| たぬきの森事件 | ||||||||||||||||||||
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東京地方裁判所 平成19年(行ウ)第336号 建築確認処分取消等請求事件(第1事件) 平成19年(行ウ)第638号 追加的併合申立事件(第2事件) 平成20年4月18日 民事第38部 判決 口頭弁論終結日 平成20年2月8日 両事件原告 X1~X22、X23管理組合 第1事件原告 X24~X27 上記27名訴訟代理人弁護士 川上英一 飯島康博 藤田祐子 大嶋永姫子 服部知之 両事件被告 東京都新宿区 代表者 東京都新宿区長 中山弘子 第1事件処分行政庁 東京都新宿区長 中山弘子 第1事件処分行政庁 東京都新宿区建築主事 新井建也 第2事件裁決行政庁 新宿区建築審査会 指定代理人 河野通孝 高橋工 山田幸男 内藤勉 伊藤一一 佐賀聡 ■ 主 文 ■ 事 実 及び 理 由 ■ 参照条文 1 本件訴えのうち,以下の部分をいずれも却下する。 (1) 東京都建築安全条例4条3項に基づく認定処分の取消しを求める部分 (2) 建築確認処分の取消しを求める部分のうち原告X1,同X3,同X6,同X11及び同X23管理組合の請求に係る部分 (3) 工作物確認処分(新都建(確)6号)の取消しを求める部分のうち原告X1,同X2,同X3,同X4,同X5,同X6,同X8,同X9,同X10,同X11及び同X23管理組合の請求に係る部分 (4) 工作物確認処分(新都建(確)7号)の取消しを求める部分のうち原告X5を除く原告らの請求に係る部分 2 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。 3 訴訟費用は原告らの負担とする。 1 第1事件 (1) 東京都新宿区長が株式会社都市デザインシステム及び株式会社ソフトアイに対して平成16年12月22日付けでした東京都建築安全条例4条3項に基づく認定処分(16新都建建審第(認)76号)を取り消す。 (2) 東京都新宿区建築主事が新日本建設株式会社及び株式会社ソフトアイに対して平成18年7月31日付けでした建築確認処分(新都建(確)第116号)を取り消す。 (3) 東京都新宿区建築主事が新日本建設株式会社に対して平成18年7月31日付けでした各工作物確認処分(新都建(確)6号及び同7号)をいずれも取り消す。 2 第2事件 新宿区建築審査会が第2事件原告らに対して平成19年6月11日付けでした裁決(18新建審請第4号)を取り消す。 [1]1 本件は,東京都新宿区長(以下「新宿区長」という。)が,株式会社都市デザインシステム(以下「都市デザインシステム」という。)及び株式会社ソフトアイ(以下「ソフトアイ」という。)に対して東京都建築安全条例4条3項に基づく認定(以下「本件認定」という。)をし,さらに,東京都新宿区(以下「新宿区」という。)建築主事が、新日本建設株式会社(以下「新日本建設」という。)及びソフトアイに対する本件認定に係る別紙物件目録記載1の建築物(以下「本件建築物」という。)の建築計画に係る建築基準法6条1項に基づく建築確認処分(以下「本件建築確認」という。),並びに新日本建設に対する本件建築物の敷地(以下「本件敷地」という。)内の別紙物件目録記載2の工作物(以下「本件工作物6号」という。)及び同目録記載3の工作物(以下「本件工作物7号」といい,本件工作物6号と併せて「本件各工作物」という。)の各築造計画に係る同法88条1項,6条1項に基づく各工作物確認処分(以下,本件工作物6号に係る確認処分を「本件工作物確認6号」といい,本件工作物7号に係る確認処分を「本件工作物確認7号」といい,両者を併せて「本件各工作物確認」という。)をしたため,本件敷地の周辺に居住などする原告らが,新宿区建築審査会に対し,本件認定,本件建築確認及び本件各工作物確認の取消しを求める審査請求(以下「本件審査請求」という。)をしたところ,これを却下し,又は棄却する旨の裁決(以下「本件裁決」という。)を受けたことから,原告らが,被告に対し,本件認定,本件建築確認及び本件各工作物確認並びに本件裁決の各取消しを求める事案である。 ア 1条 [2] この政令において次の各号に掲げる用語の意義は,それぞれ当該各号に定めるところによる。 1号 敷地 1の建築物又は用途上不可分の関係にある2以上の建築物のある一団の土地をいう。 2号以下 略 イ 81条(平成19年政令第49号による改正前のもの) [3]1項 法第20条第2号に規定する建築物(超高層建築物を除く。)の構造計算は,次の各号のいずれかに定める構造計算によらなければならない。ただし,次の各号のいずれかに定める構造計算による場合と同等以上に安全さを確かめることができるものとして国土交通大臣が定める基準に従つた構造計算又は次条の規定により国土交通大臣が定める基準に従つた構造計算による場合においては,この限りでない。 1号 許容応力度等計算 2号 限界耐力計算 [4]2項 2以上の部分がエキスパンションジョイントその他の相互に応力を伝えない構造方法のみで接している建築物の当該建築物の部分は,前項の規定の適用については,それぞれ別の建築物とみなす。 ア 1条 [5] 建築基準法(以下「法」という。)第40条(…(略)…)による建築物の敷地,構造及び建築設備並びに工作物に関する制限の附加,法第43条第2項による建築物の敷地及び建築物と道路との関係についての制限の附加,建築基準法施行令(…(略)…。以下「令」という。)第128条の3第6項による地下街に関する令と異なる定め並びに令第144条の4第2項による道に関する令と異なる基準については,この条例の定めるところによる。 イ 1条の2 [6] 第4条,第10条の2,第10条の3,第22条,第41条及び第82条の規定は,都市計画区域及び準都市計画区域内に限り適用する。 ウ 4条 [7]1項 延べ面積(同一敷地内に2以上の建築物がある場合は,その延べ面積の合計とする。)が1000平方メートルを超える建築物の敷地は,その延べ面積に応じて,次の表に掲げる長さ以上道路に接しなければならない。
[9]3項 前2項の規定は,建築物の周囲の空地の状況その他土地及び周囲の状況により知事が安全上支障がないと認める場合においては,適用しない。 エ 6条 [10]1項 略 [11]2項 高さ2メートルを超えるがけの下端からの水平距離ががけ高の2倍以内のところに建築物を建築し,又は建築敷地を造成する場合は,高さ2メートルを超える擁壁を設けなければならない。ただし,次の各号のいずれかに該当する場合は,この限りでない。 1号 略 2号 がけ上に建築物を建築する場合において,がけ又は既設の擁壁に構造耐力上支障がないとき。 3号 略 [12]3項以下 略 オ 9条 [13] この章の規定は,次に掲げる用途に供する特殊建築物に適用する。 1号 略 2号 共同住宅,寄宿舎又は下宿(以下「共同住宅等」という。) 3号以下 略 カ 10条 [14] 特殊建築物は,路地状部分のみによつて道路に接する敷地に建築してはならない。ただし,次に掲げる建築物については,この限りでない。 1号 路地状部分の幅員が10メートル以上で,かつ,敷地面積が1000平方メートル未満である建築物 2号 略 3号 前2号に掲げるもののほか,建築物の周囲の空地の状況その他土地及び周囲の状況により知事が安全上支障がないと認める建築物 キ 11条の2 [15] 法第22条第1項の規定により指定する区域内にある木造建築物等である特殊建築物で,階数が2であり,かつ,第9条各号に掲げる用途に供する部分の床面積の合計が200平方メートルを超えるものは,その外壁及び軒裏で延焼のおそれのある部分を防火構造としなければならない。 ク 18条 [16]1項 木造建築物等である共同住宅等(耐火建築物又は準耐火建築物を除く。)の避難階以外の階で,住戸等の数が6を超えるものには,その階から避難階又は地上に通ずる2以上の直通階段を設けなければならない。 [17]2項 略 ア 1条 [17]1項 この条例は,処分,行政指導及び届出に関する手続に関し,共通する事項を定めることによって,行政運営における公正の確保と透明性(行政上の意思決定について,その内容及び過程が区民にとって明らかであることをいう。)の向上を図り,もって区民の権利利益の保護に資することを目的とする。 [18]2項 略 イ 2条 [19] この条例において,次の各号に掲げる用語の意義は,当該各号に定めるところによる。 1号及び2号 略 3号 申請 条例等に基づき,行政庁の許可,認可,免許その他の自己に対し何らかの利益を付与する処分(以下「許認可等」という。)を求める行為であって,当該行為に対して行政庁が諾否の応答をすべきこととされているものをいう。 4号以下 略 ウ 5条 [20]1項 行政庁は,申請により求められた許認可等をするかどうかをその条例等の定めに従って判断するために必要とされる基準(以下「審査基準」という。)を定めるものとする。 [21]2項 行政庁は,審査基準を定めるに当たっては,当該許認可等の性質に照らしてできる限り具体的なものとしなければならない。 [22]3項 行政庁は,行政上特別の支障があるときを除き,条例等により当該申請の提出先とされている機関の事務所における備付けその他の適当な方法により,審査基準を公にしておかなければならない。 [23] 本件の前提となる事実は,次のとおりである。証拠及び弁論の全趣旨により容易に認めることができる事実等はその旨付記しており,それ以外の事実は当事者間に争いがない。 [24]ア 原告X23管理組合(以下「原告管理組合」という。)は,建物の区分所有等に関する法律(以下「区分所有法」という。)3条に基づき,本件敷地の隣接地に存する建築物である「X23」(以下「本件マンション」という。)の区分所有者により構成されている団体である。(弁論の全趣旨) [25]イ 原告管理組合を除く原告らは,いずれも本件敷地の周辺である肩書地にそれぞれ居住する者である。原告管理組合を除く原告らの居住地と,本件敷地,本件建築物及び本件各工作物との位置関係は,別紙図面1のとおりである。(弁論の全趣旨) [26]ウ 新宿区長は,特別区における東京都の事務処理に関する条例(平成11年東京都条例第106号)に基づき,本件安全条例4条3項の認定に係る権限を有するものである。(弁論の全趣旨) [27]ア 都市デザインシステム及びソフトアイは,新宿区長に対し,平成16年12月17日,本件安全条例4条3項に基づく認定の申請をした。(甲1の3,乙1から3まで) [28]イ 新宿区長は,都市デザインシステム及びソフトアイに対し,平成16年12月22日付けで,本件認定をした。(乙1から3まで) [29]ウ 原告管理組合は,新宿区建築審査会に対し,平成17年1月12日,本件認定の取消しを求める審査請求(以下「前回審査請求」という。)をした。(乙2,3,22) [30]エ 新宿区建築審査会は,平成17年7月6日,本件認定には処分性がないとして,前記ウの前回審査請求を却下する旨の裁決(以下「前回裁決」という。)をした。(乙2,3,22) [31]オ 原告管理組合は,平成17年9月1日に前回裁決の取消しを求める訴えを,同年10月5日に本件認定の取消しを求める訴え(以下,両訴えを併せて「前回訴え」という。)をそれぞれ提起した。(乙2,3) [32]カ 東京地方裁判所は,平成18年9月8日,前回訴えについて,本件認定は処分性を有するものの,原告管理組合はその取消しを求める原告適格を有しないとして,本件認定の取消しを求める部分を却下し,前回裁決の取消しを求める部分を棄却する旨の判決(以下「前回第1審判決」という。)をした。(乙2) [33]キ 原告管理組合は,前回第1審判決を不服として,東京高等裁判所に対して控訴したが,同裁判所は,平成19年1月24日,原告管理組合の控訴を棄却する旨の判決(以下「前回控訴審判決」という。)をした。(乙3) [34]ク 原告管理組合は,前回控訴審判決を不服として,最高裁判所に対して上告及び上告受理の申立てをしたが,同裁判所は,平成19年7月6日,同上告を棄却し,また,同上告受理の申立てについて上告審として受理しないとの決定をした。(弁論の全趣旨) [35]ア(ア) 新日本建設及びソフトアイは,新宿区建築主事に対し,平成18年1月30日,本件建築物の建築計画について,平成18年法律第46号による改正前の建築基準法6条1項に基づく建築確認申請をした。(甲2の2) [36](イ) 新宿区建築主事は,新日本建設及びソフトアイに対し,平成18年2月8日,平成18年法律第92号による改正前の建築基準法6条5項に基づき,前記(ア)の確認申請について,同条4項の定める期限内に確認することができない旨の通知をした。(甲8) [37]イ(ア) 新日本建設は,新宿区建築主事に対し,平成18年6月23日,本件各工作物について,平成18年法律第5号による改正前の建築基準法88条1項が準用する平成18年法律第46号による改正前の建築基準法6条1項に基づく各工作物確認申請をした。 [38] 本件敷地内における本件各工作物等の位置は別紙図面2のとおりであり,本件工作物6号は本件敷地の南東側境界付近に,本件工作物7号は本件敷地内の北側部分にそれぞれ築造されるものである。(甲3の2,4の2) [39](イ) 新宿区建築主事は,新日本建設に対し,平成18年6月29日,平成18年法律第92号による改正前の建築基準法6条5項に基づき,前記(ア)の各確認申請について,同法20条及び建築基準法施行令38条に基づく地耐力等について疑義があるので,所定の期限内に確認することができない旨の通知をした。(甲9の1,9の2) [40]ウ 新宿区建築主事は,平成18年7月31日,平成18年法律第46号による改正前の建築基準法6条1項に基づき,前記ア(ア)の確認申請に対して本件建築確認を,平成18年法律第5号による改正前の建築基準法88条1項が準用する平成18年法律第46号による改正前の建築基準法6条1項に基づき,前記イ(ア)の各確認申請に対して本件各工作物確認を,それぞれした。