非嫡出子相続分規定違憲決定
即時抗告審決定

遺産分割審判に対する抗告事件
東京高等裁判所平成24年(ラ)第955号
平成24年6月22日 第9民事部 決定

抗告人(相手方)  e(以下「抗告人e」という。)
抗告人(相手方)  f(以下「抗告人f」という。)
   代理人弁護士 小田原昌行
        同 鹿田昌
        同 柳生由紀子
被抗告人(申立人) a
被抗告人(申立人) b
   代理人弁護士 近藤弘
被抗告人(申立人) c
被抗告人(申立人) d
   上記2名代理人弁護士 坂本正幸
被相続人 g(平成13年7月25日死亡)

■ 主 文
■ 理 由

■ 抗告人eの抗告状・抗告理由書
■ 抗告人fの即時抗告申立書


1 本件抗告をいずれも棄却する。
2 抗告費用は,抗告人らの負担とする。

 抗告人eについては,別紙「抗告状」及び同「抗告理由書」(各写し)に,抗告人fについては,同「即時抗告申立書」(写し)に各記載のとおりである。
 当裁判所も,被相続人の遺産を原審判主文のとおり分割することが相当であると判断する。その理由は,下記2に当裁判所の判断を補足するほかは,原審判が「理由」欄に認定,説示するとおりであるから,これを引用する。ただし,原審判4頁2行目の「右立法理由」を「上記立法理由」に改め,同6頁5行目の「乙5」を「乙A5」に改める。

2 当裁判所の判断の補足
(1) 抗告人らは,当審においても,民法900条4号ただし書前段の規定が憲法14条1項に反する旨重ねて主張するが,最高裁判所平成7年7月5日大法廷決定後の社会情勢,家族生活や親子関係の実態,本邦を取り巻く国際的環境等の変化等を総合考慮しても,本件相続開始時(平成13年7月25日)に上記規定が違憲であったと認めることはできない。抗告人らの上記主張は採用することができない。
(2) 抗告人eは,原審判別紙遺産目録1(7),(8)の各土地及び同2(4)の建物(以下併せて「市川の土地建物」という。)について,持分8分の1のほか,その余の持分(8分の7)も被相続人の遺産であったから,その評価額は2396万円(299万2500円+299万2500円×7)である旨主張するので検討する。一件記録によれば,市川の土地建物は,被相続人死亡時にはその全部が被相続人名義であったものの,その後相続を原因として亡i及び本件当事者に法定相続分に基づく共有登記がされ,kが千葉地方裁判所に亡i及び被抗告人らを債務者とする強制競売(同裁判所平成16年(ヌ)第228号)を申し立て,同競売によりそのうち8分の7の持分が平成17年6月21日にmに売却された結果,同人が上記持分登記を有するほか,抗告人らが各16分の1の共有登記を有する状態になっていること,被抗告人らは,平成22年4月21日に本件審判を申し立て,原審は,本件を調停(東京家庭裁判所平成22年(家イ)第3862号)に付し,平成22年6月28日から平成24年1月18日まで合計13回の調停期日を開いたが,抗告人eは呼出しを受けるも一度も上記調停期日に出頭せず,抗告人eを除く本件当事者は,第8回調停期日(平成23年3月23日)において,市川の土地建物のうち持分8分の1が被相続人の遺産であることを認め,第10回調停期日(同年7月1日)において上記持分の価額を鑑定することなどについて合意したこと,抗告人eは,平成23年11月から同年12月にかけ,原審家庭裁判所調査官から,市川の土地建物の持分8分の1を被相続人の遺産とすること及び上記持分についてした鑑定評価額をもって被相続人の遺産の評価額とすることについての同意の有無について2度にわたる書面照会を受けたものの,これについて回答しなかったこと,上記調停事件は,平成24年1月18日に不成立となり,同年2月28日に第1回審判期日が開かれたが,抗告人eは同期日にも出頭せず,抗告人eを除く本件当事者全員は,同期日において,市川の土地建物について持分8分の1を被相続人の遺産とすることに合意したことがそれぞれ認められる。上記認定事実によれば,抗告人eは,原審の調停手続及び審判手続において,市川の土地建物のうち持分8分の7についても被相続人の遺産であることを前提として評価額等について主張をすることが容易であったにもかかわらず,あえて原審において上記主張をせず,抗告人eを除く本件当事者は,抗告人eにおいて上記主張をしないものと信じ,原審もまたそのことを前提として原審判をしたものであり,抗告人eを除く本件当事者が当審においても,市川の土地建物について持分8分の1を被相続人の遺産とすることを前提とする主張をしていることにかんがみれば,抗告人eが当審において市川の土地建物について持分8分の7をも本件遺産分割の対象とすべき旨を主張することは信義則に反するものとして許されないものというべきである。

