ゼミ生が語る「私の好きな京都」(2020年)
伏見大手筋商店街
小山 雅宏

 私の住む伏見桃山地域には長さ約400メートルの伏見大筋商店街がある。近鉄電車の桃山御陵前駅や京阪電車の伏見桃山駅から徒歩圏内であり、アクセスも良好である。また駐車場も用意されており、車での買い物も可能であることから各方面から買い物客が集まる。商店街全体がアーケードで覆われおり、毎年7月には夏の夜市、10月には花傘パレード、12吉の時代から続く伏見の古き良き街並みが感じられる景観と利便性の高さから地元の多くの人から愛されている商店街だ。

<歴史>
 大手筋という言葉の語源は豊臣秀吉の時代までさかのぼる。1594年伏見城建築により、大手広庭を形成した。そこに大手門を築き、それより少し西方に作ったのが大手筋通りだ。1728年作成の紀伊郡伏見御城図には「大手広庭の前、大手筋通りと云う」と書かれている。
 明治時代になり、人口の増加や交通の発達「京阪電車開通」などにより、大手筋商店街の通行者が著しく増加した。これにより、商店街的性格を高めようとする機運が高まった。多くの寄付金を得て約30基の街路灯を設置し、商店街としての形成を確立した。この街路灯はすずらんの花型取ったランプが5個ついているデザインで、大手筋の名物となった。  その後、大手筋商店街では繁栄会が結成されたことで洛南一の商店街を目指し、前進した。太平洋戦争による鉄材供出ですずらん灯は姿を消したが、10年後に復活を果たした。
 昭和46年には電動開閉式のアーケードが完成した。これにより天候に左右されること無く、買い物を楽しめる環境が整った。このアーケードには日本で初めて太陽光パネルが設置されており、アーケード内の照明に利用されている。2000年には中心市街地の活性化に関する法律により、伏見地区中心市街地活性化適用地域に決定した。2009年には「新・がんばる商店街77選」にも選ばれ、今もなお発展を続けている。

<個性的でなんでも揃う大手筋>




 大手筋商店街では100を超える店が軒を連ねており。近隣住民の生活に無くてはならない存在となっている。近年はチェーン店の進出も目立っており、カフェや居酒屋などの飲食店で賑わっている。他にも複数の携帯電話ショップ、金融機関、不動産店、コンビニエンスストアがあり、暮らしに必要なあらゆる分野の店が揃っている。しかしながら、昔ながらの専門店も存在感を放っている。いくつか紹介していこう。
 まずは商店街に入ってすぐの一番街にある「トイズかめた」だ。
 子供が好きなヒーロー・ヒロインのおもちゃから大人も楽しめるジグソーパズルやプラモデルまで幅広く商品が揃うおもちゃ屋である。店内には所狭しと様々なおもちゃが並んでおり、私も子供の頃は店の前を通るたびに立ち止まっておもちゃを眺めていた。また、最新のテレビゲームや流行りのキャラクターグッズを揃えていながら、けん玉や紙風船といった昔ながらの遊びができるおもちゃも購入することができる。店内では親子連れや孫を連れたお年寄りが多くみられる。

 酒造で有名な伏見のお酒を楽しめるのが三番街にある「吟醸酒房・油長」である。伏見の全蔵元18社のお酒を吟醸酒・大吟醸酒を中心に常時80種類以上取り揃えている。また、季節限定酒等も合わせると、100種類以上のお酒を楽しむことができる。店内には唎酒カウンターが併設されており、グラスや御猪口で手軽の伏見のお酒を飲み比べることができる。

 商店街を歩いていると、お茶の香りを楽しむことができる。その香りの正体は二番街にある「松田桃香園」である。日常で楽しめるお茶や贈答品としても使えるお茶を購入することができる。伝統の技である宇治茶石臼挽きという技術で本格的な自家製宇治抹茶をいただくことができる。

 最後に紹介するのはお店ではないが一番街にある「からくり時計塔」だ。毎日午後1時から午後7時までの正時に扉が開き音楽と共に伏見ゆかりのキャラクターが人形で登場する。お茶を頂く千利休の登場から始まり、豊臣秀吉、伏見城と安土桃山時代を感じると、次は幕末の時代を生きた坂本龍馬や新選組が登場する。他にも花笠行列や酒造りといった伏見の街を現す人形も楽しむことができる。1時間に1回という貴重さからか多くの通行人が足を止めてこの人形劇を観ている。

 

 ここまで紹介してきたように大手筋商店街は地元の人の生活に必要な買い物が出来るだけでなく、観光客が伏見を感じることが出来る商店街でもある。また、古くから続く個性的なお店とチェーン店が融合した現在の形は、シャッター街と言われ廃れる商店街が増える今の時代を生き抜く上でとても理想的な形であると私は考える。大手筋商店街はこれからも地元の人の生活を支え、伏見の象徴として存在し続けることを私は願っている。

参考文献
http://otesuji.jp/ 伏見大手筋商店街
https://kyoto-fushimi.or.jp/ NPO法人 伏見観光協会

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