砂川政教分離訴訟(富平神社)
控訴審判決

財産管理を怠る事実の違法確認請求控訴事件
札幌高等裁判所 平成18年(行コ)第17号
平成19年8月30日 第3民事部 判決

控訴人(原告)   A
同訴訟代理人弁護士 石田明義

被控訴人(被告)  砂川市長 B
同訴訟代理人弁護士 新川生馬
    同     朝倉靖

■ 主 文
■ 理 由


1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は控訴人の負担とする。

 原判決を取り消す。
 被控訴人が,別紙物件目録記載の各土地について,別紙登記目録記載の各所有権移転登記の抹消登記手続を請求することを怠る事実が違法であることを確認する。
 訴訟費用は第1,2審とも被控訴人の負担とする。
 原判決4頁10行目の「同月31日付けで」を「同月31日に」と改め,同12頁6行目の「右にいう」を削除し,次の2のとおり「当審における控訴人の主張」を付加するほかは,原判決の「事実及び理由」欄の「第2 事案の概要」(原判決1頁22行目から14頁13行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。

2 当審における控訴人の主張
 a町内会は,宗教施設たる富平神社の経営主体であり,富平神社と一体的関係にある上,富平神社の維持運営を町内会活動の一つとしていることに照らすと,特定の宗教活動を行う宗教団体である。したがって,砂川市がa町内会に対し本件各土地を譲与したことは,富平神社の維持存続を目的とし,宗教に対する援助,助長及び促進という効果をもたらすものであって,憲法20条3項,89条に定める政教分離原則に違反し,無効である。
 当裁判所も,控訴人の本訴請求は理由がないものと判断する。その理由は,次の2のとおり「当審における控訴人の主張に対する判断」を加えるほかは,原判決の「事実及び理由」欄の「第3 争点に対する判断」(原判決14頁15行目から28頁10行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。

