議員定数不均衡訴訟 衆議院中選挙区違憲判決(昭和51年)
第一審判決

選挙無効請求事件
東京高等裁判所 昭和48年(行ケ)第2号のホ
昭和49年4月30日 判決

原告(選定当事者) 黒川厚雄
被告  千葉県選挙管理委員会

■ 主 文
■ 事 実
■ 理 由


 原告の請求を棄却する。
 訴訟費用は原告の負担とする。

 原告は「昭和47年12月10日行われた衆議院議員選挙の千葉県第1区における選挙を無効とする。訴訟費用は被告の負担とする。」との判決を求め、被告は、主文同旨の判決を求めた。
[1] 原告(選定当事者)の別紙目録記載の選定者らは、いずれも昭和47年12月10日行われた衆議院議員選挙の千葉県第1区における選挙(以下、本件選挙という)の選挙人である。

[2] 本件選挙は、次の理由によつて無効である。
[3](一) 日本国憲法(以下、単に憲法という)は、その前文冒頭において、日本国民は正当に選挙された国会における代表者を通じて行動することをうたつている。いうまでもなく選挙、なかんずく国会議員選出のそれは、国民がその主張を行使する直接かつ具体的な機会のうち最も重要なものであり、議会政治のまさに生命をなすものである。国民各自が正当な選挙によつて代表者を選定すること、すなわち、公正な制度のもとで行われる選挙において何びとからの干渉をも受けることなく、自由にその代表者を選出することが確保されてはじめて、民主政治はその本来的機能を発揮しうべきものである。
[4] そして、憲法は、その第14条において一般に、法のもとで平等を規定するほか、とくに選挙については、第15条第3項、第44条において、いわゆる平等選挙を強く保障している。したがつて、選挙においては、いずれの選挙人の1票も他のそれと均等の価値を与えられていなければならないと解すべきところ、本件選挙にあつては、他の選挙区との間に「投票の価値」について明白かつ多大な格差が存し、その格差は、平等選挙において制度上当然に許容されるべき程度をはるかに超えるものである。
[5] 本件の衆議院議員選挙について選挙区別議員定数を定めた公職選挙法別表第1および同法附則第7ないし第9項の各規定はなんらの合理的根拠に基づくことなく、住所(選挙区)のいかんという関係において一部の国民を不平等に取扱つたものであつて、明らかに憲法第14条の規定に違反するものであるから、右別表第1および前掲附則の各規定に基づいて行われた本件選挙は無効である。
[6](二) 国民の代表たる国会議員を人口に比例して選出すべきこと(議員定数人口比例の原則)は、近代民主政治の基本原理であつて、憲法第14条第1項は、いわゆる民主主義的、個人主義的理念に照らし合理性を欠く差別を「法の適用」の面においてのみならず「法の定立」の面においても、さらに、同条項列挙以外の事由による場合においても、禁止する趣旨を宣明したものであり、右の意味において合理的と認めうる場合を除き、日本国民が平等の立場で選挙権を行使することの保障を害するような法の定立を立法府が恣意的に行うことは許されないものである。
[7] 選挙に関する平等は、選挙権の資格要件に関する「普通選挙」の獲得、投票の数の平等に関する「複数投票制」の克服のみでは達成されないものであつて、さらに各選挙人の「投票の価値の平等」が確立されないかぎり、けつして実現されえないものである。けだし、各選挙人に1票づつの投票権を与えながら、ある者の1票が他の者の数票に相当する価値を有する場合には、そのある者に数票、他の者に1票を与えたのと全く同一の事態を招来することになるからである。したがつて、議員定数を選挙人口(有権者数)に比例して各選挙区に配分すべきことの意味がそこに存するのである。
[8] もちろん、「投票の価値の平等」といい、「議員定数人口比例の原則」といつても、制度として非合目的的、非実践的なものが要求される道理はなく、議員定数の配分にあたつて、これと選挙人口との整数比を得るために端数処理をするというような技術的な理由から議員定数と選挙人口との割合が選挙区間で若干不均衡になることや、立法後当該選挙までの間に各選挙区の選挙人口に変動が生じて不均衡を生ずることは、避け難いものといわなければならないが、選挙区の大小などの地理的要素、歴史的沿革、行政区画別議員数の振合い等の諸要素を考慮して各選挙区へ議員定数を配分することによつて生ずる不均衡は、憲法の許容する限界を超えるものであり、右のような諸要素はどのように「選挙区割」を定めるかにあたつては考慮が許されるとしても、「区割された各選挙区への議員定数の配分」にあたつて考慮されるべきことがらではない。
[9](三) 衆議院議員選挙において議員定数と選挙人口との割合について選挙区間に生ずる不均衡を憲法第14条が許容する限度は、その不均衡が合理的理由に基づくものであることの立証が果された場合において、かつ、「1人に2人分以上のものを与えない」限度をもつて正当とされるべきであり、これを超える不均衡を生ぜしめる場合には、その一事をもつて当該選挙を無効と断じるに足りるものというべきところ、公職選挙法別表第1および同法附則の前掲各規定に基づいて行われた本件衆議院議員選挙においては、別紙対照表に明らかなように、議員定数と有権者数との割合が選挙区によつて不均衡であり、議員1人あたりの有権者数の最小値を示す兵庫県第5区の79,172と本件千葉県第1区の381,217.25との比は4.81対1となつていて、その不均衡は、憲法上許容できる限界を超えるものといわざるをえない。(別紙対照表によれば、議員1人あたりの平均有権者数は150,243.66であるところ、その最大値394,950と最小値79,172との比は4.99対1となつており、議員1人あたりの有権者数の平均値からの平均偏差は29.14パーセントである。また、議員総定数491の最少過半数246とこれを選出するに要した最少有権者数を別紙対照表の整理番号1の「兵庫5」から順に累積加算して得ることにすると、整理番号63の「山口1」の議員定数4のうちの3までと同選挙区の有権者数519,459の4分の3に相当する383,594.25までをもつてこれに達するが、そのようにして累積加算して得た最少有権者数は27,015,415.25となり、これを有権者総数73,769,636に対比すると36.62パーセントにすぎない。)

