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建築確認処分取消等請求事件(第1事件),追加的併合申立控訴事件(第2事件) 東京高等裁判所 平成20年(行コ)第217号 平成21年1月14日 第9民事部 判決 口頭弁論終結日 平成20年9月29日 両事件控訴人 (原告) X1~X21 第1事件控訴人(原告) X24、X25 上記23名訴訟代理人弁護士 川上英一 飯島康博 服部知之 上記23名訴訟復代理人弁護士 藤田祐子 被控訴人(被告) 東京都新宿区 代表者兼第1事件処分行政庁 東京都新宿区長 中山弘子 第1事件処分行政庁 東京都新宿区建築主事 新井建也 第2事件裁決行政庁 新宿区建築審査会 指定代理人 A 外5名 ■ 主 文 ■ 事 実 及び 理 由 1 控訴人X1,同X3,同X6及び同X11を除く控訴人らの控訴に基づき, (1) 原判決中東京都新宿区建築主事が新日本建設株式会社及び株式会社ソフトアイに対して平成18年7月31日付けでした建築確認処分(新都建(確)第116号)の取消請求を棄却した部分を取り消す。 (2) 上記建築確認処分を取り消す。 2 控訴人X1,同X3,同X6及び同X11を除く控訴人らのその余の控訴並びに控訴人X1,同X3,同X6及び同X11の控訴をいずれも棄却する。 3 訴訟費用は,控訴人X1,同X3,同X6及び同X11と被控訴人の間においては,被控訴人に生じた控訴費用のうち2分の1を同控訴人らの負担とし,その余の控訴費用は各自の負担とし,その余の控訴人らと被控訴人との間においては,第1,2審を通じ,同控訴人らに生じた費用の2分の1を被控訴人の負担とし,その余は各自の負担とする。 1 原判決を取り消す。 2 東京都新宿区長が株式会社都市デザインシステム及び株式会社ソフトアイに対して平成16年12月22日付けでした東京都建築安全条例4条3項に基づく認定処分(16新都建建審第(認)76号)を取り消す。 3 東京都新宿区建築主事が新日本建設株式会社及び株式会社ソフトアイに対して平成18年7月31日付けでした建築確認処分(新都建(確)第116号)を取り消す。 4 東京都新宿区建築主事が新日本建設株式会社に対して平成18年7月31日付けでした各工作物確認処分(新都建(確)6号及び同7号)をいずれも取り消す。 5 新宿区建築審査会が第2事件控訴人らに対して平成19年6月11日付けでした裁決(18新建審請第4号)を取り消す。 6 訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人の負担とする。 [1]1 東京都新宿区長(以下「新宿区長」という。)は,株式会社都市デザインシステム及び株式会社ソフトアイ(以下「ソフトアイ」という。)に対して東京都建築安全条例(以下「本件安全条例」という。)4条3項に基づく認定(以下「本件認定」という。)をし,さらに,東京都新宿区(以下「新宿区」という。)建築主事が,新日本建設株式会社(以下「新日本建設」という。)及びソフトアイに対して本件認定に係る原判決別紙物件目録記載1の建築物(以下「本件建築物」という。)の建築計画に係る建築基準法6条1項に基づく建築確認処分(以下「本件建築確認」という。),並びに新日本建設に対して本件建築物の敷地(以下「本件敷地」という。)内の原判決別紙物件目録記載2の工作物(以下「本件工作物6号」という。)及び同目録記載3の工作物(以下「本件工作物7号」といい,本件工作物6号と併せて「本件各工作物」という。)の各築造計画に係る同法88条1項,6条1項に基づく各工作物確認処分(以下,本件工作物6号に係る確認処分を「本件工作物確認6号」,本件工作物7号に係る確認処分を「本件工作物確認7号」といい,両者を併せて「本件各工作物確認」という。)をしたため,本件敷地の周辺に居住などする控訴人らが,新宿区建築審査会(以下「審査会」という。)に対し,本件認定,本件建築確認及び本件各工作物確認の取消しを求める審査請求をしたところ,審査会は,これを棄却する裁決(以下「本件裁決」という。)をした。 [2] 本件は,控訴人ら並びにX23管理組合(以下「管理組合」という。),X22,X26及びX27(以上を併せて「一審原告ら」ということがある。)が,被控訴人に対し,本件認定,本件建築確認及び本件各工作物確認並びに本件裁決の各取消しを求めた事案である。 [3] 原判決は,①本件認定の取消しを求める部分,②本件建築確認の取消しを求める部分のうち控訴人X1,同X3,同X6,同X11及び管理組合の請求に係る部分,③本件工作物確認6号の取消しを求める部分のうち控訴人X1,同X2,同X3,同X4,同X5,同X6,同X8,同X9,同X10,同X11及び管理組合の請求に係る部分,並びに④本件工作物確認7号の取消しを求める部分のうち控訴人X5を除く一審原告らの請求に係る部分をいずれも却下し,一審原告らのその余の請求をいずれも棄却したので,控訴人らが控訴した(なお,一審原告らのうち,管理組合,X22,X26,X27は控訴しなかった。)。 [4]2 本件における法令の定め,前提事実,争点及び当事者の主張の要旨は,下記3に当事者の当審における主張を付加するほか,原判決の「事実及び理由」欄の「第2 事案の概要」の2項ないし5項(原判決6頁20行目から同34頁13行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。 