広島市暴走族追放条例事件
第一審判決

広島市暴走族追放条例違反被告事件
広島地方裁判所 平成14年(わ)第1137号
平成16年7月16日 刑事第2部 判決

被告人 A (職業 フリーライター)
検察官 北村隆
弁護人 田中千秋

■ 主 文
■ 理 由

■ 参照条文


 被告人を懲役4月に処する。
 この裁判確定の日から3年間その刑の執行を猶予する。
 訴訟費用は被告人の負担とする。

 被告人は,観音連合などの暴走族構成員約40名(以下,まとめて「本件暴走族構成員ら」という。)と共謀の上,平成14年11月23日午後10時31分ころから,広島市が管理する公共の場所である広島市中区新天地8番所在の広島市西新天地公共広場(以下「本件広場」という。)において,広島市長の許可を得ないで,所属する暴走族のグループ名を刺しゅうしたいわゆる特攻服(以下「特攻服」という。)を着用し,顔面の全部若しくは一部を覆い隠し,円陣を組み,旗を立てる等威勢を示して,公衆に不安又は恐怖を覚えさせるような集会(以下「本件集会」という。)を行い,同日午後10時35分ころ,同所において,広島市経済局経済振興課長Cから,本件集会を中止して本件広場から退去するよう命令を受けたが,これに従わず,引き続き同所において,同日午後10時41分ころまで本件集会を継続し,もって,上記命令に違反したものである。
 被告人の判示所為は,刑法60条,広島市暴走族追放条例19条,16条1項1号,17条に該当するところ,所定刑中懲役刑を選択し,その所定刑期の範囲内で被告人を懲役4月に処し,情状により刑法25条1項を適用してこの裁判が確定した日から3年間その刑の執行を猶予し,訴訟費用については,刑事訴訟法181条1項本文により全部これを被告人に負担させることとする。
[1] 弁護人は,広島市暴走族追放条例(以下「本件条例」という。)19条,17条,16条1項1号の各規定(以下,まとめて「本件各規定」という。)は,要旨以下の理由により憲法21条1項及び31条に違反し無効であるから,被告人の行為は罪とならない旨主張する。

(1) 憲法21条1項違反の点について
 文面上の違憲性
[2] 本件各規定にある「公衆に不安又は恐怖を覚えさせるような」(16条1項1号),「い集又は集会」(16条1項1号),「特異な服装」(17条)との文言はいずれも不明確であり,かかる不明確な規定により集会の自由に制限を加えることは,これを保障した憲法21条1項に違反する。すなわち,「公衆に不安又は恐怖を覚えさせるような」との文言は,公衆の不安度を客観的に測る方法が存在しない以上,どのような集会がそれに当たるかは警察等法執行者の判断にまかせられることになり,集会に参加しようとする者にとって,予定された集会が,「公衆に不安又は恐怖を覚えさせるような」ものであるか予め知る術がない。また,「い集」及び「集会」については,その一つ一つの単語の意味は明確であるものの,この2つの類語を並べて規定することによって,両者の関係があやふやになり,結局,「い集」又は「集会」が何を意図しているのか不明確になっている。さらに,「特異な服装」との文言も,どのような服装が「特異」であるかは,見る人の考え方や周囲の状況によって,大きく変わり得るものであるから,不明確というべきである。そして,このように不明確な文言により,集会に規制が加えられた場合,何が許される集会で,何が許されない集会であるか区別することができず,本来法令が許しているはずの集会まで差し控えるという萎縮効果をもたらすのである。したがって,本件条例は,不明確ゆえに憲法21条1項に違反する。
 内容上の違憲性
[3] 表現の自由は,憲法が保障する基本的人権の中でも特に重要なものであり,それを規制する法令の合憲性を判断する際に依るべき審査基準は,他の人権に対するものに比して,より厳格なものでなければならず,例外的な事情がない限り,許されないものというべきである。なかでも,表現内容に関わる規制ないしは表現内容に基づく規制は,表現内容に中立的な規制に比べて,より厳格な審査基準である,「明白かつ現在の基準」の要件,すなわち,対象行為を規制しないと,近い将来実質的害悪を引き起こす蓋然性が明白であり,起こり得る実質的害悪が重大であり,当該規制手段が害悪を避けるために不可欠であるとの要件を満たすことが必要である。本件条例は,その名称が「広島市暴走族追放条例」となっていることや,立法過程での審議経緯からすれば,暴走族構成員が参加する集会を,一般市民が参加する他の集会と特に区別して規制するもので,内容中立的規制ではなく,表現内容に対する規制を行うものというべきである。したがって,その合憲性は,上記の「明白かつ現在の危険」の審査基準によって判断されるべきである。これを本件条例についてみると,暴走族が行う集会は,一種の儀式のようなもので,そこに参加する者が,一般市民に対し暴行を加えたり,犯罪行為に及ぶようなことはなく,したがって,上記集会を行うことによって,近い将来,実質的害悪を引き起こすことが明白であるとはいえないのであるから,本件各規定は,上記「明白かつ現在の危険」の審査基準を満たさず,集会の自由を不当に制限するものとして,憲法21条1項に違反するというべきである。

