謝罪広告事件
第一審判決

謝罪広告請求訴訟事件
徳島地方裁判所 昭和27年(ワ)第336号
昭和28年6月24日 判決

原告 蔭山茂人
被告 大栗清実

■ 主 文
■ 事 実
■ 理 由


 被告は徳島市において発行する徳島新聞、徳島民報及び大阪市において発行する朝日新聞、毎日新聞の各徳島版に各1回見出しと氏名は3号活字を用い、本文は4号活字を以て別紙謝罪状を掲載せよ。
 原告のその他の請求は棄却する。
 訴訟費用は被告の負担とする。


 原告訴訟代理人は

 被告は徳島市に於て発行する徳島新聞、徳島民報、徳島毎夕新聞及び大阪市に於て発行する朝日新聞、毎日新聞、産業経済新聞の各徳島版に3日間引続き、見出しと氏名は3号活字を用い、本文は4号活字を以て次の謝罪状を掲載し、且つ四国放送株式会社を通じて3日間3回に渉り連続して右同文の放送をすることを命ずる。
謝罪状
 私は昭和27年10月1日執行の衆議院議員総選挙に際し日本共産党公認候補として徳島県より立候補し、其の選挙運動に便乗して貴下に関係ある事項に言及し貴下の名誉を傷け、特に同年9月21日午後9時20分より同25分、同月25日午後9時30分より同35分、及び同月27日午後9時20分より同25分に至る各5分間宛3回に渉り、日本放送協会徳島放送局で行つた候補者政見放送に於ては何等の根拠がないにも拘らず「貴下が徳島県副知事在職中に坂州発電所の発電機購入にからみ斡旋料800万円をとつた」旨の虚偽の事実を述べ、著しく貴下の名誉を毀損いたしましたが、この事に関し同月29日徳島新聞紙上で阿部五郎君が公開状を発表して当時の状況を詳細に説明してこの様な虚偽の事実を流布して個人の名誉を傷けることの不法不徳を述べ、親切に私に反省の機会を与えて下さいましたが、私はこれを顧みず却つて同月30日発行の徳島新聞紙上に公開状と題して「阿部君がどの様に弁解しようとも貴下が800万円のそでの下をもらつた事実は打ち消すことが出来ない」旨及び「共産党が3カ月も以前から暴露しているにも拘らず一言の申訳も出来ないのはどうしたわけか」と述べ、貴下の名誉を甚しく毀損しましたことは今静かに反省致しますに其の罪実に重大なるを痛感いたします。
 茲に前記の放送及び新聞紙上で全く虚偽の事実を発表し、貴下の名誉を毀損し貴下を初め多数の方々に多大の御迷惑をおかけ致しましたことを深く恥じ、且つ謹んで謝罪いたします。
大栗清実   
   蔭山茂人様
 訴訟費用は被告の負担とする。

