沖縄代理署名訴訟
上告審判決

地方自治法151条の2第3項の規定に基づく職務執行命令裁判請求事件
最高裁判所 平成8年(行ツ)第90号
平成8年8月28日 大法廷 判決

上告人 (被告) 沖縄県知事
     代理人 中野清光 外25名

被上告人(原告) 内閣総理大臣
     代理人 増井和男 外20名

■ 主 文
■ 理 由

■ 裁判官園部逸夫の補足意見
■ 裁判官大野正男、同高橋久子、同尾崎行信、同河合伸一、同遠藤光男、同藤井正雄の補足意見


 本件上告を棄却する。
 上告費用は上告人の負担とする。


[1] 条約名等について、次の略称を用いる。
略称 正式名称
日米安全保障条約 日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約
日米地位協定 日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第6条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定
駐留軍用地特措法 日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第6条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定の実施に伴う土地等の使用等に関する特別措置法
沖縄返還協定 琉球諸島及び大東諸島に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定
[2] 私有財産を公共のために収用し、又は使用する権能は、本来、国が有するものであるが、具体的にどのような要件、手続の下に私有財産を収用し、又は使用し得るものとするのかについては、これを定める法律の規定に従うべきものである。土地収用法は、土地等を収用し、又は使用する主体を、その権能を本来的に有する国とするのではなく、同法3条各号に掲げる公共の利益となる事業(以下「公益事業」という。)の用に供するために土地等を必要とする起業者とするとともに(同法8条1項、16条)、公共の利益の増進と私有財産との調整を図るという観点から、土地等の収用又は使用に関し、その要件、手続等を定めるものである(同法1条)。すなわち、同法は、公益事業の用に供するために必要な土地等の収用又は使用の事務を起業者の事務とした上で、私有財産権の保障との調整を図りつつ、右事務を円滑に行わせるために、段階的に建設大臣を初めとする同法所定の行政機関の権限に属する行政処分を介在させるなどして、右事務の遂行に行政上の規制を加えることとしている。このような手続構造からすれば、起業者に土地等の収用又は使用の権限を付与するなどの事務が、国が本来的に有する前記の権能に由来するという意味において、国の事務に該当することが明らかであるだけでなく、公益事業の円滑な遂行と私有財産権の保障との調整を図ることを目的として、起業者が行う事業の遂行を規制することもまた、起業者に土地等の収用又は使用の権限を付与した国の責務であり、そのための事務も、その性質上、国の事務に当たるものと解するのが相当である。右のような性質を有する事務を地方公共団体固有の事務に当たると解することはできない。

[3] これを土地収用法36条5項によって都道府県知事の権限に属するものとされた事務(以下「署名等代行事務」という。)についてみると,右事務は、起業者が土地等の収用又は使用の裁決を申請するために必要な土地調書及び物件調書を完成させるための事務であるという点において、起業者が行う土地等の収用又は使用の事務の円滑な遂行に資する事務であるとともに、土地調書及び物件調書の作成が適正に行われたことを公的に確認することにより、調書の作成の適正を担保し、ひいては私有財産権の保障を手続的に担保するための事務であるということができる。右のような署名等代行事務の性質にかんがみれば、右事務は、国の事務に当たるものと解するのが相当である。
[4] このように、署名等代行事務が国の事務の性質を有するものであるとしても、法律により、右事務の全部又は一部を地方公共団体の事務とすること、すなわち、地方公共団体に右事務を団体委任することも可能である。ところで、都道府県が処理する事務を例示する地方自治法2条6項は、2号において、「土地の収用に関する事務」を掲げているが、右規定は、同条3項各号の例示を受けて、市町村が処理する事務との関係において都道府県が処理する事務の範囲を画する規定であり、右の「土地の収用に関する事務」というのも、同項19号に例示された「法律の定めるところにより、地方公共の目的のために動産及び不動産を使用又は収用する」事務を受けた規定とみることができ、同号の文言に照らすならば、同条6項2号は、都道府県が起業者として土地を収用する場合において行うべき事務を都道府県の事務として例示したものと解するのが相当である。したがって、右規定を根拠として、署名等代行事務が地方公共団体に団体委任された事務に当たると解することはできないし、他にそのように解する根拠となる規定は見当たらない。
[5] 他方、地方自治法別表第3第1号(108)、同法別表第4第2号(43)に都道府県知事又は市町村長の権限に属する国の事務として掲げられている各種の事務は、いずれも、公益事業の用に供するための土地等の収用又は使用の事務の円滑な遂行と私有財産権の保障との調整を図ることを目的とするものであって、署名等代行事務とその基本的性質を同じくするものということができる。
[6] 以上のことからすると、土地収用法36条5項は、署名等代行事務を都道府県知事に機関委任したものと解するのが相当である。

