宜野座村工場誘致政策変更事件
第一審判決

損害賠償請求事件
那覇地方裁判所 昭和49年(ワ)第51号
昭和50年10月1日 民事第3部 判決

原告 大蔵興業株式会社
被告 宜野座村

■ 主 文
■ 事 実
■ 理 由


 原告の請求を棄却する。
 訴訟費用は原告の負担とする。

一 原告
1 原告は被告に対し、1億0,018万9,166円およびこれに対する昭和48年9月11日から支払ずみまで年5分の割合による金員を支払え。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
3 仮執行宣言。

二 被告
 主文同旨
[1](一) 原告は、沖繩県国頭郡宜野座村内に月間125トンのチリ紙、紙容器等各種用紙を製造する製紙工場の建設を企画し、被告宜野座村に対し、昭和45年11月30日原告の企業誘致および被告宜野座村所有地を原告の工場敷地として譲渡することを陳情した。

[2](二) 被告宜野座村の村長与儀実清(以下、与儀村長という。)は、原告の右陳情を検討するため同村議会に合同委員会の設置を諮問し、同委員会は、昭和45年12月25日設置されて検討をはじめ、同46年2月原告の企業誘致を決定し、これに基づき被告宜野座村議会(以下、村議会という。)は同年3月24日の第1回定例議会において、原告の企業を誘致し、被告所有の村有地をその製紙工場敷地の一部として原告に譲渡する旨の議決(以下、企業誘致決定という。)がなされ、翌3月25日、与儀村長から原告に対し、その旨の連絡があり、原告が同村長室を訪ねたところ、同村長は被告に対し議会でも議決した以上原告の工場誘致には全面的に協力することを約した。

[3](三) そこで、原告は被告宜野座村の協力をえて次のとおり製紙工場設置に着手した。
[4](1) 昭和46年5月上旬、与儀村長および村議会議員らの協力を得て工場候補地を検分した結果、沖繩県国頭郡宜野座村字松田後原1075番地に工場を建設することを決定した。
[5](2) 工場操業に必要な河川の使用および取水の件につき、原告は与儀村長および村議会の協力をえて、附近部落民との懇談会を開き、その了解をえ、また、河川の使用、取水のためには当時河川は米国民政府の管理下にあつたので同政府に対する河川法に基づく水利権の申請の必要があり、右申請には管轄村長の同意を必要とするところ、原告は同年5月24日与儀村長の右同意書をえた。
[6](3) 同年8月20日、原告から工場用地として、被告宜野座村から譲渡を受ける予定地につき被告宜野座村の助役立会のうえ建設課長が測量をし、当時譲渡予定地のうち宜野座村字松田280番地の土地を謝花朝盛が、また、同村字松田2824の9番地の土地を大城シズがいずれもパインを植付け小作中であつたため、原告が右村有地の明渡および作付パインの保証料として、同月24日、右謝花に対し金270ドル、また、右大城シズに対し金100ドルを支払つた。
[7](4) 原告は、工場公害を防止するため排水処理につきコンサルタントのフジモト・ポルコンに対し、その具体的方策と見積を求め、同47年3月7日その排水処理プラント見積の報告書を受けたので同年4月上旬頃、与儀村長にこれを提示して説明し、また、同4月10日製紙工場の機械メーカーの株式会社日吉鉄工所の社長と汚水処理メーカーのフジモトポルコンの社長が来沖した際に与儀村長を訪ねたが、与儀村長は早くよい工場を建設することが村の発展につながるので協力をおしまない旨述べ、同月24日フジモトポルコン工場整地配置計画書が原告に到達したので、原告は、同年5月上旬頃与儀村長に提示して意見を求めたところ、与儀村長から早くよいものを建設するようにとの発言がなされた。
[8](5) 同年7月8日、前記日吉鉄工所より機械見積書、同月17日前記フジモトポルコンから浄水処理プラントの見積書が原告に送付されたので、原告はこれらの見積に応じて機械および浄水処理プラントを右両社に発注するため、与儀村長に対し右書面等を提示して報告し、これら発注に必要な融資を沖繩振興開発金融公庫から受けるにつき被告宜野座村の協力を申込み、与儀村長の了解をえた。
[9](6) 与儀村長は、原告の求めに応じて右開発金融公庫の原告に対する融資決定が遅れていたため、同年10月16日同金庫理事長宛に融資促進の依頼文書を送付した。
[10](7) 前同日、原告は与儀村長に対し機械メーカーとの発注契約書案を提示し、今後の協力につき同村長の確認を得たうえで、前記両メーカーとの発注契約を締結し、また、同日前記工場敷地の整地工事に着手し、同年12月7日右工事を完了した。