との判決を求める旨申立て、その請求の原因として、

[1] 被告は昭和27年10月1日施行された衆議院議員選挙において日本共産党公認候補として徳島県より立候補したものであるが、同年9月21日午後9時20分より同25分、同月25日午後9時30分より同35分及び同月27日午後9時20分より同25分にいたる各5分間宛3回に亘る日本放送協会徳島放送局における候補者政見放送の際、原告が徳島県副知事在職中に坂州発電所の発電機購入にからんで斡旋料名下に金800万円を貰つた旨の虚偽の放送を行つて原告の名誉を著しく傷けたのみならず、更に同月30日発行の徳島新聞紙上に公開状と題して「坂州発電所の発電機購入にからんで……中略……蔭山君が斡旋料800万円をとつた問題だが……中略……君(訴外阿部五郎を指す)がどの様に弁解しようとも、当時東芝が多数の業者の競争をよそに高い値段で県に売りつける権利を獲得し、蔭山君がこの斡旋に奔走して800万円の「そでの下」をもらつた事実は打消すことが出来ない」と言い、更に又「この問題の当事者である蔭山君はわが党が3カ月も以前から暴露しているにも拘らず一言の申訳も出来ないのはどうしたわけか」と附言し、原告が前記坂州発電所の発電機購入に当り、その請負人である東京芝浦電気株式会社から何等の金品をもらつていないにも拘らず、恰も800万円の金を貰つて之に便宜を与えたかの如く虚偽の事実をラジオ放送や徳島新聞を通じて国民に発表し、原告の名誉を甚しく毀損したのであるが、原告は元徳島県副知事をつとめ相当な社会的地位にあり、今後も大いに県治政のため活躍しようと志しているものであるのに、被告が前記の如き虚偽の報道をしたために信用極度に失墜し、多数県民に対しても大いに信頼を失い、各方面において直接間接に蒙つた損害は莫大なものがある。また原告及び家族らが精神上蒙つた打撃も実に深刻なもので、これが為に原告一家は一般より白眼視され隣近所にも顔向けが出来ないような仕末である。このように原告は被告の為した前記虚偽の報道によつて著しく名誉を毀損され信用を失墜せしめられ、精神上莫大な打撃を蒙つているから被告は之が名誉回復の責務を負うものと言うべく、よつて原告は被告に対し請求の趣旨記載の如き謝罪状の掲載放送を求めるため本訴請求に及んだ。
[2] 被告の抗弁に対し、被告の為した政見発表が個人たる原告に対するものであると公人たる原告に対するものたるとを問わず、名誉毀損の問題は生じ得るのであり、且つ公然事実を摘示しても真実性のないときは矢張り名誉毀損となるものである

と述べた。(立証省略)

 被告訴訟代理人は

 原告の請求を棄却する、訴訟費用は原告の負担とする

との判決を求め、

[3] 被告が原告主張の如き立場にあつて、その主張のような日時、方法を以て主張の如き内容の事柄を発表した事実は認める。しかし乍らこの事については左に述べるような事情によつて被告には責任が存しないから原告の請求は失当である。
[4]、民主代議制国家にあつては国家主権は国民に存し、其行使は正当に選挙された国会が行使するのであるが、国民は選挙時において主権者として直接政治に参加するもので、その選挙の際にあつては立候補者と選挙人とは公法関係に立つのである。
[5] そして立候補者は選挙権者に向つて自己の政見を発表し、且つ訴えてその共鳴支持をうけんとするにある。従つてその政見発表は市民社会におけるような個人の利己的経済活動ではなくて国民がその享有を共通にする一般的利益である。且つ右の様な選挙行動を律するのは最早私法ではなく公法関係を規律する選挙法のみである。私法上の権利関係を対象とする民事訴訟によつて権利の救済を求める原告の請求はそれ自体失当である。
[6]、仮りに然らずとするも、原告は元徳島県副知事の職にあり、当時の副知事と言う地位のもつ特殊性に鑑み一般国民よりする厳正な批判にさらさるべき立場にあつたから、本件の如き公益のための批判をうける事は已むを得ない。即ち官公吏のような公的機関は国民全体に対する奉仕者として常に主権者たる国民の批判の的にならねばならず、その地位にあるものは、この批判を甘受せねばならない。且つ公的機関に対する国民の批判には最大限の自由が与えらるべきであつて憲法第25条の言論、表現の自由として保障されているところである。一定の場合に名誉毀損を処罰せずとした刑法第230条の2も右趣旨にそつて解されねばならない。
[7] 而して被告は原告の当時の副知事と言う地位に着目して批判したのであるから、個人の権利侵害の問題は生じない。即ち、公務員は憲法第15条の外、公務員法によつて分限懲戒服務についての厳正な規律、争議行為の禁止、営利企業等への従事制限等を課せられより一層高い道徳律を要求されている。従つて公的機関として行動する面をとらえる場合には最早その個人性は没却され、私生活を営む個人としての法活動を規律する私法の分野での個人の権利侵害を理由とする名誉毀損の対象にはなり難いのである。殊に政界にあるもの政治生活に対する批判は民主主義国家として最大限にその自由が保障さるべきもので、この間の事情はアメリカ合衆国、西欧諸国等においても夙に認められているところであり、我国においても、政界粛正のための方法として広く行われているし、これを一々個人の権利侵害として問題視してはいない。
[8]、仮りに右抗弁が容られないとしても、被告が放送乃至新聞に掲載した本件事実は真実であり、且つ被告は専ら公益をはかる目的を以て之を公けにしたのであるから不法行為とはならない。
[9]、仮りに本件事実が真実でなかつたにしても、被告は日本民族と国民の利益を代表する日本共産党に所属し、その公認候補者として前掲のように選挙に立候補したのであつて、最近政府部内には勿論、中央、地方行政機関内部にいたる迄腐敗汚職が頻発している実情を憂え綱紀粛正の見地から批判を加えたもので、本件事実発表の目的が専ら官公吏の綱紀粛正をはからんとするにあつて、原告個人の私権を侵害しようとする意図は毛頭存しなかつたのであるから被告には故意過失は存しない。
[10]、放送については、単に「元副知事蔭山は坂州発電工事で800万円の周旋料をとつた」旨抽象的に発表したのみで、その手段、方法については何等具体的に述べてはいない。これのみではその利益取得の方法が原告の名誉を毀損する形で行われたかどうかは判明しない。放送内容のみでは原告の名誉を毀損した事にはならない。
[11]、更に徳島新聞における「公開状」の掲載については訴外阿部五郎がさきに「公開状」を以て放送の事実を示して反駁し、被告の返答を求めて来たので、被告としては已むなく返答として「公開状」を右新聞社宛に送付したに過ぎない。徳島新聞社は右阿部の「公開状」の末尾に「新聞社は同一スペースを君に与えるものと思う。どうぞ答えて下さい」と書かれてあつたので、その要請に基いて被告に同一スペースを提供したのであるから被告名の公開状が右新聞に掲載されたのである。従つて之が新聞に掲載された事の責任は、これを求めた阿部五郎乃至徳島新聞の編集発行人に存するので被告の負うべき筋合のものではない。
[12]、仮りに右掲載が被告に不法行為を成立せしめるとしても、掲載にいたつた経緯は前記のような事情によるものであるから、阿部五郎の右挑発的言辞が先立つたと言う情状が斟酌せらるべきであり、且つ新聞社に対して発表すべき謝罪広告は「公開状」を発表した徳島新聞に右と同一スペース、同一活字を以て掲載するを以て足りる。

