秋学期の授業
*10月2日 春学期に話した仏陀の基本思想を復習しました。 *10月9日 大乗仏教がどのようにして起こってきたかを簡単に話しました。 いわば、仏教の大きな転換期です。 *10月16日 大乗仏教の思想的特徴である「空」とそれに続く「唯識」の思想を少々話しました。 *10月23日 唯識思想の三性説を簡単に説明しました。難しかったと思います。 我々の日常世界が夢幻の世界、とは現代の我々にはとうてい受 け入れることはできないでしょうが、別な見方をすればそこか ら学べることも多いと思います。 *10月30日 バラモン教哲学に入り、まず、インドでは非主流と思われる実 在論の分析哲学的範疇論と論理学を見ました。 *11月6日 次に、ウパニシャッドの伝統と深く関わる思想として、サーキ ヤ哲学とヴェーダーンタ哲学に入りました。特に後者はその後のインド思想を見 ていく上で重要です。 *11月13日 シャンカラ、ラーマーヌジャといった偉大なヴェーダーンタの 哲学者の思想を簡単に見て、ヒンドゥー教の展開に入りました。 ウパニシャッドからのブラフマン一元論思想と人格神信仰との 葛藤が少し理解できたかと思います。今後この問題を常に頭に 置いていてほしいと思います。 *11月20日 シヴァ信仰とヴィシュヌ信仰の広がりを見ました。いずれも非 アーリヤ要素を巻き込んで信仰を広げていったことがわかります。 さらにヴィシュヌの十化身ということにも触れました。 *11月27日 ラーマーヤナの物語の概略をみて、どうしてラーマがヴィシュ ヌの化身にされたのかをみました。 *12月4日 今度はマハーバーラタの物語を概説して、そこに挿入されている バガヴァッド・ギーターの宗教性について話しました。信愛(バクティ)という 思想が今後インドに大きく拡がっていきます。 *12月11日 インド思想をやる上でどうしても避けられないタントリズムに ついて少し説明をしました。まだ十分解明されていないこの思想はインドの不思 議を演出している一要素ともいえます。 *12月18日 タントリズムのの続きをヨーガの内容と共に話しました。まだ まだわからないことが多い領域です。 *1月8日 インドのイスラム支配下における思想の展開を見ていきます。今 日はイスラム神秘主義者スーフィーの成り立ちとインドにおける彼らの活躍を見 ました。デリーのスーフィーであるニザームッディーン・アルリヤーを例にとっ てスーフィーがいかにして下層ヒンドゥーをイスラムに改宗させていったかを説 明しました。 *1月15日 ヒンドゥーとムスリムの融和にとってスーフィーの活躍と同様に 重要であるのはヒンドゥー側のバクティ運動でした。民衆を巻き込んだバクティ 運動がラーマーナンダをへて、カビール、ナーナクに伝わりシク教の成立になり ます。最後にナーナクの理想と現実について少しお話ししました。秋学期試験について
#日時 1月22日(木)2限(10:45〜12:15) #教室 11408 #形式 記述式 *以下に重要なトピックスを列挙しておきますので試験の勉強に利用してください。 1 大乗仏教の意味とその特質を整理して初期仏教と比較してみよう。 2 唯識という考え方を学び、特に、末那識やアーラヤ識などについて、自分な りの説明ができるようになろう。 3 ヴェーダーンタ哲学のシャンカラの一元論を説明して、それがウパニシャッ ドの伝統を保持していることを確認しよう。 4 ヒンドゥー教の三神をあげ、その特質をまとめてみよう。 5 バガヴァッド・ギーターという文献についてそれがいかなる文献であり、い かなる思想を持ったものか、また、そこに説かれる「三つの道」とはどのよ うな道であるか、整理してみよう。 6 インドにおけるブラフマン一元論とヒンドゥー教の人格神信仰との相克がど のようにして克服されていったか調べてみよう。 7 スーフィー、スーフィズムとはなにか、またインドにおいてヒンドゥー教と イスラム教との間でどのような役割を果たしたのか、具体的なスーフィーの 名前を挙げながら説明してみよう。。 8 シク教とはいかなる宗教であるか。その特徴をまとめて、ヒンドゥー教やイ スラム教とどのような関係にあったか考察してみよう。私の次の二論文が勉強の役に少しは立つかもしれませんから見てください。
インド理解のキーワード---ヒンドゥーイズム---
反目と融和
春学期の内容