[11](四) ところが、昭和48年1月5日被告宜野座村の新首長に現村長末石森吉(以下末石現村長という。)が就任するや、同年1月22日原告提出の建築基準法に基づく本件工場の建築確認申請に対し、「工場予定地部落民が工場建設に反対し、部落総会においても、工場建設に反対の声が高い。将来潟原地区の開発に支障がある。工場予定地上流に農業用ダム建設計画がある」との理由で、同年3月29日付で不同意である旨の回答をし、工場建築の阻止の挙にで、特に、工場の操業生命ともいうべき河川使用、取水につき被告宜野座村の前記同意の撤回されることが予想されるなど、今後被告宜野座村の協力がえられなくなり、本件製紙工場の設置が不可能となつたので、已むを得ずこの建設を断念した。

[12](五) 原告は、本件製紙工場の設置が不可能となつたため、後記(六)のような損害を蒙るに至つたが、右損害は、被告宜野座村が原告の企業を誘致し、その製紙工場の建設および操業に協力することを約しておきながら、その建設計画が相当程度進行した段階で、それを知りながら突如として一方的にその協力を拒否したために生じたものであるが、かかる場合、被告宜野座村と原告との間には協力互恵の信頼関係が成立しているので、被告宜野座村としては、原告に対し何ら代償的措置を講ずることなく、その協力を拒否することはできない法律上の義務があり、また、これに反する被告宜野座村の原告の期待を裏切る行為は、信義則および公序良俗に反し、禁反言の法理からも違法性を具備するものであるから、被告宜野座村は、原告に対し民法709条の不法行為に基づく損害賠償責任を負うものである。
[13] 仮に右主張が認められないとしても、末石現村長は、原告から沖繩県建築基準法施行細則2条1項により本件工場建設についての建築基準法6条に基づく建築確認申請書の提出を受けたのであるから、同細則2条2項により所定の事項を調査し、消防長の同意を得てすみやかに所轄の土木事務所長に送付すべき職務上の義務があるのに、本件工場建設に反対して右申請書を保留し、その送付をなさなかつた行為は、公務員である末石現村長がその職務を行うについて故意になした違法行為であるから、被告宜野座村は、原告に対し国家賠償法1条により原告の蒙つた後記損害を賠償する責任を負うものである。

