ゼミ生が語る「私の好きな京都」(2020年)
伏見のシンボル伏見城
小山 雅宏

 2020年1月亀岡駅前に京都府初となるサッカー、ラグビーなどの専用球技場であるサンガスタジアム by KYOCERAが完成した。サッカーJリーグ京都サンガF.C.のホームスタジアムとして使用されるほか、学生スポーツや国際試合での使用も予定されている。2月9日にこけら落としのJリーグ・プレシーズンマッチが行われ、約1万8千人が来場した。昨シーズンのホームゲーム平均観客動員数が7,850人である。この数字の違いからも新スタジアムへの期待が感じられる。

 際に現場を体験して、選手の迫力やスタジアム全体の熱気など、今までに私が体験したことのない時間が流れた。京都サンガF.C.の試合にほぼ全て駆けつけるほどの大ファンである私にとって、この新たな球技専用スタジアムの完成は夢のような出来事であった。

<スタジアムの特徴>
 スタジアムの収容人数は21,600人で座席は京都のイメージカラー、京都サンガのクラブカラーである紫で作られており、バックスタンドにはKYOTOの文字も入っている。観客席最前列より2メートル張り出した屋根が全席を覆っているのは全国初となる。これにより、観客は雨に濡れずに観戦することが可能となった。また、スタンド最前列からピッチまでは最短7.5メートルであり、選手のプレーを間近で感じられる。

 昨年まで使用されていた西京極陸上競技場と比較すると、陸上用のトラックが無くなり、屋根もできたため、サポーターの応援は今まで以上にスタジアム中に響き渡る。選手のプレー中の表情なども観客には見えるようになり、球技専用スタジアムならではの選手と観客との一体感が生まれやすい環境となった。スタジアムへは京都駅からJR嵯峨野山陰線で亀岡駅まで20分。亀岡駅からは徒歩3分でアクセスは良好だ。
 サンガスタジアムby KYOCERAでは、サッカー観戦以外にも楽しめる施設がある。2020年大河ドラマ「麒麟がくる」の世界観を楽しめる大河ドラマ館や光秀大河物産館、日本初の国際基準を満たした屋内型スポーツクライミング施設もスタジアム内に併設されている。亀岡の名産や地元食材が楽しめるフードコートや会議室の貸し出しなど、府民が日常から利用できるものもある。今後はスタジアムツアーの開催なども検討されており、試合日でなくても楽しめるスタジアムを目指している。

<完成までの道のり>
 スタジアムが完成に至るまでには多くの課題があった。最初に京都府がサッカー専用スタジアムの建設を計画したのは1995年のことだ。2002年のワールドカップに向けて計画をしたが、京都府が開催地選定で落選したために計画は中止された。1998年にも大阪オリンピック構想に対応するため建設が計画されたが、こちらも大阪がオリンピック開催地から落選したため中止となった。2003年には京都サンガのホームスタジアムとして2万人規模のスタジアム建設計画が35万人の署名が集まり始まった。しかし、費用面での折り合いがつかず中止された。翌年には伏見区の横大路公園が建設地に挙がり、京セラ名誉会長の稲盛和夫氏が私財を建設費の一部として提供し、建設することが自治体と経済界で合意された。しかし、費用負担を巡り京都市の同意が得られず、建設は本来行政が進めるべきものだとの批判もあり、この計画も撤回された。その後も計画されては中止が続いた。
 転機となったのは2010年。「京都・サッカースタジアムを推進する会」が発足し、署名活動で京都府に47万人の署名を提出した。京都府は候補地を募り、2012年に亀岡市に建設することが決まった。建設地が決まってからも問題は発生した。スタジアム建設予定地には天然記念物である「アユモドキ」の生息地があった。専門家や自然保護活動団体などからは絶滅の懸念が深まったとスタジアム計画の撤回を求め、建設に進まない状況となっていた。2016年になり京都府は「アユモドキ」の保全とスタジアムの早期完成を目指し、建設地を亀岡保津川公園から亀岡駅北土地区画整理事業地へと変更した。こうして2018年に建設工事が開始され、2020年に当初の計画から約25年の時を経て京都の地にサッカースタジアムが完成した。なお、正式名称は「京都府立京都スタジアム」。2019年にスタジアム命名権を京セラが買い取り、「サンガスタジアム by KYOCERA」の名称が用いられている。

<スタジアムのこれから>
 こけら落としの試合こそ満員になったが、これからのリーグ戦でも多くの観客に来場してもらえるかが課題である。他にもごみの回収や試合後の混雑などの課題がある。行政とクラブ・サポーターが一体となり解決することが求められる。実現すれば綺麗で見やすいだけでない本当魅力的なスタジアムになると私は思う。25年以上の時を経て多くの方の努力で完成したこのスタジアム。その雰囲気づくりや発展に、私も一人のサポーターとして貢献したいと考えている。

 ここまで紹介したサンガスタジアムby KYOCERAの魅力は実際に行かないと体験できない。スポーツに興味がある人だけでなく、スポーツ観戦が初めての人でも少しでも気になったのなら、一度足を運んでみてはどうだろうか。日常では体験できない世界がそこには待っているはずだ。

参考文献
京都サンガF.C.オフィシャルサイト
サンガスタジアムby KYOCERAホームページ

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