再婚禁止期間違憲判決
控訴審判決

損害賠償請求控訴事件
広島高等裁判所岡山支部
平成25年4月26日 第1部 判決

口頭弁論終結日 平成25年2月8日

■ 主 文
■ 事 実 及び 理 由


1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は控訴人の負担とする。

1 原判決を取り消す。
2 被控訴人は,控訴人に対し,165万円及びこれに対する平成20年7月7日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
[1] 本件は,控訴人が,民法733条1項の再婚禁止期間の規定は憲法14条1項及び24条2項に違反しているのに,国会議員がこれを放置して,再婚禁止期間を短縮する等の改正の立法を怠り,かかる立法不作為(以下「本件立法不作為」という。)のために,控訴人の再婚が遅れて精神的損害を被ったと主張して,被控訴人に対し,国家賠償法1条1項に基づき,損害賠償金(慰謝料及び弁護士費用)165万円及びこれに対する平成20年7月7日(前婚の解消の日から100日を経過した日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
[2] 原判決は,控訴人の請求を棄却したところ,控訴人がこれを不服として本件控訴をした。

[3] 争いのない事実等(当事者間に争いがないか,掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認定できる事実)は,以下の点を改めるほかは,原判決の「事実及び理由」中の「第2 事案の概要」の1の(1)ないし(4)(原判決2頁11行目から5頁22行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。
[4](1) 原判決5頁12行目の「この別居期間が,」から同頁13行目の「できること,」を削除する。
[5](2) 同5頁17行目の「多いこと,」から同頁19行目末尾までを「多い。」と改める。

[6] 争点及びこれに関する主張は,原判決6頁12行目末尾で改行の上,以下の点を付加するほかは,原判決の「事実及び理由」中の「第2 事案の概要」の2の(1)及び(2)(原判決5頁24行目から6頁20行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。
「(被控訴人の主張)
[7] 民法733条1項の規定の趣旨は,父性の推定の重複を回避し,父子関係をめぐる紛争の発生を未然に防ぐことにあるところ,そのために,懐胎能力のある女性に対してのみ6か月の再婚禁止期間を設けることは,男女の生理的な違いを理由として男女間の法的取扱いに差異を設けるものであり,それが一見して合理性を有しないとはいえない。
[8] また,再婚禁止期間をどの程度の期間とするかは,父子関係をめぐる紛争の発生の未然防止と女性の再婚の自由との利益調整を図る観点から,基本的には立法政策に委ねられている事項であるところ,これを嫡出推定の重複の回避に最低限必要な100日とせず,6か月とすることが,一見して合理性を有しないとはいえず,それが憲法の規定に違反することが明白であるとはいえない。
[9] したがって,女性の再婚禁止期間を6か月とする民法733条1項の規定を改正しないことが,国民に憲法上保障されている権利を違法に侵害するものであることが明白な場合に当たるとはいえない。」
[10] 国会議員の立法行為又は立法不作為が国家賠償法1条1項の適用上違法となるかどうかは,国会議員の立法過程における行動が個別の国民に対して負う職務上の法的義務に違背したかどうかの問題であって,当該立法の内容又は立法不作為の違憲性の問題とは区別されるべきであり,仮に当該立法の内容又は立法不作為が憲法の規定に違反するものであるとしても,直ちに違法の評価を受けるものではない。しかしながら,立法の内容又は立法不作為が国民に憲法上保障されている権利を違法に侵害するものであることが明白な場合や,国民に憲法上保障されている権利行使の機会を確保するために所要の立法措置を執ることが必要不可欠であり,それが明白であるにもかかわらず,国会が正当な理由なく長期にわたってこれを怠る場合などには,例外的に,国会議員の立法行為又は立法不作為は,国家賠償法1条1項の規定の適用上,違法の評価を受けるものというべきである(最高裁平成13年(行ツ)第82号,第83号,同年(行ヒ)第76号,第77号同17年9月14日大法廷判決・民集59巻7号2087頁)。

[11] 本件において,控訴人は,民法733条1項の規定が本件区別を生じさせていることが憲法14条1項及び24条2項に違反し、本件立法不作為は,国民に憲法上保障されている婚姻をする権利を違法に侵害するものであることが明白な場合に当たると主張する。しかしながら,合理的な理由に基づいて各人の法的取扱いに区別を設けることは憲法14条1項及び24条2項に違反するものではないと解されるところ,民法733条1項の規定の趣旨は,父性の推定の重複を回避し,父子関係をめぐる紛争の発生を未然に防ぐことにあると解され(最高裁平成7年判決参照),その立法目的には合理性があると認められる上,上記立法目的を達成するために再婚禁止期間を具体的にどの程度の期間とするかは,上記立法目的と女性の再婚の自由との調整を図りつつ,内外における社会的環境の変化等をも踏まえて立法府において議論して決定されるべき問題であり,これを6か月とした民法733条1項の規定が直ちに合理的関連性を欠いた過剰な制約であるということもできない。してみれば,本件区別を解消しなかったという本件立法不作為が,国民に憲法上保障されている権利を違法に侵害するものであることが明白な場合に当たるとはいえず,国家賠償法1条1項の規定の適用上,違法の評価を受けるものではない。

[12] したがって,その余の点を判断するまでもなく,控訴人の本件請求は理由がないから棄却すべきであり,これと同旨の原判決は相当である。

[13] よって,本件控訴は理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。

  (広島高等裁判所岡山支部第1部)

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