[7] 駐留軍用地特措法14条は、同法3条の規定による土地等の使用又は収用に関しては、同法に特別の定めがある場合を除き、土地収用法を適用するものとしており、日本国に駐留するアメリカ合衆国の軍隊(以下「駐留軍」という。)の用に供するための土地等の使用又は収用に関しても、右1及び2に説示したところと別異に解する理由はないから、駐留軍用地特措法14条に基づき同法3条の規定による土地等の使用又は収用に関して適用される場合における土地収用法36条5項所定の署名等代行事務も、都道府県知事の権限に属する国の事務に当たるというべきである。
[8] 駐留軍用地特措法は、日米地位協定を実施するため、駐留軍の用に供する土地等の使用又は収用に関し規定することを目的とする(同法1条)。これによれば、駐留軍用地特措法に基づく土地等の使用又は収用に関する事務は、我が国の安全保障並びにこれと密接な関係を有する極東における国際の平和及び安全の維持という国家的な利益にかかわる事務であるとともに、アメリカ合衆国に対する施設及び区域の提供という、日米安全保障条約に基づく我が国の国家としての義務の履行にかかわる事務であるということができる。このことに、駐留軍用地特措法5条により、同法に基づく土地等の使用又は収用の認定の権限が被上告人にあるものとされていることを併せ考えると、同法に基づき、防衛施設局長が行う土地等の使用又は収用の事務の円滑な遂行と私有財産権の保障との調整を図るための事務は、建設省の所掌事務とされている「土地の使用及び収用に関する事務」(建設省設置法3条37号)に含まれるものと解することはできない。そして、右事務がその他の省庁等のいずれかの所掌事務に当たるとする法的根拠もないから、右事務は、総理府設置法4条14号の定めるところに従い総理府が所掌する事務に当たるとするのが相当であり、そのように解することが右事務の性質にもかなうものといえる。したがって、駐留軍用地特措法14条に基づき同法3条の規定による土地等の使用又は収用に関して適用される場合における土地収用法36条5項所定の署名等代行事務の主務大臣は、被上告人というべきである。

[9] 以上によれば、所論の点に関する原審の判断は、結論において是認することができ、これと異なる見解に立って原判決を非難する論旨は、採用することができない。
[10] 都道府県知事は、地方住民の選挙によって選任され、当該都道府県の執行機関として、本来、国の機関に対して自主独立の地位を有するものであるが、他面、法律に基づき委任された国の事務を処理する関係においては、国の機関としての地位を有し、その事務処理については、主務大臣の指揮監督を受けるべきものである(国家行政組織法15条1項、地方自治法150条)。しかし、右事務の管理執行に関する主務大臣の指揮監督につき、いわゆる上命下服の関係にある国の本来の行政機構内部における指揮監督の方法と同様の方法を採用することは、都道府県知事本来の地位の自主独立性を害し、ひいては地方自治の本旨にもとる結果となるおそれがある。そこで、地方自治法151条の2は、都道府県知事本来の地位の自主独立性の尊重と国の委任事務を処理する地位に対する国の指揮監督権の実効性の確保との間の調和を図るために職務執行命令訴訟の制度を採用しているのである。そして、同条が裁判所を関与させることとしたのは、主務大臣が都道府県知事に対して発した職務執行命令の適法性を裁判所に判断させ、裁判所がその適法性を認めた場合に初めて主務大臣において代執行権を行使し得るものとすることが、右の調和を図るゆえんであるとの趣旨に出たものと解される。
[11] この趣旨から考えると、職務執行命令訴訟においては、下命者である主務大臣の判断の優越性を前提に都道府県知事が職務執行命令に拘束されるか否かを判断すべきものと解するのは相当でなく、主務大臣が発した職務執行命令がその適法要件を充足しているか否かを客観的に審理判断すべきものと解するのが相当である。