と述べた。(立証省略)


[1] 原告が昭和22年頃より同26年頃まで徳島県副知事として在職した事、被告が昭和27年10月1日施行された衆議院議員選挙に際し日本共産党公認候補として徳島県より立候補しその選挙運動中、同年9月21日午後9時20分より同25分、同月25日午後9時30分より同35分及び同月27日午後9時20分より同25分にいたる各5分間宛3回に亘り、日本放送協会徳島放送局において候補者政見放送を行つた際、その放送中に原告が
元「徳島県副知事在職中に坂州発電所の建設にあたつて800万円の周旋料をとつた」
旨を放送し、又同月29日附徳島新聞紙上に訴外阿部五郎が「公開状」と題して右放送内容について被告に釈明したのに対し、翌30日附同新聞紙上に同じく「公開状」と題して
「坂州発電所の発電機購入にからんで……中略……蔭山君が斡旋料800万円をとつた問題だが……中略……君(訴外阿部五郎を指す)がどの様に弁解しようとも、当時東芝が多数の業者の競争をよそに高い値段で県に売りつける権利を獲得し、蔭山君がこの斡旋に奔走して800万円の「そでの下」をもらつた事実は打ち消す事が出来ない」及び
「この問題の当事者である蔭山君は、わが党が3カ月も以前から暴露しているにも拘らず、一言の申訳も出来ないのはどうしたわけか」
云々と発表した事は当事者間に争いがない。

