美山川にはダムがあり遡上出来ない為、4月中旬から稚魚放流が始まり6月からの鮎釣り解禁に向け、様々な活動している。由良川漁業協同組合では毎年、体長10センチから18センチの稚鮎を福知山、綾部、舞鶴、美山などの由良川本流・支流で放流している。今年(2019年)は、和歌山県日高川町産と滋賀県琵琶湖産の稚鮎を合計約3トンも放した。鮎は跳びはねるような勢いで水に入り、元気よく流れの中を泳いでいった。
鮎は水底の石に生える珪藻類を食べて育つ。その事から濁りが多い川の鮎は胃に泥を多く持ち、食味にも泥臭さが出る。この場合、はらわたを除去することで泥臭さを避けることもできる。しかし、泥が少ない川では胃にも泥が含まれず、食味も大幅に改善する。なかでも由良川上流の美山川には鮎の餌となる良質の珪藻類が生えるので美味しい鮎に育つ。地元民としては味だけでなく、天然鮎の胸ヒレ辺りには追い星(黄色い斑紋)が付き、背びれに沿って黄色く染まり、青白い体の養殖より見た目も良いように思う。
<地元の食べ方>
魚の味をそのまま味わうと言えば、やはり塩焼きである。実家では鮎を踊り串した炭火焼きが定番で、その年の初めの鮎獲りの日に〆たばかりの鮎を塩焼きにする。踊り串とは、魚を焼く際に焼き上がりを美しくする為に串を打つ方法で、魚が踊っているように見えることからその名がある。登り串やうねり串とも言う.
私が焼く時は、鮎の口から串を入れ、追い星から出し、1cmほど出した所でもう一度刺し入れ、尻ひれの手前に通す。この時意識する
のは、鮎が泳いでいる姿をイメージして串を刺す事である。それから、胸ひれ、腹ひれ、尻ひれ、尾ひれ、背びれに化粧塩をする。そうする事でひれが、焼いた時に崩れず盛りつけた際に立ち、見栄えが良い。最後に、追い星から1cmほど出ている串と鮎の間に、口から入れた串に対して垂直に串(写真の竹串部分)を入れる。これは、焼く時に裏返しやすくする為である。ここに串を入れていないと、鮎がくるくると回転してしまい、焼きたい面を焼くことが出来ない。
鮎ご飯にして食べるのも恒例だ。作るには鮎をご飯と炊く前に表面を焼いたり、炊いた鮎の頭・骨・ヒレなどを取り除いて身をほぐしたりと少し手間がかかるが、鮎の香ばしい匂いと時々感じる内臓の苦みがとても美味しい。鮎ご飯は冷えても美味しい事から実家の家族だけでなく、遠い親戚や知人からも人気があり、よくお裾分けをする。他には、私の実家ではしないが、鮎みそや一夜干し・鮎粥と言った食べ方もあるらしい。
私は、この川の傍で育ってきたものとして鮎などの由良川の良さを受け継いでいきたいと思う。また、昔も今も住民と深いかかわりを持って共存し、貴重な恵みをもたらす由良川がこの先も続くことを心より願う。