「君が代」ピアノ伴奏拒否事件
控訴審判決

戒告処分取消請求控訴事件
東京高等裁判所 平成16年(行コ)第13号
平成16年7月7日 第20民事部 判決

平成16年4月21日 口頭弁論終結

控訴人 (原告)  甲野花子(仮名)
同訴訟代理人弁護士 吉峯啓晴 松本美代子 室伏美佳 高橋拓也 増本善丈 大井倫太郎 金舜植 田村充 原水脈子

被控訴人(被告)  東京都教育委員会
同代表者委員長   清水司
同訴訟代理人弁護士 細田良一
同指定代理人    國正孝治 ほか1名

■ 主 文
■ 事 実 及び 理 由


1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は控訴人の負担とする。

1 控訴の趣旨
(1) 原判決を取り消す。
(2) 被控訴人が控訴人に対してした平成11年6月11日付け戒告処分を取り消す。
(3) 訴訟費用は,第1,2審とも,被控訴人の負担とする。

2 控訴の趣旨に対する答弁
 主文と同旨。
[1] 本件は,日野市立乙山小学校の音楽専科の教諭をしていた控訴人が,同校校長から入学式の際に国歌斉唱のピアノ伴奏をするようにとの職務命令を受けながらこれに従わなかったことを理由に,被控訴人から地方公務員法29条1項に基づく戒告処分(本件処分)を受けたことに対して,懲戒事由の不存在等を主張して当該処分の取消しを求めた事案である。原審が懲戒事由の存在を認め,当該職務命令及び当該戒告処分の違憲,違法をいう控訴人の主張をいずれも排斥して控訴人の請求を棄却したため,控訴人が不服を申し立てた。その他の事案の概要は,原判決3頁1行目の冒頭から同5行目の末尾までを
「(1) 懲戒事由の有無(争点(1))
 (2) 本件処分の違法性の有無(争点(2))
3 争点に関する当事者の主張
 (1) 争点(1)(懲戒事由の有無)について
に,
同6頁12行目から同13行目にかけての「国歌斉唱はテープ伴奏でよいとの意見が大勢となっていたが,」を「国歌斉唱には他の教職員の反対意見があることを考慮し,」に,
同14頁20行目の「(2) 争点(2)(本件処分の違法性)」を「(2) 争点(2)(本件処分の違法性の有無)について」に
それぞれ改めるほかは,原判決の事実及び理由欄の「第2 事案の概要」に記載のとおりであるから,これをここに引用する。
[2] 証拠(甲3,5,11,19,24,27,28,33,36,37,56,乙1,3,証人丙川,同h,控訴人本人)及び弁論の全趣旨によれば,本件入学式の経緯等について,次の事実を認定することができる。
[3](1) 乙山小学校においては,平成7年3月の卒業式から「君が代」の斉唱が音楽専科の教諭によるピアノ伴奏で行われるようになり,以後各年度の入学式・卒業式も同様にピアノ伴奏で実施されていた。なお,それまでは「君が代」斉唱はテープ伴奏で行われていた。
[4](2) 平成9年4月1日,丙川校長は,乙山小学校に校長として着任したが,丙川校長着任後も入学式・卒業式の「君が代」の斉唱は音楽専科の教諭によるピアノ伴奏で行われていた。
[5] 丙川校長は,平成10年12月ころから平成11年3月に行われる平成10年度卒業式及び平成11年4月に行われる同年度入学式(本件入学式)について教職員との打合せを始め,数回の職員会議を経て,卒業式の式次第に「国歌斉唱」を入れ,音楽専科の教諭によるピアノ伴奏で「君が代」を斉唱することを決定した。なお,国歌斉唱を含む卒業式と入学式とで共通の式次第については,卒業式について決めたことを入学式にも準用するものとされた。なお,その当時は,乙山小学校においてピアノ伴奏で「君が代」を斉唱することに少なくとも表立って異論を述べる教職員はおらず,ピアノ伴奏の是非についての議論は特にされなかった。もっとも,平成11年3月の卒業式に当たって,「君が代」の斉唱については,思想・信条の自由の侵害になるのではないかという意見が出されていた。しかし,同年3月に実施された平成10年度卒業式では,上記決定に基づいて,音楽専科の教諭によるピアノ伴奏で国歌斉唱が行われた。したがって,乙山小学校においては,控訴人が着任する直近の5年間,正確には卒業式で5回,入学式で4回にわたり,「君が代」の斉唱はピアノ伴奏で行われてきたことになる。
[6](3) 控訴人は,平成11年4月1日に前任地である小平市立丁原小学校から乙山小学校に転任することになっており,同年3月17日,乙山小学校に赴き,丙川校長との事前面接を行った。その際,丙川校長が控訴人に「乙山小学校では,従来,入学式の際にピアノ伴奏で国歌斉唱を行ってきたので,新しく来たあなたにもピアノ伴奏をお願いしたい。」と申入れたところ,控訴人は,「自分の思想・信条上それから音楽教師としてもできない。」と断った。
[7] そこで,丙川校長は,当時控訴人が勤務していた丁原小学校の校長に対し,控訴人が「君が代」斉唱の際にピアノ伴奏をするよう指導を依頼し,依頼を受けた丁原小学校の校長は控訴人にその旨の指導をしたが,控訴人は,同様の理由を挙げてピアノ伴奏を断った。
[8](4) 控訴人は,乙山小学校への異動に当たって,辞令交付が予定されていた平成11年4月2日には家庭の事情で出勤せず,同月5日(月曜日)に初めて同校に出勤した。
[9] 同校においては,同月5日午後2時半ころから本件入学式の最終打合せの職員会議が開かれ,係の打合せを進めていた際,控訴人は,国歌斉唱の項目について,「事前面接の時に弾くように言われたけれども,私は,思想・信条上それから音楽の教師としても弾けません。」と発言した。これに対し,丙川校長は,「校歌と同じように,国歌についてもピアノ伴奏をお願いしたい。」と言った。このやり取りを聞いた他の教諭から「テープ伴奏でもよいのではないか。」,「学習指導要領にはピアノ伴奏でとは記載されていない。」,「伴奏は音楽専科の教諭だけの問題ではないのではないか。」などの意見が出されたが,テープ伴奏でもよいのではないかという意見を述べた教諭は3名程度にすぎず,ピアノ伴奏の方がよいとの意見は特に出されなかった。丙川校長は,控訴人に対し,「本校では従来ピアノを弾いてきたので,国歌のピアノ伴奏をお願いします。これは職務命令です。」と言い,この発言時刻が同日2時45分であることを確認し,職員会議の記録担当者にその旨を記載させた。これに対し,控訴人は,「『君が代』の伴奏に対して職務命令が出されることは疑問です。弾きません。」と答えた。職員会議を司会していたj教諭は,「『君が代』の扱いについてはもう一度管理職で考えてほしい。」と述べた。職員会議終了後,丙川校長は,控訴人が本件入学式当日にピアノ伴奏をしない場合に備え,甲田竹夫教頭(以下「甲田教頭」という。)と打合せをした上でテープ伴奏の準備をした。
