三好 蕃 (Shigeru J. MIYOSHI)のページ
プロフィール:
理学部教授(物理学科)
理学博士
専門:宇宙物理学/X線天文学
研究
Clusters of Galaxie(銀河団)
ここ数年来、日本の天文衛星ASCAおよび英国ケンブリッジ大学の電波望遠鏡から
得られた遠方銀河団のX線と電波の観測データを用いて、銀河団の構造解析に加えて
ハッブル定数Hoの値を(光観測とは独立に)決める国際共同研究
プロジェクトを推進している。研究グループとしてこれまで4つの銀河団について
Ho値を得ており、その平均値は46±7km/s/Mpcである。このうち、
Abell773銀河団については、中心部に複数個の点状電波源が在るため、度重なる
電波観測と慎重なデータ解析が必要であったが、最終的にHo
=46+14/-11km/s/Mpcが得られた(論文投稿中)。これらの値は光観測で測られた
近傍銀河団のHo値に比べて約30%小さいが、最近(ヒッパルコス衛星に
よる)星の精密観測から得られた球状星団の年齢の最大値(120±10億年)とは良い
整合性を持っている。また、Abell1914は激しい内部運動の為にHo値を
決める目的には使えなかったが、その激しい内部運動が最近(〜107年
前)起こったマージング(合体)によると興味深い結論を得るに至った(論文投稿中)
昨年から今年にかけて、高性能のX線観測衛星が次々に打ち上げられており、また
ハワイに建設された巨大望遠鏡「すばる」も今年秋から共同利用観測で使える予定で
ある。そのため、これらをフルに使って、更に精度の良いHo値を求めて
ゆく。理論面では、既に「銀河団ガスのクーリングフロー・モデルは怪しい」との
結果を得ているが、今後は加熱機構の詳細な検討も入れてさらに議論を深めて
いきたい。
Quasars
クェーサー現象は銀河中心核に在る超大質量ブラックホールへの質量降積に伴う
重力エネルギーの解放に起因するのもであるとの見方が標準的であるが、その超
大質量ブラックホールの起源及び質量降積に伴う電磁放射の具体的な機構については
未だ共通の理解を得るまでには至っていない。後者については、現在、移流優勢
降積流(ADAF)モデルが最も有力視されているが、降積円盤の上下に存在
するはずの高温コロナの起源が曖昧であり、観測結果の説明も十分とは言い難い。
私が提案しているモデルは、銀河衝突の際にそれぞれの中心核に在るブラックホール
と相手銀河の巨大分子雲が遭遇し、その巨大分子雲の一部がブラックホールに
落ち込んでクェーサー現象を引き起こすというものである。この時、正味の角運動量
を持った部分が(降積)円盤を作り、残りが球対称的に落ちてきて高温コロナとして
機能する(SDAモデル)。このモデルと観測との詳細な比較に向けて数値
シュミレーションを計画しているが、思うように進んでいない。また、電波で
異常に速い時間変動を示すものとして一時注目を集めたクェーサーPKS0405-385
のX線観測の結果は実に平凡なものであった。色々論議検討した結果、その異常
に速い電波の時間変動は星間物質のシンチレーションによるものであろうとの
結論に達した。
Cosmic Strings(宇宙弦)
これまで、宇宙弦、ダークマターおよびバリオン物質の間の重力相互作用、さらには
バリオン物質の加熱や冷却等も総合的に取り込んで、数値シュミレーションを主と
した構造形成の研究を原教授と協力して行っており、観測される宇宙の階層的構造
と各階層の持つ物理的諸特性をこのシナリオで概ね説明出来るとの結論を得ている。
COBOが観測したマイクロ波宇宙背景放射の非等方性もかなりの程度まで再現
出来ている。新しいものを余分に導入すれば、それだけ理論の自由度が増えて
観測事実の説明が容易になるのは当然のことではあるが、これまでの研究結果を
見る限り、宇宙弦の導入はそのレベルをはるかに超えている(観測との一致が
非常に良い)。
可愛い弟子たち・・・天体物理学、三好研究室の院生と研究テーマ
吉村将智(D3)・・・
宇宙のダークマター
田中伸広(D2)・・・
銀河団および宇宙のダークマター
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Last modified: Sat Apr 1 21:10:50 JST 2006