研究内容

1.VEGF-A/ニューロピリン-1(NRP1)のシグナル伝達経路とがん細胞の悪性化メカニズム

血管内皮細胞増殖因子(VEGF-A)は、胎児期における血管形成 に重要な役割を果た すだけでなく、がん細胞から分泌され腫瘍血管新生を誘導することに よってがん細胞の生存と転移を促進する。ニューロピリン(NRP1)は分子量約130kDaの膜貫通型タンパク質であり、VEGF-Aの受容体として血管 内皮細胞に発現していることが発見された。 血管において、NRP1はVEGF-Aと結合するとVEGFR2の キナーゼ活性を増強し、血管新生や脈管形成・ 血管透過性の亢進を促進する。NRP1は血管のみならず腫瘍にも発現しており、非小細胞肺癌、神経膠芽腫、大腸癌、卵巣癌患者の疾病組織において高発現し ていることが確認されている。また、NRP1をラット前立腺がん細胞に誘導発現させた腫瘍の増殖はin vivoで促進されることが報告されている。以上の結果から,NRP1は腫瘍細胞自体に、生存増殖シグナルを伝達していることが示唆されている。

本研究室では、がん細胞 が自分の産生するVEGF-Aの情報をNRP1がレセプターとして受 け取り(autocrine) 、がん細胞の 増殖、生存、および遊走を促進していることを見いだした。NRP1の細胞内シグナル伝達経路を解明し、がん治療の新しい 分子標的を発見する>