(2) 憲法31条違反の点について
 文言不明確故の違憲性
[4] 憲法31条は,刑事手続法が適正であることを求めるのみならず,刑事実体法が適正であることをも要求し,刑事実体法の規定が明確であることは,同条の要求するところと解されるところ,本件各規定は,上記(1),ア記載のとおり,その文言は不明確であり,かかる不明確な規定により刑罰を科すことは,憲法31条にも違反する。
 罪刑不均衡故の違憲性
[5] 本件各規定は,集会行為を行うだけで懲役刑を科し得ることを定めているが,これは,対象となる行為に比して刑罰が非常識に重く,罪刑の均衡を欠く。
[6] そこで,まず,本件各規定が,文言上明確であるか否かについて,以下に検討する。

(1) 本件各規定の構造
[7] 本件各規定が規制対象としているのは,「い集又は集会」(以下,まとめて「集会等」ということがある。)のうち,「公共の場所」において,「当該場所の所有者又は管理者の承諾又は許可を得ないで」,「公衆に不安又は恐怖を覚えさせるような」態様で行われるものであり(16条1項1号),さらに,上記のような態様で行われる集会等のうち,広島「市の管理する公共の場所」において,「特異な服装をし,顔面の全部若しくは一部を覆い隠し,円陣を組み,又は旗を立てる等威勢を示すこと」により行われるものを広島市長による中止命令または退去命令(以下,まとめて「中止命令等」ということがある。)の対象として(17条),これに違反した者に対して,刑罰を科すこととしている(19条)。なお,本件条例自体は,上記承諾又は許可の手続規定を設けていないが,本件広場については,広島市西新天地公共広場条例が,その4条以下で,公園については,広島市公園条例が,その4条でそれぞれ規定しているところである(検41)。

(2) 当裁判所の判断
[8] まず,「い集」及び「集会」について検討する。「い集」とは,「多数のものが一時に寄り集まる」ことを意味し(松村明編「大辞林」三省堂,新村出編「広辞苑」岩波書店等参照),「集会」が「ある共通目的のために多くの人が一定の場所に集まること」を意味することもまた明らかであって,いずれも定義規定を待たねば明確性を欠くとはいえない。弁護人は,これらを規制対象として併記することによって,全体として対象が不明確となっていると主張するが,上記のとおり,それぞれ語義の明確な言葉を,「又は」との接続詞で結んで規制対象として掲げているのであり,それぞれが単独で規制対象となることは明らかであるから,弁護人の主張は採用できない。
[9] 次に,「公衆に不安又は恐怖を覚えさせるような」との文言であるが,ここでいう「不安」とは,「漠とした恐れの感情」あるいは「これから起こる事態に対する恐れから,気持ちが落ち着かないこと」を意味し,「恐怖」とは「悪いことが起こるのではないかという心配」を意味する(いずれも松村明編「大辞林」三省堂等参照)のであって,その言葉自体,一般人が十分理解できるものであり,現に,軽犯罪法1条28号,暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律29条2号,ストーカー行為等の規制等に関する法律2条2項,3条でも同様の文言が用いられている。加えて,本件条例は,上記のとおり,16条1項1号で,「公衆に不安又は恐怖を覚えさせるようない集又は集会」を禁止する一方,17条で,16条1項1号の行為のうち,「特異な服装をし,顔面の全部若しくは一部を覆い隠し,円陣を組み,又は旗を立てる等威勢を示すことにより行われたとき」に,広島市長による中止命令あるいは退去命令の対象としている。これらの規定ぶりからすれば,本件条例16条1項1号にいう「公衆に不安又は恐怖を覚えさせるようない集又は集会」とは,単に,公共の場所で人が「い集又は集会」を催した場合一般を指すのではなく,参加者が,本件条例17条に規定するような態様を取るなどすることによって,殊更に他の公衆に「不安又は恐怖」を覚えさせ,その結果,当該公衆をして当該公共の場所を利用することをためらわせるような「い集又は集会」をいうものと解するのが相当である。そして,通常の判断能力を有する一般人であれば,具体的場合において,自己が行おうとしている「い集又は集会」が,本件条例16条1項1号で禁止される「い集又は集会」,すなわち,本件条例17条で規定する態様等で行われ,そのため,公衆に「不安又は恐怖」を覚えさせる結果,当該公共の場所を利用することをためらわせるような「い集又は集会」であるか否かは,容易に想定できるものというべきである。したがって,この点についての弁護人の主張も採用できない。
[10] なお,本件条例17条には,「特異な服装」との文言がある。ここでいう「特異な服装」とは,それが「威勢を示すこと」の例示として規定されていることからして,それを着用すること自体で,他の者に対する威圧感を与えるに足りるようなものをいうと解される。ところで,服装は,それがどれだけ奇抜なものであっても,その色や意匠のみから,人を威圧できるとは解し難く,ここでいう「特異な服装」とは,それを着用することによって,その者が,暴走族や暴力団等人を威圧するような力を持つような特定の団体に属することを示すような場合に限られると解するのが相当である。したがって,本件条例2条7号で「特異な服装」と並列して「若しくは集団名を表示した服装」と規定され,本件条例7条3項で,刺しゅう等をすることを業とする者の責務として「暴走族の名称等を衣服等に刺しゅう等をすることにより,暴走行為又は暴走族のい集,集会若しくは示威行為を助長することのないよう努めなければならない」とされていることからすれば,本件条例17条が規定する「特異な服装」とは,上記のとおり,暴走族の名称等が刺しゅうされたいわゆる特攻服等,他の者に威圧感を与える団体に属していることを示すような標章として機能するような服装を意味していると解されるのであって,このことは,通常の判断能力を有する一般人であれば容易に想定できるというべきであり,現に,下記5・(1)・イのとおり,被告人らも,本件犯行に先立って,本件条例の制定により特攻服を着用して本件広場等の公共の広場で引退式等の集会をすることができないとの指示をD会の組員から受けるなどしているのである。したがって,この点についての弁護人の主張も採用できない。
[11] 以上のとおりであって,本件各規定の文言は,弁護人の指摘した点を考慮しても,不明確ということはできず,したがって,このことを理由とする,弁護人の憲法21条1項,31条違反の主張には理由がない。
[12] 次に,一定の「い集又は集会」を規制する本件各規定の内容が,憲法21条1項に違反しないかについて,以下に検討する。