[12] この点につき、原審は、地方自治法151条の2第1項所定の要件の審査を除いた職務執行命令の適法性の審査とは、都道府県知事が法令上当該命令に係る事務を執行する義務を負うか否かの審査を意味すると解した上で、都道府県知事は、法令上付与された審査権の範囲内において当該国の事務を執行すべき要件が充足されているか否かを審査し、右要件を充足していると認めるときは、当該国の事務を執行すべき義務を負うものであるから、右義務の有無を審理判断すべき裁判所も、右法令により都道府県知事に審査権が付与されていない事項を審査して、右義務の有無を論ずることはできないと判断している。
[13] しかしながら、都道府県知事の行うべき事務の根拠法令が仮に憲法に違反するものである場合を想定してみると、都道府県知事が、右法令の合憲性を審査し、これが違憲であることを理由に当該事務の執行を拒否することは、行政組織上は原則として許されないが、他面、都道府県知事に当該事務の執行を命ずる職務執行命令は、法令上の根拠を欠き違法ということができるのである。そうであれば、都道府県知事が当該事務を執行する義務を負うからといって、当該事務の執行を命ずることが直ちに適法となるわけではないから、職務執行命令の適法性の審査とは都道府県知事が法令上当該国の事務を執行する義務を負うか否かの審査を意味すると解した上、裁判所も都道府県知事に審査権が付与されていない事項を審査することは許されないとした原審の判断は相当でない。
[14] そこで、以下においては、被上告人が上告人に対して発した本件職務執行命令を適法であるとした原審の判断を非難する論旨について、右1に説示した見地に立って検討を進めることとする。
[15] 本件職務執行命令の法的根拠となった駐留軍用地特措法の合憲性が、右命令がその適法要件を充足しているか否かを審理判断すべき本件訴訟における審査の対象となることは、前記のとおりであるところ、所論は、日米安全保障条約及び日米地位協定に基づきアメリカ合衆国の軍隊の我が国における駐留を認めることが憲法に違反するものでないとしても、駐留軍の用に供するために土地等を強制的に使用し、又は収用することは、憲法前文、9条、13条に基づき保障された平和的生存権を侵害し、憲法29条3項に違反するというのである。
[16] 日米安全保障条約6条、日米地位協定2条1項の定めるところによれば、我が国は、日米地位協定25条に定める合同委員会を通じて締結される日米両国間の協定によって合意された施設及び区域を駐留軍の用に供する条約上の義務を負うものと解される。我が国が、その締結した条約を誠実に遵守すべきことは明らかであるが(憲法98条2項)、日米安全保障条約に基づく右義務を履行するために必要な土地等をすべて所有者との合意に基づき取得することができるとは限らない。これができない場合に、当該土地等を駐留軍の用に供することが適正かつ合理的であることを要件として(駐留軍用地特措法3条)、これを強制的に使用し、又は収用することは、条約上の義務を履行するために必要であり、かつ、その合理性も認められるのであって、私有財産を公共のために用いることにほかならないものというべきである。国が条約に基づく国家としての義務を履行するために必要かつ合理的な行為を行うことが憲法前文、9条、13条に違反するというのであれば、それは当該条約自体の違憲をいうに等しいことになるが、日米安全保障条約及び日米地位協定が違憲無効であることが一見極めて明白でない以上、裁判所としては、これが合憲であることを前提として駐留軍用地特措法の憲法適合性についての審査をすべきであるし(最高裁昭和34年(あ)第710号同年12月16日大法廷判決・刑集13巻13号3225頁参照)、所論も、日米安全保障条約及び日米地位協定の違憲を主張するものではないことを明示している。そうであれば、駐留軍用地特措法は、憲法前文、9条、13条、29条3項に違反するものということはできない。

[17] 所論は、駐留軍用地特措法は、憲法31条に違反するとも主張する。
[18] 行政手続については、それが刑事手続ではないとの理由のみで、そのすべてが当然に憲法31条による保障の枠外にあると判断することは相当ではないが、同条による保障が及ぶと解すべき場合であっても、保障されるべき手続の内容は、行政処分により制限を受ける権利利益の内容、性質、制限の程度、行政処分により達成しようとする公益の内容、程度、緊急性等を総合較量して決定されるべきものである(最高裁昭和61年(行ツ)第11号平成4年7月1日大法廷判決・民集46巻5号437頁参照)。
[19] これを駐留軍用地特措法の定める土地等の使用又は収用の手続についてみると、同法の定める手続の下に土地等の使用又は収用を行うことが、土地等の所有者又は関係人の権利保護に欠けると解することはできないし、また、国が主体となって行う駐留軍用地特措法に基づく土地等の使用又は収用につき、国の機関である被上告人がその認定を行うこととされているからといって、適正な判断を期待することができないともいえない。したがって、駐留軍用地特措法は、憲法31条に違反するものではない。

[20] 以上によれば、駐留軍用地特措法は、所論の憲法の各条項に違反するものではなく、これと同旨の原審の判断は、正当として是認することができる。同法の違憲をいう論旨は、採用することができない。
[21] 所論は要するに、我が国における駐留軍の基地の大半が沖縄県に集中し、これにより同県及びその住民に重大な被害が生じているという現状の下では、同県の住民の投票による同意を得ることなく、同県において駐留軍用地特措法を適用し、土地等の使用又は収用の手続を進めることは、憲法前文、9条、13条、14条、29条3項、92条、95条に違反するというのである。原審は、所論に係る主張を使用認定の違憲をいうものと理解した上、その当否は、本件訴訟における審理の対象とはならないとする。しかし、右主張は、右現状の下においては、本件職務執行命令の根拠法である駐留軍用地特措法は、沖縄県における効力を否定されるべきであるとの趣旨をいうものと理解することができ、その当否は、本件訴訟において審理判断を要するものというべきである。