(甲2から4までの各1及び2) [41]エ 原告らは,新宿区建築審査会に対し,平成18年9月5日,本件認定,本件建築確認及び本件各工作物確認の各取消しを求める本件審査請求をした。(甲10) [42]オ 原告らは,平成19年5月26日,本件認定,本件建築確認及び本件各工作物確認の各取消しを求める第1事件に係る訴えを提起した(ただし,原告管理組合は,本件訴えにおいて,本件認定の取消しを求めていない。)。(当裁判所に顕著な事実) [43]カ 新宿区建築審査会は,平成19年6月11日,本件審査請求について,原告管理組合の審査請求を却下し,その余の原告らの審査請求をいずれも棄却する旨の本件裁決をした。(乙4) [44]キ 原告X24,同X25,同X26及び同X27を除く原告らは,平成19年10月10日,第1事件を基本事件として,本件裁決の取消しを求める第2事件に係る訴えを追加的に併合した。(当裁判所に顕著な事実) ア 出訴期間の遵守 [45] 本件訴えのうち本件認定の取消しを求める部分は,適法な審査請求を経たものとして,出訴期間を遵守した適法な訴えということができるか。 イ 原告適格の有無 [46] 原告らは,本件各工作物確認の取消しを求めるにつき,法律上の利益を有しているということができるか。 [47] また,別紙原告目録記載2の原告らは,本件認定及び本件建築確認の各取消しを求めるにつき,法律上の利益を有しているということができるか。 [48] さらに,原告管理組合は,本件建築確認の取消しを求めるにつき,法律上の利益を有しているということができるか。 ア 本件認定の違法性の有無 [49] ①本件建築物の建築計画には安全上重大な支障があること,②本件建築物は長屋ではなく共同住宅であること,③本件認定は本件手続条例5条に基づく基準が定められていないにもかかわらずされたものであること,④本件認定において定められた条件が遵守されなかったことにより事後的な取消原因があることなどを理由に,本件認定が違法であるということができるか。 イ 本件建築確認の違法性の有無 [50] ①本件建築確認の前提となる本件認定が違法であること,②エキスパンションジョイントで接続された本件建築物は1の建築物であるということができず,一敷地一建物の原則に反すること,③新宿区建築主事は本件建築確認に当たって既設の擁壁に構造耐力上支障がないことを確認していないこと,④新宿区建築主事は本件建築物の建築計画について法適合性を確認していないことなどを理由として,本件建築確認が違法であるということができるか。 ウ 本件各工作物確認の違法性の有無 [51] ①新宿区建築主事は本件各工作物の築造計画について法適合性を確認していないこと,②新宿区建築主事は本件工作物確認6号に当たって既設の擁壁に構造耐力上支障がないことを確認していないこと,③行政手続法違反があることなどを理由として,本件各工作物確認が違法であるということができるか。 エ 本件裁決の違法性の有無 [52] 本件裁決は,本件審査請求の手続において,原告らに十分な反論の機会を与えないままされたものであることを理由として,違法であるということができるか。 [53]ア(ア) 被告及び新宿区建築審査会は,前回第1審判決が言い渡された平成18年9月8日まで,本件安全条例4条3項に基づく認定には処分性がない旨主張しており,当該主張は,被告及び新宿区建築審査会の公式見解だった。 [54](イ) ある行政行為に処分性があるか否かが裁判で争われている場合,当該裁判の判決において処分性があると判断された時点から遅滞なく当該行政行為の取消しを求めて審査請求をすれば,行政不服審査法(以下「行服法」という。)14条3項ただし書に規定する「正当な理由」があるということができる。 [55] 原告らは,本件認定には処分性がなく,建築確認の取消しを求める中で本件認定の違法性を争うべきであるとの前回裁決における判断に従い,本件建築確認がされてから遅滞なく本件審査請求をしているのであり,しかも,本件認定の処分性の有無が争われた前回訴えにおける前回第1審判決によって前回裁決における上記判断が覆される以前に,本件審査請求をしているのであるから,本件においては「正当な理由」が存在する。 [56]イ 本件裁決においても,前回裁決における判断に従い,本件建築確認がされてから遅滞なく本件審査請求をしたものであるから「正当な理由」がある旨の判断がされている。 [57] 裁決は関係行政庁を拘束するから(行服法43条1項),被告は,「正当な理由」がある旨の新宿区建築審査会の判断と異なる主張をすることは許されない。 [58]ア(ア) 新宿区長が本件認定をしたのは平成16年12月22日であるところ,原告らが本件認定の取消しを求める本件審査請求をしたのは同18年9月5日であるから,本件審査請求は審査請求期間を徒過した不適法なものである。 [59] したがって,本件訴えのうち,本件認定の取消しを求める部分は,行政事件訴訟法(以下「行訴法」という。)14条2項の出訴期間を徒過した不適法な訴えである。 [60](イ) 原告管理組合は,平成17年1月12日,本件認定の取消しを求める前回審査請求をし,同年10月5日,本件認定の取消しを求める前回訴えを提起している。そうすると,原告らのうち,本件マンションに居住している別紙原告目録記載1の原告ら(以下「本件マンション居住原告ら」という。)は,本件認定がされたことを遅くとも同日以前には知っていたはずであるところ,本件マンション居住原告らが本件認定の取消しを求める本件審査請求をしたのは同18年9月5日であるから,本件審査請求は審査請求期間を徒過した不適法なものである。 [61] したがって,本件訴えのうち,本件マンション居住原告らが本件認定の取消しを求める部分は,行訴法14条1項の出訴期間を徒過した不適法なものである。 [62]イ 前回裁決における本件認定に処分性がない旨の判断並びに前回裁決及び前回訴えにおける本件認定に処分性がない旨の被告の主張は,いずれも原告管理組合に対するものであり,その余の原告らに対するものではない上,原告管理組合は,上記判断及び主張にはいずれも理由がないと主張し続けていた。 [63] また,上記判断及び主張によって,原告管理組合を除く原告らが本件認定の取消しを求める審査請求又は訴えを提起することができなくなるといった事情はない。 [64] したがって,本件審査請求には,行服法14条3項ただし書に規定する正当な理由はない。 [65]ウ 本件裁決は,原告らの本件審査請求を却下し,又は棄却したものであるから,行服法43条1項の拘束力は働かない。 ア 原告らの本件各工作物確認の取消しを求める部分について [66](ア) 建築基準法19条4項及び本件安全条例6条2項の規定の趣旨は,がけ崩れによる建築物そのものへの被害を防止することはもとより,がけ崩れによる建築物の倒壊等が周辺住民に及ぼす影響を防止するために設けられた規定である。したがって,そのような影響を受ける可能性のある近隣住民には,技術基準を満たさない危険な擁壁の築造につき,当該擁壁の工作物確認の取消しを求める法律上の利益がある。 [67] 本件裁決でも,原告管理組合を除く原告らについて,本件各工作物確認の取消しを求める法律上の利益を有すると判断されている。 [68](イ) 本件工作物6号の南側に隣接する敷地及び同敷地上に建築されている「B」は,いずれも原告X7が所有するものである。本件工作物6号が崩壊すれば,同原告所有の土地及び建物に重大な損害が生じる。 イ 別紙原告目録記載2の原告らの本件認定及び本件建築確認の各取消しを求める部分について [69] 前回第1審判決では,本件安全条例4条3項に基づく認定に係る建築物の火災等により直接的な被害を受けることが予想される範囲の地域に存する建築物に居住し,又はこれを所有する者は,当該認定の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する旨判断されている。そして,このような判断は,建築確認の取消しを求める法律上の利益についても当てはまる。 [70] したがって,別紙原告目録記載2の原告らは,本件認定及び本件建築確認の取消しを求める法律上の利益を有する。 [71] 本件裁決でも,本件建築物と原告らの居住地の距離関係及び延焼の危険性から,原告管理組合を除くすべての原告らにつき,本件認定及び本件建築確認の取消しを求める法律上の利益を有すると判断されている。 ウ 原告管理組合の本件建築確認及び本件各工作物確認の各取消しを求める部分について [72] 被告の下記主張は争う。 ア 原告らの本件各工作物確認の取消しを求める部分について (ア)本件工作物確認6号について [73] 建築基準法19条4項が周辺住民の個別的利益を保護する趣旨を含むとしても,がけ崩れ等による直接的な被害を受けることが予想される一定範囲の住民の個別的利益を保護するものである。 [74] 本件工作物6号は,本件敷地の南東側境界付近に新設される高さ4mの鉄筋コンクリート造の擁壁であり,本件工作物6号と原告らの居住地の位置関係は別紙図面1のとおりであるところ,本件工作物6号によりがけ崩れ等による直接的な被害を受けることが予想されるとの原告らの主張はない。 [75] したがって,原告らは,本件工作物6号が築造されたとしても,法律上保護された利益が侵害されるおそれはなく,本件工作物確認6号の取消しを求める法律上の利益を有しない。 (イ)本件工作物確認7号について [76] 本件工作物7号は,本件敷地内に新設される高さ4.35mの鉄筋コンクリート造の擁壁であるところ,本件工作物7号と原告らの居住地の位置関係は,別紙図面1のとおりである。 [77] また,本件敷地内における本件工作物7号の位置は別紙図面2のとおりであり,駐車場のための擁壁であって,本件工作物確認7号においては建築基準法19条4項,本件安全条例6条2項の適用はない。 [78] したがって,原告らは,本件工作物7号が築造されたとしても,法律上保護された利益が侵害されるおそれはなく,本件工作物確認7号の取消しを求める法律上の利益を有しない。 イ 別紙原告目録記載2の原告らの本件認定及び本件建築確認の各取消しを求める部分について [79] 本件建築物と別紙原告目録記載2の原告らの居住地の位置関係は,別紙図面1のとおりである。 [80] したがって,別紙原告目録記載2の原告らは,本件建築物が建築されたとしても,法律上保護された利益が侵害されるおそれはなく,本件認定及び本件建築物の各取消しを求める法律上の利益をいずれも有しない。 ウ 原告管理組合の本件建築確認及び本件各工作物確認の各取消しを求める部分について [81] 前回第1審判決及び前回控訴審判決によると,原告管理組合は,本件認定の取消しを求める法律上の利益を有しないのであるから,本件建築確認及び本件各工作物確認の取消しを求める法律上の利益を有しないことも同様である。 ア 本件建築物の建築計画の安全性について [82] 本件安全条例4条3項に基づく認定をするには,同条1項に定める基準と同等以上の安全性が認められなければならないところ,本件建築物の建築計画は,消防活動の専門家がその危険性を指摘するように,建築物の周囲の空地の状況その他土地及び周囲の状況から安全上重大な支障があるから,本件認定は違法である。 イ 本件建築物は長屋か共同住宅かについて [83](ア) 以下の事実に照らすと、本件建築物は長屋ではなく共同住宅である。 [84]a 本件建築物は,階数が地上3階,地下1階であり,戸数が約30戸で,延べ床面積が2800平方メートルを超える大規模な集合住宅であり,その形状は複雑なコの字型をしているのであって,多数の居住者の就寝の用に供されるという点において,火災等の際における危険性はマンション等の共同住宅と変わらない。消防署長による消防同意の際にも,共同住宅と同様の適正な防火管理をするよう指導されている。 [85]b 「廊下・階段等の共用部分」を有していれば長屋ということはできないところ,本件建築物は,給排水設備,電気設備,ガス設備等の「共用部分」を有している。 [86]c 本件建築物に類似する建築物が長屋と判定された事例は存在しない。 [87]d 本件敷地には大規模な集合住宅を建築することはできないと認識されていたところ,本件建築物を長屋と判定し,上記認識に反してその建築を可能とすることは違法である。 [88]e 新宿区建築主事は,本件建築物の建築主らに対し,本件建築物に連結送水管を設置するよう指導しているところ,連結送水管は「共用部分」の一部である上,管理組合が無ければ実効性のある管理をすることができないものである。新宿区建築主事がそのような連結送水管の設置を指導したということは,本件建築物が実質的に共同住宅であることを自ら認めたことにほかならない。 [89](イ) そして,本件敷地は路地状部分のみによって道路と接している敷地であり,本件安全条例10条に違反するため,本件認定は違法である。 ウ 本件手続条例5条違反の点について [90](ア) 新宿区長は,本件安全条例4条3項に基づく認定をするにつき,事前に審査基準を定めておかなければならなかったにもかかわらず,それを定めずに本件認定をしているから,本件認定は本件手続条例5条に違反する。 [91] 被告が主張する基準は,単なる文献における解説を引用したものにすぎず,具体性がない。東京都渋谷区など他の特別区は,具体的な数値を用いて基準を定めている。 [92](イ) 本件手続条例1条は,「申請者」ではなく,「区民」の権利利益の保護を目的とする旨規定している。処分の基準が明確に定められていなければ,当該処分によって不利益を受ける申請者以外の第三者の権利利益の保護を図ることができない。 エ 事後的な取消原因の存在について [93] 新宿区長は,本件認定に当たり,本件建築物と敷地境界線の間に有効幅員2m以上の空地を設けることなどの条件を付し,同条件が遵守されない場合には,認定を取り消すことがあるとしていた。