(1) 集会の自由に対する制約が正当化される場合
[13] 本件各規定は,本件条例17条が例示するような威勢を示すことなどによって,他の公衆に当該公共の場所を利用することに不安又は恐怖を覚えさせ,その結果当該公共の場所の利用をためらわせるような態様でする集会等であって,当該場所の所有者又は管理者の承諾又は許可を得ないで行うものを禁止するとともに,広島市長による中止命令や退去命令に従わずに,上記のような態様による集会等を継続した者に対し,刑事罰を科することを定めているのであるから,憲法21条1項が保障する集会の自由に対し,一定の制約を課するものであることは否定できない。
[14] ところで,集会の自由は,憲法21条1項が保障する表現の自由の一形態として重要な基本的人権であり,特に尊重されるべきであるが,他方,それは,多数人が集合する場所を前提とする表現活動であり,行動を伴うものであるから,他者の権利ないし利益と矛盾・衝突する可能性が強く,それを調節するために必要かつ合理的な制約を受けることは,やむを得ないものであって,このような制約を加えても,それは集会の自由に内在する制約として憲法21条1項に違反しないというべきである。そして,当該規制目的が正当であり,規制手段と規制目的との間に合理的関連性があり,かつ,規制によって得られる利益と失われる利益とを衡量しても相当であると判断される場合は,当該規制は必要かつ合理的な制約として,憲法21条1項に違反しないというべきある。そこで,一定の集会等に対し規制を加える本件各規定が,上記の基準からみて,必要かつ合理的なものであるか否かについて,以下に検討する。

(2) 本件条例が制定されるに至るまでの経緯
[15] 前掲関係各証拠によれば,本件条例の制定の経緯として,以下の事実が認められる。
[16] 広島市では,本件条例制定前数年来,週末毎に,本件広場や袋町公園等公共の広場や公園に,数十人,多いときには百人余りの少年たちが,自己の属する暴走族等のグループ名を刺しゅうした特攻服を着用し,グループ毎に円陣を組み,あるいは声出しするなどして自らが属するグループの威勢を示して集会を行い,その結果,当該公共の広場や公園はそれらのグループに属する少年たちによって事実上占拠されることが繰り返されるようになった。また,暴力団員が,いわゆる「面倒見」として,暴走族等に属する少年たちに対して,種々指示や指導をしたり,上納金を納めさせるなどしていた。
[17] 本件広場や袋町公園は,広島市の中心部にあり,市民の憩いの場として広く利用されていたものであり,本件広場は,広島市の繁華街の中にあって,多くの観光客が訪れる飲食店が集まった建物である「お好み村」の道路を挟んだ向かいにあるが,本件広場において上記のような集会が頻繁に開かれるようになった結果,県内外の観光客も,そのような集会が開かれる場所周辺に近づくのを避けるようになり,上記γ村では,週末夜の客が激減する状況にあった。なかでも,平成11年11月の胡子大祭の際には,本件広場や会場となった道路を暴走族等に属する少年たちが占拠し,警戒にあたっていた警察官と衝突し,さらにその騒動をあおる人々も出るなか,けがをする者が出たり,路面電車やバスが立ち往生したりする事件が起き,その様子は全国的にも大きく報道された。
[18] このような暴走族等に属する少年たちの活動は,一定の年齢に達して暴走族から脱退する少年らによって,「引退式」などと称する儀式(以下「引退式」ともいう。)として行われることがあり,その場合には,自己の属するグループが同様に引退式を行う他のグループに負けないような威勢を示すことが習いとされていたが,このような活動が,周囲の者に不安感や恐怖感を与え,誰もが自由に利用できるはずの公共の広場の利用をためらわせ,さらには,少年の健全育成や市民の生活に多大な影響を与えているなどとして,平成7年ころから,市民により構成された任意団体が中心となって,上記のような集会が行われる週末毎に,集会場所の周辺を夜回りする活動が行われるようになり,広島県においても,平成12年4月1日に施行された「広島県暴走族追放の促進に関する条例」において,公園管理者等は,暴走族の集会を禁じる旨を表示するなど暴走族を集合させないための措置を講ずるよう努めるものとする規定(9条)を置くなどした。
[19] しかしながら,広島市域の暴走族は,その後も広島市平和記念公園をはじめとして広島市中心部の公園や広場で特攻服を着用して毎週末に集会等を行い,大声を張り上げたり円陣を組んだりし,また,毎年5月に行われる「フラワーフェスティバル」,毎年6月に行われる「とうかさん」,毎年11月に行われる胡子大祭の際にも,特攻服を着用した多数のグループの暴走族等が祭りの会場となった道路を占拠して円陣を組むなどしたり,本件広場や袋町公園等で集会等を行って,逮捕者を出す事態となるなどしたが,公園や広場に集まっての威圧的行為についての警察の警備・取締りは,既存の法律や条例では十分な対応が困難であると認識されるようになった。そのため,平成13年12月の広島市議会において,公園や広場を占拠し,市民に脅威を与えている暴走族がい集し,集合ができないような方策はないか等との質問が広島市長に対してなされた。
[20] そこで,平成14年3月1日,広島市議会に本件条例案が提出され,これを受けて,同条例案に対する質疑を経た後,同月26日,同市議会予算特別委員会において,本件各規定のうち,本件条例16条1項で「何人も」とあるのを「暴走族の構成員は」と修正することなどを内容とする修正案を否決した上,同条例案を賛成多数で可決して本会議に付し,本件条例は,同月27日全会一致で可決成立した。