[22] 駐留軍用地特措法による土地等の使用又は収用の認定は、駐留軍の用に供するため土地等を必要とする場合において、当該土地等を駐留軍の用に供することが適正かつ合理的であると判断されるときになされるのであるが(同法5条、3条)、右認定に当たっては、我が国の安全と極東における国際の平和と安全の維持にかかわる国際情勢、駐留軍による当該土地等の必要性の有無、程度、当該土地等を駐留軍の用に供することによってその所有者や周辺地域の住民などにもたらされる負担や被害の程度、代替すべき土地等の提供の可能性等諸般の事情を総合考慮してなされるべき政治的、外交的判断を要するだけでなく、駐留軍基地にかかわる専門技術的な判断を要することも明らかであるから、その判断は、被上告人の政策的、技術的な裁量にゆだねられているものというべきである。沖縄県に駐留軍の基地が集中していることによって生じているとされる種々の問題も、右の判断過程において考慮、検討されるべき問題である。
[23] 右に述べたところからすると、沖縄県における駐留軍基地の実情及びそれによって生じているとされる種々の問題を考慮しても、同県内の土地を駐留軍の用に供することがすべて不適切で不合理であることが明白であって、被上告人の適法な裁量判断の下に同県内の土地に駐留軍用地特措法を適用することがすべて許されないとまでいうことはできないから、同法の同県内での適用が憲法前文、9条、13条、14条、29条3項、92条に違反するというに帰する論旨は採用することができない。また、駐留軍用地特措法が沖縄県にのみ適用される特別法となっているものではないから、同法の沖縄県における適用の憲法95条違反をいう論旨は、その前提を欠く。
[24] 署名等代行事務は、使用認定から使用裁決に至る一連の手続を構成する事務の一つであって、使用裁決を申請するために必要な土地調害及び物件調書を完成させるための事務である。使用裁決の申請は、有効な使用認定の存在を前提として行われるべき手続であるから、原判決別紙土地目録1ないし8記載の各土地(以下「本件各土地」という。)に係る使用認定に重大かつ明白な瑕疵があってこれが当然に無効とされる場合には、被上告人が上告人に対して署名等代行事務の執行を命ずることは許されないものというべきである。そうであれば、本件各土地につき、有効な使用認定がされていることは、被上告人が上告人に対して署名等代行事務の執行を命ずるための適法要件をなすものであって、使用認定にこれを当然に無効とするような瑕疵がある場合には、本件職務執行命令も違法というべきことになる。使用認定に右のような瑕疵があるか否かについては、本件訴訟において、審理判断を要するものと解するのが相当である。
[25] しかしながら、使用認定に何らかの瑕疵があったとしても、その瑕疵が使用認定を当然に無効とするようなものでない限り、これが別途取り消されるまでは、何人も、使用認定の有効を前提として、これに引き続く一連の手続を構成する事務を執行すべきものである。したがって、仮に、本件各土地の使用認定に取消し得べき瑕疵があるとしても、上告人において署名等代行事務の執行を拒否することは許されないし、被上告人においても、有効な使用認定が存在することを前提として、上告人に対して署名等代行事務の執行を命ずるかどうかを決すれば足りると解される。そうであれば、本件各土地の使用認定に取り消し得べき瑕疵のないことが、被上告人が上告人に対して署名等代行事務の執行を命ずるための要件をなすものとはいえない。そして、機関委任事務の執行を命ずることの適否を問う職務執行命令訴訟において、当該事務に先行する手続ないし処分に何らかの瑕疵があればその程度にかかわらず職務執行命令も当然に違法となるとして、これらの手続ないし処分の適否を全面的に審理判断することは、法の予定するところとは解し難い。結局、本件各土地の使用認定についての瑕疵の有無は、それが重大かつ明白とはいえない限り、自己の権利ないし法的利益を侵害された者が提起する取消訴訟において審理判断されるべき事柄であって、これを本件訴訟において審理判断すべきものと解することはできない。

