論理パズルの論理学


引用:「論理パズルとパズルの論理」八杉・林著、遊星社(1998)

---------------花のパズル--------------

アキ 「この花は昼顔か夕顔なんだけど」
ノゾミ「これって昼顔じゃないよ」
カズホ「それじゃこの花は夕顔ね」

アキとノゾミの発言が正しいときに、カズホは正しい?


なぜ誰でも同じ答になるのか、なぜみんな納得するのか?
どんな花が知らなくても答がでるのはなぜ?
それは論理にしたがっているから。
論理って?
人間に共通な思考のパターンみたいなもの。

--------------書き換え----------------

アキ「この花は昼顔である、かまたは、この花は夕顔である」
ノゾミ「この花は昼顔ではない」
カズホ「(アキとノゾミの発言が正しいとすると)この花は夕顔である」

--------------文章の形を知る----------

「この花は昼顔である」を簡単のために○と書く
「この花は夕顔である」を簡単のために◇と書く
アキ「○、かまたは、◇」
ノゾミ「○でない」
カズホ「(アキとノゾミの発言が正しいとすると)◇」

カズホの結論(◇)が正しいことは、◇の内容にはよらない。
「○、かまたは、◇」が正しく、「○でない」が正しいとすると、
「○」が正しい
というパターンだけが問題になる。


文章を命題論理の論理式にする。
命題って?命題とは書いたり話したりすると文章になる、
一つの簡潔した主張。
命題を一定の規則にしたがって記号で書いたものが論理式

--------------論理式にする------------

「この花は昼顔である」や「この花は夕顔である」などを
「基本命題」と呼ぶ。
○や◇を「基本論理式」とか「命題変数」などと呼ぶ。
一般に P とか X とか書く。
「または」や「でない」などを論理記号と呼ぶ。
「基本論理式」つまり「命題変数」には、いろいろな文章をあてはめてよい。
基本論理式を論理記号でつないで「論理式」を作る。
論理式は○や◇などをもっている「文章のもと」 あるいは「文章のパターン」のようなものである。
○や◇を実際の文章でおきかえると、複雑な文章ができる。

論理記号には「または」、「でない」のほかに、「そして」と
「ならば」がある。この四個ですべての文章のパターンが作れる。

--------------論理パズルとは-------------

論理パズルとは、実際の文章が何であっても、文章のパターンから
解けるパズルである。すなわち、論理式を見れば解答がわかるものである。

--------------花のパズルの答え方---------

規則1 「○または◇」が正しいのは、○か◇の少なくとも一方が
正しいとき。

規則2 「○でない」が正しいのは、○が正しくないとき。

アキ「○と◇のすくなくとも一方が正しい」
ノゾミ「○はうそ」
カズホ「◇が正しい」

-------------家族のパズル--------------

お父さんからの電話「今駅だけど、何か買って帰ろうか?」
お母さん「別にいいわよ、雨が降っているから、早く帰っていらっしゃい」
お父さん「それじゃ、晴れてたら、早く帰らなくていいんだね?」
お母さん「?」
お父さんの発言は、お母さんの発言の正しい結論になっているでしょうか?

-------------家族のパズルの答え方---------

「雨が降っている」を○、「早く帰るべきである」を◇と書く。
(早く帰るのがよろしい、早く帰るものである、でもよい)
「晴れている」は「雨が降っていない」と解釈する。

お母さん「○ならば◇」
お父さん「(お母さんの発言にしたがえば)○でない、ならば、◇でない」

規則3 「◇ならば○」と「○でないならば◇でない」とは同じ。
(対偶という)

お父さんの発言の言い換え「◇ならば○」

規則4 「○ならば◇」と「○でない、かまたは、◇」と同じ

お母さん「○でない、かまたは ◇」
お父さん「◇でない、かまたは ○」

○が正しくなく、◇が正しいとき、お母さんの発言は正しいが
お父さんの発言は正しくない。

-------------正しい家族の会話-------------

ある雨の晩に
お母さん「雨が降っているときには早く帰っていらっしゃい」
お父さん「それじゃ早く帰る」

規則5 「○ならば◇」が正しく、しかも○が正しければ、◇が正しい。

お母さん「○ならば、◇」
今、雨が降っている。すなわち○が正しい。
規則5にしたがって
お父さん「早く帰る」

-------------プレゼントのパズル------------

アキとカズホ「ハッピーバースデー、ノゾミ。プレゼントよ。
ハンカチにしようか、ソックスにしようか、迷ったんだけど」
ノゾミ「それで、どっち?」
カズホ「これがソックスならば、これはソックスじゃないの」
カズホはいつもほんとのことをいいます。
プレゼントはソックスでしょうか、ハンカチでしょうか?

