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経済データ処理実習 第13講「経済波及効果を調べてみよう(2)」

本日の内容:経済波及効果の計算


T.理論的な意味づけ
U.乗数行列の計算
V.経済波及効果の計算  ※提出課題


T.理論的な意味付け

さて,今回は準備しておいた行列表を使って,経済波及効果を調べてみるわけですが,まず,少し理論的な解説をして,みなさんが何をしているのかを確認しておきましょう.(頭が混乱してしまいそうな人は読み飛ばしても良いですよ)

実習で使っている産業連関表をすごく大雑把に表すと下図のようになります.

また,投入係数は でしたので,上図の簡単な産業連関表における投入係数行列はと表せます.

そして,輸入係数の定義

輸入係数行列を用いると,輸入列ベクトルを以下のように表せます.


ここで,は生産額列ベクトル,は国内最終需要列ベクトルです.

以上を基にして,上図の産業連関表の行(ヨコ)のバランスを,行列およびベクトルを用いて表すと以下になります.

  ここで,は輸出列ベクトルです.

これをについて解いてやると,

は,以前に出てきた単位行列です.
そして,は前回計算した自給率行列ですし,逆行列係数表をとして計算したので,それを使って更に上式を書き直してやれば,

となります.

この式から,何らかの理由で国内最終需要が増加した場合の生産額の増加は,



海外の景気が良くなり輸出が増加した場合の生産額の増加は,

と表されます.(は増加分を示す記号です)
つまり,前回求めた自給率行列と逆行列係数表を掛け合わせたは,マクロ経済学で習った乗数のようなものなのです(厳密には違いますので,「のようなもの」としておきます).下図の仮想的な例でが何を表しているかを確認しておきましょう.



U.乗数行列の計算

専門家の方には怒られてしまいますが,他に良い呼び方が思い浮かばないので乗数行列と呼びます.上で出てきた,

を,行列の積の計算で求めましょう.



V.経済波及効果の計算

「産業連関表.xls」のSheetタブで「公共事業の増加」を選んでください.
これは,平成7年度と12年度の産業連関表を基にして仮想的に作った国内最終需要列ベクトルの増加分です(増加分そのものも列ベクトルです).つまり,上式のに相当するベクトルです.「公共事業が10兆円増加したケース」と,減税によって「民間消費が5兆円増加したケース」が用意されていますので,それぞれのケースで各産業の生産額がどれくらい増加するかを計算してください.
行列とベクトルの積の計算によってが求められます.


※提出課題

以下の下線部分を埋める形で,課題提出システムのメッセージ形式から提出しなさい.
(※金額の単位に注意すること)

1.公共事業が増加したケースでは,
 @農林水産業の生産額は   兆円増加した
 A製造業の生産額は   兆円増加した
 B建設業の生産額は   兆円増加した
 C商業の生産額は   兆円増加した
 D金融・保険業の生産額は   兆円増加した
 E全産業の総生産額の増加は   兆円である.

2.民間消費が増加したケースでは,
 @農林水産業の生産額は   兆円増加した
 A製造業の生産額は   兆円増加した
 B建設業の生産額は   兆円増加した
 C商業の生産額は   兆円増加した
 D金融・保険業の生産額は   兆円増加した
 E全産業の総生産額の増加は   兆円である.



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