[14](六) 原告は製紙工場建設が不可能により、次のとおりの損害を蒙つた。
 総額金1億0,018万9,166円
[15]内訳は次のとおりである。
[16](1) 金1,551万円
 原告は訴外株式会社日吉鉄工所との間で締結した抄紙機械設備の製作請負契約に基づき、同鉄工所に対し、工事着手に際し契約保証金として金931万円を、また、訴外株式会社フジモトポルコンとの間で締結した排水処理装置および浄水処理装置の施工請負契約に基づき同訴外会社に対し同じく金620万円を各支払い、両会社をして機械装置の製作工事に着手させたが、被告の不法行為により原告の製紙工場建設が不可能となつたため、原告は訴外会社らによつて右金員を没収された。
[17](2) 金208万1,460円
 原告は訴外株式会社フジモトポルコンに対し、抄紙機械設備等およびコンサルタント料として金208万1,460円の支払う義務を負うに至つた。
[18](3) 金1,690万4,700円
 原告は、右フジモトポルコンとの間で請負代金3100万円で排水処理装置および浄水処理装置の施工請負契約を締結し、右フジモトポルコンは、右契約に基づき右機器装置の製作を完了したので右請負代金から必要でなくなつた現地据付費用金601万7,000円および前記(1)で支払ずみの契約保証金620万円を差引いた金1,690万4,700円に、更に右製作完了品で他に転用不能な部分が全体の10パーセントあるからその相当額金187万8,300円を控除した残額金1,690万4,700円を右フジモトポルコンに支払う義務を負うに至つた。
[19](4) 金85万5,000円
 原告は、訴外屋比久建築設計室屋比久孟清に対し、製紙工場等の建築設計の依頼をなし、同室に、建築設計料として金85万5,000円の支払義務を負つた。
[20](5) 2,039万4,454円
 原告は、昭和46年5月から昭和49年3月までの間に運営費、事務費、管理費、銀行利息等その準備運営のため次のとおりの損失を蒙つた。
(イ) 金570万0310円
 但し、昭和46年5月から同47年3月までの第1期決算損失金
(ロ) 金841万7,791円
 但し、昭和47年4月から同48年3月までの第2期決算損失金
(ハ) 金672万6,353円
 但し、昭和48年4月から同49年3月までの第3期決算損失金
[21](6) 4,444万3,552円(得べかりし利益)
 原告の製紙工場が完成し、生産開始をした場合には、原告は、第1年次で金2,410〇万7,000円、第2年次で金3,582万3,000円合計金5,993万円が第2年次までの利益として見込まれているが、右金員のうち金4,444万3,552円を逸失利益として請求する。

[22](七) よつて、原告は、被告に対し、不法行為に基づく損害賠償責任若しくは国家賠償法上の損害賠償責任として、(六)項の総額金1億0,018万9,166円およびこれに対する訴状送達の翌日である昭和48年9月11日から支払ずみまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。
[23](一) 原告の請求原因(一)記載の事実は不知。

[24](二) 同(二)記載の事実のうち、原告主張のとおり村議会において原告の企業誘致の議決がなされたことは認めるが、その余の事実は否認する。

[25](三) 同(三)記載の事実のうち、与儀村長が原告の工場建設促進のため種々協力したことは認めるがその余の事実は不知。

[26](四) 同(四)記載の事実のうち、末石現村長が、原告主張の日にその主張のとおり原告の提出した本件工場の建築確認申請に対し不同意である旨回答したことは認めるがその余の事実は不知。

[27](五) 同(五)記載の事実のうち、沖繩県建築基準法施行細則2条が原告主張のような内容の規定であることおよび原告提出の建築確認申請書を所轄所長に送付しなかつたことは認める。原告の主張事実はいずれも争う。