 よって,原審判は相当であり,本件抗告はいずれも理由がないからこれを棄却することとして,主文のとおり決定する。

  平成24年6月22日
    東京高等裁判所第9民事部
    裁判長裁判官 下田文男  裁判官 新堀亮一  裁判官 北澤純一
平成24年4月9日
東京高等裁判所民事部 御中

  抗告人(原審相手方) e
  相手方(原審申立人) a
  相手方(原審申立人) b
  相手方(原審申立人) c
  相手方(原審申立人) d

 上記当事者間の東京家庭裁判所平成22年(家)第3942号遺産分割申立事件について、平成24年3月26日付けで同裁判所家事第5部が下した下記審判(同年同月29日告知)は不服であるから、即時抗告を提起する。
1 被相続人の遺産を次のとおり分割する。
(1) 別紙遺産目録記載1(1)ないし(10))の各土地及び同2(1)ないし(4)の各建物は、いずれも申立人a及び同b各3分の1,同c及び同d各6分の1の割合で、申立人らの共有取得とする。
(2) 別紙遺産目録記載3の現金は、申立人aの取得とする。
2 相手方eは、別紙遺産目録記載1(7)、(8)の各土地及び同2(4)の建物について、申立人a及び同bに対し持分各48分の1、同c及び同dに対し持分各96分の1の遺産分割を原因とする各持分移転登記手続をせよ。
3 相手方fは、別紙遺産目録記載1(7)、(8)の各土地及び同2(4)の建物について、申立人a及び同bに対し持分各48分の1、同c及び同dに対し持分各96分の1の遺産分割を原因とする各持分移転登記手続をせよ。
4 申立人aは、第1項(2)の遺産を取得した代償として、申立人bに対し9万8956円を、同c及び同dに対し各4万9478円を本審判確定の日から1か月以内に支払え。
5 本件手続費用中、鑑定人hに支払った鑑定費用202万2000円はこれを48分し、その14ずつを申立人a及び同bの、その7ずつを同c及び同dの、その3ずつを相手方e及び同fの各負担とし、その余の費用は各自の負担とする。
6 手続費用の償還として、申立人bは58万9750円を、同c及び同dは各29万4875円を、相手方eは12万6375円を、申立人aに対し、それぞれ支払え。
 原審判を取消し、さらに相当の裁判を求める。
 追って理由書を提出する。
(以上)
■(別紙)抗告理由書
東京家庭裁判所平成24年(家ニ)第68号 遺産分割審判に対する抗告提起事件
  抗告人 e、外1名
  相手方 a、外3名
抗告理由書
平成24年4月20日
東京高等裁判所民事部 御中
抗告人 e
[1] 原審判は、民法900条4号ただし書前段の規定が憲法14条1項に違反しないとするが、誤っているというべきである。その理由は、抗告人fが詳しく述べているところである。
[2] 本件では、被相続人亡gの相続につき抗告人らの法定相続分が相手方aや相手方bと同じであるとしても、抗告人らの法定相続分は、各30分の3に過ぎない。ところが、相手方aと相手方bの法定相続分は、亡iの相続を経ることにより、各30分の8となる。「法律上の配偶者との間に出生した嫡出子の立場」は「尊重」されているのである。
[3] そもそも、抗告人らが出生したことについて責任を有するのは被相続人亡gである。抗告人らは、その出生に関し何の責任もないし、非嫡出子たる身分は自らの意思や努力によって変えることはできない。それゆえ、憲法14条1項に照らし、被相続人亡gの遺産分割において、抗告人らが法律上差別を受ける謂れはないはずである。
[4] 原審判理由2項「遺産の範囲及び評価」(2)エ「遺産目録1(7)、(8)の各土地及び同2(4)の建物(合計額)」における「相続開始時 299万2500円」の算定が間違っている(審判書5頁1行目)。相手方らが申立外mへ市川の土地建物の持分計8分の7を売却したのは、平成17年6月21日であって、これは相続開始後のことである(甲13ないし15)。
[5] 従って、市川の土地建物の「相続開始時」の価額は、2394万0000円となるはずである(299万2500円+299万2500円×7)。
[6] そうすると、原審判理由4項「具体的相続分」(審判書6頁11行目以下)において、みなし相続財産の額も2094万7500円(299万2500円×7)増加し、3億5226万5153円となるから、この額に基づいて各相続人の具体的相続分が算出されなければならない。
[7] 原審の不動産鑑定評価書は、平成23年9月8日の鑑定時において、東日本大震災の影響によるとして一律年5%の下方修正率を適用し、不動産の評価額を算定している(同評価書11頁ないし13頁)。そして、原審判は、これをそのまま分割時の遺産の評価額として認定する(審判書4頁14行目)。
[8] しかしながら、審判の時点では、震災による混乱は既に落ち着きを取り戻していたのであるから、5%の下方修正率は適用不要となったはずである。
[9] 以上のとおり、原審判は、法定相続分及びみなし相続財産の額の算定に誤りがあり、分割時の遺産の評価額も適正ではないから、原審判を取り消した上で、本件を原審へ差し戻すか御庁にて相当の遺産分割方法を定められるよう求める。
以上
平成24年4月10日
東京高等裁判所 民事部 御中
抗告人代理人 弁護士 小田原昌行
同  代理人 弁護士 鹿田  昌
同  代理人 弁護士 柳生由紀子
  抗告人 f
  抗告人代理人 弁護士 小田原昌行
  同      弁護士 鹿田昌
  同      弁護士 柳生由紀子
  相手方 b
  同   a
  同   c
  同   d
遺産分割審判に対する即時抗告申立事件
貼用印紙額 金1800円

