『北方ジャーナル』事件
控訴審判決

損害賠償請求事件
札幌高等裁判所 昭和55年(ネ)246号
昭和56年3月26日 第4部 判決

控訴人(原告)  株式会社北方ジヤーナル
被控訴人(被告) 国 外2名

■ 主 文
■ 事 実
■ 理 由


一 本件控訴をいずれも棄却する。
二 控訴費用は控訴人の負担とする。


[1] 控訴人は、「原判決を取決す。被控訴人らは控訴人に対し、連帯して金2,025万円及びこれに対する昭和54年2月16日から支払済に至るまで年5分の割合による金員を支払え。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人らの負担とする。」との判決並びに仮執行宣言を求めた(当審で請求を減縮した。)。
[2] 被控訴人らは、「本件控訴を棄却する。控訴費用は控訴人の負担とする。」との判決を求めた。

[3]二 当事者双方の事実上の主張及び証拠関係は、次に付加するほか原判決事実摘示と同一であるから、ここにこれを引用する。

1 控訴人の主張
[4](一) 仮処分制度の目的は、本案訴訟終結までの間一時現状を保全することにあるから、保全の範囲を超えて現状を破壊し相手方に実害を与えるような仮処分決定は許されない。本件の印刷物は、僅か1ケ月間購読されるだけで、右経過後は急速に価値を減じ短期間内に殆ど無価値になつてしまうものである。従つて、仮りに名誉権の侵害を予防するための仮処分が法律上許容されるとしても、その態様としては増刷禁止の範囲内に止めるべきであり、それを超えて印刷製本段階で印刷物を執行官保管にし、印刷製本を禁止し、また発行後における手持印刷物や販売済印刷物等を執行官保管にすることは到底許されないところである。しかるに、本件仮処分決定は、印刷段階で発せられたものであるから、許容される範囲を逸脱した違法なものであることは明らかである。
[5](二) 控訴人は、4月号の売上予定額として、当初単価410円、発行部数5万部計2,050万円の主張をしたが、単価410円、発行部数第1版2万5,000部計1,025万円と改める。従つて、控訴人主張の損害額は合計2,025万円となる。

2 被控訴人らの答弁
[6] 控訴人の当審における主張は争う。請求の減縮につき異議はない。

[7] 被控訴人五十嵐、同阿部は、乙第10号証を提出し、控訴人は、乙第10号証の成立は認める、と述べた。


[1] 当裁判所も控訴人の本訴請求はいずれも理由がなく、これを棄却すべきものと判断するものであり、その理由は原判決(更正決定を含む。)の理由説示と同一であるから、ここにこれを引用する。

[2] 控訴人は、仮処分制度の目的は、本案訴訟終結までの間一時現状を保全することにあるから、保全の範囲を超えて現状を破壊し、相手方である控訴人に実害を与えるような本件仮処分決定は違法であると主張する。
[3] 然しながら、仮の地位を定める仮処分は、申請人につき、権利関係に争いがあるため著るしい損害を蒙ることを避ける必要がある、若しくは実力行使による現状秩序の侵害を避ける必要がある、或いはその他緊急切実な必要がある等の場合において、裁判所が保全の目的を達するために必要かつ充分な処分を定めるものであつて、いわゆる満足を求める仮処分も、その必要が極めて切実であり、またその執行に対する原状回復の法律的可能性があれば肯定されると解すべきである。
[4] ところで、被控訴人五十嵐広三は昭和54年4月施行されることになつていた北海道知事選挙に同年2月の時点で立候補する予定であつたが、控訴人が同年2月23日ころ発売予定であつた雑誌北方ジヤーナル昭和54年4月号(以下、北方ジヤーナル4月号という。)に掲載することにしていた本件記事(その内容は原判決が認定するとおりである。)は、被控訴人五十嵐の私生活面までとりあげて非難し、極めて野卑な表現をもつて人物評価することによつて同人を中傷、誹謗しその名誉を明らかに毀損するものであり、しかも本件記事の内容が真実であることを認めるに足りる証拠はなく、かかる記事を掲載した雑誌北方ジヤーナル4月号が控訴人の予定したところに従つて頒布されると、被控訴人五十嵐の名誉は違法に毀損されることにならざるをえず、このように明白に同人の名誉毀損状態がつくりだされようとしており、しかも右名誉毀損によつて同人はかなりの損失をうけることが明らかであるのみならず、その回復は極めて困難と考えられるから、控訴人との利害の比較衡量を慎重に考慮しても、なお被控訴人五十嵐につき、雑誌北方ジヤーナル4月号の頒布を事前に差止めることは許容されるべきであり、また右雑誌の頒布予定時期と選挙施行時期その他の事情からみて保全の必要も認められるべきであるから、本件仮処分決定は適法であるというべきであり、以上はすべて原判決がその理由において詳細に説示するとおりである。控訴人の前記主張は採用することはできない。

[5] よつて、控訴人の本訴請求をいずれも棄却した原判決は相当であり、控訴人の本件控訴はいずれも理由がないから、民事訴訟法384条1項により棄却することとし、控訴費用の負担につき同法95条、89条を適用して、主文のとおり判決する。

  (札幌高等裁判所第4部)

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