研究概要

藻類の生存戦略を「光反応行動」から明らかにする

生物が外部からの刺激に応答して自律的に行動を変容させることは、いかにも生物らしい特徴の1つです。私たちの研究材料である遊泳性の微細藻類の多くは、光合成に適した環境に移動するために、走光性などの光反応行動を示します。真核藻類のモデルである単細胞緑藻クラミドモナスは眼点で光を感受し、2本の繊毛(鞭毛)の打ち方を調節して方向転換します。この過程は光感受後1秒以内に起こる迅速なもののため、生物の光反応行動の良いモデルとなっています。私たちは、クラミドモナスや、その近縁の多細胞緑藻ボルボックスの仲間を材料に、
(1)光の方向・強度等の情報は細胞内でどのように処理されているのか
(2)その情報はどのようにして繊毛運動を調節するのか
(3)光反応行動は藻類の生存にどのように貢献するのか
の3つの疑問に分子レベルで回答することを目指しています。これは、繊毛運動の生物物理学、光合成の植物生理学など、多様な分野にまたがる学際的な基礎研究です。
そして、藻類は重要な一次生産者です。私達の研究の成果が、有用藻類増産や有害藻類ブルーム問題解決などの社会貢献につながる可能性も模索しています。

オープンキャンパスなどでは、クラミドモナスやその走光性、顕微鏡像を利用した微生物アートを行います。「きれい」「面白い」を入り口にした生物学の啓蒙活動を行うだけでなく、アートで見られた不思議な現象をヒントにした研究も行い、「遊び」と「研究」の相互作用を楽しみます。