[26] そこで、本件各土地の使用認定にこれを当然に無効とすべき重大かつ明白な瑕疵が認められるか否かについて検討する。
[27] 駐留軍用地特措法は、駐留軍の用に供するため土地等を必要とする場合において、当該土地等を駐留軍の用に供することが適正かつ合理的であると認められるときは、当該土地等の使用認定をすべきものとしているところ(同法5条、3条)、右の判断は、前記のとおり、被上告人の政策的、技術的な裁量にゆだねられていると解される。したがって、使用認定は、被上告人の判断に、右裁量権の範囲を逸脱し、又はこれを濫用した違法があり、しかもその違法が重大かつ明白なものである場合に限り、無効とされるのである。
[28] これを本件についてみると、原審の適法に確定した事実関係によれば、(1) 本件各土地は、沖縄復帰時において、沖縄返還協定3条1項の規定に関し両国政府間で行われた討議の結果を示すものとして昭和46年6月17日に交わされた了解覚書により、駐留軍が使用する施設及び区域として日米合同委員会において合意する用意のある施設及び用地に区分された土地である、(2) 沖縄返還協定は、昭和47年3月21日に公布され、同年5月15日にその効力を生じたが、同日、日米合同委員会において日米安全保障条約6条及び日米地位協定2条に基づき駐留軍が沖縄県内で使用を許される施設及び区域の提供等について合意したところによれば、本件各土地は右提供に係る施設及び区域に含まれている、(3) 沖縄の復帰に際しての日米首脳会談において、佐藤内閣総理大臣は、沖縄の駐留軍施設及び区域が復帰後できる限り整理縮小されることが必要と考える理由を説明し、ニクソン大統領も、双方が施設及び区域の調整を行うに当たって、これらの要素は十分に考慮に入れられる旨を答えた、(4) その後、我が国は、駐留軍の使用に供された施設及び区域の整理縮小のために、日米合同委員会、日米安全保障協議委員会等において交渉を重ねているが、本件各土地については返還の合意には至っておらず、本件各土地は、いずれも駐留軍基地の各種施設の敷地、保安用地、電磁障害除去地などとして使用され、駐留軍施設内の他の多くの土地と一体となって有機的に機能しており、その一部については、右使用目的に反しない範囲で土地所有者等による耕作が黙認されている、(5) 昭和54年には、沖縄県、那覇防衛施設局及び在沖米軍の三者連絡協議会が設けられ、基地から派生する問題の軽減のための対策を協議し、軍用機の夜間飛行の規制、エンジンテストの時間規制等の措置や基地周辺住宅等の防音助成対策を講ずるなどしてきたというのである。右事実関係の下においては、沖縄県に駐留軍の基地が集中している現状や本件各土地の使用状況等について上告人が主張する諸事情を考慮しても、なお本件各土地の使用認定にこれを当然に無効とすべき重大かつ明白な瑕疵があるということはできない。

[29] 以上によれば、本件各土地の使用認定の効力が本件訴訟における審理の対象とならないとした原審の判断は、法令の解釈適用を誤るものというべきであるが、原審の適法に確定した事実関係によれば、本件各土地の使用認定を当然に無効とする瑕疵があるとはいえないから、原判決の右違法は、判決の結論に影響を及ぼさないものということができ、使用認定の適否及び効力に関する審理不尽をいう論旨も、採用することができない。
[30] 駐留軍用地特措法14条に基づき同法3条の規定による土地等の使用又は収用に関して適用される土地収用法36条によれば、防衛施設局長は、土地等の使用又は収用の認定の告示があった後、土地調書及び物件調書を作成しなければならず(同条1項)、これを作成する場合において、土地所有者及び関係人(防衛施設局長が過失なくして知ることができない者を除く。)を立ち会わせた上、土地調書及び物件調書に署名押印をさせなければならないものとされているが(同条2項)、これは、収用委員会の審理における事実の調査、確認の煩雑さを避け、その能率化を図るために、使用又は収用する土地及びその土地上にある物件に関する事実及び権利の状態並びに当事者の主張を記載して、これをあらかじめ整理しておくことを目的とするものと解される。そして、土地所有者及び関係人のうちに、土地調書及び物件調書への署名押印を拒んだ者又は署名押印をすることができない者があるときは、市町村長に立会いと署名押印を求め(同条4項)、市町村長がこれを拒んだときは、都道府県知事に署名等の代行を申請することとされているが(同条5項)、その趣旨は、土地所有者及び関係人の立会い及び署名押印を得ることができない場合において、裁決申請に必要な土地調書及び物件調書を完成させ、土地等の使用又は収用の事業の円滑な遂行を図るとともに、土地調書及び物件調書の作成が適正に行われたことを公的に確認することにより、調書の作成の適正を担保し、ひいては私有財産権の保障を手続的に担保することにあるものと解するのが相当である。
[31] 以上に説示したところによれば、被上告人が上告人に対し、署名等代行事務の執行を命ずるためには、駐留軍用地特措法14条、土地収用法36条の定めるところに従い上告人に対して適法に署名等の代行の申請がされ、かつ、土地調書及び物件調書が適正に作成されていることを要するものというべきである。