[10](5) 丙川校長は,本件入学式当日である平成11年4月6日午前8時20分過ぎころ,校長室において,改めて控訴人に対し,「国歌について,ピアノ伴奏をお願いしたい。あなたの名前を式の中で指名はしないけれども,ぜひピアノ伴奏をお願いしたい。職務命令です。」と言ったところ,控訴人は,「弾きません。」と答えた。
[11](6) 本件入学式には,新入生児童,新2年生,新6年生,保護者,来賓らが参加した。平成11年4月6日午前10時に本件入学式が開始され,控訴人は,新入生の入場に合わせて入場曲「さんぽ」をピアノ伴奏した。新入生が着席すると,司会の甲田教頭が開式の言葉を述べ,これに続けて「国歌斉唱」と言った。控訴人は,ピアノの椅子に座ったままであったが,控訴人がピアノを弾き始める様子がなかったことから,丙川校長は,およそ5ないし10秒間待った後,甲田教頭に合図をしてテープ伴奏を行うよう指示し,この結果,テープ伴奏により国歌斉唱が行われた。国歌斉唱が行われた後,控訴人は,ピアノの椅子から移動して,左隣り約30センチメートル付近のところにあったパイプ椅子に着席した。その後,本件入学式は,校長の話,担任の紹介等と続き,新2年生は,歓迎の歌と言葉の中で「だんご3兄弟」の歌をテープ伴奏で歌った。そして,控訴人のピアノ伴奏で校歌斉唱が行われ,閉式の言葉が述べられた後,控訴人が退場の曲をピアノ伴奏して新入生を送り出し,午前10時43分ころ,控訴人による「君が代」斉唱のピアノ伴奏がなかったということを除けば,本件入学式は滞りなく終了した。
ア 職務命令の存否
[12] 上記1(4),(5)で認定した事実によれば,丙川校長が控訴人に対して,平成11年(以下,特に断らない限り月日は平成11年の月日を指す。)4月5日午後2時45分ころ(本件事前命令)及び同月6日午前8時20分過ぎころ(本件当日命令)の2回にわたって,同年度入学式の国歌斉唱の際にピアノ伴奏を行うようにとの本件職務命令を,「職務命令」の言葉を伴って発したことが認められる。
[13] 控訴人は,同月5日の職員会議では「君が代」のピアノ伴奏について管理職で再度考えて欲しい旨決定されたにすぎないから,同日午後2時45分の段階で丙川校長はこの件について最終的な決定をしていないはずであり,本件事前命令は発令されていなかった旨主張するが,同日の職員会議における議論の経過は上記1(4)で認定したとおりであり,職員会議での司会者の発言は校長ら管理職に対する要望に止まるものと解するのが相当である。
[14] 校長は,職員会議における教職員の意見ないし決定を尊重すべきではあるが,これに拘束されるものではなく,校務をつかさどり所属職員を監督する権限に基づいて独自に職務命令を発することができるのであるから(地方公務員法32条,学校教育法28条3項),上記職員会議の議論の経過を理由に本件事前命令が存在しなかったと推認することはできない。なお,上記職員会議においてテープ伴奏でもよいのではないかなどの意見が3名程度の教諭から出されたこと,ピアノ伴奏の方がよいとの意見は特に出されなかったことは上記1で認定したとおりであるが,これらのことから必ずしも上記職員会議の出席者の多数がテープ伴奏に賛同していたとまでは認め難い。しかし,仮に控訴人の主張のとおり上記職員会議の出席者の多数がテープ伴奏に賛同していたとしても,上記の認定は左右されない。
[15] また,控訴人は,発令に際して立会人が不在であること,口頭で告知されたにすぎず書面による告知がないこと及び記録が取られていないことから本件職務命令の存在が疑わしい旨主張するが,職務命令は,権限ある上司から部下に対しその職務を遂行するに当たって発せられるものであり,控訴人主張の要件を具備しなければ職務命令を発することができないとする根拠はないから,控訴人主張のような発令の手続ないし形式がとられていないことを理由に本件職務命令が存在しなかったということはできない。
[16] そのほか,控訴人は,丙川校長の日ごろの発言や本件職務命令の内容からして,これが正式な職務命令なのか単なる要請なのか不明であったとも主張するが,上記1(4),(5)で認定したとおり,丙川校長は,2回にわたる本件職務命令の発令に際して,控訴人に対し,いずれもこれが職務命令である旨を明示的に告知しているから,本件職務命令が客観的に存在すること及び控訴人もそれを認識していたことは明らかである。
[17] また,控訴人は,丙川校長は当初から本件入学式において控訴人が「君が代」の斉唱のピアノ伴奏をしないであろうこと,したがって,その斉唱はテープ伴奏になるであろうことを十分に認識し,そのためテープ伴奏の準備をしていたのであるから,当日の「君が代」斉唱がテープ伴奏になったのは控訴人がピアノ伴奏をしなかったからではなく,丙川校長自身がテープ伴奏を選択したためである旨主張し,ピアノ伴奏についての職務命令が実質的には存在しなかったとも主張する。
[18] 確かに,上記1で認定した事実によれば,丙川校長は,控訴人の事前の態度から控訴人が職務命令に従わず,ピアノ伴奏をしないこともあり得ると考えてテープ伴奏の準備をしていたと認めることはできる。しかし,丙川校長は,控訴人が職務命令に従ってピアノ伴奏をすれば,ピアノ伴奏によって「君が代」斉唱を実施することを予定していたことも上記1の認定事実からみて明らかであり,丙川校長が控訴人がピアノ伴奏をしないこともあり得るとの予測の下にテープ伴奏の準備をしたからといって,丙川校長が当初からテープ伴奏を選択し,控訴人にピアノ伴奏をさせる意思がなかったとはいえない。丙川校長が当初からテープ伴奏を選択したとする控訴人の上記主張は,採用することができず,本件入学式において「君が代」斉唱がテープ伴奏で行われたのは,控訴人が本件職務命令に従わずピアノ伴奏をしなかった結果によるものというべきである。
[19] 本件職務命令の不存在をいう控訴人の主張は,いずれも採用することができない。

