
非平衡物理学
学部で勉強する熱力学や統計力学は主に物質の平衡状態を扱います。
ところが、自然の中の物質は時間的に変化したり、空間的に非一様で流れが生じたりと、平衡状態ではなく非平衡状態であることがほとんどです。
これら物質の非平衡状態を扱うのが非平衡物理学であり、その対象は広範で、当研究室の大きなテーマになります。
非平衡物理学の対象は多岐にわたりますが、当研究室では特に古典的な粒子系を扱います。
例えば、泡、エマルジョン、粉体など、個々の粒子がエネルギーを保存しない「散逸粒子系」のモデルについて詳しく調べており、理論と数値計算の両面から研究に取り組んでいます。
散逸粒子系は巨視的な粒子の集まりなので、温度の影響を受けず、粘性力や摩擦力によってエネルギーを散逸するという特徴があります。
従って、外力が無ければ静止状態に陥りますが、外力を加え続けると、外部からのエネルギー注入と内部のエネルギー散逸がバランスした非平衡定常状態に陥ります。
また、密度に応じて気相、液相、固相に区別され、特に液相からアモルファス固体への変化はジャミング転移と呼ばれ、重要な研究テーマの一つです。
その他、散逸粒子系の輸送現象やメソスケールの物理といったテーマもあり、最近は個々の粒子がエネルギーを生成するアクティブマターなど、新しい研究テーマにも挑戦しています。