*4月10日 イントロダクション インド思想の流れについて概説しました。 *4月17日 イントロダクションの続き。インド独特の帰一思想とインドでは宇宙の外に 絶対者・神をたてない、ことなどを話しました。 *4月24日 創造神話 ヴェーダ文献から宇宙創造神話を取り上げてインド古来からの宇宙観を説 明しました。「黄金の胎児」賛歌と「宇宙開闢」賛歌を見ました。 特に、リグ・ヴェーダの最高峰といわれる「宇宙開闢の讃歌」を読みなが ら、インド思想の象徴ともいえるその内容を説明しました。 *5月8日 アタルヴァ・ヴェーダ アタルヴァ・ヴェーダの中から特に注目に値する讃歌を2,3取り上げました。特に、大宇宙と小宇宙との 対照が見られる「プラーナの歌」などはインド思想の核心に関わる重要なものとして見逃せないことを説明しました。 *5月15日 アタルヴァ・ヴェーダに続いて梵書(Brahmana)文献に見られる創造神話を見ました。そこには、言葉による 創造という興味ある神話と共に、旧約聖書のノアの洪水にも類似している洪水神話があることも説明しました。 *5月22日 梵書文献に見られるもう一つの重要な神話、「ブリグの地獄遍歴物語」を読み、地獄の概念が次第に 定まってきた様子、因果応報の思想の芽生え等を確認し、しかし、現世をまきこんだ輪廻思想はまだ この時代には登場していなかったという重要なことを学びました。 *5月29日 輪廻思想の初期形態をウパニシャッド文献から見ました。水と共に循環している生命を、 祭祀神秘主義のヴェールに包んで謎のような文章にしたバラモンたちのやり方が特徴的です。 *6月5日 輪廻思想の続きをみました。二道五火の内容を再度説明し、さらに解脱、 業という思想との関係も説明しました。 *6月12日 宇宙原理として古代のインドの人々が考えたbrahmanのことについて考えました。インドに独特の 帰一思想の流れやbrahmanという語の変遷などを辿ってみました。brahmanを知るものはインドを知る と言っても過言ではありません。 *6月19日 個人原理として古代インドの人々が見いだしたアートマン(atman)について説明しました。 そして、古代インドの神秘思想の核心である梵我一如(brahman=atman)の思想を考えました。 「汝(のアートマン)はそれ(ブラフマン)である。」(tat tvam asi)に代表される大文章 (mahavakya)の意味するところを現代の目で考えるとどうなるか、ということを一緒に考えました。 来週もこの問題をもう少し考えてみたいと思っています。 *6月26日 先週の復習として大文章(Mahavakya)の意味を考えてみました。古代から インドでは人間が宇宙と一体であるという考えが強いのは、このウパニシャッド の思想が根底にあるのではないか、と思えます。インドで占星術が盛んなのも人 間が宇宙の動きの一部分としてあるという考えからかもしれません。 *7月3日 バラモンの主張する梵我一如の思想に挑戦するかのように登場した仏教の 思想を見ることにします。まず、ブッダの世界観をよく表している縁起と いう見方と、無我の主張である五蘊という考えかたを学びました。春学期試験について
#日時 7月10日(木)第2時限 #教室 11408教室 #形式 記述式 #今までの授業で特に重要なトピックスをあげておきますので勉強に利用してください。 1 古代インドにおける初期輪廻思想について整理してみよう。いつ頃から表面 に登場してきたか。ヴェーダ時代には人々は死後どうなると考えていたか。 二道・五火のおしえとは何を意味していたか。輪廻と不可分離の関係にある 思想にどのようなものがあるかなどを考えてみよう。 2 宇宙開闢の歌といわれる古代インドの讃歌はなにを表現しようとしていたか。 また、そこに見られる「かの唯一なるもの」について考えてみよう。 3 マヌと大洪水の物語を思いだし、それのインド思想に持つ意味を考えてみよう。 4 ブラフマンとはなにか。アートマンとはなにか。それぞれの意味の変遷を見て インドにおけるその重要性を知ろう。 5 マハーヴァーキヤ(mahavakya・大文章)とはなにか。何故、それは大文章 と呼ばれるか、を考えてみよう。 6 仏教でいわれる「縁起」とはどのようなことであるか、また、それは、インド においてどのような意味を持つか考えてみよう。