(3) 本件各規定の憲法目的適合性
[21] 上記3・(2)で認定したような本件条例制定に至るまでの経緯(以下「本件経緯」という。),本件条例の名称が「暴走族追放条例」とされ,1条において,「暴走族のい集,集会及び示威行為,暴走行為をあおる行為等を規制することにより,市民生活の安全と安心が確保される地域社会の実現を図ることを目的とする」と規定されていることからすれば,本件各規定は,公共の場所において,許可を受けずに,公衆に不安又は恐怖を覚えさせるような態様で,当該場所の所有者又は管理者の承諾又は許可を得ないで行う,い集又は集会を禁止することによって,当該公共の場所を,誰もが平穏に利用することができるようにするとともに,当該公共の場所やその周辺で飲食等を楽しもうとする者や,これらの者に飲食等を提供しようとする者の安全と平穏にも寄与し,もって,市民生活の安全と安心を確保することを目的としているものと解される。そして,上記3・(2)で認定したように,暴走族に属する少年たちが本件広場等で催す集会等が,周囲の者に不安感や恐怖感を与え,そのような集会等が催されている間,他の者をして当該場所を利用することをためらわせ,さらには,けが人を出すこともあったことなどの経緯や,本件広場等の公共の場所は、本来多数の人々が相互に利用し,互いの交流を深めるために設置されたものであり(広島市西新天地公共広場条例1条参照),一部の者だけが独占的に占拠するなどの利用形態は本来予定されていないと解されること(同条例4条2項参照)からすれば,本件条例の上記のような目的は,もとより正当なものとして是認されるべきである。
[22] そして,本件各規定は,上記の目的を達成するために,上記のとおり,公共の場所において,その所有者又は管理者の承諾又は許可を受けないで,公衆に不安又は恐怖を覚えさせるような集会等に限ってこれを禁止するとともに,当該集会等が,広島市の管理する公共の場所において,本件条例17条が例示するような行為をするなどして威勢を示すことによって行われ,それに対する広島市長の中止命令又は退去命令に従わなかった者に対しては,6月以下の懲役又は10万円以下の罰金に処することとして規制しているのであるが,本件経緯で判示したように,暴走族に属する多数の少年たちが本件広場等の公共の広場において集会を重ね,その結果,公衆の本件広場等の平穏な利用が阻害され,あるいは,周辺の店舗等の平穏な利用にも悪影響を与えていたことからすれば,本件各規定が,上記のように規制対象とする集会等を限定した上,これを規制することは,上記3・(3)・アで示した目的との間に合理的な関連性があると認めることができる。
[23] さらに,本件各規定は,平穏な態様による集会等を何ら規制するものではなく,先にみたように,集会等のうち,「公共の場所」において,「当該場所の所有者又は管理者の承諾又は許可を得ないで」,「公衆に不安又は恐怖を覚えさせるような」態様で行われるものに限って規制の対象とし(16条1号),さらに,上記のような態様で行われる「い集又は集会」のうち,「広島市の管理する公共の場所」において,「特異な服装をし,顔面の全部若しくは一部を覆い隠し,円陣を組み,又は旗を立てる等威勢を示すこと」により行われるものに限定して中止命令等の対象としている(17条)。ところで,本件経緯にかんがみれば,かかる中止命令等の対象となる行為には,当該公共の場所において,かつ,上記のような態様を取らなければ実現できないような目的ないし利益は見い出し難いのに対し,かかる行為は,それが行われることによって,他の者をして当該公共の場所を平穏に利用することをためらわせ,その結果,本件広場や公園が設置された本来の目的を阻害することになるほか,他の者の身体の安全,店舗等の平穏などの人権を侵害するに至る可能性も高い行為であるということができる。しかも,本件各規定は,その中止命令等に従わない,より違法性の高い行為を行った者に対してのみ,刑罰を科すこととしている上(19条),これに対する法定刑も,6月以下の懲役又は10万円以下の罰金刑であって,下記4で判示するとおり,他の関係法令と比較しても特に過酷とはいえないことからすれば,本件各規定による集会等に対する規制内容は,それによって失われる利益とそれによって得られる利益とを衡量しても,上記3・(3)・アの目的に照らし必要かつ合理的な規制として許容されるというべきである。
[24] なお,弁護人は,本件各規定は,公共の場所において行われる集会等一般を規制するものではなく,暴走族が行う集会等に限って規制を行おうとするものであって,表現内容に中立的な規制ではなく,表現内容自体に対する規制であるから,その規制が憲法21条1項に適合するか否かの判断をするに当たっては,明白かつ現在の危険の基準によるべきである旨主張する。確かに,本件条例は,1条において,「暴走族のい集,集会及び示威行為,暴走行為をあおる行為等を規制することにより,市民生活の安全と安心が確保される地域社会の実現を図ることを目的とする。」と規定しており,これからすれば,本件各規定は,このような目的達成のための手段として規定されたことがうかがわれる。しかしながら,他方,本件条例16条1項1号は,規制対象となる行為の主体を「何人も」と規定しており,これは,本件経緯で認定したとおり,これを「暴走族の構成員は」とする修正案を否決した上で,原案どおり可決されたものであることからすれば,結局,本件各規定は,主体が暴走族構成員であるか否かにかかわらず,公共の場所における集会等の態様を基準に規制を加えようとするものであって,表現内容に中立な規制というべきであり,本件経緯にかんがみれば,本件条例は,1条に規定する目的を,本件各規定が定めるような内容中立的規制によって実現しようとしたものと解するのが相当である。したがって,上記弁護人の主張は採用できない。