そうであるにもかかわらず,本件建築確認においては,上記空地の幅員が1.5m以上であればよいと変更されてしまっている。 [94] したがって,本件認定は,認定に当たっての条件が遵守されていないから,直ちに取り消されなければならない。 ア 本件建築物の建築計画の安全性について [95](ア) 本件安全条例4条3項に基づく認定をするかの判断は,建築物の構造及び規模,敷地の形状,敷地内の空地等の状況などの諸事情を総合的に考慮した上での,特定行政庁の専門的かつ技術的な裁量にゆだねられているところ,新宿区長は,①本件敷地が西側で接する道路(以下「前面道路」という。)から本件建築物まで,建築基準法上の道路と同様の機能を有する有効幅員4m以上の通路が設けられること,②本件敷地の容積率制限は150%,建ぺい率制限は60%であるところ,本件建築物の容積率は112.3%,建ぺい率は42.2%であり,規模が小さいこと,③本件建築物と敷地境界線の間には約2mから約4mの安全空地が設けられること,④本件建築物の各住戸の出入口の反対方向にはバルコニーが設置され,各住戸からは2方向避難が可能であること,⑤本件各住戸の出入口付近には,東西に6m,南北に12mの消防活動空地が設けられること,⑥本件建築物は耐火建築物であること,⑦本件敷地内には消防水利(防火水槽)が設置されること,⑧前面道路と上記①の通路は,120度以上の角度で交わっており,本件敷地への緊急車両の進入が容易であること,⑨本件敷地と前面道路の接道長は,8.9mあることなどから,本件建築物の建築計画について,建築物の周囲の空地の状況その他土地及び周囲の状況により安全上支障がないと判断して,本件認定をした。したがって,本件認定は適法である。 [96](イ) 本件安全条例4条3項において,同条1項の場合と同等「以上」の安全性が確保されることは要件とされていない。 イ 本件建築物は長屋か共同住宅かについて [97](ア) 共同住宅とは,住戸の玄関に至る階段,廊下等の共用部分を有する住宅をいうところ,本件建築物には,住戸の玄関に至る階段,廊下等の共用部分はない。また,長屋とは,2以上の住戸を有する1戸の建築物で,隣接又は重ね合う住戸と内部での行き来ができない完全分離型の構造で,階段,廊下等の共用部分を有しない形式の建築物をいう。 [98] 本件建築物は,隣接又は重ね合う住戸と内部での行き来ができない構造となっており,住戸の玄関に至る階段,廊下等の共用部分がないから,長屋である。 [99] 本件建築物が有する給排水設備,電気設備,ガス設備等は,「階段,廊下等の共用部分」には含まれない。 [100](イ) したがって,本件建築物は特殊建築物ではないから,本件認定は本件安全条例10条に反しない。 ウ 本件手続条例5条違反の点について [101](ア) 本件安全条例4条3項に基づく認定については, 「敷地の形状,建築物の構造・規模に配慮するほか,建築物の敷地内において広い空地を設けた場合等の状況や,建築物の敷地が公園と接続している等の敷地外の土地の状況,建築物の敷地周囲の市街地の密集の度合いや,その他都市計画等で,道路整備等が段階的に行われる場合などを総合的に判断して知事が安全上支障がないと認めた場合に適用される」という基準が設けられている。 [102] また,本件安全条例4条3項に基づく認定は,個々の申請について個別具体的に判断せざるを得ないものであり,個々の案件に応じた適切な判断を期待して特定行政庁に裁量を与えているのであるから,上記基準でも本件手続条例5条2項所定の「審査基準の具体性」を満たすというべきである。なお,東京都や他の多くの特別区においても,独自の審査基準は定めていない。 [103] したがって,本件認定は,本件手続条例5条に反しない。 [104](イ) また,本件手続条例5条は,本件手続条例2条3号の申請をしようとする者の利益を保護する趣旨の規定であり,原告らの法律上保護された利益を個別的に保護する趣旨を含まない。そのため,本件認定の違法事由として本件手続条例5条違反を主張するのは,行訴法10条1項の「自己の法律上の利益に関係のない違法」を主張するものである。 エ 事後的な取消原因の存在について [105] 新宿区長は,本件認定において,本件建築物と敷地境界線の間に約2mから約4mの安全空地が設けられることを考慮要素の1つとしたのであり,本件建築確認に係る計画においても,本件建築物と敷地境界線の間には約2mから約4mの安全空地が設けられているから,本件認定を取り消さなければならない理由はない。 ア 本件認定が違法であるという点について [106] 本件建築確認は本件認定が前提となっているところ,上記のとおり,本件認定は違法であり,取り消されるべきものであるから,本件建築確認も違法である。 イ 一敷地一建物の原則違反の点について [107] 本件建築物は,東側部分(以下「東棟」という。),南側部分(以下「南棟」という。)及び西側部分(以下「西棟」という。)の3棟から成っているところ,上記3棟は構造的に分離独立し,用途は密接不可分の関係にないため,それぞれ独立の建物である。したがって,1つの敷地に3の建物が存在することとなり,一敷地一建物の原則(建築基準法施行令1条1号)に違反する。 [108] 本件建築物の3棟の外壁間にはエキスパンションジョイントが設けられているが,本件建築物は上記のように用途可分な3棟の独立した建物が近接して建てられているにすぎない。そのため,上記エキスパンションジョイントは,上記3棟の外壁間の空地を目隠しし,外観上の一体性を作り出すためだけのものである。したがって,本件建築物がエキスパンションジョイントで接続されているからといって,1の建物ということはできない。 ウ 既設擁壁の構造耐力を確認していないという点について [109] 本件建築物の建築計画においては,本件安全条例6条2項2号により,既設の擁壁に構造耐力上支障がないことを確認した上で建築確認をしなければならない。しかし,本件建築確認の申請時に提出された擁壁計画平面図(乙10の9枚目)に 「確認申請後,着工前に試掘調査を行い既存底版をはじめとする既存擁壁の状態を確認する。調査結果に基づき,鋼製山留めの位置及び必要性について検討し,安全性を確保する。また,建築主事との協議を行う。」との記載があることから明らかなように,新宿区建築主事は,本件敷地のがけ及び既設のコンクリート擁壁(以下「本件既設擁壁」という。)に構造耐力上支障がないことの調査及び確認をしないまま,本件建築確認をした。したがって,本件建築確認は,本件安全条例6条2項に違反する。 [110] また,本件建築物の荷重が本件既設擁壁に影響を与えないと判断した根拠が不明である。 エ 法適合性に疑義があった点について確認していないとの点について [111] 新宿区建築主事は,本件建築物の確認申請について,建築主らに対し,法適合性に疑義があり,期限内に確認することができない旨の通知をしたにもかかわらず,その後,当該疑義がある点について法適合性を確認しないまま,本件建築確認をしているため,本件建築確認は違法である。 ア 本件認定が違法であるという点について [112](ア) 本件安全条例4条3項に基づく認定と建築基準法6条1項に基づく建築確認では,処分の主体が異なるのであり,建築確認を行う建築主事等は,本件安全条例4条3項に基づく認定が適法であるか否かを審査する権限を有しない。 [113] したがって,本件認定の違法が本件建築確認に承継されることはない。 [114](イ) また,仮に違法性の承継が認められるとしても,本件認定に違法がないことは前記のとおりであるから,原告らの主張はその前提を欠く。 イ 一敷地一建物の原則違反の点について [115](ア) 本件建築物は,当初からコの字型に配置された1つの建築物として計画されていたのであり,別棟の3棟を接続しようとしたものではない。 [116](イ) また,本件建築物は,以下の事実から,機能上も外形上も一体性を有し,全体として1つの建築物であることが明らかである。 [117]a 本件建築物のようにコの字型に配置された建築物については,構造耐力上の安全性を確保するため,それぞれの部分の壁面を固着させず,エキスパンションジョイントで接続するのが通常の工法である。本件建築物においても,本件建築物の東棟,南棟及び西棟は,それぞれの壁面中心線間に構造的に必要な間隔を設けて,エキスパンションジョイントで接続したものである。 [118]b 本件建築物のうち1つの棟で支持された階段が他の棟の住戸専用階段として利用されるなど,3棟は用途上不可分の関係にある。 [119]c エキスパンションジョイントによる接続箇所にはエキスパンションジョイントカバーが設けられており,上記3棟は,外壁とあいまって外観上も一体となっている。 [120]d 本件建築物の給排水設備,電気設備等は,本件建築物が1の建築物であることを前提に計画されている。 ウ 既設擁壁の構造耐力を確認していないという点について [121] 新宿区建築主事は,本件建築確認に先立つ現地調査において,本件既設擁壁に問題がないことを確認している。 [122] また,本件建築物の建築計画においては,本件建築物の荷重が本件既設擁壁に影響を与えないようにし,さらに,本件既設擁壁に対する背面土圧の軽減を図るなどしている。 [123] 加えて,本件既設擁壁の底版の背面側への突出状態が不明であることから,本件既設擁壁の安全性を担保するため,上記底版の突出が無いものと仮定して,背面側に山留めを設けることとしている。もっとも,本件既設擁壁の底版の突出状態が適切であれば同山留めを設ける必要がない可能性もあることから,実際の工事段階において底版等の状態を確認し,その上で新宿区建築主事との協議により,同山留めの必要性等を検討することとしたのである。 [124] 以上の事実を考慮した結果,新宿区建築主事は,本件既設擁壁が「構造耐力上支障がないとき」に該当することを確認している。 エ 法適合性に疑義があった点について確認していないとの点について [125] 新宿区建築主事は,本件建築物の建築主らに対し,期限内に確認できない旨の通知書を送付したものの,その後,同通知書に記載された疑義については,本件建築確認の申請書の修正等の結果,建築基準関係規定に適合していることが確認できたため,本件建築確認をした。 [126]ア 新宿区建築主事は,本件各工作物の確認申請について,築造主に対し,法適合性に疑義があり,期限内に確認することができない旨の通知をしたにもかかわらず,その後,当該疑義がある点について法適合性を確認しないまま,本件各工作物確認をしているため,本件各工作物確認は違法である。 [127]イ 新宿区建築主事は,本件工作物確認6号をする際,本件工作物6号の南側に位置する擁壁(以下「本件敷地外擁壁」という。)に構造耐力上支障がないことを確認しなければならなかったにもかかわらず,それをしていないから,本件工作物確認6号は違法である。 [128]ウ 本件敷地の南西側境界付近には,古い石積擁壁がある。そのやり替え(造り替え)をするには,隣地住民の協力が不可欠であるところ,それが得られない状況で上記石積擁壁のやり替えを指導することは,行政手続法32条から35条までに違反する。 [129]ア 新宿区建築主事は,本件各工作物について,建築基準関係規定に適合することを確認したことから,本件各工作物確認をした。 [130]イ 本件工作物6号は,その荷重及び背面側の土圧が本件敷地外擁壁に構造的な影響を与えないようにしているため,本件工作物確認6号において,本件敷地外擁壁に構造耐力上支障がないことを確認しなければならない根拠はない。 [131]ウ 原告が主張する石積擁壁に関する事情は,本件各工作物との関連が不明であり,本件各工作物確認の違法事由とはならない。 [132] 被告は,本件審査請求の手続において,本件建築物は階段,廊下等の共用部分を有しないことから長屋である旨主張していたところ,平成19年5月30日付け「弁明書4」(甲18)において,新たに,本件建築物には共用の給排水設備,電気設備等が設置されることから1の建築物である旨の主張を追加した。そして,新宿区建築審査会は,上記追加主張に対する原告らの反論書の提出期限を2週間と定め,原告らは,平成19年6月4日,その旨記載された書面の送達を受けた。 [133] 本件審査請求における最大の争点は本件建築物が長屋であるか共同住宅であるかであったところ,上記追加主張の内容からすると,本件建築物は共用部分を有するため共同住宅であるということになるから,原告らは,その点に関する主張を準備していたにもかかわらず,新宿区建築審査会は,反論の期限とされた平成19年6月18日の1週間も前である同月11日に本件裁決をした。このように,原告らの反論期限の前にされた本件裁決は,原告らの反論権(行服法23条)を意図的に奪ったものであり,違法である。 [134] 新宿区建築審査会は,原告らの反論権を意図的に奪ったものではなく,原告らの反論期限を2週間と設定したことを失念して本件裁決をしたのであり,原告らの反論権を意図的に奪ったのではない。 [135] 被告が「弁明書4」においてした主張は,本件建築物が1の建築物であるか否かという点に関する補充の主張であったところ,原告らは,上記争点について,既に繰り返し反論しており,十分に主張を尽くしていたと考えられる。実際に,本件裁決の後,原告らから本件裁決に関する異議等は申し立てられなかった。 [136] したがって,本件裁決には,取り消されなければならないほどの重大な違法はない。 [137](1) 前記前提事実のとおり,本件認定は平成16年12月22日にされているところ,本件認定の取消し等を求める本件審査請求が同18年9月5日にされており,本件裁決前である同19年5月26日に本件認定の取消しを求める本件訴えが提起されている。