性別変更訴訟(子なし要件)
第一審審判

性別の取扱いの変更申立事件
奈良家庭裁判所 平成18年(家)第1405号
平成19年3月30日 審判

申立人 A

■ 主 文
■ 理 由

■ 参照条文


 本件申立てを却下する。


 申立人は,「申立人の性別の取扱いを男から女に変更する。」との審判を求め,申立ての実情として,申立人は性同一性障害者であり性別適合手術及び名の変更を済ませ外見上も女性として社会生活を営んでいるが,戸籍における性別が男となっているため様々な不便な思いをしている,と主張した。

 性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律3条1項は,性別の取扱いの変更の審判を請求することができる性同一性障害者の範囲について,(a)20歳以上であること,(b)現に婚姻をしていないこと,(c)現に子がいないこと,(d)生殖腺がないこと又は生殖腺の機能を永続的に欠く状態にあること、(e)その身体について他の性別に係る身体の性器に係る部分に近似する外観を備えていること,のいずれにも該当する者であることと規定しているところ,申立人について上記(a),(b),(d)及び(e)の各要件の充足は認められるものの,申立人には平成13年に協議離婚した妻との間に平成7年生の女子のあることが認められ,上記(c)の要件を欠いていることが明らかである。

 申立人は,性別の取扱いの変更を求めるための要件として上記(c)を加えた現行法規(性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律3条1項3号)は憲法13条,14条,25条に違反して無効であると主張するが,上記要件は,親子関係などの家族秩序に混乱を生じさせ,あるいは,子の福祉に影響を及ぼすことになりかねないことを懸念する議論に配慮して設けられたものであり,少なくとも,これが立法府の裁量権を逸脱し著しく不合理であることが明白であるとまではいえない。

 そうすると,本件申立ては,法の規定する要件に欠けるから,却下を免れない。

  家事審判官 石田裕一
(性別の取扱いの変更の審判)
第3条 家庭裁判所は、性同一性障害者であって次の各号のいずれにも該当するものについて、その者の請求により、性別の取扱いの変更の審判をすることができる。
 一 20歳以上であること。
 二 現に婚姻をしていないこと。
 三 現に子がいないこと。
 四 生殖腺がないこと又は生殖腺の機能を永続的に欠く状態にあること。
 五 その身体について他の性別に係る身体の性器に係る部分に近似する外観を備えていること。
2 (省略)

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