[25] 次に,本件条例19条の定める刑が,本件各規定にいう態様の集会等に対する規制として過酷であり,憲法31条に違反するか否かについて,検討する。本件各規定は,先にみたように,市民生活の安全と安心が確保され,青少年の健全育成に適した地域社会を実現するという,地方自治体にとって最も基本的で重要な事項を保護法益とする一方,集会等のうち公衆に対して不安又は恐怖を覚えさせるような態様により行われるものを規制の対象行為とし,さらに,かかる行為に対して市長の中止命令または退去命令が発せられたにもかかわらず,なおそれに従わない,より違法性の高い行為に対してのみ刑罰を科すこととし,その法定刑も,6月以下の懲役又は10万円以下の罰金刑とされているのである。このように違法性の高い行為に対して,本件各規定程度の刑罰を科すことは,刑法130条後段,道路法100条,32条1項,集団示威運動,集団行進及び集会に関する広島県条例,同東京都条例,同京都市条例等の関係法令と比較しても特に過酷ではないから,本件各規定による規制の内容は,合理的で相当なものであると認められる。したがって,本件各規定が憲法31条に違反するものということはできず,この点についての弁護人の主張も理由がない。
(1) 認定できる事実
[26] 前掲関係各証拠によれば,以下の事実が認められる。
[27] 被告人は,もともと神奈川県の出身であったが,たまたま本件広場で集会を行う暴走族を見て,自分も広島の暴走族に加入したいと思い,平成13年春に広島に来て,暴走族である観音連合に加入し,同年秋に同グループを脱退したものの,平成14年8月から指定暴力団であるD会E組の組員に頼んで,観音連合のいわゆる面倒見となり,引き続き同グループの活動に関与していた。
[28] 観音連合の幹部である少年は,本件条例が制定されたことを知っていたことから,平成14年11月に入ってから,同グループの面倒見である被告人に対し,同月18日から同月20日までの3日間にわたって行われる胡子大祭に,観音連合の引退式をするのか尋ねたところ,被告人は,D会E組組員から,「今年のえびす講は,3日とも特攻服を着て出ることはできないことになった。」と言われていたことから,上記少年に対し,「祭りに出るのはいいけど,特攻服はだめだ。D会のトップの方がそう言いよる。」と言った。
[29] しかし,本件条例に不満であった被告人は,胡子大祭の日を避ければ引退式を実施してもD会の指示に反することもならないだろう,そうであれば,広島県警察が一番取締りに力を入れている本件広場で,あえて引退式と称する集会を強行して自己の考えを示そうと考え,同月20日ころ,観音連合,さらには,他の暴走族のグループの者に,同月23日に引退式を実施する旨伝えた。そこで,上記少年らは,同月23日,特攻服を着用した上,被告人と,広島市内のゲームセンターで会ったところ,被告人は,「今日はアリスガーデンで引退式をやる。警察には話を通してあるから,しゃーない。」などと言って,本件広場で引退式を実施することを伝えたので,上記少年らは,被告人の指示に従って本件広場で引退式を実施することを決意した。
[30] 同日,当時の広島市経済局経済振興課長C(以下「C」という。)は,広島市職務権限規定によって,本件広場を管理し,市長に代行して,本件広場について本件条例17条に基づく中止命令等を発する権限を与えられており,他11名の広島市職員とともに,同日午後8時50分ころから,本件広場において視察活動を実施していたところ,上記5・(1)・ウのとおり,被告人が,本件暴走族構成員らとともに,広島市西新天地公共広場条例に定める広島市長の許可を得ないまま,同日午後10時31分ころ,自ら先頭に立ち,本件暴走族構成員ら約40名がそれに引き続いて本件広場への進入を開始した。この時,本件暴走族構成員らは,それぞれ「観音連合」などと自己の属する暴走族のグループ名を刺しゅうした特攻服を着用し,あるいはマスクやタオル等で覆面するなどしていた。
[31] 被告人や本件暴走族構成員らが本件広場に進入した直後,Cが,被告人の面前で,被告人らに対し,「条例違反になるから,特攻服を脱ぐか,すぐに退去しなさい。」などと,1回目の口頭注意を与えたが,被告人らは,Cらを押しのけるようにして本件広場内に進入したため,同人は,同日午後10時33分ころ,さらに2回同様の口頭注意を行った。
[32] その後,本件暴走族構成員らは,被告人の指示に従い,本件広場において,本件広場内に一杯に広がって円陣を組んで本件広場を占拠したため,Cは,被告人に対して,「このままでは命令を出すよ。」と言って,本件中止命令等に先立つ警告を発したが,被告人は「出してみいやあ,何が条例やあ。」などと言ってこれを無視し,さらに,円陣を組んだ本件暴走族構成員らが,円陣中心部にそれぞれのグループ名の入った旗竿を立て,一人づつ,「広島最強。よろしく。」などと大声で声出しし,これに対して他の本件暴走族構成員らが,「よろしく。」と大声で応答するなどして本件集会を開始した。
[33] これを受けて,Cは,同日午後10時35分ころ,上記円陣内に入り込み,拡声器を用いて,被告人らの行為が本件条例16条1項1号の禁止行為に当たり,同17条の中止命令等の対象に当たり,命令に従わなかった場合は,6月以下の懲役又は10万円以下の罰金に処せられることになる旨告げた上で,広島市長名で,同条に基づく中止・退去命令を発したが,被告人及び本件暴走族構成員らは,なおも大声で声出しを続けるなどして集会等を継続したため,さらに,同日午後10時38分ころと同日午後10時40分ころの2回にわたって同様の中止・退去命令を発した。
[34] しかし,被告人及び本件暴走族構成員らは,なおも円陣を組んだまま本件集会を継続したため,被告人は,同日午後10時41分,広島県警察官によって,本件条例違反により現行犯逮捕された。

