第三者所有物没収違憲判決
第一審判決

関税法違反未遂被告事件
福岡地方裁判所小倉支部
昭和30年4月25日 判決

被告人 中村数一 外1名

■ 主 文
■ 理 由

■ 参照条文


 被告人中村数一を懲役6月に、被告人中村俊弘を懲役4月に各処する。但し何れも3年間右刑の執行を猶予する。
 被告人両名に対し司法巡査の差押に係る機帆船大栄丸(17.5屯30馬力)1隻及判示別表目録記載の物件並ジヨンベルベツト18反は何れも之を没収する。
 訴訟費用は全部被告人両名の連帯負担とする。


[1] 被告人両名は共謀の上、韓国向けに貨物を密輸出しようと企て所轄税関の輸出免許を受けないで、昭和29年10月5日頃大阪港尻無川岸壁で機帆船大栄丸(17.5屯30馬力)に別紙目録記載の貨物49梱包(原価約410万円)を積載し下関港え回航した上、同月11日頃右大栄丸にジヨンベルベツト18反を積載、同日同港を出航し博多沖合相の島附近海上において韓国向けの漁船蛭子丸に積替えようとしたが途中下関市六連島沖海上で時化に遭つたためその目的を遂げなかつたものである。

(証拠 省略)

[2] 法に照すと被告人等の判示所為は関税法第111条第2項第1項、刑法第60条に該当するから所定刑中懲役刑を選択しその刑期の範囲内で被告人中村数一を懲役6月に、被告人中村俊弘を懲役4月に各処し、情状に因り刑法第25条に従い何れも3年間右刑の執行を猶予し、司法巡査の差押に係る機帆船大栄丸は本件犯罪行為の用に供した船舶であつて被告人中村俊弘の名義に於て所有し被告人両名の共同占有に係るものであり又税関職員の差押に係る主文記載(判示別表以外にジヨンベルベツト18反)の貨物は本件犯罪に係る貨物であつて犯人以外の者の所有に係るけれども前記挙示の各証拠に依れば本件犯罪が行われることをあらかじめ知らないで本件犯罪が行われた時から引続き所有しているものとは認められないから関税法第118条第1項に依り夫々被告人両名に対し之を没収し、訴訟費用は刑事訴訟法第181条第1項本文第182条に依り被告人両名の連帯負担とすべきである。

(別紙目録 省略)

 仍て主文の通り判決する。
第118条第1項 第109条から第111条まで(禁制品を輸入する罪、関税を免かれる等の罪、許可を受けないで輸出入する罪)の犯罪に係る貨物、その犯罪行為の用に供した船舶若しくは航空機又は第112条(密輸貨物の運搬等をする罪)の犯罪に係る貨物(以下この条において「犯罪貨物等」という。)は、没収する。但し、犯罪貨物等が犯人以外の者の所有に係り、且つ、その者が左の各号の一に該当する場合には、この限りでない。
 一 第109条から第112条までの犯罪が行われることをあらかじめ知らないでその犯罪が行われた時から引き続き犯罪貨物等を所有していると認められるとき。
 二 前号に掲げる犯罪が行われた後、その情を知らないで犯罪貨物等を取得したと認められるとき。

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