カズホ「○ならば○でない」
カズホが正しいときに、もしも○が正しいならば、規則5により
「○でない」が正しい。(規則5の◇を「○でない」とする)
○だと思ったら○でない、これはおかしい。○だと思ったのがまちがいだった。
○ではなかった。ソックスではなかった。
ソックスかハンカチかどちらかなのだから、規則1によりプレゼントは
ハンカチでした。

-------------おやつのパズル-------------

お母さん「お片付けしたらおやつにしましょう」
10分後にお母さん「お片付けしてないじゃないの。おやつにできないわ」
伸くん「でもお母さん、お片付けしなければおやつにしないとはいわなかったよ」
伸君の言い分は正しいでしょうか?

お母さん「○ならば◇」
お母さん「○でない。だから◇でない」
「○ならば◇」は、「○でない、または◇」と同じ。
これは「○でない」と◇の少なくとも一方が正しい」ということ。 両方正しくてもいいので、○でないからといって◇が正しいとは
限らない。お母さんは論理的でないので、伸君の勝ち!
でもお片づけはしましょうね。

-------------風邪のパズル-------------

佳織はいいました:
「私が風邪をひいているならば、私は風邪をひいていない」とすれは、
私は風邪をひいていないの」
佳織の発言は正しい?

規則6 「*ならば*」は正しい。
「(○ならば、○でない)ならば、○でない」
(○ならば、○でない)は(○でない、または○でない)、
つまり(○でない)。香織の発言は
「○でない、ならば○でない」
規則6により正しい。

-----------ちょっと練習---------------

1 アキ「明日雨だったら運動会は中止ね」
カズホ「つまり、明日雨でないか、運動会が中止かどっちかね」
ノゾミ「あら、明日運動会が中止ならば、雨ってことよ」
ノブ君「アキの言ってることがほんとならば、
カズホは正しいけど、ノゾミは正しくないよ」

ノブ君は正しい?

2 ノブ君「健康な猫は賢いんだって」
ノゾミ「それだったら、うちの猫は賢いから、健康ね」(逆)
カズホ「あら、猫は健康でないか、賢いかどっちか、ってことよ」
アキ「二人ともちがうよ」

アキは正しい?

----------なぜ論理が必要なの?------------

論理は人がものごとを正確に考えるときの筋道です。それを整理して
互いに論理について話ができるようにしたものが、論理学です。
論理は数学や計算機科学、法律、日常生活、など、どんな場面でも
使っていますが、とくに記号などをきちんときめた記号論理学が必要なのは
プログラミングおよびプログラム自体を研究する計算機科学あるいはプログラミングの科学です。
プログラムの書き方は論理にしたがっているものであり、
プログラミング言語にはたいてい論理演算が組み込まれています。
しかし論理学をもっと本質的に使う場面として、まず仕様記述があります。
どんな仕事をするプログラムを作成してほしいか、ということを厳密に書くには
文章の論理的な構造を正確に表さなくてはなりません。そのために
仕様を論理式で書くのです。さらに書いたプログラムが目的にあって
いるか、というプログラム自体を科学するためにも論理は必要です。
また、皆さんは驚くかもしれませんが、数学の証明を論理を使ってきちんと書いておくと、
その証明から自動的にプログラムを引き出すことができます。
「うーん、プログラムを書くより数学の証明のほうが難しいや」というかもしれませんね。
でもときには証明は1ページくらいで済むけれど、自分でプログラムを書こうとすると膨大になるかもしれません。
そんなときには証明を書いておくほうが安全なのです。
論理はすぐにはプログラミングに役に立ちそうにないかもしれないけれど、
正しいプログラムをより効率的に書いたり、プログラムを自動的に作成する
技術には、論理が基本になります。

パズルを使って論理を学ぶのは、一年生の科目の「集合と論理」です。

論理パズルの例と、論理パズルの作り方を、お土産に(?)差し上げます。
後で楽しんでください。
八杉のホームページの「講義関係」をたどっていくと、
講義全般について、あるいは個々の講義について、書いてあります。
「集合と論理」もそこにあります。

また、 ここをたずねると、論理で遊ぶこともできます。


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Last modified: Wed Oct 23 22:43:29 JST 2002