2 当審における控訴人の主張に対する判断
[1] 控訴人は,
「a町内会は,宗教施設たる富平神社の経営主体であり,富平神社と一体的関係にある上,富平神社の維持運営を町内会活動の一つとしていることに照らすと,特定の宗教活動を行う宗教団体である。したがって,砂川市がa町内会に対し本件各土地を譲与したことは,富平神社の維持存続を目的とし,宗教に対する援助,助長及び促進という効果をもたらすものであって,憲法20条3項,89条に定める政教分離原則に違反し,無効である。」
などと主張する。
[2](1) a町内会は,その目的及び活動,組織,役員並びに会計の内容に照らすと,富平地区の地域的な活動を行い,良好な地域社会の維持及び形成に資することを目的とし,当該目的に沿った活動として,回覧板や砂川市広報の回付等の町内会活動を行っているにすぎないこと,a町内会は,富平地区に住所を有する個人で入会を希望するもの(会員)をもって組織するとされており,現に富平地区内に居住するという理由だけでその地区内にある世帯の大部分が入会しているものであること,a町内会の役員は,町内会の会員の中から選任されるが,その資格として会員であることのほかに特別な条件が要求されているわけではないこと,a町内会と富平神社とは全くの別会計で管理運営されており,a町内会が富平神社に助成金を支出したことはなく,他方,富平神社での例大祭の行事その他の維持運営の費用についてもa町内会の会計から支出されたことはないことは,いずれも前記引用にかかる原判決「第3 争点に対する判断」の1(3)に認定のとおりであり,これらの事実に照らすと,a町内会は,組織及び役員の面において富平神社との間に何ら特別な関係はなく,会計の面においても富平神社とは全く別に管理,運営されているといえるのであって,世上よく見られる一般的な町内会と変わるところはないのであるから,控訴人が主張するようにa町内会が富平神社の経営主体であるとか,a町内会が富平神社と一体的関係にあるなどと認めることはできないというべきである。もっとも,a町内会が,区域内の環境整備の一環として,年2回程度,本件各土地の草刈りを行っていることは上記「第3 争点に対する判断」の1(3)に認定のとおりであり,この事実に照らすと,a町内会は富平神社の維持運営に資する活動を町内会活動の一つとしているといえないわけではないけれども,この活動は,a町内会が行う種々の活動全体からみても,ほんのごく一部を占めるというものにすぎないし,しかも,その活動は地域の環境整備の一環としてなされているものであり,それ自体として,宗教的色彩の希薄な活動であり,特定の宗教の信仰,礼拝又は普及等の宗教的活動に当たるものではないことはもとより明らかである。
[3] 以上の検討結果に照らすと,a町内会が特定の宗教活動を行う宗教団体であるとする控訴人の主張は採用できず,他にa町内会が宗教団体であることをうかがわせるに足りる的確な証拠も見当たらないといわなければならない。
[4](2) そして,砂川市のa町内会に対する本件各土地の譲与が,宗教とのかかわり合いの程度が我が国の社会的,文化的諸条件に照らし,信教の自由の保障の確保という制度の根本目的との関係で相当とされる限度を超えるものと認められないことは,前記において認定説示したとおりである。
[5] すなわち,本件譲与に至る経緯をみてみると,砂川市は,砂川市監査委員が前住民監査請求の監査結果において本件監査意見を付記したことから,市有地上に神社が存在しており祭事が行われている事態の解消を目的として,a町内会に対して本件各土地を譲与したものであることは前記引用にかかる原判決「第3 争点に対する判断」の1(1)に認定のとおりであり,本件譲与は特定の宗教団体ないし宗教活動に対する援助,助長,支援等の目的を有していたものではないと認めるのが相当である。また,そのための方策として,砂川市は,本件各土地がもともと富平地区の住民から寄付を受けたものであるという経緯等を踏まえ,本件監査意見に従って,有償譲渡ではなく譲与という無償の譲渡手段によったものであり,しかも,その譲与の相手方についても,砂川市は,a町内会の組織,活動等について審査し,a町内会が特定の宗教団体ないし宗教活動とは関係がない団体であることを確認した上で,a町内会を地縁による団体として認可したものであることは前記「第3 争点に対する判断」の1(1)に認定のとおりであって,これらの事実に照らしてみると,本件譲与は神社神道を援助,助長,促進し又は他の宗教に圧迫,干渉を加えるものとはおよそ関連性がないものと認められる。そして,上記のような本件譲与に至る経緯に加え,前記で説示したa町内会の性格に照らすと,a町内会においても,本件譲与については,かつて寄付をした本件各土地の返還を受けたという程度の認識でしかなく,そこに神社神道の維持発展のために本件各土地の返還を受けたなどといった特別の宗教的意義を認めるものではなかったと考えられるものである。そうすると,これらを前提に本件譲与に対する一般人の評価ないし本件譲与の一般人に対する効果,影響を推察してみると,一般人が,本件譲与について,砂川市が神社神道を特別に支援するものであると評価したり,逆に,本件譲与が,一般人に対し,神社神道は他の宗教と異なる特別のものであるとの印象を与え,あるいは神社神道への関心を呼び起こしたりすることになるものとも考え難いというほかはない。
[6](3) したがって,a町内会を特定の宗教活動を行う宗教団体であるとして,a町内会への本件譲与が富平神社の維持存続を目的とし、宗教に対する援助,助長及び促進という効果をもたらすものであるとの控訴人の主張は採用することができない。
 以上によれば,控訴人の本訴請求は理由がないから棄却すべきであり,これと同旨の原判決は相当である。
 よって,本件控訴は理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。

(口頭弁論の終結の日 平成19年5月17日)

札幌高等裁判所第3民事部
  裁判長裁判官 伊藤紘基  裁判官 北澤晶  裁判官 中川博文

(別紙)物件目録
1 所在 砂川市a
  地番 191番1
  地目 宅地
  地積 902.05平方メートル
2 所在 砂川市a
  地番 192番1
  地目 畑
  地積 1584平方メートル
以上

(別紙)登記目録
1 札幌法務局滝川支局平成17年4月15日第2399号所有権移転
  原因 平成17年4月15日贈与
  所有者 砂川市a×××番地
      砂川市a町内会
2 札幌法務局滝川支局平成17年4月15日第2399号所有権移転
  原因 平成17年4月15日贈与
  所有者 砂川市a×××番地
      砂川市a町内会
以上

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