イ 職務命令の適法性
(ア) 控訴人の職務に関する事項か否か
[20] 小学校教諭の職務は児童の教育をつかさどることであり(学校教育法28条6項),入学式等の行事も小学校における教育の一環として行われるものであるから,その行事を遂行するための行為を分担して行うことも小学校教諭の職務に関する事項である。このことと,控訴人は小学校の音楽専科の教諭であって,その職務は児童の教育のうち主として音楽に関するものをつかさどることであることからすれば,入学式において「君が代」を含む児童の歌唱をピアノで伴奏することは,控訴人の職務に関する事項に含まれるというべきである。
[21] 控訴人は,学校教育法や小学校学習指導要領に「君が代」のピアノ伴奏について規定が存しないことを理由に「君が代」のピアノ伴奏は控訴人の職務に関する事項ではない旨主張する。しかし,個々の教職員の具体的な職務についてまで必ずしも法令等に定めることは不可能であるし,その必要もない。また,上記のとおり,入学式を遂行するための行為を分担して行うことは教諭の職務に関する事項であり,控訴人の職務は主として音楽教育をつかさどることであることからすれば,「君が代」のピアノ伴奏につき法令等に定めがないことをもって,これが控訴人の職務に関する事項に含まれないということはできない。
[22] また,控訴人が主張するように,入学式において「君が代」のピアノ伴奏を実施していない小学校が他に多数存在したり,かつては乙山小学校においても入学式における国歌斉唱をテープ伴奏で実施していたとしても,それらのことを理由に「君が代」のピアノ伴奏が控訴人の職務に関する事項でないということはできない。
(イ) 憲法19条違反の有無
 控訴人の権利侵害の有無
[23] 証拠(甲19,56,控訴人本人)によれば,控訴人は,第2の3(1)(控訴人の主張)ア(イ)b(a)のとおりの思想・良心を有していることが認められる。そして,前記1で認定した事実によれば,丙川校長は,控訴人が思想・良心から,また音楽教諭としての立場から本件入学式において「君が代」の伴奏をすることはできないという考えを有していたことを認識していたものということができる。そこで,本件職務命令が控訴人の上記のような思想・良心の自由を侵害するとの控訴人の主張につき検討する。
[24] もとより公務員であっても思想・良心の自由はあるから,控訴人が内心においてそのような思想・良心を抱くことは自由であり,その自由は尊重されなければならない。そして,本件職務命令は,本件入学式において音楽専科の教諭である控訴人に「君が代」のピアノ伴奏を命じるというものであり,そのこと自体は,控訴人に一定の外部的行為を命じるものであるから,控訴人の内心領域における精神的活動までも否定するものではないが,人の内心領域における精神的活動は外部的行為と密接な関係を有するものといえるから,「君が代」を伴奏することを拒否するという思想・良心を持つ控訴人に「君が代」のピアノ伴奏を命じることは,この控訴人の思想・良心に反する行為を行うことを強いるものであって憲法19条に違反するのではないかということが問題となり得る。
[25] しかし,地方公務員は,全体の奉仕者であって(憲法15条2項),公共の利益のために勤務し,かつ,職務の遂行に当たっては,全力を挙げて専念する義務があるのであり(地方公務員法30条),思想・良心の自由も,公共の福祉の見地から,公務員の職務の公共性に由来する内在的制約を受けるものと解される(憲法12条,13条)。そして,控訴人のように公教育に携わる公務員は,学校教育法等の法規の定めるところによって教育を行うことが義務付けられているというべきであるから,その限りでは自ずから思想・良心の自由も制約されることがあり得る。例えば法規によりあることを教えることとされている場合に,公教育に携わる公務員がその個人的な思想や良心に反するからといってそのことを教えないというわけにはいかないのである。このような意味での思想・良心の自由の制約は,公共の福祉にかなうものとしてやむを得ないものであって,公教育に携わる公務員として受忍せざるを得ず,このような受忍を強いられたからといって憲法19条に違反するとはいえない。
[26] 学校教育法20条及び同法施行規則25条に基づき規定された小学校学習指導要領(平成元年文部省告示第24号)は,その第4章(特別活動)第2のD(1)(儀式的行事)において,
「学校生活に有意義な変化や折り目を付け,厳粛で清新な気分を味わい,新しい生活の展開への動機付けとなるような活動を行うこと。」
と規定し,同章第3の3において,
「入学式・卒業式などにおいては,その意義を踏まえ,国旗を掲揚するとともに,国歌を斉唱するよう指導するものとする。」