[32] 所論は、那覇防衛施設局長は、本件各土地の所有者及び関係人に現地での立会いの機会を与えることなく署名押印を求めたものであるのみならず、市町村長に署名押印を求めるに当たっても、また、上告人に署名等の代行を申請するに当たっても、現地での立会いの機会を与えていないから,上告人に対する署名等の代行の申請は、駐留軍用地特措法14条、土地収用法36条2項、4項、5項の規定に違反するとの趣旨の主張をする。
[33] しかしながら、土地収用法36条2項の文言からすると、同項は、土地調書及び物件調書作成の全過程で、土地所有者及び関係人に立会いの機会を与えることを要求しているものではなく、調書が有効に成立する署名押印の段階で、調書を土地所有者及び関係人に現実に提示し、記載事項の内容を周知させることを求めているものと解するのが相当である。本件各土地の所有者及び関係人にとっては、現地を確認することなく、土地調書及び物件調書の記載内容の真偽を判断することが困難である場合もあることは、所論指摘のとおりであるとしても、土地所有者及び関係人は、同条3項に基づき、異議を付記して署名押印をすることができ、そうすることによって、調書の記載が真実に合致するとの推定を排除することができるのである。その場合には、那覇防衛施設局長が収用委員会の審理手続の中で土地調書及び物件調書の記載内容が真実に合致することを立証しなければならないことになるのであるから、本件各土地の所有者及び関係人に現地における立会いの機会を与えなくても、その権利を不当に侵害するものとはいえない。
[34] そして、土地調書及び物件調書の作成につき市町村長の署名押印又は都道府県知事による署名等の代行の制度を定めた前記の趣旨からすると、土地収用法36条4項、5項が、市町村長、その指名する市町村の吏員又は都道府県知事が指名する都道府県の吏員に現地における立会いの機会を与えることを要求しているものとも解し難い。
[35] 以上の見地に立って本件について検討すると、原審の適法に確定した事実関係の下においては、那覇防衛施設局長は、駐留軍用地特措法14条、土地収用法36条2項、4項、5項の定めるところに従い、上告人に対して署名等の代行を申請したものということができ、同局長が現地における立会いの機会を与えなかったとしても、そのことをもって、本件職務執行命令を違法とすることはできない。

[36] 所論は、本件各土地に係る土地調書及び物件調書(以下「本件調書」という。)が適正に作成されたものとは認め難い旨の主張もするが、原審の適法に確定した事実関係の下においては、本件調書の記載事項の調査方法や土地調書に添付すべき実測平面図の作成方法に違法の点はなく、これらはいずれも適正に作成されたものということができる。

[37] 以上に説示したところによれば、上告人に対する署名等の代行の申請及び本件調書の作成に違法の点はなく、これと同旨の原審の判断は、正当として是認することができ、右判断を非難する論旨は、採用することができない。
[38] なお、所論は、都道府県知事は、土地調書及び物件調書の記載内容が真実であることを確認することができるまでは署名等代行事務の執行を拒否することができ、また、本件において署名等代行事務を執行することは地方自治の本旨に反すると主張する。しかし、土地収用法36条5項が都道府県知事による署名等の代行の制度を定めた前記の趣旨にかんがみると、都道府県知事は、土地調書及び物件調書が適正に作成されていることを確認することができたならば署名等代行事務を執行すべきであり、調書の記載内容の真偽について審査をし、これが真実に合致すると認めるのでなければ署名等代行事務を執行することができないと解することはできない。また、上告人が署名等代行事務を執行することによって、直ちに地方自治の本旨に反する事態が招来されるものとは解し難いから、これを前提とする論旨は、その前提を欠く。
[39] 結局、原審の土地収用法36条の解釈適用の誤りをいう論旨は、いずれも採用することができない。
[40] 本件において上告人が署名等代行事務を執行していないことは明らかであるところ、所論は、地方自治法151条の2第1項から第8項までに規定する以外の方法によってその是正を図ることが困難であり、かつ、それを放置することにより著しく公益を害することが明らかであるとした原審の判断は、同条の解釈適用を誤るものであるというのである。
[41] しかし、原審の適法に確定した事実関係の下においては、地方自治法151条の2第1項から第8項までに規定する以外の方法によって、上告人による署名等代行事務の執行の懈怠を是正することは困難であるとした原審の判断は、正当として是認することができる。
[42] また、上告人の署名等代行事務の執行の懈怠を放置するときは、被上告人が本件各土地を駐留軍の用に供することが適正かつ合理的であると判断して使用認定をしているにもかかわらず、那覇防衛施設局長は、収用委員会に対する裁決申請をすることができないことになり、その結果、日米安全保障条約6条、日米地位協定2条に基づく我が国の国家としての義務の履行にも支障を生ずることになることが明らかであるから、上告人の署名等代行事務の執行の懈怠を放置することにより、著しく公益が害されることが明らかであるといわざるを得ない。所論は、上告人の署名等代行事務の執行の拒否は、駐留車の基地が沖縄県に集中していることによる様々な問題を解決するという地方自治の本旨にかなった公益の実現を目指すものであるから、これをもって著しく公益を害するということはできないという。しかし、駐留軍用地特措法14条、土地収用法36条5項が都道府県知事による署名等の代行の制度を定めた前記の趣旨からすると、上告人において署名等代行事務の執行をしないことを通じて右の問題の解決を図ろうとすることは、右制度の予定するところとは解し難い。上告人の署名等代行事務の執行の懈怠を放置することにより、著しく公益が害されることが明らかであるとした原審の判断も正当である。
[43] 原審の地方自治法151条の2の解釈適用の誤りをいう論旨は採用することができない。