[10] よつて、原告は、公職選挙法第204条の規定に基づき、本件選挙を無効とする旨の判決を求めるために本訴に及ぶ。
一 本案前の主張
[11] 本件訴は、次の理由によつて却下されるべきである。
[12](一) 国家統治の基本に関する高度の政治問題が司法審査の対象とならないものであることは、すでに最高裁判所のいわゆる苦米地判決あるいは砂川判決において明らかにされているところである。議会主義を採用する我国憲法下においては、その議会の構成因子たる議員の定数、選挙区、選挙区別議員定数を含む選挙制度の基本問題は、国家統治機構に関する高度の政治問題であり、常に国民の真摯な関心事であつて、本件のごとき定数是正問題も、歴史的・社会的事情等を参酌して時代に適応するよう政治ないし立法の分野で解決されるべき性質のものというべく、司法権が自ら一定の基準を設定し、その是非を積極的に論ずべき筋合のものではない。本件のごとき訴を選挙権の侵害の有無という観点からとらえて、その是非を云々すべきではない。よつて、本件訴は、司法審査になじまないものとして却下されなければならない。
[13](二) 司法権は、その効果的な実行が制度上確認しえない事案については、自戒して、その判断を抑制しなければならない。本件訴訟はいわゆる民衆訴訟の一種であり、行政事件訴訟法第42条により公職選挙法第204条に基づく以外はその提起を許されないものであり、本件もまた公職選挙法同条に依拠して提起されたものであることは訴状に明らかなところである。ところで右法条に基づく訴訟の結果施行されなければならない再選挙は、その事由が生じた日から40日以内に行われなければならず(同法第34条第1項)、しかも、公示後投票日までには少くとも20日の期間をおかなければならない(同法同条第6項)から、法改正のため残される期間はわずか20日間にすぎない。この期間内に国会を招集し、本件を含む無効とみなされる選挙区全部の改正を論議し、議決することは実際上不可能なことに属する。しかして一たん違憲に基づき選挙無効と判断された以上、法改正がないからといつて、これを放置することはできないから、40日以内に再選挙を行う以外に方法はなく、この選挙もまた無効とされるから、結局無効の選挙を繰返することになり、収拾すべからざる混乱を招来することになろう。これでもなお司法権の効果的な実行が期待できるというのであろうか。
[14](三) 公職選挙法第205条にいう「選挙の規定」とは、具体的選挙の管理執行手続規定を意味するものである。これを合理的範囲内で拡大解釈することまでは否定しないが、議員定数問題のごとき多分に政治的問題を含み、新たな立法措置を講じない限り、前述のようにその実効性がないような事案についてまで、これを拡大解釈して適用することは、法解釈の限界を逸脱するものというべく、本件のごとき訴は、一見明白に公職選挙法第204条に該当しない訴として排斥を免れないものである。

