SCMに関するQ&A



 Q. そもそも、「サプライチェーン」って何ですか?

 A. 原材料の調達から完成品の生産、物流、販売まで、多くの企業が関わります。
    それらの企業で行われている業務(特にモノの供給=サプライに関する業務)が
    企業横断的につながっている状態を鎖(チェーン)にたとえたものです。

身近な消費財で言えば、完成品である自動車のボディ
をつくるのに、鉄が必要になります。自動車メーカーは、
鉄鋼メーカーから原材料として、鉄を調達します。
この場合、鉄鋼メーカーは「サプライヤー」と呼ばれます。
パソコンであれば、演算装置や記憶装置にたくさんの
電子部品が使われています。最近は、半導体の調達難が
大きなトピックとなっています。
農産物も主要な原材料となります。
カルビーのポテトチップスに使われているじゃがいもは、
主に北海道の契約農家から調達されています。

調達した原材料を使って、完成品メーカーが製品を生産
します。コカ・コーラは米国アトランタに本社がある、
世界の代表的な飲料メーカーです。
完成品メーカーの中には、製品の設計・開発後、生産を
外部へ委託している会社もあります。米アップル社が
台湾に本社のあるフォックスコンに生産を委託している
事例はよく知られています。
ひとくちに生産といっても、見込みで大量に生産される
ものもあれば、顧客からの注文に応じて少量だけ生産
されるものもあります。数千万円する高級車は、後者の
受注生産です。

生産された製品を顧客に届けるのが物流の仕事です。
画像は、倉庫に保管されている食品を、配送先別に
必要な分だけピッキングするラインです。
国際物流には、海上輸送と航空輸送があります。
港にあるガントリークレーンは、コンテナの積みおろしに
使われます。
航空輸送では、軽量で付加価値の高い商品が運ばれます。
半導体や医薬品が典型的な例です。ZARAのカジュアル
衣料品も、スペインから日本まで航空輸送されています。

配送された商品が店舗で販売されます。
小売はグローバル競争が激化しており、世界有数の衣料品
SPA(製造小売業)である、スウェーデンのH&Mの
店舗も日本でよく見かけます。
同じく、スウェーデン生まれの家具のSPAです。
神戸ポートアイランドに店舗があります。
どこの企業かわかりますか?
店舗は、長い時間をかけて、ようやく売り場に届いた商品
の魅力を伝える場でもあります。
米国百貨店ノードストロームは、高品質の顧客サービスで
有名です。


 Q. では、「サプライチェーン・マネジメント(SCM)」はどんなマネジメントなんですか?

 A. SCMの最大の特徴は、原材料の調達から販売に至るまで、多くの部門や企業が関わる
    ということです。部署や企業が違えば、目標や行動原理、組織文化など、多くの点が
    異なってきます。しかし、共通の目標はただひとつ、「最終顧客の満足度を高める」
    ことであるはずです。では、どうすれば違うもの同士で、ムダのない、それでいて俊敏で、
    かつ非常事態でも頑強な鎖を構築できるのでしょうか。


SCMでは、「協働」がキーワードになります。
共通の目標を達成するために、取引先とがっちり
組めれば理想です。
ただ、現実はそううまくいかないものです。
相手と対立したり、抵抗されたり、逆に強制されたり...
パソコンやインターネットなどのITは、SCMを成功に導くための
必要条件でしかありません。
工場の現場はいつも、ムダをなくすための改善活動を行っています。
でも、生産部門だけの改善ではコスト削減にも限界があります。
SCM部門のスタッフは、需要予測や改革推進の役割を担っています。
しかし、スタッフが現場に精通していないとうまくいきません。
SCMの導入には、経営トップのリーダーシップが欠かせませんが、
SCMに関する活動は範囲が広く、ずっと続くものなので、ひとりの
リーダーに頼るのは無理があります。
では、どうすればいいのでしょうか。
先進企業は、競合他社がマネしにくい仕組みを構築し、かつそれを
何年もかけて「徹底」させ、そして「進化」させています。
現実の世界で行われている創意工夫から、「SCMとはいったいどんな
マネジメントなのか」を、自分で考えてみて下さい。