(2) 構成要件該当性
[35] 以上の事実経過からすれば,被告人及び本件暴走族構成員らは,本件当日,広島市の管理する公共の場所である本件広場において,本件広場の管理者である広島市長の承諾及び許可を得ることなく,被告人及び本件暴走族構成員らにおいてその属する暴走族のグループ名を刺しゅうした特攻服を着用し,マスクなどで覆面をして集合した上,本件広場一杯に広がって円陣を組み,所属する暴走族のグループ名を刺しゅうした旗を掲げ,大声で声出しするなどして威勢を示して集会を行ったものであり,これが公衆に対し本件広場の利用をためらわせるような不安又は恐怖を覚えさせるような態様での集会にあたることは明らかであり,さらに,広島市長を代行して中止命令等を発する権限を有するCの中止命令及び退去命令を受けたにもかかわらず,これに違反して集会を継続したものであるから,かかる被告人及び本件暴走族構成員らの行為が,本件各規定に定める行為に該当することは明らかである。
[36] 本件は,被告人が,暴走族構成員多数名と共謀の上,本件広場において,広島市長の許可を得ないで,公衆に不安又は恐怖を覚えさせるような集会を行い,これに対する中止命令及び本件広場からの退去命令を受けながら,集会を継続して,これらの命令に違反したという事案である。
[37] 被告人は,本件条例の罰則の適用を受けることで世間の耳目を集め,本件条例に対する批判意見を宣伝する目的で本件集会を計画し,本件条例に違反することを十分に認識しながらこれを実行に移したものであって,本件広場周辺の住民や居合わせた人々の不安感や恐怖感,不快感などを全く顧みることのないその動機・経緯は自己中心的というほかなく,酌量の余地はない。なお,被告人は,本件条例のような取締法規を制定するだけでは,暴走族問題はなくならないなどと主張するが,暴走族,ひいては青少年の健全育成,さらには,地域社会の平穏を確保するため,どのような手段によるべきかは、当該地域にある地方公共団体の政策にゆだねられるべき事柄であり,本件条例を制定した広島市の政策に対して自己が反対意見を有しているとしても,公衆に覚えさせる不安や恐怖に思いをいたすこともなく,あえて本件条例に違反する行為にでることが正当化されるとは到底いえないのであって,被告人が,そのような意見を持っているのであれば,それを合法的な手段によって表明するなどして,自己の意見が広島市の政策に反映するよう働きかけるべきである。
[38] また,被告人は,自ら本件集会を計画し,これに参加する暴走族構成員らを集めるなど,本件犯行の中心的役割を果たし,また,再三の口頭注意や警告,さらには3度にわたる退去・中止命令を受けながら,殊更これらを無視して本件集会を継続しており,犯行態様も悪質である。本件犯行により,本件広場は,暴走族構成員らによって占拠され,その平穏が著しく乱され,多くの人々が自由に利用できる憩いの場としての機能が大きく阻害されたばかりでなく,被告人が,未だ若年である約40名にものぼる少年たちを本件犯行に巻き込んだことにより,その多くの者が逮捕されるなど,少年たちの健全育成にも多大な悪影響を与えたといえるのである。
[39] 以上からすれば,被告人の犯情は悪質であって,その刑事責任は軽視できないものがある。
[40] そうすると,被告人が本件犯行自体は素直に認めていること,被告人には罰金前科がある他は見るべき前科はないことなど,被告人に有利に斟酌できる事情も認められることを考慮しても,被告人には懲役刑を選択して主文の刑を科すこととするが,上記の情状にかんがみ,その執行を猶予し,社会内で自力更生する機会を与えるのが相当と判断した。