二 本案についての主張
[15](一) 原告主張の一の事実は認める。
[16](二) 原告主張の各選挙区の議員定数、有権者数、議員1人あたりの有権者数およびその各選挙区間の偏差がその主張のとおりであることは認めるが、本件選挙を無効とする主張は争う。
[17](三) 元来、選挙に関する事項は原則として立法府の専権事項であり、各選挙区の議員定数について選挙人の選挙権の享有に極端な不平等を生じさせるような場合にのみ、これに基づいて行われた選挙が無効とされるにすぎないものであることは、昭和39年2月5日言渡の最高裁判所大法廷判決(昭和38年(オ)第422号)によつて明らかなところであり、本件の衆議院議員選挙における議員定数と有権者数との割合の各選挙区別不均衡はいまだ選挙人の選挙権の享有に極端な不平等を生じさせているものとはいえない。
[18] なお、公職選挙法別表第1中に「本表は、この法律施行の日から5年ごとに、直近に行われた国勢調査の結果によつて、更正するのを例とする。」との規定があるが、これは訓示的規定であつて、立法の予定方針を明らかにしたにすぎず、国勢調査の結果による人口の変動に応じ選挙区ならびにその議員定数の変更を絶対的に義務づけた規定ではない。
[1](一) 原告(選定当事者)の別紙目録記載の選定者らがいずれも本件選挙の選挙人であることは、当事者間に争いがなく、原告が右選挙の日から公職選挙法第204条所定の30日以内である昭和48年1月9日当裁判所に本訴を提起したことは、記録上明らかである。
[2](二) 被告は、本件訴は司法審査になじまないから却下されるべきであると主張するから、まず、この点について判断する。
[3] 選挙権、ことに国会議員選出のそれは憲法に基づく民主政治にとつて不可欠の国民の基本的権利であるといわなければならないところ、議員定数の配分は右選挙権の享有に影響するところの大きいことがらである。しかして、議員定数の配分は立法府である国会にゆだねられた事項ではあるが、国会が憲法の精神を無視しその裁量権を濫用して、著しく不合理、不平等な定数の配分を行い、それによつて選挙人相互間に選挙権の平等が害される場合の生ずることも考えられないことはない。したがつて、国民の基本的権利である選挙権がそのようにして侵害されたことを理由に選挙人が司法的救済を求めた場合に、議員定数の配分が国会の専権事項であるとの一事をもつて裁判所の審査権限がこれに及ばないとすることは許されないものといわなければならない。
[4] また、議員定数の配分は国会の裁量的権限に属するものではあるが、前記のごとく国民の基本的権利である選挙権に関することがらであつて、国家統治の基本に直接関係する高度に政治性のある国家行為とは解されないから、右統治行為の理論をもつてこれが裁判所の審査権限外の事項であるということはできない。
[5] 次に、被告は、本件において選挙無効の判決がなされたとしても、その結果施行されなければならない再選挙が有効に行われるために議員定数の配分を改正することは、公職選挙法の規定上、これに要する期間が少くて実際上不可能であるとして、実効のない司法権の行使は抑制すべきであると主張する。しかし、公職選挙法の実体規定ともいうべき選挙権の実質に関する規定が憲法に違反するかどうかが司法審査の対象になるかどうかを判断するについて、その判断の結果に従うことが同法の現行の手続規定に照らし実際上不可能であるかどうかによつて決すべきであるという論理は、事の本末を顛倒するものであつて採用できない。
[6](三) 被告は、本件訴は公職選挙法第204条に該当しないから却下されるべきであると主張する。
[7] しかし、同法第205条にいう「選挙の規定に違反することがあるとき」とは、具体的選挙の管理執行手続規定に違反することがある場合のみでなく、本件において主張されているように選挙に関する法令の規定が憲法に違反するためにその規定に従つて施行された選挙の効力が否定されなければならない場合をも含むものと解すべきであり、同法条にいう「選挙の結果に異動を及ぼす虞がある場合」とは、当該選挙が選挙の規定に違反したことによつてその具体的な選挙の結果に影響があつたとみられる場合のことであつて、訴訟の結果に基づく再選挙の施行が実効をあげうるかどうかを同法第204条による訴の要件と定めたものとは解されないから、被告の右主張は採用できない。