[28](六) 同(六)記載の事実は不知。
[29] 与儀前村長が積極的に協力していた原告企業の誘致に対して、末石現村長が、反対するに至つた経緯は次のとおりである。すなわち、昭和46年当時の沖縄では、本土復帰を翌年にひかえ、沖繩経済と本土経済との格差是正がとなえられ、当時の琉球政府および市町村においては、産業誘致政策がとられ、住民もこれに同調した結果、企業誘致による乱開発が行われ、昭和47年5月15日、沖繩の日本復帰が実施し、本土との交流が激しくなるにつれて住民に企業のもつ危険性に対する認識と自然環境の保全に関心が高まり、本件の工場設置についても、昭和47年末頃からその工場敷地のある松田区においても「松田生活環境を守る会」が結成されて反対ののろしがあげられ同48年2月末石現村長や村議会に対する本件工場設置反対の決議、或は、要請がくりかえされた。また、被告宜野座村においては、昭和47年12月与儀村長の任期満了による村長選挙が行われ、与儀村長は再選を期して立候補し、末石現村長が対立候補となつたが、前記松田区周辺の住民は、本件工場の設置に反対し、その運動を実効あらしめるため、末石現村長を推せん支持し、同村長は当選したものであり、同村長としては、原告の本件工場設置に反対せざるを得ない立場にある。このように末石現村長は、被告宜野座村の住民から本件工場の建設を許さないとの要請に応じて就任したものであり、被告宜野座村の意思決定は、村民の意思により決定すべきであるから、末石現村長の本件工場設置反対の行為は、憲法の保障する地方自治の本旨に副つた適法なものであり、被告宜野座村が原告に対し、右村長の行為により民法の不法行為上の損害賠償責任を負ういわれはない。
[30] また、末石現村長が原告提出の本件工場の建築確認申請書を沖繩県建築基準法施行細則2条の規定に反して所轄所長に送付しなかつたことについても、村長は同条項に基づき代替性のある事実調査をなしうるのみで、申請書に対する意思決定は県知事にあり、県知事はいつでも村長にかわり申請をうけうるから、原告は末石現村長から不同意の文書を送付された段階で、県知事に対し、申請書を提出すれば足りる。したがつて、被告宜野座村は、末石現村長の右行為をもつて、原告に対し国家賠償法上の損害賠償責任を負ういわれはない。
[1](一) まず、原告の請求原因(一)記載の事実は、原告会社代表者本人尋問の結果(第1回)により成立を認めうる甲第1号証、証人与儀実清の証言、原告会社代表者本人尋問の結果(第1、2回)によつてこれを認めることができ、右認定に反する証拠はない。
[2]同請求原因(二)記載の事実のうち、村議会において、原告主張の日に原告の企業誘致の議決がなされたことは当事者間に争いがなく、その余の事実については、成立に争いのない甲第2号証、前顕証人与儀の証言および原告会社代表者本人尋問の結果(第1回)によつてこれを認めることができ、右認定に反する証拠はない。
[3]同請求原因(三)記載の事実のうち、与儀村長が原告の工場建設促進のため種々協力したことは当事者間に争いがなく、その余の事実については、成立に争いのない甲第3号証、第24ないし第26号証、原告会社代表者本人尋問の結果(第1回)により成立を認めうる甲第4ないし第10号証、同尋問の結果により成立を認めうる甲第13号証の1および2、甲第14および第15号証、甲第16号証の1ないし3、甲第17ないし第19号証、甲第20および第21号証の各1および2、甲第23号証、甲第27号証の1および2、甲第28ないし第33号証、前顕証人与儀の証言、原告会社代表者本人尋問の結果(第1、2回)によつてこれを認めることができ、右認定に反する証拠はない。
[4] なお、同請求原因(四)記載の事実のうち、末石現村長が原告主張の日にその主張のとおり原告が右村長に提出した本件工場の建築確認申請に対し不同意である旨回答したことは当事者間に争いがなく、その余の事実については、原告会社代表者本人尋問の結果(第2回)により成立を認めうる甲第21号証、被告宜野座村代表者本人尋問の結果(第1、2回)、原告会社代表者本人尋問の結果(第1、2回)によつてこれを認めることができ、右認定に反する証拠はない。

[5](二) 次に、原本の存在並びにその成立につき争いのない乙第2号証、前顕甲第21号証、証人新里清の証言、被告宜野座村代表者本人尋問の結果(第1、2回)によると、被告宜野座村においては、昭和47年12月に、昭和39年12月から同47年12月まで被告宜野座村の村長職を務めた与儀村長の任期満了に伴う村長選挙が行われ、与儀村長も三選をきし立候補したが、対立候補としてたち、与儀村長の企業誘致政策に反対の立場をとる末石現村長が、本件工場設置に反対する本件工場敷地周辺の松田区住民の支持もあつて、激戦の末当選したこと、末石現村長は、昭和48年1月29日、松田区住民によつて結成された「生活と環境を守る会」より本件製紙工場設置反対の正式な要請がなされたこともあり、これに応じて同月22日原告が沖繩県建築基準法施行細則2条に基づいて被告宜野座村長に提出した沖繩県知事に対する建築基準法6条の本件工場の建築確認申請に対して「工場建設予定地部落民(松田区)が工場建設に反対して居り、部落総会においても、工場建設反対の声が大きい。村議会で工場誘致が議決された時点から約3年近くのづれがあり、その間に社会状勢が急変した。将来潟原地域の開発に支障をきたすおそれがある。近き将来、工場予定地上流に農業用ダムを建設する計画がある。」を理由として不同意である旨を通知し、本件製紙工場設置に反対し、以後一切被告宜野座村としては、その建設に協力しない態度を鮮明にしたことを認めることができ、右認定を覆すに足りる証拠はない。