(求刑 懲役4月)

  平成16年7月16日

    広島地方裁判所刑事第2部
    裁判長裁判官 岩倉広修  裁判官 甲斐野正行  裁判官 冨森志保
(目的)
第1条 この条例は、暴走族による暴走行為、い集、集会及び祭礼等における示威行為が、市民生活や少年の健全育成に多大な影響を及ぼしているのみならず、国際平和文化都市の印象を著しく傷つけていることから、暴走族追放に関し、本市、市民、事業者等の責務を明らかにするとともに、暴走族のい集、集会及び示威行為、暴走行為をあおる行為等を規制することにより、市民生活の安全と安心が確保される地域社会の実現を図ることを目的とする。

(定義)
第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
(1) 自動車等 道路交通法(昭和35年法律第105号。以下「法」という。)第2条第1項第9号に規定する自動車及び同項第10号に規定する原動機付自転車をいう。
(2) 少年 少年法(昭和23年法律第168号)第2条第1項に規定する少年をいう。
(3) 保護者 少年法第2条第2項に規定する保護者をいう。
(4) 公共の場所 道路、公園、広場、駅、空港、桟橋、駐車場、興行場、飲食店その他の公衆が通行し、又は出入りすることができる場所をいう。
(5) 暴走行為 法第68条の規定に違反する行為又は自動車等を運転して集団を形成し、法第7条、法第17条、法第22条第1項、法第55条、法第57条第1項、法第62条若しくは法第71条第5号の3の規定に違反する行為をいう。
(6) 示威行為 多数の者が威力を示して行進又は整列をすることをいう。
(7) 暴走族 暴走行為をすることを目的として結成された集団又は公共の場所において、公衆に不安若しくは恐怖を覚えさせるような特異な服装若しくは集団名を表示した服装で、い集、集会若しくは示威行為を行う集団をいう。
(8) 暴走族追放 暴走族による暴走行為等の防止、暴走族への加入の防止、暴走族からの離脱の促進等を図ることにより、暴走族のいない社会を築くことをいう。

(本市の責務)
第3条 本市は、第12条の規定による基本計画に基づき、暴走族追放に関する総合的かつ広域的な施策を策定し、これを実施する責務を有する。

(市民の責務)
第4条 市民は、この条例の目的を達成するため、前条の規定による施策に協力するよう努めなければならない。

(保護者の責務)
第5条 保護者は、暴走族が少年の健全な育成を阻害するおそれがあることを踏まえ、その監護に係る少年を暴走族に加入させないよう努めるとともに、当該少年が暴走族に加入していることを知ったときは、当該暴走族から離脱させるよう努めなければならない。

(学校、職場等の関係者の責務)
第6条 学校、職場その他の少年の育成に携わる団体の関係者は、その職務又は活動を通じ、相互に連携し、当該団体に属する少年を暴走族に加入させないよう努めるとともに、当該少年が暴走族に加入していることを知ったときは、当該暴走族から離脱させるよう努めなければならない。

(事業者の責務)
第7条 自動車等若しくは自動車等の部品の販売又は自動車等の修理を業とする者は、本市が実施する暴走族追放のための施策に協力するよう努めるとともに、その事業活動において、暴走行為を助長することのないよう努めなければならない。
2 自動車等の燃料の販売を業とする者は、本市が実施する暴走族追放のための施策に協力するよう努めるとともに、その事業活動において、法第62条又は法第71条の2の規定に違反することが外観上明らかな自動車等の運転者に燃料を販売することにより、暴走行為を助長することのないよう努めなければならない。
3 衣服、はちまき、旗等(以下「衣服等」という。)に刺しゅう、印刷等(以下「刺しゅう等」という。)をすることを業とする者は、本市が実施する暴走族追放のための施策に協力するよう努めるとともに、暴走族の名称等を衣服等に刺しゅう等をすることにより、暴走行為又は暴走族のい集、集会若しくは示威行為を助長することのないよう努めなければならない。

(自動車等の運転者の責務)
第8条 タクシー、トラックその他の自動車等の運転者は、暴走行為を発見したときは、速やかに、その旨を警察官に通報するよう努めなければならない。