 東京家庭裁判所平成22年(家)第3942号遺産分割申立事件について、平成24年3月26日以下の主文をもってなされた審判はこれを取り消し、下記のとおりの分割をするとの裁判を求める。
1 被相続人の遺産を次のとおり分割する。 (1) 別紙遺産目録記載1(1)ないし(10)の各土地及び同2(1)ないし(4)の各建物は、いずれも申立人a及び同b各3分の1、同c及び同d各6分の1の割合で、申立人らの共有取得とする。
(2) 別紙遺産目録記載3の現金は、申立人aの取得とする。
2 相手方eは、別紙遺産目録記載1(7)、(8)の各土地及び同2(4)の建物について、申立人a及び同bに対し持分各48分の1、同c及び同dに対し持分各96分の1の遺産分割を原因とする各持分移転登記手続をせよ。
3 相手方fは、別紙遺産目録記載1(7)、(8)の各土地及び同2(4)の建物について、申立人a及び同bに対し持分各48分の1、同c及び同dに対し持分各96分の1の遺産分割を原因とする各持分移転登記手続をせよ。
4 申立人aは、第1項(2)の遺産を取得した代償として、申立人bに対し9万8956円を、同c及び同dに対し各4万9478円を本審判確定の日から1ヶ月以内に支払え。
5 本件手続費用中、鑑定人hに支払った鑑定費用202万2000円はこれを48分し、その14ずつを申立人a及び同bの、その7ずつを同c及び同dの、その3ずつを相手方e及び同fの各負担とし、その余の費用は各自の負担とする。
6 手続費用の償還として、申立人bは58万9750円を、同c及び同dは各29万4875円を、相手方eは12万6375円を、申立人aに対し、それぞれ支払え。
1 被相続人の遺産を次のとおり分割する。
(1) 審判書の遺産目録記載1(1)ないし(10)の各土地及び同2(1)ないし(4)の各建物は、いずれも申立人a及びb各3分の1、同c及び同d各6分の1の割合で、申立人らの共有取得とする。
(2) 別紙遺産目録記載3の現金は、申立人aの取得とする。
2 相手方e及び同fは、申立人らに対し、別紙遺産目録記載1(7)、(8)の各土地及び同2(4)の建物の代償として得た金員(現段階では各122万7500円の予定)を支払え。
3 申立人aは、第1項(2)の遺産を取得した代償として、申立人bに対し9万8956円を、同c及び同dに対し各4万9478円を本審判確定の日から1ヶ月以内に支払え。
4 申立人らは、第1項の遺産を取得した代償として、相手方e及び同fに対し各873万1765円を本審判確定の日から1ヶ月以内に支払え。
5 本件手続費用は各自の負担とする。
[1] 原審は、平成24年3月26日上記審判(主文)の表示記載の主文をもって遺産分割の審判をした。