ア 本案前の争点について (ア) 出訴期間について [5]a 行政不服審査法14条1項の「処分があったことを知った日」とは,処分の事実及びその内容を現実に了知した日である。本件においては,被控訴人から発せられた安全認定という処分があった事実及びその内容を知った日であって,何となく近くにマンションが建つらしいという噂話の類を知った日ではない。 [6]b(a) 処分庁及びその上級庁である審査会は, 「安全認定によって直ちに建築行為を開始し得るわけではなく,建築確認処分がされた際に,当該建築確認処分により法律上保護された利益を侵害された者は,建築確認処分に対して抗告訴訟を提起すればよい。」として,安全認定の処分性を否定し,「安全認定そのものの取消しを求めることは,そもそも法制度上できない。」と説明していた。 [7](b) また,前回裁決においては,審査会が裁決で教示まで行って管理組合の審査請求適格を認めていた。 [8](c) これらは,処分庁や審査会が間違った教示をしていたことにほかならない。そして,これらのことは,管理組合のみならず,本件マンションに居住する控訴人らや周辺に居住する控訴人らの等しく知るところとなっていたのであるから,控訴人らが直接審査請求をしなくても本件認定の取消しを求める争いの目的は達成できると考えたとしても特段不思議なことではないのである。したがって,行政不服審査法18条,19条の類推適用により,本件認定処分の取消しを求める審査請求期間の起算点は,平成18年9月8日の前回第1審判決によって本件認定が処分に当たるとの司法判断が示された時と解すべきである。 (イ) 原告適格について [9] 火災や大地震の際にどの程度の被害がどの程度まで波及するかは,当該地域の住宅の密集の度合い,周辺道路の幅員状況,消火活動の困難さの度合い等,諸般の要因を総合的に勘案しなければ結論は出ないのであって,建築物の高さと控訴人ら宅までの距離を単純比較して結論が出るものではない。 イ 本案の争点(本件建築確認の違法性)について (ア) 本件認定の違法について a 違法性の承継について [10] 本件安全条例4条3項の要件を充足せず,したがって,4条1項が要求する接道義務を充足していないという違法は,本件認定と本件建築確認に共通するものであるから,本件認定に対し訴訟の途を開き,その違法性を攻撃し得るからといって,本件建築確認取消しの訴えにおいて,その違法を攻撃し得ないと解すべきではない。本件認定について,審査請求,抗告訴訟を認めているのは,直ちにその違法の場合に行政庁にその是正の機会を与え,権利者の権利保護の簡便な途を開いただけであって,出訴期間内において訴訟上の手続を執らなかったからといって,本件建築確認取消訴訟において,先行する本件認定の違法を攻撃する機会を失わせる趣旨であるとは解されない。本件認定に対し審査請求等をせず,出訴期間を徒過したときは,当事者はもはや本件認定に対しその取消しを請求する権利を失うのであるから,その意味では確定的効力があるのであるが,その確定的効力は本件認定に存する違法を違法なしとして確定する効力があるものではない。 [11] また,処分庁自身も本件認定の段階では建築計画は確定していないと弁明し,審査会自身も本件認定の違法性については建築計画が確定して本件建築確認がされた際に,審査請求ないし抗告訴訟が提起でき,その中で主張すればよいと述べていたという経緯に照らせば,本訴において,本件認定の違法性を主張できないとすることは,控訴人らの正当な主張立証の機会を全面的に奪うものである。 b 本件認定が違法であること (a) 本件安全条例5条違反について [12] 本件安全条例5条の基準は,申請者の利益のために明確な基準として定められていなければならないことはいうまでもないが,それだけでなく,当該処分によって不利益を受ける申請者以外の第三者が存在するような場合には,そのような第三者にとっても明確な基準として定められていなければならない。そうであってこそ,本件安全条例1条の目的である区民の利益保護,ひいては建築基準法1条の国民の生命,健康,財産の保護を全うできるのである。したがって,申請者以外の第三者も本件認定の違法事由として審査基準が設定されていなかったことを主張し得るものである。 (b) 特殊建築物該当性判断の遺脱 [13] 本件安全条例10条は,特殊建築物について安全規制を規定しているところ,「路地状部分のみによって道路に接する建築計画」の場合,まず先決法律要件として,申請建築計画が特殊建築物か普通建物かが判断されなければならない。しかし,本件認定は,新宿区長において先決法律要件を判断せず,建築主の申請に基づいて普通建物として本件認定をしたもので違法である。 [14](c) 本件安全条例4条1項は,避難,消火及び救助活動を迅速かつ適切に行うために8メートル以上道路に接することが必要であるとするものであるところ,同条3項の認定をするためには,同条1項と同等以上の安全性が確保されていなければならない。しかし,本件建築物に火災が発生した場合には,避難路は前面道路に通ずる敷地内通路(4メートル)に頼らざるを得ないところ,消防活動と居住者の避難行動が交錯し,大きな混乱が生じ,いずれの目的も達成できない事態となることが予想され,8メートル以上道路に接する場合と同等以上の安全性が確保されているということはできない。 (イ) 1敷地1建物の原則について [15] エキスパンションジョイントは,構造体を物理的に分離しておく方法によって,構造体が相互に力学的影響を及ぼし合わないようにするところに本質があるのであり,だから建築基準法施行令81条2項においても,構造計算に当たっては,エキスパンションジョイント等の構造方法のみで接している当該建築部分は別な建物とみなすとされているのである。したがって,エキスパンションジョイントによる接続は構造上の一体性の根拠となり得るものではない。 (ウ) 本件建築物の主要用途について [16] 共同住宅であるかどうかは,「本件建築物が不特定又は多数の人の通行の用に供する当該建築物の住戸の玄関に至る廊下,階段等の共用部分を有しているかどうか」を形式的に判断するだけではなく,根本にさかのぼって「規模,形状等を含め,本件建築物全体を総合的に勘案して,災害時に住人等が安全な場所まで避難するのに困難を生ずるおそれがあるかどうか」を実態的に判断すべきである。本件建築物の災害時における避難の安全性を判断するに,104~111及び204~211の16戸の住人は,災害時には消防活動用空地と被控訴人が主張する部分より奥の敷地部分を通行して避難しなければならないところ,当該奥の敷地は,幅員1.7~2.2メートル程度であり,これは通常の共同住宅の廊下よりも狭隘であり,形も入り組んでいるから,住人等が錯綜して避難に困難を生ずるおそれがあり,安全を確保できないというべきである。 ア 本案前の争点について (ア) 出訴期間について [17]a 本件審査請求に行政不服審査法14条3項ただし書の正当な理由がないことは以下の事情から明らかである。 [18](a) 本件建築物の建設については,周辺住民らによる反対運動が平成16年11月頃から本格化しており,本件認定が行われたことについても周辺住民らに知れ渡っていた。 [19](b) 前回審査請求において,控訴人らが管理組合とともに審査請求人になることは十分に可能であった。 [20](c) 控訴人らは,平成18年9月8日の前回第1審判決の言渡しの前の同月5日に本件認定の取消しを求める本件審査請求を提起しているのであるから,本件認定の取消しを求める審査請求を審査請求期間内に提起することもできたはずである。 [21](d) 審査会は,前回裁決において,本件認定に処分性はないとの判断を示したが,控訴人らは,本件認定に処分性があるという見解に立っており,前回裁決の判断を認めたことはない。 [22](e) 控訴人ら代理人が作成した平成18年3月20日付けの「下落合屋敷森の開発に関する公開質問状(その2)」には, 「近隣住民の多くは,……安全認定処分の取消訴訟を東京地裁に行っています。さらに建築確認が下りればその取消のための審査請求や訴訟を提起しようとしています。」と明記されている。 [23](f) 控訴人ら代理人が作成した平成18年3月20日付けの「上申書(その2)」には, 「上申人らは,……本件安全認定処分を違法として東京地裁において裁判中でありますが」と明記されている。 [24]b 控訴人らに行政不服審査法18条,19条が類推適用されるべき合理的根拠はない。新宿区長も審査会も,控訴人らに対して誤った教示やそれと同視されるべき行為をしたことはない。さらに,控訴人らは,前回審査請求において審査請求人ではなく,前回訴えにおいて原告でもなかったのである。控訴人らは,審査請求期間の起算点を前回第1審判決のあった平成18年9月8日とすべきであると主張するが,それ以前の同月5日に本件認定の取消しを求める本件審査請求を提起しているのであり,同主張と相容れない行動をしている。新宿区長は,前回裁決まで管理組合の審査請求適格を認めていたという事実はないし,審査会も前回裁決において行政事件訴訟法46条1項に基づいて前回裁決の取消訴訟を提起できる旨教示したものにすぎないのであって,教示をしたことから管理組合の審査請求適格を認めていたものではない。 (イ) 原告適格について [25] 本件建築物と控訴人らの居住地との位置関係に照らして,原判決が本件建築確認等の取消について原告適格がないとした控訴人らには,原告適格がないことは明らかである。 イ 本案の争点(本件建築確認の違法性)について (ア) 本件認定が違法でないことについて a 違法性の承継について [26] 違法性の承継が認められるか否かは,一連の手続において独立の争訟の対象となるような複数の行政処分を設けている立法趣旨がどのようなものであるかという各行政実体法規の解釈問題であるところ,本件安全条例4条3項の立法趣旨等は次のとおりである。すなわち,東京都建築安全条例の一部を改正する条例(平成11年3月19日東京都条例第41号)による改正前の本件安全条例(以下「改正前安全条例」という。)4条3項は,「前2項の規定は,建築物の周囲に広い空地がある場合その他土地及び周囲の状況により安全上支障がない場合においては,適用しない。」と規定しており,建築主事が建築基準法6条1項の建築確認をする際に改正前安全条例4条3項に該当するかどうかの判断をしていた。 [27] しかし,平成10年法律第100号による建築基準法の改正で,指定確認検査機関による確認検査制度が導入されたことにより,上記安全条例の一部を改正する条例は,建築主事が判断してきた「ただし書」等の規定のうち,敷地周辺の状況などを含めて判断することが必要な規定の適用については,適正な審査が必要であるため,知事の認定によることとした(これを以下「本件改正」という。)。そこで,本件安全条例4条3項においても,敷地周辺の状況などを含めて判断することについて適正な審査が必要であるとして,知事の認定とされたものである。 [28] そして,この知事の認定は,申請者の法的地位に重大な影響を与えるものであり,申請個々人に対する権利義務を形成し,又はその範囲を確定するものというべきであるから,抗告訴訟の対象となる処分に該当するものと解されている。 [29] 上記のとおりであるから,建築主事又は指定確認検査機関は,本件安全条例4条3項に該当するかどうかの判断については,同項に基づく知事の認定という公定力を有する判断に基づいて建築基準法6条1項の建築確認をすることとなる。したがって,建築主事又は指定確認検査機関が建築基準法6条1項の建築確認をする際において,本件安全条例4条3項に基づく知事の認定が違法かどうかということが問題となる余地はないのであって,これを問題としなければならないとするならば,本件安全条例4条3項に基づく知事の認定は意味がなくなるのであり,本件安全条例4条3項が適正な審査が必要であるために知事の認定とした趣旨を没却することになる。よって,仮に本件認定に違法があったとしても,その違法が本件建築確認に承継される余地はない。また,違法性の承継を認めるか否かは,上記のとおり各行政実体法規の解釈問題であるから,控訴人らの主張する主張・立証の機会の確保の必要性というような事情は違法性の承継を認めるべき根拠となるものではない。 b 本件認定が違法でないこと [30] 新宿区長は,①建築基準法の道路と同じ機能を有する道路状空地(以下「本件通路」という。)が設けられること,②本件建築物は容積率112.3%,建ぺい率42.2%と規模が小さいこと,③本件建築物の周囲に避難通路(以下「本件避難通路」という。)が設けられており,2階にバルコニーや避難梯子を設けて各住戸からそこに出られるようにしていること,④中庭が設置されること,⑤本件建築物が耐火建築物であること,⑥前面道路と本件通路が120度以上の角度で交わり,また,接道の長さが8.9メートルあること等を考慮して,本件認定をしたものであるから,本件認定に違法はない。 (イ) 1敷地1建物の原則について [31] 本件建築物のようなコの字型に配置された建築物については,各部分の壁面を固着すれば,各部分が地震などの揺れに対して相互に影響を及ぼし合い構造耐力上の安全を確保できないため,各部分の壁面を固着しないでエキスパンションジョイントで接続して構造耐力上の安全を確保するのが一般的・合理的であり,通常の工法である。 (ウ) 本件建築物の主要用途について [32] 共同住宅と長屋とは,不特定又は多数の人の通行の用に供する「階段,廊下等の共用部分」を有しているか否かによって区別されるのであり,「区分所有法2条4項の共用部分」を有しているか否かによって区別されるのではないし,多数の者が居住することから直ちに共同住宅であると解すべき合理的根拠はない。控訴人らは,長屋と共同住宅の区別について「規模形状等を含め,本件建築物全体を総合的に勘案して,災害時に住人等が安全な場所まで避難するのに困難を生ずるおそれがあるかどうか」を実態的に判断すべきであると主張するが,上記のような実態的な判断をすべき根拠はなく,また,上記のような不明確・不明瞭な見解によって長屋と共同住宅を区別することは不可能である。 [33] 当裁判所も,本件訴えのうち本件認定の取消しを求める部分は出訴期間を徒過した不適法な訴えであると判断する。その理由は,原判決35頁13行目から22行目までを次のとおり改めるほか,原判決の「第3 争点に対する判断」の1項(原判決34頁15行目から同39頁3行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。 「[34]また,証拠(乙35ないし38)によれば,本件敷地の近隣住民が中心となって平成16年11月ころから本件建築物の建築に反対するトラスト運動が開始され,ホームページを立ち上げ,広くトラスト基金への寄付を求めるなど大規模な反対運動が展開されていたのであり,その過程で,反対運動に関わる周辺住民らの間では、本件認定が行われたことも知れ渡ったものと推認されるところ,本件マンションに居住する控訴人らを除く控訴人らは,いずれも,本件認定に係る建築物の敷地である本件敷地の周辺に居住する者で,本件マンションに居住する控訴人らと共に,本件建築物の建設に反対していた者であると認められるのである(上記トラスト基金のパンフレットには,本件マンションに居住する控訴人X16のほか,控訴人X5,同X2,同X4,同X11,同X6,同X3,同X10が基金メンバーとして記載されている。また,平成18年3月20日付けの区長に対する公開質問状や新宿消防署長に対する上申書では,控訴人X16とともに,控訴人X5,同X2,同X4,同X11,同X7,同X8が上申人として名前を連ねているのである。そして,控訴人X1も,周辺に居住する者であり,一審原告に名を連ねていることからみて,従前からこのような反対運動に関わっていたものと推認される。)。そうすると,本件マンションに居住する控訴人ら以外の控訴人らも,本件マンションに居住する控訴人らと同様に,平成17年1月12日ころには,ないしは遅くとも後記のように本件訴えのため訴訟委任状の作成がされるようになった平成18年3月30日ころまでには,本件認定がされたことを知ったものと推認するのが相当である(なお,本件訴えの訴訟委任状の作成日付けは,控訴人X5,同X8,同X9及び同X10については平成18年3月29日,同X4については同月30日であるから,同人らがその各作成時点で本件認定がされたことを知っていたことは明らかである。)