[2] 先ず、被告の政見発表に際して為された本件行為は所謂公法関係を規律する法規殊に選挙法によつて規制さるべきであつて、民事責任の対象とはならないとの主張について考えるに、もとより衆議院議員を国会に選出するための選挙は公法活動であるに違いないが、之に際して行われる立候補者の政見発表演説がたとえ個人の行為に言及するものであつてもすべて選挙法によつてのみ律せらるべきで、民事責任の対象とならないとは独自の見解であつてその演説中に個人の非行を暴露したり糺弾するときは、不法行為を構成する場合のあること勿論である。
[3] 又公務員が国民全体の奉仕者としてその職務を適正、公平に行うべきであり国民が之を注視し、批判する自由を有することは勿論であるが、その批判の自由と言うも畢竟憲法の認める所謂言論の自由に帰するものであつて、公的機関に対しては如何なる批判を加えても、その真実の有無を問わず、一切発言者は責任を問われないと言う趣旨までも含むものではない。そして、その批判が偶々公務員たる人の名誉を毀損するが如き結果を生ぜしめた場合には、一面不法行為を構成し権利救済の対象になり得ることあるは当然の事理である。被告の一論拠とする刑法第230条の2は人の名誉を毀損する事柄が真実の場合であつて、しかも公共の利害に関する事実にかかり公然摘示の目的が専ら公益を図るに出たものと認められる場合に、処罰の対象とはならぬ旨を規定したものであるが、これがため公務員の公的機関なる地位に着目して批判した場合には如何なる場合にも責任はないとする趣旨でない。要するに被告の公的機関が課せられる特殊性に関する主張は独自の見解と言う外はない。

[4] そこで進んで、被告が放送新聞を通じて発表した前記事実が真実であつたかどうかについて判断する。証人中野照之の証言、被告本人尋問の結果によれば、当時日本共産党の役員として同党の公認候補者であつた被告の選挙対策の任にあつた中野照之は、原告がかつて徳島県副知事として在任中、坂州発電所に備えるべき発電機の購入にあたつて請負業者である東京芝浦電気株式会社より斡旋料として金800万円を貰いうけたとの風評を耳にして、之を日本共産党の選挙戦の一として政界の綱紀粛正のために公表すべきものと思い、被告の選挙演説中に之を暴露して県民に訴えるべく要求したので、被告は之が真実なりや否の調査をする事もなく、中野の言を信用して徳島放送局で行われた政見発表演説放送において発表した事、その後訴外阿部五郎が9月29日附徳島新聞に「公開状」と題して右放送が虚偽なる旨の反駁及び之に対する被告の釈明回答を求めたのに対し、同じく前記中野が「公開状」を作成して被告名を以て同新聞社に送付し、これをその内容と共に被告に通じたところ被告は之を承認した事がうかがわれる。従つて原告が徳島県の発電機購入に際して東京芝浦電気株式会社より金800万円を所謂「そでの下」として貰いうけたと言う事実についての根拠は、中野が風評として聞受けたと言うにすぎないのであつて、その出所についても又右が真実なりや否やについての調査も被告において何等つくさなかつたのであるし、却つて証人山下正晴の証言及び原告本人の尋問の結果によれば、当時右発電機購入については徳島県土木部において適正な方法で請負業者を選定の上、競争入札せしめたところ、最後に東京芝浦電気株式会社が最低価格で落札したこと、当時徳島県知事であつた訴外阿部五郎は同土木部管理課長であつた訴外山下正晴より右入札から落札にいたるまでの詳細を一々報告せしめて直接指示を与えて右業務を遂行し、その間に原告が業者と談合して東京芝浦電気株式会社に請負わしめるような工作をほどこす余地は存しなかつた事情が認められる。従つて原告が金800万円を収賄したのが真実である事を前提をする抗弁も亦採用出来ない。