(自動車等の所有者等の責務)
第9条 自動車等の所有者又は使用者は、暴走族に自動車等を譲渡し、又は貸与して、暴走行為を助長することのないよう努めなければならない。

(暴走族の集合場所の所有者等の責務)
第10条 暴走族が暴走行為をする際に集合する場所又はい集、集会若しくは示威行為を行う場所の所有者又は管理者は、暴走族の集合等を禁ずる旨の掲示をするなど暴走族の集合等をさせないための措置を講ずるよう努めなければならない。

(道路管理者等の責務)
第11条 道路を設置し、又は管理する者は、暴走行為が行われている道路について、暴走行為を防止する措置を講ずるよう努めなければならない。

(基本計画)
第12条 本市は、暴走族追放のため、次に掲げる事項を内容とする基本計画を策定するものとする。
(1) 暴走族追放に係る啓発活動及び市民意識の高揚に関する基本的な事項
(2) 暴走行為をさせない環境づくりに関する基本的な事項
(3) 暴走族への加入の防止に関する基本的な事項
(4) 暴走族からの離脱の促進に関する基本的な事項
(5) 少年の居場所づくりに関する基本的な事項
(6) 前各号に掲げるもののほか、暴走族追放に関する基本的な事項
2 本市は、前項の規定による基本計画を策定し、又は変更したときは、これを公表するものとする。

(関係機関への要請)
第13条 本市は、暴走族追放に関する施策の実施について、必要に応じ、関係機関に対して協力要請を行うものとする。

(保護者への要請)
第14条 本市は、暴走族に加入していると認められる少年の保護者に対して、少年の健全育成の観点から当該少年を暴走族から離脱させるよう指導することを要請することができる。

(情報の提供等)
第15条 本市は、市民、事業者等に対し、暴走族追放に関する施策の効果的な推進を図るため、情報の提供を行うとともに、必要な指導又は助言を行うよう努めるものとする。

(行為の禁止)
第16条 何人も、次に掲げる行為をしてはならない。
(1) 公共の場所において、当該場所の所有者又は管理者の承諾又は許可を得ないで、公衆に不安又は恐怖を覚えさせるようない集又は集会を行うこと。
(2) 公共の場所における祭礼、興行その他の娯楽的催物に際し、当該催物の主催者の承諾を得ないで、公衆に不安又は恐怖を覚えさせるようない集、集会又は示威行為を行うこと。
(3) 現に暴走行為を行っている者に対し、当該暴走行為を助長する目的で、声援、拍手、手振り、身振り又は旗、鉄パイプその他これらに類するものを振ることにより暴走行為をあおること。
(4) 公共の場所において、正当な理由なく、自動車等を乗り入れ、急発進させ、急転回させる等により運転し、又は空ぶかしさせること。
2 何人も、前項各号に掲げる行為を指示し、又は命令してはならない。

(中止命令等)
第17条 前条第1項第1号の行為が、本市の管理する公共の場所において、特異な服装をし、顔面の全部若しくは一部を覆い隠し、円陣を組み、又は旗を立てる等威勢を示すことにより行われたときは、市長は、当該行為者に対し、当該行為の中止又は当該場所からの退去を命ずることができる。

(委任規定)
第18条 この条例の施行に関し必要な事項は、市長が定める。

(罰則)
第19条 第17条の規定による市長の命令に違反した者は、6月以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する。

附 則
 この条例は、平成14年4月1日から施行する。ただし、第19条の規定は、同年5月1日から施行する。

(趣旨)
第1条 この規則は、広島市暴走族追放条例(平成14年広島市条例第39号。以下「条例」という。)の施行に関して必要な事項を定めるものとする。

(市長の留意事項)
第2条 市長は、条例第17条の規定により中止命令等を行う場合において、条例第1条に規定する目的を達成するために必要な限度においてのみ行使するとともに、いやしくも権限を逸脱して個人の基本的人権若しくは正当な活動を制限し、又は正当な活動に介入するようなことのないよう留意しなければならない。

(中止命令等の判断基準)
第3条 市長は、条例第17条に規定する中止命令等を行う際に、条例第16条第1項第1号の行為が威勢を示すことにより行われたときに該当するか否かを判断するに当たっては、次に掲げることを勘案して判断するものとする。
(1) 暴走、騒音、暴走族名等暴走族であることを強調するような文言等を刺しゅう、印刷等をされた服装等特異な服装を着用している者の存在
(2) 明らかに人物の特定を避けるために顔面の全部又は一部を覆い隠している者の存在
(3) 他の者を隔絶するような形での円陣等い集又は集会の形態
(4) 暴走族名等暴走族であることを強調するような文言等を刺しゅう、印刷等をされた旗等の公衆に対する掲示物の存在
(5) 暴走族であることを強調するような大声の掛合い等い集又は集会の方法
(6) その他社会通念上威勢を示していると認められる行為

(中止命令等の方法)
第4条 市長は、条例第17条に規定する中止命令等を行う場合は、拡声器を使用する等行為者に対し命令の周知が図れる方法により行うものとする。

(身分証明書)
第5条 条例第17条の規定による中止命令等の業務に従事する職員は、所定の身分証明書を携帯しなければならない。

附 則
 この規則は、平成14年4月1日から施行する。

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