。」[35] 当裁判所も,①控訴人X1,同X3,同X6及び同X11は本件建築確認の取消しを求める訴えにつき原告適格を有しないが,その余の控訴人らは原告適格を有する,②控訴人X7及び本件マンションに居住する控訴人らは本件工作物確認6号の取消しを求める訴えにつき原告適格を有するが,その余の控訴人らは原告適格を有しない,③控訴人X5は本件工作物確認7号の取消しを求める訴えにつき原告適格を有するが,その余の控訴人らは原告適格を有しないものと判断する。その理由は,原判決の「第3 争点に対する判断」の2項及び3項(原判決39頁4行目から同49頁11行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。 [36] そこで,控訴人X1,同X3,同X6及び同X11を除くその余の控訴人ら(以下,この項において単に「控訴人ら」という。)の請求に基づき,本件建築確認の違法性の有無について判断する。 [37]ア 証拠(甲1の1ないし3,甲36,37,乙1,9,10,13,14)及び弁論の全趣旨によると,本件敷地は,別紙図面のように,約34メートルの長さの路地状部分のみによって道路に接しており,最小幅員約4メートルの道路状空地により外部の道路へ通じる計画になっている。接道部分の長さは前面道路に対して現況では8.9メートル(なお,道路境界線とみなされる線との接道の長さは8.169メートル)である。そして,そこに地上3階・地下1階・鉄筋コンクリート造・建築面積805.34平方メートル・延べ面積2823.09平方メートルの建物(ファミリータイプ29戸,ワンルーム1戸の合計30戸からなる。)を建築しようとするものである。建築物の形状はコの字型をしていて,東棟,南棟及び西棟部分からなるところ,3棟の壁面は固着させず,エキスパンションジョイントで接続することとされている。 [38]イ(ア) ところで,本件安全条例の第1章総則には以下の定めが置かれている(なお,続く第2章には,共同住宅などの特殊建築物について制限をより加重する規定が置かれている。)。 (路地状敷地の形態)[39](イ) なお,本件安全条例4条3項の知事の権限は,特別区における東京都の事務処理の特例に関する条例(平成11年東京都条例第106号)により特別区に委任され,新宿区においては新宿区長が行使することとされている(したがって,以下では,知事とあるのはすべて新宿区長を意味することになる。)。 [40]ウ そうすると,本件敷地は,本件安全条例4条1項により,本来,道路に8メートル接しなければならないものである。しかも,本件安全条例3条の趣旨等にも徴すると,本件敷地のように,約34メートルもの路地状部分により道路に接している敷地で,路地状部分が途中から約4メートルの幅員しかなくなるという場合については,前面道路との接道部分が8メートルあるだけでは同項の求める接道の基準を充足していないものといわなければならない。同項の基準を充足するというためには,原則として路地状部分も8メートルの幅員があることを要するというべきである。 [41] したがって,本件建築確認が適法であるというためには,1項適用の例外を定める同条3項に基づく本件認定がされていることが前提となるものである。 [42]ア まず,安全認定処分は,以下のとおり,抗告訴訟の対象となる行政処分に当たるというべきである。すなわち,建築基準法43条1項本文は,「建築物の敷地は,道路(中略)に2メートル以上接しなければならない。」,同条2項は,「地方公共団体は,(中略)延べ面積(中略)が千平方メートルを超える建築物の敷地が接しなければならない道路の幅員,その敷地が道路に接する部分の長さその他その敷地又は建築物と道路との関係についてこれらの建築物の用途又は規模の特殊性により,前項の規定によつては避難又は通行の安全の目的を充分に達し難いと認める場合においては,条例で,必要な制限を付加することができる。」と定めている。この建築基準法43条2項を受けて,本件安全条例4条は,一定以上の延べ面積を有する建物について制限を加重しているものである。したがって,安全認定処分の申請をした者は,知事が安全認定処分をした場合には,建築基準法42条1項の規定する幅員4メートル(特定の区域内では6メートル)以上の道路に2メートル以上接しなければならないという同法43条1項本文所定の制限を受けるにとどまるのに対し,知事が上記認定をしなかった場合には,本件安全条例4条1項及び2項の規定に基づくより厳しい接道の規制を受けることとなり,その結果,建築基準法43条1項所定の接道の要件を満たすものの,本件安全条例4条1項及び2項所定の接道要件を満たすことができない場合には,建築確認を受けることができないことになるものである。このような点にかんがみると,知事の安全認定処分は,申請者の法的地位に直接影響を与えるものであり,申請者個々人に対する権利義務を形成し,又はその範囲を確定するものというべきであり,抗告訴訟の対象となる行政処分に当たるというべきである。 [43]イ(ア) このように,安全認定処分は抗告訴訟の対象となる行政処分に当たると解されるから,たとえこれに違法があったとしても,それ自体の取消訴訟などによって公定力が排除されない限り,原則として,安全認定処分を前提としてされる後行の行政処分(建築確認)の取消事由としてその違法を主張することは許されない筋合になるものである。 [44](イ) しかしながら,安全認定処分については,後行の建築確認との関係で,以下の点を指摘できる。 [45] 本件安全条例4条1項ないし3項の関係をみると,1項,2項は避難や通行の安全上求められる接道の長さや道路の幅員の基準を定め,3項はその適用についての例外を定めるものということができる。このように,いわば1,2項は本文,3項はただし書の関係にあるもので,本来,同一の行政庁が両者を一体として判断することが自然であるということができるものである。現に改正前安全条例4条3項においては,「前2項の規定は,建築物の周囲に広い空地がある場合その他土地及び周囲の状況により安全上支障がない場合においては,適用しない。」と定めており,建築主事が建築確認において一体のものとして判断する仕組みになっていた。ところが,建築基準法の一部を改正する法律(平成10年法律第100号)により,それまで建築主事が行ってきた建築確認・検査業務を新たに民間機関(指定確認検査機関)でも行えるようになったことが契機となって,改正前安全条例が改正され,建築物の設計内容のような客観的な判断には馴染みにくい3項の安全判断については,これを知事が別途認定する仕組みが採られるようになったものである。 [46] これにより,本件安全条例4条1項の規定の適用を受けないで建築確認を得ようとする者は,まず知事に対して安全認定処分の申請をし,知事が安全認定処分をした場合には,建築主事は,それを前提として,本件安全条例4条1項,2項適合性の判断はしないという仕組みになったものである。なお,知事により安全認定処分がされた場合,申請者に通知はされるが,建築確認(建築基準法89条参照)の場合のようにこれを外部に表示する措置等は義務付けられていない。 [47](ウ) このように,本件安全条例においては,4条1項,2項の接道義務適合性を判断する権限と3項の安全判断をする権限とが行政機関内部で分かれることになったが,1項,2項と3項との,原則と例外の関係にあるという性質は変わっていないものである。本件改正により判断権限が知事と建築主事とで分属されるようになった趣旨は,3項の安全判断を民間の機関に判断させるのはふさわしくないということにあるのであり,安全判断部分を先に判断しそれを確定させた上で建築確認に進むという仕組みを採らないと特に不都合があるという趣旨からされたものではないのである。また,知事が本件安全条例4条3項に基づき安全認定処分をしたとしても,建築確認に際して建築主事ないし指定確認検査機関が当該建築物を共同住宅等の特殊建築物に当たると判断すれば(なお,建築物が共同住宅などの特殊建築物に当たるかどうかという判断は,建築物の設計内容等により客観的に判断できるものであり,建築確認において建築主事ないし指定確認検査機関が最終的に判断することになっているものと解される。),特殊建築物については本件安全条例第2章においてより厳しい制限が課されているのであるから,同項の安全認定処分はその効力を発揮しないことになるのである(すなわち,同項の安全認定処分は,建築確認の段階までは,その効力を発揮するかどうか確定しないものなのである。)。 [48](エ) 上記のような点を考えると,本件改正により安全判断については別の行政庁が行政処分の形ですることになり,安全判断に対して独立した争訟の機会が付与されることになったが,それは申請者の権利保護のため争訟の機会を増やす趣旨のものと捉えるのが相当で,改正前と異なり建築確認の段階においてはもはや安全判断の違法を争うことをできなくするという趣旨までは含まれていないと解するのが相当である(このことは,安全認定処分は,建築確認と同様に,周辺住民にも大きな利害関係があるにもかかわらず,建築確認のようにこれを外部に表示する措置が義務付けられていないことからも裏付けられる。)。 [49](オ) そうすると,安全認定処分がその取消訴訟で取り消され,公定力が排除されない場合においても,建築確認の取消訴訟においては,知事のした安全認定処分の違法を建築確認の取消事由の一つとして主張することができるというべきである。 [50]ア そこで,本件認定が違法かどうかについて検討する。 [51] 上記のように,建築基準法43条2項は,「地方公共団体は,(中略)延べ面積(中略)が千平方メートルを超える建築物の敷地が接しなければならない道路の幅員,その敷地が道路に接する部分の長さその他その敷地又は建築物と道路との関係についてこれらの建築物の用途又は規模の特殊性により,前項の規定によつては避難又は通行の安全の目的を充分に達し難いと認める場合においては,条例で,必要な制限を付加することができる。」と定めているところ,これを受けて本件安全条例4条1項は,建物の延べ面積(すなわち,建築基準法にいう規模の特殊性)に着目して,千平方メートルを超える建築物につき,面積に応じて3段階に分け,段階的に接道の要件を加重している。このように建築物の延べ面積に応じて接道の要件を加重しているのは,建物の規模が大きくなると,それだけ当該建物に居住したり利用したりする人の数が増大し,また,火災による周囲への延焼の危険等も増大することが予想されることから,その規模に見合った,平常時における円滑な通行や災害時における避難,消火及び救助活動のための通路の確保を図ったものと考えられる。 [52] そして,3項は,この1項の規定を適用しない例外について定めるものであるから,3項にいう「安全上支障がない」というのは,1項が求める接道の基準を充たすことで確保されるのと同程度に,平常時の円滑な通行のみならず災害時における避難,消火及び救助活動に支障を来さないような状況にあると判断できる場合であることを要するというべきである(なお,その判断においては,敷地の現状のみならず当該敷地の利用計画も勘案されることになろう。)。そのような判断ができる典型的な場合としては,3項の建築物の「周囲の空地の状況その他土地及び周囲の状況により」という文言のとおり,道路に出なくとも直接,通行や避難等ができるような公共的空地(例えば公園)が敷地に接しているとか,敷地内に広い空地があり,道路に出なくともそこに避難が可能であるといったような場合が挙げられよう。 [53] もっとも,建築物の周囲の空地の状況その他の土地及び周囲の状況により安全上支障がないと認める場合というその規定の仕方等からすると,その判断は,知事の専門的かつ技術的な裁量にゆだねられていると解される。 [54]イ(ア) そうすると,本件では,本件敷地につき認められる状況により,本件安全条例4条1項が求める接道の基準を充たすこと(上記のように,そのためには原則として路地状部分に8メートルの幅員の通路があることを要する。)で確保されているのと同程度に,平常時の通行のみならず災害時における避難,消火及び救助活動に支障がない状況にあると判断することが,明らかに合理的根拠を欠くもので,裁量権の逸脱濫用に当たらないかどうかという観点から検討する必要がある。 [55](イ) 上記認定事実及び証拠(甲1の1ないし3,乙1,9,15,16)及び弁論の全趣旨によると,以下の事実が認められる。 [56]a 本件敷地は,1871.12平方メートルの別紙図面のような形状の土地で,約34メートルの長さの路地状部分により道路に接している。本件敷地は,第一種低層住居専用地域,準防火地域,第一種高度地区,指定建ぺい率60%,指定容積率150%の地域に属する。 [57] 本件敷地は,周囲の多くが崖になっていて,そこにはよう壁が設けられており,路地状部分を通る以外は外部に出ることは困難である。公園などの公共的空地が近接して存在するようなこともない。 [58]b 本件建築物は,建築面積805.34平方メートル,延べ面積2823.09平方メートルの鉄筋コンクリート造,地上3階地下1階の建物で,戸数30戸(ファミリータイプ29戸,ワンルーム1戸)の住戸からなることが予定されている。各住戸は,それぞれ専用の玄関口から本件建築物の外に出る構造になっており,不特定又は多数の人が通行の用に供する廊下,階段等の共用部分は存在しない。なお,本件建築物の容積率は112.3%であり,建ぺい率は42.2%である。 [59]c 本件敷地は,上記のように路地状部分で道路に接するが,路地状部分に有効幅員4メートルの道路状空地を設けて外部の道路への通路とすることとし(本件通路),これを緊急時の車両の通行経路及び本件建築物の住民等の避難経路として機能するものに位置付けている。なお,本件通路の延長は40メートルを超えるものとなっている。そして,特段,終端部分及び区間35メートル以内ごとに自動車の転回広場を設けるようにはされていない。また,前面道路との接道部分の長さは現況では8.9メートルである(道路境界線とみなされる線での接道の長さは8.169メートル)。本件通路と前面道路は120度以上の角度で交わっている。 [60]d そして,本件建築物と隣地境界線の間には,東側で有効幅員2.5メートル,そのほかでは2メートルの空地を設け,緊急時の避難経路として機能するようにし(本件避難通路),かつ,これを本件通路に接続するように計画されている(別紙図面参照)。そして,各住戸部分の2階にはそれぞれバルコニーが設けられて,そこに避難梯子が設置され,それを使用して各住戸から本件避難通路に下りられるように計画されている。 [61]e 東棟,西棟,南棟に囲まれた本件敷地の中央部分には東西約6メートル,南北約12メートルの空地(以下「中庭」という。)が設けられることになっている。この中庭は,各住戸の出入口に面しており,本件通路に通じている(別紙図面参照)。この中庭は消防活動に利用されることが予定されている。また,消火活動のため,本件敷地内に40トンの防火水槽が設置される計画になっている。 [62](ウ) 以上によると,本件建築物は延べ面積が2800平方メートルを超える建物で,接道の長さ8メートルを求められる建築物のうちでも規模が大きいものであるところ,本件敷地は,周りの多くが崖状になっていて,約34メートルもの長さの,最小幅員約4メートルの路地状敷地(本件通路)のみで道路に通じており(なお,本件通路をもって建築基準法の道路と同視できないことは,後記のとおりである。),それによるほか外部に避難,通行ができない構造になっているものである。本件敷地に近接して外部に通行したり,避難できる公共的空地があるとは認められない。そして,本件敷地内に災害時に避難するに足りるほどの空間があるとも認め難いものである。すなわち,中庭は,6メートル×12メートル程度の空間で,本件通路に連なる通路的部分であり,三方を本件建築物に囲まれているのであるから,そのような避難にふさわしい場所でないことは明らかである。本件避難通路も,せいぜい幅員が2メートル前後しかないから,そのような避難にふさわしい場所とはいえないものである。