[2] しかし、原審は、遺産の評価及び法定相続分について判断を誤り、抗告人(以下「原審相手方」という)fに不利益な判断を下している。以下その理由を述べる。

3(1) 遺産の評価の誤り
[3] 原審は、別紙遺産目録記載1(7)、(8)の各土地及び同2(4)の建物(以下「市川のアパート持分」という)につき、原審相手方fらに、相手方(以下「原審申立人」という)a及び同bに対し持分各48分の1、同c及び同dに対し持分各96分の1の遺産分割を原因とする各持分移転登記すべき旨判断した。
[4] しかし、市川のアパート持分については、競落によって市川のアパートの8分の7の持分を取得した本申立外mとの間の共有物分割訴訟(東京地方裁判所平成23年(ワ)第25号)の判決(平成24年2月28日言渡)により、本申立外mの所有とする旨の判決が下されており(乙第7号証)、原審相手方らが同判決に従わねばならない場合には、原審審判の第2項及び第3項を実現することは不可能である。
[5] 原審相手方らは、上記共有物分割訴訟につき控訴中であるが、同控訴の判断でも全面的価格賠償の方式が維持される場合には、本件遺産分割において、原審相手方らが市川のアパート持分の移転登記等をすることはできず、せいぜい、同手続での判決に示された価格賠償として受領する金員を原審申立人らに支払うことしかできない。
[6] このように原審相手方らにとって実現不可能な分割方法を内容とする原審審判は、その遺産の評価あるいは分割方法の判断を誤っているといわざるを得ず、直ちに取り消され、現実的な分割内容が示されねばならないことは明白である。

