公衆浴場法合憲新判決(刑事事件)
第一審判決

公衆浴場法違反被告事件
大阪簡易裁判所 昭和60年(ろ)第60号
昭和60年11月25日 判決

被告人 乙野太郎(仮名) 外1名

■ 主 文
■ 理 由

■ 参照条文


 被告人乙野太郎を罰金1万円に、同乙野花子を罰金5,000円にそれぞれ処する。
 被告人らにおいてその罰金を完納することができないときは、金2,000円をそれぞれ1日に換算した期間(端数は1日に換算する)、その被告人を労役場に留置する。


[1] 被告人両名は共謀のうえ、大阪市長の許可を受けないで、昭和59年4月2日ころから同月19日までの間、大阪市南区日本橋2丁目23の1に設置した浴場(高津温泉)において、大人1人220円、中人1人110円、小人1人50円の料金で、斉藤正夫ほか多数の一般公衆を入浴させ、もつて業として公衆浴場を経営したものである。
(被告人両名に対し)
 判示所為  刑法60条、公衆浴場法8条1号、2条1項(罰金刑選択)
 労役場留置 刑法18条
[2] 弁護人は「被告人乙野花子名義で「高津温泉」の名称にて、普通公衆浴場の営業許可申請をなしたところ、大阪市長は、設置場所が配置の適正を欠くとして不許可処分とした。その根拠とするところは、公衆浴場法2条2項及び大阪府公衆浴場法施行条例であるが、同法及び同条例は、いづれも憲法22条1項が保証〔ママ〕する職業選択の自由に違反し違憲無効である。よつて、右違法な不許可処分を前提とする本件所為は何等犯罪構成要件に該当せず、罪とならない。」という。
[3] しかしながら、公衆浴場は、多数の国民の日常生活上、環境衛生保持のため必要欠くべからざる公共性を有する施設である。その上、入浴料金は統制され、利用者の地域的範囲も限定されて、企業の弾力性極めて乏しく、その開設には多額の建設費を要するため他業への転業も容易でない等の特殊性がある。よつて、その濫立と偏在を防止することにより、国民の公衆浴場利用の便に資し、また、浴場経営の安定化を図り、ひいては衛生的な公衆浴場を確保するため、その設置場所について距離的制限を施し、これに反するものに、その経営許可を与えないことが出来る旨の規定は、公共の福祉にかなうところであり、たとえそれが職業選択の自由を拘束する面があつてもやむを得ない(最高裁昭和30年1月26日大法廷判決、同昭和41年6月16日第1小法廷判決参照)。そうとすると、その違憲無効を前提とする所論は理由がない。

[4] また、弁護人は「被告人乙野花子名義の「高津温泉」所在地に、昭和30年ごろから同58年8月ごろまで約30年間「高津トルコ温泉」又は「高津サウナセンター」名で、事実上普通公衆浴場(特殊公衆浴場の許可又は無許可)経営がなされていた。しかるに、右営業中に同所から僅か65メートルしか離れていない場所に「稲荷湯」(現在は毎日湯)が普通公衆浴場の営業許可の申請をなし、これは、大阪府公衆浴場法施行条例2条3号但書の適正配置規制の例外の特殊事情があるものとして、許可された。そうとすれば、被告人乙野花子名義で申請した「高津温泉」も同様特殊事情に該当するものとして、許可されるべきであつた。そして、右「稲荷湯」は、適正配置規制の距離内に、右「高津トルコ温泉」等の営業がなされてることを承知の上で普通公衆浴場を開設し、その営業を継続しているので、これは自ら保護法益を放棄したものである。よつて,本件は法の予想する可罰的違法性を欠如したものであるから罪とならない。」ともいう。
[5] しかしながら、右主張を裏付けるに足る証拠もなく、そもそもその主張自体、永年の違法営業事実を前提としたり、公衆浴場法の保護法益は社会的なものであるのに、これを個人的なものとした上での主張であつて、その主張自体失当であるので、判示所為を以て可罰的違法性のないものとは認められず、所論は理由がない。

第2条 公衆浴場の設置場所の配置の間隔は、市の区域にあつてはおおむね200メートル、その他の区域にあつてはおおむね250メートルを必要とする。ただし、次の各号の一に該当する場合は、この限りでない。
 一 設置の許可を受けた公衆浴場が2箇月以内に工事に着手しないとき、又は8箇月以内に工事を完成しないとき。
 二 既設の公衆浴場が、工事の完成後1箇月以内に営業を開始しないとき、又は引き続き6箇月以上休業したとき。
 三 既設の公衆浴場と営業の許可を受けようとする公衆浴場との間が橋梁のない河川又は踏切のない鉄道等で遮断されている場合、既設の公衆浴場の周辺に公営住宅その他の共同住宅がある場合等の特殊事情により知事が必要と認めたとき。

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