と規定している。このように,入学式において国歌(「君が代」)斉唱の指導が求められていること,「君が代」斉唱の指導を円滑に行うためには斉唱の際にピアノ伴奏をすることが一定程度有効であること(控訴人本人によれば,学校の音楽教育の現場では,児童に歌を斉唱させる際の伴奏はピアノ伴奏による場合の方がテープ伴奏による場合よりも多いことが認められる。)からすれば,丙川校長が音楽専科の教諭である控訴人に対し,「君が代」斉唱のピアノ伴奏を命じる内容の本件職務命令を発したことに,少なくとも選択肢の一つとして相当性があったということができる。証拠(甲22,44,56,106,控訴人本人)によれば,「君が代」斉唱の伴奏方法として,「君が代」の旋律をピアノで演奏することは音楽的にみて不適切であるとの見解もあることが認められるが,乙山小学校では,本件入学式に至るまで5年間にわたって,入学式・卒業式においては「君が代」斉唱の際に音楽専科の教諭によるピアノ伴奏が行われていたことは,前記1で認定したとおりであり,ピアノ伴奏による「君が代」斉唱指導の有効性は一概に否定できるものではないし,本件入学式では新入生の入場に当たっては入場曲をピアノ伴奏で行ったとのであるから,これに引き続く「君が代」斉唱もピアノ伴奏で行う方が式の流れからも自然であるということができる。
[27] そして,音楽専科の教諭の職務が主として児童の音楽教育をつかさどることにあることからすれば,「君が代」のピアノ伴奏をするのは,他教科の教諭よりも音楽専科の教諭の方が適当であるということができるし,上記のとおり,乙山小学校では本件入学式に至るまでの5年間入学式・卒業式において「君が代」斉唱の際に音楽専科の教諭によるピアノ伴奏が行われていたという経緯に照らせば,本件職務命令のような内容の職務命令を発出することの音楽的意義や校長の教職員に対する指導方法としての当否については様々な意見があり得るとしても,発出された職務命令自体は,その目的,手段も,合理的な範囲内のものということができる。
[28] 控訴人は,「君が代」の斉唱にピアノ伴奏をすることが有効であるという事実はないし,また,ピアノ伴奏をすることが本件入学式の流れからいって自然だとはいえないから本件職務命令に必要性,合理性はない旨主張する。しかし,「君が代」の斉唱をピアノ伴奏で行うことが相当か否かは見解の相違にすぎず,現に乙山小学校において控訴人が着任する前は直近の5年間,正確には卒業式で5回,入学式で4回にわたりピアノ伴奏で実施されてきた経緯があり,こうした経緯の中で平成11年3月の卒業式に当たって「君が代」斉唱について思想・信条の自由の侵害になるのではないかという意見が出たもののピアノ伴奏それ自体については殊更異論が出ていなかったことは前記1で認定したとおりである。また,本件入学式において,新入生の入場に合わせた入場曲「さんぽ」をピアノ伴奏し,新入生が着席した後,開式の言葉が述べられ,これに続いて行われ,かつ,小学校学習指導要領に定められている「君が代」の斉唱をする際の伴奏もピアノで行うべきであるとの丙川校長の判断こそ誠に自然であるといえる。
[29] また、控訴人は,丙川校長は控訴人が「君が代」に思想的な嫌悪感を抱いていることを知っており,そのような控訴人がすばらしい伴奏をすることは期待できないことが明らかであったから「君が代」斉唱のピアノ伴奏をすることについて他教科の教諭よりも音楽専科の教諭である控訴人の方が適当であると判断したことは不当であり,そのような判断の下にされた本件職務命令は不当であるとも主張する。しかし,控訴人が「君が代」に思想的な嫌悪感を抱いていたにしても,控訴人が,学校教育の内容及び方法についての全国的な大綱的基準として定められた前記学習指導要領による教育をつかさどる教諭である以上,控訴人は,その個人的な思想や好悪の感情いかんにかかわらず,職業人としてこの学習指導要領による教育を行う立場にあるといわざるを得ない。そして,この学習指導要領においては国歌を斉唱するよう指導するものとされていることは前記のとおりである。したがって,控訴人は,「君が代」に対する個人的な思想や好悪の感情を理由に本件職務命令を拒否し得ないものというべきであるから,丙川校長において控訴人が思想・信条から「君が代」に対し嫌悪感を抱いていることを知りながら,そのピアノ伴奏を音楽専科の教諭である控訴人に行わせることが適当であると判断したことをもって不当ということはできない。
[30] 丙川校長は,校務に関する職務遂行上の義務の履行を求めるため,控訴人に対し,ピアノ伴奏を命じる内容の本件職務命令を発出したものであるところ,上記のとおり,思想・良心の自由も,公教育に携わる教育公務員としての職務の公共性に由来する内在的制約を受けることからすれば,本件職務命令が,教育公務員である控訴人の思想・良心の自由を制約するものであっても,控訴人においてこれを受忍すべきものであり,受忍を強いられたからといってそのことが憲法19条に違反するとはいえない。
[31] 控訴人は,思想・良心の自由についての違憲審査基準について縷々主張し,その基準に照らして本件職務命令は憲法19条に違反する旨主張するが,本件職務命令が憲法19条に違反しないことは上記のとおりであり,控訴人の上記主張は,採用することができない。
 子ども及びその保護者の権利侵害の有無
[32] 控訴人は,本件職務命令は子ども及びその保護者の思想・良心の自由を侵害するものである旨主張する。