ニュース

  • 2024.10.26
    京都大学北部キャンパス益川ホールで開催された 第39回ユーグレナ研究会シンポジウムにおいて、若林が「光行動から紐解くボルボックス目緑藻の多細胞化に伴う生存戦略の変遷」と題する招待講演を行いました。
  • 2024.10.14
    クラミドモナスのアンモニウムイオンに対する走化性に関する共同研究のプレプリントが公開されました。Louisiana State UniversityのKato Labとの共同研究です。
  • 2024.10.7
    ボルボックス目藻類の多細胞化と、繊毛運動調節機構の変化と、レイノルズ数の連関に関する論文がプレスリリースされました。論文の日本語解説ですので、ぜひご覧ください。学部学生向けのやや短い解説は生命科学部ウェブサイトに掲載されています。
  • 2024.9.16
    9/14(土)〜16(月・祝)に宇都宮大学陽東キャンパスおよびライトキューブ宇都宮で行われた日本植物学会第88会大会において、若林がクラミドモナス走化性に関する口頭発表を、また、昨年度東工大の研究室に国内サバティカルで参加した法政大学の植木紀子教授が、ボルボックス目多細胞緑藻の一種パンドリナの光行動能と光防御能に関するポスター発表を行いました。
  • 2024.9.14
    BMC Ecology and Evolution誌にMulticellularity and increasing Reynolds number impact on the evolutionary shift in flash-induced ciliary response in Volvocalesと題する論文が掲載されました。ボルボックス目緑藻が多細胞化進化とともに変化させてきた繊毛運動調節機構と、多細胞化=大型化につれて変化してきた流体環境(レイノルズ数)の関係について考察した論文です。昨年度東工大の研究室に国内サバティカルで参加した法政大学の植木紀子教授と若林の共同責任著者論文です。
  • 2024.8.21
    研究補助員の髙井恵理子さんがメンバーに加わりました。
  • 2024.8.9
    Journal of Biological Chemistry誌にProton gradient across the chloroplast thylakoid membrane governs the redox regulatory function of ATP synthaseと題する葉緑体ATP合成酵素のレドックス制御とチラコイド膜を介したpH勾配の連関に関する共著論文が掲載されました。前職で久堀徹教授が主指導教員であった最後の博士修了学生のひとり、関口敬俊さんの論文です。
  • 2024.8.3
    科学研究費補助金「ひらめき☆ときめきサイエンス」の事業によるプログラムで、高校生の皆さんとクラミドモナスを使った実験を行いました。研究室メンバーもティーチングアシスタントとして活躍しました。詳しくはこちらをご覧ください。
  • 2024.7.13
    第2期の分属学生として6名がメンバーに加わりました。
  • 2024.6.28
    6月24日〜28日に京都国際会館で開催されたIUPAB2024(第21回国際生物物理会議・第62回日本生物物理学会合同年会)に若林が参加しました。私達の研究室からの発表はありませんでしたが、OISTの中澤友紀博士らとの共同研究のポスター発表に共著で加わりました。講義期間中ということで隙間時間だけの参加でしたが、多くの学びがありました。
  • 2024.6.20
    8月3日(土)のオープンキャンパスと同時開催で、高校生を対象に「藻の平泳ぎが人類を救う?緑藻クラミドモナスのゾンビ実験と走光性お絵描き」と題した公開実験を行います。これは、科学研究費補助金「ひらめき☆ときめきサイエンス〜ようこそ大学の研究室へ」の助成を受けた企画です。私達が研究材料にしている緑藻クラミドモナスの運動を題材にして、あの手この手で観察・実験して楽しみながら、生物学研究の一端に触れていただきます。興味のある高校生の皆さん、ぜひご参加ください。詳しい説明はこちら。ご応募はこちら(日本学術振興会ウェブサイト)からどうぞ。
  • 2024.6.9
    オープンキャンパスの実験コーナーにボルボックスと走光性実験セットを提供しました。好評だったようで、嬉しいです。できるだけオープンキャンパス恒例企画にできるように準備します。
  • 2024.5.24
    共同研究しているLouisiana State Universityの大学院生Alexis Strainさんが来訪し、ディスカッションしました。学生さん達も英会話を頑張りました。
  • 2024.4.2
    研究室の名前を光応答細胞生物学研究室から細胞行動学研究室に変更しました。
  • 2024.3.31
    東工大メンバーの、学部4年の高野真由さんが卒業、修士2年の猪川玲夫さん、上野恵資さん、前川優太さんが修了、研究員の植木紀子博士が1年間の国内サバティカルを終えて4/1から法政大学教授としての本務に復帰、特任助教の苗加彰博士が4/1から中央大学理工学部生命科学科助教として転出します。東工大若林グループ、これにて解散です。1年間、東工大の研究室の維持にご理解とご協力をくださった化学生命科学研究所の皆様、特に学生を受け入れてくださった田中・吉田研の皆様、審査に関わってくださった生命理工学院とライフエンジニアリングコースの先生方、ほか、東工大でお世話になった全ての皆様に心より御礼申し上げます。ありがとうございました。
  • 2024.3.22
    学部代表で計画提出した科研費ひらめき☆ときめきサイエンスが採択されました。おそらく8月のオープンキャンパスで公開実験等を行います。詳細はまたお知らせします。
  • 2024.3.22
    3月21〜22日に東北大学片平さくらホールで開催された学術変革領域A「ジオラマ行動力学」第5回領域全体会議において、若林が口頭発表およびポスター発表しました。
  • 2024.3.14
    東工大に残った若林研メンバーが参加した、東工大化学生命科学研究所野球大会において、田中・吉田研、北口研との合同チームが優勝しました。決勝戦はエースの修士2年猪川玲夫さんの完封勝利です。おめでとうございます。
