ゼミ生が語る「私の好きな京都」(2020年)
ゆるキャラについて
本荘 怜央奈
(2017年度入学 鈴木ゼミ一期生)

 近年、地域活性化をはかる取り組みの1つとして、「ゆるキャラ」の存在がポピュラーとなっている。ゆるキャラとは、「ゆるいマスコットキャラクター」の略で、独特のほのぼのとした雰囲気が特徴的なマスコットキャラクター全般のことである。2000年代後半からゆるキャラのブームが到来し、2019年に開催された「ゆるキャラ(R)グランプリ」では、1152体のエントリー数に上った。作成主体は、地域活性を主目的とした地方自治体に留まらず、企業が広告や宣伝のために作成したり、個人が自発的に考案したりと、ゆるキャラ作成の目的も多岐にわたっており、私たちの身近な存在として、その存在は確固たるものとなっている。中でも私は、地域活性を主目的としたゆるキャラに注目していきたい。
 最初に紹介するゆるキャラは、滋賀県彦根市の「ひこにゃん」だ。ひこにゃんは、ゆるキャラブームの草分け的存在だと言われている。2007年に築城400年を迎えた彦根城の記念イベント「国宝・彦根城築城400年祭」のイメージキャラクターとして誕生した。彦根藩2代藩主の井伊直孝を落雷から救ったと伝承されている招き猫と、井伊軍団のシンボルだった赤備えをモチーフにしており、その独特なゆる可愛さから話題を呼んだ。ひこにゃんの誕生によって彦根市の観光客は増大し、2007年から2011年までの期間、ひこにゃん関連のグッズの売り上げが51億円にまで及び、驚異的な経済効果をもたらした。ひこにゃんの台頭により、以降全国の自治体が独自のマスコットキャラを作ったり、知名度の高いキャラクターをご当地キャラとして公認する例が増え、ひこにゃんは、全国のゆるキャラブームの火付け役としての役割をなした。

 続いては、京都のゆるキャラを取り上げる。最も知名度が高いのは、「まゆまろ」というゆるキャラだ。2011年、京都府で開催された「国民文化祭・京都2011」のマスコットキャラクターとして登場したのが始まりで、その後2012年3月に京都府知事から京都府広報監に任命され、現在は京都府各地に出向いてイベントに出演するなど、京都府全体をPRする役割を担っている。モチーフは繭で、繭からできたシルクが、美しい丹後ちりめんや西陣織といった京都を代表する織物になるように京都から新しい文化を創り育てることを表している。まゆまろは、元々はイベントのために作成したキャラクターであったが、その後ご当地キャラとして公認された、いわば成り上がりのゆるキャラの代表例と言えるだろう。

 「ひこにゃん」そして「まゆまろ」のように、日本では、各地で数多くのゆるキャラたちが地域おこしに良い影響を及ぼしている。その要因として、地方分権の動きが各地で活発化したことが挙げられるだろう。地方分権の活発化は、地域ごとで街を盛り上げようとする機運が高まり、結果として個性的なゆるキャラと共に魅力的な街づくりにつながった。この機運の高まりにより、長きにわたってゆるキャラブームが続いている。しかし、このゆるキャラブームによって引き起こされるデメリットもあると私は考えている。それは、各自治体がゆるキャラを作ったことで、日本全体でみるとあまりにも数が多すぎて、世間に認知されないままの状態になってしまうことである。つまり、ゆるキャラのインフレ化が進みすぎたということだ。ゆるキャラは知名度を上げることが最も大切だと私は考えている。知名度が上がることで、「そのゆるキャラに会いに行きたい!」「そのゆるキャラがいる地域を観光したい」といった風潮が生まれ、地域活性に大きくつながるからである。また、このゆるキャラインフレによって、各自治体ゆるキャラに対する在り方を検討する必要性が生まれたのかもしれない。これまで以上にゆるキャラに個性・特異性を出すのか、はたまた別の分野で地域活性をはかっていくのか。

 最近になって、新たな形でゆるキャラを活用する方法が見いだされた。それは、時代のニーズに準じた方法なのかもしれない。その方法とは、SNSやソーシャルメディアを通じてゆるキャラを発信することである。例として、福岡県大牟田市の「ジャー坊」と、先程触れた京都府の「まゆまろ」を取り上げる。ジャー坊は2017年に、大牟田市の市制100周年を記念した際に手掛けたゆるキャラで、2018年のゆるキャラグランプリで準グランプリを取った実績がある。ただ、その後は目立った活動はなく、市外への発信も低迷していた。そのような状況の中、2020年7月6~7日にかけて大牟田市内で大規模な災害が起きた豪雨が大きなきっかけとなった。ジャー坊は自身のSNSで被災状況を投稿し、全国に支援を呼びかけた。するとその効果は絶大で、2020年7月19日までに1577万円の寄付金が集まったのである。また「まゆまろ」は、2020年7月7日より「まろtube」というYoutubeチャンネルを開設し、コロナ渦の中、家で楽しめる動画コンテンツの充実を図っている。

参考サイト
https://www.nikkei4946.com/zenzukai/detail.aspx?zenzukai=124
https://www.asahi.com/articles/ASN7T447ZN7QTGPB001.html
https://www.kyoto-np.co.jp/articles/-/300770

●もどる>