[33] しかし,仮に控訴人主張のように子どもに対し思想・良心の自由を実質的に保障する措置がとられないまま「君が代」斉唱を実施することが子どもの思想・良心の自由に対する侵害となるにしても,そのことは「君が代」斉唱実施そのものの問題であり,校長が教諭に対して「君が代」のピアノ伴奏をするよう職務命令を発したからといって,それによって直ちに控訴人の主張する子ども及びその保護者の思想・良心の自由が侵害されるとまではいえない。控訴人の主張は,採用することができない。
(ウ) 憲法1条違反の有無
[34] 控訴人は,主権者ではない天皇を礼賛する「君が代」は憲法1条に違反する旨主張するが,天皇は日本及び日本国民統合の象徴であるから(憲法1条),「君が代」の「君」が天皇を指すからといって,直ちにその歌詞が憲法1条を否定することには結び付かないというべきである。
[35] したがって,「君が代」のピアノ伴奏を命じた本件職務命令が憲法1条に違反するということはできない。
(エ) 憲法99条違反の有無
[36] 上記(イ),(ウ)のとおり,本件職務命令は憲法に違反するものではないから,その発出が公務員の憲法尊重擁護義務を定めた憲法99条に違反するとはいえない。
(オ) 校長の管理権ないし校務掌理権の濫用の有無
[37] 控訴人は,本件職務命令は丙川校長の管理権ないし校務掌理権の濫用に当たる旨主張するが,職務命令は,職務上の上司が受命者の職務に関して発する命令であり,それが法律上又は事実上の不能を命じるものでないときは有効であると解すべきであるから,これらを満たしている職務命令がなお命令権者の権限の逸脱ないし濫用に当たるというためには,当該職務命令が明らかに不当な目的に基づくものであるとか,内容が著しく不合理であるという場合に限られるものというべきである。
[38] これを本件についてみると,これまで検討したところによれば,本件職務命令は,上記の職務命令発出の要件を満たしているといえるし,かつ,他により望ましい選択肢があったかどうかはともかくとして,本件入学式における「君が代」斉唱のピアノ伴奏を命じた本件職務命令自体が,明らかに不当な目的に基づくものであるとか,内容が著しく不合理であるとまではいえないから,本件職務命令が校長の管理権ないし校務掌理権を濫用したとまではいえない。
[39] 控訴人は,丙川校長が,教職員らとの議論を十分尽くさなかった上,その結論を全く尊重せずに本件職務命令を発したことをもって権限濫用に当たるとも主張するが,上記アにおいて述べたとおり,校長は,教職員らの意見を尊重すべきではあるものの,これに拘束されることなく,自己の権限と責任において,最終的には独自の判断で職務命令を発することができるのであるし,卒業式及び入学式で「君が代」斉唱をピアノ伴奏で行うことは,乙山小学校において平成7年以来行われてきた経緯がある上,本件入学式でもピアノ伴奏で行うことは,控訴人の乙山小学校着任前に決定されていたこと,丙川校長が控訴人に「君が代」のピアノ伴奏をする意思がないことを初めて知ったのは3月18日であって,4月6日に行われる本件入学式に接近した時期であったことからすれば,この間にいったん決定した「君が代」の伴奏方法の変更を教職員と検討する十分な時間的余裕があったとは考え難いから,前記1で認定したとおり,4月5日の職員会議において「君が代」の伴奏方法について教職員の中に控訴人の発言に理解を示す複数の意見があったからといって,本件職務命令が不当な目的に基づくとか,内容が著しく不合理であるとまではいえない。控訴人は,3月18日から4月5日までの間に十分な時間があったし,テープ伴奏に変更したとしても他の教職員がこれに反対することは考えられなかったから丙川校長はテープ伴奏に変更するための措置を執るべきであった旨の主張をするが,その間には春休み期間もあり,控訴人が4月2日には家庭の事情のため出勤せず,同月5日に初めて乙山小学校に出勤したという事情もあり(甲3,証人丙川,控訴人本人),他の教職員と連絡を取り合う十分な時間がなかったことがうかがわれる上,そもそも,乙山小学校においては繰り返し述べるとおり最近5年間にわたりピアノ伴奏が行われてきた経緯があること及び本件職務命令がその発出の要件を満たしているものであることに照らしても,控訴人の意向を重視してそれまでの方針,決定を直ちに変更する措置を執るべきであったとはいい難い。また,丙川校長は,控訴人を翻意させるべく事前に自ら又は当時控訴人が勤務していた丁原小学校の校長に依頼して本件入学式当日まで控訴人を説得しようとし,校長としての立場から手を尽くしているが,この丙川校長の執った措置自体は合理的なものであり,不当であったとはいえない。さらに,控訴人は,本件職務命令が丙川校長の意向に従おうとしない控訴人に対して懲戒処分を受けさせる目的で発せられたとも主張するが,これを認めるに足りる証拠はない。かえって,控訴人は,前記認定のとおり本件職務命令に従わなかった結果,本件処分を受けたものというべきである。そのほか,本件職務命令が権限濫用に当たるという事情は見当たらない。したがって,本件職務命令が権限濫用に当たるということはできない。

