小売市場許可制合憲判決
第一審判決

小売商業調整特別借置法違反被告事件
東大阪簡易裁判所 昭和42年(ろ)第16号
昭和43年9月30日 判決

被告人 甲乙産業株式会社(仮名) 外1名

■ 主 文
■ 理 由


 被告人甲乙産業株式会社および被告人丙野太郎を各罰金15万円に処する。
 被告人丙野太郎が右罰金を完納することができないときは、金500円を1日に換算した期間同被告人を労役場に留置する。
 訴訟費用は両被告人の連帯負担とする。

 被告人甲乙産業株式会社は、茨木市大池1丁目14番8号に本店を置き、市場経営等を業とする法人であり、被告人丙野太郎は同社の代表者として右業務全般を統轄しているものであるが、被告人丙野は被告人会社の業務に関し、大阪府知事の許可を受けないで、小売商業調整特別措置法所定の指定区域内である東大阪市鴻池624番地において鉄骨モルタル塗平家建(一部2階建スレート葺)1棟(店舗数49)を建設し、小売市場とするために、右建物を別紙一覧表の各記載のとおり野菜商4店舗、生鮮魚介類商3店舗を含む49店舗を、その店舗の用に供する小売商人丁村次郎他47名に貸し付けたものである。
被告人甲乙産業株式会社に対し
 小売商業調整特別措置法3条1項、同法施行令1条、2条、小売商業調整特別措置法22条1号、24条、刑事訴訟法181条1項本文、182条。

被告人丙野太郎に対し
 小売商業調整特別措置法3条1項、同法施行令1条、2条、小売商業調整特別措置法22条1号、刑法18条、刑事訴訟法181条1項本文、182条。
 弁護人は、小売市場の設立を規制する小売商業調整特別措置法(以下本法という。)3条1項、同法施行令1条、2条、並びに本法5条1号に基く大阪府小売市場許可基準内規は、いずれも憲法14条1項、22条1項、25条に反する違憲の法規であるから、これらの適用を受けた被告人らの行為は、いずれも無罪であると主張するが、憲法の保障する職業選択の自由は絶対無制限な自由ではなく、公共の福祉による制限に服するものであつて、他の自由権とは異り、その性質上国家目的達成、あるいは政策的配慮により、基本的人権をその根抵において覆えさない以上、予め制限を加えることが可能であると解する。そこで本法をみるに、その1条において、この法律は小売商の事業活動の機会の適正確保、小売商業の正常な秩序を阻害する要因の除去、国民経済の健全な発展に寄与することを目的とすると謳つており、本法3条1項および同法施行令2条は、その目的達成のための最小必要限度の制約を規定しているものであつて、これをもつて右条項が憲法22条1項に違反して無効なものということはできない。また、本法3条1項は同法施行令1条による指定地域のみに適用されるのであるが、右指定が著しく不合理なものであれば格別、これについても本法1条の目的達成のため、その地域の特殊性からくる合理的な指定である以上、直ちに右規定が憲法14条1項に違反するものということはできない。なお、本法ならびに同法施行令および大阪府小売市場許可基準内規が憲法25条に違反して無効であると主張するが本法等が日常の生活必需品である野菜、生鮮魚介類等の小売商の営業そのものの自由を制限しているものではないことは明瞭であるから右主張は理由がない。よつて弁護人の主張は採用しない。
 よつて主文のとおり判決する。

別紙一覧表(略)

鴻池銀座デパート店舗配置見取図(略)

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