[6](三) 以上の事実によると、原告は、被告宜野座村の与儀村長と村議会の企業誘致に対する積極的姿勢に期待をかけ、多額の資金を投じて工場敷地の取得、その整地、製紙工場に設置する機械の発注など順次準備行為を完了し、工場建設の段階に至つたところ、与儀村長の企業誘致の反対の立場をとる末石現村長が、与儀村長の三選阻止に立ち上り、与儀村長と激戦の末選出されるに至つたが、末石現村長としては、被告宜野座村民のこの支持にこたえて、原告の製紙工場設置に反対する態度を明確としたため、原告としては、本件製紙工場の建設計画を断念せざるをえない立場に追い込まれるに至つたことを認めることができるが、原告が期待をかけ本件製紙工場の建設をおし進めた被告宜野座村議会および与儀村長の本件製紙工場建設に対する積極的な協力行為は、私企業における利益追求行為とはその性質を異にし、地方公共団体として、当該地域住民の福祉増進を目的とし、その住民意思に副うことを前提としてなされるものであるから、本件のように原告らの期待した与儀村長らによる被告宜野座村内における企業誘致方針が、企業誘致による被告宜野座村における過疎化の防止より、企業の発散する公害よりの生活環境の保護をより優先すべきだとする観点から、被告宜野座村民によつて批判され、その批判勢力の支持する末石現村長が選出された以上、原告が右期待を末石現村長に要求することはできないと解するのが相当である。したがつて、右事情のもとでは原告主張のように被告宜野座村が原告に対し代償的措置をとることなく本件製紙工場建設についての協力を拒むことのできない法律上の作為義務があるとはいえないし、また、被告宜野座村の原告の本件工場建設に協力しない行為を、信義則違反とか、公序良俗に違反するとか、また、禁反言の法理に違反し、それがため不法行為成立要件としての違法性があるとはいえない。
[7](一) まず、沖繩県建築基準法施行細則2条1項が、原告から本件工場の建築基準法6条に基づく建築確認申請が末石現村長に提出された場合、末石現村長はすみやかに同条2項規定の事項を調査したうえ、消防長又は消防署長の同意をえて所轄の土木事務所長に送付すべき旨を規定していること、しかるに末石現村長は、右申請書を保留し所轄土木事務所長に対する送付をしなかつたことはいずれも当事者間に争いがない。

[8](二) 右事実によると、末石現村長の右申請書留保の行為は、公務員として前記施行細則2条1項による職務を行うにつき、その義務に違反した違法なものといわざるをえないが、証人花城守男の証言によると、末石現村長が、前記施行細則2条1項に基づく申請書の送付義務に違反した場合、原告は、右村長を経由することなく直接に沖繩県建築主事に右申請をすることもできることを認めることができ、右認定に反する証拠はないし、また、原告会社代表者本人尋問の結果(第2回)によると、原告が本件製紙工場建設計画を断念せねばならなかつた理由は、右末石現村長の所為によつて窺いうるところの末石現村長の本件工場建設後のその操業に必要な河川の使用等工場操業上必要な協力を期待できないことにあることを認めることができ、これらの事実からすると、末石現村長の前記違法行為と原告主張の右建設不可能に伴う物的損害との間には相当因果関係が認められないというべきである。

[9] 叙上の事実によると、原告の蒙つた損害につき判断するまでもなく、原告の本訴請求は理由がないことに帰するから、これを棄却することとし、訴訟費用の負担につき、民事訴訟法89条を適用して主文のとおり判決する。

  (昭和50年10月1日 那覇地方裁判所民事第3部)

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