いて、あの、私は何とか頑張りたいとは思つてます。その投書頂いた方にも有難いなあつて思つています。それから、今までは私は、その私、自分が出ても、社会党に入れてたんですけども、その社会党の天皇と言われる向坂さんに、この前出会つた。「社会主義者、マルクスの社会主義者になつたら、お前の病気も治るわ」なんて言われたんで、私は喧嘩して帰つたんですけれど……そういう感覚の持主が、いまだ左翼と謂われる所に存在するという事が、私は嫌だなあつて思つてます。だから,雑民ていうのは、本当の弱者―強い人と弱い人があつたら、弱者です。で、ピラミツドの頂点から底辺の人まで、底辺だというのを、我々は認識しないで、90パーセントの人々が幸せだつて思つてるつて言うけれど、本当の幸せつてなんだろうつて事を、自分でグイツと考えて。雑民というのは、雑巾です。或いは浮草です。デラシネです。でも、その雑民ていう言葉は、「広辞林」引いても無いんです。けれども、その雑民に我々は力を入れて、小さな所から輪を広げていきたい。人間として、偶然にも、あの、運命が良くて有名になつたりする、そういう事でなしに、本当の意味の弱者、それが雑民なんです。どうかこの話を聞いたら、ひとりでも、或いはふたりでも10人にでも、この声をみんなに広めていただいて、それで雑民がちよつとでも、この社会に対する批判票として、投票して頂いたら、私は幸せだなあて思うんです。だから、雑民雑誌の雑、雑巾の雑です。どうか雑民党をよろしくお願い致します。

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