 Q. ゼミナールでSCMを学ぶ意義は、どんなところにあるのですか?

 A. ゼミの演習は、「個人研究」と「グループ研究」に分かれます。
    個人研究では、各自が興味・関心のあるテーマを選んで、研究を行います。SCMに関する研究でも
    よいですし、経営学に関することであれば、なんでも構いません。SCMに関することなら、例えば
    自分のお気に入りの商品のサプライチェーンを調べてみるとよいでしょう。さまざまな企業が関わり、
    いろいろな工程を経て、時には地球の裏側からモノが移動して、ようやく私たち消費者のもとに
    届いていることがわかるはずです。この演習をすることによって、これまでよりも広い視野で物事を
    見たり、考えを深めることができるようになるでしょう。SCMでもなんでも、現実的な問題を対象と
    して、マネジメントについて考える、そして理論や方法論を身に付ける、それが個人研究です。

    グループ研究は、ゼミ生をいくつかの班に分けて、ひとつのテーマに取り組みます。数人でやるので、
    いろいろな情報が集まる、さまざまなアイディアが出る、わいわい楽しくできる、といったメリットが
    ある反面、意見が割れたらどうやってまとめるか、特定の人に負荷がかからないようにどのように
    役割を分担するかといった「組織における分業と調整」の問題が発生します。みんなでひとつの
    研究成果を出しつつ、その過程で組織の問題を実践的に学ぶ、これがグループ研究です。


 Q. ほかに何か身に付くことやゼミで大事にしていることはありますか?

 A. 以下すべて、ゼミにいれば自然に身に付くというよりは、ゼミ生に意識して身に付けようとしてほしい
    ことです。

  ■ 「問題意識」にもとづいて、「仮説」や「視点」を提示した上で、「調査」し、「考察」するという流れで
    研究をすすめ、論理的な思考力を養います。発表(プレゼンテーション)の機会はたくさんありますので、
    「論理的なプレゼン」ができるようになって下さい。また、文章作成(レポーティング)についても、
    ロジカルな文章を書くための課題があります。

  ■ オリジナリティを出すことを強く意識してほしいです。調査では、文献を読むだけでなく、現場を視察したり、
    企業にインタビューするといったフィールド調査を行うことが有効です。数値を扱うことが得意なら、統計
    データを使ったり、アンケートをとるという手もあります。そうやって、自分で1次データを集めることが、
    オリジナリティにつながっていきます。

  ■ 授業の運営や各種イベントを通じて、「リーダーシップ」と「フォロワーシップ」の両方を身に付ける機会が
    あるといいですね。ゼミ長や副ゼミ長はもちろん、それ以外にも各種委員会の委員長、さらには急きょ発生
    したとりまとめ役など、できるだけ多くの人がリーダーを経験できる機会があればと思います。加えて、
    何事もフォロワーの存在が重要です。ゼミという組織は、ゼミ生同士でのトップダウンが働きにくいので、
    まわりがどうフォローするか、そのあたりはまあ、実際ゼミに所属してみればよくわかるでしょう。

  ■ 最後に、最も大事にしているのは「自分を知ること」「自分を出すこと」「自分を広げること」です。
    SCMに限らず、ゼミではマネジメントを学ぶことになりますが、その根底にあるのは、やはり「自分は
    どういう人間なのか」ということです。自分のないマネジメントは、単なる知識やスキルでしかありません。
    ほかの人でもできたり、もしかしたら、人工知能(AI)でもできてしまうことかもしれません。
   「自分ならどうするか」を意識して、知覚・思考・表現・行動したり、いろいろと創意工夫すれば、
   「自分らしいマネジメント能力」がきっと身に付くでしょう。途中でやめず、最後まで演習を続けてください。



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