研究目的(本研究の学術的背景)

1.本研究の学術的背景

今日,株式会社の存在意義と会計の役割があらためて問われようとしている。株式会社の社会的責任が強調されながら,コンプライアンス違反は後を絶たず,また,近年大規模な粉飾決算も続発し,株式会社の適正な財務報告,利害関係者の調整,あるいは,内部統制といった会計に期待される機能も有名無実化しているのが現状である。このような問題の根源を解明するためには,その生成期にさかのぼり,株式会社と会計の関係をその出発点から解明する必要がある。これが本研究の第一の学術的背景である。

株式会社は1602 年オランダで生まれた連合東インド会社を持ってその嚆矢とされる。爾来,400 年間にわたりもっとも一般的な会社形態として存在し続けている。同社の研究は主に経済史の面から研究が進められているが,その傾向は,同社の経済活動の中身の分析を中心するものが多く,地域的にはアジアを対象としているといえよう。具体的には,Cinii をもとに,「オランダ東インド会社」のキーワードで検索したところ,2004 年以降の約10年間では40 件の文献が登録されている。さらに,これらの文献で経済活動を扱ったと思われる文献の特徴をキーワードで表わせば,「アジア」,「貿易」,「磁器」などであり,「会計」に関するものは,「アジア」に属する行武和博の平戸商館に関する二点のみである。株式会社の生成・本質と会計の関係に迫るためには,「会計」と「オランダ本国」をキーワードとした研究が不可欠であり,これが本研究を必要とする第二の学術的背景である。