インド思想史1・2
講義目的
インドの80パーセント以上の人々が心の拠り所としているヒンドゥー教と呼ばれる思想・
宗教は、ある特定の時期に特定の人々によって始められたものではなく、長期間にわたり
多くの宗教・思想が重なり合い融合して出来上がったものである。そこで、古代から現在に
至るまで、どのような思想がインドで興り、あるいは、インドに流入したか、また、それらが
いかにして融合していったかを辿り、複雑な現代インド社会を理解する一助としたい。
まず、春学期には、インドの思想全体を後代にいたるまで決定づけることになった輪廻
思想とブラフマン・アートマン一体思想を中心としたバラモン教の核心を概説する。続いて、
仏教、ジャイナ教という新しい思想が起こってくる背景とその新しい思想の意義を考察し、
正統バラモン教学と仏教思想の相違を考える。
秋学期では、インドの土着要素とバラモン教とが融合して次第にヒンドゥー教へと変貌して
いく有様を考察し、バガッヴァド・ギーターなどの文献によりヒンドゥー教の特質を講ずる。
次に、イスラム支配下に入って以後のインドにおいて、ヒンドゥー教がいかにしてイスラム
と共生していったかについても言及し、最後に、インドの近代化とヒンドゥー教の改革運動
などにも触れる。授業ではできる限りビデオ教材を使ってインドの現実を目で確かめてもらう
よう心がける。
授業内容・授業計画
春学期
1 イントロダクション
2 ヴェーダからウパニシャッドへ
(1)創造神話---かの唯一なるもの---
(2)輪廻思想---循環の思想---
(3)宇宙原理と個人原理---絶対的存在---
3 仏教の興起---絶対的存在の否定---
4 ヴェーダーンタなどのバラモン教学
秋学期
5 バラモン教の変質とヒンドゥー教の成立
(1)土着要素の台頭
(2)バガヴァッド・ギーターの思想
(3)ヨーガとタントリズム
(4)法典の整備
6 イスラーム支配下のインド
(1)スーフィズムとバクティ運動
(2)ラーマーナンダとカビール
(3)グル・ナーナクとシク教
7 インドの近代化とその苦悩
(1)ベンガル・ルネッサンス
(2)マハトマ・ガンジー対アンベードカル
履修上の注意
今まで馴染みのない考え方や用語が頻出するので、まずは、授業を休まないことが肝要である。
講義ノートをうまく取れる練習をしておいて欲しい。また授業中に配布する資料は、一読した
だけでは理解困難であるような難解なものが多い。授業後は必ず資料を再読して自己の理解を
確認することが求められる。
授業の到達目標
まず、インドの重要な固有名詞や用語などに馴染むこと。ヒンドゥー教の特徴をよく理解して
自分の言葉で説明できるようになること。
評価方法
定期試験、平常点(出席点、授業時に提出するレポート)などにより総合的に判断する。
教材
参考書:早島鏡正・高崎直道・原実・前田専学著、『インド思想史』、東京大学出版会
参考書:辻直四郎『インド文明の曙』、岩波新書
参考書:服部正明、『古代インドの神秘思想』、講談社現代新書
参考書:荒 松雄、『ヒンドゥー教とイスラム教』、岩波新書
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Last modified: Mon Feb 17 17:41:23 JST 2003