ウ 小括
[40] 以上のとおり,適法に存在した本件職務命令を遵守しなかった控訴人の本件行為は地方公務員法32条に違反するものというべきである。
[41] 控訴人のした本件行為は,小学校の入学式という児童,保護者,来賓等が多く出席している行事の場において,職務命令に違反し,その進行上予定されていた「君が代」のピアノ伴奏を行わなかったというものであるから,教育公務員の職に対する信用を傷つける行為に当たり,地方公務員法33条に違反する。控訴人は,テープ伴奏の実施により入学式が滞りなく行われ,出席者らの間に心理的な混乱は生じなかったから,本件行為は信用失墜行為には当たらないし,仮に出席者らの間に心理的な混乱が生じたとすれば,それは丙川校長の不手際によるものである旨主張するが,前記1で認定した事実によれば,控訴人の本件行為にもかかわらず結果的に滞りなく本件入学式が終了したのは,丙川校長が,控訴人が本件職務命令に従わずピアノ伴奏をしないこともあり得ると考え,あらかじめテープ伴奏の準備し,現に控訴人がピアノ伴奏を始めなかったことからピアノ伴奏の代替手段として甲田教頭にテープ伴奏を行うよう指示したことによるものであり,このように他者の行為により結果的に混乱を避けることができたからといって,本件行為自体の信用失墜行為該当性が左右されるものではない。控訴人の上記主張は,採用することができない。なお,丙川校長が当初からテープ伴奏を選択していたといえないことは前記(1)アでみたとおりである。
[42] したがって,控訴人のした本件行為は,地方公務員法32条,33条に違反するものであり,少なくとも同法29条1号,2号に該当するものというべきであるから,控訴人には懲戒事由があったものというべきである。
[43] 控訴人は,本件職務命令が違法であることを前提に,これに違反したこと等を理由とする本件処分もまた違法である旨主張するが,上記2(1)イに述べたとおり,本件職務命令は適法であるというべきであるから,控訴人の上記主張は,採用することができない。
ア 日野市教育長の答弁の性質
[44] 控訴人は,日野市教育長の議会における答弁を理由に,本件職務命令及び本件処分が適正手続の保障に違反する旨主張する。
[45] そこで検討するに,証拠(甲4,55)によれば,平成2年4月5日の日野市議会定例会において,当時の日野市教育長である己野梅夫(以下「己野教育長」という。)が,
「『日の丸・君が代』問題について,処分権者である東京都教育委員会において指示通達を出していないということは,『日の丸・君が代』は法制化・強制すべき性格のものではないという大多数の平均的な国民あるいは都民の感情を解釈に入れたものであり,『日の丸・君が代』に関する処分はあり得ないという意味であると理解している。」
趣旨の発言したことが認められる。
[46] しかし,日野市教育長は,教諭の処分権を有するものではないから,己野教育長の上記発言は,被控訴人が都内の市町村の教育委員会に対して「日の丸・君が代」問題に関する指示通達を出していないという事実を踏まえた己野教育長の個人的な解釈を発表したにすぎないものというほかはない。
[47] したがって,このような日野市教育長の答弁が,日野市教委の上部組織であり,かつ,教職員に対して懲戒等の処分を行う権限を有している被控訴人(地方教育行政の組織及び運営に関する法律38条1項)を法的に拘束するものでないことは明らかであるから,控訴人主張のように,被控訴人において長沢教育長の上記解釈を否定した上で「君が代」に関する職務命令違反につき教職員を処分する場合があり得ることを告知しなければ本件職務命令の発出や本件処分を行うことができないと解することはできない。控訴人の上記主張は,採用することができない。

