大阪市屋外広告物条例事件
控訴審判決

大阪市屋外広告物条例違反被告事件
大阪高等裁判所
昭和41年2月12日 第6刑事部 判決

被告人  荒井忍 外1名

■ 主 文
■ 理 由

■ 参照条文

 本件各控訴を棄却する。
 当審における訴訟費用は被告人荒井忍、同藤本博の連帯負担とする。


[1] 本件各控訴の趣意は被告人3名作成名義の控訴申立書と題する書面記載のとおりであるからこれを引用する。
[2] 所論の要旨は、原判決はその判示第二の犯行について被告人3名が福井勝こと福井和雄と共謀してポスターを貼つたと認定しているが、実際にポスターを貼つたのは被告人松藤と福井和雄の2名であり、被告人荒井、同藤本は当日同時刻頃大阪中央市場に所用で行つていたのである。被告人松藤及び福井の両名は大阪東警察署に逮捕勾留され、その釈放の条件として警備課長より被告人藤本、同荒井の両名も同罪を犯したことを認めよとの申出があり、被告人藤本、同荒井がこの条件を呑んだため4名説が出たにすぎない。従つて、被告人荒井、同藤本は無罪である、というのである。
[3] よつて記録及び当審における事実調べの結果を精査し案ずるに、原判決挙示の証拠によれば原判示第二の事実を優に認定することができる。被告人荒井、同藤本は、右犯行当時大阪中央市場に行つていた旨弁解するけれども、原判決挙示の被告人荒井、同藤本の検察官に対する各供述調書によれば、右被告人両名が大阪の中央市場に所用で行つたのは原判示第二の犯行後たる昭和39年8月29日の朝であることが認められるから、右弁解が理由のないことは明らかである。次に、被告人荒井、同藤本は、被告人松藤及び福井和雄釈放の条件として大阪東警察署において右犯行を認めた旨主張し,被告人荒井は当審公判廷において右主張に沿う供述をしているが右、供述は原審における証人中泉譲の供述、当審における証人田坂清の供述並びに原審公判廷における被告人藤本の供述と対比して信用し難く、むしろ右証人中泉譲、同田坂清の各供述によれば、当時大阪東警察署警備課長であつた田坂清も被告人荒井の供述調書を取つた同署巡査部長中泉譲も、被告人荒井、同藤本に対し本件犯行を自供し、その調書に署名すれば被告人松藤及び福井和雄を釈放するというようなことを申出たり、他の取調べ係官にその旨指示した事実は認められないから、被告人荒井、同藤本の司法警察員に対する各供述調書の任意性に疑を容れる余地はなく、また原判決が補強証拠として掲げた各関係資料と対比検討するとその信用性も充分に認められるから、これに引続き検察庁での取調べの結果作成された原判決挙示の右被告人両名の検察官調書(同調書作成当時被告人松藤及福井は既に釈放されており、被告人荒井、藤本も拘束を受けていなかつたことは前掲証拠により明かである。)の任意性及び信用性も充分に認められるところである。以上要するに原判決には所論のような事実の誤認はなく論旨は理由がない。
[4] 論旨は被告人松藤及び福井和雄の両名がポスターを貼つたのは自己の意思をポスターによつて表現したものであつて憲法によつて保障されたものである、というのである。
[5] よつて案ずるに、憲法第21条の保障する表現の自由といえども無制限に許されるものではなく、公共の福祉のために合理的な制限に服するものと解すべきところ、本件屋外広告物条例は屋外広告物法にもとづき制定されたものであり、原判決のとおり、そこに規定された広告物の表示に対する制限は都市の美観風致の維持と公衆に対する危害防止という公共的見地からなされるものであつて、同条例の定める程度の制限は表現の自由に対し公共の福祉のために合理的な制限を定めたものとみることができる。従つて、本件条例の右制限規定は憲法第21条に違反せず、また憲法のその他の規定にも違反しないと解せられるから、本論旨も理由がない。

[6] よつて刑事訴訟法第396条、第181条第1項本文、第182条により主文のとおり判決する。
第1条 この法律は、美観風致を維持し、及び公衆に対する危害を防止するために、屋外広告物の表示の場所及び方法並びに屋外広告物を掲出する物件の設置及び維持について、必要な規制の基準を定めることを目的とする。
第2条 この法律において「屋外広告物」とは、常時又は一定の期間継続して屋外で公衆に表示されるものであつて、看板、立看板、はり紙及びはり札並びに広告塔、広告板、建物その他の工作物等に掲出され、又は表示されたもの並びにこれらに類するものをいう。
第1条 この条例は、屋外広告物法(昭和24年法律第189号)に基き、美観風致を維持し、及び公衆に対する危害を防止するために、屋外広告物(以下広告物という。)について、必要な規制を定めることを目的とする。
第4条 (第1項略)
 左の各号に掲げる物件には、広告物を表示し、又は広告物を掲出する物件を設置することはできない。
 一 橋りょう
 (二以下 略)
 前2項に掲げるものの外、左の各号に掲げる物件、地域又は場所には、ポスター、はり紙及び立看板を表示し、又は掲出することができない。
 一 電柱及びこれに類するもの
 (二以下 略)
第13条 左の各号の一に該当する者は、これを5万円以下の罰金に処する。
 一 第2条、第3条第1項、第4条、第5条又は第6条の規定に違反した者
 (二以下 略)

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