[8] 原告は、憲法が保障するいわゆる平等選挙は選挙区を異にする各選挙人についても「投票の価値の平等」が確保されなければ達せられないものであると主張し、ところが本件の衆議院議員選挙について選挙区別議員定数を定めた公職選挙法別表第1および同法附則第7ないし第9項の各規定はなんらの合理的根拠に基づくことなく、住所(選挙区)のいかんという関係で一部の国民を不平等に取扱い、明らかに憲法第14条の規定に違反するものであるとし、右別表第1および前掲附則の各規定に基づいて行われた本件選挙にあつては、他の選挙区との間に「投票の価値」について明白かつ多大な格差が存し、その格差は平等選挙において制度上当然許容されるべき程度をはるかに超えるものであるから、本件選挙は無効である旨主張するので判断する。
[9] 本件選挙が右別表第1および前掲附則の各規定に基づいて行われたことは、公知の事実である。
[10] 原告は、右「投票の価値」は各選挙区における議員定数と有権者数との割合をもつて表わすことができると主張し、本件の衆議院議員選挙における選挙区別の議員定数と有権者数との関係が原告主張のとおりであることは、当事者間に争いがない。
[11] 憲法は、衆議院議員の定数は法律で定める旨(同第43条第2項)議員およびその選挙人の資格は法律で定め、人種、信条、性別、社会的身分、門地、教育、財産または収入によつて差別してはならない旨(同第44条)を規定し、かつ、選挙区、投票の方法その他議員の選挙に関する事項はこれを法律で定める旨(同第47条)規定しているが、選挙区割および各選挙区において選挙すべき議員の数をどのように定めるべきかについては規定していないから、この点は憲法によつて立法府の裁量にまかせられているものと解すべきであつて、原告主張のように、選挙区の大小などの地理的要素、歴史的沿革、行政区画別議員数の振合い等の諸要素は考慮の外にして、もつぱら各選挙区ごとに議員定数と有権者数との比率を均衡にするよう立法すべきものとする憲法上の覊束があるとは解されない。
[12] 衆議院議員は選挙区を単位とする地域住民の代表としてではなく全国民の代表として選出されるべきものであることは、憲法第43条第1項の規定上明らかであつて、その趣旨と憲法第14条のいわゆる平等保障条項の趣旨に照らせば、議員定数の各選挙区別の配分についての立法にあたつては、選挙人口たる有権者数との比率が重視されて、これが各選挙区間で均衡を保つよう配慮されるべきであるといわなければならない。
[13] しかし、人口の疎な面積の広い地区の地域特殊性を国会の審議に多く反映させることが国民全体の利益に合すると考えられる場合に、選挙人口との比率にかかわらず当該地区を包摂する選挙区の議員定数を人口の密な面積の狭い選挙区より多い割合で定めることの裁量がなされたとしても、それが合理的でないとはいえない場合がありうるのであつて、このような場合に選挙人口との比率の不均衡の一事をもつて、立法府の裁量行為が合理的範囲を逸脱するとはいえないものと解すべきである。
[14] また、急激な人口変動のため特定の選挙区の選挙人口が議員定数との比率の均衡を破る程度にまで減少した場合にあつても、その減少状態の持続についての見通し、あるいはその選挙区に対する議員定数配分の沿革を考慮して、一挙に他の選挙区との比率均衡をはかることを留保する裁量もまた合理的範囲を逸脱しないものといえる場合がありうるのである。そして、このような立法府の裁量が選挙人の選挙権の享有に極端な不平等を生じさせるような場合は格別、議員定数の配分が選挙人口に比例していないということだけで憲法第14条第1項に違背するといえないことは、すでに昭和39年2月5日言渡の最高裁判所大法廷判決(昭和38年(オ)第422号)の明らかにするところである。