したがって,本件敷地につき,本件安全条例4条1項が求める接道の基準を充たすことで確保されているのと同程度に,平常時の通行のみならず災害時における避難,消火及び救助活動に支障がない状況にあると判断することは,明らかに合理的根拠を欠くものというべきである。 [63](エ) これに対し,被控訴人は,①建築基準法の道路と同じ機能を有する本件通路が設けられること,②本件建築物は容積率112.3%,建ぺい率42.2%と規模が小さいこと,③本件避難通路が設けられており,2階にバルコニーや避難梯子を設けて各住戸からそこに出られるようにしていること,④中庭が設置されること,⑤本件建築物が耐火建築物であること,⑥前面道路と本件通路が120度以上の角度で交わり,また,接道の長さが8.9メートルあること等を考慮して,本件認定をしたものであるから,本件認定に違法はないなどと主張する。 [64] しかしながら,本件通路は,一方の端が道路に接しておらず(袋地状道路),かつ,その延長は35メートルを超えており,終端及び区間35メートル以内ごとに自動車の転回広場が設けられているとは認められないのであるから,建築基準法42条1項5号,同法施行令144条の4第1項の定める「道に関する基準」に適合しないものであり,被控訴人の①の主張のように,本件通路をもって建築基準法42条1項の道路と実質的に同視することは困難であるというべきである。そうすると,本件通路があることは1項の規定の適用の例外を認める根拠にはならないというべきである。 [65] また,②の建ぺい率,容積率を低く抑えているという点も,本件建築物は延べ面積2800平方メートルと,接道の長さ8メートルを要求されている延べ面積2000平方メートルから3000平方メートルの建築物のうち規模の大きい方に属するものであるから,1項の規定の適用の例外を認める根拠にはならないものであるし(これに対し,2000平方メートルをわずかに超えるというような規模の建築物を考えると,規模の点も1項の基準を緩和するための一つの考慮要素になるといえる。),容積率,建ぺい率を低く抑えたことで,上記のように,本件敷地内に外部に出なくとも避難できるような空地が確保されたというようなことも認められないのであるから,災害時の避難路の確保等を目的とする1項の規定の適用の例外を認める根拠にはならない。また,③の本件避難通路が設けられ,2階にバルコニーや避難梯子を設けて各住戸からそこに出られるようにしているという点は,本件避難通路から直接外部に避難できるわけではなく,結局,道路延長が40メートルを超え,かつ,最小幅員約4メートルの本件通路を経なければ外部に避難ができないのであるから,同じく1項の規定の適用の例外を認める根拠にはならないというべきである。④の中庭があることも,上記のように,中庭は災害時の避難にふさわしい場所とはいえないから,避難路の確保等を目的とする1項の規定の適用の例外を認める根拠にはならない。そのほか,消火活動のため本件敷地内に40トンの防火水槽を設置する計画であることも、それによって直ちに災害時に外部に避難したり,外部からの消火,救助活動の必要がなくなるといえるようなものではないことが明らかであるから,1項の規定の適用の例外を認める根拠にはならない。⑤の本件建築物が耐火建築物であるということも,災害時の避難路の確保等を目的とする1項の規定の適用の例外を認める根拠にはならない。その他,被控訴人の挙げる諸点を総合しても,直ちに1項の規定の適用の例外を認める根拠にはならないというべきである。 [66](オ) 以上によれば,本件で,本件敷地に認められる状況に照らし,路地状部分に幅員8メートルの通路がある場合と同程度に安全上の支障はないと判断することには明らかに合理的根拠がないといわざるを得ないから,本件認定は,新宿区長が裁量権を逸脱濫用したもので,違法といわなければならない。 [67] そうすると,その余の点を判断するまでもなく本件認定は違法であるから,本件建築物は本件安全条例4条1項の接道要件を充足しないものということになる。そうすると,その余の点を判断するまでもなく(なお,本件建築物が特殊建築物に当たるとすると,本件安全条例第2章により更に制限が加重されることになるのである。),本件建築確認は違法になるというべきである。 [68] 当裁判所も,本件各工作物の建築確認はいずれも適法であるものと判断する。その理由は,原判決の「第3 争点に対する判断」の6項(1)(2)(原判決62頁1行目から同65頁13行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。 [69] 当裁判所も,本件裁決は適法であるものと判断する。その理由は,原判決の「第3 争点に対する判断」の7項(1)ないし(4)(原判決65頁14行目から同74頁19行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。 [70] よって,控訴人X1,同X3,同X6及び同X11を除く控訴人らの本件建築確認の取消請求は理由があるから,原判決中同請求を棄却した部分を取消して,これを認容することとし,上記控訴人らのその余の控訴及び控訴人X1,同X3,同X6及び同X11の控訴は理由がないからこれを棄却することとして,主文のとおり判決する。 裁判長裁判官 大坪丘 裁判官 宇田川基 裁判官 足立哲
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