広島県教組教研集会使用不許可事件 | ||||
控訴審判決 | ||||
損害賠償請求,同附帯控訴事件 広島高等裁判所 平成14年(ネ)第195号・平成15年(ネ)第9号 平成15年9月18日 第4部 判決 口頭弁論終結日 平成15年6月16 控訴人・附帯被控訴人(被告) 呉市 被控訴人・附帯控訴人(原告) 広島県教職員組合 ■ 主 文 ■ 事 実 及び 理 由 1 本件控訴及び附帯控訴をいずれも棄却する。 2 控訴費用は控訴人の,附帯控訴費用は被控訴人のそれぞれの負担とする。 1 控訴の趣旨 (1) 原判決中控訴人敗訴部分を取り消す。 (2) 被控訴人の請求を棄却する。 2 附帯控訴の趣旨 (1) 原判決を次のとおり変更する。 (2) 控訴人は,被控訴人に対し,300万円及びこれに対する平成11年11月15日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (被控訴人は,当審において請求を減縮した。) 本件は,被控訴人が主催する第49次広島県教育研究集会(以下「本件教研集会」という。)の会場として,呉市立J中学校の体育館等の学校施設の使用を申し出,いったん,J中学校校長から口頭で,これを了承する返事を得たのに,その後,控訴人から不当にその利用を拒否されたとして,被控訴人が,控訴人に対し,国家賠償法1条,3条に基づき,損害賠償を求めた。原審は,被控訴人の請求を一部認容したため,控訴人が控訴して,その敗訴部分について,被控訴人の請求を棄却することを求めたのに対し,被控訴人が附帯控訴し,原判決を変更して,被控訴人の請求(ただし,当審において請求を減縮した。)を認容するよう求めた事案である。 1 争いのない事実等については,原判決「第2 事案の概要,1 争いのない事実等」に同じであるから,これを引用する。 2 争点及び当事者の主張については,次のとおり付加するほかは,原判決「第2 事案の概要,2 争点及び当事者の主張」に同じであるから,これを引用する。 (1) 原判決14頁7行目の後に改行して次のとおり付加する。 学校施設の目的外使用の場合は,一般人には許さない特別の使用をなしうべき権限を設定する「特別使用」と解され,原則として自由裁量に属するものである。したがって,処分権者の裁量権の行使としてなした処分はそれが社会観念上著しく妥当を欠いて裁量権を付与した目的を逸脱し,これを濫用したと認められる場合でない限り,その裁量の範囲にあるものとして違法とならない。(2) 原判決14頁14行目の「すなわち,」の後に, 「被控訴人の全国的規模における連合団体である日本教職員組合は,文部省ないし学校当局が開催する教育研究集会,講習会等を管理組織のもとに行われるいわゆる「官製研修」であるとし,これに対置されるべき組合員たるべき教員の自主的自律的な教育研究活動を組合の組織的な活動の一環として推進するため,かねてから「全国教育研究集会」(当初は「全国教育大会」)を原則として毎年開催している。本件教研集会は同趣旨において広島県における教職員組合の実践的活動として行うため、教員の自主的な教育研究活動を組合活動と一体的に発展させる目的のもとに組合活動の一環として開催されている。したがって,本件教研集会は開催の形式のみならず,実質においても控訴人との関係においては地方公務員法上の職員団体が労働運動である組合活動の一環として組合所属教員に自主的研修の場を与えているものであって,教研集会に参加して研修することは,とりもなおさず組合活動としての本件教研集会の成立及び運営に関与することとなる。そして,」と,同14行目の「広島県教育委員会」の後に,「(以下「県教委」という。)」と付加する。 (3) 原判決16頁9行目から17頁1行目までを次のとおり改める。 ア 被控訴人の主張1 当裁判所も,被控訴人の請求は,原判決認容の限度で理由があり,その余は失当であると判断する。その理由は,次のとおり,付加・訂正するほかは,原判決「第3 争点に対する判断」に同じであるから,これを引用する。 (1) 原判決17頁5行目の「21,」の後に,「23ないし33,」を加える。 (2) 原判決18頁7行目から9行目までを次のとおり改める。 その他方で,教育研究集会は,県教委等による官製研修に反対し,労働組合である被控訴人の基本方針に基づいて運営され,前記分科会のテーマ自体にも,教職員の人事や労働条件,研修制度を取り上げるものがあり,教科をテーマとするものについても,文部省の定める学習指導要領に反対したり,これを批判する内容のものが数多く含まれるなど,被控訴人の労働運動という側面も強く有するものであった。(3) 原判決18頁11行目の「使用してきており」の後に「(広島県においては,本件を除いて学校施設の使用が許可されなかったことはなかった。)」と付加する。 (4) 原判決18頁15行目の「広島県教育委員会(以下「県教委」という。)」を「県教委」と改める。 (5) 原判決19頁13行目の「12月に」を「12月19日」と改める。 (6) 原判決21頁4行目の「原告」の後に,「本部教文部長Aら」と付加する。 (7) 原判決27頁21行目から28頁5行目までを次のとおり改める。 確かに,前記認定のとおり,教育研究集会は,被控訴人の労働運動という側面を強く有するものであるが,過去48回にわたって行われた教育研究集会は,1回を除いて,学校施設を利用して開催されてきたことを考慮すると,県教委及び各市町村の教育委員会も,教育研究集会の教員などによる自主研修としての側面を尊重し,その便宜を図ってきたものであると認めることができ,以上の経過及び教育公務員特例法19条,20条の趣旨に照らすと,各教育委員会としては,被控訴人が教育研究集会を行える場を確保できるよう配慮する義務があったものといえる。(8) 原判決30頁11行目から14行目を次のとおり改める。 そして,当審における控訴人の主張,立証を考慮しても,前記判断を覆すものではない。(9) 原判決30頁17行目の「学校施設の」から同頁18行目の「ならないこと」までを「各教育委員会としても,被控訴人が教育研究集会を行える場を確保できるよう配慮する義務があったこと」と改める。 (10) 原判決30頁22行目の「施設管理上」から同頁23行目の「認められないこと」までを, 「本件では,B校長が職員会議を開いた上,支障がないとして口頭で使用を許可する意思を表示したのに対し,呉教委がB校長を呼び出し,過去の右翼の妨害行為を例に出して,使用させない方向に指導したこと,広島県においては過去の教育研究集会で学校の使用が許可されなかったことはなかったこと」と改める。 (11) 原判決31頁2行目から6行目までを次のとおり改める。 (1) 学校施設使用不許可による経費の損害以上によれば,被控訴人の請求は,控訴人に対し,損害金50万円及びこれに対する不法行為日(本件不許可処分のなされた日(平成11年11月1日))以後である平成11年11月15日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからこれを認容し,その余は失当であるから棄却すべきである。したがって,原判決は相当であるから,本件控訴及び附帯控訴をいずれも棄却することとし,主文のとおり判決する。 広島高等裁判所第4部 裁判長裁判官 草野芳郎 裁判官 廣永伸行 裁判官 山口浩司 | ||||
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