そうすると,本件認定の取消しを求める本件訴えが行訴法14条3項本文の適用によって,出訴期間内に提起された適法なものであるというためには,①原告らが本件審査請求をした平成18年9月5日が,原告らが本件認定がされたことを知った日の翌日から起算して60日以内であるか,又は行服法14条1項ただし書所定の「やむをえない理由」がやんだ日の翌日から起算して1週間以内であることを要するとともに,②本件審査請求が本件認定がされた日の翌日から起算して1年を経過する前にされなかったことについて,同条3項所定の「正当な理由」があることをも要すると解すべきであるから,これらの点について検討する。 [138]ア まず,前記①の要件について検討する。 [139] 前記前提事実のとおり,原告管理組合は本件マンションの区分所有者により構成されている団体であるところ,本件マンション居住原告らは,いずれも本件マンションの区分所有者又はその家族として本件マンションに居住する者であるから,遅くとも,原告管理組合が前回審査請求をした平成17年1月12日までには,本件認定がされたことを知っていたものと推認することができ,これを覆すに足りる証拠はない。 [140] また,原告管理組合及び本件マンション居住原告らを除く原告らは,いずれも,本件認定に係る建築物(本件建築物)の敷地である本件敷地の周辺に居住し,本件マンション居住原告らと共に,本件建築物の建設に反対していた者であるから,本件マンション居住原告らと同様に,平成17年1月12日ころまでには,本件認定がされたことを知っていたものと推認することができ,また,本件訴えの訴訟委任状の作成日付によれば,原告X5,同X8,同X9及び同X10は,平成18年3月29日までに,同X4は同月30日までに,本件認定がされたことを知っていたと認めることができるのであり,遅くとも同日ころまでには原告ら全員が本件認定がされたことを知ったものと推認することができる。 [141] そうすると,本件審査請求は平成18年9月5日にされたものであるから,原告らが本件認定がされたことを知った日の翌日から起算して60日以内にされたものでないことが明らかであり,そのことについて「やむをえない理由」(行服法14条1項ただし書)があったことをうかがわせる事情はないのであるから,本件審査請求のうち本件認定の取消しを求める部分は,同項所定の審査請求期間を徒過したという点において不適法なものというべきである。 [142]イ 次に,前記②の要件について検討する。 [143](ア) 本件審査請求は,本件認定がされた平成16年12月22日から1年8箇月余を経過した後にされたものであるところ,前記のとおり,原告管理組合は平成17年1月12日に本件認定の取消しを求める前回審査請求をしているのであるから,原告管理組合を除く原告らも同様に,同日ころに,本件認定の取消しを求める審査請求をすることができたのであり,原告管理組合を除く原告らが同審査請求をすることを妨げる事情があったとは認められない。 [144](イ) ところで,原告らは,平成17年7月6日の前回裁決において示された「本件認定には処分性がなく,後に建築確認がされた段階で,当該建築確認の取消しを求める審査請求をすべきである」との判断に従い,同18年7月31日に本件建築確認がされた後,同年9月5日に本件審査請求をしたのであるから,正当な理由がある旨主張する。 [145] しかし,原告らは,本件審査請求において,本件認定に処分性があることを前提として本件認定の取消しを求めており,しかも,原告らが本件審査請求をしたのは,本件認定に処分性がある旨判断した前回第1審判決言渡し前であるのであるから,原告らは,一貫して本件認定には処分性があるという見解に立って行動していたものであり,本件認定には処分性がないとした前回裁決に従っていたとは到底認められず,原告らの上記主張を認めることはできない。 [146](ウ) また,原告らは,被告は行服法43条1項によって本件裁決に拘束されることから,本件裁決における「正当な理由」があるとの判断に反する主張をすることができない旨主張する。 [147] しかしながら,行服法43条1項が,裁決は関係行政庁を拘束するとしたのは,処分を取り消す旨の裁決がされた後に,行政庁が同裁決の趣旨に反する行動をすることを防ぎ,もって同裁決の実効性を確保するためであると解されるから,同項にいう「裁決」は,処分を取り消す旨の裁決に限られると解するのが相当である。 [148] したがって,原告らの本件審査請求を却下し,又は棄却した本件裁決には行服法43条1項に規定する拘束力は生じないから,原告らの上記主張を採用することはできない。 [149](エ) そのほか,審査請求期間が経過したことにつき原告らに正当な理由があることを示す事情はない。 [150] したがって,原告らに「正当な理由」はなく,本件審査請求のうち本件認定の取消しを求める部分は,行服法14条3項所定の審査請求期間を徒過したという点においても不適法なものというべきである。 [151](2) 上記のとおり,本件審査請求のうち本件認定の取消しを求める部分は,不適法な審査請求である。 [152] そして,行訴法14条3項本文の適用によって本件認定の取消しを求める訴えが適法とされるためには,適法な審査請求があったことを要するというべきであるところ,不適法な審査請求に対して裁決庁により実体審理がされた上,これを棄却する旨の裁決がされたとしても,当該審査請求が客観的に不適法である以上,適法な審査請求を経たということはできないというべきであるから(最高裁昭和46年(行ツ)第86号同48年6月21日第一小法廷判決・訟務月報19巻10号51頁参照),原告らは,本件裁決を経ているとしても,本件訴えのうち本件認定の取消しを求める部分につき,適法な審査請求を経ていないというべきである。 [153](3) 以上によると,原告らにつき,行訴法14条3項本文は適用されないというべきである。 [154] そして,本件訴えは平成19年5月26日に提起されたものであるから,本件認定がされた同16年12月22日から1年を経過した後にされたものであるところ,前記(1)イにおいて判示したところに照らすと,原告らに「正当な理由」(行訴法14条2項ただし書)があるということはできないから,本件訴えのうち本件認定の取消しを求める部分は,同項に定める出訴期間を徒過しているという点において不適法な訴えである。 [155] また,前記(1)アのとおり,本件マンション居住原告らは遅くとも平成17年1月12日までに,その余の原告らは遅くとも同18年3月30日ころまでに,それぞれ,本件認定がされたことを知ったものと認めることができるところ,前記(1)イにおいて判示したところに照らすと,上記各原告らに「正当な理由」(行訴法14条1項ただし書)があるということはできないから,本件訴えのうち原告らが本件認定の取消しを求める部分は,同項に定める出訴期間を徒過しているという点においても不適法な訴えである。 [156](1) 行訴法9条は取消訴訟の原告適格について規定するが、同条1項にいう当該処分の取消しを求めるにつき「法律上の利益を有する者」とは,当該処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され,又は必然的に侵害されるおそれのある者をいうのであり,当該処分を定めた行政法規が,不特定多数者の具体的利益を専ら一般的公益の中に吸収解消させるにとどめず,それが帰属する個々人の個別的利益としてもこれを保護すべきものとする趣旨を含むと解される場合には,このような利益もここにいう法律上保護された利益に当たり,当該処分によりこれを侵害され,又は必然的に侵害されるおそれのある者は,当該処分の取消訴訟における原告適格を有するものというべきである。そして,処分の相手方以外の者について上記の法律上保護された利益の有無を判断するに当たっては,当該処分の根拠となる法令の規定の文言のみによることなく,当該法令の趣旨及び目的並びに当該処分において考慮されるべき利益の内容及び性質を考慮すべきであり,この場合において,当該法令の趣旨及び目的を考慮するに当たっては,当該法令と目的を共通にする関係法令があるときはその趣旨及び目的をも参酌し,当該利益の内容及び性質を考慮するに当たっては,当該処分がその根拠となる法令に違反してされた場合に害されることとなる利益の内容及び性質並びにこれが害される態様及び程度をも勘案すべきものである(同条2項参照)(以上につき,最高裁平成16年(行ヒ)第114号同17年12月7日大法廷判決・民集59巻10号2645頁参照)。 [157](2)ア 建築基準法6条1項が,同項各号に掲げる建築物の計画が,例えば,同法21条,52条,55条,56条,56条の2等の建築基準関係規定に適合するものであることについて確認することができなければ,当該建築物の建築等の工事をすることができないこととしているのは,①当該建築物並びにその居住者の生命,身体の安全及び健康の保護を図り,②当該建築物及びその周辺の建築物における日照,通風,採光等を良好に保つなど快適な居住環境を確保することができるようにするとともに,③地震,火災等により当該建築物が倒壊し,又は炎上するなど万一の事態が生じた場合に,その周辺の建築物やその居住者に重大な被害が及ぶことのないようにするためであると解される。 [158] そして,以上のような建築基準法6条1項の趣旨及び目的,同項が同項各号に掲げる建築物の計画が建築基準関係規定に適合するものであることの確認において保護しようとしている利益の内容及び性質等のほか,同法が建築物の敷地,構造等に関する最低の基準を定めて国民の生命,健康及び財産の保護を図ることなどを目的としていること(1条)をも考慮すると,同法6条1項は,同項による確認に係る建築物並びにその居住者の生命又は身体の安全及び健康を保護し,その建築等が市街地の環境の整備改善に資するようにするとともに,当該建築物の倒壊,炎上等による被害が直接的に及ぶことが想定される周辺の一定範囲の地域に存する他の建築物についてその居住者の生命又は身体の安全等及び財産としてのその建築物を,個々人の個別的利益としても保護すべきものとする趣旨を含むものと解すべきである。 [159] そうすると,建築確認に係る建築物の倒壊,炎上等により直接的な被害を受けることが予想される範囲の地域に存する建築物に居住し,又はこれを所有する者は,当該建築確認の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者として,その取消しの訴えにおける原告適格を有すると解するのが相当である。 [160]イ また,建築基準法43条1項は,「建築物の敷地は,道路(…(略)…)に2メートル以上接しなければならない。ただし,その敷地の周囲に広い空地を有する建築物その他の国土交通省令で定める基準に適合する建築物で,特定行政庁が交通上,安全上,防火上及び衛生上支障がないと認めて建築審査会の同意を得て許可したものについては,この限りでない。」と規定しているところ,これは,道路が,平常時における通行の場として必要であるのみならず,当該建築物及びこれに隣接する建築物等における日照,通風,採光等を良好に保つとともに,当該建築物に火災等の災害が発生した場合における避難,消火及び救助活動を迅速かつ適切に行うために必要であり,道路のないところに建築物が相当の密度で立ち並ぶことは,当該建築物の居住者等のみならずこれに隣接する建築物等の居住者等の平時の利用に不便なばかりでなく,その災害時の避難や消火活動にも大きな支障を来すことから,建築物の敷地は一定の広さを有する道路に接していなければならないものとしたのであり,そうであるとすると,同項の規定は,当該建築物及びこれに隣接する建築物等における日照,通風,採光等を良好に保つことのほかに,当該建築物に災害が発生した場合に,当該建築物及びその隣接する建築物等についてその居住者等の生命又は身体の安全等及び財産としてのその建築物を保護することをもその目的に含むものと解するのが相当である。 [161] また,建築基準法43条2項は,「地方公共団体は,…(略)…延べ面積(…(略)…)が1000平方メートルを超える建築物の敷地が接しなければならない道路の幅員,その敷地が道路に接する部分の長さその他その敷地又は建築物と道路との関係についてこれらの建築物の用途又は規模の特殊性により,前項の規定によつては避難又は通行の安全の目的を充分に達し難いと認める場合においては,条例で,必要な制限を付加することができる。」と規定しているところ,これは,一定の用途や規模を有する建築物の場合,それらの建築物の敷地が同条1項の規定する幅員4m(特定の区域内では6m)(同法42条1項参照)の道路に2m接すればよいという制限だけでは,平常時における通行の確保並びに火災等の災害の発生時における迅速かつ適切な避難,消火及び救助活動ができないおそれがあることから,地方公共団体の条例で,建築物の用途又は規模の特殊性に応じて,各地方の実情に合わせて必要な制限を付加することができる旨規定したものと解するのが相当である。 [162] 上記規定を受けて,本件安全条例4条1項は,「延べ面積(…(略)…)が1000平方メートルを超える建築物の敷地は,その延べ面積に応じて,次の表に掲げる長さ以上道路に接しなければならない。」と規定し,同条2項は,「延べ面積が3000平方メートルを超え,かつ,建築物の高さが15メートルを超える建築物の敷地に対する前項の規定の適用については,同項中「道路」とあるのは,「幅員6メートル以上の道路」とする。」と規定しているところ,これらの規定が設けられたのは,建築基準法43条2項の趣旨も考慮すると,そのような一定の規模を超える建築物について,平常時における通行を確保するためだけではなく,火災等の災害が発生した場合における避難,消火及び救助活動を迅速かつ適切に行うためであると解するのが相当である。 [163] そして,本件安全条例4条3項は,「建築物の周囲の空地の状況その他土地及び周囲の状況により知事が安全上支障がないと認める場合」に限り,同条1項及び2項の規定を適用しないことを認めているところ,同条1項及び2項の上記趣旨,目的等をも考慮すれば,同条3項が知事の認定に当たり「建築物の周囲の空地の状況その他土地及び周囲の状況」を勘案すべきものとしているのは,当該建築物が火災等により炎上するなどの事態が生じた場合に,これに隣接する建築物等やその居住者等に重大な被害が及ぶことのないようにするためであると解するのが相当である。 [164] 以上のような本件安全条例4条3項の趣旨や目的,同項が知事の認定を通して保護しようとしている利益の内容や性質等を考慮すると,同項は,同項の認定に係る建築物の火災等による被害が直接的に及ぶことが想定される周辺の一定範囲の地域に存する他の建築物についてその居住者の生命又は身体の安全等及び財産としてのその建築物を,個々人の個別的利益として保護すべきものとする趣旨を含むものと解すべきである。 [165] そうすると,本件安全条例4条3項の認定に係る建築物の火災等により直接的な被害を受けることが予想される範囲の地域に存する建築物に居住し,又はこれを所有する者は,当該認定の取消しを求めるにつき法律上の利益を有するものと解するのが相当である。 [166]ウ さらに,建築基準法88条1項は,煙突,広告塔,高架水槽,擁壁その他これらに類する工作物で政令で指定するもの等について,同法6条,20条,32条,33条,37条等の建築物に関する規定を準用し,上記工作物の計画が,上記規定等に適合するものであることについて確認することができなければ,当該工作物の築造等の工事をすることができないこととしているところ,これは,地震,火災等により当該工作物が倒壊し,又は炎上するなど万一の事態が生じた場合に,その周辺の建築物やその居住者に重大な被害が及ぶことのないようにするためであると解される。 [167] 以上のような建築基準法88条1項の趣旨及び目的,同項が同項に掲げる工作物の計画が上記規定に適合するものであることの確認において保護しようとしている利益の内容及び性質等のほか,前記アにおいて述べた同法の目的(1条)をも考慮すると,同法88条1項は,同項及び同項の準用する同法6条1項による確認に係る工作物の倒壊,炎上等による被害が直接的に及ぶことが想定される周辺の一定範囲の地域に存する他の建築物についてその居住者の生命又は身体の安全等及び財産としてのその建築物を,個々人の個別的利益としても保護すべきものとする趣旨を含むものと解すべきである。 [168] そうすると,建築基準法88条1項,同法6条1項に基づく確認に係る工作物の火災等により直接的な被害を受けることが予想される範囲の地域に存する建築物に居住し,又はこれを所有する者は,当該確認の取消しを求めるにつき法律上の利益を有するものと解するのが相当である。 [169](3) 上記の見地から,本件訴えにおける原告らの原告適格の有無について検討する。 ア 原告管理組合の本件建築確認及び本件各工作物確認の各取消しを求める原告適格について [170] 前記前提事実のとおり,原告管理組合は区分所有法3条所定の区分所有者の団体であるところ,原告管理組合が本件建築確認及び本件各工作物確認の各取消しを求める原告適格を有すると認められるためには,原告管理組合自身につき本件建築確認及び本件各工作物確認の各取消しを求める法律上の利益を有することが必要である。 [171] 前述のとおり,建築基準法6条1項及び同法88条1項は,同法6条1項による確認に係る建築物又は工作物の火災等による被害が直接的に及ぶことが想定される周辺の一定範囲の地域に存する他の建築物についてその居住者の生命又は身体の安全等及び財産としてのその建築物を,個々人の個別的利益として保護すべきものとする趣旨を含むものと解すべきところ,建物並びにその敷地及び付属施設の管理を行うための区分所有者の団体である原告管理組合が,生命又は身体の安全等という法律上の利益を有していると認めることはできず,また,区分所有建物を所有しているものでもない原告管理組合が,財産としての建築物という法律上の利益を有しているということもできない。このことは,仮に,本件マンションの区分所有者に本件建築確認あるいは本件各工作物確認の取消しを求める原告適格が認められるとしても,同様である。 [172] したがって,原告管理組合は,本件建築確認及び本件各工作物確認の各取消しを求める原告適格をいずれも有しないというべきである。 イ 別紙原告目録記載2の原告らの本件認定及び本件建築確認の各取消しを求める原告適格について [173] 前記前提事実のとおり,本件建築物と原告管理組合を除く原告らの居住地の位置関係は別紙図面1のとおりであり,また,弁論の全趣旨によると,本件敷地の南側に位置する「B」は原告X7が所有する建築物であることが認められる。そうすると,本件建築物から,原告X1の居住地までの距離は約45m,同X2の居住地までの距離は約10m,同X3の居住地までの距離は約300m,同X6の居住地までの距離は約325m,同X7が所有する「B」までの距離は約6m,同X11の居住地までの距離は約55mとなるところ,本件建築物は,鉄筋コンクリート造で,階数が地上3階,地下1階であり,また,最高の高さが9.750mであることを考慮すると,別紙原告目録記載2の原告らのうち,原告X2及び同X7は,本件建築物の倒壊,炎上等により直接的な被害を受けることが予想される範囲の地域に存する建築物に居住し,又はこれを所有する者と認めることができるが,原告X1,同X3,同X6及び同X11は,本件建築物の倒壊,炎上等により直接的な被害を受けることが予想される範囲の地域に存する建築物に居住し,又はこれを所有する者と認めることが困難であるといわざるを得ない。 [174] したがって,別紙原告目録記載2の原告らのうち,原告X2及び同X7は,本件認定及び本件建築確認の各取消しを求める原告適格をいずれも有するというべきであるが,原告X1,同X3,同X6及び同X11は,本件認定及び本件建築確認の各取消しを求める原告適格をいずれも有しないというべきである。 ウ 原告管理組合を除く原告らの本件各工作物確認の取消しを求める原告適格について [175](ア) 前記前提事実のとおり,本件各工作物と原告管理組合を除く原告らの居住地の位置関係は別紙図面1及び同2のとおりである。 [176](イ) そうすると,本件工作物6号は,前記イのとおり原告X7が所有する「B」とほぼ隣接して築造され,また,本件工作物6号の東端から本件マンションの南端までの距離は約5mであるが,原告管理組合,同X7及び本件マンション居住原告らを除く原告らの居住地までの距離は,いずれも,約20m以上あることになるところ,本件工作物6号が鉄筋コンクリート造の高さ4mの擁壁であることを考慮すると,原告管理組合を除く原告らのうち,原告X7及び本件マンション居住原告らは,本件工作物6号の倒壊等により直接的な被害を受けることが予想される範囲の地域に存する建築物に居住し,又はこれを所有する者と認めることができるが,原告X7及び本件マンション居住原告らを除く原告らは,いずれも本件工作物6号の倒壊等により直接的な被害を受けることが予想される範囲の地域に存する建築物に居住し,又はこれを所有する者と認めることが困難であるといわざるを得ない。 [177] したがって,原告管理組合を除く原告らのうち,原告X7及び本件マンション居住原告らは,本件工作物確認6号の取消しを求める原告適格を有するというべきであるが,原告X7及び本件マンション居住原告らを除く原告ら,すなわち,原告X1,同X2,同X3,同X4,同X5,同X6,同X8,同X9,同X10及び同X11は,本件工作物確認6号の取消しを求める原告適格を有しないというべきである。 [17](ウ) また,本件工作物7号から原告X5の居住地までの距離は約5mであるが,原告管理組合及び同X5を除く原告らの居住地までの距離は,いずれも,約15m以上あることになるところ,本件工作物7号が鉄筋コンクリート造の高さ4.35mの擁壁であることを考慮すると,原告管理組合を除く原告らのうち,原告X5は,本件工作物7号の倒壊等により直接的な被害を受けることが予想される範囲の地域に存する建築物に居住し,又はこれを所有する者と認めることができるが,原告X5を除く原告らは,いずれも本件工作物7号の倒壊等により直接的な被害を受けることが予想される範囲の地域に存する建築物に居住し,又はこれを所有する者と認めることが困難であるといわざるを得ない。 [179] したがって,原告管理組合を除く原告らのうち,原告X5は,本件工作物確認7号の取消しを求める原告適格を有するというべきであるが,原告X5を除く原告らは,本件工作物確認7号の取消しを求める原告適格を有しないというべきである。 [180] 以上によると,本件訴えのうち,①本件認定の取消しを求める部分,②本件建築確認の取消しを求める部分のうち原告X1,同X3,同X6,同X11及び原告管理組合の請求に係る部分,③本件工作物確認6号の取消しを求める部分のうち原告X1,同X2,同X3,同X4,同X5,同X6,同X8,同X9,同X10,同X11及び原告管理組合の請求に係る部分,並びに④本件工作物確認7号の取消しを求める部分のうち原告X5を除く原告らの請求に係る部分は,いずれも不適法であるから,却下を免れないが,本件訴えのうちその余の部分は適法な訴えと認めることができる。 [181] 既に判示したとおり,本件訴えのうち本件認定の取消しを求める部分は不適法であるから,判断を要しない。 [182] 既に判示したとおり,本件建築確認の取消しを求める部分のうち原告X1,同X3,同X6,同X11及び原告管理組合の請求に係る部分は不適法であるから,以下,その余の原告ら(以下,この項において単に「原告ら」という。)の請求に係る部分についてのみ判断する。 [183] 原告らは,本件建築確認の前提となっている本件認定が違法であり,取り消されるべきものであるから,本件建築確認も違法である旨主張する。 [184] しかしながら,既に判示したとおり,本件訴えのうち本件認定の取消しを求める部分は不適法であって,本件認定が違法であり,取り消されるべきものということはできないから,原告らの上記主張はその前提を欠くものであり,採用することができない。 [185] 原告らは,本件建築物は「1の建築物」でなく,本件建築物の建築計画は一敷地一建物の原則に違反するから,本件建築確認は違法である旨主張する。 [186]ア 建築基準法施行令1条1号は,敷地について,「1の建築物又は用途上不可分の関係にある2以上の建築物のある一団の土地をいう」と規定しており,原則として「1の建築物」ごとに1の「敷地」が成立し,2以上の建築物が用途上不可分の関係にあるときは,「用途上不可分の関係にある2以上の建築物」ごとに1の「敷地」が成立するものとし(一敷地一建物の原則),「1の建築物」あるいは「用途上不可分の関係にある2以上の建築物」という概念によって「敷地」の個数が決せられるものとしている。そして,建築基準法は,敷地の接道義務(43条1項),容積率及び建ぺい率の制限(52条,53条),隣地斜線規制及び北側斜線規制(56条),日影規制(56条の2)など,都市計画実現の一環として,都市環境の整備及び保護を図るために建築物の用途,密度,形態及び規模について建築規制を行うための規定による規制を「敷地」単位で行うものとしており,一敷地一建物の原則は,上記規制を実効あらしめる役割を担っている。 [187] ところで,建築物がいかなる場合に「1の建築物」に当たるかという点については,建築基準法,建築基準法施行令等にはこれを定めた規定はない。そして,「1の建築物」が同法による上記規制を実効あらしめるための重要な概念であることを考慮すると,ある建築物が「1の建築物」に当たるか否かについては,同法の趣旨を踏まえて,社会通念に基づき各事案ごとに決せざるを得ないが,同法施行令1条1号が,「1の建築物」と定めていることからすると,同法の趣旨を踏まえて,社会通念に照らし,構造上,外観上及び機能上の一体性があると認められる建築物は,「1の建築物」に当たると解するのが相当である。 [188]イ(ア) 証拠(該当箇所に付記したもののほか,甲1の3,36,37,乙10,13,14)及び弁論の全趣旨によると,①エキスパンションジョイントは,構造体の接続方法の1つで,構造体を物理的に分離しておく方法によって,構造体が相互に力学上影響を及ぼし合わないようにすることで,構造体の構造耐力上の安全性等を向上させることを意図する接続方法であること,②本件建築物は,東棟,南棟及び西棟から成るコの字型をしたもので,東棟と南棟の壁面中心線間に400mmの空間(クリアランス)を,南棟と西棟の壁面中心線間に325mmの空間をそれぞれ設けており,エキスパンションジョイントで接続したものであること,③エキスパンションジョイントによる接続箇所には,床の連続性や雨仕舞を確保するため,当該空間を覆うエキスパンションジョイントカバーを設けており,外壁とエキスパンションジョイントカバーがあいまって,外観上,一体となっていること,④本件建築物は,総戸数29戸の集合住宅として利用されること,⑤本件建築物の南棟の東端住戸の専用階段は,東棟によって支持され,また,南棟の西端住戸の専用階段は,西棟によって支持されること,⑥本件建築物の給水設備は,貯水槽を通さず,給水用増圧ポンプを利用して各住戸へ直接給水する増圧給水方式を採用しているところ,前面道路に埋設された給水本管から1本の給水引込管で引き込み,1個の給水メーターを経て,1基の増圧ポンプにより増圧し,29戸すべての住戸に住戸用メーターを介して給水していること(甲42の1,乙19),⑦本件建築物の排水設備は,29戸すべての住戸からの排水を,本件敷地中心付近の消防活動空地に埋設される1箇所の汚水槽に集中して貯留し,1基のポンプにより揚水し,1本の排水管を経て,前面道路に埋設された排水本管に排出していること(甲42の2,乙20),⑧本件建築物の電気設備は,高圧で引き込まれた電力を1基の地上用変圧器により減圧し,低圧電力を29戸すべての住戸に住戸用分電盤を介して供給していること(甲42の3,乙21),⑨本件建築物のガス設備は,前面道路に埋設されたガス本管から1本の引込管で本件建築物の外壁付近まで引き込み,各住戸に分岐して供給していること(甲42の1,乙19)が認められる。 [189](イ) 上記認定事実のとおり,本件建築物の3つの棟はエキスパンションジョイントで接続しているのであるから,上記3棟は構造上の一体性を有するといい得るものである。そして,本件全証拠を精査しても,上記3棟が構造上一体であると認めることが,接道義務,建ぺい率及び容積率の制限,隣地斜線規制及び北側斜線規制,日影規制などの点において,上記各規制を定めた建築基準法の趣旨及び目的を没却するものであると認めることはできない。したがって,上記3棟は構造上の一体性があると認められる。 [190] また,上記認定事実のとおり,本件建築物の3つの棟のエキスパンションジョイントによる接続箇所にはエキスパンションジョイントカバーが設けられており,それと外壁があいまって,上記3棟は外観上の一体性があると認められる。 [191] さらに,上記認定事実のとおり,本件建築物の南棟の住戸の専用階段のうち一部は他の2つの棟によって支持されており,また,本件建築物は総戸数29戸の集合住宅として利用されるところ,各住戸の住人が生活を維持するために必要な給水設備,排水設備,電気設備及びガス設備等のいわゆるライフラインは,一体として管理され,すべての住戸の住人が共同して利用するものとして設置されるのであるから,本件建築物の3つの棟は機能上の一体性があると認められる。 [192]ウ(ア) 原告らは,エキスパンションジョイントによって接続された本件建築物の3つの棟は,構造的にはそれぞれ分離独立した別個の3の建築物であるから,「1の建築物」ではない旨主張する。 [193](イ) しかしながら,前述のとおり,エキスパンションジョイントは,構造体を物理的に分離しておく方法によって,構造体が相互に力学上影響を及ぼし合わないようにすることで,構造体の構造耐力上の安全性等を向上させることを意図する接続方法なのであって、エキスパンションジョイントを使用したとしても,それは構造物を接続する1つの方法であり,それにより当該部分は一応一体化するということができる。 [194](ウ) また,平成18年法律第92号による改正前の建築基準法20条2号は,一定の建築物にあっては,政令で定める基準に従った構造計算によって確かめられる安全性を有することを要する旨規定し,これを受けて,平成19年政令第49号による改正前の建築基準法施行令81条は,同法20条2号に規定する建築物(超高層建築物を除く。)の構造計算について規定し,そして,同法施行令81条2項は,「2以上の部分がエキスパンションジョイントその他の相互に応力を伝えない構造方法のみで接している建築物の当該建築物の部分は,前項の規定の適用については,それぞれ別の建築物とみなす。」と規定している(なお,建築基準法施行令81条4項参照)。 [195] このように,平成19年政令第49号による改正前の建築基準法施行令81条2項は,その文理上,1の「建築物」であっても,構造計算に当たっては,エキスパンションジョイント等の構造方法のみで接している「当該建築物の部分」は,別の建築物とみなすという規定であり,エキスパンションジョイントが力学上相互に応力を伝えないものである以上,エキスパンションジョイント等の構造方法のみで接している部分をそれぞれ別の建築物として構造計算の規定を適用するのは,当然の事理であるから,同項がエキスパンションジョイントを使用している場合には「1の建築物」であることを否定する趣旨の規定であると解することはできない。 [196] むしろ,平成19年政令第49号による改正前の建築基準法施行令81条2項が「前項の規定の適用については」,それぞれ別の建築物と「みなす」と規定していることからすると,エキスパンションジョイント等の構造方法のみで接している部分がある建築物であっても,全体として「1の建築物」に当たる場合があることを前提としているものと解される。 [197](エ) そうすると,本件建築物がエキスパンションジョイントを使用して3つの棟を接続していることをもって,上記3棟がそれぞれ分離独立した別個の建築物であるとして,本件建築物が「1の建築物」でないということはできず,原告らの上記主張を採用することはできない。 [198]エ そして,そのほかに,本件建築物が「1の建築物」に当たらないとすべきことをうかがわせるに足りる証拠はない。 [199] したがって,本件建築物は建築基準法施行令1条1項にいう「1の建築物」であると認められるから,本件建築物の建築計画が一敷地一建物の原則に違反し,本件建築確認は違法である旨の原告らの主張を採用することはできない。 [200]ア 本件建築物の建築計画が本件安全条例6条2項の規定する要件を満たす必要があるものであることについては,当事者間に争いがないところ,原告らは,本件建築確認の申請時に提出された擁壁計画平面図(乙10の9枚目)に 「確認申請後,着工前に試掘調査を行い既存底版をはじめとする既存擁壁の状態を確認する。調査結果に基づき,鋼製山留めの位置及び必要性について検討し,安全性を確保する。また,建築主事との協議を行う。」との記載があることから,新宿区建築主事は本件建築確認に当たり,本件既設擁壁に構造耐力上支障がないことを確認していないなどとして,本件建築確認は本件安全条例6条2項に違反する旨主張する。 [201]イ そこで検討すると,証拠(乙10,15)及び弁論の全趣旨によると,①本件敷地の南側境界付近には,既にコンクリート製の本件既設擁壁が設置されていること,②新宿区建築主事らは,本件建築確認に先立つ現地調査において,本件既設擁壁の擁壁面が垂直ではないこと,構造耐力上の影響があるような目立ったはらみや亀裂がないこと,本件既設擁壁の下部には排水施設が設けられていることなどを確認したこと,③本件建築物の建築計画は,本件建築物の基礎(直接基礎)を本件既設擁壁への影響範囲外の位置及び深さ,すなわち,当該地盤の擁壁を要しないこう配の上限内に設けることにより,本件建築物の荷重が本件既設擁壁に影響を与えないようにしていること,④本件建築物の建築計画は,本件既設擁壁の背面側(本件建築物側)の高低差が一定でない土を15cmから50cmすきとることで,本件既設擁壁に対する背面土圧を軽減することを図っていること,⑤本件既設擁壁の底版の背面側への突出状態が適切であれば,本件既設擁壁の背面側に「既設擁壁保護用鋼製山留」を設ける必要はない可能性があったものの,上記底版の状態の調査及び確認には大規模な工事が必要となるため,建築確認をする以前にその調査及び確認を行うことは著しく困難であったこと,⑥そのため,本件建築物の建築計画は,上記底版の突出が無いものと仮定し,本件既設擁壁の背面側に「既設擁壁保護用鋼製山留」を設け,本件既設擁壁への背面側からの土圧を遮断することにより,本件既設擁壁の構造耐力上の安全性を確実なものとすることとしたこと,⑦本件建築確認後,実際の工事の段階においては,上記底版の状態の調査及び確認が可能となるため,その段階において,改めて上記底版の状態の調査及び確認することとしたこと,⑧実際の工事の段階において,上記底版の調査及び確認をし,その結果,上記底版の背面側への突出状態が適切であれば,「既設擁壁保護用鋼製山留」を設ける必要はない可能性があることから,その段階において,建築主らが新宿区建築主事と協議を行い,「既設擁壁保護用鋼製山留」の設置位置及び必要性を再検討することとしたことが認められる。 [202]ウ 本件建築物の建築計画は,本件敷地の南側境界付近に新たな擁壁を設けるとはしていないため,本件安全条例6条2項の規定する要件を満たすためには,本件既設擁壁に構造耐力上支障がないということができなければならないところ,上記認定事実のとおり,確かに,新宿区建築主事は,本件建築確認に当たり,事前に本件既設擁壁の底版の状態について調査及び確認をしていないものの,それは,上記底版の調査及び確認には大規模な工事が必要であるなど,その実施が著しく困難であることによるものである。また,上記底版の調査及び確認によって,本件既設擁壁の底版の突出状態が適切であることを確認することができないため,本件建築物の建築計画は,上記底版の突出状態が最も不適切である状態,すなわち上記底版の突出がないものと仮定し,そのような状態においても本件既設擁壁の安全性を確保し得るように,本件既設擁壁への背面側からの土圧を遮断するための「既設擁壁保護用鋼製山留」を設置することとされたのであるから,新宿区建築主事が本件建築確認に当たり,事前に本件既設擁壁の底版の状態について調査及び確認をしていないとしても,それをもって,「構造耐力上支障がない」ことを確認していないということはできない。 [203] そして,上記認定事実によると,新宿区建築主事らは,本件建築計画の内容の審査及び現地調査等によって本件既設擁壁の状態等を確認し,仮に,本件既設擁壁の底版に突出が無かったとしても,「既設擁壁保護用鋼製山留」を設置することにより本件既設擁壁の安全性が確保されるとして,本件既設擁壁に「構造耐力上支障がない」と確認した上で,本件建築確認をしたということができる。 [204]エ そして,そのほかに,本件既設擁壁に「構造耐力上支障がない」ことを否定するに足りる証拠はない。 [205] したがって,本件建築確認は本件安全条例6条2項に違反する旨の原告らの上記主張を採用することはできない。 [206] 原告らは,新宿区建築主事は,本件建築物の建築主らに対し,本件建築物の建築計画が建築基準関係規定に適合することについて疑義があり,期限内に確認することができない旨の通知をしたにもかかわらず,その後,当該疑義がある点について法適合性を確認しないまま本件建築確認をしたとして,本件建築確認は違法である旨主張する。 [207] しかしながら,前記前提事実のとおり,新宿区建築主事は,本件建築物の建築主らに対し,本件建築物の確認申請について,建築基準法の定める期限内に確認することができない旨の通知をしたにすぎない。そして,新宿区建築主事は,上記通知から5箇月以上経過した後に本件建築確認をしていることからすると,上記通知において期限内に確認することができないことの理由として挙げた点(甲8)について,建築基準関係規定に適合する旨を確認した上で本件建築確認をしたものと推認することができ,これを覆すに足りる証拠は見当たらない。 [208] したがって,原告らの上記主張を採用することはできない。 [209]ア 原告らは,本件建築物は長屋ではなく共同住宅であり,特殊建築物に当たるのであって,路地状部分のみによって道路に接する本件敷地には本件建築物を建築することはできないから(本件安全条例10条),本件建築確認は同条に違反し違法である旨主張するものと解される。 [210]イ ところで,建築基準法においては,長屋と共同住宅はそれぞれ異なるものとして区別され(30条,93条1項),両者のうち共同住宅のみが特殊建築物とされ(2条2号),特殊建築物については,長屋を含む他の建築物に比べてより高度の安全性を要求する規定などが設けられている(6条1項1号,24条,27条,35条等)。 [211] また,本件安全条例においても,長屋と異なり,共同住宅は特殊建築物とされ(9条2号),特殊建築物には,接道,防火構造,避難階段等の点に関して他の建築物に比べて厳しい特別の規制が設けられている(10条,11条の2,18条等)。 [212] このように,建築基準関係法令において共同住宅が長屋に比べ厳しい規制を受けることとされているのは,共同住宅及び長屋は,いずれも2以上の住戸を有する1の建築物で,隣接又は重ね合う住戸と内部での行き来ができない完全に分離された構造を有するものであるが,共同住宅は,長屋と異なり,不特定又は多数の人が通行の用に供する廊下,階段等の共用部分を有しており,災害時において,当該共同住宅の住人等が,それぞれ自己の住戸の玄関等から直接敷地外に避難することはできず,当該共用部分を通行して避難しなければならないため,その避難に困難が生じるおそれがあることから,その安全を確保する必要があるためであると解される。そうすると,長屋であるか共同住宅であるかの判断は,不特定又は多数の人が通行の用に供する当該建築物の住戸の玄関に至る廊下,階段等の共用部分を有しているか否かによるべきであると解するのが相当である。 [213]ウ 前記(2)イ(ア)のとおり,本件建築物は,給水設備,排水設備,ガス設備,電気設備等の各住戸の住人が共用する設備を有しているものの,上記各設備は,不特定又は多数の人が通行の用に供する本件建築物の住戸の玄関に至るものではなく,また,本件建築物の住人が上記各設備を共用することによって,災害時において,本件建築物の住人等の本件敷地外への避難に関し,困難が生じるという事情はうかがわれないから,上記各設備は,長屋であるか共同住宅であるかを判断する際の要素である不特定又は多数の人が通行の用に供する当該建築物の住戸の玄関に至る廊下,階段等の共用部分には該当しないというべきである。 [214] また,証拠(甲1の3,37,49,50の1,乙9,10,13,14,34)及び弁論の全趣旨によると,本件建築物は外階段,バルコニー及び緑化屋上を有するものの,これらは,いずれも特定の住戸の住人等のみの用に供されるものであり,不特定又は多数の人が通行の用に供するものではなく,また,本件建築物に設置される連結送水管は,送水口,配管,放水口,放水器具等により構成されるものであり,不特定又は多数の人が通行の用に供するものではないことが認められる。 [215] したがって,本件建築物は不特定又は多数の人が通行の用に供する当該建築物の住戸の玄関に至る廊下,階段等の共用部分を有しないということができるから,本件建築物は長屋であるというべきである。 [216]エ 原告らは,①本件建築物に類似する建築物が長屋と判定された事例はない,②連結送水管は共同住宅の住人により組織する管理組合がなければ実効性のある管理をすることができない,③本件建築物の外階段,給水設備等は区分所有法上の「共用部分」に該当する旨主張するが,仮に,原告らが主張する事実が認められたとしても,本件建築物が不特定又は多数の人が通行の用に供する当該建築物の住戸の玄関に至る廊下,階段等の共用部分を有しないことから長屋であるとした上記判断を左右するものではないから,上記各主張はいずれも失当である。 [217]オ そして,長屋である本件建築物に本件安全条例10条は適用されないから,本件建築確認は同条に違反する旨の原告らの上記主張を採用することはできない。 [218] 以上によると,本件建築確認は違法である旨の原告らの主張はいずれも採用することができない。 [219] そして,本件全記録を精査しても,そのほかに本件建築確認に違法な点は見当たらないから,本件建築確認は適法であるというべきである。 [220] 既に判示したとおり,本件工作物確認6号の取消しを求める部分のうち原告X1,同X2,同X3,同X4,同X5,同X6,同X8,同X9,同X10,同X11及び原告管理組合の請求に係る部分は不適法であるから,以下,その余の原告らである原告X7及び本件マンション居住原告ら(以下,この項において単に「原告ら」という。)の請求に係る部分についてのみ判断する。 ア 法適合性に疑義があった点について確認していないとの主張について [221] 原告らは,新宿区建築主事は,本件工作物6号の築造主らに対し,本件工作物6号の築造計画が建築基準関係規定に適合することについて疑義があり,期限内に確認することができない旨の通知をしたにもかかわらず,その後,当該疑義がある点について法適合性を確認しないまま本件工作物確認6号をしたとして,本件工作物確認6号は違法である旨主張する。 [222] しかしながら,前記前提事実のとおり,新宿区建築主事は,本件工作物6号の築造主らに対し,本件工作物6号の確認申請について,平成18年法律第92号による改正前の建築基準法20条及び建築基準法施行令38条に基づく地耐力等について疑義があるので,所定の期限内に確認することができない旨の通知をしたにすぎない。そして,新宿区建築主事は,上記通知から約1箇月を経過した時期に本件工作物確認6号をしていることからすると,上記通知において期限内に確認することができないことの理由として挙げた点について,建築基準関係規定に適合する旨を確認した上で本件工作物確認6号をしたものと推認することができ,これを覆すに足りる証拠は見当たらない。 [223] したがって,原告らの上記主張を採用することはできない。 イ 本件敷地外擁壁に構造耐力上支障がないことを確認していないとの主張について [224] 原告らは,新宿区建築主事は,本件工作物確認6号に当たり,本件敷地外擁壁に構造耐力上支障がないことを確認していないとして,本件工作物確認6号は違法である旨主張する。 [225] しかしながら,証拠(乙16)及び弁論の全趣旨によると,本件工作物6号の築造計画は,本件工作物6号の基礎底版を本件敷地外擁壁へ影響を与える範囲外の位置及び深さに設けることにより,本件工作物6号の荷重及び本件工作物6号の背面側の土圧が本件敷地外擁壁に構造的な影響を与えないようにしていることが認められ,そのほかに,本件工作物確認6号において,本件敷地外擁壁に構造上支障がないことを確認しなければならない事情をうかがわせる証拠はない。 [226] したがって,原告らの上記主張を採用することはできない。 ウ 石積擁壁に関する主張について [227] 原告らは,本件敷地の南西側境界付近にある石積擁壁について,隣地住民の協力を得ることができない状況でやり替えを指導しており行政手続法に違反する旨主張するものと解されるが,仮に,原告らの主張する事実が認められたとしても,それが本件工作物確認6号の違法事由となるとは解されないから,その主張は失当である。 [228]エ 以上によると,本件工作物確認6号が違法である旨の原告らの主張はいずれも採用することができない。 [229] そして,本件全記録を精査しても,そのほかに本件工作物確認6号に違法な点は見当たらないから,本件工作物確認6号は適法であるというべきである。 [230] 既に判示したとおり,本件工作物確認7号の取消しを求める部分のうち原告X5を除く原告らの請求に係る部分は不適法であるから,以下,原告X5の請求に係る部分についてのみ判断する。 ア 法適合性に疑義があった点について確認していないとの主張について [231] 原告X5は,新宿区建築主事は,本件工作物7号の築造主らに対し,本件工作物7号の築造計画が建築基準関係規定に適合することについて疑義があり,期限内に確認することができない旨の通知をしたにもかかわらず,その後,当該疑義がある点について法適合性を確認しないまま本件工作物確認7号をしたとして,本件工作物確認7号は違法である旨主張する。 [232] しかしながら,前記前提事実のとおり,新宿区建築主事は,本件工作物7号の築造主らに対し,本件工作物7号の確認申請について,平成18年法律第92号による改正前の建築基準法20条及び建築基準法施行令38条に基づく地耐力等について疑義があるので,所定の期限内に確認することができない旨の通知をしたにすぎない。そして,新宿区建築主事は,上記通知から約1箇月を経過した時期に本件工作物確認7号をしていることからすると,上記通知において期限内に確認することができないことの理由として挙げた点について,建築基準関係規定に適合する旨を確認した上で本件工作物確認7号をしたものと推認することができ,これを覆すに足りる証拠は見当たらない。 [233] したがって,原告X5の上記主張を採用することはできない。 イ 石積擁壁に関する主張について [234] 原告X5は,石積擁壁について,前記(1)ウと同旨の主張をするものと解されるが,その主張が失当であることについては,前記(1)ウにおいて本件工作物確認6号に関して判示したところと同様である。 [235]ウ 以上によると,本件工作物確認7号が違法である旨の原告X5の主張はいずれも採用することができない。 [236] そして,本件全記録を精査しても,そのほかに本件工作物確認7号に違法な点は見当たらないから,本件工作物確認7号は適法であるというべきである。 [237](1) 前記前提事実に加え,証拠(該当箇所に付記したもの)及び弁論の全趣旨によると,以下の事実が認められる。 [238]ア(ア) 原告らは,新宿区建築審査会に対し,平成18年9月5日,本件認定,本件建築確認及び本件各工作物確認の各取消しを求める本件審査請求をした。(前記前提事実,甲10) [239](イ) 新宿区建築審査会は,新宿区建築主事に対し,行服法22条1項の規定に基づき,本件審査請求に係る原告らの「審査請求申立書」の副本を送付するとともに,平成18年9月13日付け「審査請求書の送付について」と題する書面により,弁明書の提出を求め,その提出期限を同書面到達の日からおおむね2週間とする旨通知した。(乙23) [240]イ(ア) 新宿区長及び新宿区建築主事は,新宿区建築審査会に対し,平成18年10月4日付け「弁明書」を提出した。(甲11の2) [241](イ) 新宿区建築審査会は,原告らに対し,行服法22条5項に基づき,「弁明書」の副本を送付するとともに,平成18年10月4日付け「弁明書の送付について」と題する書面により,「弁明書」に対する反論があるときは反論書を提出するよう求め,その提出期限を同書面到達の日からおおむね2週間とする旨通知した。(乙24) [242]ウ(ア) 原告らは,新宿区建築審査会に対し,行服法23条に基づき,平成18年10月23日付け「反論書(1回)」を提出し,その中で,①本件建築物は長屋ではなく共同住宅である旨,②本件建築物はエキスパンションジョイントで接続されていても1の建築物ではないから,本件建築確認は一敷地一建物の原則に違反する旨等主張した。(甲12) [243](イ) 新宿区建築審査会は,新宿区長及び新宿区建築主事に対し,「反論書(1回)」の副本を送付するとともに,平成18年10月27日付け「反論書及び意見書の送付について」と題する書面により,「反論書(1回)」に対する弁明があるときは弁明書を提出するよう求め,その提出期限を同書面到達の日からおおむね2週間とする旨通知した。(乙25) [244]エ(ア) 新宿区長及び新宿区建築主事は,新宿区建築審査会に対し,平成18年12月7日付け「弁明書2」を提出し,その中で,「反論書(1回)」に対する反論として,①本件建築物は「廊下・階段等の共用部分を有しない」ことなどから長屋である旨,②本件建築物はエキスパンションジョイントによる接続,住戸専用階段の設置状況等に照らすと,構造上,機能上及び外観上一体の建築物であるから,1の建築物である旨等主張した。(甲13) [245](イ) 新宿区建築審査会は,原告らに対し,行服法22条5項に基づき,「弁明書2」の副本を送付するとともに,平成18年12月8日付け「弁明書2の送付について」と題する書面により,「弁明書2」に対する反論があるときは反論書を提出するよう求め,その提出期限を同書面到達の日からおおむね2週間とする旨通知した。(乙26) [246]オ(ア) 原告らは,新宿区建築審査会に対し,行服法23条に基づき,平成19年1月24日,同月29日付け「反論書(2回)」を提出し,その中で,「弁明書2」に対する反論として,①本件建築物は,その規模,形状,接道,駐車施設,給排水設備及び電気設備等の状況,安全性等に照らすと,長屋ではなく共同住宅である旨,②本件建築物は3棟から成る3の建築物である旨等主張した。(甲14,乙27) [247](イ) 新宿区建築審査会は,新宿区長及び新宿区建築主事に対し,「反論書(2回)」の副本を送付するとともに,平成19年1月26日付け「反論書(2)の送付について」と題する書面により,「反論書(2回)」に対する弁明があるときは弁明書を提出するよう求め,その提出期限を同書面到達の日からおおむね2週間とする旨通知した。(乙27) [248]カ 新宿区建築審査会は,平成19年1月29日,建築基準法94条3項に基づき、本件審査請求について口頭審査を行った。(甲19) [249]キ(ア) 原告らは,新宿区建築審査会に対し,行服法23条に基づき,平成19年2月20日付け「反論書(3回)」を提出した。(甲15) [250](イ) 新宿区建築審査会は,新宿区長及び新宿区建築主事に対し,「反論書(3回)」の副本を送付するとともに,平成19年2月22日付け「反論書(3)の送付について」と題する書面により,「反論書(3回)」に対する弁明があるときは弁明書を提出するよう求め,その提出期限を同書面到達の日からおおむね2週間とする旨通知した。(乙28) [251]ク(ア) 新宿区長及び新宿区建築主事は,新宿区建築審査会に対し,平成19年2月22日,同月21付け「弁明書3」を提出し,その中で,「反論書(2回)」に対する反論として,①「弁明書2」において示した長屋の基準に当てはめると本件建築物は長屋であり,原告らが「反論書(2回)」において主張する長屋の基準を採用することはできない旨,②「弁明書2」において示したとおり,本件建築物は構造上,機能上及び外観上の観点から1つの建築物である旨等主張した。(甲16) [252](イ) 新宿区建築審査会は,原告らに対し,行服法22条5項に基づき,「弁明書3」の副本を送付するとともに,平成19年2月26日付け「弁明書3の送付について」と題する書面により,「弁明書3」に対する反論があるときは反論書を提出するよう求め,その提出期限を同書面到達の日からおおむね2週間とする旨通知した。(乙29) [253]ケ(ア) 原告らは,新宿区建築審査会に対し,行服法23条に基づき,平成19年3月30日付け「反論書(4回)」を提出し,その中で,「弁明書3」に対する反論として,①新宿区長及び新宿区建築主事が「弁明書2」において示した長屋の基準に本件建築物が当てはまるとしても,建築基準法の趣旨に照らすと,本件建築物を長屋ということはできない旨,②新宿区長及び新宿区建築主事の「弁明書3」における住戸専用階段の設置状況に関する主張は,本件建築物が「完全分離型の構造」で「廊下・階段等の共用部分を有しない」ことから長屋である旨の主張と矛盾する旨主張した。(甲17) [254](イ) 新宿区建築審査会は,新宿区長及び新宿区建築主事に対し,「反論書(4回)」の副本を送付するとともに,平成19年4月6日付け「反論書(4)の送付について」と題する書面により,「反論書(4回)」に対する弁明があるときは弁明書を提出するよう求め,その提出期限を同書面到達の日からおおむね2週間とする旨通知した。(乙30) [255]コ(ア) 原告らは,新宿区建築審査会に対し,行服法23条に基づき,平成19年4月5日付け「反論書(4回 その2)」を提出した。(乙31の2) [256](イ) 新宿区建築審査会は,新宿区長及び新宿区建築主事に対し,「反論書(4回 その2)」の副本を送付するとともに,平成19年4月9日付け「反論書(4回 その2)の送付について」と題する書面により,「反論書(4回 その2)」に対する弁明があるときは弁明書を提出するよう求め,その提出期限を同書面到達の日からおおむね2週間とする旨通知した。(乙31の1) [257]サ(ア) 原告らは,新宿区建築審査会に対し,行服法23条に基づき,平成19年5月18日付け「反論書(5回)」を提出し,その中で,本件建築物はエキスパンションジョイントで接続されているにすぎないことなどから1の建築物ということはできない旨主張した。