イ 調査義務の懈怠
[48] 控訴人は,被控訴人及び日野市教委が上記アの長沢教育長の発言につき調査しなかったのは適正手続の保障に違反する旨主張するが,控訴人に対する懲戒権の行使は,被控訴人がその権限と責任において行うべきものであるし,上記アのとおり,日野市教育長には教諭の処分権はなく,己野教育長の発言は個人的な解釈の表明にすぎないといわざるを得ないから,被控訴人及び日野市教委が己野教育長の発言について調査しなかったからといって,本件処分に適正手続違反があるということはできない。

ウ 事情聴取過程等における瑕疵
[49] 控訴人は,(a)丙川校長が本件行為に関する報告書の提出について控訴人に虚偽の事実を述べたか,又は日野市教委が丙川校長に命じて報告書の日付を改ざんさせたかのいずれかである,(b)丙川校長が事情聴取において虚偽の供述をした,(c)控訴人に対して糾問調の事情聴取がなされた,(d)被控訴人は控訴人の思想・良心の自由について何ら検討していない,として,本件処分は適正手続の保障に違反する旨主張する。
[50] しかし,上記(a)について,4月15日に丙川校長が控訴人に対して「まだ日野市教委に報告書を提出していない。」と述べたことについては,これに沿う証拠(甲19,28,56,証人h,控訴人本人)は,他の証拠(甲6,証人丙川)に照らし,にわかに採用することができない上,仮にその事実があるとしても,報告書の提出日に関する事柄にすぎないことからすれば,そのことだけからは,本件処分を違法とするほどの重大な手続違反があるとまではいえない。また,日野市教委が丙川校長に命じて報告書の日付を改ざんさせたことについては,これを認めるに足りる証拠はない。
[51] 上記(b)については,証拠(甲5,6,27)によれば,丙川校長は,事情聴取において「君が代」を歌っていた者について同校長の認識を述べたことが認められるから,同校長が虚偽の事実を述べたとはいえない。上記(c)については,これをいうのは控訴人本人のみである上,控訴人本人の供述によっても,詰問の程度は必ずしも明らかでないから,控訴人に対する事情聴取のあり方が適正手続に反するとはいえない。また,上記(d)については,証拠(甲3,証人l)によれば,被控訴人は,本件処分を行うに当たり控訴人の思想・良心の自由を侵害することがないかについても検討したことが認められる。
[52] 以上からすれば,事情聴取過程等における瑕疵をいう控訴人の主張は,いずれも採用することができない。

