＜はじめに＞
　私は、現在滋賀県の大津市という場所で暮らしている。大津市は自然豊かで、実家から自転車を５分程走らせれば、日本一大きな湖である琵琶湖の畔に足を踏み入れることができる。大津に住まいを置いてかれこれ18年になるが、その湖の雄大さ、美しさに今でも魅了され続けており、暇なときはたびたび琵琶湖湖岸に足を運び、その圧倒的な景観を楽しんでいる。大津はとても良い街で、満足のいく生活を送っている。一方で、私は時々故郷である京都府宇治市での生活を想い出しては、懐かしむこともある。宇治は、生まれた頃から4歳の頃まで暮らしていたのだが、今回はその当時の思い出の場所や情緒を回想しながら、宇治の魅力を綴っていきたいと思う。

＜想い出　～定番の散歩コース（おばあちゃんとともに）～＞
　宇治での想い出と聞かれたら、私は迷わずおばあちゃんとの散歩と答えるだろう。その散歩には定番のコースがあったので、それを紹介しつつ、想い出を振り返っていきたいと思う。まず、実家のマンションを出発し最初に現れてくるのがJR奈良線の踏切である。カンカンカンと鳴る踏切音を聴いて、これから始まる散歩に心を弾ませた。踏切を渡り、しばらく歩くと大通りが、そしてその大通りを越えた先には、「宇治橋通商店街」がある。この商店街は数多くのお店が軒を連ねており、地元の方々や、宇治という場所柄もあり、大勢の観光客でいつもにぎわっていた。ちなみに、抹茶好きならば知っているであろう「中村藤吉」の本店もこの商店街の一角にある。宇治橋通商店街の１本道をしばらく歩いていくと、最初の散歩定番スポットである「キッズいわき・ぱふ」というおもちゃ屋さんが見えてくる。木を使ったおもちゃが数多く揃えられており、中でも私は木製のスロープに玉を転がして遊ぶおもちゃが大好きだった。おもちゃ屋での遊びを堪能し終えると、再び歩き始める。行き交う人たちの賑わいを肌で感じながらしばらく歩くと、商店街の道が終わり、視界が一気に広がってくる。ここで登場するのが、淀川水系であり一級河川の「宇治川」、そしてその宇治川をまたぐ立派な橋、「宇治橋」だ。この橋は646年（大化２年）に架けられ、瀬田の唐橋と山崎橋とともに日本三古橋のひとつに数えられ、日本有数の伝統を誇っている。現在の橋は、檜製の高覧に青銅製の擬宝珠を冠するスタイルとなっており（平成８年に改装）、宇治の由緒ある景観と見事に調和している。私は、この宇治橋を渡ることも散歩コースの定番であった。橋を渡るときに感じる風と川の水が流れる音が心地よく、全身を爽快にしてくれた。そして何より、宇治橋から眺める景色を眺めることが私にとって最高のひと時であった。春は川沿いにこれでもかと連なる桜、夏は壮大な緑が、秋には山々の紅葉が宇治橋から見渡すことができ、季節によって表情を変える宇治橋からの眺望に幾度となく魅了されていたのを今でも鮮明に覚えている。また、余談ではあるが、宇治橋を渡る手前にある交差点の信号機の音も好きだった。非常に独特なサウンドで、一度聴いたら耳から離れない。宇治橋付近を訪れた際には是非信号機の音にも注目して頂ければと思う。さて、宇治橋を渡り終えると、最後の散歩定番スポットである「駿河屋」というお茶屋さんがある。抹茶を中心とした商品が数多く取り揃えてあり、地元の人に愛されている。店に入る前からお茶の良い香りが漂っていて、その香りに惹かれてか、近くにある世界遺産「平等院鳳凰堂」へ向かう参拝客が休憩を兼ねて駿河屋に立ち寄っている光景をよく見かけたものだ。ここで私はいつも「茶団子」を食べていた。茶団子は宇治の名産であり、宇治市民で知らない人はいないだろう。宇治には茶団子を販売しているお店が数多くあるが、中でも私は、抹茶の味が濃い駿河屋の茶団子が大好きで、散歩で疲れた体を癒してくれた。以上が私の宇治の想い出である定番の散歩コースだ。

＜その他で行ってほしい宇治のスポット3選＞
・三室戸寺
　三室戸寺は、是非6月に足を運んで頂きたい。なぜならば、梅雨のシーズンに約2万株、50種ものアジサイが咲き乱れ、アジサイの名所として知られているからである。三室戸寺の境内にある本堂や三重塔の佇まいと相まって、優美な景観を楽しむことができるので、非常におすすめである。

・平等院鳳凰堂
　こちらは言わずと知れた世界遺産、10円玉硬貨のデザインにも用いられている平等院鳳凰堂もおすすめのスポットだ。私は幼少の頃に数回訪れたことがあり、平等院の周りを取り囲んでいる庭園の池の水面に建築物が反射して、逆さ富士の如く映っている光景が幼心ながら鮮明に覚えている。2014年の改修工事以来訪問できていないので、機会があれば是非行きたい。

・太陽が丘公園（京都府立山城総合運動公園）
　太陽が丘公園は、週末になると家族連れや、地元のスポーツ大好きキッズで賑わいを見せる。子供に人気のアスレチックやプール、本格的な陸上競技場や野球場などもあり、様々な目的に合わせ楽しむことができる。