[44] 以上によれば、論旨はいずれも採用することができないから、行政事件訴訟法7条、民訴法396条、384条、95条、89条に従い、裁判官園部逸夫の補足意見、裁判官大野正男、同高橋久子、同尾崎行信、同河合伸一、同遠藤光男、同藤井正雄の補足意見があるほか、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。


 判示第二の一及び四についての裁判官園部逸夫の補足意見は、次のとおりである。

[1] 私は、法廷意見に同調するものであるが、職務執行命令訴訟における審査の範囲及びこれと本件との関係について、私の見解を明らかにしておきたい。
[2] 地方自治法151条の2所定の職務執行命令訴訟は、機関訴訟(行政事件訴訟法6条)の典型といわれているが、主務大臣と都道府県知事との間の公法上の法律関係に基づく給付訴訟(当事者訴訟、同法43条3項)の実質を有するものであるから、裁判所は、主務大臣の請求に理由があると判断したときは、主務大臣が命じたのと同じ内容の事項を判決によって命令しなければならない。提訴の段階では、主務大臣が発した職務命令が適法か違法かが正に争われているのであるから、右訴訟において、裁判所は、主務大臣の請求について理由の有無を審査するに当たり、請求の対象である職務執行命令に違法の瑕疵があるかどうかを判断しなければならない。
[3] その場合、私は、職務執行命令の発動を必要とするに至った行政の過程における先行行為につき、現行の職務執行命令訴訟において審査すべき違法の瑕疵の程度は、平成3年法律第24号による改正前の地方自治法146条所定の職務執行命令訴訟におけるそれとは異なると解する。すなわち、旧規定の下では、主務大臣と都道府県知事との間に最終的には代執行権のみならず罷免権の行使にまで至ることのできる強度の上命下服の関係が法定されていることを前提として、地方自治の保障という見地から、地方裁判所と高等裁判所による2段階の実質的審査を介入させ、裁判所が当該職務執行命令の適法性を是認する場合でなければ、右のような強度の監督権の行使ができないとされていた。
[4] しかしながら、現行の規定の下では、職務執行命令訴訟は、主務大臣による罷免権の行使の前提条件として機能するものではないから、裁判所は、当該職務執行命令の発動を必要とするに至った行政の過程における先行行為については、それに重大な瑕疵があることが明白であるかどうかを審査すれば足りると理解するのが相当と考える。ただし、ここでいう瑕疵の重大性が明白であるかどうかということは、いわゆる取消し得べき瑕疵と区別された無効の瑕疵の有無の問題とは観点を異にする。行政行為の適法性に関する訴訟は、抗告訴訟(取消訴訟又は無効等確認訴訟)の形式において、行政庁の命令や処分を受けた側から提起されるのが通例であるが、職務執行命令訴訟は抗告訴訟ではないから、適法性判断の基準について、抗告訴訟の形式との関連において議論されるいわゆる取り消し得べき瑕疵と無効の瑕疵との区別を前提とする基準は適用されないと解する。
[5] 次に、本件のような土地等の収用又は使用手続にかかわる職務執行命令訴訟についてであるが、土地等の収用又は使用手続における土地調書及び物件調書の作成手続は、収用委員会の手続の前段階として位置付けられ、署名等代行事務は、その一環として行われるものである。土地等の収用又は使用手続において特に重要なのは、事業認定(本件の場合は使用認定)及び収用委貝会の裁決であるが、都道府県知事が事業認定を直接争う手続は、法律の定めるところではないので、都道府県知事としては、事案によっては、署名等代行事務等の執行を拒否するか、あるいは最終的には職務執行命令訴訟の被告の立場で争うことにより、事業認定に始まる土地等の収用又は使用手続について不服を表明せざるを得ない場合があることは、容易に予想されることであり、本件は、正にその場合に当たる。したがって、本件職務執行命令の適法性を審査するに当たって、被上告人が上告人に対し署名等の代行を命ずること自体の適法性のみならず、行政の過程における先行行為としての使用認定の瑕疵の重大性が明白であるか否かを判断すべきことは、必要であり、また当然のことと考える。
[6] ただ、私は、本件のような職務執行命令訴訟において、裁判所が、日米安全保障条約及びそれに基づく日米地位協定、さらに、その施行法的な性格を有する駐留軍用地特措法の下で、日本国の安全に関する国の高度の政治的、外交的判断に立ち入って本件使用認定の適法性を審査することは、司法権の限界を超える可能性があると考える。沖縄県に駐留軍基地が集中していることから生ずる深刻な問題があることについては、上告人が、沖縄県知事として、切々と意見を陳述しており、また、原審も、上告人が本件署名等代行事務の執行を拒否した背景にある事実として適法に確定しているところである。にもかかわらず、私がこれらの事柄を本件使用認定の瑕疵の重大性が明白であるとする理由としないのは、右に述べたとおり、司法裁判所の審査に適しない性質の問題が介在していると認めるほかはないからである。