  • 2024.3.13
    東工大4年生の高野真由さんが卒業研究発表会で最優秀賞を受賞しました。おめでとうございます。(東工大生命理工学院の卒研発表会は、1学年百数十人の学生がおおまかな研究分野ごとに4つのグループに分かれて行われます。最優秀賞は各グループの教員投票の得票1位の4名に贈られます。)
  • 2024.3.1
    Cytoskeleton誌に Temperature-dependent augmentation of ciliary motility by the TRP2 channel in Chlamydomonas reinhardtiiと題するクラミドモナスの走温性に関する共著論文が掲載されました。芝浦工大の吉村建二郎教授のグループとの共同研究です。
  • 2024.2.29
    学術変革領域Aジオラマ行動力学の後期公募班に、前期に引き続き採択されました。2年間頑張ります。
  • 2024.1.9
    1月5〜7日に理研神戸で開催された生体運動研究合同班会議において、植木研究員(法政大教授・サバティカル)がボルボックス目緑藻類の多細胞進化における繊毛運動調節様式の変化と流体環境の変化の連関について、若林がクラミドモナスの繊毛運動異常による走光性変異株の単離について、それぞれ発表しました。
  • 2023.12.23
    ボルボックス目緑藻類の多細胞進化における繊毛運動調節様式の変化と流体環境の変化の連関についての プレプリントが公開されました。
  • 2023.12.11
    若林が滋賀県立水口東高等学校において模擬授業を行いました。
  • 2023.11.15
    名古屋国際会議場で開催された第61回日本生物物理学会年会に植木紀子博士(東工大研究員/法政大教授・サバティカル)と若林が参加し、植木博士がボルボックス目緑藻類の繊毛運動調節様式とレイノルズ数の関係についてポスター発表(2Pos086)を行いました。発表コアタイム以外にも多くの方が来てくださり、大盛況でした。
  • 2023.11.1
    若林研究室のウェブサイトを公開しました。今後も少しずつ細部をアップデートします。
  • 2023.9.26
    高知オーテピア/オンラインハイブリッドで開催された第17回クラミドモナス研究会において、東工大メンバーの特任助教苗加彰博士、研究員植木紀子博士(法政大教授・サバティカル)、修士2年の猪川玲夫さん、上野恵資さん、学部4年の高野真由さんがそれぞれポスター発表を行いました。また、若林がオンラインで口頭発表を行いました。
  • 2023.9.15
    9月14〜15日に北大クラーク会館/オンラインハイブリッドで開催された学術変革領域A「ジオラマ行動力学」第4回領域全体会議において、若林がオンラインで口頭発表しました。
  • 2023.9.15
    iScience誌に Mechanoresponses mediated by the TRP11 channel in cilia of Chlamydomonas reinhardtiiと題する、クラミドモナス繊毛の力覚に関する共著論文が掲載されました。芝浦工大の吉村建二郎教授のグループとの共同研究です。共同プレスリリースはこちら
  • 2023.9.14
    Plant and Cell Physiology誌にMolecular bulkiness of a single amino acid in the F1 α subunit determines the robustness of cyanobacterial ATP synthaseと題するシアノバクテリアATP合成酵素のαサブユニット1アミノ酸置換による活性変化に関する共著論文が掲載されました。前職で久堀徹教授が主指導、若林が副指導教員だった修士の町田亮人さん(現 東工大博士課程)の論文です。
  • 2023.7.24
    若林研第1期生の分属(産業生命科学科4名、先端生命科学科1名)が決定しました。
  • 2023.7.4
    Scientific Reports誌にCells collectively migrate during ammonium chemotaxis in Chlamydomonas reinhardtiiと題するクラミドモナスのアンモニア走化性に関する共著論文が受理されました。米国ルイジアナ州立大学のDr. Naohiro Katoらとの共同研究です。1st authorのGabela Nelsonさんは、この内容を発表したThe 20th International Conference on the Cell and Molecular Biology of Chlamydomonasににおいて1st Place Oral Presentation Awardを受賞しました。
  • 2023.6.30
    科研費・挑戦的研究(萌芽)に採択されました。
  • 2023.6.5
    米国プリンストン大学で開催されたThe 20th International Conference on the Cell and Molecular Biology of Chlamydomonasにおいて、若林および東工大メンバーの研究員植木紀子博士(法政大教授・サバティカル)がそれぞれ口頭発表を行いました。
  • 2023.4.1
    若林が京都産業大学生命科学部産業生命科学科教授に着任しました。同時に、東京工業大学科学技術創成研究院化学生命科学研究所特定教授として東工大に残る学生の指導をすることになりました。

京都産業大学 生命科学部 産業生命科学科

若林研究室
(細胞行動学研究室)

〒603-8555 京都市北区上賀茂本山

Wakabayashi Lab

Faculty of Life Sciences,
KYOTO SANGYO UNIVERSITY

Motoyama, Kamigamo, Kita-ku, Kyoto, 603-8555 JAPAN

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