郵便法違憲判決
控訴審判決

損害賠償請求控訴事件
大阪高等裁判所 平成11年(ネ)第1178号
平成11年9月3日 第9民事部 判決

平成11年6月18日 口頭弁論終結

控訴人 甲1株式会社
 右代表者代表取締役 甲2
 右訴訟代理人弁護士 上野勝 水田通治 足立毅

被控訴人 国
 右代表者法務大臣  乙1
 右指定代理人    森木田邦裕 田中康弘 尾池一観 清水英次 笠野昌弘

■ 主 文
■ 事 実 及び 理 由


一 本件控訴を棄却する。
二 控訴費用は控訴人の負担とする。

一 控訴人
1 原判決を取り消す。
2 被控訴人は、控訴人に対し、金787万3533円及びこれに対する平成10年4月14日から支払ずみまで年5分の割合による金員を支払え。
3 訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人の負担とする。
4 仮執行宣言

二 被控訴人
 主文同旨
[1] 本件事案の概要は、次のとおり加えるほか、原判決の「事実及び理由」の「第二 事案の概要」(原判決3頁5行目から15頁9行目まで)のとおりであるから、これを引用する。

[2] 原判決7頁9行目の次に行を改めて以下のとおり加える。
(当審における追加的請求原因に対する反論)
[3] 郵便法68条、73条は、郵便局職員の故意又は重過失があった場合にこれらの規定の適用を除外するものとはされていないから、控訴人の主張は独自のものというべきである。
[4] したがって、郵便法68条、73条は、国家賠償法5条の「別段の定め」に当たり、民法規定の適用は排除され、本件の配達業務に民法709条、715条が適用されることはないから、控訴人の主張は失当である。」
[5] 原判決9頁2行目の次に行を改めて以下のとおり加える。
(当審における追加的請求原因)
[6] 郵便法68条、73条の解釈においては、少なくとも郵便局職員の故意や故意と同視すべき重過失によって、遅配、延着等の結果が発生した場合には、被害を受けた者に対する損害賠償責任を免責することを許すべきでない。その場合、郵便法の右規定は国家賠償法5条の「別段の定め」には当たらないから、民法規定の適用は排除されないと解すべきである。
[7] 本件では、郵便局の職員が、被控訴人の郵便事業の執行につき、特別送達すべき郵便物である本件差押命令を、故意又は重過失によって私書箱に投函した違法行為(民訴法103条違反)により、控訴人が損害を被ったことは明らかである。
[8] よって、被控訴人は、国家賠償法4条、民法715条の使用者責任に基づき、控訴人が被った損害を賠償すべき義務を負う。」
[9] 当裁判所も、控訴人の請求は理由がないから棄却すべきものと判断する。その理由は、原判決21頁5行目の次に行を改めて以下のとおり加えるほか、原判決の「事実及び理由」の「第三 争点に対する判断」(原判決15頁末行から25頁2行目まで)のとおりであるから、これを引用する。
(当審における追加的請求原因に対する判断)
[10] 控訴人は、郵便法68条、73条の解釈においては、少なくとも郵便局職員の故意や故意と同視すべき重過失によって、遅配、延着等の結果が発生した場合には、被害を受けた者に対する損害賠償責任を免責することを許すべきでないと主張し、無限定に被控訴人の免責を認めることによる不合理な結果や、郵便配送業務が私人間の物品運送契約に基づく業務と実質的に異ならないとして、故意又は重過失ある運送人に損害賠償責任を負わせる商法581条の規定との均衡を指摘する。
[11] しかし、郵便法68条、73条は、いずれも郵便局職員に故意又は重過失がある場合であっても、その適用を除外する旨を定めていないことに加え、前記のとおり、郵便法が第6章「損害賠償」として68条以下に規定を設け、損害賠償をなすべき場合、その賠償金額、請求権者をそれぞれ限定している趣旨に照らすならば、いかなる場合に被控訴人の免責に例外を認めるかとか、故意又は重過失ある運送人に損害賠償責任を負わせる商法581条の規定との均衡をいかに調整すべきかなど控訴人指摘の点は、立法論としてはともかく、控訴人の主張は、現行郵便法の解釈としては無理があるといわざるを得ない。したがって、控訴人の主張は採用の限りでないから、その余の点(郵便局職員の故意又は重過失)について判断するまでもなく、控訴人の国家賠償法4条、民法715条の使用者責任に基づく、損害賠償請求には理由がない。」
二 結論
[12] 以上によれば、控訴人の請求は、理由がないから棄却すべきである。よって、原判決は相当であって、控訴は理由がないから棄却することとし、控訴費用の負担につき民訴法67条1項、61条を適用して、主文のとおり判決する。

  裁判長裁判官 根本眞  裁判官 鎌田義勝  裁判官 松田亨

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