[15] そしてまた、右にいう「選挙権の享有」とは、当該選挙区における選挙人の有する選挙権の総和を比例配分的に享有する関係のものでないことはいうまでもないところであつて、原告が平等を唱える「投票の価値」の実質についても同様のことがいえる。また、投票の価値が大きいといつても、当該選挙人にとつてみればその投票によつて最大限1人の候補者の当選をもたらすことができるだけであつて、価値の大きい投票をする選挙区の各選挙人は価値の小さい投票をする選挙区の各選挙人より多数の議員を選出しうるわけのものではない。いうところの「投票の価値」とは、選挙人の投票する権利の価値を選挙人の側から評価した概念であると解することができるところ、それは、ひつきよう、選挙人の投票が自己の選出しようとする候補者の当選をもたらす可能性の度合い(逆にいえば、いわゆる死票とならない可能性の度合い)であるということができる。したがつて、議員定数と有権者数以外の一切の要因を一定にして考えれば、議員1人あたりの有権者数の少い選挙区における各投票の価値は、それの多い選挙区の各投票の価値より大であるということができるわけである。
[16] しかし、選挙区を異にする選挙人について投票の価値を比較するにあたつては、右のような単純な算術的比例数値のみによることはできないものであつて、さらに当該選挙制度の構造上当然考慮に入れなければならない他の諸要因が示す変数値との関数関係においてその投票の価値が求められるものといわなければならない。立候補者数との割合という要因だけをとつてみても、それは選挙区を異にして一定の数値を考えることはできない。その数値のいかんによつて、選挙区の選挙人の投票が自己の選出しようとする候補者の当選を可能とする度合いに影響を受けることは明らかというべきである。したがつて、原告の主張するように、ある選挙区の議員1人あたりの有権者数が他の選挙区に比べて2倍ないし数倍になつている事実をもつてただちに、後者の選挙人に前者の2人分ないし数人分の投票の権利が与えられたと同視できるとはいえないのである。
[17] もちろん、右諸々の要因を考慮に入れてもなお、選挙区別の選挙人につきその投票の価値の平等を害するといわなければならないような議員定数の配分が考えられないことはないのであつて、その不平等が国民の正義公平観念に照らし容認できないものと認められる程度に至つた場合には、もはや憲法の保障する平等選挙の理念から許すべからざるものといわなければならず、それは前掲最高裁判所大法廷判決のいう選挙人の選挙権の享有に極端な不平等を生じさせる場合にあたるものというべく、議員定数の配分がそのような事態を生ずる場合には、もはや立法府の合理的裁量の範囲を超え、憲法上許されないものといわなければならない。しかして、本件の衆議院議員選挙において選挙区別の議員1人あたりの有権者数が原告主張のような不均等であることは前示のごとくであつて、最高と最低ではそれぞれその平均から2.6倍強と2分の1弱程度の偏差を示していることは、当事者間に争いのない右事実から明らかであるが、本件にあらわれた事実関係のもとでは、いまだ、選挙区別議員定数の配分によつて生ずる投票の価値の不平等が国民の正義公平観念に照らし容認できない程度に至つているとは認められないから、右選挙につき議員定数の配分を定めた前掲別表第1および附則の各規定が違憲であるとする原告の主張は採用できないところであり、右違憲を前提として本件選挙の無効をいう原告の請求は失当というのほかない。
[18] よつて、原告の本訴請求を棄却すべきものとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第89条を適用して、主文のとおり判決する。

  (裁判官 久利馨 安倍正三 舘忠彦)

別紙 昭和47年12月10日執行の衆議院議員選挙における議員定数有権者数対照表(略)

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