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経済データ処理実習 第5講 「経済成長を支えているのは?」

本日の内容:GDP成長率についての寄与度分解と寄与率の計算


T.準備
U.寄与度分解 (1)寄与度の説明
           (2)実習
V.成長率−寄与度グラフの作成 (1)寄与度グラフ
                      (2)成長率の追加
→ 練習問題1.
  練習問題2.

T.準備

 先週使った「実質GDP(総支出).xls」を開いてください.先週のおさらいで,
Sheet1のデータをSheet3に全部コピーしてください.
先週と同じく,横長の表の行と列を入れ替えて,縦長の表にしましょう.
元の表や,新しい表の年号部分は邪魔なので削除しましょう.
(好みによりますが)以下のようにしておくと使いやすいでしょう.

U.寄与度分解

(1)記号の使い方と寄与度の説明
  整えられた表を見てください.この表では,GDPを支出面から見ているわけですが,
 その支出項目は,次の6つです.
 1.民間消費 2.政府消費 3.民間投資(民間固定資本形成) 4.公共投資(公的固定資本形成)
 5.在庫増加 6.純輸出(輸出−輸入)
 以降,それぞれをC,G,I,Ig,Z,X,と表します.GDPはYです.
  マクロ経済学で習った総需要の式を思い出してください.上の記号を用いると以下のように書けます.

  

  ここで,各記号に添えられた小文字のtは「年」を表します.
  (2001年であればt=2001ですから,「2001年のGDP」はとなります)
 このtを使って「1年前の...」という意味を「t-1」で表します.
  そして更に,対前年の増加分を凾用いて表します.つまりGDPの対前年の増加分であれば,
 となります.
  これを用いて成長率を表すと,例えばGDPの対前年成長率はと表されます.
 分母は前年のGDPであることに注意してください.
  以上を用いて,GDP成長率の寄与度分解を行うと,次式のように表されます.

 

  少し長い式になってしまいましたが,「各支出項目の対前年成長率を,前年のGDPに占める
 シェアで加重和したものが,GDPの対前年成長率である」
ということを表す式です.
  上の式の右辺の各項が,各支出項目の寄与度です.
 例えば,民間消費の寄与度はです.

  以上より,寄与度分解を行うためには,@各支出項目の前年におけるシェア,
 A各支出項目の成長率の2つを計算すればよいということになります.

(2)実習
  まず,元の表をコピー&貼り付けし,数値部分を消去した空の表を下に3つ作ります.
 2番目の表には「支出シェア」,3番目には「対前年成長率」,4番目には「寄与度」と書いておきましょう.

  支出シェアから求めましょう.シェア=支出/GDPですから,例えば民間消費であれば,
 表に以下のような数式データを入力します.
  このとき,分母の指定に絶対参照を使います.ただし,F4キーを3回押して
 分母を$I3という表示に変えてください.
  これは,「列だけを固定せよ」という指示です.ですから,行については,ずらしても構わない
 ということを意味します.

  次に,おなじみの■をドラッグして,今入力した数式データを横へコピーします.

  「財貨・サービスの純輸出」までコピーしたら,次はすべての年についてコピーします.  

  次は,各支出項目の対前年成長率です.
 数式データを入力するときに,カッコを付け忘れないように!
 また,1980年は,ここでは先頭のデータですので,成長率は出せません.注意!

 1つできたら,後はコピーしてください.

  以上ができたら,最後に寄与度を計算します.上述のように,
 寄与度=(前年の支出シェア)×(対前年成長率) ですから,
 その数式データを最後の表に入力します.
 ※支出シェアは前年のものであることに注意!セルの指定を間違えないように!

V.成長率−寄与度グラフの作成

(1)寄与度グラフの作成
  できた表を見ていても,小数ばかりの数字が並んでいるだけで良く分かりません.
 そこで,先週の復習を兼ねて,寄与度をグラフ化してみましょう.
  ついでに,先週作ったGDP成長率も合わせてグラフに加えてみましょう.

  すべての支出項目の寄与度のセルを選択しておいて,グラフウィザードをクリックします.
 グラフの種類は,「縦棒」の「積み上げ縦棒」を選択してください.
 後は,先週の復習でグラフを作成してください.

  グラフの書式設定などを使って,下図のようなグラフを完成させてください.

(2)GDP成長率の追加  
  では,更にGDP成長率のグラフを加えましょう.
  グラフ上の適当な所で右クリックします.メニューより「元のデータ(S)」を選択.
 開いたウィンドウ内で「追加(A)」ボタンをクリック.

  更に下図を参考にしながら,名前欄,値欄にGDP成長率を指定してください.

  以上の操作で,寄与度のグラフにGDP成長率を追加することができました.
  ところが,この状態では,GDP成長率まで棒グラフになっていますので,ちょっと工夫してやります.
 まず,GDP成長率の棒グラフ上(マウスをあわせると「系列GDP成長率要素1990」などという表示が出ます)
 で右クリックし,「グラフの種類(Y)」を選択肢.開いたウィンドウで「折れ線」を選びます.

  次に,折れ線の「データ系列の書式設定(O)」から,色や線種などを適当に設定してください.
 下図のようにできれば完成です.

  この図を見ると,例えば1988年には6%を超える高い経済成長率となっており,それを最も支えていたのが
 民間投資と民間消費であることが分かります.

※練習問題1.(課題提出システムから質問に対する答えをメッセージ形式で提出しなさい)
 (1)1985年,1990年,1995年の各年において,経済成長に寄与している支出項目上位2つを挙げなさい.
 (2)1998年,2001年において,経済成長率を大きく引き下げる要因となっている項目を,
   それぞれの年において2つ挙げなさい.

※練習問題2.
  From Teacherフォルダ内にある菅原宏太のフォルダにある,「実質GDP(総生産).xls」のデータを使って,
 各産業のGDP成長率に対する寄与度を求めグラフ化しなさい.


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