[5] 次いで被告は右事実が仮りに真実でないにしても、これを発表したのは、日本共産党のかねてより念願とする政府その他の行政機関内部に巣くう官公吏の腐敗、汚職の摘発、綱紀粛正にあつて、原告個人の権利を侵害する意図は全く存しなかつたから被告の本件行為には故意過失はない旨主張するのであるが、被告が如何なる目的、理想の下に本件行為を為したかは思わず、仮りに或る人が公職在任中その地位を利用して業者より多額の金員を貰いうけたと言うが如き事は、その人本人にとつて重大な名誉に関する事柄であり、殊に現在、将来に政治生活を営むものにとつては公的活動の死命を制すべき事態を生ずる事あるべく、この様な重要な事柄を、その真実なりや否やの十分の調査もなく慢然と他人の報告を聞いて、そのまま広報機関を通じて発表し、又は自己の名において発表する事を承認するが如き行為は明らかに重大な過失なりと断ぜざるを得ない。
[6] 被告は又、徳島放送局を通じて為した政見発表放送は放送内容そのものが原告の名誉を毀損する事にならぬ旨主張するけれども、たとえ「そでの下」乃至「収賄」なる文句を使わないでも、副知事の地位にあるものが県事業の請負業者より800万円の周旋料をとつたと言う文言が社会通念上適正、妥当な営利行為で利益を受けた事を意味するとは解せられないから、右言辞は原告に不正行為あるものとの意を表明するに十分であり、従つてかかる表現は原告の名誉を害するものというべきである。
[7] 更に徳島新聞紙上における所謂「公開状」は訴外阿部五郎の「公開状」に対する返答であるにせよ、その内容がさきに放送された事実を肯定し、敷衍しているものであり、且つこれを新聞社に送付すれば新聞紙上に掲載されると言う認識はあるのが当然であるから、被告の主張するように釈明を求めた阿部五郎の責任でもなく、又たとえ掲載の自由が新聞社の編集責任者にあるとしても、掲載された内容についての責任は、これを自己の名において記載送付したものにある事勿論である。又本件公開状が阿部五郎の求めによつて発表されたものであるにせよ、被告が原告の職務に関連する様な不正行為をほのめかして放送したのに対して当時原告の上司として県政に当つていた阿部五郎がその釈明を求めたのは当然の行為であるから、被告作成の公開状から生じた結果について阿部に一部責任があると解する事は出来ない。前記認定によれば、被告は故意又は重大なる過失によつて広報機関を通じて虚偽の事実を流布し、よつて原告の名誉を毀損したものと言うべく、之が名誉回復のために本件事実が虚偽且つ不当であつた事を広報機関を通じて発表、謝罪すべき事を求める原告の本訴請求は正当であるが、その限度については徳島新聞、徳島民報、及び朝日新聞、毎日新聞の各徳島版に各1回宛、表題と氏名を3号活字、本文を4号活字で別紙記載の如き広告を掲載するをもつて足るものと解する。被告は仮りに謝罪広告すべきであるとしてもその方法は「公開状」を発表した徳島新聞の右と同一活字、同一スペースに限るべきである旨主張するけれども、名誉回復の手段としてはその目的を達するため適当な方法を取り得べく、名誉毀損を生ぜしめた文書を掲載した方法、範囲に限定さるべき理由は存しない。

[9] よつて原告の本訴請求は右説明の限度において理由があるから之を容れ、その余については棄却し、訴訟費用の負担については民事訴訟法第89条第92条を適用の上主文の通り判決する。

  裁判官 今谷健一 小川豪 永石泰子
 私は昭和27年10月1日施行された衆議院議員の総選挙に際し日本共産党公認候補として徳島県より立候補し、その選挙運動に当つて、同年9月21日午後9時20分より同25分、同月25日午後9時30分より同35分及び同月27日午後9時20分より同25分にいたる各5分間宛、3回に亘り日本放送協会徳島放送局で候補者政見放送を行つた際、右放送中に「蔭山前副知事は坂州の発電所の発電機購入に関し800万円の周旋料をとつている」旨述べ、又同月29日発行の徳島新聞紙上で前徳島県知事阿部五郎氏が「公開状」と題して右放送事実を指摘し之についての釈明を求めたのに対し、翌30日附同紙上に私は同じく「公開状」と題しその文中に「当時東芝が多数の業者の競争をよそに高い値段で県に売りつける権利を獲得し、蔭山君がこの斡旋に奔走して800万円のそでの下をもらつた事実は打ち消すことが出来ない」及び「蔭山君はわが党が3カ月も以前から暴露しているにも拘らず一言の申訳も出来ないのはどうしたわけか」と記載いたしましたが右放送及び記事は真実に相違して居り、貴下の名誉を傷け御迷惑をおかけいたしました。ここに陳謝の意を表します。
 大栗清実   
  蔭山茂人殿
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