(2) 法定相続分の判断の誤り
[7]1) 原審審判は、民法900条4号但書前段を合憲と判断し、原審相手方らの相続分につき原審申立人aらの2分の1としたうえで、その相続分を原審申立人a及び同bにつき各48分の14、同c及び同dにつき各48分の7、原審相手方e及び同fにつき各48分の3として具体的相続分を算定している。
[8]2) 然し乍ら、民法第900条4号但し書き前段(以下「本規定」という)は、憲法第14条1項に違反し無効であることから本件相続に適用されず、原審相手方fには原審申立人a、同bらと同一割合での相続分が認められねばならない。
[9] 確かに、最高裁平成7年7月5日大法廷決定及びその後の小法廷決定は、民法が採用する法律婚主義の尊重の観点から本規定を憲法第14条1項に反するものとはいえない旨判示する。
[10] しかし、憲法13条、14条1項は、個人の尊厳と法の下の平等を規定し、また、憲法24条2項は、相続に関する法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して制定されなければならない旨を規定している。
[11] このような憲法の規定に照らすと、憲法は、相続に関する法制度としては、子である以上、男女長幼の別なく、均等に財産を相続することを要求しているものというべきであり、子の社会的身分等を理由として、その法的取扱いに区別を設けることは、十分な合理的根拠が存しない限り許されない。
[12] ところで、原審相手方fが非嫡出子であることは、原審相手方f自身の意思ではどうにもならない出生により取得された社会的身分である。
[13] そして嫡出子と非嫡出子とを区別し、非嫡出子であることを理由にその相続分を嫡出子の相続分2分の1とすることは、その立法目的が、法律婚の尊重、保護という、それ自体正当なものであるとしても、その目的を実現するための手段として、上記の区別を設けること及び上記数値による区別の大きさについては、十分な合理的根拠が存するものとはいい難い。
[14] 従って、本規定は、人を出生によって取得する社会的身分により、合理的な理由もないのに経済的又は社会的関係において差別するものといわざるを得ず、憲法14条1項に違反する(最高裁平成16年10月14日第一小法廷決定における裁判官才口千晴の反対意見、最高裁平成21年9月30日第二小法廷決定における今井功裁判官の反対意見等参照)。
[15]3) そもそも上記最高裁平成7年7月5日大法廷決定でも多くの反対意見が述べられている上、多数意見も当時の社会情勢等に照らして著しく不合理なものではないと判示したに過ぎないところ、既に当該決定から15年以上が経過し、その間、本規定の憲法適合性について判断をするための考慮要素となるべき社会情勢、家族生活や親子関係の実態、我が国を取り巻く国際的環境等は大きく変化した。
[16] まず、相続財産について、農業を営む家族に典型的にみられるような、家族の構成員により協働形成された財産における潜在的持分を被相続人に死亡を契機に分配するといった形態が減少し、被相続人が個人で形成した財産の分配といった色彩が強いものが増えているが、これは、相続財産や相続自体の社会的意義の変化というべきである。
[17] 次に、少子高齢化の進行や、シングルライフ、事実婚や非婚の増加傾向がいわれ、実際に非嫡出子が増加傾向(厚生労働省の人口動態統計によれば、非嫡出子の出生割合は平成7年には出生総数の1.2%であったのが、平成13年には1.7%、平成21年には2.1%に増加している)にあることなど、家族や結婚に関する価値観が変化している。
[18] 更に、我が国が昭和54年に批准している市民的及び政治的権利に関する国際規約(いわゆる「B規約」)26条等は出生によるいかなる差別も禁止していること、同様に平成6年に批准した児童の権利に関する条約2条1項も同様の規定をおいていること、平成13年にフランスにおいて姦生子(婚姻中の者がもうけた非嫡出子)の相続分を嫡出子の2分の1とする旨の規定が廃止されたように、嫡出子と非嫡出子の相続分を平等とすることが世界的な趨勢となっていること、これを受けて、我が国に対し、国際連合の諸委員会から嫡出子と非嫡出子の相続分を平等化するよう重ねて勧告がされていることなど、我が国を取り巻く国際的環境も大きく変化している。
[19] 加えて、本規定の存在自体が、非嫡出子が嫡出子より劣位の存在であるという印象を与え、非嫡出子に対する社会生活上の差別的視線を生む重大な要因となっているとの問題点が強く指摘されている。
[20] こうした諸事情の変化等を総合考慮した場合、現時点では、もはや本規定の存在意義は失われたと思われる状況に至っている(最高裁平成15年3月31日第一小法廷判決中の島田仁郎裁判官の補足意見及び深澤武久裁判官の反対意見、最高裁平成21年9月30日決定における竹内行夫裁判官の補足意見等参照)。
[21]4) この点に対する抜本的解決のためには、できる限り早い時期に法律の改正によって救済すべきであり、実際に昭和54年には、法制審議会民法部会身分法小委員会の審議を踏まえて、「非嫡出子の相続分は嫡出子のそれと同等とする」旨の改正要綱試案が公表されたが、改正が見送られた。さらに平成6年に同趣旨の改正要綱試案が公表され、平成8年2月の法制審議会総会において同趣旨の法律案要綱が決定され、法務大臣に答申されたが、法案の国会提出は見送られて、現在に至っている。上記大法廷決定の当時は、改正要綱試案に基づく審議が法制審議会において行われており、改正が行われることが見込まれていた時期であった。ところが、法制審議会による上記答申以来十数年が経過したが、法律の改正は行われないまま現在に至っているのであり、もはや立法を待つことは許されない時期に至っているから、現に権利を侵害されている原審相手方fの権利救済のためには、現段階で直ちに司法における救済が図られねばならない。
[22]5) なお、平成××年××月×日付○○新聞では、平成23年8月24日付で民法900条4号但書前段が違憲であるとの決定が下され、同決定は確定したとの報道がなされている(乙第6号証)うえ、非嫡出子に対する差別的取り扱いについて、最高裁平成20年6月4日大法廷判決が国籍法第3条1項を違憲と判断していることに鑑みれば、もはや同規定が違憲であることは社会的に明白というべき時期にあるから、本手続においても、本規定を違憲無効とした相続分の扱いがなされるべきである。
[23]6) 以上より、本規定は憲法14条1項に違反して無効とされ、原審相手方fの相続分は、原審申立人a、同bらと同様(具体的相続分は、原審申立人a及び同bにつき各30分の8、同c及び同dにつき各30分の4、原審相手方e及び同fにつき各30分の3)とした遺産分割がなされるべきである。
[24]7) なお、原審の認定によれば、本件手続で対象とされるみなし相続財産の額は3億3131万7653円とされているところ、原審相手方fの具体的相続分は3313万1765円となり、ここから特別受益に相当する2440万0000円を控除すると、未だ873万1765円を受領しうる資格があることになる。

[25] よって、原審判を取消、抗告の趣旨記載のとおりの裁判を求める。
以上

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