 判示第二の三及び四についての裁判官大野正男、同高橋久子、同尾崎行信、同河合伸一、同遠藤光男、同藤井正雄の補足意見は、次のとおりである。

[1] 私たちは、法廷意見のうち、駐留軍用地特措法の沖縄県における適用の許否及び使用認定の有効性に関する判示部分について、以下のとおり補足しておきたい。

[2] 沖縄県に我が国における駐留軍の基地が集中しており、同県及びその住民に負担が掛かっていることについて、原審は、概要次の事実を認定している。
[3] 沖縄県には、県下53市町村のうち25市町村にわたって、42施設、2億4526万平万メートルの駐留軍基地が存在し、その面積は、全県土面積の約10.8パーセントを占めており、駐留軍が常時使用できる専用施設としては、全国のそれの約74.7パーセントが国土面積の約0.6パーセントを占めるにすぎない同県に集中している。駐留軍の演習、訓練は、水域、空域及び陸域において恒常的に行われ、航空機の墜落、パラシュートの施設外降下など演習による事故や駐留軍の軍人軍属による刑法犯罪が多数発生し、演習場内では実弾射撃演習による原野火災が起き、航空機騒音が付近住民の生活環境に影響を及ぼしている。また、基地の存在は沖縄県の地域振興開発の制約要因となり、基地対策は行政事務の過重負担を招いている。沖縄県はかねてから日本国政府に駐留軍基地の整理縮小を要請してきたが、十分な成果を挙げるには至らず、駐留軍専用基地の返還状況は、昭和47年以来平成6年に至るまで、本土は約59パーセント減少したのに対し、同県においては約15パーセント減少したにとどまっている。
[4] 所論は、このような実情に照らせば、駐留軍用地特措法の沖縄県における適用は違憲であり、本件各土地の使用認定も違憲無効であって、同県における駐留軍基地のための土地等の収用又は使用は違法である旨を主張している。

[5] 原審の確定する右事実によれば、駐留軍基地が沖縄県に集中していることにより同県及びその住民に課せられている負担が大きいことが認められる。しかし他面、駐留軍基地の存在は、沖縄返還協定3条1項、日米安全保障条約6条、日米地位協定2条に基づくものであって、国際的合意によるものであるから、同基地の沖縄県への集中による負担を軽減するためには、日米政府間の合意、さらに、日本国内における様々な行政的措置が必要であり、外交上、行政上の権限の適切な行使が不可欠である。それらをどのように行使するかは、沖縄県及びその住民に対する負担の是正と駐留軍基地の必要性等との権衡の下に、行政府の裁量と責任においてなされるべき事柄である。この権衡を考慮する余地もないほど極端な場合は格別、右の負担の大きさから直ちに駐留軍用地特措法の沖縄県における適用及びこれに基づく使用認定の違憲性、違法性が一義的に明白ということはできない。所論の主張するように、駐留軍用地特措法の沖縄県への適用を違憲無効とし、同法に基づく土地の使用認定をすべて無効とするならば、何らの国際的合意や行政的措置もなく、同県における駐留軍基地の存在を法的に覆滅する結果をもたらすことになるのであって、そのような判断は、司法による審査の限界を超えるものといわざるを得ない。
[6] もとより、沖縄県における基地の提供は、ただ行政的外交的配慮のみによってなされるものではなく、個々の土地の使用認定については、駐留軍用地特措法3条所定の「適正かつ合理的」の要件を充足することを必要とするのであって、それが一見明白に違憲、違法でないとしても、それによって自己の権利ないしは法的利益を侵害されたとする者が、使用認定又は収用委貝会の裁決に対する取消訴訟において、その瑕疵を主張し、審理判断を受けることができることは、法廷意見の判示するところである。
[7] しかし、駐留軍基地の沖縄県への集中を理由とする駐留軍用地特措法の同県への適用違憲、本件各土地の使用認定の無効の主張に対する判断は、外交上、行政上考慮すべき多元的な問題を彼此検討してなされるべきものであるから、裁判所が一義的に判断するのに適切な事項ではなく、したがって、違憲ないし違法とすべき明らかな理由の存否の判断にとどめるべきであると考えるものである。

(裁判長裁判官 三好達  裁判官 園部逸夫  裁判官 可部恒雄  裁判官 大西勝也  裁判官 小野幹雄  裁判官 大野正男  裁判官 千種秀夫  裁判官 根岸重治  裁判官 高橋久子  裁判官 尾崎行信  裁判官 河合伸一  裁判官 遠藤光男  裁判官 井嶋一友  裁判官 福田博  裁判官 藤井正雄)

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