(乙32の2) [258](イ) 新宿区建築審査会は,新宿区長及び新宿区建築主事に対し,「反論書(5回)」の副本を送付するとともに,平成19年5月24日付け「反論書(5回)の送付について」と題する書面により,「反論書(5回)」に対する弁明があるときは弁明書を提出するよう求め,その提出期限を同書面到達の日からおおむね2週間とする旨通知した。(乙32の1) [259]シ(ア) 新宿区長及び新宿区建築主事は,新宿区建築審査会に対し,平成19年5月30日付け「弁明書4」を提出し,その中で,「反論書(5回)」に対する反論として,「弁明書2」及び「弁明書3」において主張した事情に加え,本件建築物が1の建築物であることを示す事情として,新たに,本件建築物の給排水設備,電気設備等の計画は,本件建築物が1の建築物であることを前提としたものとなっていることを挙げた。(甲18) [260](イ) 新宿区建築審査会は,原告らに対し,行服法22条5項に基づき,「弁明書4」の副本を送付するとともに,平成19年5月31日付け「弁明書4の送付について」と題する書面により,「弁明書4」に対する反論があるときは反論書を提出するよう求め,その提出期限を同書面到達の日からおおむね2週間とする旨通知した。原告らは,同年6月4日,同書面の送達を受けた。(甲43) [261]ス 新宿区建築審査会は,平成19年6月11日,本件審査請求について,原告管理組合の審査請求を却下し,その余の原告らの審査請求をいずれも棄却する旨の本件裁決をした。新宿区建築審査会は,本件裁決において,エキスパンションジョイントによって接続されていることや住戸専用階段の設置状況等から,本件建築物は1の建築物である旨判断した。(前記前提事実,乙4) [262](2)ア 行服法23条が,審査請求人は,処分庁からの弁明書に対する反論書を提出することができるとしたのは,審査請求手続において審査請求人に十分な主張及び立証を尽くさせることによって,審査請求人の手続保障を図るとともに,裁決の公正及び妥当性を確保するためであると解される。 [263] そうすると,審査庁が審査請求人に対して反論書を提出させないことで,審査請求人が十分な主張及び立証をすることができなかったにもかかわらず,そのような状態においてされた裁決は,審査請求人の手続的利益を侵害するものである上,公正かつ妥当な裁決ということができず,違法というべきであるが,審査請求人において十分な主張及び立証の機会が確保されたといえる限り,審査請求人にいかなる程度の反論をさせるかは,審査庁の合理的な裁量にゆだねられていると解するのが相当である。 [264]イ 上記認定事実によると,①原告らは「反論書(1回)」において,本件建築物は1の建築物ということができず,本件建築確認は一敷地一建物の原則に違反する旨主張し,②これに対し,新宿区長及び新宿区建築主事は,「弁明書2」において,本件建築物は,エキスパンションジョイントによる接続,住戸専用階段の設置状況等に照らすと,構造上,機能上及び外観上,一体の建物であり,1の建築物である旨反論し,③これに対し,原告らは,「反論書(2回)」において,本件建築物は3棟から成る3の建築物である旨反論し,④これに対し,新宿区長及び新宿区建築主事は,「弁明書3」において,「弁明書2」におけるのと同様の主張をし,⑤これに対し,原告らは,「反論書(4回)」において,新宿区長及び新宿区建築主事による住戸専用階段の設置状況が1の建築物であることを示す事情となる旨の主張は,新宿区長及び新宿区建築主事による本件建築物が共同住宅ではなく長屋である旨の主張と矛盾する旨反論し,さらに,「反論書(5回)」において,本件建築物はエキスパンションジョイントで接続されているにすぎないことなどから1の建築物とはいえない旨反論し,⑥これに対し,新宿区長及び新宿区建築主事は,「弁明書4」において,本件建築物が1の建築物であることを示す事情として,「弁明書2」及び「弁明書3」において主張した事情に加え,新たに,本件建築物の給排水設備,電気設備等の計画を挙げたことが認められる。 [265] そうすると,本件審査請求の手続において,原告らと新宿区長及び新宿区建築主事は,本件建築物が1の建築物ということができるか否かについて,エキスパンションジョイントによる接続及び住戸専用階段の設置状況に関する点を中心に,互いに複数回にわたり主張及び反論を繰り返しており,その内容も,従前の主張と重複する点にわたることが多く,双方の主張及び立証は十分に尽くされていたということができる。また,新宿区長及び新宿区建築主事は,当初から,本件建築物が構造上,機能上及び外観上,一体であることから1の建築物ということができる旨主張しており,本件建築物の給排水設備,電気設備等の計画は,本件建築物が機能上一体であることを示す事情の1つであるから,「弁明書4」の内容は,新たに主張を追加するものではなく,従前の主張を補充するものにすぎない。 [266]ウ 原告らは,「弁明書4」において示された本件建築物の給排水設備,電気設備等の計画が,本件建築物は共同住宅でなく長屋であることを示す重要な事情であるとして,「弁明書4」に対する反論をさせなかったことが違法である旨主張するものと解される。 [267] しかしながら,本件建築物が長屋であるか共同住宅であるかの判断において,本件建築物の給排水設備,電気設備等の設置状況が結論に影響を与えないことは,前記5(5)において判示したとおりであるから,そもそも,原告らが「弁明書4」に対して上記反論をしたところで,適切な反論とはなり得なかったと考えられる上,上記認定事実のとおり,原告らは,「反論書(2回)」において,本件建築物が共同住宅であることを示す事情として給排水設備,電気設備等の状況を挙げていることからすると,その時点において,既に,本件建築物の給排水設備,電気設備等の計画を認識していたということができるから,「弁明書4」において示された事情が,原告らにとって当該書面により新たに判明した事情であったということも困難である。 [268] そうすると,新宿区建築審査会が原告らに対して「弁明書4」に対する反論をさせなかったとしても,原告らに十分な反論の機会が確保されなかったということはできない。 [269]エ 以上によると,新宿区建築審査会が,原告らに対し,「弁明書4」の内容について,更なる反論をさせないまま,本件建築物は1の建築物である旨判断して本件裁決をしたことをもって,原告らに十分な主張及び立証の機会が確保されなかったということはできず,また,上記反論をさせないまま本件裁決をすることが不合理であったということもできない。 [270] そうすると,新宿区建築審査会は,原告らに対し,書面において,「弁明書4」に対する反論があるときは反論書を提出するよう求め,その提出期限を同書面到達の日からおおむね2週間とする旨通知しており,原告らは,平成19年6月4日,同書面の送達を受けているのであるから,同日から2週間を経過しない同月11日の時点で本件裁決をしたことは不適切な対応であったといわざるを得ないとしても,そのことをもって,本件裁決が取り消されるべき違法なものであるということはできない。 [271](3) また,原告らは,新宿区建築審査会は原告らの反論権を意図的に奪った旨主張するが,本件全証拠を精査しても,そのような事情をうかがわせる証拠はなく,その主張を採用することはできない。 [272] さらに,そのほかに原告らが主張する本件裁決の違法事由は,結局のところ,いずれも原処分である本件認定,本件建築確認等の違法事由にすぎないから,本件裁決の違法事由とはならないというべきである(行訴法10条2項参照)。 [273](4) 以上によると,本件裁決が違法である旨の原告らの主張はいずれも採用することができない。 [274] そして,本件全記録を精査しても,そのほかに本件裁決に違法な点は見当たらないから,本件裁決は適法であるというべきである。 [275] よって,その余の点について判断するまでもなく,本件訴えのうち,①本件認定の取消しを求める部分,②本件建築確認の取消しを求める部分のうち原告X1,同X3,同X6,同X11及び原告管理組合の請求に係る部分,③本件工作物確認6号の取消しを求める部分のうち原告X1,同X2,同X3,同X4,同X5,同X6,同X8,同X9,同X10,同X11及び原告管理組合の請求に係る部分,並びに④本件工作物確認7号の取消しを求める部分のうち原告X5を除く原告らの請求に係る部分はいずれも不適法であるから,これらをいずれも却下し,原告らのその余の請求はいずれも理由がないから,これらをいずれも棄却することとし,訴訟費用の負担につき,行訴法7条,民訴法61条,65条1項本文を適用して,主文のとおり判決する。 裁判長裁判官 杉原則彦 裁判官 松下貴彦 裁判官 島田尚人 (別紙) 1(1)敷地の地名地番 東京都新宿区下落合〔以下略〕 (2)建築物の概要 主要用途 長屋 工事種別 新築 延べ面積 申請部分 2,820.58平方メートル 申請棟数 1棟 主たる構造 鉄筋コンクリート造(壁式) 主たる階数 地階を除く階数(地上) 3階 地階の階数 1階 最高の高さ 9.750m 2(1)敷地の地名地番 東京都新宿区下落合〔以下略〕 (2)工作物の概要 種類 擁壁 高さ 4m 構造 鉄筋コンクリート造 工事種別 新築 3(1)敷地の地名地番 東京都新宿区下落合〔以下略〕 (2)工作物の概要 種類 擁壁 高さ 4.35m 構造 鉄筋コンクリート造 工事種別 新築 (別紙) 1 X12,X13,X14,X15,X16,X17,X18,X19,X20,X21,X22,X24,X25,X26,X27 2 X1,X2,X3,X6,X7,X11 (別紙図面1)
(別紙図面2)
第6条第1項 建築主は、第1号から第3号までに掲げる建築物を建築しようとする場合(増築しようとする場合においては、建築物が増築後において第1号から第3号までに掲げる規模のものとなる場合を含む。)、これらの建築物の大規模の修繕若しくは大規模の模様替をしようとする場合又は第4号に掲げる建築物を建築しようとする場合においては、当該工事に着手する前に、その計画が建築基準関係規程(この法律並びにこれに基く命令及び条例の規定(以下「建築基準法令の規定」という。)その他建築物の敷地、構造又は建築設備に関する法律並びにこれに基づく命令及び条例の規定で政令で定めるものをいう。以下同じ。)に適合するものであることについて、確認の申請書を提出して建築主事の確認を受け、確認済証の交付を受けなければならない。当該確認を受けた建築物の計画の変更(国土交通省令で定める軽微な変更を除く。)をして、第1号から第3号までに掲げる建築物を建築しようとする場合(増築しようとする場合においては、建築物が増築後において第1号から第3号までに掲げる規模のものとなる場合を含む。)、これらの建築物の大規模の修繕若しくは大規模の模様替をしようとする場合又は第4号に掲げる建築物を建築しようとする場合も、同様とする。一 別表第1(い)欄に掲げる用途に供する特殊建築物で、その用途に供する部分の床面積の合計が100平方メートルを超えるもの 二 木造の建築物で3以上の階数を有し、又は延べ面積が500平方メートル、高さが13メートル若しくは軒の高さが9メートルを超えるもの 三 木造以外の建築物で2以上の階数を有し、又は延べ面積が200平方メートルを超えるもの 四 前3号に掲げる建築物を除くほか、都市計画区域(都道府県知事が都道府県都市計画審議会の意見を聴いて指定する区域を除く。)、準都市計画区域(市町村長が市町村都市計画審議会(当該市町村に市町村都市計画審議会が置かれていないときは、当該市町村の存する都道府県の都道府県都市計画審議会)の意見を聴いて指定する区域を除く。)若しくは景観法(平成16年法律第110号)第74条第1項の準景観地区(市町村長が指定する区域を除く。)内又は都道府県知事が関係市町村の意見を聴いてその区域の全部若しくは一部について指定する区域内における建築物 第43条 建築物の敷地は、道路(次に掲げるものを除く。第44条第1項を除き、以下同じ。)に2メートル以上接しなければならない。ただし、その敷地の周囲に広い空地を有する建築物その他の国土交通省令で定める基準に適合する建築物その他の国土交通省令で定める基準に適合する建築物で、特定行政庁が交通上、安全上、防火上及び衛生上支障がないと認めて建築審査会の同意を得て許可したものについては、この限りでない。 一 自動車のみの交通の用に供する道路 二 高架の道路その他の道路であつて自動車の沿道への出入りができない構造のものとして政令で定める基準に該当するもの(第44条第1項第3号において「特定高架道路等」という。)で、地区計画の区域(地区整備計画が定められている区域のうち都市計画法第12条の11の規定により建築物その他の工作物の敷地として併せて利用すべき区域として定められている区域に限る。同号において同じ。)内のもの 2 地方公共団体は、特殊建築物、階数が3以上である建築物、政令で定める窓その他の開口部を有しない居室を有する建築物又は延べ面積(同一敷地内に2以上の建築物がある場合においては、その延べ面積の合計。第4節、第7節及び別表第3において同じ。)が1000平方メートルを超える建築物の敷地が接しなければならない道路の幅員、その敷地が道路に接する部分の長さその他その敷地又は建築物と道路との関係についてこれらの建築物の用途又は規模の特殊性により、前項の規定によつては避難又は通行の安全の目的を充分に達し難いと認める場合においては、条例で、必要な制限を付加することができる。 第4条 延べ面積(同一敷地内に2以上の建築物がある場合は、その延べ面積の合計とする。)が1000平方メートルを超える建築物の敷地は、その延べ面積に応じて、次の表に掲げる長さ以上道路に接しなければならない。
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