エ 小括
[53] したがって,本件処分が適正手続の保障に違反するとはいえず,憲法31条違反をいう控訴人の主張は,採用することができない。
[54] 控訴人は,本件行為には非難可能性がなく,実質的な害悪も発生していないから有責性が阻却される旨主張する。
[55] しかし,当該行為の動機や結果については,処分の要否や程度を判断するに当たって考慮されるべきではあるものの,これらを理由として当然に本件行為の有責性が阻却されるとはいえない。のみならず,控訴人の本件行為に非難可能性があることは後記(4)のとおりであり,控訴人の主張は,採用することができない。
[56] 公務員に対する懲戒処分は,全体の奉仕者として公共の利益のために勤務することをその本質的な内容とする勤務関係の見地において,公務員としてふさわしくない非行がある場合に,その責任を確認し,公務員関係の秩序を維持するため科される制裁である。そして,地方公務員につき懲戒事由がある場合に,懲戒処分を行うかどうか,懲戒処分を行うときにいかなる処分を選ぶかは,平素から組織内の事情に通暁し,職員の指揮監督の衝に当たる懲戒権者の裁量に任されており,懲戒権者は,懲戒事由に該当すると認められる行為の原因,動機,性質,態様,結果,影響等のほか,当該公務員のその行為の前後における態度,懲戒処分等の処分歴,選択する処分が他の公務員及び社会に与える影響等,諸般の事情を考慮して,その権限と責任において,懲戒処分をすべきかどうか,また,懲戒処分をする場合にいかなる処分を選択すべきかを,その裁量的判断によって決定することができるものと解される。したがって,裁判所が懲戒処分の適否を審査するに当たっては,懲戒権者と同一の立場に立って懲戒処分をすべきであったかどうか又はいかなる処分を選択すべきであったかについて判断し,その結果と懲戒処分とを比較してその軽重を論ずべきものではなく,懲戒権者の裁量権の行使に基づく処分が社会観念上著しく妥当性を欠き,裁量権を濫用したと認められる場合に限り違法であると判断すべきものである(最高裁判所昭和52年12月20日第三小法廷判決・民集31巻7号1101頁,最高裁判所平成2年1月18日第一小法廷判決・民集44巻1号1頁参照)。
[57] かかる見地から本件をみるに、控訴人は,前記1において認定したとおり,丙川校長から,2回にわたり,本件入学式において「君が代」のピアノ伴奏をするようにとの本件職務命令を受けながらこれに従わなかったこと,入学式には児童,保護者,来賓等出席者が多数おり,その面前での公然とした職務命令違反を放置すれば,公務員関係の秩序維持に少なくない影響を及ぼすおそれがあることを考慮すれば,結果的に本件入学式に大きな混乱が生じなかったこと,控訴人は自らの思想・良心を理由に本件行為に及んだものであること,控訴人にはこれまで処分歴がないこと(弁論の全趣旨によって認める。),本件処分により控訴人が被る不利益の程度が上記第2の3(2)(控訴人の主張)エ(イ)のとおりであること(甲19,控訴人本人によって認める。)を考慮しても,戒告という,地方公務員法29条1項が規定する懲戒処分としては最も軽い処分である本件処分が社会観念上著しく妥当性を欠き,裁量権を濫用したとまで認めることはできない。
[58] なお,控訴人は,本件処分が他の事例と比較して重きに失する旨主張するところ,証拠(甲69ないし71)によれば,大阪府教育委員会は,いずれも公立学校の入学式・卒業式における国歌斉唱の際に教職員が無許可で学校の方針と異なる発言をしたなどの信用失墜行為について,1回目の行為については厳重注意又は訓告に止めていることが認められるが,教職員の行為についてどのような処分を行うかは各教育委員会に裁量権があることからすれば,これらの事例があるからといって,上記判断を左右することはできない。
[59] したがって,本件処分に違法性があるとの控訴人の主張は,いずれも採用することができない。
[60] よって,当裁判所の上記判断と同旨の原判決は相当であり,本件控訴は理由がないから,これを棄却することとして,主文のとおり判決する。

  裁判長裁判官 宮崎公男  裁判官 大橋弘  裁判官 上原裕之

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